説明

空気清浄装置

【課題】 空気中の塵埃粒子を帯電させる荷電部と、前記荷電部の下流側に設けられた集塵部を備えた集塵装置において、集塵部の電極構造によって集塵能力を増大させる。
【解決手段】 空気中の塵埃粒子を帯電させる荷電部と、前記荷電部の下流側に設けられた集塵部を備えた集塵装置において、前記集塵部の上流側電極をプリーツ形状に形成して、上流側の凸部が切り欠かれた形状として、下流側電極はプリーツ形状に形成され、その下流側の凸部が切り欠かれた形状として、上流側電極と下流側電極で濾材を沿うように挟み込んで、ガス流に直交するように配設し、上流側電極の導電部と下流側電極の導電部に高電圧を印加することで、捕集能力を高めて塵埃の捕集容量を増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の浮遊微粒子をろ過し浄化する空気清浄装置に関し、特にその集塵部に関する。
【背景技術】
【0002】
空気清浄装置の集塵部に要求される内容は、微細な粒子が高効率で捕集できること、小型で薄く、低圧力損失であること、低ランニングコストであること等である。従来から行われている集塵方法については、フィルタに微細粒子を捕集する機械的な力を用いた方式と、電気集塵など静電気力を用いた方式に大別することができる。機械的に捕集する方法としては、HEPAフィルタに代表される高性能フィルタなどが、一般的に用いられている。これらは、数μmという極細繊維を幾重にも積層したもので、その繊維間に室内空気を通気させ、さえぎりや拡散、慣性衝突等の捕集機構により繊維上や繊維間に塵埃粒子を捕集するもので、その原理上、通気性が悪く非常に高い圧力損失であるので、これら高性能フィルタの通気量を確保するためには、ファンやモータなど送風系の大型化や、それに伴う騒音レベルの増大等の問題がある。一方、静電気力を用いた電気集塵方式については、原理上圧力損失は小さく、洗浄による再利用が可能などといった特徴があるものの、機械的に捕集する高性能フィルタなどと比較すると捕集能力や捕集量については必ずしも高くはない。
電気集塵による捕集能力を高めるには、塵埃粒子を帯電させ荷電粒子とし、その荷電粒子がガス流から輸送されることにより生じるガス流ベクトルに対して、荷電粒子を電界中に存在させて、電界の作用により生じる、吸引あるいは反発するベクトルと、ガス流ベクトルとの合成ベクトルとなる方向へ、効率良く荷電粒子を導き、ガス流から分離して捕集することが重要であり、捕集能力や捕集容量の向上をねらって様々な工夫がなされているのが現状である。
【0003】
従来の電気集塵方式の一例を、特許第332868号の構造図を図5に示す。この発明の集塵部構造に注目すると、ガス流の上流側に荷電部1を設け、その下流側に配する集塵部6として、孔径2mmでパンチング加工し通気性を持たせた0.6mmのステンレス製の板を折り角度60°で折り高さを7mmとして、くの字形状に連続して屈折させてプリーツ形状として接地させたプリーツ電極23とし、ガス流15に直交するように配して、プリーツ電極23の上下流の凹部には、それぞれ0.3mmのステンレスの帯状板をシリコーンでコーティングし絶縁して、その形状をプリーツ電極の凹部と密着するように、半径1mmの形状とした捕集用電極20、21をガス流15と平行する形で配置して、上流側捕集電極20と下流側捕集電極21には荷電部1の放電極2に印加される電圧極性とは逆の極性の高電圧を印加してなされている。この発明によれば、荷電部1で負に荷電された塵埃粒子は荷電粒子となり、プリーツ電極23と上流側捕集電極20とがなす電界作用を受け異極性である上流側捕集電極20へと向かい捕集され、下流側捕集用電極21においては、ガス流15がプリーツ電極23を通過する事で、ガス流15の一部が捕集電極方向へと傾き偏向されるので、ガス流15中に含まれる荷電粒子も下流側捕集電極方向21へと向かって進行すると同時に、荷電粒子は下流側捕集用電極21とプリーツ電極23とがなす電界の作用により下流側捕集用電極21へと向かうクーロン力を受けるので、効率良く下流側捕集電極21に導かれ下流側捕集電極21上に捕集されるという構造が提案されている。
【0004】
さらに、特公開2004−33944における発明では、図6に示すように荷電部1の下流側に設ける集塵部6を、導電性があり通風孔を備えた上流側電極板24、下流側電極26を絶縁被膜で絶縁して、フィルタ部材25を挟み込むように配しお互いの電極の通風孔27を相互にずらしてガス流15に直交するように配置され形成しており、上流側電極板24は接地して下流側電極板26は荷電部1の放電極2に印加される電圧極性と同じ極性の高電圧を印加した構造としている。
【0005】
この方法によれば、集塵部上流側の荷電部1で帯電した塵埃粒子は荷電粒子となりガス流15により集塵部6へと導かれ、まず上流側電極板24に付着し捕集され、それを通過した荷電粒子はフィルタ部材内25へと侵入する。フィルタ部材25はフィルタ自身の機械的な捕集機構によって捕集されるとともに、電極間の強い電界によってフィルタ部材25の繊維を誘電分極させ、負に分極した部分に正に帯電した荷電粒子が付着し捕集される。さらに、上流側電極板24の通風孔27と下流側電極板26の通風孔27の位置がずれているため、フィルタ部材26内に流入したガス流内の荷電粒子は、下流側電極板26の通風孔27へと傾いて偏向されて流れ、さらに下流側電極板27から上流側電極板25へと生じる電界の作用によりガス流15とは逆方向に作用することとなるので、荷電粒子がフィルタ部材26内に滞留する時間が長くなり、下流側電極板27から作用する電界によって、荷電粒子の移動速度が低下し、フィルタ部材25に付着する確立を増大させ捕集効率を向上させることができるという構造が提案されている。
【特許文献1】特許第332868号公報
【特許文献2】特公開2004−33944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許第332868号においては、くの字状に屈折されたプリーツ電極23の凹部に配される捕集用電極20,21とプリーツ電極23とがなす空間距離が、プリーツ電極23の凸部に向かうにつれて大きくなり、それにつれてプリーツ電極23と捕集用電極20,21とで形成される電界が弱まってゆくこととなる。その結果、捕集用電極20,21の塵埃粒子捕集領域が電界の働きが強いプリーツ電極23の凹部付近に集中してしまうこととなり、捕集用電極20,21の表面積を有効的に利用できないという課題があった。例えば使用期間や使用場所による、発生塵埃の種類や大きさによっては、捕集用電極20,21の捕集容量を超えてしまうことがあるので、それらに合わせてメンテナンス周期を短くする等の対策の必要があり、そのため、ランニングコストが高くなる等の問題があった。この弱点を補うために、プリーツ電極23のピッチを小さくし凹部を増やして捕集用電極20,21の枚数を増やし、表面積を大きくし、捕集容量を大きくする方法があるが、ピッチを小さくするとプリーツ電極23と捕集用電極20,21との間で生じる構造的な圧力損失が大幅に増加してしまうので、捕集用電極20,21の枚数を増やすには限界があった。
【0007】
特公開2004−33944においては、集塵部6の開口面積に等しい面積である上流側電極板24と下流側電極板26との間に、フィルタ部材25を挟み込むようにして、ガス流15に直交して配されているので、ガス流15が大きい場合には、電界の働く上流側電極板24と下流側電極26の間に、荷電粒子が滞在する時間が短くなり、荷電粒子に電界の働きを十分に作用させることができず、荷電粒子をガス流15から分離し、フィルタ部材25もしくは、上流側電極板24へと効果的に捕集することができない場合があった。またその構造のために、フィルタ部材25の表面積を開口面積より大きくして、低圧損化を図るということができず、それ自身の捕集性能が高く圧力損失も高いフィルタ部材25を使用することができなかった。また、粉塵などの大粒径の塵埃を対象とする場合には、上流側電極板24に捕集される割合が高くなり、粉塵が上流側電極24の上流側表面に大量に堆積してしまい、場合によっては堆積した塵埃が落下するなど課題があった。
本発明ではこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、荷電粒子に対して効果的に電界を作用させ、より高い捕集性能を持たせるとともに、捕集面積を増加して、粉塵の捕集容量を大きくするとともに、それらを低い圧力損失で実現することが可能な空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。請求項1記載の発明は、空気中の粉塵に帯電させる荷電部と、前記荷電部の下流側に設けられた集塵部を備えた空気清浄装置において、前記集塵部の上流側電極は導電性のある物質を絶縁物で覆いプリーツ形状に形成し、その上流側の凸部が切り欠かれた形状であり、下流側電極は導電性のある物質を絶縁物で覆いプリーツ形状に形成され、その下流側の凸部が切り欠かれた形状となっており、上流側電極と下流側電極で濾材が両電極に沿うように挟み込んで、ガス流に直交するように配設し、上流側電極の導電部と下流側電極の導電部に高電圧を印加することを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記記載の集塵部において、上流側電極の稜線部と下流側電極の稜線部に通風孔を設け、その通風孔を相互にずらした位置に配置したことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記集塵装置は集塵部の上流側電極を、導電性のある物質を絶縁物で覆ったV字形状の電極の凸部をガス流の下流側に向けて、互いの端部が一致しないように、間隔を空けて複数個を連ねて配して、ガス流に直交するプリーツ形状を形成して、下流側電極は、導電性のある物質を絶縁物で覆ったV字形状の電極の凸部を上流側に向けて、互いの端部が一致しないように、間隔を空けて複数個を連ねて配し、ガス流に直交するプリーツ形状を形成して、上流側電極と下流側電極で濾材が両電極に沿うように挟み込んで、ガス流に直交するように配設し、上流側電極の導電部と下流側電極の導電部に高電圧を印加することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によると、装置の送風機などにより送風され生じるガス流が、コロナ放電を行っている荷電部を通過する過程で、ガス流に含まれる塵埃粒子が帯電し、荷電粒子となり、ガス流に乗り集塵部に到達すると、上流側電極の切り欠かれた上流側の凸部の通風孔より集塵部内へと侵入する。集塵部に侵入した荷電粒子は、集塵部に侵入する際に持つ移動速度が、通風孔付近から炉材の通気抵抗により一旦減速するので、荷電粒子の運動は、ガス流によるベクトルと、両電極間でなす電界の作用で、接地された異極性電極方向へと向かうベクトルとの合成ベクトルとなり、異極性電極方向へと向かい、ガス流から分離されてゆき、濾材繊維の表面もしくは、異極性電極表面に付着し効率良く捕集することができる。
さらに荷電粒子は、ガス流に乗り高い電界が働く上流側電極と下流側電極とで挟み込まれた濾材により形成されるガス流路を移動してゆく。この時の荷電粒子の運動は、ガス流によるベクトルと、両電極間でなす電界の作用により、接地された異極性電極の方向へと向かうベクトルとの合成ベクトルとなり、異極性電極方向へと、徐々にガス流から分離されてゆき、濾材繊維の表面もしくは、異極性電極表面に次第に付着してゆき捕集され、濾材自身の捕集能力も相まって、効率良く捕集される。
【0012】
このように荷電粒子を効率良く捕集できる電界の作用する領域で、ガス流路を形成しているので、ガス流が大きい場合でも、荷電粒子を長く電界の作用する領域に滞留させることができ、さらに高い電界を得るために高電圧を印加しても、上流側電極と下流側電極が互いに絶縁物で覆われているので、両電極間で洩れ電流や火花放電といった障害が発生しない。
また、ガス流路中において、荷電粒子が濾材を形成する複雑に絡んだ繊維の間を縫うように通過させることができるので、荷電粒子の移動行程を長くし、見かけ上の濾材内滞在時間を長くすることができるので、濾材7の繊維表面へ荷電粒子が捕集される確立を高くすることができ、さらに、集塵部をプリーツ形状にすることで、上流側電極、濾材、下流側電極の表面積を大きくすることができるので、塵埃粒子の捕集容量を大幅に増加させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によると、上流側電極の稜線部と下流側電極の稜線部に通風孔を設け、その通風孔を相互にずらした位置に配置してあるので、上流側電極と下流側電極の通風孔が増えることとなり、開口面積が大きくなり、集塵部の圧力損失を小さくすることができる。また、上流側電極稜線部通風孔から侵入したガス流がガス流路を横切るように進行し、その直線方向に位置する下流側電極稜線部に一旦干渉するので、荷電粒子の移動速度が小さくなるとともに、荷電粒子のガス流ベクトルが小さくなり、荷電粒子が電界の作用する領域に滞留する時間を長くできるので、濾材繊維の周囲に付着させる確立を高め、一方電界の作用により、接地された異極性電極へと向かうベクトルも効果的に働くこととなるので、荷電粒子の捕集確立を高めることができる。さらに、上流側稜線部通風孔より侵入したガス流は、下流側稜線部通風孔へと、上流側電極稜線部と下流側電極稜線部の間の電界が作用する領域を縫うように通気するので、荷電粒子は接地された異極電極表面近傍を移動し、荷電粒子と異極電極との距離が小さくなるので、電界の作用による異極性電極方向へと向かうベクトルがさらに効果を発揮して働き、荷電粒子を効率良くガス流から異極性電極方向へと分離し、異極性電極表面に付着させ、効率良く捕集することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によると、プリーツ状に形成された上流側電極を、前記集塵装置は集塵部の上流側電極は、導電性のある物質を絶縁物で覆ったV字形状の電極の、凸部をガス流の下流側に向けて、互いの端部が一致しないように、間隔を空けて複数個を連ねて配して、ガス流に直交するプリーツ形状を形成され、下流側電極は、導電性のある物質を絶縁物で覆ったV字形状の電極の、その凸部を上流側に向けて、互いの端部が一致しないように、間隔を空けて複数個を連ねて配し、ガス流に直交するプリーツ形状を形成され、上流側電極と下流側電極で濾材が両電極に沿うように挟み込んで、ガス流に直交するように配設し、上流側電極の導電部と下流側電極の導電部に高電圧を印加してあるので、プリーツ形状を形成する際に、特別な加工を行うことなく、隣り合うV字形状の電極の端面間により、上流側通風孔となるスリットを形成することができ、同様に下流側電極も隣り合うV字形状の電極の端面間で下流側通風孔となるスリットを形成できるので、それぞれの電極の凸部となる部位を切り欠くことなく通風孔を形成することができるので、電極の加工と形成工程が簡便になり、製品自身のコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図1から図4を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の空気清浄装置の第1実施例を示す空気清浄装置の側断面図であり、図2はその詳細断面図である。図1において、ガス流15の上流側より荷電部1と集塵部6を配し、ファンやモータなどの送風機はその下流側に配されるような構造となっている。荷電部1は、荷電部用高圧電源4より高電圧を印加されるワイヤー状の放電極2と、接地5に接続される金属製の平板形などの接地極3からなる。荷電部1では放電極2と接地極3との間で正のコロナ放電を生じさせて、送風機などにより発生したガス流が、荷電部1を通過する際に含まれる塵埃粒子を帯電させ、荷電粒子とするとともに、放電極2と接地極3の間で働く電界の作用により荷電粒子を接地極3へ導き捕集する。ここで、荷電部1には必ずしもワイヤー状の放電極を用いる必要はなく、侵入した塵埃粒子に対して、正の荷電を行える物であればどのようなものでもよい。
【0017】
荷電部1のガス流15の下流側には、本発明による集塵部6を配設している。本発明が従来の技術と異なる部分は、導電性のある物質を絶縁物で覆いプリーツ形状に形成され、ガス流に直交するように配された、上流側電極7の切り欠かれた上流側凸部が集塵部6へとガス流15が侵入する上流側通風孔10となっており、プリーツ形状に形成された下流側電極9の切り欠かれた下流側凸部がガス流15の排出される下流側通風孔11となっていて、ガス流15の通気するガス流路16を、上流側電極7に沿うように下流側電極9で挟み込まれる濾材7で形成し、上流側電極7の導電部を接地に接続し、下流側電極9の導電部に集塵部用高圧電源19より高電圧を印加する形とすることで、ガス流15が通気するガス流路16を、上流側電極7と下流側電極9とに沿うように挟み込まれた濾材7で形成し、そのガス流路16を通過する荷電粒子に電界の作用がなされるように構成したことである。
【0018】
図2を用いて詳細の説明をすると、上流側電極7と下流側電極9は、ステンレスやアルミ板等を絶縁処理したものや、シートに導電印刷し、ラミネート加工し絶縁して、高電圧を印加しても両電極間で洩れ電流や火花放電といった障害が発生しないようになっている。その絶縁処理方法については、印加する電極をシリコンに浸漬し硬化させ絶縁膜を形成する方法や、絶縁粉体を表面に付着させ、加熱し表面に絶縁膜を形成するような方法など、印加する高電圧に合わせた最適な絶縁方法を選択している。ガス流路16を形成する上流側電極7と下流側電極9のプリーツ形状は、折り角度38°折り高さは30mmとし、27mmピッチで加工している。ガス流路16の長さはおおよそ28mmであるが、ガス流15の大きさに合わせその長さを変えることはより好適である。ガス流路16の高さは、挟み込まれる濾材7の厚みとほぼ同じ2mmであり、ガス流15が上流側電極稜線部12と下流側電極稜線部13に沿って、挟み込まれる濾材7の表面もしくは、その中を透過するように、ガス流路16の上流側電極7と下流側電極9との空間距離は濾材7の厚みと等しくしている。上流側通風孔10と下流側通風孔11の高さは互いに約4mmとしており、上流側通風孔10と下流側通風孔11の形状を安定させるために、一定間隔でそれぞれの通風孔に格子を設けており、こうして形成される集塵部6の全体厚みは約32mmである。本実施例では、上流側電極7を接地させ、下流側電極9に集塵部用高圧電源19より3kvを印加し、両電極間に高い電界を生じさせている。印加電圧の極性について、本実施例とは逆に、上流側電極7に高電圧を印加し、下流側電極9を接地する場合は捕集性能が多少低下する傾向にある。また、荷電部1のコロナ放電の極性を負とする場合は、上流側電極7を接地5に接続し、下流側電極9に負の高電圧を印加することが望ましい。濾材7は、目付け量60g/m2で、10デニールが50%、細いもので2dが10%程度などで構成される非常に低圧損のものであり、主な用途としては換気扇用のフィルタなどとして使用されるようなもので、繊維の材質は一般的なポリエステルやポリスチレンなどを材料としたものである。
【0019】
このようにすることで、荷電粒子が、集塵部6に侵入する際に持つ移動速度が、通風孔付近から炉材17の通気抵抗により一旦減速するので、荷電粒子の運動は、ガス流15によるベクトルと、両電極間でなす電界14の作用で、接地された上流側電極20の方向へと向かうベクトルとの合成ベクトルとなり、上流側通風孔10の方向へと向かい、ガス流15から分離されてゆき、濾材7の繊維表面もしくは、上流側通風孔10の表面に付着し、効率良く捕集することができる。さらに荷電粒子は、ガス流15に乗り高い電界14が働く上流側電極7と下流側電極9とで挟み込まれた濾材7により形成されるガス流路16を移動してゆく。この時の荷電粒子の運動は、ガス流15によるベクトルと、両電極間でなす電界14の作用により、接地された上流側電極稜線部12の方向へと向かうベクトルとの合成ベクトルとなり、上流側電極稜線部12へと、徐々にガス流15から分離されてゆき、濾材7の繊維表面もしくは、上流側電極稜線部12表面に次第に付着してゆき捕集され、効率良く捕集される。このようにガス流路を、荷電粒子に効率良く電界の作用する領域で形成しているので、ガス流15が大きい場合でも、荷電粒子を長く電界の作用する領域に滞留させることができ、さらに高い電界を得るために高電圧を印加しても、上流側電極7と下流側電極9が互いに絶縁物で覆われているので、両電極間で洩れ電流や火花放電といった障害が発生しない。
【0020】
また、上流側電極7、濾材7、下流側電極9をプリーツ形状とすることで、集塵部6の表面積を大きくすることができるので、捕集面積の増加による捕集容量の大幅な増加が可能である。本実施例によれば、通風面積の約3倍の表面積となり、集塵部6における粉塵捕集容量を従来の約5倍とすることができる。この捕集容量が表面積と一致せず、大きくなる理由は、上流側電極7と下流側電極9に電圧を印加した場合に、濾材7の繊維周囲のほぼ全面に塵埃粒子が付着するのに対して、電圧を印加しない場合には、濾材繊維の上流側にのみにしか塵埃が付着しないことから、前に述べたような効果により、荷電粒子を濾材7へ付着させ、捕集できているからであると考えられる。また、路材17としてあらかじめ繊維が分極し、エレクトレット化された物を使用する場合は、より高い効果を得ることができる。また、ガス流路中において、荷電粒子が濾材8を形成する複雑に絡んだ繊維の間を縫うように通過させることができるので、荷電粒子の移動行程を長くし、見かけ上の濾材内滞在時間を長くすることができるので、濾材7の繊維表面へ荷電粒子が捕集される確立を高くすることができ、その濾材7の繊維表面積の効果による捕集容量の増加と、集塵部6をプリーツ形状にすることで、上流側電極7、濾材7、下流側電極9の表面積を大きくする効果が相まって、塵埃粒子の捕集容量を大幅に増加させることができる。
【0021】
これらの作用により、0.3μm大気塵の捕集効率は風速0.7m/s時において85%、さらに0.3m/s時においては94%と極めて高い捕集効率を示す。
一方、濾材7単体での捕集効率は3%以下であること、上流側電極7と下流側電極9の間に電圧を印加しない場合の捕集効率が50%程度であることを考えると、本実施例により低捕集性能濾材を極めて高い捕集性能で使用することができるといえる。
【実施例2】
【0022】
図3は、図1にある集塵部6の第2実施例を示す詳細断面図であり、荷電部1のガス流15の下流側に、本発明による集塵部6を配している。本発明が従来の技術と異なる部分の説明をすると、前記集塵部6の上流側電極7は導電性のある物質を絶縁物で覆いプリーツ形状に形成され、その上流側の凸部が切り欠かれた形状で、その上流側電極7の稜線部に通風孔を設けて上流側電極稜線部通風孔17として形成され、下流側電極9は導電性のある物質を絶縁物で覆いプリーツ形状に形成され、その下流側の凸部が切り欠かれた形状であり、その下流側電極9の稜線部に通風孔を設け下流側電極稜線部通風孔18として形成され、上流側電極7の上流側電極稜線部通風孔17と下流側電極9の下流側電極稜線部通風孔18を相互にずらした位置になるように、上流側電極7と下流側電極9で濾材7が両電極に沿うように挟み込んで、ガス流15に直交するように配設し、上流側電極7の導電部を接地に接続し、下流側電極9の導電部に正の高電圧を印加するように構成したことである。
【0023】
図1ないしは図3を用いて、その詳細を説明する。ガス流の上流側より荷電部1と集塵部6を配し、ファンやモーターなどの送風機はその下流側に配されるような構造となっている。荷電部1は、荷電部用高圧電源4より高電圧を印加されるワイヤー状の放電極2と、接地5に接続される金属製の平板形などの接地極3からなる。荷電部1では放電極2と接地極3との間で正のコロナ放電を生じさせて、送風機などにより発生したガス流15が、荷電部1を通過する際に含まれる塵埃粒子を帯電させ、荷電粒子とするとともに、放電極2と接地極3の間で働く電界の作用により荷電粒子を接地極3へ導き捕集する。ここで、荷電部1の放電極2はワイヤー状であっても、針状であってもよく、侵入した塵埃粒子に対して、正の荷電を行える物であれば、放電極2と接地極3の形状や関係は問わない。荷電部1の下流側に配される集塵部6の上流側電極7と下流側電極9は、ステンレスやアルミ板等を絶縁処理したものや、シートに導電印刷し、ラミネート加工し絶縁して、プリーツ形状にしたものであるが、その他絶縁処理については、印加するシリコンに浸漬し硬化させる方法や絶縁粉体を表面に付着させ、加熱し表面に膜を形成するような方法など、印加する高電圧に合わせた絶縁方法を選択すればよい。
【0024】
本実施例において、上流側電極7と下流側電極9のプリーツ形状は、折り角度38°折り高さは30mmとし、27mmピッチで加工している。ガス流路16の長さはおおよそ28mmである。上流側稜線部通風孔27は直径3mmの丸穴とし、下流側電極稜線部通風孔18も直径3mmとして、お互いの電極を組み合わせた時に、それぞれの通風孔のピッチが約8mm程度ずれるように、位置を設定しており、上流側電極7と下流側電極9の間で、濾材7を沿わせるように挟み込んで、ガス流に直交するように設置して、上流側電極7の導電部を接地に接続し、下流側電極9の導電部に集塵部用高圧電源19より導電部に正の高電圧を印加する形となっている。本実施例では、上流側電極7を接地させ、下流側電極9に集塵部用高圧電源19より3kvを印加し、両電極間に高い電界を生じさせている。印加電圧の極性について、本実施例とは逆に、上流側電極7に高電圧を印加し、下流側電極9を接地する場合は捕集性能が多少低下する傾向にある。また、荷電部1のコロナ放電の極性を負とする場合は、上流側電極7を接地5に接続し、下流側電極9に負の高電圧を印加することが望ましい。
【0025】
このように、集塵部6において、上流側通風孔10と下流側通風孔11に加えて、上流側電極稜線部通風孔17と下流側電極稜線部通風孔18と通風孔が形成されて、集塵部6の開口面積が大きくなるので、集塵部6の圧力損失を小さくすることができる。また、荷電部1により、塵埃粒子が帯電し、荷電粒子となってガス流15に乗り、集塵部に達すると、ガス流15は上流側通風孔10と上流側電極稜線部通風孔17へと分流して、集塵部6に侵入する。上流側電極稜線部通風孔17から侵入したガス流15は、ガス流路16を横切るように進行し、その直線方向に位置する下流側電極稜線部13に一旦干渉するので、荷電粒子の移動速度が小さくなるとともに、荷電粒子のガス流ベクトルが小さくなり、荷電粒子が電界の作用する領域に滞留する時間を長くすることができるので、荷電粒子が濾材7の繊維表面に付着させる確立を高め、一方電界の作用により、接地された上流側電極稜線部12へと向かうベクトルも効果的に働き、荷電粒子の捕集確立を高めることができる。他方、上流側通風孔10より集塵部6に侵入した、ガス流15に含まれる荷電粒子は、集塵部6に侵入する際に持つ移動速度が、通風孔付近から炉材17の通気抵抗により一旦減速するので、荷電粒子の運動は、ガス流15によるベクトルと、両電極間でなす電界14の作用で、接地された上流側電極20の方向へと向かうベクトルとの合成ベクトルとなり、上流側通風孔10の方向へと向かい、ガス流15から分離されてゆき、濾材7の繊維表面もしくは、上流側通風孔10の表面に付着し、効率良く捕集することができる。
【0026】
上流側電極稜線部通風孔17より侵入したガス流15は、下流側電極稜線部通風孔18へと、上流側電極稜線部12と下流側電極稜線部13の間の電界が作用する領域を縫うように通気することで、荷電粒子は接地された上流側電極稜線部12近傍を移動することとなるので、荷電粒子と上流側電極稜線部27との距離が小さくなり、荷電粒子に対し、電界の作用による、上流側電極稜線部12へと向かうベクトルの働きがさらに効果を発揮して、荷電粒子を効率良く、ガス流15から上流側電極稜線部27の方向へと分離し、異極性電極表面に付着させ効率良く捕集することができる。さらに、上流側電極稜線部通風孔17と下流側電極稜線部通風孔18の形状については、丸穴でも楕円でも多角形やスリット形状などでも良く、通風孔のピッチや大きさは、ガス流15の大きさや、濾材7の圧力損失、上流側稜線部22と下流側稜線部23の面積などにより、最適な大きさ、形状や孔数とすることが望ましい。
【実施例3】
【0027】
図4は第3実施例の構成を示す斜視図であり、図4(a)は第3実施例、図4(b)はその他の方法を示す。図において、前記、第1、第2実施例に述べた集塵部6の上流側電極7として、導電性のある物質を絶縁物で覆ったV字形状の電極の凸部を、ガス流の下流側に向けて、互いの端部が一致しないように、4mm程度の間隔を空けて複数個を連ねて配して、隣り合う電極間に上流側通風孔10となるスリットを形成したガス流に直交するプリーツ形状の上流側電極7を形成する。また、下流側電極9を、導電性のある物質を絶縁物で覆ったV字形状の電極の凸部を上流側に向けて、互いの端部が一致しないように、4mm程度の間隔を空けて複数個を連ねて配し、隣り合う電極間に下流側通風孔11となるスリットを形成したガス流に直交するプリーツ形状の上流側電極7を形成して、上流側電極7と下流側電極9で濾材7が両電極に沿うように挟み込んで、ガス流15に直交するように配設し、上流側電極7の導電部を接地に接続し、下流側電極9の導電部集塵部用高圧電源19より正の高電圧を印加している。
【0028】
このように、上流側電極7と下流側電極9を形成するので、特別な加工を行うことなく、隣り合うV字形状の電極の端面間により、上流側通風孔10となるスリットを形成することができ、同様に下流側電極9の隣り合うV字形状の電極の端面間で下流側通風孔となるスリットを形成できるので、電極の加工と形成工程が簡便になり、製品自身のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施例を示す空気清浄装置の側断面図
【図2】本発明の第1実施例の詳細断面図
【図3】第2実施例を示す空気清浄装置の詳細断面図
【図4】第3実施例を示す空気清浄装置の斜視図
【図5】従来の空気清浄装置を示す側断面図
【図6】従来の空気清浄装置を示す側断面図
【符号の説明】
【0030】
1 荷電部
2 放電極
3 接地極
4 荷電部用高圧電源
5 接地
6 集塵部
7 上流側捕集用
8 濾材
9 下流側電極
10 上流側通風孔
11 下流側通風孔
12 上流側電極稜線部
13 下流側電極稜線部
14 電界の方向
15 ガス流
16 ガス流路
17 上流側電極稜線部通風孔
18 下流側電極稜線部通風孔
19 集塵部用高電圧電源
20 上流側捕集用電極
21 下流側捕集用電極
22 絶縁物
23 プリーツ電極
24 上流側電極板
25 フィルタ部材
26 下流側電極板
27 通風孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の粉塵に帯電させる荷電部と、前記荷電部の下流側に設けられた集塵部とを備えた空気清浄装置において、
前記集塵部は、空気流の上流側から通気性のある電極、濾材、通気性のある電極の少なくとも3層の積層体からなり、前記積層体がプリーツ状になっており、かつ前記電極の端面が、他の電極の端面に対して露出しない構造となっている事を特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
相対する前記電極の通気孔が、1/3以上重ならないように配置された事を特徴とする請求項1の空気清浄装置。
【請求項3】
相対する前記電極の通気孔が、重ならないように配された事を特徴とする請求項1の空気清浄装置。
【請求項4】
前記濾材は、生分解性不織布からなる事を特徴とする請求項1記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記電極は、少なくとも片面が、ポリオレフィン系の樹脂で覆われていることを特徴とする請求項1記載の空気清浄装置。
【請求項6】
前記電極は、100μm〜350μmのポリオレフィン系樹脂に、導電率が10−2〜1Ω・cmの導電性塗料による導電部を100μm以下の厚みで印刷したことを特徴とする請求項1記載の空気清浄装置。
【請求項7】
前記電極は、50μm〜200μmのポリオレフィン系樹脂で挟み込まれたことを特徴とす請求項6記載の空気清浄装置。
【請求項8】
前記集塵部は、プリーツ形状の角度が、20°〜60°の範囲にある請求項1記載の空気清浄装置。
【請求項9】
前記電極は、その凸部に通風部を持たせたことを特徴とする請求項1記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−167812(P2007−167812A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372461(P2005−372461)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(391049574)安川コントロール株式会社 (3)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】