説明

空気調和装置およびその室外ユニット

【課題】 空気熱交換器の伝熱性能を向上させることができる空気調和装置を提供する。
【解決手段】 圧縮機3で圧縮された冷媒を空気により冷却して凝縮液化させる空気熱交換器5と、空気熱交換器5に水を散布する散水手段24と、を備えた空気調和装置の室外ユニット20において、空気熱交換器5に散布する水には、空気熱交換器5に対する濡れ性を向上させる界面活性剤が施されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気熱交換器に水を散布する散水手段を備えた空気調和装置およびその室外ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和装置の室外ユニットに設けられた空気熱交換器に水を散布する散水装置を備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
この散水装置は、冷房運転時において凝縮器として用いられる空気熱交換器に、水を散布することによって冷媒の凝縮圧力を低下させて冷凍機の性能を向上させるものである。
【0003】
空気熱交換器は、フィン・チューブ形熱交換器とした場合、高熱伝導率を有する材料として、放熱フィンに純アルミ又はアルミ合金を、チューブに銅パイプを用いるのが一般的である。
このような空気熱交換器に対して、濡れ性を向上させるために、放熱フィンに親水性の処理を施すことが行われている(例えば特許文献2〜5参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−205665号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】特開平8−159598号公報
【特許文献3】特開平9−77999号公報
【特許文献4】特開2000−171192号公報
【特許文献5】特開2003−254681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、純アルミ等の金属製のフィンまたはチューブに水を散布すると、金属表面が酸化されて疎水性表面となってしまう。これでは、濡れ性が下がり伝熱面積を確保できない。特に、空気との熱伝達を向上させるために切欠を設けた放熱フィンの場合には、放熱フィン表面に防錆処理を施していても、この切欠の断面には母材が露出することになり、ここを起点として腐食が進行してしまう。
また、伝熱面積確保のために親水性処理を施してあるフィンであっても、長期間使用すると、親水性の表面にごみ等が付着してその機能が十分に発揮されないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、空気熱交換器の伝熱性能を向上させることができる空気調和装置およびその室外ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の空気調和装置およびその室外ユニットは、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる空気調和装置の室外ユニットは、圧縮機で圧縮された冷媒を空気により冷却して凝縮液化させる空気熱交換器と、該空気熱交換器に水を散布する散水手段と、を備えた空気調和装置の室外ユニットにおいて、前記空気熱交換器に散布する水には、該空気熱交換器に対する濡れ性を向上させる濡れ性向上処理が施されていることを特徴とする。
【0008】
空気熱交換器に散布する水に、空気熱交換器に対する濡れ性を向上させる濡れ性向上処理を施すこととしたので、空気熱交換器に対する濡れ面積すなわち伝熱面積を多く確保することができ、熱交換効率が向上する。
また、空気熱交換器を構成する部材に変更を施すのではなく、散布する水に処理を施すことによって濡れ性を増大させることができるので、伝熱性向上のために空気熱交換器を構成するフィンに切欠を設ける必要がない。したがって、切欠から腐食が生じるといったような、空気熱交換器の構成部材に起因する腐食等の不具合を回避できる。
【0009】
また、本発明の空気調和装置の室外ユニットでは、前記濡れ性向上処理として、前記空気熱交換器に散布する水に界面活性剤を添加することを特徴とする。
【0010】
界面活性剤を添加することにより、水の表面張力が低下させられ、空気熱交換器に対する濡れ性が向上する。
【0011】
また、本発明の空気調和装置の室外ユニットでは、前記濡れ性向上処理として、前記空気熱交換器に散布する水のクラスターを微小化する処理を施すことを特徴とする。
【0012】
水のクラスターを微小化することにより濡れ性が増大する。
水のクラスターを微小化するには、例えば、散水手段に水を送るポンプの出口に、磁気付与手段または電気付与手段、あるいは多孔膜を配置する。
【0013】
また、本発明の空気調和装置の室外ユニットでは、圧縮機で圧縮された冷媒を空気により冷却して凝縮液化させる空気熱交換器と、該空気熱交換器に水を散布する散水手段と、を備えた空気調和装置の室外ユニットにおいて、前記空気熱交換器は、前記散水手段によって散布される水が流過する面に、該水が流過する方向に略直交するように幅方向にわたって延在する凹所が形成された放熱フィンを備えていることを特徴とする。
【0014】
放熱フィンに、水が流過する方向に略直交するように幅方向にわたって延在する凹所を設けることとしたので、水は凹所に流れ込んだ後に幅方向に広がって、下流側に流されることになる。したがって、放熱フィンの幅方向に濡れ面積を拡大することができ、伝熱性能を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の空気調和装置の室外ユニットでは、前記凹所は、前記散水手段によって散布される水が流過する面の他の部分と同一の連続した状態で形成されていることを特徴とする。
【0016】
凹所は、例えばプレス加工によって、前記散水手段によって散布される水が流過する面の他の部分と同一の連続した状態で形成されるので、切欠を設けることなく凹所が形成されることとなる。したがって、切欠から腐食が進行するおそれがなく、長寿命の空気熱交換器を提供することができる。
【0017】
また、本発明の空気調和装置の室外ユニットでは、圧縮機で圧縮された冷媒を空気により冷却して凝縮液化させる空気熱交換器と、該空気熱交換器に水を散布する散水手段と、を備えた空気調和装置の室外ユニットにおいて、前記空気熱交換器は、前記散水手段によって散布される水が流過する面に、該水が流過する方向に略直交するように幅方向にわたって延在し、他の部分と異なる接触角を呈する接触角変更部を備えていることを特徴とする。
【0018】
放熱フィンに、水が流過する方向に略直交するように幅方向にわたって延在する接触角変更部を設けることとしたので、水は接触角変更部に流れ込んだ後に、流れの様相に変化を来たし、幅方向に広がって下流側に流されることになる。したがって、放熱フィンの幅方向に濡れ面積を拡大することができ、伝熱性能を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の空気調和装置の室外ユニットでは、前記接触角変更部は、金属表面に形成された親水膜とされていることを特徴とする。
【0020】
金属表面は、水が流れることにより酸化が促進され、疎水性の表面を呈する。このような金属表面に親水性を呈する親水膜を形成することとしたので、親水膜が形成されている部分で水が幅方向に広がり、その後に水が下流へと流れることになるので、疎水性の表面が介在していても、幅全体にわたって水を流すことができる。
【0021】
また、本発明の空気調和装置の室外ユニットでは、前記散水手段に供給する水の系統には、該水が流過する間に外気と接触させて該水を冷却する散布水冷却手段が設けられていることを特徴とする。
【0022】
散布水冷却手段によって水を冷却することにより、散布水の温度が低下し、この散布水によって冷却される空気熱交換器における冷媒凝縮温度を更に低下させることができる。
散布水冷却手段は、水が流過する間に外気と接触させて水を冷却する方式としており、水と外気との間の熱移動力(物質移動係数)を用いて、外気温度と露点温度とのエンタルピー差を最大限利用して冷却するようになっている。これにより、低い散水温度が得られ、好ましくは、外気温度よりも低い冷媒凝縮温度が実現される。
【0023】
また、本発明の空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮する空気熱交換器を備えた上記のいずれかに記載の空気調和装置の室外ユニットと、前記空気熱交換器において凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段と、該膨張手段において膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、空気熱交換器の伝熱性能を向上させることができる空気調和装置およびその室外ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の空気調和装置およびその室外ユニットにかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1には、第1実施形態にかかる室外ユニットを備えた空気調和装置の概略構成図が示されている。
空気調和装置1は、ガス冷媒を圧縮する例えばターボ圧縮機等の圧縮機3と、圧縮機3で圧縮されたガス冷媒を外気と熱交換させて凝縮させる空気熱交換器5と、空気熱交換器5において凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁7と、膨張弁7において膨張させられた液冷媒を蒸発させる蒸発器9とを備えている。
【0026】
圧縮機3は、制御部18によりインバータ制御された電動機11によって回転駆動されている。電動機11への投入電力(圧縮機3に投入された熱量)は、制御部18によって把握されている。
【0027】
蒸発器9には、チラー13が設けられている。このチラー13は、内部に水が流通する配管13aを備えており、この配管13aの一部が蒸発器9内に配置されている。これにより、蒸発器9において得られる冷熱によって配管13a内を流れる水が冷却され、冷水が得られるようになっている。
チラー13の配管13aには、配管13a内を流れる水の流量Qを計測する流量計14と、蒸発器9に対する入口に配置されて水温Tinを計測する入口温度計15と、蒸発器9に対する出口に配置されて水温Toutを計測する出口温度計16とが設けられている。
これら流量計14、入口温度計15及び出口温度計16の出力は、それぞれ、制御部18に入力される。
なお、装置構成を簡略化してより廉価とするために、流量計14を省略した構成としても良い。この場合、流量は予め所定値に調整され、一定流量で運転するようにする。制御部18は、この所定値(定数)を仕様値として記憶する。
【0028】
空気熱交換器5の冷媒出口と膨張弁7との間には、冷媒圧力Pcを検出する圧力センサ19が設けられている。この圧力センサ19の出力は、制御部18に入力される。
空気熱交換器5の外部には、空気熱交換器5に導入される外気の温度Tairを測定する外気温センサ61と、当該空気の湿度Hairを測定する湿度センサ62とが設けられている。これら外気温センサ61及び湿度センサ62の出力は、制御部18に入力される。制御部18は、これらセンサ61,62から得られる外気温度および湿度に基づいて、露点(又は湿球温度)を算出する機能を備えている。
【0029】
空気熱交換器5は、室外に配置された室外ユニット20の筐体22内に設けられている。
室外ユニット20は、さらに、空気熱交換器5に水を散布する散水手段24と、散水手段24に水を供給するポンプ26と、散水手段24に供給される水を冷却するシート積層体(散布水冷却手段)28と、空気熱交換器5及びシート積層体28に外気Aを導入するファン29とを備えている。
【0030】
空気熱交換器5は、複数枚積層して鉛直方向に立設された板状のフィン(放熱フィン)30と、内部に冷媒を流すとともに複数のフィン30の法線方向に貫通配置された複数のパイプ32とを備えている。この空気熱交換器5は、冷房運転時において、外気Aとの間で冷媒を冷却して凝縮させる。
【0031】
フィン30の基材には純アルミが用いられている。他の材料としては、熱伝導率が良いいものとして、アルミ含有率が高いアルミ合金を用いても良い。
【0032】
空気熱交換器5の下方には、散布された水を回収する回収トレイ31が設けられている。回収トレイ31によって回収された散布後の水は、シート積層体28の下方に位置する貯留トレイ(貯留部)46に導かれる。
【0033】
散水手段24は、空気熱交換器5の上方に設置されている。
散水手段24から空気熱交換器5への水の供給は、ポンプ26によって行なわれる。ポンプ26は、制御部18からの指令によって起動・停止が行われるようになっている。
【0034】
シート積層体28は、表面に凹凸を有する凹凸シートを鉛直方向に複数枚立設した構成とされている。シート積層体28は、凹凸シートの表面を水が流下する間に多くの外気Aと接触させることにより水から外気への物質移動係数を増大させて、十分にエンタルピー差を利用して水を蒸発させ、水を自己冷却するものである。
【0035】
シート積層体28の上方には、シート積層体に水を供給するシート積層体用水供給手段42が設けられている。このシート積層体用水供給手段42による水の供給は、バルブ44の開閉によって行なわれる。バルブ44は、制御部18からの指令によって開閉動作が行なわれるようになっている。
【0036】
シート積層体28の下方に位置する貯留トレイ46には、シート積層体28を流下(流過)した水が貯留されるようになっている。さらに、この貯留トレイ46には、上述のように、空気熱交換器5を流下した散布水も貯留されるようになっている。
【0037】
貯留トレイ46に貯留された水は、ポンプ26によって汲み上げられ、分岐部48を介して、空気熱交換器5側およびシート積層体28側に導かれるようになっている。このように、空気熱交換器5およびシート積層体28を流れる水は、貯留トレイ46に貯留された水を再利用するようになっており、循環水となっている。
なお、空気熱交換器5側およびシート積層体28側に導かれる水の流量比は、各機器の性能にもよるが、本実施形態では1:1としている。
【0038】
ファン29は、室外ユニット20の上面に複数設けられており、電動モータ50によって駆動されている。
各ファン29を駆動する電動モータ50は、制御部18によって駆動・停止が行なわれるようになっている。なお、電動モータ50をインバータによる周波数制御とし、回転数を可変制御できるようにしても良い。あるいは、直流モータを採用して回転数制御を行うようにしても良い。
【0039】
本実施形態にかかる空気熱交換器5に散布する水には、空気熱交換器5に対する濡れ性を向上させる濡れ性向上処理として、界面活性剤を添加されている。
界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルなど、エステル型界面活性剤、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウムが好適である。
このように、界面活性剤を散布水に添加して散布水の表面張力を低下させることにより、フィン30上での濡れ性を向上させて、散布水とフィン30との伝熱面積を増大するようになっている。
【0040】
次に、上記構成の空気調和装置1の動作について説明する。
冷媒は、圧縮機3によって圧縮され、室外ユニット20内に設けられた空気熱交換器5に送られる。空気熱交換器5では、ファン29から導入される外気Aに熱を与えることによって冷媒が凝縮する。
【0041】
空気熱交換器5には、散水手段24によって水が流下させられるようになっている。流下させられた水は、空気熱交換器5のフィン30表面を膜状に流れるに伴い、パイプ32内を流れる冷媒から熱を奪う。
本実施形態では、散布水に界面活性剤が添加されているので、フィン30表面に対する濡れ性が増大させられており、散布水はフィン30表面上に広がって流れる。これにより、フィン30と散布水の伝熱面積が増大し、熱交換効率が増加する。
【0042】
冷媒から奪う熱量は、冷媒と水との温度差に基づく熱伝達にもよるが、主として水の蒸発潜熱が大きく寄与する。ただし、散布される水の温度が低いほど、冷媒から水への熱伝導量が大きくなることから、散布水を冷却することが有効である。
散布水を冷却するために、シート積層体28が設けられている。以下、散布水の冷却系統について説明する。
シート積層体用水供給手段42から供給された水は、シート積層体28を構成する凹凸シートの表面を流れるに従い、外気Aとのエンタルピー差に基づく物質移動によって冷却される。これにより、外気温35℃とされた夏場において、シート積層体28を通過した冷却水は27〜28℃まで冷却され、この冷却水を用いた湿式熱交換器によって外気温度よりも低い冷媒凝縮温度が得られることが本発明者等の試験により確認されている。
シート積層体28によって冷却された水は、貯留トレイ46に貯留される。この貯留トレイ46には、空気熱交換器5を流下した水も合流するようになっている。貯留トレイ46に貯留された水は、ポンプ26によって汲み上げられ、分岐部48において分岐され、空気熱交換器5およびシート積層体28のそれぞれに流される。
以上のような循環を繰り返すことによって、空気熱交換器5に散布される水は冷却される。
【0043】
空気熱交換器5において外気温よりも低い凝縮温度となった冷媒は、膨張弁7によって膨張させられ、蒸発器9へと送られる。蒸発器9へと送られた冷媒は、蒸発器9において蒸発する。冷媒が蒸発する際に持ち去る熱量によって冷熱が得られる。この冷熱は、チラー13aの配管13a内を流れる水に与えられ、この水は冷却されることになる。チラー13によって得られる冷水は、7℃程度の温度である。
蒸発器9において蒸発した冷媒は、圧縮機3へと戻り再び圧縮される。
【0044】
以上の本実施形態による空気調和装置およびその室外ユニットによれば、以下の作用効果を奏する。
空気熱交換器5に散布する水に、空気熱交換器5のフィン30に対する濡れ性を向上させる濡れ性向上処理として界面活性剤を添加することとしたので、空気熱交換器5のフィン30に対する濡れ面積すなわち伝熱面積を多く確保することができ、熱交換効率が向上する。
また、空気熱交換器5のフィン30自体に変更を施すのではなく、散布水に処理を施すことによって濡れ性を増大させることができるので、伝熱性向上のためにフィン30に切欠を設ける必要がない。したがって、切欠から腐食が生じるおそれがなく、空気熱交換器5のフィン30に起因する腐食等の不具合を回避できる。
【0045】
なお、本実施形態では、散布水に界面活性剤を添加することとしたが、これに代えて、あるいはこれに加えて、散布水のクラスターを微小化する処理を施してもよい。これにより、水のクラスターが微小化された散布水のフィン30に対する濡れ性が増大する。
水のクラスターを微小化するには、例えば、散水手段に水を送るポンプ26の出口に、磁気付与手段または電気付与手段、あるいは多孔膜を配置する。
【0046】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に比べて、空気熱交換器5のフィン30の構成が相違する。したがって、フィン30を中心に説明し、その他の構成等については第1実施形態と同様なのでその説明を省略する。
図2には、本実施形態にかかる空気熱交換器5の正面図が示されている。
空気熱交換器5のフィン(放熱フィン)30には、散布水が流下(流過)する面に、所定間隔を隔てて、凹所30aと凸部30bとが交互に形成されている(図4参照)。これら凹所30a及び凸部30bのそれぞれは、散布水に直交するように、かつ、フィン30の幅方向に延在して帯状に形成されている。また、これら凹所30a及び凸部30bは、これらが形成されていない他の平坦面(散布される水が流過する面の他の部分)30cと同一の連続した状態で形成されている。つまり、一枚の金属板をプレス加工することによって、凹所30a及び凸部30bが連続的に形成されている。したがって、凹所30a及び凸部30bを含むフィン30には、切欠や貫通孔は設けられていない。
図5に示すように、このように構成されたフィン30が複数所定間隔をおいて積層され、これらの積層方向に貫通するように複数のパイプ32を配置することによって、空気熱交換器5が構成される。散布水は、図5において上方から下方へと流される。
【0047】
このような空気熱交換器5のフィン30に散布水を流下させると、図3に示すように、散布水は、この散布水に直交するように幅方向にわたって延在する凹所30aに流れ込み、凹所30a内で幅方向へと流れる。凹所30a内で幅方向に流れて保持された散布水は、この幅方向に保持された状態で溢れ出し、下方へと流れる。このように幅方向に広い流路を形成して流出した散布水は、下流側に位置する平坦面30cを幅広く濡らした後に、凸部30bへと流れる。凸部30bを乗り越えた散布水は、次の凹所30aへと流れ込む。この凹所30aでも同様に、散布水は、凹所30a内で幅方向に保持された後に下流側へ流出し、次の平坦面30cの幅全体を濡らす。
【0048】
一方、図3に示したフィン30の面を前面とすると、フィン30の裏面にも同様に散布水が流される。ここで、フィン30は、1枚の金属板をプレス加工することによって形成されているので、その前面側で凹所30aとなっている部分は裏面側で凸部となっており、前面側で凸部30bとなっている部分は裏面側で凹所30aとなっている。したがって、フィン30の裏面でも、図3に示した表面と同様の散布水の流れが形成されている。
【0049】
本実施形態によれば、幅方向に延在する凹所30aを設けることとしたので、フィン30の幅方向に濡れ面積を拡大することができ、伝熱性能を向上させることができる。
フィン30の凹所30aはプレス加工によって形成されているので、切欠を設けることなく凹所30aが形成されることとなる。したがって、切欠から腐食が進行するおそれがなく、長寿命の空気熱交換器5を提供することができる。
【0050】
なお、凹所30aの形状としては、散布水を一時収容して幅方向に保持する形状であれば良く、例えば図4に示すように、(a)断面円形状の溝、(b)断面三角形の溝、(c)波形、(d)より緩やかな波形、といったものが採用される。
【0051】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に比べて、空気熱交換器5のフィン30の構成が相違する。したがって、フィン30について説明し、その他の構成等については第2実施形態と同様なのでその説明を省略する。
図6には、本実施形態にかかるフィン30が示されている。
フィン30は、純アルミとされた母材の表面(散布水が流下する面)に、複数の親水膜(接触角変更部)56,56・・・が印刷等の手段によって形成されている。なお、同図には示されていないが、裏面にも同様に親水膜56が形成されている。
それぞれの親水膜56は、帯状とされており、散布水が流下する方向に直交するように幅方向にわたって延在して設けられている。各親水膜56は、所定の間隔を有して配置されている。
この親水膜56は、親水膜56が形成されていない母材表面(他の部分)と異なる接触角を呈するものである。つまり、親水膜56における水の接触角は、他の部分である母材表面よりも小さくなっている。親水膜56としては、分子構造の中に水酸基が多く含まれるセルロース系樹脂を基本とした塗膜、ポリエステル系樹脂、水ガラス系被膜を基本とした被膜が用いられる。
【0052】
純アルミとされたフィン30の母材表面は、散布水が流れることにより酸化が促進され、疎水性の表面を呈するようになる。したがって、母材表面上では散布水が幅広く流れずに、狭い流路を形成して流れるようになる。
本実施形態によれば、散布水に直交するように幅方向に延在する親水膜56を設けることとしたので、散布水は親水膜56で幅方向に広がって流れるようになり、下流側の母材表面を幅広く濡らすことができる。これにより、フィン30全体としての濡れ面積を増大させ、伝熱性能を増大させることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、散布水に直交するように幅方向に延在する親水膜56を形成することによって水の接触角を変更することとしたが、散布水に直交するように幅方向に延在する部分を接触角が大きい疎水部とし、他の部分を親水部としても良い。このように、散布水の流れ方向に水の接触角を断続的に変更することにより、散布水を幅方向に広げて流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態にかかる室外ユニットを備えた空気調和装置の概略構成を示した図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかる空気熱交換器を示した正面図である。
【図3】フィン30上を散布水が流れる状態を示した正面図である。
【図4】フィンの変形例を示した側面図である。
【図5】第2実施形態にかかるフィン・チューブ形熱交換器を示した部分斜視図である。
【図6】第3実施形態にかかるフィンを示した斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 空気調和装置
3 圧縮機
5 空気熱交換器
7 膨張弁
9 蒸発器
18 制御部
20 室外ユニット
24 散水手段
26 ポンプ(送水手段)
28 シート積層体(散布水冷却手段)
30 フィン
30a 凹所
48 分岐部
56 親水膜(接触角変更部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機で圧縮された冷媒を空気により冷却して凝縮液化させる空気熱交換器と、該空気熱交換器に水を散布する散水手段と、を備えた空気調和装置の室外ユニットにおいて、
前記空気熱交換器に散布する水には、該空気熱交換器に対する濡れ性を向上させる濡れ性向上処理が施されていることを特徴とする空気調和装置の室外ユニット。
【請求項2】
前記濡れ性向上処理として、前記空気熱交換器に散布する水に界面活性剤を添加することを特徴とする請求項1記載の空気調和装置の室外ユニット。
【請求項3】
前記濡れ性向上処理として、前記空気熱交換器に散布する水のクラスターを微小化する処理を施すことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和装置の室外ユニット。
【請求項4】
圧縮機で圧縮された冷媒を空気により冷却して凝縮液化させる空気熱交換器と、該空気熱交換器に水を散布する散水手段と、を備えた空気調和装置の室外ユニットにおいて、
前記空気熱交換器は、前記散水手段によって散布される水が流過する面に、該水が流過する方向に略直交するように幅方向にわたって延在する凹所が形成された放熱フィンを備えていることを特徴とする空気調和装置の室外ユニット。
【請求項5】
前記凹所は、前記散水手段によって散布される水が流過する面の他の部分と同一の連続した状態で形成されていることを特徴とする請求項4記載の空気調和装置の室外ユニット。
【請求項6】
圧縮機で圧縮された冷媒を空気により冷却して凝縮液化させる空気熱交換器と、該空気熱交換器に水を散布する散水手段と、を備えた空気調和装置の室外ユニットにおいて、
前記空気熱交換器は、前記散水手段によって散布される水が流過する面に、該水が流過する方向に略直交するように幅方向にわたって延在し、他の部分と異なる接触角を呈する接触角変更部を備えていることを特徴とする空気調和装置の室外ユニット。
【請求項7】
前記接触角変更部は、金属表面に形成された親水膜とされていることを特徴とする請求項6記載の空気調和装置の室外ユニット。
【請求項8】
前記散水手段に供給する水の系統には、該水が流過する間に外気と接触させて該水を冷却する散布水冷却手段が設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の空気調和装置の室外ユニット。
【請求項9】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮する空気熱交換器を備えた請求項1〜8のいずれかに記載の空気調和装置の室外ユニットと、
前記空気熱交換器において凝縮された冷媒を膨張させる膨張手段と、
該膨張手段において膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
を備えたことを特徴とする空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−105541(P2006−105541A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295317(P2004−295317)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)