説明

空気調和機

【課題】室内の脱臭効率を向上させることができる空気調和機の提供。
【解決手段】空気調和機1は、室内熱交換器11と、加湿ユニット50と、制御部60とを備えている。室内熱交換器11は、室内の空気との間で熱交換を行う。加湿ユニット50は、室内の空気よりも含有水分量の多い多湿空空気を室内に給気可能である。制御部60は、除湿動作と給気動作とが同時に実行される水フィルタフェーズを含む脱臭運転を行う。除湿動作とは、室内熱交換器11の少なくとも第2室内熱交換器11bにおいて室内の空気が除湿される動作のことである。また、給気動作とは、加湿ユニット50によって、多湿空気が室内に供給される動作のことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿機能および除湿機能を備える空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加湿等によって相対湿度を上昇させた空気を凝縮することで、空気中に含まれるニオイ成分等を凝縮水とともに回収する方法が提案されている。
【0003】
例えば、室内から取り込んだ空気を加湿する加湿部と、加湿部で加湿された空気を除湿する除湿部とを備える空気清浄機がある(特許文献1参照)。この空気清浄機では、室内から取り込んだ汚染空気が加湿部において湿度を高められて高湿度空気が生成され、生成された高湿度空気が除湿部において除湿される。このとき、除湿によって凝縮された凝縮水に空気中の汚染物質を取り込むことで、除湿後の空気を清浄化している。このように、この空気清浄機は、室内の空気を取り込んで清浄化して、清浄空気を室内に戻す空気清浄機能を有している。
【0004】
また、加湿機能と除湿機能とを有する加湿・除湿装置を備える揮発性有機化合物の除去装置がある(特許文献2参照)。この除去装置では、室内を加湿する第1工程終了後に、加湿された室内の空気を除湿する第2工程が行われている。この除去装置では、第1工程において室内を加湿することで建材等に付着した揮発性有機化合物を空気中に放散させ、第2工程において放散した揮発性有機化合物を空気とともに凝縮して、揮発性有機化合物を含む凝縮水を回収している。これによって、室内の揮発性有機化合物の除去を行っている。
【特許文献1】特開2005−106358号公報
【特許文献2】特開2005−125085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2005−106358号公報に開示されている空気清浄機では、室内から取り込まれた空気を加湿しているため、室内の布や建材等に付着したニオイ成分を十分に除去できないおそれがある。
【0006】
また、特開2005−125085号公報に開示されている揮発性有機化合物の除去装置では、室内が加湿される第1工程において室内の布や建材等に染みこんだニオイ成分を空気中に十分に放散できずに第2工程に移行した場合、第2工程において室内のニオイ成分の除去が十分に行われないおそれがある。このため、上述のような空気清浄機能または除去装置を空気調和機の搭載した場合であっても、室内の脱臭が十分に行われないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、室内の脱臭効率を向上させることができる空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る空気調和機は、室内熱交換器と、給気手段と、制御部とを備えている。室内熱交換器は、室内の空気との間で熱交換を行う。給気手段は、室内の空気よりも含有水分量の多い多湿空気を室内に給気可能である。制御部は、除湿動作と給気動作とが同時に実行される除湿加湿同時実行フェーズを含む脱臭運転を行う。除湿動作とは、室内熱交換器において室内の空気が除湿される動作のことである。また、給気動作とは、給気手段によって、多湿空気が室内に供給される動作のことである。
【0009】
第1発明に係る空気調和機では、脱臭運転に含まれる除湿加湿同時実行フェーズにおいて、除湿動作と給気動作とが同時に実行される。このため、例えば、脱臭運転において除湿動作のみが実行される場合と比較して、室内の布や建材等に付着したニオイ成分を除去することができる。
【0010】
これによって、室内の脱臭効率を向上させることができる。
【0011】
第2発明に係る空気調和機は、第1発明の空気調和機であって、給気手段は、室内へ供給される空気を加湿することが可能な加湿部を有する。このため、この空気調和機では、多湿空気を加湿して室内に供給することができる。
【0012】
これによって、室内の布や建材等に染みこんだニオイ成分を空気中に放散させる脱臭効果を向上させることができる。
【0013】
第3発明に係る空気調和機は、第2発明の空気調和機であって、制御部は、給気手段を制御することで、第1状態と第2状態とを切り換える。第1状態では、加湿部によって生成された加湿空気を含む多湿空気が室内に供給される。また、第2状態では、室外の空気を含む多湿空気が室内に供給される。
【0014】
第3発明に係る空気調和機では、脱臭運転の給気動作において、第1状態と第2状態とが切り換えられる。このため、例えば、第1状態では加湿部を駆動させることによって生成された加湿空気を含む室外空気が供給されており、第2状態では加湿部が駆動されずに室外の空気が室内に供給されている場合、常に加湿部が駆動される場合と比較して、給気手段において省エネルギーを実現することができる。
【0015】
第4発明に係る空気調和機は、第3発明の空気調和機であって、室外の空気の温度を検知する温度検知部を更に備える。また、制御部は、温度検知部の検知結果に基づいて、第1状態と第2状態とを切り換える。このため、例えば、室外の空気の温度が高い場合には室外の空気の絶対湿度が高いことが期待される高温多湿な気候において、制御部によって室外の温度が低いと判断された場合に第1状態に切り換えられ、制御部によって室外の温度が高いと判断された場合に第2状態に状態が切り換えられる場合、第2状態の給気動作であっても室外の高湿度な空気を室内に供給することができる。
【0016】
これによって、室内に高湿度な空気を供給することができる。
【0017】
第5発明に係る空気調和機は、第3発明の空気調和機であって、室外の空気の湿度を検知する湿度検知部を更に備える。また、制御部は、湿度検知部の検知結果に基づいて、第1状態と第2状態とを切り換える。このため、例えば、制御部によって室外の湿度が低いと判断された場合に第1状態に切り換えられ、制御部によって室外の湿度が高いと判断された場合に第2状態に切り換えられる場合、第2状態の給気動作であっても室内には高湿度の空気が供給される。
【0018】
これによって、室内に高湿度な空気を供給することができる。
【0019】
第6発明に係る空気調和機は、第1発明から第5発明の空気調和機であって、制御部は、脱臭運転において、給気動作を含む高湿度フェーズ、除湿加湿同時実行フェーズ、除湿動作を含む調湿フェーズの順にフェーズを切り換える。このため、高湿度フェーズでは、室内に多湿空気を供給することで、室内の布や建材等に染みこんだニオイ成分を空気中に放散させやすくすることができる。また、除湿加湿同時実行フェーズでは、除湿動作と給気動作とを同時に行うことで、除湿動作によって空気中に放散されているニオイ成分を回収しつつ、給気動作によって室内に多湿空気を供給することで室内の布や建材等に染みこんだニオイ成分を更に放散させやすくすることができる。さらに、調湿フェーズでは、除湿加湿同時実行フェーズで多湿空気が供給された室内を除湿動作によって除湿することで、脱臭運転に調湿フェーズが含まれない場合と比較して、脱臭運転終了後の室内環境の快適性を向上させることができる。
【0020】
これによって、脱臭効率のよい脱臭運転を行うことができる。
【0021】
第7発明に係る空気調和機は、第6発明の空気調和機であって、制御部は、高湿度フェーズにおいて、室内の温度が所定温度以上となるように制御し、かつ、室内の湿度が所定湿度以上となるように制御する。このため、この空気調和機では、室内の湿度や温度が脱臭効果の得られないような温度や湿度まで低下し難くすることができる。
【0022】
これによって、脱臭効果が低減するおそれを減らすことができる。
【0023】
第8発明に係る空気調和機は、第1発明から第7発明のいずれかの空気調和機であって、室内熱交換器は、第1室内熱交換部と第2室内熱交換部とを有する。また、制御部は、除湿加湿同時実行フェーズにおいて、室内の温度に基づいて、第1室内熱交換部を放熱器または吸熱器として機能させ、第2室内熱交換部を吸熱器として機能させる。このため、この空気調和機では、室内の温度が低い冬季等において、第1室内熱交換部および第2室内熱交換部が共に吸熱器として機能することによって室内温度が脱臭効果の得られないような温度まで低下するおそれを減らすことができる。
【0024】
これによって、脱臭効果を維持することができる。
【0025】
第9発明に係る空気調和機は、第1発明から第8発明のいずれかの空気調和機であって、給気手段は、室外の空気を室内に供給するための給気ファンを有する。また、制御部は、給気ファンの風量を調整する風量調整部を有する。さらに、制御部は、脱臭運転において、風量調整部を用いて空気ファンの風量を調整することで、多湿空気の室内への供給量の制御を行う。このため、例えば、脱臭運転時における給気ファンの風量を大きくすることで、室内への多湿空気の供給量を増やすことができる。
【0026】
これによって、脱臭効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
第1発明に係る空気調和機では、室内の脱臭効率を向上させることができる。
【0028】
第2発明に係る空気調和機では、脱臭効果を向上させることができる。
【0029】
第3発明に係る空気調和機では、給気手段において省エネルギーを実現することができる。
【0030】
第4発明に係る空気調和機では、室内に高湿度な空気を供給することができる。
【0031】
第5発明に係る空気調和機では、室内に高湿度な空気を供給することができる。
【0032】
第6発明に係る空気調和機では、脱臭効率のよい脱臭運転を行うことができる。
【0033】
第7発明に係る空気調和機では、脱臭効果が低減するおそれを減らすことができる。
【0034】
第8発明に係る空気調和機では、脱臭効果を維持することができる。
【0035】
第9発明に係る空気調和機では、脱臭効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
<空気調和機の構成>
本発明の一実施形態に係る空気調和機1は、図1および図2に示すように、室外機3と、室内機2とを備えている。また、この空気調和機1は、冷房運転、暖房運転、加湿運転、給気運転および排気運転等の通常運転の他に、室内を脱臭する脱臭運転を行うことが可能である。なお、ここでいう脱臭運転とは、室内の布や建材等に染みこんだニオイ成分等を室内空気中に放散させ、空気中に放散したニオイ成分を室外に排出することが可能な運転のことである。また、室外機3は、室外熱交換器24や室外ファン29などを内部に収容する室外空調ユニット20と、加湿ユニット50とを備えている。室内機2の内部には室内熱交換器11が収容されている。また、加湿ユニット50と室内機2との間には、加湿ユニット50の内部空間と室内機2の内部空間と連通させることが可能な吸排気ホース6が設けられている。吸排気ホース6は、一端が加湿ユニット50の後述する吸排気ダクト58に接続されており、他端が室内機2の内部に延びている。
【0037】
<室内機の構成>
室内機2は、室内の壁面等に設置される壁掛け型の室内機である。また、室内機2は、図2に示すように、冷媒配管を介して室外機3に接続されている。さらに、室内機2内には、図2に示すように、室内ファン12および上述の室内熱交換器11等が収容されている。
【0038】
室内熱交換器11は、長手方向両端で複数回折り返されてなる伝熱管と、伝熱管から挿通される複数のフィンとからなり、接触する空気との間で熱交換を行う。また、室内熱交換器11は、第1室内熱交換器11aと第2室内熱交換器11bとから構成されており、第1室内熱交換器11aと第2室内熱交換器11bとの間には、室内膨張弁17が設けられている。
【0039】
室内ファン12は、円筒形状に構成され、周面には回転軸方向に羽根が設けられているクロスフローファンである。室内ファン12は、回転駆動することによって、回転軸と交わる方向に空気流を生成する。室内ファン12は、室内の空気を室内機2内に吸い込ませるとともに、室内熱交換器11との間で熱交換を行った後の空気を室内に吹き出させる。
【0040】
また、吸排気ホース6の端部には開口が設けられており、上述のように吸排気ホース6は室内機2内部に延びている。また、吸排気ホース6の開口は、第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bの表面と対向する位置、すなわち、室内ファン12が回転し空気流が生成されている状態で、室内機2の上部に設けられている空気取込口2aの下流側であり、かつ、第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bの上流側の位置に配置されている。このため、吸排気ホース6を通ってきた室外空気は、第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bの表面の一部に吹き出され、第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bを通って熱交換される。なお、本実施形態では、吸排気ホース6を通ってきた室外空気が第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bの表面の一部に吹き出されているが、これに限定されず、吸排気ホースを通ってきた室外空気が第1室内熱交換器および第2室内熱交換器の表面の全体に吹き出されてもよい。
【0041】
また、室内機2に形成されている室内空気吹き出し口2bの近傍には、水平フラップ9が設けられている。水平フラップ9は、室内機2の長手方向に長い形状を有する板状の部材であり、室内空気吹き出し口2bから吹き出される空気を案内する。水平フラップ9は、室内機2の長手方向に平行な回転軸を有しており、回転軸を中心に回転することにより、空気の案内方向を変更する。これによって、室内から室内機2内に取り込まれた空気、または、吸排気ホース6を介して室内機2内に供給された室外空気が、熱交換によって調和され、室内空気吹き出し口2bを通じて室内に吹き出される。
【0042】
<室外機の構成>
室外機3は、図1および図2に示すように、下部の室外空調ユニット20と、上部の加湿ユニット50とから構成されている。このため、この室外機3では、室外空調ユニット20と加湿ユニット50との電源を一元化することができる。
【0043】
室外空調ユニット20内には、図2に示すように、圧縮機21と、圧縮機21の吐出側に接続される四路切換弁22と、圧縮機21の吸入側に接続されるアキュムレータ23と、四路切換弁22に接続された室外熱交換器24と、室外熱交換器24に接続された室外膨張弁25とが収容されている。室外膨張弁25は、フィルタ26および液閉鎖弁27を介して液冷媒配管に接続されており、この液冷媒配管を介して第1室内熱交換器11aの一端と接続されている。また、四路切換弁22は、室内ガス閉鎖弁28を介してガス冷媒配管に接続されており、このガス冷媒配管を介して第2室内熱交換器11bの一端と接続されている。
【0044】
また、加湿ユニット50は、図2および図3に示すように、室外機3の上部に配置されており、加湿ユニットケーシング7と、加湿ユニット本体5とを備えている。加湿ユニット50は、室内から取り込まれた空気を室外へと排気したり、室外から取り込まれた室外空気を室内へと供給したりすることができる。また、室外空気を加湿して室内へと供給することもできる。
【0045】
加湿ユニットケーシング7は、図3に示すように、加湿ロータ51、加熱装置52、吸排気ファン54、吸排気切り換えダンパ53および吸着用送風装置55等を収納している。
【0046】
加湿ユニットケーシング7の前面には、図1、図2および図3に示すように、複数のスリット状の開口からなる吸着用空気吹き出し口7aが設けられている。また、加湿ユニットケーシング7の背面には、吸着用空気取込口7bおよび吸排気口7cが設けられている。吸着用空気取込口7bは、加湿ロータ51に水分を吸着させるために室外から取り込まれる空気が通る開口である。吸排気口7cは、加湿運転時または脱臭運転時に、室外から加湿ユニット50内に取り込まれ室内機2に送られる空気が通る開口である。また、吸排気口7cは、排気運転時に、室内機2から取り込まれ加湿ユニット50内から室外へと排気される空気が通る開口である。
【0047】
加湿ユニット本体5は、図2に示すように、室外空気を室内に給気したり室内空気を室外に排気したりすることが可能な吸排気部56と、室内へ供給される空気を加湿することが可能な加湿部57とを備えている。吸排気部56は、主に、吸排気切り換えダンパ53および吸排気ファン54を有している。また、加湿部57は、主に、加湿ロータ51、加熱装置52および吸着用送風装置55を有している。
【0048】
以下に、吸排気ファン54、吸排気切り換えダンパ53、加湿ロータ51、加熱装置52、吸着用送風装置55の順に説明する。
【0049】
吸排気ファン54は、加湿ロータ51の側方に配置されており、室外から取り込まれ室内機2へと送られる空気の流れを生成するラジカルファン組立体である。吸排気ファン54は、吸排気口7cから加湿ロータ51および吸排気切り換えダンパ53を経て室内へと到る空気の流れを生成して、室外から取り入れた空気を室内機2へと送る。また、吸排気ファン54は、室内機2から取り入れた室内の空気を室外へと排出することもできる。なお、吸排気ファン54は、後述する吸排気切り換えダンパ53が切り換わることによって、これらの動作を切り換える。また、吸排気ファン54は、図2に示すように、室外から取り入れた空気を室内機2へと送る場合には、加湿ロータ51のうちの加熱装置52と対向する部分を通過した空気を、吸排気切り換えダンパ53を経て吸排気ダクト58へと送り出す。吸排気ダクト58は、吸排気ホース6に接続されているため、吸排気ファン54は、吸排気ダクト58および吸排気ホース6を介して室外の空気を室内機2へと供給する。なお、吸排気ホース6を通って室内機2へ送られる空気は、上述のように室内機2内部において室内熱交換器11の表面に吹き出される。また、吸排気ファン54は、室内機2から取り入れた室内の空気を室外へと排出する場合には、吸排気ホース6および吸排気ダクト58を通ってきた室内の空気を吸排気口7cから室外へと排出する。
【0050】
吸排気切り換えダンパ53は、吸排気ダンパと、吸排気ダンパを回転させるための吸排気ダンパ駆動用モータ53a(図4参照)とを含む、回転式の空気流路切換機構である。また、吸排気切り換えダンパ53は、吸排気ファン54の下方に配置される。さらに、吸排気切り換えダンパ53では、吸排気ダンパ駆動用モータ53aが吸排気ダンパを回転させることで、給気状態と排気状態とが切り換えられる。
【0051】
給気状態では、吸排気ファン54が回転することによって、加湿ユニット50側から室内機2側に向かう空気流が生成される。例えば、吸排気切り換えダンパ53が給気状態である場合、吸排気ファン54から吹き出された空気は、吸排気ダクト58を経て吸排気ホース6を通って室内機2へと供給されるようになる。これにより、給気状態では、図2に示すA1方向に空気が流れ、室外の空気が吸排気ホース6を通って室内機2へと供給される。
【0052】
排気状態では、吸排気ファン54が回転することによって、室内機2側から加湿ユニット50側に向かう空気流が生成される。例えば、吸排気切り換えダンパ53が排気状態である場合、室内機2から取り込まれた室内の空気は、吸排気ホース6を経て吸排気ダクト58を通って室外へと排気されるようになる。これにより、排気状態では、図2に示すA2方向に空気が流れ、室内機2から吸排気ホース6および吸排気ダクト58を通ってきた空気が、吸排気口7cを経て室外へと排気される。
【0053】
加湿ロータ51は、ハニカム構造のセラミックロータであり、概ね円盤形状の外形を有している。また、加湿ロータ51は、回転可能に設けられており、ロータ駆動用モータによって回転駆動される。さらに、加湿ロータ51の主たる部分は、ゼオライト等の吸着剤から焼成されている。ゼオライト等の吸着剤は、接触する空気中の水分を吸着するとともに、吸着した水分を加熱されることによって脱着するという性質を有している。なお、本実施形態では、吸着剤としてゼオライトを用いているが、シリカゲルやアルミナ等を吸着剤として用いることも可能である。
【0054】
加熱装置52は、加湿ロータ51の上方に位置しており、加湿ロータ51に対向して配置されている。また、加熱装置52は、加湿ロータ51へ送られる空気を加熱することにより、加湿ロータ51を加熱することができる。
【0055】
吸着用送風装置55は、吸着用ファンモータ59bと、吸着用ファンモータ59bによって回転駆動される吸着ファン59aとを有し、加湿ロータ51のうちの加熱装置52と対向しない部分を通過する空気の流れを生成する。すなわち、吸着用送風装置55は、吸着用空気吸入口7bから吸い込まれ、加湿ロータ51のうちの加熱装置52と対向しない部分を通過し、ベルマウス59cの開口を通り、吸着用空気吹き出し口7aから室外へ排出される空気の流れを生成する。
【0056】
このような構成によって、加湿部57では、吸着ファン59aを回転駆動させることによって加湿ユニットケーシング7内に取り入れられた室外の空気が、加湿ロータ51および吸着ファン59aを介して、加湿ユニットケーシング7外に排出される。このとき、室外から取り入れられた空気が、加湿ロータ51の左側略半分の部分を通過する際に、加湿ロータ51によって空気中に含まれている水分が吸着される。そして、加熱装置52によって加湿ロータ51が加熱されることで、吸排気ファン54によって生成される空気流中に加湿ロータ51に吸着されていた水分が離脱して加湿空気が生成される。
【0057】
このため、加湿ユニット50では、上述のように、吸排気切り換えダンパ53が給気状態である場合、吸排気ファン54から吹き出された空気が、吸排気ダクト58を経て吸排気ホース6を通って室内機2へと供給される。このとき、加湿部57の加湿ロータ51および吸着ファン59aが回転駆動しており、かつ、加熱装置52によって加湿ロータ51が加熱されている場合には、加湿部57において生成された加湿空気を含む室外空気が、吸排気ホース6を通って室内機2へと供給される。このため、吸排気切り換えダンパ53が給気状態では、図1に示すA1方向に空気が流れ、室外空気が加湿され、または、加湿されずに吸排気ホース6を通って室内機2へと供給されることになる。
【0058】
また、空気調和機1は、冷房運転、暖房運転、除湿運転、加湿運転、排気運転、および、脱臭運転等の各種運転が行われるように、空気調和機1の有する各種機器を制御する制御部60を備えている。以下に、制御部60について説明する。
【0059】
<制御部>
制御部60は、図4に示すように、室内機2、室外空調ユニット20および加湿ユニット50の各種機器と接続されており、リモートコントローラ80等を介したユーザからの指令に基づいて、冷房運転、暖房運転、除湿運転、加湿運転、排気運転、および、脱臭運転等の各運転モードに応じて各種機器の動作制御を行う。
【0060】
また、制御部60は、通常運転制御部61と、脱臭運転制御部62とを備えている。通常運転制御部61は、各種機器の動作制御を行うことで、空気調和機1において冷房運転、暖房運転、除湿運転、加湿運転および排気運転等を含む通常運転が行われるように、前記運転の運転制御を行う。例えば、ユーザによってリモートコントローラ80を介して加湿運転開始指令が為された場合、通常運転制御部61は、空気調和機1において加湿運転が行われるように、圧縮機21等の各種機器の動作制御を行う。また、加湿運転時における各種機器の制御動作には、給気動作が含まれる。
【0061】
なお、本実施形態における給気動作とは、室外空気が加湿され、または、加湿されずに吸排気ホース6を通って室内機2へと供給されるように、通常運転制御部61または脱臭運転制御部62によって加湿ユニット50の有する各種機器が制御される制御動作のことである。また、給気動作には、通常運転制御部61または脱臭運転制御部62によって加湿部57が駆動されることで積極的に加湿空気が生成される加湿状態(第1状態に相当)で吸排気ファン54によって室外空気が室内機2へと送られる給気動作である加湿給気動作と、通常運転制御部61または脱臭運転制御部62によって加湿部57が駆動されないために積極的な加湿空気の生成がされない換気状態(第2状態に相当)で吸排気ファン54によって室外空気が室内機2へと送られる換気給気動作とが含まれる。
【0062】
このため、加湿給気動作が行われている加湿運転実行中に室内の湿度が設定湿度に到達した場合、通常運転制御部61は、室内の湿度が設定湿度と等しくなるように、加湿給気動作から換気給気動作に切り換える。具体的には、通常運転制御部61は、加湿給気動作が行われている加湿運転実行中に室内の湿度が設定湿度に到達した場合、加湿部57の加湿ロータ51および吸着ファン59aの回転を停止させ、かつ、加熱装置52における加湿ロータ51の加熱を停止させる制御を行うことによって、加湿部57における積極的な加湿空気の生成を停止させることで室内機2に供給される加湿空気の量を調整する。このようにして、空気調和機1において加湿運転が行われる。
【0063】
なお、本実施形態では、加湿運転実行中に室内の湿度が設定湿度に到達した場合には、通常運転制御部61が加湿部57の加湿ロータ51および吸着ファン59aの回転を停止させ、かつ、加熱装置52における加湿ロータ51の加熱を停止させる制御を行うことで室内への加湿空気の供給量を調節しているが、室内への加湿空気の供給量の調節手段はこれに限定されず、例えば、通常運転制御部によって、加湿部の加湿ロータおよび吸着ファンの回転を停止させ、かつ、加熱装置における加湿ロータの加熱を停止させ、さらに、吸排気ファンの回転が停止される制御が行われてもよい。また、室内への加湿空気の供給量の調節手段としては、例えば、通常運転制御部によって、加湿ロータおよび吸着ファン59aの回転を停止させる制御は行われずに、加熱装置の温度を低下させる制御が行われてもよい。また、本実施形態では、加湿運転実行中に室内の湿度が設定湿度に到達した場合以外にも、室内熱交換器11の温度に基づいて、加湿部57が制御されることで、室内機2に供給される加湿空気の量が調節される。
【0064】
また、ユーザによってリモートコントローラ80を介して除湿運転開始指令が為された場合、通常運転制御部61は、空気調和機1において除湿運転が行われるように、圧縮機21等の各種機器の動作制御を行う。また、除湿運転における各種機器の動作制御には、除湿動作が含まれる。除湿運転における除湿動作とは、通常運転制御部61によって、室内熱交換器11が吸熱器として機能するように、各種機器が制御される動作のことである。なお、除湿運転における除湿動作には、通常運転制御部61によって、第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bが吸熱器として機能するように各種機器が制御される通常除湿動作と、第1室内熱交換器11aが放熱器として機能し、かつ、第2室内熱交換器11bが吸熱器として機能するように各種機器が制御される再熱除湿動作とが含まれる。なお、再熱除湿動作および通常除湿動作については、後に説明する。さらに、空気調和機1において除湿運転が実行されている間に室内温度が設定温度よりも低下した場合には、通常運転制御部61によって各種機器が制御されることで、サーモオフが行われるか、もしくは、除湿運転から暖房運転に運転が切り換わる。なお、本実施形態では、除湿運転における除湿動作として冷房動作が含まれていないが、これに限定されず、除湿運転における除湿動作として冷房動作が含まれていてもよい。
【0065】
また、脱臭運転制御部62は、空気調和機1において脱臭運転が行われるように、各種機器の動作制御を行う。また、脱臭運転制御部62は、吸排気ファン54の回転数を制御する風量調整部63を有している。風量調整部63は、吸排気ファン54の回転数を制御することによって、脱臭運転において室内に吹き出される室外空気の供給量を調整する。
【0066】
また、脱臭運転制御部62は、図5に示すように、脱臭運転において、スチームアウトフェーズF1、水フィルタフェーズF2、調湿フェーズF3の順にフェーズを切り換える。
【0067】
スチームアウトフェーズF1では、脱臭運転制御部62が、水平フラップ9の傾斜角度が所定角度となるようにフラップ駆動モータ9aの動作制御を行う。また、脱臭運転制御部62は、室内ファン12が所定風量となるように、室内ファン12の回転を制御する。なお、ここでいう室内ファン12の所定風量とは、例えば、通常運転時の設定風量と等しい風量である。さらに、風量調整部63は、吸排気ファン54が所定風量となるように、吸排気ファン54の回転を制御する。なお、ここでいう吸排気ファン54の所定風量とは、加湿運転時に吸排気ファン54によって生成される風量のうちの最も大きい風量である。
【0068】
また、脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1において、室内湿度センサ90によって検知される室内湿度値が目標湿度(例えば、60%)値以上となるように、給気動作を行う。また、脱臭運転制御部62は、外気温度サーミスタ91によって検知される外気温度値に基づいて、給気動作における加湿状態と換気状態とが切り換わるように、加湿ユニット50の各種機器を制御する。具体的には、脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1において、外気温度サーミスタ91において検知された外気温度値が所定の第1温度(例えば、30℃)値以上であると判断した場合、加湿ユニット50の加湿部57において積極的に加湿空気が生成されないように、加湿部57の駆動を停止させる制御を行う。このため、スチームアウトフェーズF1において、外気温度値が所定温度値以上である場合には、加湿部57の加湿ロータ51が加熱装置52によって加熱される室外空気の積極的な加湿空気の生成は行われず、吸排気口7cから取り入れられた室外の空気が加湿ロータ51および吸排気切り換えダンパ53を経て吸排気ホース6を通って室内機2へと供給される換気状態での給気動作、すなわち、換気給気動作が行われる。
【0069】
また、脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1において、外気温度サーミスタ91において検知された外気温度値が所定の第1温度(例えば、30℃)値未満であると判断した場合、加湿ユニット50の加湿部57において積極的に加湿空気が生成されるように、加湿部57を駆動させる制御を行う。このため、スチームアウトフェーズF1において、外気温度値が所定温度値未満である場合には、加湿部57の加湿ロータ51および吸着ファン59aが回転駆動し、かつ、加熱装置52によって加湿ロータ51が加熱されることで、加湿部57において生成された加湿空気を含む室外空気が、吸排気ホース6を通って室内機2へと供給される加湿状態での給気動作、すなわち、加湿給気動作が行われる。
【0070】
このように、脱臭運転制御部62は、脱臭運転のスチームアウトフェーズF1において、外気温度が所定温度以上の場合には、加湿部57による積極的な加湿空気の生成が行われないように加湿ユニット50の各種機器を制御し、外気温度が所定温度未満の場合には加湿部57による積極的な加湿空気の生成が行われるように加湿ユニット50の各種機器を制御する。
【0071】
なお、本実施形態の空気調和機1は、外気温度が30℃以上ある場合には、出現率約85%で30℃60%相当の絶対湿度があることが期待されるような、高温多湿気候を前提としている。このため、例えば、高温多湿以外の気候に適用する場合には、脱臭運転制御部は、外気温度値ではなく、例えば、室内湿度センサの検出する室内湿度値に基づいて、加湿状態と換気状態との切り換え行う。また、本実施形態では、脱臭運転における給気動作において、室外温度に基づいて加湿状態と換気状態とに状態を切り換えているが、脱臭効果を向上させるために、脱臭運転の給気動作において、換気状態の給気動作は行われずに、常に加湿状態の給気動作が行われてもよい。
【0072】
また、脱臭運転制御部62による外気温度値の判断は、所定時間(例えば、1分)毎に行われる。
【0073】
また、脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1において、図6に示すように、室内温度サーミスタ92によって検知される室内温度値が目標温度値範囲Wに入るように、圧縮機21等の各種機器を制御することによって、冷媒回路に冷媒を循環させる。なお、ここでいう目標温度値範囲Wとは、所定の第2温度(例えば、20℃)値以上であり所定の第1温度(例えば、30℃)値以下の範囲のことである。また、ここでいう、所定の第1温度および所定の第2温度は、所定の第2温度の方が所定の第1温度よりも低い温度とする。
【0074】
例えば、室内温度値が目標温度値範囲Wの所定の第2温度値未満である場合、脱臭運転制御部62は、暖房運転時に行われる暖房動作が必要であると判断し暖房動作が行われるように、各種機器を制御する。なお、ここでいう暖房動作とは、通常運転制御部61または脱臭運転制御部62が、四路切換弁22を図2に示す点線の位置とし、室外膨張弁25を絞り、室内膨張弁17を全開にして、圧縮機21を起動する。このため、暖房動作が行われると、圧縮機21から吐出される高圧冷媒は、室内熱交換器11で凝縮した後、室外膨張弁25で減圧されて、室外熱交換器24に流入する。そして、室外熱交換器24で蒸発した後、四路切換弁22、アキュムレータ23を介して圧縮機21に戻る。このとき、室内熱交換器11において冷媒が凝縮するため、室内空気は暖められる。また、室内温度値が目標温度値範囲Wの所定の第1温度値より大きい場合、脱臭運転制御部62は、冷房運転時に行われる冷房動作が必要であると判断し冷房動作が行われるように、各種機器を制御する。なお、ここでいう冷房動作とは、通常運転制御部61または脱臭運転制御部62が、四路切換弁22を図2に示す実線の位置とし、室外膨張弁25を絞り、室内膨張弁17を全開にして、圧縮機21を起動する。このため、冷房動作が行われると、圧縮機21から吐出される高圧冷媒は、室外熱交換器24で凝縮した後、室外膨張弁25で減圧されて、第1室内熱交換器11aに流入する。そして、第1室内熱交換器11aで蒸発し、室内膨張弁17を介して第2室内熱交換器11bで蒸発した後、四路切換弁22、アキュムレータ23を介して圧縮機21に戻る。このとき、第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bにおいて冷媒が蒸発するため、室内空気は冷却される。さらに、室内温度値が目標温度値範囲W内に入っている場合、脱臭運転制御部62は、冷房動作および暖房動作が必要ではないと判断し、圧縮機21等が駆動している場合には圧縮機21等の各種機器の駆動を停止させる制御を行い、また、圧縮機21等が駆動していない場合には圧縮機21等を駆動させる制御を行わない。なお、脱臭運転の開始時における脱臭運転制御部62による動作判断は、図6に示す室温上昇時で判断する。
【0075】
このため、脱臭運転のスチームアウトフェーズF1には、換気給気動作と冷房動作とが同時に行われる換気冷房状態、加湿給気動作と暖房動作とが同時に行われる加湿暖房状態、および、加湿給気動作のみが行われ冷房動作または暖房動作が行われない加湿単独状態の3つの状態がある。したがって、脱臭運転制御部62は、脱臭運転のスチームアウトフェーズF1において、室内温度値および室外温度値に基づいて、換気冷房状態、加湿暖房状態および加湿単独状態の3つの状態を切り換える。
【0076】
また、水フィルタフェーズF2では、脱臭運転制御部62は、水平フラップ9の傾斜角度がスチームアウトフェーズF1時の所定角度を維持するようにフラップ駆動モータ9aの動作制御を行う。また、脱臭運転制御部62は、室内ファン12がスチームアウトフェーズF1時の所定風量となるように、室内ファン12の回転を制御する。さらに、風量調整部63は、吸排気ファン54がスチームアウトフェーズF1時の風量となるように、吸排気ファン54の回転を制御する。
【0077】
また、脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1終了時に室内温度サーミスタ92によって検知される室内温度値を目標温度として脱臭運転の水フィルタフェーズF2における除湿動作が行われるように、圧縮機21等の各種機器を制御する。なお、このときの圧縮機21の回転数は、通常運転時の回転数よりも大きいか、もしくは、最大の回転数とする。
【0078】
また、水フィルタフェーズF2における除湿動作には、脱臭運転制御部62によって、第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bが吸熱器として機能するように各種機器が制御される通常除湿動作と、第1室内熱交換器11aが放熱器として機能し、かつ、第2室内熱交換器11bが吸熱器として機能するように各種機器が制御される再熱除動作とが含まれる。脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1終了時の室内温度値に基づいて、通常除湿動作または再熱除湿動作のいずれかの除湿動作を行う。具体的には、脱臭運転制御部62は、目標温度が所定の第3温度(例えば、20℃)値未満の場合には、再熱除湿動作が必要であると判断し、再熱除湿動作を行う。なお、ここでいう再熱除湿動作とは、脱臭運転制御部62が、四路切換弁22を図2に示す実線の位置とし、室外膨張弁25を全開にし、室内膨張弁17を絞って圧縮機21を起動する各種機器の制御動作をいう。このため、再熱除湿動作が行われると、圧縮機21から吐出される高圧冷媒は、室外熱交換器24、室外膨張弁25を介して第1室内熱交換器11aに流入し、第1室内熱交換器11aで凝縮した後、室内膨張弁17で減圧される。減圧された低圧冷媒は、第2室内熱交換器11bで蒸発した後、四路切換弁22、アキュムレータ23を介して圧縮機21に戻る。このとき、第1室内熱交換器11aでは、冷媒が凝縮するため、室内空気は加熱され、第2室内熱交換器11bでは、冷媒が蒸発するため、室内空気は冷却、除湿される。
【0079】
また、脱臭運転制御部62は、目標温度が所定の第3温度(例えば、20℃)値以上の場合には、通常除湿動作が必要であると判断し、通常除湿動作を行う。なお、ここでいう通常除湿動作とは、除湿運転時に行われる除湿動作と同様の動作であって、脱臭運転制御部62が、四路切換弁22を図2に示す実線の位置とし、室外膨張弁25を絞り、室内膨張弁17を全開にして、圧縮機21を起動する各種機器の制御動作をいう。このため、通常除湿動作の除湿動作が行われると、圧縮機21から吐出される高圧冷媒は、室外熱交換器24で凝縮した後、室外膨張弁25で減圧されて、第1室内熱交換器11aに流入する。そして、第1室内熱交換器11aで蒸発し、室内膨張弁17を介して第2室内熱交換器11bで蒸発した後、四路切換弁22、アキュムレータ23を介して圧縮機21に戻る。このとき、第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bにおいて冷媒が蒸発するため、室内空気は冷却、除湿される。
【0080】
なお、脱臭運転時には、外気温度が低くても除湿動作が行われるように、再熱除湿実施可能な外気温度範囲の設定を外気温度0℃まで広げられている。また、脱臭運転の水フィルタフェーズF2では、室内温度が目標温度よりも低下した場合でも、脱臭運転制御部62によって、サーモオフが行われずに、各室内熱交換器11a,11bが現在機能している吸熱器または放熱器としての機能が継続されるように、各種機器が制御される。具体的には、脱臭運転の水フィルタフェーズF2における除湿動作が通常除湿動作であって、室内温度が目標温度よりも低下した場合、脱臭運転制御部62によって、第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bが共に吸熱器として機能している状態が維持される。また、脱臭運転の水フィルタフェーズF2における除湿動作が再熱除湿動作であって、室内温度が目標温度よりも低下した場合、脱臭運転制御部62によって、第1室内熱交換器11aが放熱器として機能している状態が維持され、第2室内熱交換器11bが吸熱器として機能している状態が維持される。すなわち、脱臭運転の水フィルタフェーズF2では、脱臭運転制御部62によって、各室内熱交換器11a,11bが同時に放熱器として機能するように、各種機器が制御されることはない。つまり、脱臭運転の水フィルタフェーズF2では、脱臭運転制御部62によって、除湿動作から暖房動作への動作切り換えが行われない。
【0081】
さらに、脱臭運転制御部62は、水フィルタフェーズF2において、上述の除湿動作に加えて給気動作を行う。また、脱臭運転制御部62は、外気温度サーミスタ91によって検知される外気温度値に基づいて、給気動作における加湿状態と換気状態とが切り換わるように、加湿ユニット50の各種機器を制御する。具体的には、脱臭運転制御部62は、室外温度値が所定の第4温度(例えば、24℃)値未満である場合には、加湿部57によって積極的に生成された加湿空気が室内に供給される加湿状態での給気動作、すなわち、加湿給気動作を行う。また、脱臭運転制御部62は、室外温度値が所定の第4温度(例えば、24℃)値以上である場合には、加湿部57によって積極的に加湿空気が生成されていない室外空気が室内に供給される換気状態での給気動作、すなわち、換気給気動作を行う。
【0082】
このため、脱臭運転の水フィルタフェーズF2では、脱臭運転制御部62によって、除湿動作と給気動作とが同時に実行される。例えば、水フィルタフェーズF2において、再熱除湿動作と加湿給気動作とが同時に実行される場合、室内機2内には、加湿部57によって加湿された加湿空気を含む室外空気が、吸排気ホース6端部の開口から吹き出す。吸排気ホース6端部の開口は、室内熱交換器11の前方に設けられているため、室内熱交換器11を通る空気流の室内熱交換器11より上流側に吹き出す。このため、室外空気は、室内から取り込まれた空気と共に、凝縮器として機能している第1室内熱交換器11aを通る際に加熱され、または、蒸発器として機能している第2室内熱交換器11bを通る際に冷却されて除湿される。第1室内熱交換器11aを通って加熱された空気と第2室内熱交換器11bを通って除湿された除湿空気とは、混合されて室内機2から吹き出し、室内へと供給される。
【0083】
また、例えば、水フィルタフェーズF2において、通常除湿動作と換気給気動作とが同時に実行される場合、室内機2では、加湿部57おいて積極的に加湿されていない室外空気が、吸排気ホース6端部の開口から吹き出す。吸排気ホース6端部の開口は、室内熱交換器11の前方に設けられているため、室内熱交換器11を通る空気流の室内熱交換器11より上流側に吹き出す。このため、室外空気は、室内から取り込まれた空気と共に、蒸発器として機能している第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bを通る際に冷却されて除湿される。第1室内熱交換器11aおよび第2室内熱交換器11bを通って除湿された除湿空気は、混合されて室内機2から吹き出し、室内へと供給される。
【0084】
なお、水フィルタフェーズF2では、除湿動作と給気動作とが同時に行われるため、吸排気ホース6等が凍結するおそれがある。このため、加湿部57によって加湿された外部空気が室内機2に供給されることによって吸排気ホース6等が凍結するおそれがあると制御部60が判断した場合には、脱臭運転制御部62は、給気動作において加湿状態から換気状態に状態を切り換える。また、水フィルタフェーズF2では、室内熱交換器11の温度に基づいて加湿状態から換気状態へ切り換える制御は行われない。
【0085】
さらに、調湿フェーズF3では、脱臭運転制御部62が、水平フラップ9の傾斜角度が水フィルタフェーズF2時の所定角度を維持するようにフラップ駆動モータ9aの動作制御を行う。また、調湿フェーズF3では、脱臭運転制御部62は、室内ファン12が水フィルタフェーズF2時の所定風量となるように、室内ファン12の回転を制御する。さらに、調湿フェーズF3では、脱臭運転制御部62は、室外空気が室内機2に供給されないように、加湿ユニット50の駆動を停止させる制御を行う。
【0086】
また、調湿フェーズF3では、脱臭運転制御部62は、除湿動作を行う。なお、本実施形態では、調湿フェーズF3における除湿動作は、除湿運転における通常除湿動作と同様の動作であり、水フィルタフェーズF2における通常除湿動作と同様の動作である。
【0087】
また、脱臭運転制御部62は、脱臭運転におけるスチームアウトフェーズF1、水フィルタフェーズF2および調湿フェーズF3の切り換えを、リモートコントローラ80等によってユーザによって予め設定されている脱臭運転の実行時間に基づいて行う。具体的には、脱臭運転制御部62は、以下に示す式にユーザによって予め設定されている脱臭運転の実行時間を当てはめて、各フェーズの実行時間を算出する。
α=(脱臭運転の実行時間−所定の第1時間)/2
スチームアウトフェーズF1実行時間=所定の第1時間+α
水フィルタフェーズF2実行時間=α−所定の第2時間
調湿フェーズF3実行時間=所定の第2時間
【0088】
このようにして算出した各フェーズの実行時間に基づいて、脱臭運転制御部62は、各フェーズを切り換える。例えば、所定の第1時間が1時間であり、所定の第2時間が30分である場合であって、ユーザによって脱臭運転の実行時間が5時間と設定された場合、脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1の実行時間を3時間(所定の第1時間+α)と、水フィルタフェーズF2の実行時間を1時間30分(α−所定の第2時間)と、調湿フェーズF3の実行時間を30分(所定の第2時間)と算出する。そして、脱臭運転制御部62は、算出した各フェーズの実行時間に基づいて、スチームアウトフェーズF1、水フィルタフェーズF2、調湿フェーズF3の順にフェーズを切り換える。このため、この場合には、脱臭運転として、スチームアウトフェーズF1が3時間行われた後に、水フィルタフェーズF2が1時間30分間行われ、その後、調湿フェーズF3が30分間行われる。
【0089】
なお、所定の第1時間は、給気動作を行うことによって、室内の湿度を脱臭効果のある目標湿度まで上昇させることができる時間に基づいて定められる。また、所定の第2時間は、給気動作を行わずに除湿動作のみを行うことで、脱臭運転終了後の室内環境をユーザに不快感を与えない湿度であり、かつ、室内にカビ等が繁殖するおそれを低減させることができる湿度に室内の湿度を戻すことができる時間に基づいて定められる。
【0090】
また、脱臭運転制御部62は、脱臭運転が実行されているときにユーザによって脱臭運転の実行時間が変更された場合には、変更後の実行時間に基づいて、各フェーズの実行時間を再び算出する。そして、再び算出された各フェーズの実行時間に基づいて、脱臭運転制御部62は、各フェーズを切り換える。なお、ユーザによって実行時間が変更されたときに既に実行されたフェーズがある場合には、脱臭運転制御部62は、既に実行されたフェーズ切り換える制御を行わない。
【0091】
また、脱臭運転制御部62は、ユーザによって脱臭運転停止指令が為される場合を除いて、脱臭運転において調湿フェーズF3が確実に実行されるように、各フェーズの実行時間を算出する。このため、例えば、ユーザによって脱臭運転の実行時間が短くなるように設定が変更された場合でも、脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1または水フィルタフェーズF2の実行時間を短くすることで、調湿フェーズF3の実行時間を確保する。
【0092】
なお、ユーザによって脱臭運転の実行時間が所定の第3時間(例えば、5時間)未満に設定された場合、リモートコントローラ80を制御するリモートコントローラ制御部は、ユーザによって設定された実行時間のデータが制御部60に送信されないようにリモートコントローラ80を制御するとともに、リモートコントローラ80の表示部にエラーが表示されるように表示部を制御する。
【0093】
なお、脱臭運転制御部62は、リモートコントローラ80から所定の第3時間未満の実行時間のデータが送信された場合でも、各フェーズの実行時間を算出可能である。なお、所定の第3時間未満の実行時間のデータが送信されてきた場合には、脱臭運転制御部62は、各フェーズの優先順位に基づいて、各フェーズの実行時間の配分を調整する。なお、各フェーズの優先順位は、調湿フェーズF3、スチームアウトフェーズF1、水フィルタフェーズF2の順である。
【0094】
さらに、脱臭運転は、リモートコントローラ80等を介したユーザからの脱臭運転開始指令が為された場合に行われる運転である。具体的には、リモートコントローラ80等を介してユーザによって送信された脱臭運転開始指令を制御部60が受信した場合に、脱臭運転制御部62が各種機器を制御することによって、空気調和機1における脱臭運転が開始される。したがって、空気調和機1の運転が停止している場合、または、空気調和機1において通常運転が行われている場合でも、ユーザから脱臭運転開始指令が為されると、空気調和機1において脱臭運転が開始される。
【0095】
また、脱臭運転は、リモートコントローラ80等を介してユーザから脱臭運転停止指令が為された場合、運転が開始されてから実行時間が経過した場合、または、運転実行中にユーザからの他の運転(例えば、冷房運転)の開始指令が為された場合に、運転が停止される。なお、ユーザからの脱臭運転停止指令が為された場合には、例えば、リモートコントローラ80に設けられている運転停止ボタンがユーザによって押された場合、および、室内機2に設けられている運転停止スイッチがユーザによって押された場合等が含まれる。また、運転が開始されてから実行時間が経過した場合とは、脱臭運転開始前にユーザによって設定されていた脱臭運転実行時間が経過して正常に運転を終了した場合、すなわち、各フェーズの実行時間に基づいて、スチームアウトフェーズF1、水フィルタフェーズF2、および、調湿フェーズF3が実行された場合のことである。
【0096】
また、脱臭運転制御部62は、ユーザによってリモートコントローラ80から送信される通常運転の各種の運転設定(運転モード設定、設定温度、設定湿度、上下/左右以外の風向設定、風量設定、換気設定等)とは別の脱臭運転独自の各種の運転設定に基づいて各種機器を制御するため、制御部60は、脱臭運転終了後には各種の運転設定が脱臭運転開始前の設定に戻っているか否かを判断し、脱臭運転開始前の設定に戻ってないと判断した場合には脱臭運転開始前の設定に戻す制御を行う。このため、ユーザがリモートコントローラ80を介さずに冷房運転等の通常運転を開始するような場合でも、通常運転制御部61は、脱臭運転開始前の設定で通常運転を開始することができる。これによって、ユーザに不快感を与えるおそれを減らすことができる。
【0097】
<脱臭運転制御部の制御動作>
次に、脱臭運転制御部62の制御動作について説明する。なお、以下には、ユーザによって脱臭運転の実行時間が5時間に設定されており、所定の第1時間が1時間であり、所定の第2時間が30分である場合を例として説明する。また、以下の説明は、ユーザから脱臭運転開始指令が送信される以外には、他のいかなる制御指令も送信されていない場合、すなわち、運転が開始されてから実行時間が経過した場合について脱臭運転の例である。
【0098】
ユーザからリモートコントローラ80を介して為された脱臭運転開始指令を制御部60が受信した場合、脱臭運転制御部62は、各種機器を制御することで、空気調和機1において脱臭運転を開始させる。まず、脱臭運転制御部62は、脱臭運転開始指令が為された時の室内温度値および室外温度値に基づいて、スチームアウトフェーズF1における状態を、換気冷房状態、加湿単独状態および加湿暖房状態のうちのいずれか1つの状態に決定し、決定された状態となるように各種機器を制御する。これによって、空気調和機1における脱臭運転のスチームアウトフェーズF1が行われる。
【0099】
そして、脱臭運転のスチームアウトフェーズF1が実行されてから3時間が経過すると、脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1から水フィルタフェーズF2にフェーズを切り換える。このとき、脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1が実行されてから3時間経過した時の室内温度値に基づいて、水フィルタフェーズF2において、再熱除湿動作、または、通常除湿動作のうちのいずれの除湿動作を行うかを判断する。さらに、脱臭運転制御部62は、スチームアウトフェーズF1が実行されてから3時間経過した時の外気温度値に基づいて、水フィルタフェーズF2において、加湿状態の給気動作(加湿給気動作)または換気状態の給気動作(換気給気動作)のうちのいずれの給気動作を行うかを判断する。そして、脱臭運転制御部62が判断された除湿動作と判断された給気動作とを同時に実行することで、空気調和機1における脱臭運転の水フィルタフェーズF2が行われる。
【0100】
また、水フィルタフェーズF2が実行されてから1時間30分が経過すると、脱臭運転制御部62は、給気動作を停止し、かつ、除湿動作を行うことで、水フィルタフェーズF2から調湿フェーズF3にフェーズを切り換える。そして、水フィルタフェーズF2から調湿フェーズF3にフェーズが切り換わってから30分が経過すると、脱臭運転制御部62は、除湿動作を停止させ、空気調和機1における脱臭運転を停止させる。これによって、脱臭運転が終了する。
【0101】
このようにして、空気調和機において脱臭運転が行われる。なお、脱臭運転の実行時間が上記の例のように5時間に設定された場合には、脱臭運転の各フェーズでは以下のような効果が期待できる。また、脱臭運転の実行時間が5時間以上に設定された場合には、脱臭運転における効果は更に向上する可能性がある。
【0102】
スチームアウトフェーズF1が開始されてから1時間で、給気動作によって室内の湿度を上昇させる。また、スチームアウトフェーズF1が開始されてから1時間から3時間で、給気動作によって室内を高湿度に維持しつつ、室内の布等に染みこんだニオイ成分を空気中に放出させる。
【0103】
スチームアウトフェーズF1終了後に水フィルタフェーズF2が開始されることで、除湿動作によって室内のニオイ成分を室内熱交換器11の結露水に溶かして回収しドレンとして排出しつつ、給気動作によって蒸発器として機能する室内熱交換器11に高湿度の空気を当てることによって室内のニオイ成分の回収効率を向上させるとともに室内の湿度を上昇させる。
【0104】
水フィルタフェーズF2終了後に調湿フェーズF3が開始されることで、スチームアウトフェーズF1において室内湿度が高くなっていた場合でも、除湿動作によって室内の湿度を低下させる。
【0105】
また、室内機2の上部に設けられている空気取込口2aと室内熱交換器11との間には、空気清浄フィルタが配置されており、空気取込口2aから室内機2内に取り込まれた空気は、空気清浄フィルタを介して室内熱交換器11に送られる。このため、脱臭運転では、水フィルタフェーズF2の除湿動作によって室内空気中のニオイ成分が回収される他に、空気清浄フィルタにニオイ成分が吸着されることで、室内のニオイ成分の除去が行われている。
【0106】
<特徴>
(1)
従来より、加湿等で相対湿度を上昇させた空気を凝縮することで、空気中に含まれるニオイ成分等を凝縮水とともに回収する方法が提案されている。
【0107】
例えば、特開2005−106358号公報に開示されている空気清浄機は、室内から取り込んだ空気を加湿する加湿部と、加湿部で加湿された空気を除湿する除湿部とを備えている。この空気清浄機では、室内から取り込んだ汚染空気が加湿部において湿度を高められて高湿度空気が生成され、生成された高湿度空気が除湿部において除湿される。このとき、除湿によって得られる水に空気中の汚染物質を取り込むことで、除湿後の空気を清浄化している。このように、この空気清浄機は、室内の空気を取り込んで清浄化して、清浄空気を室内に戻す空気清浄機能を有している。
【0108】
また、特開2005−125085号公報に開示されている揮発性有機化合物の除去装置は、加湿機能と除湿機能とを有する加湿・除湿装置を備えている。この除去装置では、室内を加湿する第1工程終了後に、加湿された室内の空気を除湿する第2工程が行われている。この除去装置では、第1工程において室内を加湿することで建材等に付着した揮発性有機化合物を空気中に放散させ、第2工程において放散した揮発性有機化合物を空気とともに凝縮して、揮発性有機化合物を含む凝縮水として回収している。これによって、室内の揮発性有機化合物の除去を行っている。
【0109】
しかしながら、特開2005−106358号公報に開示されている空気清浄機では、室内から取り込まれた空気を加湿しているため、室内の布や建材等に付着したニオイ成分を十分に除去できないおそれがある。
【0110】
また、特開2005−125085号公報に開示されている揮発性有機化合物の除去装置では、室内が加湿される第1工程において室内の空気の布や建材等に染みこんだニオイ成分を空気中に十分に放散できずに第2工程に移行した場合、第2工程において室内のニオイ成分の除去が十分に行われないおそれがある。このため、上述のような空気清浄機能または除去装置を空気調和機の搭載した場合であっても、室内の脱臭が十分に行われないおそれがある。
【0111】
そこで、上記実施形態では、脱臭運転の水フィルタフェーズF2において、脱臭運転制御部62によって、除湿動作と給気動作とが同時に実行される。このため、除湿動作によって室内のニオイ成分を空気中から水分とともに回収しながら室内を高湿度にすることができるため、脱臭運転において除湿動作のみが実行される場合と比較して、室内の布や建材等に染みこんだニオイ成分を除去することができる。
【0112】
これによって、室内のニオイ成分を室内空気中に放散させ、かつ、放散させたニオイ成分を回収して除去することで室内を脱臭する室内の脱臭効率を向上させることができている。
【0113】
(2)
上記実施形態では、加湿ユニット50は、加湿空気を生成することが可能な加湿部57を有している。また、加湿部57によって生成された加湿空気を含む室外空気は、加湿ユニット50から室内機2へと供給される。この空気調和機1では、加湿部57において室外空気から加湿空気が生成されているため、加湿部を備えていない空気調和機と比較して、室内により高湿度の空気を供給することができる。
【0114】
これによって、室内の布や建材等に染みこんだニオイ成分を室内空気中に放散させる脱臭効果を向上させることができている。
【0115】
(3)
上記実施形態では、脱臭運転制御部62は、加湿ユニット50の各種機器を制御することで、給気動作における加湿状態と換気状態とを切り換える。このため、常に加湿部が駆動するように制御されている場合と比較して、加湿ユニット50における消費電力を小さくすることができる。
【0116】
これによって、省エネルギーを実現することができる。
【0117】
(4)
上記実施形態では、脱臭運転制御部62は、脱臭運転のスチームアウトフェーズF1および水フィルタフェーズF2において、外気温度サーミスタ91によって検知される外気温度値に基づいて、給気動作における加湿状態と換気状態とが切り換わるように、加湿ユニット50の各種機器を制御する。具体的には、脱臭運転制御部62は、外気温度が所定温度以上の場合には換気状態、すなわち、加湿部57による積極的な加湿空気の生成が行われない状態となるように、加湿ユニット50の各種機器を制御し、外気温度が所定温度未満の場合には加湿状態、すなわち、加湿部57による積極的な加湿空気の生成が行われる状態となるように加湿ユニット50の各種機器を制御する。
【0118】
このため、外気温度が30℃以上ある場合には、出現率約85%で30℃60%相当の絶対湿度があることが期待されるような高温多湿気候では、室外温度が高い場合には絶対湿度が高いことが期待されるため、室外温度が高いときに、給気動作の状態が、加湿部57によって積極的な加湿空気の生成がされない換気状態であっても、室内空気よりも水分含有率の高い室外空気を室内機2に供給することができる。
【0119】
これによって、室内に高湿度な空気を供給することができている。
【0120】
また、上記実施形態では、高温多湿気候を前提として、室外温度に基づいて、脱臭運転における給気動作の状態が加湿状態と換気状態とが切り換えられるため、省エネルギーを実現するとともに室内の脱臭効果を得ることができる。
【0121】
(5)
上記実施形態では、脱臭運転制御部62は、脱臭運転において、スチームアウトフェーズF1、水フィルタフェーズF2、調湿フェーズF3の順にフェーズを切り換える。このため、スチームアウトフェーズF1では、室外空気が加湿され、または、加湿されずに吸排気ホース6を通って室内機2へと供給される。また、スチームアウトフェーズF1では、室内温度値が目標温度値範囲Wに入るように、暖房動作や冷房動作等が行われる。したがって、スチームアウトフェーズF1では、室内空気の相対湿度が上昇するために、室内の布や建材等に染みこんだニオイ成分を室内空気中に放散させることができる。
【0122】
また、水フィルタフェーズF2では、除湿動作と給気動作とが同時に実行されている。このため、水フィルタフェーズF2では、除湿動作が実行されることによって、スチームアウトフェーズF1において相対湿度の上昇したニオイ成分を含む室内空気を室内機2内に取り込んで凝縮し、室内空気中に含まれていたニオイ成分を凝縮水とともに回収することができる。また、水フィルタフェーズF2では、給気動作が実行されることによって、スチームアウトフェーズF1において放散させきれなかった室内のニオイ成分を更に放散させることができる。
【0123】
さらに、調湿フェーズF3では、除湿動作が行われることによって、水フィルタフェーズF2において相対湿度が上昇した室内空気の湿度を下げることができる。したがって、脱臭運転終了後の室内環境の快適性を向上させることができる。また、調湿フェーズF3において、室内空気の湿度を下げることで、室内にカビ等が繁殖するおそれを減らすことができる。
【0124】
これによって、脱臭効率のよい脱臭運転を行うことができる。
【0125】
また、上記実施形態では、加湿ユニット50から室外の空気が供給される吸排気ホース6端部の開口が、室内熱交換器11の前方に設けられているため、室内熱交換器11を通る空気流の室内熱交換器11より上流側に吹き出す。このため、室内熱交換器11は、水フィルタフェーズF2において、常に湿った状態を維持することができる。このため、フィルタフェーズにおいて、蒸発器として機能している室内熱交換器における水分の結露量を増やすことができる。したがって、室内熱交換器11を通過する空気からニオイ成分を更に回収することができる。
【0126】
これによって、脱臭効果を向上させることができている。
【0127】
(6)
室内の布や建材等に染みこんだニオイ成分を室内空気中に放散させるためには、室内環境を高温高湿等の所定の環境にすることが好ましい。例えば、室内環境が高湿度な環境であっても、室内温度が極端に低い場合には、室内のニオイ成分を空気中に放散させる効果は低減するおそれがある。
【0128】
そこで、上記実施形態では、スチームアウトフェーズF1において、室内湿度値が目標湿度(例えば、60%)値以上となるように、給気動作を行う。また、スチームアウトフェーズF1において、室内温度値が目標温度値範囲Wに入るように、冷房動作、または、暖房動作が行われる。このため、室内のニオイ成分を空気中に放散させる効果が低減するおそれを減らすことができる。
【0129】
また、上記実施形態では、スチームアウトフェーズF1において、室内温度値が目標温度値範囲Wに入るように、暖房動作、または、冷房動作が行われている。このため、室内温度が所定の第1温度より上昇することによって室内環境が悪化するおそれを減らすことができる。また、室内温度が所定の第2温度より低下することによって室内の絶対湿度が低下することで脱臭効果が低下するおそれを減らすことができる。
【0130】
さらに、上記実施形態では、水フィルタフェーズF2において、スチームアウトフェーズF1終了時の室内温度に基づいて、通常除湿動作または再熱除湿動作のいずれかの除湿動作が行われるように、圧縮機21等の各種機器が制御される。具体的には、スチームアウトフェーズF1終了時の室内温度が高い場合には通常除湿動作が行われ、スチームアウトフェーズF1終了時の室内温度が低い場合には再熱除湿動作が行われる。このため、室内の温度が低い冬季等において、通常除湿動作が行われる場合と比較して、室内温度の低下を緩やかにすることができる。したがって、水フィルタフェーズF2において行われている室内のニオイ成分を空気中に放散させる効果が低減するおそれを減らすことができる。
【0131】
これによって、脱臭効果を向上させることができている。
【0132】
(7)
上記実施形態では、脱臭運転のスチームアウトフェーズF1および水フィルタフェーズF2において、吸排気ファン54は、加湿運転時に吸排気ファン54によって生成される風量のうちの最も大きい風量で回転するように制御されている。このため、例えば、吸排気ファンの風量が小さい場合と比較して、加湿ユニット50から室内機2への室外空気の供給量を多くすることができる。したがって、室内のニオイ成分を空気中に放散させる効果を向上させることができる。
【0133】
これによって、脱臭効果を向上させることができている。
【0134】
(8)
上記実施形態では、空気を加湿したり除湿したりすることで脱臭運転を行っている。このため、イオンやケミカル製品等が使用されて脱臭運転が行われる場合と比較して、脱臭運転における安全性を確保することができる。
【0135】
<変形例>
(A)
上記実施形態では、水フィルタフェーズF2の給気動作において、加湿状態と換気状態とが切り換わるように、加湿ユニット50の各種機器が制御されている。
【0136】
これに代えて、水フィルタフェーズF2の給気動作において、加湿状態と換気状態と給気停止状態とが切り換えられてもよい。なお、給気停止状態とは、加湿ユニットから室内機への加湿空気の供給が停止されている状態のことである。以下に、脱臭運転制御部による水フィルタフェーズF2における給気動作の状態切り換え制御について図7を用いて説明する。なお、以下の所定の第5温度値および所定の第6温度値とは、所定の第5温度値の方が所定の第6温度値よりも大きい温度値とする。
【0137】
脱臭運転制御部は、水フィルタフェーズF2において、外気温度サーミスタによって検知される外気温度値に基づいて、加湿状態と換気状態と給気停止状態とが切り換わるように、加湿ユニットの各種機器を制御する。
【0138】
脱臭運転制御部は、室外温度値が所定の第6温度(例えば、0℃)値未満の場合には、室外空気が室内に供給されない給気停止状態となるように、加湿ユニットの各種機器を制御する。具体的には、給気停止状態では、脱臭運転制御部は、吸排気ファンの回転が停止するように、吸排気ファンを制御する。また、脱臭運転制御部は、室外温度値が所定の第6温度(例えば、0℃)値以上であり所定の第5温度(例えば、24℃)値未満である場合には、加湿部によって加湿された室外空気が室内に供給される加湿状態となるように、加湿ユニットの各種機器を制御する。さらに、脱臭運転制御部は、室外温度値が所定の第5温度(例えば、24℃)値以上である場合には、加湿部によって加湿されていない室外空気が室内に供給される換気状態となるように、加湿ユニットの各種機器を制御する。このため、室外温度値が所定の第6温度値未満である場合を除き、水フィルタフェーズF2では、脱臭運転制御部によって、除湿動作と給気動作とが同時に実行される。
【0139】
このように、室外温度が室内温度よりも極端に低い場合に給気動作を停止させることで、室外空気の供給による室内空気の温度低下を抑制することができる。また、給気停止状態で給気動作が行われた場合であっても、空気清浄フィルタにおいて空気中のニオイ成分を吸着することができるため、室内の脱臭を行うことができる。
【0140】
これによって、室内のニオイ成分を空気中に放散させる効果を向上させることができるため、脱臭効率を向上させることができる。
【0141】
また、これに加えて、水フィルタフェーズF2において、図7に示すAゾーンでは、冷房運転時の冷房動作が行われ、BゾーンおよびCゾーンでは、除湿動作が行われ、Cゾーンでは、サーモオフ状態の除湿動作が行われてもよい。なお、各ゾーンは、Aゾーン、Bゾーン、Cゾーン、Dゾーンの順に室外温度値が高いものとする。
【0142】
(B)
上記実施形態では、脱臭運転のスチームアウトフェーズF1および水フィルタフェーズF2において、外気温度サーミスタ91によって検知される外気温度値に基づいて、給気動作の加湿状態と換気状態とが切り換えられている。
【0143】
これに代えて、室外空気の湿度に基づいて、給気動作の換気状態と加湿状態とが切り換えられてもよい。例えば、図8に示すように、加湿ユニット50が室外空気の湿度を検知する室外湿度センサ193を備えている空気調和機1について説明する。この空気調和機1では、給気動作において、室外湿度センサ193によって検知される室外湿度値に基づいて、加湿状態と換気状態とが切り換えられる。具体的には、通常運転制御部161および脱臭運転制御部162は、室外湿度値が所定の第1湿度(例えば、60%)値以上である場合には、換気状態の給気動作を行う。また、通常運転制御部161および脱臭運転制御部162は、室外湿度値が所定の第1湿度(例えば、60%)値未満である場合には、加湿状態の給気動作を行う。すなわち、通常運転制御部161および脱臭運転制御部162は、室外湿度が高い場合には給気動作の状態を換気状態に切り換え、室外湿度が低い場合には給気動作の状態を加湿状態に切り換える。このため、給気動作が行われることによって、室外の高湿度な空気を室内に供給することができる。
【0144】
また、室外空気の湿度が室外温度から推定されることによって、換気状態と加湿状態とが切り換えられる場合と比較して、室外空気の湿度が誤って判定されるおそれを減らすことができる。なお、図8において、符号160は制御部を示し、符号163は風量調整部を示している。また、図8では、制御部160、通常運転制御部161、脱臭運転制御部162、風量調整部163および室外湿度センサ193以外の符号については、上記実施形態と同様の符号を付している。
【0145】
また、給気動作の換気状態と加湿状態とは、吸排気ホース内において結露が発生しているか否かに基づいて、切り換えられてもよい。例えば、高湿度領域で急激に電気抵抗値が上昇する結露センサが吸排気ホース内部に設けられている空気調和機について説明する(図9参照)。
【0146】
この空気調和機では、加湿状態の給気動作が行われているときに、結露センサから送信される電気抵抗値が所定値以上となった場合には、制御部は、吸排気ホース内が結露状態であると判定し、加湿状態から換気状態に状態を切り換えるか、もしくは、給気動作を停止する。また、換気状態の給気動作が行われているときに、結露センサから送信される電気抵抗値が所定値未満となった場合には、制御部は、吸排気ホース内が非結露状態であると判定し、換気状態から加湿状態に状態を切り換えるか、もしくは、給気動作を開始させる。このように、この空気調和機では、吸排気ホース内の結露状態を外気温度等によって推定していた従来の空気調和機と比較して、吸排気ホース内の状態をより直接的に監視することができる。したがって、実際には吸排気ホースが結露していないにもかかわらず室内機に供給される加湿空気の量が調節される等の加湿ユニットの機能が制限されるおそれを減らすことができる。
【0147】
(C)
上記実施形態では、室外空気が供給される吸排気ホース6端部の開口は、室内熱交換器11の前方に設けられている。このため、室外空気は、室内熱交換器11の表面に吹き出されている。
【0148】
これに代えて、室外の空気が、室内機内を通らずに、加湿ユニットから室内に直接供給されるような構成にしてもよい。このような構成にすることによって、脱臭運転の水フィルタフェーズにおいて、室内に除湿されていない高湿度な空気を供給することができる。
【0149】
(D)
上記実施形態では、水フィルタフェーズにおいて除湿動作と加湿動作とが同時に実行されているが、これに代えて、除湿動作と加湿動作とが交互に実行されてもよい。また、脱臭運転において、給気動作によって室外空気を室内に供給した後に、除湿動作によって室内の空気が除湿されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、給気動作と除湿動作とを同時に実行することで室内の脱臭効率を向上させることができるため、脱臭運転を行う空気調和機への適用が有効である。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の実施形態に係る空気調和機の正面図。
【図2】本発明の実施形態に係る空気調和機の概略冷媒回路図。
【図3】室外機の分解斜視図。
【図4】本発明の実施形態に係る空気調和機の備える制御部の制御ブロック図。
【図5】脱臭運転における制御動作の一例を示す図。
【図6】スチームアウトフェーズにおける除湿動作と給気動作とを示す図。
【図7】変形例(A)の水フィルタフェーズにおける除湿動作と給気動作とを示す図。
【図8】変形例(B)に係る空気調和機の備える制御部の制御ブロック図。
【図9】変形例(B)に係る結露センサの電気抵抗値と結露状態および非結露状態とを示す図。
【符号の説明】
【0152】
1空気調和機
11 室内熱交換器
11a 第1室内熱交換器(第1室内熱交換部)
11b 第2室内熱交換器(第2室内熱交換部)
50 加湿ユニット(給気手段)
54 吸排気ファン(給気ファン)
57 加湿部
91 外気温度サーミスタ(温度検知部)
193 室外湿度センサ(湿度検知部)
60,160 制御部
63,163 風量調整部
F1 スチームアウトフェーズ(高湿度フェーズ)
F2 水フィルタフェーズ(除湿加湿同時実行フェーズ)
F3 調湿フェーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空気との間で熱交換を行う室内熱交換器(11)と、
前記室内の空気よりも含有水分量の多い多湿空気を前記室内に給気可能な給気手段(50)と、
前記室内熱交換器において前記室内の空気が除湿される除湿動作と前記給気手段によって前記多湿空気が前記室内に供給される給気動作とが同時に実行される除湿加湿同時実行フェーズ(F2)を含む脱臭運転を行う制御部(60,160)と、
を備える空気調和機(1)。
【請求項2】
前記給気手段は、前記室内へ供給される空気を加湿することが可能な加湿部(57)を有する、
請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記制御部は、前記給気手段を制御することで、前記加湿部によって生成された加湿空気を含む前記多湿空気を前記室内に供給する第1状態と、室外の空気を含む前記多湿空気を前記室内に供給する第2状態とに切り換える、
請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記室外の空気の温度を検知する温度検知部(91)を更に備え、
前記制御部は、前記温度検知部の検知結果に基づいて、前記第1状態と前記第2状態とを切り換える、
請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記室外の空気の湿度を検知する湿度検知部(193)を更に備え、
前記制御部は、前記湿度検知部の検知結果に基づいて、前記第1状態と前記第2状態とを切り換える、
請求項3に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記制御部は、前記脱臭運転において、前記給気動作を含む高湿度フェーズ(F1)、前記除湿加湿同時実行フェーズ、前記除湿動作を含む調湿フェーズ(F3)の順にフェーズを切り換える、
請求項1から5のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項7】
前記制御部は、前記高湿度フェーズにおいて、前記室内の温度が所定温度以上となるように制御し、かつ、前記室内の湿度が所定湿度以上となるように制御する、
請求項6に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記室内熱交換器は、第1室内熱交換部(11a)と第2室内熱交換部(11b)とを有し、
前記制御部は、前記除湿加湿同時実行フェーズにおいて、前記室内の温度に基づいて、前記第1室内熱交換部を放熱器または吸熱器として機能させ、前記第2室内熱交換部を吸熱器として機能させる、
請求項1から7のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項9】
前記給気手段は、前記室外の空気を前記室内に供給するための給気ファン(54)を有し、
前記制御部は、前記給気ファンの風量を調整する風量調整部(63,163)を有し、前記脱臭運転において前記風量調整部を用いて前記給気ファンの風量を調整することで前記多湿空気の前記室内への供給量の制御を行う、
請求項1から8のいずれかに記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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