説明

空気清浄機

【課題】1つのフィルタを通過する空気流れを両方向とすることが可能な空気清浄機を提供する。
【解決手段】送風ファン31は、対象空間の空気を対象として上流側から下流側に向かうメイン空気流F1およびバイパス流F2を形成する。プレフィルタ41は、フィルタ部41aと、仕切通気部41bとが一体に形成されている。仕切通気部41bには孔41Oが設けられている。フィルタ部41aは、通過する空気をフィルタリングする。孔41Oは、活性種を通過させる。仕切通過部41bは、空気の通過を遮断している。プラズマイオン化部42は、プレフィルタ41の下流側に配置され、プレフィルタ41の仕切通気部41bの形状に対応する形状であって仕切通気部41bに下流側から当接している。ここで、プレフィルタ41のフィルタ部41aは、上流側から下流側に向けて空気が通過する。そして、プレフィルタ41の孔41Oは、下流側から上流側に向けて活性種が通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内の空気中に浮遊している臭気成分、塵埃、菌、およびウィルス等を除去することで清浄化させた空気を再び室内に戻す空気清浄機がある。このような空気清浄機では、臭気成分、塵埃およびウィルス等を、オゾンによって分解、死滅、あるいは不活化させることで清浄化を行っている。
【0003】
これに対して、近年では、例えば、以下に示す特許文献1に記載の空気清浄機にように、静電集塵フィルタを用いた静電化された塵埃を除去する段階、空気中に浮遊する塵埃、臭気成分およびウィルス等を吸着部に吸着させつつ、反応活性が高いとされている高速電子、イオン、ヒドロキシラジカルの活性種を発生させて吸着部に送り清浄化させる段階等、清浄化の段階を複数設けられたものが提案されている。
【特許文献1】特開2005−300111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した特許文献1に記載の空気清浄機では、前方から後方に向かう一方向の空気流が形成されており、この空気流が各フィルタや清浄化部を通過することで空気が清浄化される構成となっている。
【0005】
これに対して、上述した一方向に流れる空気流のうちの一部もしくは他の流体を、後方から前方に向けて戻すことができるようにしたい要請がある。このような場合、フィルタは、空気流に対する逆方向に戻す部分について分割されて、この分割部分を通過させることで逆方向の流れを確保する等の方法しか提案されていない。
【0006】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、1つのフィルタを通過する空気流を両方向とすることが可能な空気清浄機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る空気清浄機は、対象空間の空気を通過させて清浄化させる空気清浄機であって、送風部と、フィルタと、下流部材と、を備えている。送風部は、対象空間の空気を対象として前方から後方に向かう空気流を形成する。フィルタは、第1通過部と、第2通過部と、フィルタ仕切部とが一体に形成されている。第1通過部は、通過する空気をフィルタリングする。第2通過部は、流体を通過させる。フィルタ仕切部は、第1通過部と第2通過部とを仕切っており、空気を通過遮断している。下流部材は、フィルタの後方に配置され、フィルタ仕切部の空気流の方向に略垂直な面の形状に対応する形状であってフィルタ仕切部に後方から当接している。ここで、フィルタの第1通過部は、前方から後方に向けて空気が通過する。そして、フィルタの第2通過部は、後方から前方に向けて流体が通過する。ここでの流体としては、例えば、ビタミン含有流体や、活性種含有流体等が含まれる。
【0008】
ここでは、1つのフィルタにおいて第1通過部と第2通過部とが設けられ、これらがフィルタ仕切部によって仕切られており、通過する空気流を両方向とすることができる。
【0009】
これにより、前方から後方に対する流れに対してフィルタ機能を発揮しつつ、流体を後方から前方へと導くことが可能になる。
【0010】
第2発明に係る空気清浄機は、第1発明に係る空気清浄機であって、フィルタ仕切部と、下流部材とによって仕切流路を形成する。第2通過部は、仕切流路を通過した流体が後方から前方へ通過する。
【0011】
ここでは、後方において流路が設けられていることで、前方から後方に向けて流れる空気流と、後方から前方に向けて流れる流体の流れとを、より確実に仕切ることが可能になる。
【0012】
第3発明に係る空気清浄機は、第1発明または第2発明に係る空気清浄機であって、第2通過部は、フィルタにおいて略均一に設けられている。
【0013】
ここでは、前方に送られた流体は、第1通過部を均等に通過することができ、空気清浄処理において均等に利用することが可能になる。
【0014】
第4発明に係る空気清浄機は、第1発明から第3発明のいずれかに係る空気清浄機であって、線状電極および線上電極の近傍に位置する対向電極とを有する活性種生成部をさらに備えている。そして、第2通過部を通過する流体は、活性種生成部によって生成された活性種である。
【0015】
ここでは、第2通過部を介して前方に活性種を送ることで、活性種は、第1通過部を通過することができ、空気清浄効果を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
第1発明の空気清浄機では、前方から後方に対する流れに対してフィルタ機能を発揮しつつ、流体を後方から前方へと導くことが可能になる。
【0017】
第2発明の空気清浄機では、前方から後方に向けて流れる空気流と、後方から前方に向けて流れる流体の流れとを、より確実に仕切ることが可能になる。
【0018】
第3発明の空気清浄機では、前方に送られた流体を、空気清浄処理において均等に利用することが可能になる。
【0019】
第4発明の空気清浄機では、第2通過部を介して前方に活性種を送ることで、空気清浄効果を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明に係る空気清浄機の実施形態について説明する。
【0021】
[空気清浄機1の構成]
本発明の一実施形態に係る空気清浄機1を図1に示す。この空気清浄機1は、室内の空気を清浄に保ち室内の快適性を向上させるために、室内の床に設置される床置き型空気清浄機である。空気清浄機1は、本体部2とストリーマ放電ユニット63(図8、図9参照)とを備える。本体部2は、前後に分割可能とされており、後側に第1本体部3が設けられ、前側に第2本体部4が設けられる。ストリーマ放電ユニット63は、正面視において、本体部2の右上方に、前後方向に延びるように位置している。
【0022】
<第1本体部3>
第1本体部3は、図4に示すように、第1本体ケーシング11、ファンモータ30、送風ファン31(送風装置)、ユニット収納部B、光触媒フィルタ43(図5参照)、プラズマ触媒フィルタ44(図5参照)を有する。なお、図4は、光触媒フィルタ43およびプラズマ触媒フィルタ44が取り外された状態の第1本体部3の正面図である。
【0023】
〔第1本体ケーシング11〕
第1本体ケーシング11は、ファンモータ30、送風ファン31、ユニット収納部B、光触媒フィルタ43、プラズマ触媒フィルタ44等を内部に収納しており、図1、図3に示すように、吹出口12と、下方吸込口13と、側面吸込口14とを有している。吹出口12は、第1本体ケーシング11の上面部の背面側端部に設けられる。吹出口12は、清浄化された空気を空気清浄機1から上方に向かって吹き出すための開口である。下方吸込口13と側面吸込口14とは、室内の空気を空気清浄機1内に吸い込むための略矩形の開口である。下方吸込口13は、吹出口12が設けられる面と同じ第1本体ケーシング11の下方の正面側端部に設けられる。下方吸込口13の横方向の長さは、正面パネル21の横方向の長さと略同一である。側面吸込口14は、第1本体ケーシング11の左右の側面部の正面側にそれぞれ設けられる一対の開口である。
【0024】
なお、第1本体ケーシング11は、後述する前面パネル21と共に、本体ケーシング6を構成している。本体ケーシング6の内部には、吸込口13,14,22を通って室内から吸い込まれ、空気清浄ユニット40において清浄化され、吹出口12から室内へと吹き出される空気が通るメイン空気流路と、吹出口12近傍における空気を上流側に戻すバイパス空気流路と、が設けられており、図3、図4および図6(a)、(b)、(c)において示すように、このメイン空気流路を流れるメイン空気流F1およびバイパス空気流路を流れるバイパス空気流F2が送風ファン31によって生成される。ここで、図6(a)は空気清浄機1の正面概略図、図6(b)は空気清浄機1の右側面概略図、図6(c)は空気清浄機1の上面概略図をそれぞれ示している。
【0025】
なお、送風ファン31よりも上流側においては、メイン空気流路は概ね前方から後方に向けて流れており、以下、「前方」とは「メイン空気流路のメイン空気流の流れ方向における上流側」を意味し、「後方」とは「メイン空気流路のメイン空気流の流れ方向における下流側」を意味する。すなわち、バイパス空気流路を流れるバイパス空気流は、概ね、後方から前方に向けて流れていることになる。
【0026】
ここで、図3、図4および図6(a)、(b)、(c)において示すように、メイン空気流路を流れるメイン空気流F1は、下方吸込口13および側面吸込口14から吸い込まれた空気を清浄化させて、吹出口12から吹き出す空気流である。また、バイパス空気流路を流れるバイパス空気流F2は、吹出口12の近傍において上方に流れ、ストリーマ放電ユニット63が収納するユニット収納部Bに収納された状態で後方から前方に向けて流れ、後述するプラズマイオン化部42において正面略中央近傍まで流れた後、下降していき、後述するプレフィルタ41の前方まで導かれる。
【0027】
〔送風ファン31およびファンモータ30〕
図4、図5に示す送風ファン31およびファンモータ30は、メイン空気流路を流れるメイン空気流F1およびバイパス空気流路を流れるバイパス空気流F2を生成する。送風ファン31としては、遠心ファンを採用している。このため、送風ファン31は、回転軸方向から空気を吸い込み、回転中心から半径方向外側に向かって空気を吹き出す。ファンモータ30は、送風ファン31を回転駆動する。ファンモータ30としては、インバータ回路により周波数制御されるインバータモータを採用している。
【0028】
送風ファン31の上流側の第1空間には、後述する空気清浄ユニット40(図5参照)が収納される。送風ファン31の下流側の第2空間には、ファンモータ30、送風ファン31および送風ファン31の側面、すなわち、送風ファンの回転軸を中心とする円周方向に沿って形成されたスクロール52が収納されている。そして、送風ファン31から吹き出される空気が、スクロール52に沿って吹出口12から室内へ送り出される。
【0029】
〔光触媒フィルタ43〕
光触媒フィルタ43は、図5に示すように、プリーツ状に形成されており、静電フィルタおよびチタンアパタイト担持フィルタを張り合わせて形成されている。なお、この光触媒フィルタ43は、静電フィルタが前側に、チタンアパタイト担持フィルタが後側に面するように配置される。静電フィルタは、後述するプラズマイオン化部42を通過する際に帯電させられた塵埃などを吸着する。チタンアパタイト担持フィルタは、静電フィルタを通過した塵埃などを吸着する。このチタンアパタイト担持フィルタは、プレフィルタ41と同様に、チタンアパタイトを担持させたPPの繊維から形成されている。なお、チタンアパタイトとは、カルシウムヒドロキシアパタイトの一部のカルシウム原子がイオン交換などの手法によってチタン原子に置換されたアパタイトである。このチタンアパタイトは、塵埃などに含まれるウィルスやカビ菌、細菌などを特異的に吸着する性質を有する。そして、このチタンアパタイトは、後述するストリーマ放電ユニット63から供給される活性種により光触媒機能が活性化され、ウィルスやカビ菌、細菌などを不活化または死滅させる。
【0030】
また、この光触媒フィルタ43は、プリーツ状に形成されているため、折り目に合わせて容易に折り畳むことが可能である。このため、図2に示すように、光触媒フィルタ43は、折り畳んだ状態で、上方に形成された交換用フィルタ収納部Aに収納される。
【0031】
〔プラズマ触媒フィルタ44〕
プラズマ触媒フィルタ44は、送風ファン31の前方であり、且つ、光触媒フィルタ43の後方に配置されている。すなわち、プラズマ触媒フィルタ44は、送風ファン31と光触媒フィルタ43との間に配置されている。プラズマ触媒フィルタ44には、アナターゼ型の二酸化チタンが担持されている。プラズマ触媒フィルタ44では、光触媒フィルタ43に吸着されなかった空気中のウィルスや菌などを吸着する。このプラズマ触媒フィルタ44では、吸着された菌やウィルスなどが活性種により活性化された二酸化チタンによって死滅あるいは不活化される。
【0032】
〔ユニット収納部B〕
ユニット収納部Bは、図7に示すように、ストリーマ放電ユニット63を取り外し自在に収納し、バイパス空気流F2の流れるバイパス空気流路の一部を構成する。このユニット収納部Bは、ユニット収納本体B1と、ユニット収納本体B1に対して開閉自在に取り付けられるカートリッジ収納部B2と、によって構成されている。
【0033】
このカートリッジ収納部B2には、脱臭触媒カートリッジ49が収納される。このカートリッジ収納部B2は、図7に示すように、開閉部を開けた状態で、脱臭触媒カートリッジ49を交換することが可能になっている。カートリッジ収納部B2は、脱臭触媒カートリッジ49が収納されて閉じた状態において、ユニット収納本体B1のバイパス空気流路と空気の往来が可能となるように、脱臭用開口BOが設けられている。これにより、バイパス空気流路を流れる空気を対象として臭気成分を吸着して分解することで、脱臭する。
【0034】
ユニット収納本体B1には、ストリーマ放電ユニット63が取り付けられた状態において電気的に接続させて通電状態となるように本体側接触子75a、75bが設けられている。この本体側接触子75a、75bは、金属板から形成されており、第1本体部3に収納された電源回路(図示せず)および電源コード(図示せず)を介して電源に接続される。これにより、本体側接触子75a、75bは、長手方向におよび上下方向に離隔するようにして設けられており、後述する放電ユニット側接触子71と接触することによって、ストリーマ放電ユニット63側に電源からの電流を伝達する。ここで、本体側接触子75aは、後方側に位置してストリーマ放電電極70と接触し、本体側接触子75bは前方に位置してアース板73と接触することになる。なお、ユニット収納本体B1は、樹脂等の絶縁材料によって形成されている。
【0035】
<ストリーマ放電ユニット63>
ストリーマ放電ユニット63は、上述したように、第1本体部3の右上方のユニット収納部Bに収納されることで配置され、メイン空気流路の一部を形成する(図2および図4参照)。
【0036】
ストリーマ放電ユニット63は、図8および図9に示すように、放電ユニットケーシング69と、放電部83と、放電ユニット側接触子71、81と、を有しており、ストリーマ放電を生起させることにより、光触媒フィルタ43に供給する活性種を生成してバイパス空気流F2中に放出する。
【0037】
〔放電ユニットケーシング69〕
放電ユニットケーシング69には、放電部83が取り付けられる。放電ユニットケーシング69は、樹脂から形成された箱状の部材であり、ユニット収納部Bに合致する外形を有している。放電ユニットケーシング69は、上面および右側面が開口しており、放電部83の前方、後方、左側面、下面を覆っている。
【0038】
放電ユニットケーシング69は、図7に示すように、ユニット収納部Bの内部に挿入され、ユニット収納部Bに着脱自在に取り付けられる。放電ユニットケーシング69は、ユニット収納部Bに取り付けられることによって、ユニット収納部Bと共に放電部83の周囲を覆い、バイパス空気流路を形成する。
【0039】
放電ユニットケーシング69の背面の左側面(図9で示す上方)には、接触子カバー71G、81Gが長手方向におよび上下方向に互いに離隔するようにして、2箇所に設けられている。この接触子カバー71G、81Gは、ストリーマ放電ユニット63がユニット収納部Bに挿入される際に、ユニット収納部B側の部材とスライドすることで前後方向に挿入をガイドする機能を有している。
【0040】
放電ユニット側接触子71、81は、図9に示すように、それぞれ接触子カバー71G、81Gの位置に対応する位置に長手方向におよび上下方向に離隔するようにして設けられている。ストリーマ放電ユニット63が取り付けられた状態では、図9で示す左側は空気清浄機1の前方となり、右側が後方となる。放電ユニット側接触子71および放電ユニット側接触子81は、上述したように、接触子カバー71G、81Gによってガイドされつつ、ストリーマ放電ユニット63がユニット収納部Bに挿入された状態で、それぞれ本体側接触子75aおよび本体側接触子75bと接触する。
【0041】
また、放電ユニットケーシング69の下面の長手方向における中間部分には、複数の微少な孔77が設けられている。
【0042】
〔放電部83〕
放電部83は、ストリーマ放電を生起させる主要部であり、ストリーマ放電電極70と、アース板73とを有する。
【0043】
(ストリーマ放電電極70)
ストリーマ放電電極70は、金属板70’を切り起こした部分に取り付けられた端子で構成されており、放電電圧が印可されることによってアース板73との間にストリーマ放電を生じさせる。ストリーマ放電電極70および金属板70’は、2つの絶縁支柱71Pを介して放電ユニットケーシング69に対して、絶縁支柱71Pの内部を通っている螺子71S(2つ)によって螺着されている。2つの絶縁支柱71Pのうちの一方には、放電ユニット側接触子71と接触するようにして螺着されている。これにより、ストリーマ放電ユニット63がユニット収納部Bに取り付けられて、放電ユニット側接触子71が本体側接触子75aと接触した状態では、放電ユニット側接触子71が螺子71Sを介してストリーマ放電電極70と電気的に接続された状態になる。これにより、放電ユニット側接触子71は、本体側接触子75aからストリーマ放電電極70に放電電圧を伝達することができる。
【0044】
(アース板73)
アース板73は、金属板から形成されており、ストリーマ放電電極70の金属板70’よりも大きな略長方形の外形を有する。アース板73は、ストリーマ放電電極70に対して平行に配置されており、ストリーマ放電電極70の近くに離れて配置されている。アース板73は、2つの絶縁支柱81Pを介して放電ユニットケーシング69に対して、絶縁支柱81Pの内部を通っている螺子81S(2つ)によって螺着されている。2つの絶縁支柱81Pのうちの一方には、放電ユニット側接触子81と接触するようにして螺着されている。これにより、ストリーマ放電ユニット63がユニット収納部Bに取り付けられて、放電ユニット側接触子81が本体側接触子75bと接触した状態では、放電ユニット側接触子81が螺子81Sを介してアース板73と電気的に接続された状態になる。
【0045】
上述したように、ストリーマ放電電極70に対応する本体側接触子75aが本体の後方に位置することから、ユーザの手が届きにくくなっており、安全性が確保されている。また、ストリーマ放電電極70およびアース板73は、それぞれ絶縁支柱71P、81Pを介して樹脂で成形された放電ユニットケーシング69に固定されているため、絶縁性が確保されている。
【0046】
なお、以上の構成において、放電ユニットケーシング69は、ストリーマ放電電極70およびアース板73が配置される空間と、放電ユニット側接触子71、81の接点が配置される空間との間を仕切っている。これにより、放電ユニット側接触子71、81の接点は、ストリーマ放電電極70およびアース板73が配置された空間から仕切られた空間に配置される。
【0047】
以上のようにして、ストリーマ放電電極70から発生される活性種は、バイパス空気流路を流れるバイパス空気流に対して放出される。このストリーマ放電ユニット63において放出された活性種は、後述するプラズマイオン化部42の上面ガイド42Gおよび前面ガイド42Hを流れ、プレフィルタ41の前方に供給される。
【0048】
<第2本体部4>
第2本体部4は、図1、図2および図5に示すように、第1本体部3の前面に着脱自在に取り付けられる。第2本体部4は、正面パネル21、プレフィルタ41(図5参照)、プラズマイオン化部42(図5参照)を有している。
【0049】
〔正面パネル21〕
正面パネル21は、第2本体部4の前面に設けられている。この正面パネル21の高さは、空気清浄機1の奥行きより長い構成となっている。また、ここでは、人間の動きを検知して、ON/OFF等を制御するために用いられる人検知センサ(図示せず)による検知が可能なように、半透明部Sが設けられている。
【0050】
〔プレフィルタ41〕
図5および図12に示すように、プレフィルタ41は、フィルタ部41aと、仕切通気部41bとが設けられている。
【0051】
フィルタ部41aは、正面パネル21の後方に設けられており、比較的大きなホコリや塵を除去する。フィルタ部41aは、ポリプロピレン(以下、PPという)製の糸状の樹脂網からなるネットと、ネットを保持するフレームとから構成されている。フィルタ部41aのネットを構成する繊維には、可視光線型の光触媒とカテキンとが空気側に露出するように担持されている。可視光線型の光触媒は、可視光線により光触媒作用が活性化される酸化チタン等を含んでおり、フィルタ部41aに付着する塵埃などに含まれるカビ菌や細菌などの菌やウィルスを除去する。なお、カテキンは、ポリフェノールの一種であって、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどの総称である。このカテキンは、フィルタ部41aに付着する塵埃などに含まれるカビ菌や細菌などの菌の繁殖を抑制したりウィルスを不活化したりする。
【0052】
仕切通気部41bは、図12に示すように、プレフィルタ41の中央に上下に渡って、左右のフィルタ部41aを仕切るようにして設けられている。この仕切通気部41bは、前後方向に貫通した孔41Oを複数有している。
【0053】
〔プラズマイオン化部42〕
図1に示すように、プラズマイオン化部42は、プレフィルタ41の後方に設けられ、第2本体部4の背面に設けられる。プラズマイオン化部42は、プレフィルタ41を通過した空気中に浮遊している比較的小さな塵埃を耐電させる。プラズマイオン化部42は、図10に示すように、主に、一対の対向電極21、22、複数のイオン化線66(線状電極部)、を有している。また、図10においては、複数のイオン化線66のうち一部のイオン化線66のみに符号を付して他は省略している。
【0054】
(対向電極21、22)
一対の対向電極21、22は、図10に示すように、方形波形状の断面を有する金属板であって、上下に分かれて取り付けられている。対向電極21、22は、イオン化線66に近接して配置されており、イオン化線66に高圧電流が流されることにより、イオン化線66との間にコロナ放電を生起させる。
【0055】
(イオン化線66)
複数のイオン化線66は、対向電極21,22と共に、プレフィルタ41を通過した空気中に浮遊している比較的小さな塵埃を耐電させる役割を担う。イオン化線66は、対向電極21、22の前方に配置されている。このイオン化線66に放電電圧が印可されることによって、イオン化線66と対向電極21、22との間にコロナ放電が生じる。イオン化線66は、空気経路に交差するように配置されており、空気経路を通過する空気流中に配置される。また、イオン化線66は、鉛直方向に平行に設けられており、複数のイオン化線66が水平方向に複数本並んで配置されている。これらのイオン化線66は、微小径のタングステン線材などによって形成され、塵埃等を帯電させるための放電電極として用いられる。
【0056】
(上面ガイド42G、前面ガイド42H)
図11に示すように、プラズマイオン化部42の上面には、左右に長く下方に窪んだ溝である上面ガイド42Gが形成されている。この上面ガイド42Gは、プラズマイオン化部42が第1本体部3に取り付けられることで、第1本体部3によって上面が覆われ、バイパス空気流路の一部を構成する。この上面ガイド42Gの右側は、上述したユニット収納部Bの前面側の開口部分から活性種を含んだバイパス空気流F2が流れ込むようになっている。そして、このように流れ込んだバイパス空気流F2は、上面ガイド42Gの中央近傍から下方に向かって流れる。
【0057】
また、図10、図13および図14に示すように、プラズマイオン化部42の前面の中央近傍には、上下に渡って後方側に窪んで設けられた溝および縁において前面側に突出したリブ43Rによって構成される前面ガイド42Hが設けられている。この前面ガイド42Hは、上述したプレフィルタ41の仕切通気部41bの輪郭に対応した形状を有している。そして、図12に示すように、プラズマイオン化部42のリブ43Rに対してプレフィルタ41の裏面が当接し、プレフィルタ41の仕切通気部41bと前面ガイド42Hとの間でバイパス空気流路が形成され、上面ガイド42Gからのバイパス空気流が下方に向かう。
【0058】
この際、前面ガイド42Hを通過する活性種を含んだ空気によるバイパス空気流F2は、図13に示すように、仕切通気部41bの孔41Oを介して、フィルタ部41aの前方に向けて放出される。
【0059】
なお、プラズマイオン化部42に設けられているリブ43Rは、図13および図14に示すように、仕切通気部41bの膨出部分の一部に対応する部分は、後方に向けて窪んでいる窪み部44Rが設けられている。これにより、活性種を含んだバイパス空気流F2の一部は、プレフィルタ41の下流側にも提供されることになり、プレフィルタ41の後方の清浄部に対しても十分に活性種を提供できる。
【0060】
[空気清浄ユニットによる空気清浄作用]
この空気清浄機1は、図5に示すように、プレフィルタ41、プラズマイオン化部42、光触媒フィルタ43およびプラズマ触媒フィルタ44からなる空気清浄ユニット40(空気清浄部)およびストリーマ放電ユニット63を備えており、各吸込口(下方吸込口13、側面吸込口14)から吸い込まれた室内の空気中に含まれる異物を除去して空気を清浄化する。以下、空気清浄ユニット40による空気清浄作用について説明する。
【0061】
下方吸込口13、側面吸込口14から吸い込まれた室内の空気は、まずプレフィルタ41のフィルタ部41aを通る。この際、比較的大きなホコリや塵が空気中から除去される。また、プレフィルタ41に含まれる光触媒とカテキンとの作用により、プレフィルタ41のフィルタ部41aに付着した塵埃などに含まれるカビ菌や細菌などの菌やウィルスの繁殖が抑制され、ウィルスが不活化される。
【0062】
プレフィルタ41を通過した空気流は、イオン化線66と対向電極21、22との間を通過する。イオン化線66と対向電極21、22との間に高電圧が印加されると、イオン化線66と対向電極21、22との間に放電が生じる。この結果、イオン化線66と対向電極21、22との間を通過する空気流に含まれる塵埃等がプラス電荷に帯電する。
【0063】
イオン化線66と対向電極21、22との間を通過した空気流は、光触媒フィルタ43を通過する。このとき、静電フィルタによって、プラズマイオン化部42を通過する際に帯電させられた塵埃などが吸着される。また、チタンアパタイト担持フィルタによって、静電フィルタを通過した塵埃などが吸着される。なお、イオン化線66と対向電極21、22とを通過した際に、塵埃に含まれるウィルスや菌なども帯電されているため、チタンアパタイトへのウィルスや菌の吸着効率が高まっている。
【0064】
光触媒フィルタ43を通過した空気流は、プラズマ触媒フィルタ44を通過する。プラズマ触媒フィルタ44では、光触媒フィルタ43に吸着されなかった空気中のウィルスや菌などが吸着される。
【0065】
プラズマ触媒フィルタ44を通過して、清浄化されたメイン空気流F1は、吹出口12から室内へと吹き出される。また、プラズマ触媒フィルタ44を通過した空気の一部は、室内へと吹き出されることなく、バイパス空気流路に向けてバイパス空気流F2となって流れる。
【0066】
バイパス空気流路には、上述したように、ストリーマ放電ユニット63が設けられている。ストリーマ放電ユニット63においては、ストリーマ放電電極70とアース板73との間に直流、交流、またはパルスの放電電圧が印加され、ストリーマ放電電極70とアース板73との間にストリーマ放電が生じる。ストリーマ放電が生じると、放電場に低温プラズマが生成され、活性種が放電ユニットケーシング69内に生起し、バイパス空気流F2中に放出される。なお、これらの活性種は、エネルギーレベルが非常に高く、光触媒フィルタ43に到達する前であっても、空気に含まれるアンモニア類や、アルデヒド類、窒素酸化物など小さな有機分子を分解・消臭する能力を有する。
【0067】
ここで、ストリーマ放電電極70近傍を通過する空気は、プレフィルタ41、プラズマイオン化部42、光触媒フィルタ43およびプラズマ触媒フィルタ44において一端清浄化されている。このため、ストリーマ放電電極70の端子部分に集塵や硝酸アンモニウム等が付着してしまうことを防ぐことができる。これにより、ストリーマ放電を安定的に発生させることができる。
【0068】
このようにして活性種を含有したバイパス空気流F2は、バイパス空気流路を通過して、プレフィルタ41の前方および後方に提供され、プレフィルタ41に付着した塵埃等に作用して清浄化させることができる。
【0069】
そして、活性種を含んだ空気は、イオン化線66と対向電極21、22との間を通過し、光触媒フィルタ43を通過する。このとき、静電フィルタによって、プラズマイオン化部42を通過する際に帯電させられた塵埃などが吸着されている。そして、チタンアパタイト担持フィルタによって、静電フィルタを通過した塵埃などが吸着されるこの際、チタンアパタイトは、ストリーマ放電ユニット63から供給された活性種により光触媒機能が活性化されており、ウィルスやカビ菌、細菌などを不活化または死滅させることができる。
【0070】
さらに、プラズマ触媒フィルタ44では、光触媒フィルタ43に吸着されなかった空気中のウィルスや菌などが吸着されており、活性種を含んだ空気により活性化された二酸化チタンによって、これらの菌やウィルスなどが死滅あるいは不活化される。
<本実施形態の空気清浄機1の特徴>
本実施形態の空気清浄機1は、プレフィルタ41のフィルタ部41aを前方から後方に向けて通過するメイン空気流F1と、プレフィルタ41の仕切通気部41bの孔41Oを後方から前方に向けて通過するバイパス空気流F2との、向きの異なる2つの空気流を1枚のプレフィルタ41において通過させることができる。
【0071】
これにより、活性種をメイン空気流F1によって、空気清浄ユニット40に対して均一に送ることができる。
<本実施形態の空気清浄機の変形例>
(A)
上記実施形態の空気清浄機1では、プレフィルタ41の上流側に供給する対象として活性種を例に挙げて説明した。
【0072】
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、プレフィルタ41の上流側に供給する対象を、加湿空気とした空気調和装置に採用してもよい。具体的には、室外機に設けられた水分の吸着成分であるゼオライトを担持したフィルタにおいて外気中の水分を凝縮し、この凝縮水分を室内機のプレフィルタから上流側へ噴出すように運び、加湿された空気を吸い込み空気に混ぜて、室内熱交換器によって温度調節し、加湿されて温度調節された空気を室内に供給するようにしてもよい。これにより、ユーザが給水することなく、快適な湿度、温度および清浄度の室内環境を提供できる。
【0073】
なお、空気清浄処理によって吸収されてしまうことのないような、ビタミン成分等をバイパス空気流路において提供するようにしてもよい。
【0074】
(B)
上記実施形態の空気清浄機1では、吹出口12近傍から流れ出ようとする空気のうちの一部がバイパス空気流F2となってユニット収納部Bの開口を通じてストリーマ放電ユニット63に供給される場合について例に挙げて説明した。
【0075】
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、送風ファン31から吹出口12に向かう通路とは別個に、図15に示すように、送風ファン31からの空気流れを直接ユニット収納部Bおよびストリーマ放電ユニット63に供給できる延出通路Dを採用した構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明を利用すれば、1つのフィルタを通過する空気流れを両方向とすることができるため、特に、1つのフィルタにおいて2つの流れを形成することが求められる空気清浄機に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態に係る空気清浄機の外観斜視図である。
【図2】正面パネルを取り除いた状態での空気清浄機の外観斜視図である。
【図3】空気清浄機の背面側の外観斜視図である。
【図4】空気清浄機のファンの位置を示す図である。
【図5】メイン空気流とバイパス空気流による空気清浄の説明図である。
【図6】(a)メイン空気流路とバイパス空気流路を示す正面図である。
【0078】
(b)メイン空気流路とバイパス空気流路を示す側面図である。
【0079】
(c)メイン空気流路とバイパス空気流路を示す上面図である。
【図7】ユニット収納部の構成図である。
【図8】ストリーマ放電ユニットの外観斜視図である。
【図9】ストリーマ放電ユニットの上面視断面図である。
【図10】プラズマイオン化部の背面斜視図である。
【図11】プラズマイオン化部の上面図である。
【図12】プラズマイオン化部にプレフィルタが装着された際の正面図である。
【図13】プレフィルタの要部拡大図である。
【図14】プラズマイオン化部の要部拡大図である。
【図15】変形例(B)に係る延出通路を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 空気清浄機
31 送風ファン
41 プレフィルタ
41a フィルタ部(第1通過部)
41b 仕切通過部(フィルタ仕切部)
41O 孔(第2通過部)
42 プラズマイオン化部(下流部材)
42 光触媒フィルタ
44 プラズマ触媒フィルタ
63 ストリーマ放電ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間の空気を通過させて清浄化させる空気清浄機(1)であって、
対象空間の空気を対象として上流から下流に向かう空気流を形成する送風部と、
通過する空気をフィルタリングする第1通過部と、流体を通過させる第2通過部と、前記第1通過部と前記第2通過部とを仕切っており空気の通過を遮断するフィルタ仕切部と、が一体に形成されているフィルタと、
前記フィルタの下流に配置され、前記フィルタ仕切部の空気流方向に略垂直な面の形状に対応する形状であって前記フィルタ仕切部に下流から当接している下流部材と、
を備え、
前記フィルタの前記第1通過部は、上流から下流に向けて空気が通過し、
前記フィルタの前記第2通過部は、下流から上流に向けて流体が通過する、
空気清浄機(1)。
【請求項2】
前記フィルタ仕切部と、下流部材とによって仕切流路を形成し、
前記第2通過部は、前記仕切流路を通過した流体が下流から上流へ通過する、
請求項1に記載の空気清浄機(1)。
【請求項3】
前記第2通過部は、前記フィルタにおいて略均一に設けられている、
請求項2に記載の空気清浄機(1)。
【請求項4】
線状電極および前記線上電極の近傍に位置する対向電極とを有する活性種生成部をさらに備え、
前記第2通過部を通過する流体は、前記活性種生成部によって生成された活性種である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の空気清浄機(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−12060(P2008−12060A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185977(P2006−185977)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】