説明

空気調和設備と地中熱管

【課題】地中熱を利用し、かつ除湿と冷却を別けた空調方式を採用した中・大規模ビルの空気調和設備の大幅な省エネルギー化を実現する。
【解決手段】冷却は、地中熱管3を用いて地中温度に可成り近い20℃程度の低温の冷水を取り出して循環し、冷凍機を使用しないで、空調運転時間帯に空調室の天井に設置した照明器具を機能的に組み込んだ天井空調ユニット18にこの冷水を送り、22℃程度の、室内空気温度と極めて小温度差で、大量の空気を低圧損で循環して、部屋の隅々まで快適な気流を与える。除湿は、夜間電力供給時間帯に地中熱水を冷却水として冷凍機10を運転して氷蓄熱を行い、翌日の空調時間帯には取り入れ外気を除湿に必要な露点温度まで冷却除湿してほぼ室温まで再熱して室内へ給気する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は除湿と冷却とを別けて夫れ夫れに専用の熱交換器と夫れ夫れに最適な温度レベルの冷・温水熱源を使用する空気調和設備の冷温熱源となる、夏季は冷凍機の凝縮器の放熱手段、冬季はヒートポンプの蒸発器の集熱手段として地中熱管との間に水を循環させて省エネルギー化性能を格段に向上し、かつ極めて快適性の高い、高品質の空調設備を提供するための技術に関わる。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の必要性は大きく叫ばれ、大きなエネルギー消費を伴うビル空調の省エネルギー化については、真剣にその省エネルギー性能の改善が進められており、温度が極めて安定し、且つ、夏は外気温度より低く、冬は外気温度より高い温度レベルで使用できる地中熱利用の空調設備が脚光を浴びつつある。
【0003】
上に述べた地中熱利用の空気調和設備は、これまで全て夏季は冷凍機の冷却水として、また冬季は全てヒートポンプの熱源として地中熱循環水を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4022842号
【特許文献2】特開2005−214608公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では空調を行う室内空気の温度25℃と地中温度概ね16℃〜18℃の間の温度レベルで室内の空調ユニットの熱交換器と地中熱の熱交換器との間を循環させる冷水の水温を利用して、直接に室内空気の顕熱冷却を行い、そこに冷凍機を介在させない事に拠り、空調の電力を大幅に節減しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
今日の人類にとって最も重要な課題は省エネルギー化を図り地球温暖化を防止する事である。本発明では除湿と冷却とを別けて夫れ夫れに専用の熱交換器を使用して、夫れ夫れに最適温度レベルの冷水を通して空調を行うことによる85%の省エネルギー化性能を、さらに地中熱管を利用して地中放熱、地中集熱を行う事によりその省エネルギー化率を95%以上まで向上し、且つ快適性の高い、高品質の空調設備を提供しようとするものである。
【0007】
そこで本発明では、中・大規模ビルのインテリアー部分について、年間を通じて冷房を必要とする中・大規模のビルの空気調和設備として、近年、在室者率の減少と窓など開口部のサッシュの高気密化によって、除湿負荷が極端に減少し、室内空気調和負荷の90%以上を占めるに至った顕熱負荷に関して、在来の様に冷凍機による冷水を使用せず、自然エネルギーとして使用できる地中熱管への循環によって得られる20℃前後の常温に近い冷水を使用し、循環ポンプと空調ユニットの僅かな電力のみで全ての顕熱冷却を行える様にした。
【0008】
空調の顕熱冷却に使用する冷水の温度が20℃と言う事は、間違っても22℃程度以下の空気が吹き出される可能性は極めて少なく、室温25℃と僅か2℃〜3℃しか温度差の無い気流は扇風機の快適な気流と変わらず、極めて快適性の高い空調となる。
【0009】
然も、3℃程度の小温度差の空調は、在来、常識とされる12℃差の空調と比較すると4倍の風量を要する事は簡単に予測される。通常の換気回数を毎時12回とすると、48回の換気回数となり、クリーンルームと同様の風量となって、気流とファン関連の騒音とに充分の注意を払えば部屋の隅々まで快適でバラツキのない、温度と理想的な気流を実現できる。
【0010】
さらに、大きな風量を処理するために必要とされる空調ユニット内の圧力損失の低減化に努力をすれば、送風電力の消費の増加も抑える事が可能である。処が風量については、一般的に天井に取り付けられている照明器具を、天井空調ユニットの空気吸込側に一体化収納する事によって、照明の冷却のために必要な風量はゼロとなるので、風量は4倍に増すことはなく、有効床面積当たり30Wの照明を処理するために12℃差で給気を行えば、必要給気量は
30W×0.86kcal/Wh÷0.24kcal/kg・℃÷12℃÷0.86m/kg=10.4m/hとなり、天井高を2.6mとすると、丁度毎時4回の換気回数に付き、10回の換気回数の内40%を占めている事になるので、温度差が3℃と小さくなっても風量は2.4倍に増す程度で済み、換気回数は毎時29回となり、空調環境はかなり現状より改善されると考えてよい。
【0011】
空調室内の空気温度を、快適とされる25℃に保つためには、必要な20℃〜21℃程度の冷水温度を自然エネルギーである地中熱管への循環水によって得るために、別別に設けた地中放熱管の複数を直列に接続して使用することも、地中放熱管への循環水のみによる冷却を実用化するためには主要な事項となる。
【0012】
近年、地中熱を使用した建築物、温室などの空調、加温設備などについて多くの企業などが研究開発を進めているが、何れも冷凍機を使用するかヒートポンプを使用するための放熱源、集熱源として使用するものばかりであり、地中熱管への循環水を直接に空調の冷熱源として使用する試みはなかった様に思われる。
【0013】
そこで、本発明による空調設備では冷凍機を使わず、直接、地中放熱の循環による冷水を使用するため、その冷水の温度レベルを空調設備が必要とする室内空気の冷却に適した温度まで低下させる事が出来るか否かが重要なポイントとなる。
【0014】
その点を配慮して[0011]項に述べた通り別々に設けた地中放熱管の複数を直列に接続して使用し、地中温度に可成り近い温度まで循環冷水の温度を下げる必要が考えられるが、さらに、他の方法として、地中に掘削された一本の縦穴などの中に、複数且つ偶数の4本、6本、8本などの伝熱管を端部でU字型に接続して、前記、複数且つ偶数の伝熱管をすべて直列に接続して、使用上は1本の伝熱管として、地中で2往復以上の循環をする事によって、一本の地中熱管から可成り地中温度に近い、空調設備の顕熱冷却には不足の無い低温までの冷却を可能とする地中熱管設備は極めて有効である。
【0015】
室内に必要な照明を単独で天井などに取り付ける方法をやめて、天井空調ユニットの下面、内部にとりつけ、照明の発熱を室内に出さずに、空調ユニットの室内からの吸い込み空気によって冷却する方式を採る事によって、室内温度より高い温度で照明発熱を冷却することによって、地中放熱管への循環水による冷却を効果的に行い、且つ、循環空気の量を減じてファン電力を少なく保ちさらに省エネルギー化の効果を高めることが出来る。
【0013】
何れにしても、室温との温度差を3℃の小さい温度差で給気を行って空調を行うには、[0010]項に述べた通り、時間当たり29回、凡そ30回の換気回数が必要となるので、天井に多数の天井空調ユニットを配置し、その天井空調ユニットの中の空気の通路を広く、圧力損失の少ない形状とし、通過面積が広く、圧力損失の少ない空気濾過器と熱交換器を使用し、効率の高い、騒音の充分に低いファンを使用して、快適な空間を創ることが必要である。
【0014】
さらに、多数の天井空調ユニットを使用するには、製造コストが安く、取り付け作業も極めて容易であることが肝要と考えられる。
【0015】
LEDの使用は照明電力の削減には大きく寄与するが、天井空調ユニットの吸込側に照明器具を組み込む方法では、蛍光灯でも風量が特に増す事は無いので、空調の立場から見れば大きな問題にはならない。
【0016】
以上、室内空気の顕熱冷却を自然エネルギーの地中放熱管への循環水によって行う方法について述べたが、除湿に関しては、室内空気の露点温度以下の低温まで空気を冷却する必要性から、冷凍機の使用は必須となる。これに関しても地中放熱管への循環水を有効に利用し、空冷式より低温の凝縮温度と−2℃〜−3℃程度の氷点から僅かに低い蒸発温度で夜間電力を使用して氷蓄熱を行い、翌日の空調時間帯において必要となる外気の冷却除湿のための冷熱源として利用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は冷却と除湿とを分離して空調を行う先行技術文献に記載の空気調和設備の改良型で、空調負荷の大部分を占める室内空気の顕熱冷却の冷熱源について、在来は冷凍機によって行っていた処を、自然エネルギーである地中熱管への常温に近い循環冷水により、僅かな循環ポンプの電力を使用するのみで冷却できるため、冷凍機の電力がゼロとなり、空調設備の消費電力を大きく節減できる。
【0018】
さらに、除湿に関しても、夜間電力で氷蓄熱を行って、翌日の取り入れ外気の冷却除湿に使用する先行技術文献に記載の除湿方法についても、冷凍機の凝縮器に地中熱管との20℃前後の低温の循環冷却水の利用により、冷凍機の入力を大幅に節減できる。
【0019】
この発明によって、在来の中・大規模のビル空調による消費電力が延べ床面積100m当たり年間で通常5000kWh〜7000kWhになるのに対して、本発明によるビル空調設備では、年間の消費電力が20kWHhで、僅かに3%〜4%程度で済み、96%〜97%の省エネルギー化が可能となり、地球温暖化ガス排出削減の大きな決め手となり、同時にユーザーに取っては、安い夜間電力を主として使用するので98%ほどの省マネーとなる。
【0020】
なかんずく、夜間電力による部分が、消費電力の大部分を占めるため、まず、火力発電による電力エネルギーの消費はゼロに近く、地球温暖化ガス排出量の削減に大きく寄与できるのみならず、冷却のために冷却水などを消耗する事も無く、水不足や汚染の原因にもならず、環境上でも申し分のない空調システムと言える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1は本発明による地中熱管を冷熱源または温熱源として空調を行うが、室内の顕熱の冷却が必要な時季には顕熱冷却には冷凍機を運転せずに、地中熱管を放熱管として使用し、天井設置の照明組込型空調ユニットに地中熱管との間に冷凍機を介在させないで、空調ユニットで昇温した冷水を各階の天井配管の漏水事故防止のために設けた立ち上がり主管と各階天井配管とを圧力的に無縁とするための熱交換器のみを介して、地中熱管と当該熱交換器との間を循環する地中熱循環冷却水に放熱し、冷凍機は使用せずに室内の顕熱の冷却を地中熱管のみにて行う、96%と省エネルギー化率の極めて高い、新しい空気調和設備の説明用のフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1に沿って説明すると先ず、地面に垂直に直径200mmの縦穴を深度100mまで掘削して保護管を入れ、外径60mm、内径51mm、の全長5mの耐衝撃性硬質塩ビ管2本を一端でエルボで接続し、U字型としたもの3組を底部で重ね合わせ、中央に外径76mm、内径65mmの同じく全長5mの硬質塩ビ管を軸として、周囲に等間隔に6本の外径60mmの塩ビ管が並んだバランスのとれた形状とする。
【0023】
これを縦穴に4m程度、挿入した時点でソケットで7本とも次の管を接着接続して5m挿入し、この作業を19回繰り返すと底部の管は深度100mに達し、上方の6本の管端の内4本を2個のエルボを60°の角度に繋いでU字型特殊継手で1本の間隔を置いて2個使用して4本の管を接続すると、片道100mの縦のループ3本が出来上がり、残りの2本がそのループの上部出口、入口となる。
【0024】
中央の外径76mmの管は引き抜き、6本の管の隙間に珪砂を充填し、外側の保護管を抜き、地面から1m程まで珪砂1を充分に充填した後、セメント2を流して固定、全長600mの伝熱管3を埋め込んだ地中熱管設備4は完成する。この管で80Lit/min程度の流量時の圧力損失は約12mAqと実用的である。
【0025】
この地中熱管設備4は、地方、地区、地下水の水流の在る無しに拠って、多少の前後は在ろうが、これまでの、地中熱管の熱データーから類推すると、循環水入口温度で23℃程度の80Lit/minの循環水を20℃程度まで冷却できる冷却能力があるものと期待できる。従って、80Lit/min×60×3℃÷860=16.7kWの冷却能力となり、通常のビル空調で、延べ床面積167m、即ち50坪の空調の冷熱源として利用できることになる。
【0026】
なお、同様の構造の地中熱管で6本の冷却管を2本づつ底部で繋ぎ、3本のU字管として並列に埋設した地中熱管設備3基を造って、これら3台を直列に接続して使用する場合にも、ほぼ同様の結果が得られるものと思われるが、地中熱管の完成度としては前述の1基の地中熱管の中で3往復したものが優れている。
【0027】
前記伝熱管3の出口管5に地中熱水循環ポンプ6を接続して吐出管7を機械室8に導き、上階への立ち上がり主管9と機械室8内のチラー10の凝縮器11に接続する。地中熱水循環ポンプ6の取り付け位置によっては、吸込側の負圧が大きくなり、キャビテーションが予測される場合には、ポンプの揚程を2分割して2台直列のポンプに置き替えれば好い。
【0028】
主管8は上階の各階の配管シャフト12内に設けられたプレート熱交換器13に分岐接続され、前記プレート熱交換器13からの戻り管は、戻り主管14に接続されて機械室8にて、前記チラー10の凝縮器11からの戻り管15と合流して地中熱管設備4の600mの伝熱管3の入口管16に接続する。
【0029】
この一連の配管を満水にすれば、地中熱水循環ポンプ6を運転することによって、地中熱管設備4の600mの伝熱管3と各階の配管シャフト12内に設置されたプレート熱交換器13とこれに並列に接続された2台のチラー10の凝縮器11との間を地中熱水が循環することとなる。
【0030】
昼間、空調運転時間帯で各階の空調室17内で顕熱冷却の必要がある場合は、照明組み込みの天井空調ユニット18のファンを運転すると同時に、各階の2次循環水ポンプ19を運転、天井空調ユニット18の照明の上部に収めたフィンチューブ熱交換器で室内からの循環空気を冷却し、昇温した2次循環水は各階のプレート熱交換器13を介して、地中熱水循環ポンプ6により循環される1次地中熱循環水に熱を伝え、間接的に地中熱管設備4の伝熱管3で地中20に放熱する。
【0031】
本発明の天井空調ユニット18は単に空調ユニットに照明器具を組み込むのではなく、空調機の吸込口の内側以外の室内や吹出口などに照明を器具を取り付ける場合に比較すると、照明の熱量を処理するための風量を循環風量から減じる事が可能で、風量を減らし電力消費量の節減ができる。
【0032】
各階の空調室17内の空気温度を検知するルームサーモスタットまたは還気サーモスタットを天井空調ユニット18に付けてファンの速度を調節し、室温を一定に保つことも可能である。この場合、ファン電力は節減を図ることができる。
ただし、冷水温度が20℃で、室温と僅か5℃の温度差しかないので、温度制御を行わなくても室温は2℃まで振れることは無く、温度制御の必要性は薄い。
【0033】
夜間に運転されるチラー10の凝縮器11からの排熱に関しては、各階の天井設置の天井空調ユニット18とは異なり、2次循環水を使用せず、直接に1次地中熱循環水によって地中20に放熱する。ただし、これら各階の空調室17内の空気の顕熱冷却や、チラー10の運転によって循環水の温度が地中温度より上がって、放熱によって温度がバランスする場合に限られるのは当然である。
【0034】
此処で、前記[0028]項の各階のプレート熱交換器13と2次循環水ポンプ19ならびにその周辺機器について説明をする。本発明による空気調和設備では、各階の空調室17の天井懐21に、多くの水配管が設置されることになるが、これまでの建築設備の常識からは、天井懐の水配管は漏水事故の原因となる可能性があるために嫌われる傾向にあり、熱搬送をポンプと水の配管に拠らずに、ファンと空気でダクトを使用して熱搬送を行おうとする向きが非常に多い。
【0035】
然し乍ら、ファンと空気による熱搬送は、ポンプと水による熱搬送の20倍〜30倍にも上る電気エネルギーを消費する事は避けられず、社会的要求に反している。これをポンプと水による熱搬送に替えることは社会的に大きな意義が在り、漏水事故の可能性の無い状態でポンプと水による熱搬送の実現が望まれる。
【0036】
本発明では、その点に配慮し、漏水事故の可能性の無い配管方式を採用した。すなわち、配管シャフト12の中の立ち上がり主管9、立ち下がり主管22の高層部分までの高い配管の圧力が、各階天井の配管に影響を与えない様に、プレート熱交換器13によって先ず圧力的に縁を切った。以下に本発明による空調システムが漏水事故の可能性が先ず在り得ないと言う点について説明をする。
【0037】
各階の空調室17の天井懐21内の天井配管23はプレート熱交換器13によって、1次地中熱循環水との間で必要な熱量の授受だけを行って、各階とも圧力的に独立した2次循環水回路24を設置する。
【0038】
2次循環水循環のための2次循環水ポンプ19の運転によって循環を行うに際して、当該階の天井レベルより下のレベルで配管シャフト12の中に置かれた、大気圧開放の水位調整タンク25と2次循環水ポンプ19の吐出側と吸込側の双方からそれぞれ吐出側連絡管バルブ26、吸込側連絡管バルブ27を介して、前記の水位調整タンク25に接続されている。
【0039】
各階の2次循環水回路24に循環水を入れ、2次循環水ポンプ19を運転するには、先ず水位調整タンク25に必要の水量を入れ、吐出側連絡管バルブ26を閉め、吸込側連絡管バルブ27のみを開け、2次循環水ポンプ19を水で満たし、運転を開始すると、2次循環水ポンプ19は水位調整タンク25から水を吸って、当該階の空調室17の天井懐21内の天井配管23及び天井空調ユニット18の熱交換器に水を揚げ、空気抜き弁から完全に空気が抜けると、2次循環水回路24での循環水の循環が開始される。
【0040】
2次循環水ポンプ19の前後の圧力計の指示値が安定し、所定の圧力差が確認できた段階で、吐出側連絡管バルブ26を閉めて、吸込側連絡管バルブ27を開けると、圧力計の指示値は下がり、吐出側の圧力計は水位調整タンク25の水位の静水頭と一致し、この時点からこの水位調節タンク25の水位より上のレベルにある天井配管23の内部は大気圧より下がって、弱真空状態となる。
【0041】
所謂サイホン状態のまま2次循環水回路24内は循環水が循環し、サイホン状態はポンプの運転停止に関係なく保たれる。従って天井懐21内部での漏水事故の可能性は全くゼロとなり、万一、天井配管23で継ぎ手にひび割れが生じたり、天井空調ユニット18との接続ホースに傷がついた場合でも、サイホン状態のため、水が漏れ出す事は無く、そこから空気を吸って、吸った空気と同量の水が、重力によって水位調整タンク25に戻るだけである。
【0042】
水位調整タンク25にはオーバーフロー管を設けて、水位が以上に上昇した場合には異常信号を発信する警報回路を設ければ、常時、監視体制が採れ、サービスも完璧に行うことができる。
【0043】
天井配管23が一挙にずたずたに破壊される程の強い地震などでは、天井配管23の内部に在る水は天井から流出するが、天井配管23内の水の保有量は標準的な20Aの配管サイズで、床面積1m当たり400ccに満たない少量であり、1階層の配管に限定されるので、被害を与える程の漏水ではなく、他の建物の破壊による損害に比較すれば全く問題にならない程度のものであろう。
【0044】
夜間電力供給時間帯を中芯に運転されるチラー10は氷蓄熱槽28の中の製氷ユニット29を蒸発器として、夜間電力で製氷を行い、冷熱を蓄熱する。この氷点に近い低温の冷水を使用して翌日の空調運転時間帯に取り入れ外気を除湿する。
大型ビルではチラーにターボ冷凍機を使用し、地中梁44の間隔を蓄熱槽に使用するのも全く問題はない。
【0045】
外気調和機30は外気ガラリー31から外気を取り入れ、空気濾過器32、入口エコノマイザーコイル33、主熱交換器34、出口エコノマイザーコイル35を経て、外気給気ファン36により加圧し、配管シャフト12内に立ち上げた給気ダクト37から各階の空調室17の天井懐21に至り、天井空調ユニット18の外気吸い込み穴から吸われ、加圧されて各階の空調室17内に給気される。
【0046】
取り入れ外気は外気調和機30の主熱交換器34で、蓄熱水ポンプ38によってここを通過する低温冷水によって8℃まで除湿冷却される他、入口エコノマイザーコイル33並びに出口エコノマイザーコイル35で次の処理がなされる。即ち、入口エコノマイザーコイル33と出口エコノマイザーコイル35はエコノマイザーポンプ39とエコノマイザー循環水配管40によって接続され、夏季、入口エコノマイザーコイル33で35℃の外気により温度上昇したエコノマイザー循環水は出口エコノマイザーコイル35に廻り、そこで主熱交換器34で8℃の低温まで冷却除湿された取り入れ外気と接し、温度が12℃〜15℃程度まで低下、逆に8℃まで冷却除湿された外気は22℃〜25℃程度まで再熱される。
【0047】
この様にして8℃まで冷却除湿され、22℃〜25℃まで再熱された取り入れ外気は外気ファン36で加圧され最終的に各階の空調室17に給気されるが、8℃の露点温度まで冷却除湿された空気は空調室17内の25℃:50%の空気と比較すると単位体積1m当たりで水蒸気の含有率が4g少ないため、法定による在室者1名当たり毎時25mの換気をこの取り入れ外気によって行えば、1名の在室者に対して100g/h・名の除湿能力を持つことになり、日本人成人男子が軽作業中に空気中に排出するとされる水蒸気量100g/h・名と一致する。
【0048】
従って、この除湿外気を1名の在室者1名当たり毎時25mを供給すれば、室内空気に対する除湿はほぼ完璧と言える。然し乍ら、在室者数を正確に把握する事は容易ではない。そこで本発明では、室内COスタットを使用して、その信号によって室内への外気の給気量を調整する方法を採った。それは、人間の食物には炭素Cの成分と水素Hの成分の比率に食物によって大きな差が無いので、人間の排出する水蒸気量と炭酸ガス量の比率は略一定と考えられる。この事から、COスタットを利用すれば、温度の影響を受けて終始変化する相対湿度をヒューミティスタットを使用して外気を調整するより遥かに正確に、擾乱なしに相対湿度を一定に制御する事が可能である。
【0049】
然も、給気される外気は除湿能力を持ったまま、外気調和機30の出口エコノマイザーコイル35で、外気の熱によって22℃〜25℃程度まで再熱されているので、外気の給気によって室温に与える影響は極めて少なくて済む。さらに、入口エコノマイザーコイル33ではエコノマイザー効果で35℃:60%程度の高温多湿の取り入れ外気は自然に23℃:95%程度まで予冷却、除湿されるため外気負荷の30%程度を軽減されている点も経済的に大きなメリットである。
【0050】
ペリメーター部分で暖房が必要な時季には複数台の内、必要な台数のチラー10の冷媒切り替え4方弁41を切り替え、凝縮器11を蒸発器として、氷蓄熱槽28内部の製氷ユニット29を凝縮器として、夜間電力でヒートポンプとして運転し、氷蓄熱槽28を温水蓄熱槽として使用し、45℃程度の温水を蓄え、翌日の暖房の必要な時間帯に温水循環回路42(破線で示す)に蓄熱水ポンプ38を運転して温水を循環させ、ペリメーター部分の床上に設置された床置型ファンコイルユニット43に温水を循環供給して暖房を行う。
【0051】
通常の空冷式ヒートポンプは暖房が必要となる早朝の外気の寒い場合、ヒートポンプの熱源とする外気の温度が低く、蒸発温度が−7℃程度以下となり、ヒートポンプの能力も充分に発揮できず、エネルギー消費効率も2.0以下に低下するが、本発明による、地中熱水を熱源とする場合は循環水の温度が10℃以下には下がることは殆どなく、蒸発温度も7℃程度で保持されるのでエネルギー消費効率も3.5程度以上に高く、然も、夜間電力、即ち、原子力発電によるクリーンエネルギーが主体となるため、経済性、地球温暖化防止上も極めて有利である。
【0052】
ペリメーターの暖房のみならず、外気の昇温も必要な系統にあっては、バルブの切り替えで室内へ温風の外気を給気する事もでき、更に、インテリアー部分では他所が暖房中でも、地中熱循環水による顕熱冷却は年間を通じ確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は上に述べた通りの構成としたので、極めて経済性高く、夜間電力で翌日の外気除湿に必要な量の氷蓄熱を行う以外は殆ど冷凍機を運転しないので、省エネルギー化性能も95%以上と極めて高く、その結果、地球温暖化防止も充分に講じられるので、ビル空調、工場空調など産業上の利用の可能性は、他の空調システムと比較すると格段に高いもので、将来に亙り他方式の追随を許さない。
【符号の説明】
【0054】
1.珪砂
2.セメント
3.伝熱管
4.地中熱管設備
5.伝熱管3の出口管
6.地中熱水循環ポンプ
7.吐出管
8.機械室
9.立ち上がり主管
10.チラー
11.凝縮器
12.配管シャフト
13.プレート熱交換器
14.戻り主管
15.戻り管
16.伝熱管3の入口管
17.各階の空調室
18.天井空調ユニット
19.2次循環水ポンプ
20.地中
21.天井懐
22.立ち下がり主管
23.天井配管
24.2次循環水回路
25.水位調整タンク
26.吐出側連絡管バルブ
27.吸込側連絡管バルブ
28.氷蓄熱槽
29.製氷ユニット
30.外気調和機
31.外気ガラリー
32.空気濾過器
33.入口側エコノマイザーコイル
34 主熱交換器
35.出口側エコノマイザーコイル
36.外気ファン
37.給気ダクト
38.蓄熱水ポンプ
39.エコノマイザーポンプ
40.エコノマイザー循環水配管
41.冷媒切り替え4方弁
42.温水循環回路
43.床置型ファンコイルユニット
44.地中梁
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房を必要とする期間において、電力会社の定める夜間電力供給時間帯に夜間電力を主に使用して、冷凍機の凝縮器に地中熱管設備の地中放熱循環水を通して、蒸発器側では氷蓄熱を行い、低温の冷熱を蓄熱し、通常、翌日、空調を使用する時間帯には、空調を行う室内の天井に設置された顕熱冷却用の空調ユニットの熱交換器に地中放熱循環水を通水して、冷凍機を使用せずに室内空気の冷却を行い、除湿に関しては室内の換気を行うための外気を処理する外気調和機の主熱交換器で、前日の夜間に前記地中放熱循環水と冷凍機を使用して蓄熱した氷点に近い低温の冷水を使用して、室内空気の除湿に十分な効果のある露点温度まで除湿をして室内に給気し、室内空気の温度、湿度を所定の値に調節することを特色とする空気調和設備。
【請求項2】
ペリメーター部分で暖房が必要な冬季に、電力会社の定める夜間電力供給時間帯に夜間電力を主に使用して、ヒートポンプの蒸発器に地中熱管設備により、地中集熱循環水を通して、氷蓄熱槽の製氷ユニットを凝縮器として使用して温水加熱を行って温熱を蓄熱し、また、必要に応じては蒸発器側で氷蓄熱も同時に行い、通常、翌日、空調を使用する時間帯には空調を行う室内のペリメーター部分の床上に設置された空調ユニットの熱交換器には前記温熱蓄熱された温水を必要に応じて通水してペリメーター部分の暖房を行い、前記ペリメーター部分以外の部分の天井に設置された顕熱冷却用の空調ユニットの熱交換器には地中放熱循環水を通水して、冷凍機を使用せずに室内空気の冷却を行い、除湿に関しては室内の換気を行うための外気を処理する外気調和機の主熱交換器で、前日の夜間に蓄熱した氷点に近い低温の冷水を使用して、室内の除湿に十分な効果のある露点温度まで除湿を行って室内に給気し、室内空気の温度、湿度を所定の値に調節することを特色とする請求項1の空気調和設備。
【請求項3】
天井に設置される請求項1または請求項2の空調ユニットに、室内で必要とされる照度を得られる蛍光灯または、LED、冷陰極管照明、有機EL照明、無機EL照明による面照明ユニットを下面に組み込んだ事によって、空調ユニットの内部以外の他所に同様の照明効果をもつ照明器具を設置した場合に比較すると、室内への送風量とファン電力を節減した事を特色する請求項1の空気調和設備。
【請求項4】
請求項1、請求項2における地中熱管の地中熱循環水を冷凍機を使用しないで直接室内の顕熱冷却に使用する事を目的とし、その実用性を高めるための方法として、通常、縦穴型の地中熱管では1往復限りの複数本の伝熱管が使用されているのに対して、本発明では地中に掘削した1本の縦穴の内部で複数かつ偶数の伝熱管の両端の部分でU字型に直列に接続し2往復以上の循環回路を用いて効率を上げた事を特色とする地中熱管設備を使用した事を特色とする空気調和設備。
【請求項5】
請求項1、請求項2における地中熱管設備において、請求項4と同じ目的でその実用性を高めるため他の方法としてに別々に設置した地中熱管の複数本を直列接続にして使用する事を特色とする請求項1並びに、請求項2の空気調和設備。
【請求項6】
請求項1、請求項2の空気調和設備に使用する外気調和機の主熱交換器の空気上流側と下流側にエコノマイザー熱交換器を配置して、上流側と下流側の熱交換器の間に水循環回路と循環ポンプを設置し、冷房時期において、夏季の高温の取り入れ外気の熱を上流側の熱交換器で取り込んで下流側の熱交換器に送り、除湿の目的で前記主熱交換器で低い露点温度まで除湿冷却された外気を、前記下流の熱交換器でほぼ室温に近い温度まで昇温し、除湿能力を保持しながら低温によって室内温度への影響が及ばぬ様に再熱し、かつこれによって外気のもつ高い温度の熱量を低減させ、外気を必要露点温度まで冷却除湿を行うに要する必要冷却熱量を大幅に節減する事が出来るようにした外気調和機を使用する事を特色とする請求項1の空気調和設備。
【請求項7】
請求項1、請求項2の空気調和設備の各階天井や床上の設置される空調ユニットの天井懐内の冷水配管のレベルと地中熱管設備の上端のレベルとの間に循環ポンプを設置し、前記循環ポンプの吐出側と吸込側の2カ所から2本の膨張管を設けて、循環ポンプとほぼ同様のレベルに置いた膨張水槽に夫れ夫れバルブを介して接続した事を特色とし、また必要によっては、循環ポンプのキャビテーションを防止するために、循環ポンプに必要な揚程を2分して2台の直列接続の循環ポンプに負担させる事を特色とした請求項1、請求項2の空気調和設備。

【公開番号】特開2011−226753(P2011−226753A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110633(P2010−110633)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(593119882)
【出願人】(500407972)
【出願人】(500407994)
【出願人】(500408016)
【出願人】(500408027)
【出願人】(500408038)
【出願人】(504337280)
【出願人】(504081280)
【出願人】(509266675)
【Fターム(参考)】