説明

空気緩衝材

【課題】 比較的大型で様々な寸法や形状を有する被梱包体を、コンテナーなどの搬送容器に収納して、気温や気圧の変化の激しい過酷な条件の中でも、長時間に渉って安定的に保護して輸送することが可能な、断熱・耐候性に優れる空気緩衝材を提供する。
【解決手段】 梱包される被梱包体と搬送容器内壁との間に介在するか、若しくは被梱包体同士の間に介在して、衝撃などの外力から該被梱包体を保護するための合成樹脂素材からなる空気緩衝材であって、該空気緩衝材が独立した少なくとも2系列以上の並列する空気室によって形成され、隣接する空気室が相互に補完しつつ非干渉に設けられる空気緩衝材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパー、ドアー、ボンネット等の各種自動車用部品、パソコン、各種オーディオ、DVD機器、各種OA機器等からなる、比較的大型で形状の定まらない各種製品や部品等からなる被梱包体を梱包して、過酷な状況の中を長期間に亘って搬送する際に好適に用いられる梱包用部材に係り、詳しくは搬送される被梱包体と収納する搬送容器間、若しくは被梱包体同士の間に介在して、衝撃等の外力から被梱包体を保護するための合成樹脂製素材からなる空気緩衝材において、該空気緩衝材を構成する複数の空気室が、少なくとも2以上の独立した系列を以って形成され、隣接する空気室がそれぞれに補完しつつ、かつ非干渉に設けられることにより、一方の系列に属する空気室が破損しても、隣接する空気室によって被梱包体を保護し得る、耐候性や耐熱性に止まらず、耐衝撃性にも優れた性能を示す空気緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定形の量販製品の梱包には、発泡スチロールの成形品が幅広く使用されているが、この発泡スチロール成形品は個々の製品に対応して専用のものが使用されるため、使用後は廃棄処分する以外に用途変換が望めず、また、汎用性において優れるチップ状の発泡スチロール、バブルシート(エアーキャップ)および新聞紙や布等においても、最終的に廃棄物として処理する際には相当の物量になり、近年の地球環境保護や省エネルギーの観点からは、安易に看過できない問題となっている。
【0003】
そこで最近になって、2枚合わせにした合成樹脂フィルムの外縁部を熱シールして袋状とし、その一端に特殊な逆止弁機能を有する空気注入口を設けた袋状空気緩衝材(例えば、特許文献1参照)や、前記袋状緩衝材の内側に線状若しくは点状の溶着線を設け、複数の小気室からなるエアーマット状緩衝材(例えば、特許文献2参照)が開発され、3Kpa/cm〜5Kpa/cmの空気圧力を封入した薄膜合成樹脂製の袋状空気緩衝材として、既に広く用いられている。この袋状空気緩衝材は、梱包材としての汎用性を維持しつつ各種部品や製品の保護包装用、雑貨品の隙間充填材や資材の緩衝材として優れた特性を有し、また、その使用法が簡単であると共に、不使用時にはシート状に折り畳まれ、収納スペースもコンパクトとなるなど簡便性にも優れている。
【0004】
ところが前記合成樹脂製袋状空気緩衝材は、様々な形状を有する多品種の部品や製品からなる被梱包体に対応が可能な、チップ状の発泡スチロールやバブルシートの代用として用いる範囲においては、上記のように優れた特性を有するものであるが、外形が方形若しくは多角形で特定の厚みを有する精密部品、衝撃に弱いガラス製品、或いは傷つき易い円筒状若しくは円柱状貨物等を安定的に梱包し、搬送容器等に収納して過酷な条件下で長時間輸送する際には、その信頼性に若干の不安が残り、それを払拭するために必要以上に多量の袋状空気緩衝材を用いることとなり、それによって搬送容器の大型化を招く原因となっていた。また、該袋状空気緩衝材は搬送する製品などと包装容器間の様々の間隙を補うために、個々にはコンパクトであることが望ましく、且つ封入するエアーも比較的低い圧力であることが要求されていた。従って気温の変化が激しい地域、例えば寒冷地における長時間の輸送や保管に際しては、該袋状空気緩衝材の空気圧が減少したり、逆に高温地帯においては該袋状空気緩衝材が破裂して、緩衝材として機能をしなくなったりするなど、新たな問題が生じていた。
【0005】
そこで近時、精密部品等の被梱包体を空気緩衝材でそっくり包み込むようにして搬送容器との間に介在し、安定的な緩衝機能を発揮する空気緩衝材も多々提案されている。一例をあげると横方向に連なる複数の長尺状空気室を有する合成樹脂製空気緩衝材の、該長尺状空気室を筒状に折り曲げると共に、その部分溶着部を折り曲げることにより、終局的には被梱包体全体を該空気室で覆う空気緩衝材(例えば、特許文献3参照)や、左右方向に連続した小胞という空気室が設けられ、空気が充填された際に該空気室の中間部分と両端部との境目に段差が形成される巻き付け型の空気緩衝材(例えば、特許文献4参照)などが提案され、前者においては被梱包体を当該緩衝材によってそっくり包み込み、後者においてはその段差部によって被梱包体の周辺を支えながら包みこんだり、場合によっては左右から挟持する方式の空気緩衝材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−117171号公報(第1〜3頁、図2)
【特許文献2】実開平6−37149号公報(第1〜5頁、図4)
【特許文献3】特開2003−137352号公報(第1〜8頁、図1〜15図)
【特許文献4】特開2003−63567号公報(第1〜7頁、図1〜7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、各種製品等を船舶や飛行機によって長時間輸送する際は、コンテナーによって運搬されるが、このコンテナー内における荷崩れは、外見上では発見されないために大きな事故を惹き起こすことが懸念されるところから、その梱包には充分な配慮が求められ、とりわけその信頼性が重要視される。そこで空気緩衝材としての上記の改良に止まらず、荷崩れ防止用の空気緩衝材は、外袋と内袋とからなる2重構造のものが用いられ、例えば外袋に未晒しのクラフト紙、内袋にPE袋を用いたものや、外袋に未晒しのクラフト紙を3重にして用い、内袋をPE袋としたり、或いはPA/PE/PAのラミネートを施したものを用い、いずれの場合もピロー状に形成した空気緩衝材が広く用いられている。このピロー状空気緩衝材によって例えば自動車のドアーパーツ、バンパーなどの被梱包体を梱包して輸送する場合、該空気緩衝材の中央部に応力が集中して凸状となることがある。空気緩衝材が凸状に変形することによって、前記ドアーパーツなどの被梱包体が部分的に変形させられたり、被梱包体とコンテナーとが接触して損傷を招くことが懸念されるため、コンテナーの内壁と被梱包体との間にさらに強化ダンボールなどを介在させ、それによって貨物とコンテナーとの接触による損傷を未然に防止するよう配慮されているが、用いられる強化ダンボールは高価なものであり、それを含む所謂シュワリングコストの高騰を招く上に、凸状となった空気緩衝材は部分的に薄肉となり、しかも内圧が高くなるため、被梱包体のコーナーや比較的尖った部分による突き刺しに、殆ど抵抗することなく破断して、緩衝材としての機能を一瞬にして喪失する恐れが残されていた。
【0008】
一方、飛行機や船舶によって異なる環境の中を長時間にわたって搬送されると、気温の変化によって空気緩衝材の内圧に変化が生じて、空気緩衝材としての機能を失うことも懸念されるが、斯かる問題に対処するためには、空気緩衝材を形成する素材が気候の変化に対する強い耐候性と、熱遮断性を有することと、優れたガスバリアー性を有することが併せて望まれる。そこで本願出願人は先に上記従来技術に更なる改良を加え、中心に延伸されたポリアミド樹脂(OPA)、その外側にポリエチレン樹脂(PE)、さらにその外側に発泡ポリエチレン樹脂(PPE)若しくはポリエチレン不織布を積層した多層構造の合成樹脂シート体を素材として用いた空気緩衝材を開発して提案(特願2004−321352)し、多様にしてしかも複雑な形状を有する被梱包体を、安定的に梱包し得る空気緩衝材、即ち優れた突き刺し防止特性を有し、しかも優れた断熱性とガスバリアー性とを併せて有すると共に、成形性に優れた素材によって空気緩衝材を形成し、様々な寸法や形状を有する製品や部品からなる被梱包体を梱包してコンテナー内に収納し、過酷な条件の中でも安定的に輸送することが可能な空気緩衝材を提供することに成功した。然しながら斯かる優れた空気緩衝材であっても、空気室が相互に連通した構造であることと、該空気室への空気の供給が共通する一つの給排気弁によって補われるように構成されているため、空気室の一箇所に破損が生ずるか若しくは給排気弁そのものに故障が生ずると、一気に緩衝機能を失うという未解決な課題が残されていた。本発明は斯かる従来技術に残された課題を解決することを所期の目的とするものであり、並列する複数の空気室が相互に干渉しない別系列としつつも、隣接する空気室同士が相互に補い合える、より安全な構造の空気緩衝材を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、梱包される被梱包体と搬送容器内壁との間に介在するか、若しくは被梱包体同士の間に介在して、衝撃などの外力から該被梱包体を保護するための合成樹脂素材からなる空気緩衝材であって、該空気緩衝材が独立した少なくとも2系列以上の並列する空気室によって形成され、隣接する空気室が相互に補完しつつ非干渉に設けられることを特徴的構成要件とする空気緩衝材を要旨とするものである。
【0010】
本発明はまた、前記空気緩衝材を形成する少なくとも2系列以上の並列する空気室に連通して、系列毎にそれぞれ独自の空気給排気弁が設けられることを特徴とするものである。
【0011】
本発明は更に、前記空気緩衝材を形成する合成樹脂素材が、中心に延伸ポリアミド樹脂(OPA)、その外側にポリエチレン樹脂(PE)、さらにその外側に発泡ポリエチレン樹脂(PPE)若しくはポリエチレン不織布が積層された、多層構造の合成樹脂シート体であることを好ましい態様とするものである。
【0012】
本発明に係わる上記空気緩衝材において、前記多層構造の合成樹脂シート体を2枚合わせにし、外枠の端部に相当する左右の側縁部並びに上下の端縁部と、該側縁部並びに端縁部の内側において上下左右を複数に区切った辺縁部とを、被梱包体の寸法、形状に対応して熱溶着することにより、少なくとも2系列以上の並列する空気室を形成し、それぞれの空気流通路に連通して、系列毎に空気給排気弁が設けられることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明による上記空気緩衝材において、素材を構成する前記多層構造の合成樹脂シート体に、帯電防止剤を混入させてなることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明による空気緩衝材は、被梱包体と搬送容器内壁との間に介在するか、若しくは被梱包体同士の間に介在して、衝撃などの外力から該被梱包体を保護するための合成樹脂素材からなる空気緩衝材であって、該空気緩衝材が独立した少なくとも2系列以上の並列する空気室によって形成され、隣接するそれぞれの空気室は非干渉に設けられながら、該隣接する空気室同士は相互に補完し合うように構成されている。従って隣接する空気室の一方が万一破損して緩衝機能を喪失しても、隣接する他方の空気室がそれを補って被梱包体に対する衝撃等の外力を吸収して、該被梱包体を保護するために効果的に機能し続けることができる。また、各空気室に連通する空気流通路は系列ごとに相互に独立して設けられ、それぞれの空気流通路毎に独自の空気給排気弁が設けられている。従って複数の空気室が並列して空気緩衝材を形成しながら、隣接するそれぞれの空気室は互いに非干渉の関係にあり、加えて独自の空気給排気弁が設けられているため、一方の系列に属する空気室を高圧に保ち、隣接する他方の系列の空気室をそれより低圧に保つことにより、気温や気圧の変化に対しても隣接する空気室間で、相互に補い合って被梱包体に対する緩衝機能を維持することが可能となるため、環境の異なる地域を長時間に渉って搬送するさいにも、被梱包体は健全な状態で保護される。
【0015】
本発明による上記空気緩衝材は、従来公知の合成樹脂素材を適宜に選択して使用することによって形成することができるが、用いられる合成樹脂素材としてガスバリアー性に優れ、その高い機密性によって充填された空気圧を維持する延伸されたポリアミド(OPA)フィルムを芯にして、その外側にポリエチレン(PE)フィルム、さらにその外側を、熱遮断性に優れると共に機械的強度に優れ、突き刺し防止に有効に作用する発泡ポリエチレン(PPE)シート、若しくはポリエチレン(PE)不織布によって被覆した所謂多層構造の合成樹脂シート体、具体的にはPPE/PE/OPA/PE/PPE若しくはPE不織布/PE/OPA/PE/PE不織布からなる合成樹脂シート体を2枚合わせとして、本発明における空気緩衝材の構成素材として用いたことにより、本発明の効果をさらに優れたものとすることができる。本発明において好ましく採用される上記の多層構造の合成樹脂シート体は、素材そのものが市場においての汎用性が高く、比較的安価に入手が可能な上に成形性に優れる素材であり、本願発明の空気緩衝材を形成する際には、その任意箇所を自由に熱溶着ができるために、被梱包体の寸法や形状に対応しながら、複数の系列の空気室を並列して形成するという複雑な成形加工にも容易に対応が可能となり、加工コストを大幅に削減することができるため、優れた緩衝機能を有しながらも比較的安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る一実施例による空気緩衝材を示す要部拡大平面図である。
【図2】本発明に係る他の実施例による空気緩衝材において、空気を封入して緩衝材を形成する前の状態を示し、(a)はその平面図、(b)は同図(a)中の折曲げ部における点溶着部の一例を示す要部拡大平面図である。
【図3】本発明に係わるさらに他の実施例による空気緩衝材において、空気を封入して空気緩衝材を形成する前の状態を示し、(a)はその平面図、(b)は同図(a)における切欠き部周辺の構造を示す要部拡大平面図である。
【図4】本発明に係わるさらに他の実施例において、空気を封入して空気緩衝材を形成した後、被梱包体を収納した状態を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明に係る上記各実施例における空気緩衝材において、成形用素材として選択的に採用される多層構造の合成樹脂シート体の構成を、模式的に示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を添付した図面並びに実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれにより拘束されるものではなく、本発明の主旨の範囲内において自由に設計変更が可能である。
図1は本発明に係る一実施例による空気緩衝材を示す要部拡大平面図、図2は本発明に係る他の実施例による空気緩衝材において、空気を封入して緩衝材を形成する前の状態を示し、(a)はその平面図、(b)は同実施例における折曲げ部の点溶着部の一例を示す要部拡大平面図、図3はさらに他の実施例による空気緩衝材において、空気を封入して空気緩衝材を形成する前の状態を示し、(a)はその平面図、(b)は同図(a)における切欠き部周辺の構造を示す要部拡大平面図、図4は本発明に係わるさらに他の実施例において、空気を封入して空気緩衝材を形成した後、被梱包体を収納した状態を模式的に示す斜視図、図5は本発明に係る各実施例における空気緩衝材において、成形用素材として選択的に採用される多層構造の合成樹脂シート体の構成を、模式的に示す要部拡大断面図である。
【0018】
本発明に係る空気緩衝材は、空気を封入されることによって緩衝機能を発揮する空気室そのものが、独立した少なくとも2系列以上の並列する空気室によって形成され、隣接する空気室同士は相互に補完し合いながら、かつ非干渉に設けられるところに第1の特徴がある。具体的には方形の合成樹脂シート体を2枚合わせにし、図1に示すように外枠の端部に相当する左右の側縁部1−2並びに上下の端縁部1−3と、該側縁部1−2並びに該端縁部1−3間にあって、その内側を上下左右に複数に区切った辺縁部1−4とを、被梱包体の寸法や形状に対応して熱溶着することにより、空気流通路1−7aおよび1−7bがそれぞれに異なる空気室1−1a並びに空気室1−1bが形成される。また、該空気流通路1−7aおよび1−7bには、それぞれ独自の給排気弁1−6aおよび1−6bが設けられることにより、当該空気緩衝材1における隣接する空気室1−1aおよび1−1bは、相互に異なる系列に属して非干渉に形成されこととなる。従って一方の空気室、例えば1−1aに予期しない破損が生じて緩衝機能を失った場合であっても、隣接する他方の空気室、例えば1−1bは健全な状態を維持して、隣接する空気室1−1aを補いつつ緩衝機能が保持され、梱包された被梱包体を健全な状態で保護するように構成されている。
【0019】
本発明における上記空気緩衝材を形成する合成樹脂シート体は、通常市販されている合成樹脂シート体の中から適宜に選択して採用されるものであるが、本発明の効果をより優れたものとするためには多層構造の合成樹脂シート体を用いることが好ましく、その一例として図5に要部を拡大して示すような構造を有する合成樹脂シート体2が、より好ましく採用される。該合成樹脂シート体2は、その中心に芯材としての延伸されたポリアミド樹脂3(OPA、以下単に「OPA」ということがある。)、その外側にポリエチレン樹脂4(PE、以下単に「PE」ということがある。)、さらにその外側に発泡ポリエチレン樹脂(PPE、以下単に「PPE」ということがある。若しくはポリエチレン不織布、PE不織布、以下単に「PE不織布」ということがある。)5が被覆された構造となっている。芯材となるOPA3は延伸されたナイロンであり、通常市販のナイロン6およびナイロン66を基材とする樹脂がこれに相当するが、熱劣化が起き難く成形性に優れる上、価格の面でも安価であるところからナイロン6が好ましく採用される。OPA3は、機械的強度に優れ、強靭で引っ張り強さが大きいので、環境の変化にも柔軟に対応できるという特性を有するが、何よりもその優れたガスバリアー性により、空気緩衝材の空気圧を安定的に維持するために貢献する。
【0020】
空気緩衝材を構成する前記PE4は、OPA3とPPE若しくはPE不織布5との間に介在し、その優れた熱接着性によって両者を一体として接合するバインダーとして機能する。一方、そのPE4を介してOPA3と接合され、外側に被覆されるPPE若しくはPE不織布5には共通して、衝撃吸収性、とりわけ繰返しの衝撃に対して特に優れた吸収性を有し、熱伝導率が小さく断熱性に優れ、耐薬品性や耐候性に加えて成形性に優れるという特性を有している。本発明の空気緩衝材を形成する前記合成樹脂のそれぞれの厚さは、本発明の目的を達成し得る範囲において任意であり得に制限しないが、通常OPA3およびPE4は、5〜30μm、好ましくは10〜20μmのフィルム体であり、その厚さが5μm以下の場合は、その特性を損なうことが懸念され、30μmを超えるとコスト面でマイナスとなる。PPE若しくはPE不織布5の厚さは、0.5〜2.0mm、好ましくは0.7〜1.5mmのシート体であり、その厚さが0.5mmに満たない場合は耐衝撃性や断熱性に不安が残り、2.0mm以上になると成形性や特有の可撓性が損なわれて、柔軟な空気緩衝材用素材としての機能が損なわれる恐れがある。本発明における上記各合成樹脂フィルム体並びにシート体は、PPE/PE/OPA/PE/PPE若しくはPE不織布/PE/OPA/PE/PE不織布の如く積層され、通常熱圧接加工によって一体の合成樹脂シート体2が形成され、本発明の空気緩衝材を構成する上での好ましい素材として提供される。
【実施例1】
【0021】
図5に示すように、PPE1mm/PE15μm/OPA15μm/PE15μm/PPE1mmの組成を有する多層構造の合成樹脂シート体2を形成し、所定の寸法の方形に裁断した該シート体2を2枚合わせにして、外枠を形成する左右の側縁部1−2並びに上下の端縁部1−3と、該側縁部1−2並びに端縁部1−3の内側において、空気流通路1−7aおよび1−7bを除く上下左右を複数に区切った辺縁部1−4とを、梱包される被梱包体の寸法、形状を考慮して熱溶着することにより、左右の側縁部に隣接して独自の空気流通路1−7aおよび1−7bが連接する空気室1−1aおよび1−1bが形成され、同時に該空気流通路1−7aおよび1−7bには、それぞれ独自の給排気弁1−6aおよび1−6bを設けることによって、図1に示すように横方向に複数の空気室1−1aおよび1−1bが並列する空気緩衝材1を形成した。本例における空気緩衝材1は、前記空気室1−1aおよび1−1bがそれぞれ独自の空気流通路1−7aおよび1−7bに連通するように設けられ、該空気流通路1−7aおよび1−7bにはそれぞれ独自の給排気弁1−6aおよび1−6b設けられているため、空気室1−1aと空気室1−1bとはそれぞれ別系統に属して互いに非干渉な関係に形成されている。然しながら両者は隣接して並列して設けられる状態にあり、被梱包体を梱包した後空気を封入した状態において、一方の系列に属する給排気弁を開いて例えば空気室1−1a側の空気を排気して緩衝機能を失脚させた状態においても、他方の空気室1−1b側に属する空気室は健全な状態を維持して、被梱包体を依然として安定的に保護していることが確認された。
【実施例2】
【0022】
実施例1と同様の多層構造の合成樹脂シート体2を用い、収納される被梱包体(図示を省略)が長尺である点を考慮して、図2(a)に示すように形成される空気緩衝材1aの形状を長方形とし、独自の給排気弁1a−6aおよび1a−6bを併設した空気流通路を1a−7aおよび1a−7bを、上下の端縁部1a−3に隣接して設け、該上下の端縁部1a−3および左右の側縁部1a−2と、その内側を上下左右に複数に区切った辺縁部1a−4とを熱溶着すると共に、該辺縁部1a−4間の所定の箇所に、そのほぼ中心部を横切って同図(b)に示すような点溶接が施された、細長い空気室からなる折曲げ部1a−8が設けられた以外は、上記実施例1とほぼ同様にして空気緩衝材1aを得た。得られた本実施例による空気緩衝材1aは、図2(a)からも明らかなように長方形に形成され、折曲げ部1a−8から折曲げることによって断面コの字型の空気緩衝材を形成し、長尺の被梱包体を好適に梱包すると同時に、独立した2系列の空気室1a−1aおよび1a−1bによって、実施例1と同様に隣接する空気室間相互において優れた補完機能を有することが確認された。
【実施例3】
【0023】
図3(a)に示すように2枚合わせにした方形の合成樹脂シート体における上下の端縁部1b−3間を、被梱包体(図示を省略)の寸法形状に対応して所定の寸法に区切り、上下各2箇所の切り欠き部1b−10を設けると共に、同図(b)に示すように該切り欠き部1b−10の延長線上の点溶接部1b−9と、該切り欠き部1b−10の先端部分を横断して結ぶようにした点溶接部1b−9aとを形成し、前記上方の端縁部1b−3に隣接する空気流通路1b−7aには、独自の給排気弁1b−6aが設けられて空気室1b−1aの群れに連通し、下方の端縁部1b−3に隣接する空気流通路は前記切り欠き部1b−10によって分断され、給排気弁1b−6bを併設する左側の空気流通路1b−7bには空気室1b−1bの群れが連通し、給排気弁1b−6cを併設した中央の空気流通路には空気室1b−1cの群れが連通し、給排気弁1b−6を併設した空気流通路1b−7dには空気室1b−1dの群れが連通するように形成されている。このように得られた本実施例による空気緩衝材1bは、実質的に4系列の空気室群を形成するが、隣接する各空気室1b−1a、1b−1b、1b−1c、1b−1dは、それぞれが独自の系列に属して非干渉の関係を有しながら、相互に隣接して補い合うように構成されている。また、本実施例による空気緩衝材1bは、切り欠き部1b−10とその延長線上の点溶接部1b−9とによって形成された折曲げ部1b−8と、該切り欠き部1b−10間の空気室1b−1aおよび1b−1cを横断するように設けた点溶接部1b−9aとを、同一の方向に直角に折り曲げることにより箱型の容器状に形成され、ボックス型の被梱包体を収納して程完璧な状態で保護することができる。なお、本実施例による空気緩衝材1bの効果を確認するために、空気室1b−1aに属する群れにやや高圧の空気を封入し、空気室1b−1b、1b−1cおよび1b1dに属する群れにはそれより低圧の空気を封入して、気温と気圧の異なる雰囲気中に一定時間放置した結果、系列の異なる隣接する空気室間で相互に補い合って、十分な緩衝機能が維持されていることが確認された。
【実施例4】
【0024】
図4に示すように実質的に実施例2と同形態の空気緩衝材1cにおいて、折り曲げ部1c−8間における空気室1c−1aおよび1c−1bを、被梱包体6の寸法と形状に対応して増加すると共に、該折り曲げ部1c−8をそれぞれ内側に折り曲げ、重なり合った端縁部1c−3の所要の箇所を熱溶着して左右対称のポケット1c−11aおよび1c−11bを有する空気緩衝材1cを得た。該空気緩衝材1cに形成される空気室1c−1aおよび1c−1bは、独自の給排気弁1c−6aおよび1c−6bを備えた空気流通路1c−7aおよび1c−7bに連通する2系列の群れからなり、相互に隣接しながら非干渉な関係にあり、かつ相互に補い合う関係にあることは上記の各実施例と同様である。このようにして得られた本実施例による空気緩衝材1cに、空気の給排気弁1c−6aおよび1c−6bを介して空気を封入した後、該ポケット1c−11a、1c−11bに被梱包体6の側面を差し込んで収納した結果、図4に示すように被梱包体6は安定的に梱包されると共に、独立した2系列の空気室1c−1aおよび1c−1bによって、実施例1と同様に隣接する空気室間相互において優れた補完機能を有することが確認された。
【0025】
本発明に基づく上記の各実施例において得られた空気緩衝材において、隣接する一方の系列に属する空気室の内圧を高くし、他方の系列に属する空気室の内圧をそれより低く調整して、室温の異なる空間に数日間放置したり、直射日光に曝してその耐候性を検証した結果、予め内圧を高くした空気室においては、長時間高温に曝されて連通する給排気弁に内装された安全弁が作動し、空気を排出して緩衝機能を喪失したが、予め内圧が低めに調整された隣接する他方の空気室は、その内圧が程度に上昇して優れた緩衝機能を備え、緩衝機能を喪失した隣接する空気室を補いつつ緩衝材としての機能は依然として維持し、被梱包体をほぼ正常な形で保護していることが実証された。また本発明に基づく上記実施例において明らかなように、本発明による空気緩衝材は、不定形の各パーツや製品をポケットに収納して保護し得るため、形状の異なる様々な被梱包体に柔軟に対応することができる。なお、上記の実施例においては、空気緩衝材のポケットを形成する際、重ね合わせた端縁部の所定の箇所を熱溶着する方法が採られているが、該熱溶着に代えて、例えばナイロン糸などによって縫合することを妨げるものでない。
【0026】
本発明における他の実施例として緩衝材を形成する上記合成樹脂シート体、具体的にはPPE/PE/OPA/PE/PPE若しくはPE不織布/PE/OPA/PE/PE不織布等に、予め帯電防止剤を混入させたものを用いて空気緩衝材を形成し、梱包する製品等への帯電を防止すると共に、それに起因する塵埃の付着を防止することも好ましい実施形態として推奨できる。帯電防止剤として用いられる成分は、本発明の目的を達成し得る範囲内において得に制限はしないが、本発明の空気緩衝材の原料素材となる多層構造の合成樹脂シート体を構成する、上記PE樹脂等に容易に混入可能であると共に、本発明の目的を損なうことのない高分子帯電防止剤、より具体的には有機酸、スルホン酸、有機アンモニウム塩などを有するポリマーが好ましく選択される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上の各実施例からも明らかなように本発明による空気緩衝材は、該空気緩衝材が独立した少なくとも2系列以上の並列する空気室によって形成され、隣接するそれぞれの空気室は非干渉に設けられながら、該隣接する空気室同士は相互に補完し合うように構成されている。従って隣接する空気室の一方が万一破損して緩衝機能を喪失しても、隣接する他方の空気室がそれを補って被梱包体に対する衝撃等の外力を吸収して、該被梱包体を保護するために効果的に機能し続けることができる。また、各空気室に連通する空気流通路は系列ごとに相互に独立して設けられ、それぞれの空気流通路毎に独自の空気給排気弁が設けられている。従って複数の空気室が並列して空気緩衝材を形成しながら、隣接するそれぞれの空気室は互いに非干渉の関係にあり、加えて独自の空気給排気弁が設けられているため、一方の系列に属する空気室を高圧に保ち、隣接する他方の系列の空気室をそれより低圧に保つことにより、気温や気圧の変化に対しても隣接する空気室間で、相互に補い合って被梱包体に対する緩衝機能を維持することが可能となるため、環境の異なる地域を長時間に渉って搬送するさいにも、被梱包体は健全な状態で保護される。
一方、本発明による空気緩衝材用の成形素材として、特定の合成樹脂からなる多層構造の合成樹脂シート体を採用した場合、その特殊な素材構成によって優れた耐候性と耐衝撃性並びに高い気密性とを、高いレベルで保持し得るため、本発明の効果がさらに相乗的に作用し、過酷な気象条件の中を長時間にわたって搬送される場合であっても、被梱包体を安定して保護することが可能となる。また本発明による空気緩衝材は比較的大型で、形状の定まらない被梱包体であっても、その要部を緩衝材のポケットに収納して梱包することができるため、繰返しの揺れによっても荷崩れ等の危険を未然に回避することができる。また、本発明による空気緩衝材は、外枠の端部に相当する左右の側縁部並びに上下の端縁部と、該側縁部並びに端縁部の内側において上下左右を複数に区切った辺縁部とを、梱包される被梱包体の形状や寸法に対応して熱溶着することにより、少なくとも2系列以上の並列する空気室を形成するところから、梱包される被梱包体や搬送容器(コンテナー等)内壁と、該空気室との接触面積を任意にコントロールすることが可能となる。従って該空気室に空気を注入して膨張させ、その内側を貨物に、その外側を搬送容器の内壁に圧接して緩衝材として機能する際、相互に広い接触面積を得ることが可能となるため、応力の集中が未然に回避され、安定的な緩衝機能が確保される。従って、気温や気圧の変化にも柔軟に対することが可能なまでに、内圧を高めて置くことが可能となり、過酷な条件下における緩衝材としての機能を長時間に亘って維持することが可能となった。
【0028】
本発明による空気緩衝材はさらに、該緩衝材用として好ましく採用される前記多層構造の合成樹脂シート体は、芯材を除く合成樹脂素材はいずれもポリエチレン系樹脂であり、2枚合わせの該シート体の任意箇所を自由に熱溶着ができるために、上記のような加工を容易に可能としたものであり、また、同一の素材であるが故に補修などのメンテナンスが容易で、使用後はリサイクルして有効に活用することが期待されると共に、止むを得ず焼却処分する際においても有害物質の発生する虞れも少なく、資源の有効利用は勿論のこと、環境保護の面においても充分な配慮がなされている。本発明の効果について更に付言すると、空気緩衝材の本体そのものが極めて簡略な構造である上に、使用資材は汎用性が高く且つ廉価であるところから、使用の前後には折り畳んでコンパクトに収納することができるため、未使用時の保管や輸送に係る物流コストが低減され、省エネルギー効果においても著しく寄与するところから、空気注入型の緩衝材として幅広い用途が期待される。
【符号の説明】
【0029】
1、1a、1b、1c 空気緩衝材
1−1a、1−1b、1a−1a、1a−1b、1b−1a、1b−1b、1b−1c、1b−1d、1c−1a、1c−1b 空気室
1−2、1a−2、1b−2、1c−2 側縁部
1−3、1a−3、1b−3、1c−3 端縁部
1−4、1a−4、1b−4、1c−4 辺縁部
1−5、1a−5、1b−5、1c−5 溶着部
1−6a、1−6b、1a−6a、1a−6b、1b−6a、1b−6b、1b−6c、1b−6d、1c−6a、1c−6b 給排気弁
1−7a、1−7b、1a−7a、1a−7b、1b−7a、1b−7b、1c−7a、1c−7b 空気流通路
1a−8、1b−8、1c−8 折曲げ部
1a−9、1b−9 点溶接部
1b−10 切り欠き部
1c−11a、1c−11b ポケット
2 合成樹脂シート体
3 延伸ポリアミド樹脂(OPA)
4 ポリエチレン樹脂(PE)
5 発泡ポリエチレン樹脂(PPE)またはポリエチレン不織布(PE不織布)
6 被梱包体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梱包される被梱包体と搬送容器内壁との間に介在するか、若しくは被梱包体同士の間に介在して、衝撃などの外力から該被梱包体を保護するための合成樹脂素材からなる空気緩衝材であって、該空気緩衝材が独立した少なくとも2系列以上の並列する空気室によって形成され、隣接する空気室が相互に補完しつつ非干渉に設けられることを特徴とする空気緩衝材。
【請求項2】
前記空気緩衝材を形成する少なくとも2系列以上の並列する空気室に連通して、系列毎にそれぞれ独自の空気給排気弁が設けられることを特徴とする請求項1に記載の空気緩衝材。
【請求項3】
前記空気緩衝材を形成する合成樹脂素材が、中心に延伸ポリアミド樹脂(OPA)、その外側にポリエチレン樹脂(PE)、さらにその外側に発泡ポリエチレン樹脂(PPE)若しくはポリエチレン不織布が積層された、多層構造の合成樹脂シート体であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気緩衝材。
【請求項4】
前記空気緩衝材が、前記多層構造の合成樹脂シート体を2枚合わせにし、外枠の端部に相当する左右の側縁部並びに上下の端縁部と、該側縁部並びに端縁部の内側において上下左右を複数に区切った辺縁部とを、被梱包体の寸法、形状に対応して熱溶着することにより、少なくとも2系列以上の並列する空気室を形成し、それぞれの空気流通路に連通して、系列毎に空気給排気弁が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の空気緩衝材。
【請求項5】
前記空気緩衝材において、素材を構成する前記多層構造の合成樹脂シート体に、帯電防止剤を混入させてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の空気緩衝材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173637(P2011−173637A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40640(P2010−40640)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(597026331)
【Fターム(参考)】