説明

空気調和機

【課題】電食を防止することができる空気調和機を提供する。
【解決手段】シャフトと、シャフトに固定されたロータと、ロータを収納する固定子部と、シャフトに固定され、シャフトと同電位の軸受内輪と、軸受内輪と対となる軸受外輪と、固定子部と軸受外輪との間に介在し、軸受外輪を支持し、軸受外輪と同電位となるブラケット6、7と、を有する電動機と、軸受内輪と軸受外輪とをブラケット6、7を介して電気的に接続して、軸受内輪と軸受外輪とを導通状態にし、対地に対しては非導通状態にする短絡回路64とを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関し、特に、空気調和機の室内機のファンを駆動する電動機の保護回路を備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機として、例えば、「吸込口と吹出口とを本体に備え、同本体内に、前記吸込口から吸込まれた空気を熱交換する熱交換器と、駆動機構であるファンモータに連結されたファンとを設け、同ファンが、ボスを備えた両側のフランジと、同フランジ間に架設された複数のブレードとからなり、前記ファンモータの回転軸に前記ボスの一端が連結され、他端のボスに突設された軸がスベリ軸受に軸支された空気調和機において、前記ボスを導電性を有する部材から形成し、両端の同ボス間を導通手段により接続するとともに、前記スベリ軸受にアース手段を接続し、前記ファンモータの回転軸と、前記ボスと、前記導通手段と、前記スベリ軸受と、前記アース手段とに至るアース経路を形成してなることを特徴とする空気調和機」というものがある。このようなものにおいては、「アース台、ブラシ、支持具等からなるアース装置を空気調和機内部に新たに設けることを不要とすることができ、これに伴い空気調和機のコスト低減を図ることができる」とされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−121807号公報(請求項1及び段落[0009])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の空気調和機(特許文献1)においては、電動機のシャフト、クロスフローファン、すべり軸受け、対地という順に電動機の回転軸で発生した電荷を放電するアース経路を形成することにより、電動機の軸受けの電食を防いでいた。このため、軸受内輪と軸受外輪との電位差は無くなっているわけではなかった。また、このようなアース経路においては、電源電圧の変動があれば、それに伴いアースに対する電位も変動するため、軸受内輪と軸受外輪との電位差が大きくなることもあった。また、アース線に外部からのノイズや雷が重畳したときには、軸受内輪と軸受外輪との間にサージが生じてしまい、過渡的に軸受内輪と軸受外輪との電位差は極めて大きくなることもあった。
【0005】
このため、電動機の軸受内輪と軸受外輪との間で生じる電位差により、軸受内輪と軸受外輪との間で放電することがあった。そのため、軸受の転送面には波状磨耗が生じることがあった。
【0006】
また、近年、エアコン等に使用される電動機は省エネが要求され続けている。そのため、エアコン等で使用される電動機としては、効率の高いDCブラシレスモータが大半を占めるようになっている。DCブラシレスモータは、PWM方式(パルス幅変調)で駆動する。すなわち、DCブラシレスモータはインバータ制御により駆動される。よって、DCブラシレスモータにはインバータで高周波スイッチング電圧が印加される。このことからも、DCブラシレスモータの軸受内輪と軸受外輪との間に生じる電位差により、軸受内輪と軸受外輪との間で放電することがあった。そのため、軸受の転送面には波状磨耗が生じることがあった。
【0007】
この結果、軸受けの転送面には電食が生じてしまうことがあるので、従来の空気調和機では電食の発生を防止することができないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、電食の発生を防止することができる空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の空気調和機は、シャフトと、前記シャフトに固定されたロータと、前記ロータを収納する固定子部と、前記シャフトに固定され、前記シャフトと同電位の軸受内輪と、前記軸受内輪と対となる軸受外輪と、前記固定子部と前記軸受外輪との間に介在し、前記軸受外輪を支持し、前記軸受外輪と同電位となるブラケットと、を有する電動機と、前記軸受内輪と前記軸受外輪とを前記ブラケットを介して電気的に接続して、前記軸受内輪と前記軸受外輪とを導通状態にし、対地に対しては非導通状態にする短絡回路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、電食の発生を防止することができることにより、長寿命で信頼性の高い空気調和機を提供することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における空気調和機を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1における空気調和機の室内機の分解斜視図である。
【図3】従来の空気調和機の電動機の電食を防ぐ構造を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1における電動機ASSYの構成図である。
【図5】本発明の実施の形態1における電動機ASSYの断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるモールド電動機の構成図である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるモールド電動機の断面図である。
【図8】従来の空気調和機のモールド電動機を用いた電気的モデルの一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1におけるモールド電動機を組み込んだ空気調和機の室内機の略図とその第1の電気的配線の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1におけるクロスフローファンを用いた電気的モデルの一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2におけるモールド電動機を組み込んだ空気調和機の室内機の略図とその第2の電気的配線の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2におけるモールド電動機を組み込んだ空気調和機の室内機のモールド電動機を中心に拡大した配線図である。
【図13】本発明の実施の形態2におけるブラシを用いた電気的モデルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における空気調和機を示す概略図である。図1に示すように、空気調和機は、空気調和機の室内機52及び空気調和機の室外機53等を備えている。空気調和機の室内機52及び空気調和機の室外機53は、冷房のときに室内の熱を室外に放出し、暖房のときに室外の熱を室内へ取り入れる。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態1における空気調和機の室内機の分解斜視図である。図2に示すように、空気調和機の室内機52は、クロスフローファン9、電動機第1マウント16、電動機第2マウント17、電動機ASSY18、室内機ベース20、軸受けマウント55、すべり軸受け56、及びクロスフローファンのシャフト57等を備えている。電動機ASSY18は、電動機第1マウント16及び電動機第2マウント17の両方で挟み込むようにして支持固定される。そして、一体となった電動機ASSY18、電動機第1マウント16、及び電動機第2マウント17は、室内機ベース20に取り付けられる。また、モールド電動機は電動機ASSY18の構成要素の一つであり、モールド電動機のシャフトにはクロスフローファン9が取り付けられる。クロスフローファンのシャフト57にはすべり軸受け56が取り付けられる。すべり軸受け56は軸受けマウント55に取り付けられる。このようにして、空気調和機の室内機52は形成される。この後、熱交換器や基板等が取り付けられる。そして、空気調和機の室内機52は、基板の制御信号に基づいてモールド電動機がクロスフローファン等を回転させることで、熱交換器が熱交換した冷気や暖気等の気体を室内に送風し、室内の冷房と暖房とを行う。
【0015】
なお、「クロスフローファン9」は、本発明における「ファン」に相当する。
なお、上記で説明した空気調和機は一例を示すものであり、これに限定されるものではない。例えば、クロスフローファン9の代わりにシロッコファンを用いた空気調和機の室内機であってもよい。
【0016】
次に、従来の空気調和機における電食を防ぐ構造について説明し、電動機の構造について説明した後、その電動機の構造に依存せずに電食を防ぐ構造について説明する。
【0017】
まず、図3は、従来の空気調和機の電動機の電食を防ぐ構造を示す図である。図3に示すように、従来の空気調和機は、クロスフローファン9、電動機ASSY18、軸受けマウント55、すべり軸受け56、クロスフローファンのシャフト57、及びアース65等を備えている。また、図3に示すように、従来の空気調和機は、電動機の電食を防ぐためにアース65を設けている。具体的には、電動機のシャフトと、クロスフローファン9と、すべり軸受け56と、対地とを導通状態にすることでアース経路が形成されている。
【0018】
次に、電動機の構造について、図4〜7を用いて説明する。
【0019】
図4は、本発明の実施の形態1における電動機ASSY18の構成図である。図5は、本発明の実施の形態1における電動機ASSY18の断面図である。図6は、本発明の実施の形態1におけるモールド電動機の構成図である。図7は、本発明の実施の形態1におけるモールド電動機の断面図である。
【0020】
図4に示すように、電動機ASSY18は、シャフト側にラバーマウント14が設けられ、反シャフト側にラバーマウント15が設けられている。ラバーマウント14、15は、リング状のゴム等から形成される部品である。ラバーマウント14、15はモールド電動機の振動を吸収する。よって、空気調和機は、ラバーマウント14、15を装着したモールド電動機を組み込むことで、内部の振動を防止することができる。すなわち、ラバーマウント14、15は防振の機能を有する。
【0021】
図5に示すように、電動機ASSY18は、巻線2、モールド樹脂3、ロータ4、基板5、第1ブラケット6、第2ブラケット7、絶縁部8、固定子部10、シャフト11、シャフト側軸受12、反シャフト側軸受13、ラバーマウント14、ラバーマウント15、コア30、軸受外輪34、軸受内輪35、軸受外輪36、及び軸受内輪37等を備えている。
【0022】
図6に示すように、モールド電動機は、第1ブラケット6及び第2ブラケット7により、第1ブラケット6及び第2ブラケット7の内部にそれぞれ配置される軸受外輪34、軸受内輪35、軸受外輪36、及び軸受内輪37を支持固定する。
【0023】
図7に示すように、モールド電動機は、電動機ASSY18の構成要素のうち、ラバーマウント14、15以外の構成要素から形成される。すなわち、モールド電動機は、巻線2、モールド樹脂3、ロータ4、基板5、第1ブラケット6、第2ブラケット7、絶縁部8、固定子部10、シャフト11、シャフト側軸受12、反シャフト側軸受13、コア30、軸受外輪34、軸受内輪35、軸受外輪36、及び軸受内輪37等を備えている。
【0024】
図7に示すように、鋼板を積層したコア30には、絶縁部8を介在させて、巻線2が巻かれる。次いで、絶縁部8が基板5に取り付けられることで、コア30、絶縁部8、巻線2、基板5を備えた固定子部10が形成される。基板5は、モールド電動機を駆動する駆動素子等の電子部品を実装している。次いで、固定子部10及び第1ブラケット6をモールド樹脂3で封入することにより、固定子モールドが成形される。次いで、ロータ4は、空隙を介して固定子モールドに挿入され、第1ブラケット6でシャフト側軸受12が支持され、第2ブラケット7で反シャフト側軸受13が支持される。シャフト側軸受12は軸受外輪36と軸受内輪37とから形成され、軸受外輪36と軸受内輪37との間に鉄ボールやグリス等の潤滑剤を設ける。反シャフト側軸受13は軸受外輪34と軸受内輪35とから形成され、軸受外輪34と軸受内輪35との間に鉄ボールやグリス等の潤滑剤を設ける。軸受内輪37と軸受内輪35にはシャフト11がロータ4と共に固定され、ロータ4の回転に応じてシャフト11が回転する。このようにして、モールド電動機が形成される。
【0025】
なお、上記で説明した電動機ASSY18は一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
なお、上記で説明したモールド電動機は一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
なお、「モールド電動機」は、本発明における「電動機」に相当する。
なお、「第1ブラケット6」、「第2ブラケット7」は、本発明における「ブラケット」に相当する。
【0026】
次に、図8で従来のモールド電動機の電気的モデルを説明した後、上記で説明した電動機ASSY18の構造に依存せずに電食を防ぐ構造について図9〜13を用いて説明する。
【0027】
図8は、従来の空気調和機のモールド電動機を用いた電気的モデルの一例を示す図である。図8に示すように、モールド電動機は、各部品間でそれぞれ浮遊容量としての静電容量が存在し、それぞれ電気的に接続されている状態である。
【0028】
例えば、ロータ4とコア30との間には、コア−ロータ間容量23が存在する。また、回路やコイル等を含む部分をINV部(インバータ部)とすると、INV部24とコア30との間には、INV部−コア間容量22が存在する。
【0029】
また、ロータ4とシャフト11は、一体的に形成されており、同電位である。ロータ4とINV部24との間、すなわち、シャフト11とINV部24との間には、その他の容量として、その他容量21が存在する。
【0030】
コア30と第2ブラケット7との間には、コア−第2ブラケット間容量39が存在する。INV部24と第2ブラケット7との間には、INV部−第2ブラケット間容量26が存在する。
【0031】
第2ブラケット7と軸受外輪34とは同電位であり、シャフト11と軸受内輪35とは同電位である。軸受外輪34と軸受内輪35との間には、軸受内外輪間浮遊容量27が存在する。つまり、第2ブラケット7とシャフト11との間には、軸受内外輪間浮遊容量27が存在する。また、軸受内外輪間浮遊容量27は反シャフト側軸受13の静電容量である。
【0032】
コア30と第1ブラケット6との間には、コア−第1ブラケット間容量43が存在する。第1ブラケット6とINV部24との間には、INV部−第1ブラケット間容量40が存在する。
【0033】
第1ブラケット6と第2ブラケット7との間には、第1ブラケット−第2ブラケット間容量42が存在する。
【0034】
第1ブラケット6と軸受外輪36とは同電位であり、シャフト11と軸受内輪37とは同電位である。軸受外輪36と軸受内輪36との間には、軸受内外輪間浮遊容量28が存在する。つまり、第1ブラケット6とシャフト11との間には、軸受内外輪間浮遊容量28が存在する。また、軸受内外輪間浮遊容量28はシャフト側軸受12の静電容量である。
【0035】
このような電気的構成を前提として、駆動素子を実装した基板5から巻線2にINV部24の電源を印加した場合について説明する。
【0036】
INV部24の電源が印加されると、上記で説明した浮遊容量が合成される。次いで、軸受外輪34と軸受内輪35との間に浮遊容量27が発生し、軸受外輪36と軸受内輪37との間に浮遊容量28が発生する。これにより、軸受外輪34、36と軸受内輪35、37との間でそれぞれ電位差が生じ、電圧が発生する。この状態で、ある所定の値以上の電位差となったとき、軸受外輪34、36と軸受内輪35、37との間のグリス間の絶縁破壊に至ることで放電が生じる。このとき、この放電のエネルギーは軸受の転送面に傷をつける。このようにして、電食の現象が生じることとなる。そして、このような放電が繰り返し生じることにより、転送面には波状磨耗が発生する。その結果、モールド電動機に異常音が発生し、空気調和機そのものの不具合の原因となる。
【0037】
なお、上記で説明した浮遊容量はモールド電動機の構造によって異なる。すなわち、モールド電動機には、そのモールド電動機の仕様に基づいた構造に応じて異なった浮遊容量が存在することとなる。
【0038】
図8においては、軸受外輪34、36と軸受内輪35、37との間の浮遊容量は、軸受の内外輪間の浮遊容量と軸受内外輪に接触する系の浮遊容量との総和となる。電動機の構造が異なる場合、軸受内外輪の各系の浮遊容量が変わってくる。そのため、これらの浮遊容量を減らす、あるいは、これらの浮遊容量をゼロ化することにより、電食を防止することが可能となる。ここで、平行平板導体の静電容量の式を式(1)に示す。
【0039】
【数1】

【0040】
式(1)において、Cを少なくすることにより、電食を防止することができるようになる。また、式(1)において、軸受間のCのバランスをとる、すなわち、軸受間のCを同一容量とすることで、電位差をなくして電食を防止することができるようになる。また、式(1)において、軸受間のCをゼロ化する、すなわち、軸受間を短絡することで電食を防止することができるようになる。
【0041】
要するに、軸受外輪34、36と軸受内輪35、37との電位差をなくして導通状態にすることにより、電食を防止する。それにより、モールド電動機の長期信頼性を向上させることができ、長寿命のモールド電動機を提供できるようになる。そして、そのようなモールド電動機を空気調和機が備えることにより、長寿命で信頼性の高い空気調和機を提供することができるようになる。また、電食を防止することにより、電食が原因の騒音発生についても防止することができるようになる。
【0042】
なお、上記で説明した電気的モデルは一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0043】
次に、上記で説明したように電食を防止する実施の形態の一例について具体的に図9〜13を用いて説明する。
【0044】
図9は、本発明の実施の形態1におけるモールド電動機を組み込んだ空気調和機の室内機の略図とその第1の電気的配線の一例を示す図である。図9に示すように、第1の電気的配線63は、モールド電動機のシャフト11、第1ブラケット6、第2ブラケット7、クロスフローファン9、クロスフローファンのシャフト57、すべり軸受け56、及び軸受けマウント55を接続している。
【0045】
クロスフローファン9は、例えば、導電性樹脂のコーティングや導電性樹脂の粉末を混合成型することにより、導電性を持たせている。クロスフローファンのシャフト57は、例えば、金属で形成することにより、導電性を持たせている。すべり軸受け56は、例えば、導電性樹脂あるいは金属で形成することにより、導電性を持たせている。軸受けマウント55は、例えば、カーボン等の導電性物質を含有させることにより導電性を持たせている。軸受けマウント55、第1ブラケット6、及び第2ブラケット7は、図2に示す室内機ベース20に導電性を持たせる、あるいは、クロスフローファン9の前方に設置する導電性の熱交換器を介して配線を行うことにより、電気的に接続させる。このようにして形成された第1の電気的配線63は対地に対してアースをとらないようにする。ただし、空気調和機の室内機52は対地に対してアースをとるようにする。すなわち、第1の電気的配線63は、対地に対しては電気的に絶縁された状態でありつつ、電動機のシャフト11、クロスフローファン9、クロスフローファンのシャフト57、すべり軸受け56、軸受けマウント55、第1ブラケット6、及び第2ブラケット7については電気的に導通させる。
【0046】
なお、「第1の電気的配線63」は、本発明における「短絡回路」に相当する。すなわち、第1の電気的配線63とは、電動機の保護回路のことである。
【0047】
なお、上記で説明した電気的配線は一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
なお、モールド電動機のシャフト11、クロスフローファン9、クロスフローファンのシャフト57、すべり軸受け56、軸受けマウント55、第1ブラケット6、及び第2ブラケット7の材質等については一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0048】
ただし、電動機のシャフト11、クロスフローファン9、クロスフローファンのシャフト57、すべり軸受け56、軸受けマウント55、第1ブラケット6、及び第2ブラケット7については、導電性を持たせることとする。
【0049】
次に、上記で説明した電気的接続を前提として、モールド電動機の各部品の電位について図10を用いて説明する。
【0050】
図10は、本発明の実施の形態1におけるクロスフローファンを用いた電気的モデルの一例を示す図である。
【0051】
なお、図10の電気的モデルにおいて、特に記述しない項目については図8の電気的モデルと同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0052】
図9で説明する第1の電気的配線63により、図10に示す、シャフト11の電位とシャフト側軸受12の軸受外輪36の電位とが同じとなり、シャフト11の電位と反シャフト側軸受13の軸受外輪34の電位とが同じとなる。すなわち、シャフト11とシャフト側軸受12の軸受外輪36との電位差がゼロとなり、シャフト11と反シャフト側軸受13の軸受外輪34との電位差がゼロとなる。具体的には、図10に示すように、シャフト11、クロスフローファン9、クロスフローファンのシャフト57、すべり軸受け56、軸受けマウント55、第1ブラケット6、第2ブラケット7、軸受外輪34、軸受内輪35、軸受外輪36、及び軸受内輪37が全て同電位となる。
【0053】
すなわち、軸受内外輪間浮遊容量27、28がゼロとなる。これは、上述した式(1)のCがゼロとなることを意味する。これにより、軸電流の発生を抑えることができる。また、第1の電気的配線63は、アース接続していない。よって、対地による直接的な影響を防ぐことができる。このため、雷やノイズ等が電源電圧に重畳したとしても軸電流の発生を防ぐことができ、また、その他不安定な電源による軸電流の発生を防ぐことができる。
【0054】
このようにして、電食を防止することができる。それにより、電動機の長期信頼性を向上させることができ、長寿命の電動機を提供できる。そして、そのような電動機を空気調和機が備えることにより、長寿命で信頼性の高い空気調和機を提供することができる。また、電食を防止することにより、電食が原因の騒音発生についても防止することができる。
【0055】
換言すれば、モールド電動機のシャフト11と、導電性である第1ブラケット6及び導電性である第2ブラケット7とを空気調和機の部品等を用いることにより電気的に接続し、そのように形成した第1の電気的配線63はアース接続しないことにより、軸受けの内外輪間で電圧が発生せず、軸電流が流れなくなる。この結果、モールド電動機の構造が変更されたとしても、軸電流を流さないようにする構成がモールド電動機の構造と独立しているため、電食を防止することができる。それにより、空気調和機の設計の自由度を増大させることができる。すなわち、効率や性能を低下させることなく、品質を保持しつつ電食を防止することができる。
【0056】
また、電源の影響を考慮する必要がないため、電源のノイズレベルを低減する構成を設ける必要がない。そのため、空気調和機のコストを低減することができる。さらに、電食を防ぐことができるため、電食による騒音の発生を防止することができる。その結果、長寿命で高信頼性のモールド電動機とそのモールド電動機を備えた空気調和機を提供することができる。
【0057】
なお、第1の電気的配線63はアース接続していない。すなわち、第1の電気的配線63は、対地とは非導通状態であるため、第1の電気的配線63そのものは対地とは絶縁状態である。したがって、通常、室内機ベース20に接続されているアースにノイズや雷が重畳した場合であっても、対地とは非導通状態であるとともに、室内機ベース20とは絶縁状態であるため、第1の電気的配線63がその影響を受けることはない。したがって、アース接続されていることによって対地と導通状態になり、そのことが原因によって電食の悪化が引き起こされることを回避することができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態1においては、シャフト11と、シャフト11に固定されたロータ4と、ロータ4を収納する固定子部10と、シャフト11に固定され、シャフト11と同電位の軸受内輪35、37と、軸受内輪35、37と対となる軸受外輪34、36と、固定子部10と軸受外輪34、36との間に介在し、軸受外輪34、36を支持し、軸受外輪34、36と同電位となる第1ブラケット6、第2ブラケット7と、を有するモールド電動機と、軸受内輪35、37と軸受外輪34、36とを第1ブラケット6,第2ブラケット7を介して電気的に接続して、軸受内輪35、37と軸受外輪34、36とを導通状態にし、対地に対しては非導通状態にする第1の電気的配線63とを備えたので、電食を防止することができる。それにより、電動機の長期信頼性を向上させることができ、長寿命の電動機を提供できる。そして、そのような電動機を空気調和機が備えることにより、長寿命で信頼性の高い空気調和機を提供することができる。また、電食を防止することにより、電食が原因の騒音発生についても防止することができる。
【0059】
また、本実施の形態1においては、クロスフローファン9と、クロスフローファン9の回転を伝えるクロスフローファンのシャフト57と、クロスフローファンのシャフト57の回転を支持するすべり軸受け56と、すべり軸受け56を支持する軸受けマウント55と、を有し、モールド電動機のシャフト11、クロスフローファン9、クロスフローファンのシャフト57、すべり軸受け56、軸受けマウント55、及び第1ブラケット6、第2ブラケット7は、導電性の材料から形成され、第1の電気的配線63は、モールド電動機のシャフト11、クロスフローファン9、クロスフローファンのシャフト57、すべり軸受け56、軸受けマウント55、及び第1ブラケット6、第2ブラケット7を電気的に接続して、軸受内輪35、37と軸受外輪34、36とを導通状態にするようにしたので、電食を防止することができる。それにより、電動機の長期信頼性を向上させることができ、長寿命の電動機を提供できる。そして、そのような電動機を空気調和機が備えることにより、長寿命で信頼性の高い空気調和機を提供することができる。また、電食を防止することにより、電食が原因の騒音発生についても防止することができる。
【0060】
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2におけるモールド電動機を組み込んだ空気調和機の室内機の略図とその第2の電気的配線の一例を示す図である。
【0061】
なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0062】
実施の形態1との相違点は、導電性ブラシ61を用いることによりモールド電動機のシャフト11、第1ブラケット6、及び第2ブラケット7を短絡する点である。
【0063】
図11に示すように、第2の電気的配線64は、クロスフローファン9を用いずに、モールド電動機のシャフト11に対して導電性ブラシ61を接触させることにより、モールド電動機のシャフト11、第1ブラケット6、及び第2ブラケット7を電気的に接続する。なお、導電性ブラシ61の形状や材質等については特に限定するものではなく、導電性のものであればよい。
【0064】
具体的な配線については図12を用いて説明する。
【0065】
図12は、本発明の実施の形態2におけるモールド電動機を組み込んだ空気調和機の室内機52のモールド電動機を中心に拡大した配線図である。図12に示すように、第2の電気的配線64により、モールド電動機のシャフト11、導電性ブラシ61、第1ブラケット6、及び第2ブラケット7が電気的に導通する。このようにして形成された第2の電気的配線64は対地に対してアースをとらないようにする。ただし、空気調和機の室内機52は対地に対してアースをとるようにする。すなわち、第2の電気的配線64は、対地に対しては電気的に絶縁された状態でありつつ、電動機のシャフト11、導電性ブラシ61、第1ブラケット6、及び第2ブラケット7については電気的に導通させる。
【0066】
なお、「第2の電気的配線64」は、本発明における「短絡回路」に相当する。すなわち、第2の電気的配線64とは、電動機の保護回路のことである。
【0067】
なお、上記で説明した導電性ブラシ61は一例を示すものであり、これに限定されるものではない。例えば、導電性ブラシ61の代わりに接続端子等を用いて短絡させてもよい。
なお、上記で説明した電気的配線は一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0068】
次に、上記で説明した電気的接続を前提として、モールド電動機の各部品の電位について図13を用いて説明する。
【0069】
図13は、本発明の実施の形態2におけるブラシを用いた電気的モデルの一例を示す図である。
【0070】
なお、図13の電気的モデルにおいて、特に記述しない項目については図8の電気的モデルと同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0071】
図11、12で説明する第2の電気的配線64により、図13に示す、シャフト11の電位とシャフト側軸受12の軸受外輪36の電位とが同じとなり、シャフト11の電位と反シャフト側軸受13の軸受外輪34の電位とが同じとなる。すなわち、シャフト11とシャフト側軸受12の軸受外輪36との電位差がゼロとなり、シャフト11と反シャフト側軸受13の軸受外輪34との電位差がゼロとなる。具体的には、図13に示すように、シャフト11、導電性ブラシ61、第1ブラケット6、第2ブラケット7、軸受外輪34、軸受内輪35、軸受外輪36、及び軸受内輪37が全て同電位となる。
【0072】
すなわち、軸受内外輪間浮遊容量27、28がゼロとなる。これは、上述した式(1)のCがゼロとなることを意味する。これにより、軸電流の発生を抑えることができる。また、第2の電気的配線64は、アース接続していない。よって、対地による直接的な影響を防ぐことができる。このため、雷やノイズ等が電源電圧に重畳したとしても軸電流の発生を防ぐことができ、また、その他不安定な電源による軸電流の発生を防ぐことができる。
【0073】
このようにして、電食を防止することができる。それにより、モールド電動機の長期信頼性を向上させることができ、長寿命のモールド電動機を提供できる。そして、そのようなモールド電動機を空気調和機が備えることにより、長寿命で信頼性の高い空気調和機を提供することができる。また、電食を防止することにより、電食が原因の騒音発生についても防止することができる。
【0074】
換言すれば、モールド電動機のシャフト11と、導電性である第1ブラケット6及び導電性である第2ブラケット7とを空気調和機の部品等を用いることにより電気的に接続し、そのように形成した第2の電気的配線64はアース接続しないことにより、軸受けの内外輪間で電圧が発生せず、軸電流が流れなくなる。この結果、モールド電動機の構造が変更されたとしても、軸電流を流さないようにする構成がモールド電動機の構造と独立しているため、電食を防止することができる。それにより、空気調和機の設計の自由度を増大させることができる。すなわち、効率や性能を低下させることなく、品質を保持しつつ電食を防止することができる。また、電源の影響を考慮する必要がないため、電源のノイズレベルを低減する構成を設ける必要がない。そのため、空気調和機のコストを低減することができる。さらに、電食を防ぐことができるため、電食による騒音の発生を防止することができる。その結果、長寿命で高信頼性のモールド電動機とそのモールド電動機を備えた空気調和機を提供することができる。
【0075】
なお、第1の電気的配線63はアース接続していない。すなわち、第1の電気的配線63は、対地とは非導通状態であるため、第1の電気的配線63そのものは対地とは絶縁状態である。したがって、通常、室内機ベース20に接続されているアースにノイズや雷が重畳した場合であっても、対地とは非導通状態であるとともに、室内機ベース20とは絶縁状態であるため、第1の電気的配線63がその影響を受けることはない。したがって、アース接続されていることによって対地と導通状態になり、そのことが原因によって電食の悪化が引き起こされることを回避することができる。
【0076】
以上のように、本実施の形態2においては、モールド電動機は、導電性ブラシ61を有し、第2の電気的配線64は、モールド電動機のシャフト11、第1ブラケット6、第2ブラケット7、及び導電性ブラシ61を電気的に接続して、軸受内輪35、37と軸受外輪34、36とを導通状態にするようにしたので、電食を防止することができる。それにより、モールド電動機の長期信頼性を向上させることができ、長寿命のモールド電動機を提供できる。そして、そのようなモールド電動機を空気調和機が備えることにより、長寿命で信頼性の高い空気調和機を提供することができる。また、電食を防止することにより、電食が原因の騒音発生についても防止することができる。
【0077】
また、本実施の形態1、2においては、第1の電気的配線63、第2の電気的配線64は、モールド電動機の外側に形成するようにしたので、モールド電動機の構造に依存せずに電食を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0078】
2 巻線、3 モールド樹脂、4 ロータ、5 基板、6 第1ブラケット、7 第2ブラケット、8 絶縁部、9 クロスフローファン、10 固定子部、11 シャフト、12 シャフト側軸受、13 反シャフト側軸受、14,15 ラバーマウント、16 電動機第1マウント、17 電動機第2マウント、18 電動機ASSY、19 電動機マウントASSY、20 室内機ベース、21 その他容量、22 INV部−コア間容量、23 コア−ロータ間容量、24 INV部、26 INV部−第2ブラケット間容量、27 軸受内外輪間浮遊容量、30 コア、34,36 軸受外輪、35,37 軸受内輪、39 コア−第2ブラケット間容量、40 INV部−第1ブラケット間容量、42 第1ブラケット−第2ブラケット間容量、43 コア−第1ブラケット間容量、52 空気調和機の室内機、53 空気調和機の室外機、55 軸受けマウント、56 すべり軸受け、57 クロスフローファンのシャフト、61 導電性ブラシ、63 第1の電気的配線、64 第2の電気的配線、65 アース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトに固定されたロータと、
前記ロータを収納する固定子部と、
前記シャフトに固定され、前記シャフトと同電位の軸受内輪と、
前記軸受内輪と対となる軸受外輪と、
前記固定子部と前記軸受外輪との間に介在し、前記軸受外輪を支持し、前記軸受外輪と同電位となるブラケットと、を有する電動機と、
前記軸受内輪と前記軸受外輪とを前記ブラケットを介して電気的に接続して、前記軸受内輪と前記軸受外輪とを導通状態にし、対地に対しては非導通状態にする短絡回路と
を備えたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
ファンと、
前記ファンの回転を伝えるファンのシャフトと、
前記ファンのシャフトの回転を支持するすべり軸受けと、
前記すべり軸受けを支持する軸受けマウントと、
を有し、
前記電動機の前記シャフト、前記ファン、前記ファンのシャフト、前記すべり軸受け、前記軸受けマウント、及び前記ブラケットは、導電性の材料から形成され、
前記短絡回路は、
前記電動機の前記シャフト、前記ファン、前記ファンのシャフト、前記すべり軸受け、前記軸受けマウント、及び前記ブラケットを電気的に接続して、前記軸受内輪と前記軸受外輪とを導通状態にする
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記電動機は、導電性ブラシを有し、
前記短絡回路は、
前記電動機の前記シャフト、前記ブラケット、及び前記導電性ブラシを電気的に接続して、前記軸受内輪と前記軸受外輪とを導通状態にする
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記短絡回路は、前記電動機の外側に形成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−87987(P2013−87987A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226867(P2011−226867)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】