説明

空気調節機

【課題】空気吸い込み口より取り込まれる空気中の浮遊物の捕捉機能を、通気性を損なわせることなく向上させたエアフィルタおよび該エアフィルタの表面を清浄するクリーニング装置を有する空気調節機を得ることを目的とする。
【解決手段】通風路19aが空気吸い込み口25aと空気吐出口27aとの間に形成される筐体3Aと、通風路19aを遮って配設されるエアフィルタ16aと、該エアフィルタを清浄するクリーニング装置2Aと、を備える空気調節機において、クリーニング装置2Aは、エアフィルタ16aが装着されて通風路19aを遮って配設されるフィルタ装着部7Aと、エアフィルタ16aの空気吸い込み口25a側の表面に摺接して、エアフィルタ16aに捕捉された空気中の浮遊物を除去する清掃具18a〜18fと、エアフィルタ16aの表面に流動性かつ粘着性を有する粒子捕捉剤を供給する粒子捕捉剤供給手段29a〜29fと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気吸い込み口より取り込まれる空気中の浮遊物の捕捉機能を向上させたエアフィルタおよび該エアフィルタの表面を清浄するクリーニング装置を有する空気調和機や空気清浄機などの空気調節機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調節機においてはエアフィルタに捕捉した塵埃を除去することが必要である。この操作を自動で行うため、従来の空気調和機では、無端ベルト状のフィルタ(エアフィルタ)と、回転駆動手段と、塵埃除去手段と、塵埃捕集手段とで構成される集塵装置(クリーニング装置)を備えている。そして、集塵装置ではフィルタの表面に捕捉された塵埃の除去が行われていた。
すなわち、無端ベルト状のフィルタが、空気吸い込み口と吹き出し口との間に配設されて、回転駆動手段によって回転駆動される。そして、空気と一緒に吸い込まれて、フィルタに捕捉された塵埃は塵埃除去手段によって吹き飛ばされ、吹き飛ばされた塵埃は、塵埃捕集手段にて吸引捕集されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−268929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の空気調和機において、フィルタは通気性を維持するために微小な通風孔を有しているため、フィルタに衝突して捕捉された空気中の一部の浮遊物が、気流の流れに乗ってフィルタの通風孔からすりぬけてしまう問題があった。また、浮遊物のすりぬけをなくすためにさらに通風孔を小さくすると、フィルタにて確実に浮遊物が捕捉される一方で通気性が損なわれるという問題が新たに発生する。
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、空気吸い込み口より取り込まれる空気中の浮遊物の捕捉機能を、通気性を損なわせることなく向上させたエアフィルタおよび該エアフィルタの表面を清浄するクリーニング装置を有する空気調節機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による空気調節機は、通風路が空気吸い込み口と空気吐出口との間に形成される筐体と、通風路を遮って配設されるエアフィルタと、エアフィルタの表面を清浄するクリーニング装置と、を備え、クリーニング装置は、エアフィルタが装着されて上記通風路を遮って配設されるフィルタ装着部と、エアフィルタの空気吸い込み口側の表面に摺接して、エアフィルタに捕捉された空気中の浮遊物を除去する清掃具と、エアフィルタの表面に流動性かつ粘着性を有する粒子捕捉剤を供給する粒子捕捉剤供給手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、粒子捕捉剤供給手段からエアフィルタの表面に粒子捕捉剤が供給されるのでエアフィルタの表面は常時、粒子捕捉剤にコーティングされた状態に保たれる。従って、気流の流れに乗ってエアフィルタの表面に衝突した空気中の浮遊物は粒子捕捉剤の粘着性によりエアフィルタの通風孔からすり抜けることなくエアフィルタの表面にとどまるので通風孔を小さくする必要もなく、エアフィルタの通気性を保ちつつ浮遊物をエアフィルタの表面で捕捉することができる。さらに、清掃具がエアフィルタの表面を摺接移動して、捕捉された浮遊物をエアフィルタの表面から除去するので、エアフィルタの表面が清浄される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る空気調和機の要部の構成をわかりやすく説明するために構成要素を部分的に切除した斜視図、図2はこの発明の実施の形態1に係る空気調和機のフィルタ支持部の斜視図、図3はこの発明の実施の形態1に係る空気調和機のフィルタ装着部の斜視図、図4はこの発明の実施の形態1に係る空気調和機のフィルタ清掃部にスポンジが取り付けられた状態を示す斜視図、図5はこの発明の実施の形態1に係る空気調和機の側面の要部断面図である。図6はこの発明の実施の形態1に係る空気調和機が捕捉した浮遊物の収集動作を説明するためのクリーニング装置の要部拡大断面図であり、図6の(a)〜図6の(c)は、フィルタ装着部が復方向、往方向、復方向の順に移動する状態をそれぞれ示している。
【0009】
図1および図5において、空気調節機としての空気調和機1Aは、エアフィルタ16a、クリーニング装置2A、筐体3A、熱交換器4、ファン5a、ファン駆動モータ41aおよび塵埃収集部26を備えている。
クリーニング装置2Aは、フィルタ支持部6A、フィルタ装着部7A、フィルタ清掃部8A、粒子捕捉剤供給手段としてのスポンジ29a〜29fおよびスライド移動手段20を有し、後述する空気吸い込み口25a側に配設される。
【0010】
次にフィルタ支持部6A、フィルタ装着部7A、フィルタ清掃部8A、エアフィルタ16aおよびスポンジ29a〜29fの構成について図2〜図4を参照しつつ説明する。
図2において、フィルタ支持部6Aは、枠12a、保持凸部13a〜13fおよびレール部14a,14bを有している。
枠12aは、弾力性のある樹脂などにより長方形の枠状に形成される。保持凸部13a〜13fは、棒状に形成されている。そして、保持凸部13a〜13fのそれぞれは、枠12aの長辺に平行に、かつ枠面に対して突出するように両端を短辺に固着されて、短辺の長さ方向に所定の間隔で6列に配設されている。
【0011】
また、レール部14a,14bは、細長い矩形平板状に形成されている。そして、レール部14a,14bは、枠12aの短辺の長さ方向の全域に渡って、枠12aの両短辺の外壁面に固定される。
【0012】
図3において、フィルタ装着部7Aは、面状のエアフィルタ16aを装着するものであって、枠12b、補強部15、ガイドピン32a〜32d、レール部14c、14dおよび歯部17を有している。
枠12bは、枠12aと同じ材質で同じサイズの長方形の枠状に形成される。補強部15は、枠12bの短辺、長辺の長さをそれぞれ3分割および4分割するように、枠12bと同じ厚さで同じ材質を用いて格子状に形成されている。そして、補強部15は枠12bにはめ込まれた状態に固定される。
エアフィルタ16aは、枠12b内を覆うように、枠12bの内縁近傍の表面および補強部15の表面に接着等で固定され、枠12bの外縁近傍の表面は露出されている。
また、ガイドピン32a〜32dは、軸方向を枠12bの長辺と平行にして両短辺から延出するように配設されている。
【0013】
ここで、エアフィルタ16aの材料は、ポリプロピレンからなるポリオレフィン繊維などの織物が用いられる。そして、エアフィルタ16aは、通気性を確保するための通風孔を有している。
また、エアフィルタ16aの浮遊物付着面(表面)の凹凸は極力小さいものが用いられる。凹凸の小さい方が後述の浮遊物の収集動作において、エアフィルタ16aの表面で捕捉する空気中の浮遊物を除去しやすい。
【0014】
また、レール部14c、14dは、細長い矩形平板状に形成されている。そして、レール部14c,14dは、枠12bの短辺の長さ方向の全域に渡って、枠12bの両短辺の外壁面に固定される。
また、歯部17は、枠12bの長辺の一辺の中点付近の枠12b内から枠12bの外に向けて、枠12bに固定して取り付けられている。歯部17は後述する歯車9に対応する形状の凹凸を有している。
【0015】
図4において、フィルタ清掃部8Aは、枠12c、清掃具としてのスキージ18a〜18f、ガイド30a〜30dおよびレール部14e,14fを有している。
枠12cは、枠12a,12bと同じ材質で同じサイズの長方形の枠状に形成される。そして、スキージ18a〜18fのそれぞれは、枠12cの長辺に平行に、かつ枠面に対して突出するように両端を短辺に固着されて、短辺の長さ方向に所定の間隔で6列に配設されている。
【0016】
レール部14e、14fは、細長い矩形平板状に形成されている。そして、レール部14e,14fは、枠12cの短辺の長さ方向の全域に渡って、枠12cの両短辺の外壁面に固定される。
【0017】
ガイド30a〜30dは、レール部14e,14fのそれぞれの下部に、レール部14e,14fの長さ方向に所定の間隔をもって配設されている。
【0018】
ガイド30aは、扁平な断面楕円の柱状に形成されている。そして、ガイド溝33がガイド30aの一端面にレーストラック状に凹設され、ガイド溝33に囲まれた島部がガイド30aの断面楕円の長軸と平行な2辺とその長軸に対して所定の角度に傾斜する平行な2辺とからなる平行四辺形の断面形状に残されている。そして、ガイド30aは、その断面楕円の長軸をレール部14eの長さ方向に一致させて、かつ、ガイド30aの開口を内側に向けて、レール部14eの下部に固定状態に取り付けられている。なお、ガイド30b〜30dも、ガイド30aと同様に構成され、それぞれのレール部14e,14fの下部に固定状態に取り付けられている。
【0019】
また、フィルタ清掃部8Aのガイド30a〜30dおよびフィルタ装着部7Aのガイドピン32a〜32dが対となって、後述するようにフィルタ清掃部8Aをフィルタ装着部7Aから接離するためのフィルタ清掃部移動機構として働く。
これらのガイド30a〜30dは、ガイド溝33にガイドピン32aが遊嵌状態に挿入される位置関係で枠12cに固着状態に取り付けられている。
【0020】
さらに、スキージ18a〜18fと同じ長さの柱状のスポンジ29a〜29fが、それぞれのスキージ18a〜18fに沿って、両端を枠12cの短辺に固定して設けられている。
【0021】
また、スポンジ29a〜29fにはあらかじめ、粒子捕捉剤としてのシリコーンオイルが含浸されている。シリコーンオイルは、空気調和機1Aの使用温度において流動性かつ粘着性を有している。そのため、シリコーンオイルに空気中の浮遊物などが付着した場合、付着した浮遊物が気流などによって、再度シリコーンオイルから剥離されて浮遊することはない。
【0022】
さらにまた、フィルタ支持部6A、フィルタ装着部7Aおよびフィルタ清掃部8Aの枠12a〜12d、レール部14a〜14fは、柔軟性があり、それぞれ短辺が円弧状に湾曲した曲面形状に変形可能になっている。
【0023】
次に、空気調和機1Aの詳細構成について、再び図1および図5を参照しつつ説明する。
筐体3Aは、ベース21、メインパネル22、底面パネル24aおよび側板23a,23bによって形成される。
【0024】
ベース21は、矩形平板状に形成されて、空気調和機1Aを設置する壁面側に取り付けられる面を有している。
底面パネル24aはベース21の長辺と同じ長さの長辺を有する矩形平板状に形成されて、ベース21の下部長辺に底面パネル24aの長辺を合わせて、ベース21の表面に対して垂直に突出するように固定されている。
そして、メインパネル22が、ベース21の上部長辺と底面パネル24aの突出先端側の長辺とをアーチ状の曲面で接続するように配設されている。
そして、側板23a,23bがベース21、メインパネル22および底面パネル24aによって形成される開口面を塞口するように取り付けられている。
【0025】
このように構成される筐体3Aは内部が中空体に形成されている。
ここで、空気調和機1Aは底面パネル24aが最下面となるように配設されるものとする。
また、アーチ状の曲面に形成されたメインパネル22の上部側には、空気吸い込み口25aが桟状に形成されている。さらに、空気吐出口27aが、底面パネル24aを長方形にくりぬいて形成されている。
【0026】
そして、筐体3Aの内部には、空気吸い込み口25aから空気吐出口27aに通ずる通風路19aが形成されている。
通風路19aの経路中に、円柱状のファン5aが、その軸をベース21の長辺と平行になるように配設される。また、ファン駆動モータ41aが、その回転トルクがファン5aに伝達されるように配設されている。さらに、熱交換器4が通風路19a内の上流側でファン5aをへの字状に覆うように配設されている。
【0027】
また、側板23a,23bの相対する内壁面には、メインパネル22の円弧状の辺に沿うようにフィルタ支持部6A、フィルタ装着部7Aおよびフィルタ清掃部8Aのレール部14a〜14fに対応する凹部(図示せず)が形成されている。
【0028】
そして、フィルタ支持部6A、エアフィルタ16aが装着されたフィルタ装着部7Aおよびフィルタ清掃部8Aが、それぞれのレール部14a〜14fを側板23a,23bに形成された凹部に挿入することにより、筐体3Aに3層に重なって装着される。このとき、空気吸い込み口25a側から、フィルタ清掃部8A、フィルタ装着部7A、フィルタ支持部6Aの順にそれぞれ装着されている。また、フィルタ支持部6A、フィルタ装着部7Aおよびフィルタ清掃部8Aは、空気吸い込み口25aと熱交換器4との間に、通風路19aを遮って配設されている。
また、フィルタ装着部7Aのガイドピン32a〜32dをフィルタ清掃部8Aのガイド30a〜30dのガイド溝33にそれぞれ挿入して装着されている。
【0029】
また、レール部14e,14fが挿入される側板23a,23bに形成された凹部の溝幅が広く形成されており、ガイドピン32a〜32dがガイド溝33のレーストラック状の一方の直線部から他方の直線部に、或いは他方の直線部から一方の直線部に移行する際に、フィルタ清掃部8Aがフィルタ装着部7Aに対して接離する方向に移動できるようになっている。
【0030】
さらに、後述するスキージ18a〜18fのスライド移動方向の配列間隔である所定の間隔はフィルタ装着部7Aのスライド移動の片道の距離より短くなっている。
ここで、ガイド溝33のレーストラック状の2つの直線部に関し、フィルタ清掃部8A側の直線部を第1直線部、反フィルタ清掃部側の直線部を第2直線部とする。
【0031】
このとき、フィルタ清掃部8Aおよびフィルタ支持部6Aは、スキージ18a〜18fおよびスポンジ29a〜29fをエアフィルタ16aの表面に密接させた状態で、スキージ18a〜18fおよびスポンジ29a〜29fと保持凸部13a〜13fの先端の表面とでフィルタ装着部7Aを挟みこんで支持するように配置されている。これにより、スキージ18a〜18fおよびスポンジ29a〜29fによるエアフィルタ16aへの押圧力を保ちつつ、その圧力が保持凸部13a〜13fで受け止められるので、エアフィルタ16aには変形するような負荷を与えること無しに、スキージ18a〜18fの先端部およびスポンジ29a〜29fとエアフィルタ16aの表面との間は密接される。また、スキージ18a〜18fは、エアフィルタ16aとの接触部分の面積が小さくなるように加工されている。
【0032】
スライド移動手段20は、フィルタ装着部7Aをスライド移動させるための駆動力を歯部17に伝達する歯車9、歯車9に動力を与える歯車駆動モータ10および歯車9の駆動制御を行う第1の制御手段11aを有している。
歯車9は、フィルタ装着部7Aに固定された歯部17に対応するように配設されている。そして、歯車9には歯車駆動モータ10の回転トルクが伝達されるようになっている。さらに歯車駆動モータ10が第1の制御手段11aに電気的に配線36aによって接続されている。
【0033】
第1の制御手段11aは、歯車駆動モータ10の駆動制御を行う第1のCPU(図示せず)および歯車駆動モータ10の駆動を制御するためのプログラムが書き込まれる第1のROM(図示せず)などを有している。プログラムには、フィルタ装着部7Aが側板23a,23bの相対する内壁面に形成される凹部に沿って所定の距離を繰り返し往復移動する駆動力を歯車9に供給するように、歯車駆動モータ10を制御する命令が書き込まれている。そして、第1のCPUによる歯車駆動モータ10の駆動制御に応じた回転トルクが歯車9を介して歯部17に伝達され、フィルタ装着部7Aは所定の距離を往復的にスライド移動するようになっている。
このとき、フィルタ装着部7Aが往復する方向(スライド移動方向)のうち、フィルタ装着部7Aが底面パネル24a側へ近づくスライド移動の方向を往方向、フィルタ装着部7Aが底面パネル24aから離れるスライド移動の方向を復方向とする。
【0034】
このように構成された空気調和機1Aにおいて、空気吸い込み口25aから吸入される空気中の浮遊物がエアフィルタ16aによって捕捉される機構および捕捉された浮遊物の中に含まれる固形粒子の収集動作について図6を参照しつつ説明する。
なお、図6では、説明の便宜上、2つのスキージ18c,18d、2つの保持凸部13c,13d、2つのスポンジ29c,29d、一つのガイド30aおよび一つのガイドピン32aのみを図示している。
【0035】
まず、初期状態では、粒子捕捉手剤としてのシリコーンオイルがエアフィルタ16aの表面にコーティングされているものとする。
そして、図6の(a)では、ガイドピン32aがガイド溝33の第1直線部内に位置し、スキージ18c、18dおよびシリコーンオイルが含浸されているスポンジ29c,29dは、エアフィルタ16aの表面に密接している。
【0036】
この状態から、空気調和機1Aが稼動すると、ファン駆動モータ41aの回転トルクによりファン5aが駆動される。そして、空気吸い込み口25aから取り入れられた空気は、通風路19aに沿って空気吐出口27aまで誘導される。つまり、空気吸い込み口25aから取り入れられた空気は、フィルタ清掃部8A、フィルタ装着部7A、フィルタ支持部6Aおよび熱交換器4の配設箇所を通過し、空気吐出口27aから吹き出されるようになっている。
【0037】
空気調和機1Aが稼動すると、前述の通り、エアフィルタ16aを装着したフィルタ装着部7Aは、空気吸い込み口25aから取り入れられた空気の通風路19aを遮って配置されているので、空気吸い込み口25aより空気と共に吸入される空気中の浮遊物は、エアフィルタ16aの表面に衝突する。なお、空気中の浮遊物には、埃や粉塵などの固形粒子や、タバコのヤニおよび調理や機械工作に使用される各種油などの流体粒子が含まれる。
【0038】
このとき、エアフィルタ16aの表面はシリコーンオイルでコーティングされているので、空気中の浮遊物がエアフィルタ16aに衝突したときに、シリコーンオイルのもつ粘着力によって浮遊物は、通風孔からすり抜けることなく捕捉され、気流の下流側に位置する熱交換器4への浮遊物の付着が未然に防止される。また、エアフィルタ16aの表面と、捕捉した固形粒子との間には粒子捕捉剤が介在しているので、固形粒子がエアフィルタ16aを形成するポリオレフィン繊維にからまって、エアフィルタ16aの表面に固着してしまうことが少なくなる。さらに、流体粒子についてはエアフィルタ16aのポリオレフィン繊維に浸透してしまうことがない。
【0039】
この状態で、第1のCPUによって歯車駆動モータ10が駆動制御されて、フィルタ装着部7Aが復方向に移動されると、スキージ18c,18dおよびスポンジ29c,29dがエアフィルタ16aの表面を摺接しつつエアフィルタ16aの表面をスライド移動する。このとき、浮遊物のうち、固形粒子はシリコーンオイルの粘着力によってエアフィルタ16aの表面から離れて散乱することなく、スキージ18c,18dによって掻き取られる。また、コーティングされている一部のシリコーンオイルも流体粒子とともにスキージ18c,18dによって掻き取られるが、シリコーンオイルを含浸したスポンジ29c,29dからエアフィルタ16aの表面にシリコーンオイルが追加供給されるので、エアフィルタ16aの表面は常にシリコーンオイルでコーティングした状態に保たれる。
【0040】
ここで、固形粒子28はスキージ18dで掻き取られた固形粒子を表すものとする。そして、ガイドピン32aがガイド溝33の第1直線部の端部まで来ると、第1直線部から第2直線部への円弧部に導かれる。そこで、フィルタ装着部7Aの復方向への移動が停止される。
【0041】
ついで、フィルタ装着部7Aが往方向に移動されると、ガイドピン32aが円弧部に沿って第2直線部に導かれる。このとき、フィルタ清掃部8Aは、図6の(b)に示されるように、フィルタ装着部7Aから離反し、スキージ18c,18dおよびスポンジ29c,29dがエアフィルタ16aから離反する。そして、フィルタ装着部7Aがさらに往方向に移動され、ガイドピン32aがガイド溝33の第2直線部の端部まで来ると、第2直線部から第1直線部への円弧部に導かれる。そこで、フィルタ装着部7Aの往方向への移動が停止される。このフィルタ装着部7Aの往方向の移動では、スキージ18c,18dおよびスポンジ29c,29dはエアフィルタ16aの表面から離反して移動する。このとき、スキージ18dで掻き取られた固形粒子28は、スキージ18cの往方向に位置している。
【0042】
さらに、フィルタ装着部7Aが復方向に移動されると、ガイドピン32aが円弧部に沿って第1直線部に導かれる。このとき、フィルタ清掃部8Aは、図6の(c)に示されるように、フィルタ装着部7Aに近接し、スキージ18c,18dおよびスポンジ29c,29dがエアフィルタ16aに密接する。そして、フィルタ装着部7Aがさらに復方向に移動され、ガイドピン32aがガイド溝33の第2直線部の端部までくると、第2直線部から第1直線部への円弧部に導かれる。そこで、フィルタ装着部7Aの復方向の移動が停止される。
【0043】
このフィルタ装着部7Aの復方向の移動では、スキージ18c,18dはエアフィルタ16aの表面に密接して移動し、固形粒子28を掻き取る。このとき、前回のフィルタ装着部7Aの復方向への移動過程においてスキージ18dで掻き取られた固形粒子28は、スキージ18cで掻き取られる。このように、フィルタ装着部7Aの往復移動を繰り返す度に、固形粒子28を掻き取るスキージは往方向のスキージに代えられ、固形粒子28はエアフィルタ16aの表面上を往方向に集められ、ついには塵埃収集部26に集塵される。
【0044】
さらに、スキージ18c,18dがエアフィルタ16aの表面に密着すると同時に、シリコーンオイルを含浸したスポンジ29c,29dもエアフィルタ16aの表面に密着する。したがって、エアフィルタ16aにコーティングされたシリコーンオイルがスキージ18c、18dに掻き取られてもシリコーンオイルは補充されて、エアフィルタ16aの表面は常時シリコーンオイルでコーティングした状態に保たれる。
なお、他のガイドピン32b〜32dおよびガイド30b〜30d、スキージ18a,18b,18e,18f、スポンジ29a,29b,29e,29fについても、上記説明と同様の動作がなされる。
【0045】
この実施の形態1によれば、フィルタ清掃部8Aのスキージ18a〜18fおよびフィルタ装着部7Aに装着されている粒子捕捉剤としてのシリコーンオイルを含浸したスポンジ29a〜29fがエアフィルタ16aの表面に密着されている。この状態で、フィルタ装着部7Aがスライド移動されるので、スキージ18a〜18fによって、シリコーンオイルが掻き取られてもエアフィルタ16aの表面には、スポンジ29a〜29fからシリコーンオイルが供給され、エアフィルタ16aの表面は常時シリコーンオイルにコーティングされた状態に保たれる。従って、気流の流れに乗ってエアフィルタ16aの表面に衝突した空気中の浮遊物はシリコーンオイルの粘着性によりエアフィルタ16aの通風孔からすり抜けることなくエアフィルタ16aの表面にとどまる。よって、通風孔を小さくする必要もなく、エアフィルタ16aの通気性を保ちつつ浮遊物をエアフィルタ16aの表面で捕捉できる。
従って、気流の下流側に位置する熱交換器4に空気中の浮遊物が付着することがなく、浮遊物の付着による熱交換器4の熱伝導率が低下することを未然に防ぐことができる。
【0046】
さらにフィルタ清掃部移動機構が、フィルタ装着部7Aの往復移動の移動方向に対応して、フィルタ清掃部8Aがフィルタ装着部7Aに対して接離するように構成されている。つまり、フィルタ装着部7Aの復方向への移動時に、フィルタ清掃部8Aがフィルタ装着部7Aに近接し、スキージ18a〜18fがエアフィルタ16aに密接して移動する。また、フィルタ装着部7Aの往方向への移動時に、フィルタ清掃部8Aがフィルタ装着部7Aから離反し、スキージ18a〜18fがエアフィルタ16aに離反して移動する。そこで、エアフィルタ16aの表面に捕捉されている固形粒子は、フィルタ装着部7Aの復方向の移動時にのみスキージ18a〜18fで掻き取られる。
【0047】
さらに、スキージ18a〜18fのスライド移動方向の配列間隔である所定の間隔が、フィルタ装着部7Aのスライド移動の片道の移動距離より短くなっているので、フィルタ装着部7Aの往復移動を繰り返す度に、固形粒子を掻き取るスキージは往方向のスキージに代えられ、固形粒子はエアフィルタ16aの表面上を往方向に集められ、ついには塵埃収集部26に集められる。これにより、固形粒子がエアフィルタ16aの表面から自動的に除去されて、エアフィルタの表面が清浄されるので、固形粒子がエアフィルタ16aに付着することによる空気調和機1Aの効率低下が防止される。
【0048】
なお、この実施の形態1では、粒子捕捉剤にシリコーンオイルを用いるものとして説明したが、シリコーンオイルに限定されるものではなく、空気調和機1Aの使用温度で流動性かつ粘着性があり、低揮発性の植物性油、動物性油、鉱物性油を用いても良い。植物性油や動物性油においては非乾性油であれば、長期にわたって酸化などによって固まることもないので空気中の浮遊物の捕捉効果も持続する。
【0049】
また、さらに、粒子捕捉剤として、両親媒性物質を用いることができる。例えば、親水基と疎水基を有するオリゴマーやポリマー、さらに、以下に示すような非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤などを用いることができる。
【0050】
非イオン界面活性剤は、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、多価アルコール、アルキルアミン、油脂、ポリプロピレングリコール等のポリエチレングリコール付加物や、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ショ糖、多価アルコール、アルカノールアミンの脂肪酸エステル類などを用いることができる。
また、陰イオン界面活性剤は、カルボン酸塩類、硫酸エステル塩類、スルホン酸塩類、リン酸エステル類等を用いることができる。
さらにまた、陽イオン界面活性剤は、各種のアミン塩型、第4級アンモニウム塩型などを用いることができる。
その他、アミノ酸型、ベタイン型等の両性界面活性剤を用いてもよい。
さらには、上述した植物性油、動物性油、鉱物性油および両親媒性物質のなかから少なくとも2種類を選択して配合したものを用いても良い。
【0051】
粒子捕捉剤として、上記のように両親媒性物質を使用した場合は、浮遊物が親水性であっても疎水性であっても効率よく捕捉することができ、さらに、エアフィルタ16aを取り外して洗浄する必要がある場合には、水洗浄により容易に洗い流せるという効果がある。
また、粒子捕捉剤に植物性油などの油性のもの用いた場合はプラスチックからなる機器の周辺部材に付着すると、プラスチックにクレージングとよばれるひび割れを生じさせる場合もあり注意が必要であるが、上記のような界面活性剤を用いた場合にはクレージングのおそれが無くなるという効果が得られる。
【0052】
さらに、粒子捕捉剤には、非揮発性の物質や水分が含まれていても良い。但し、30℃以下で揮発性を有する成分を含有するものは、粒子捕捉剤をコーティングしたエアフィルタ16aを使用した機器の稼動時に、揮発性の成分が空気中に排出されるおそれがあり好ましくない。
【0053】
また、エアフィルタ16aにポリオレフィンを用いることを例にあげて説明したが、ポリオレフィンに限定されるものではなく、エアフィルタ16aには、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、セルロースなどの合成繊維や、植物または動物性の天然繊維からなる織物、不織布を用いてもよい。
【0054】
また、フィルタ清掃部8Aの清掃具にはスキージ18a〜18fを用いるものとして説明したが、スキージ18a〜18fに限定されるものではなく、ブラシを用いてもよい。ブラシの材質は特に限定されるものではないが、ナイロンなどの材質のものを用いても良く、ブラシの毛を構成する繊維の先端を細くしてエアフィルタ16aと接触しやすくしたり、ブラシの繊維表面に微小な凹凸加工を施してエアフィルタ16aとの摩擦を大きしたりすることによって、固体粒子の収集の作用効果を高めることができる。
【0055】
また、スキージ18a〜18fにはゴムを用いるものとして説明したが、ゴムに限定されるものではなく、プラスチック等を用いても良い。さらに、エアフィルタ16aとの接触面をスポンジ状の発泡体になるようにして弾力性を持たせるなどの加工を施し、エアフィルタ16aに密接させてもよい。
【0056】
また、スキージ18a〜18f、スポンジ29a〜29fおよび保持凸部13a〜13fは6列に配設するものとして説明したが、配設数は6列に限定されるものではなくエアフィルタ16aの形状などから、適宜配設数を決定すればよい。
また、スライド移動手段20は、フィルタ装着部7Aを往復的にスライド移動させるものとして説明したが、フィルタ清掃部8Aを往復的にスライド移動するようにクリーニング装置2Aを構成してもよい。
【0057】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2に係る空気調和機の側面の要部断面図である。
空気調和機1Bにおけるクリーニング装置2Bのフィルタ清掃部8Bは、実施の形態1のフィルタ清掃部8Aのスポンジ29a〜29fが取り去られている。そして、粒子捕捉剤供給手段としての定量塗布具37a,37bが、ベース21の上部側におけるフィルタ装着部7Aに装着された面状のエアフィルタ16bの角部の表面に接するようにメインパネル22に固定具38を介して取り付けられている。
【0058】
フィルタ装着部7Aに装着されたエアフィルタ16bはエアフィルタ16aと同一形状に形成されて、その材料には、ポリプロピレン等の疎水性のものが用いられている。また枠12bはコーティングや表面処理や添加物の混合によって親水性を高めたポリスチレン、ポリプロピレン、ABSなどのプラスチックで形成されている。
【0059】
定量塗布具37a、37bは、粒子捕捉剤を封入する一端の尖った収納容器31aを有し、さらに収納容器31aの一端側には、粒子捕捉剤を吐出する吐出部が形成されている。吐出部は、捕捉剤吐出口35と捕捉剤吐出口35を覆う不織布(図示せず)で構成されている。そして、定量塗布具37a,37bは捕捉剤吐出口35をエアフィルタ16bの表面に接触するように取り付けられて、エアフィルタ16bの表面に単位時間当たりに所定量の粒子捕捉剤が滲み出すようになっている。粒子捕捉剤には、流動性の高い液状の両親媒性物質のうち、エアフィルタ16bの材料であるポリプロピレンと同様に疎水性の高い界面活性剤が用いられている。
疎水性の高いアフィルタ16bの表面に、疎水性の高い界面活性剤が塗布されるので、エアフィルタ16bの表面では、界面活性剤を拡散させる力が働いて、定量塗布具37a,37bとエアフィルタ16bの表面での接触点から界面活性剤が拡散する。従って、界面活性剤がエアフィルタ16bの表面全体にコーティングされる。
【0060】
枠12bが親水性の高い材料で形成されているので、枠12bの外部に界面活性剤が拡散されることが制限され、界面活性剤が枠12bの外部にはみ出していくことが抑制される。
【0061】
定量塗布具37a,37bからの界面活性剤の吐出量は、エアフィルタ16bの表面を覆うだけの微量なものでよいが、100cmあたり2mgから50mgであることが好ましい。
この場合、粒子捕捉剤がスキージ18a〜18fによってエアフィルタ16bの表面から徐々に掻き取られる量を考慮して単位時間当たりの粒子捕捉剤の吐出量が決定される。
2mgより少ない量であれば、浮遊物の捕捉効果が十分に向上できない場合もあり、また50mgを超える量では、エアフィルタ16bの通気性が損なわれる場合がある。
なお、その他の構成については実施の形態1と同様に構成されている。
【0062】
この実施の形態2によれば、フィルタ装着部7Aに装着されるエアフィルタ16bが疎水性の高い材料で形成され、かつ枠12bが親水性の高い材料で形成されて、さらにエアフィルタ16bの表面に塗布される粒子捕捉剤には、エアフィルタ16bの材料と同様に疎水性の高い界面活性剤が用いられているので、エアフィルタ16bの表面に界面活性剤を部分的に塗布するだけで、エアフィルタ16bの表面では界面活性剤を拡散させる力が働いて、枠12b内のエアフィルタ16bの表面は界面活性剤でコーティングされる。
従って、実施の形態1の効果に加えて、エアフィルタ16bの全面を網羅するようなおおがかりな定量塗布具を設ける必要がなく、定量塗布具37a,37bの設置スペースは低減されるという新たな効果が得られる。
【0063】
なお、この実施の形態2では、粒子捕捉剤に疎水性の高い界面活性剤(両親媒性物質)を用い、またエアフィルタ16bに疎水性の高い材料を、枠12bに親水性の高い材料を用いるものとして説明したが、粒子捕捉剤にセルロース等の親水性の高いもの、またエアフィルタ16bに親水性の高い材料を、枠12bに疎水性の高い材料を用いても同様の効果が得られる。
また、定量塗布具37a,37bは、捕捉剤吐出口35を不織布で覆う構成としたが、このものに限定されるものではなく、スポンジ29a〜29fより小さな複数のスポンジ片に粒子捕捉剤を含浸させてエアフィルタ16bの表面のいくつかの点に配置して粒子捕捉剤をエアフィルタ16bの表面上に拡散させてもよい。
【0064】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3に係る空気調和機の側面の要部断面図である。
空気調和機1Cにおけるクリーニング装置2Cは、実施の形態2の定量塗布具37a,37bの代わりに定量塗布具37cを有している。
粒子捕捉剤供給手段としての定量塗布具37cは、第2の制御手段11bおよび粒子捕捉剤を封入する収納容器31bと粒子補足剤を吐出する吐出部(図示せず)を有するインクジェット散布部34を備えている。なお、粒子捕捉剤には、実施の形態2と同様にエアフィルタ16bの材料と同様の疎水性の高い界面活性剤が用いられる。
ここで、第2の制御手段11bとインクジェット散布部34は、電気的に配線36bで接続されている。また、インクジェット散布部34は、エアフィルタ16bの表面側で、かつベース21の上部側に配設されている。
【0065】
インクジェット散布部34は、収納容器31bに封入される粒子捕捉剤をインクジェット方式により吐出部からエアフィルタ16bの表面に所定量を散布することができるようになっている。
また、第2の制御手段11bは、タイマを備えた第2のCPU(図示せず)、インクジェット散布部34を制御するプログラムが書き込まれる第2のROM(図示せず)などを有しており、インクジェット散布部34は第2の制御手段11bによってその動作が制御される。
ここで、空気調和機1Cが稼動するごとに第2のCPUに備えられたタイマのカウント動作が開始されるようになっていて、空気調和機1Cの積算稼動時間が第2のCPUによって監視される。
【0066】
そして、第2のROMに書き込まれるプログラムには、空気調和機1Cの積算稼動時間が所定時間に達すると、吐出部から所定量の粒子捕捉剤を散布(塗布)するようにインクジェット散布部34を制御する命令が書き込まれており、第2のCPUはこれに従いインクジェット散布部34を制御して、吐出部から粒子捕捉剤をエアフィルタ16bの表面に散布する。
【0067】
なお、その他の構成については実施の形態2と同様に構成されている。
インクジェット散布部34からの塗布量は、実施の形態2と同様に100cmあたり2mg〜50mgになるように塗布されるのが望ましい。
【0068】
実施の形態3によれば、空気調和機1Cの積算稼動時間が所定の時間に達するごとに粒子捕捉剤が散布されるので、エアフィルタ16bへの粒子捕捉剤の塗布量がより適量に制御される。従って、実施の形態2の効果に加えて、エアフィルタ16bの表面の状態を、浮遊物の捕捉に適した状態に安定して維持することができるという効果が得られる。
【0069】
なお、この実施の形態3では、空気調和機1Cの所定の積算稼働時間ごとに一定量の粒子捕捉剤を散布するものとして説明したが、数週間などの所定の間隔時間で粒子捕捉剤の散布を行ってもよい。
また、インクジェット方式により粒子捕捉剤を散布するものとしたが、インクジェット方式に限定されるものではなく、スプレーなどによって粒子捕捉剤を散布するものにしてもよい。
【0070】
実施の形態4.
図9はこの発明の実施の形態4に係る空気清浄機における側板を考慮しない要部透視図である。
なお、実施の形態3と同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
空気調節機としての空気清浄機39は、クリーニング装置2C、エアフィルタ16b、筐体3B、定量塗布具37c、集塵フィルタ40、ファン5b、ファン駆動モータ41bおよび塵埃収集部26を備えている。
筐体3Bは、それぞれ矩形平板状の前面パネル42、背面パネル43、上面パネル44、底面パネル24bおよび2つの側板(図示せず)を有する中空の直方体に形成される。そして、前面パネル42と背面パネル43とが対向して配置されている。また、背面パネル43の中央部には、窪みが形成されて、窪みの開口部が、対向する前面パネル42側に向けられている。
【0071】
また、上面パネル44と底面パネル24bとが対向して配置される。そして図示しないが、2つの側板が、前面パネル42、背面パネル43、上面パネル44および底面パネル24bによって形成される開口面を塞口して取り付けられる。
ここで、空気清浄機39は、底面パネル24bが最下面となるように配設される。
【0072】
また、前面パネル42には空気吸い込み口25bが桟状に形成され、さらに空気吐出口27bが上面パネル44の背面パネル43側に桟状に形成される。そして、筐体3Bの内部には、空気吸い込み口25bと空気吐出口27bとを連通する通風路19bが形成される。
【0073】
さらに、側板の相対する内壁の空気吸い込み口25b側には、フィルタ支持部6A、フィルタ装着部7Aおよびフィルタ清掃部8Bのレール部14a〜14fに対応する凹部(図示せず)が底面パネル24bに対して垂直な方向に形成されている。それぞれのレール部14a〜14fを対応する凹部に挿入することにより、エアフィルタ16bおよびクリーニング装置2Cが筐体3Bに配設される。
このとき、エアフィルタ16bおよびフィルタ装着部7Aは、通風路19bを遮るように、かつ側板に形成された凹部に案内されて、エアフィルタ16bの面方向に、つまり底面パネル24bに対して垂直方向に往復的にスライド移動可能に配設される。
【0074】
そして、通風路19bの背面パネル43側にファン5bが配設されて、さらに、背面パネル43の窪みには、ファン駆動モータ41bが配設される。そして、ファン駆動モータ41bは、その回転トルクがファン5bに伝達されるように配設されている。
また、集塵フィルタ40がクリーニング装置2Cとファン5bとの間に通風路19bを遮って設けられている。なお、集塵フィルタ40は、エアフィルタ16bの通風孔をも通過する非常に小さな粒子を取り除くものである。
【0075】
また、中央部に空気を還流させる通風経路を有する隔壁45が、集塵フィルタ40とファン5bとの間の上面パネル44および底面パネル24bからそれぞれ対向する面に向かって突出して配設されている。
そして、定量塗布具37cが、インクジェット散布部34からエアフィルタ16bの空気吸い込み口25b側上部の表面に粒子捕捉剤を散布できるように上面パネル44に取り付けられている。
【0076】
そして、空気清浄機39の稼動中は、ファン駆動モータ41bの回転トルクによりファン5bが駆動される。そして、空気吸い込み口25bからとり入れられた空気が、通風路19bに沿って空気吐出口27bまで誘導される。
フィルタ装着部7Aは前述の通り、空気吸い込み口25bから取り入れられた空気の通風路19bを遮って配置されているので、空気吸い込み口25bより空気と共に吸入される空気中の固形粒子は、エアフィルタ16bの表面に衝突してエアフィルタ16b表面に捕捉される。また、エアフィルタ表面16bの表面には、粒子捕捉剤が定量塗布具37cによって、空気清浄機39の積算稼動時間が所定時間経過するごとに散布される。
よって、この実施の形態4によれば、実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0077】
なお、この実施の形態4では、空気清浄機39にクリーニング装置2Cを配設するものとして説明したが、クリーニング装置2Cを配設するものに限定されるものではなく、クリーニング装置2Cの代わりにクリーニング装置2Aやクリーニング装置2Bを配設してもよい。
【0078】
実施の形態5.
実施の形態5では、粒子捕捉剤として、実施の形態1乃至実施の形態4で用いている粒子捕捉剤に抗菌剤および防カビ剤が配合されたものを用いている。
抗菌剤や防カビ剤としては、塩化ベンザルコニウムに代表される陽イオン界面活性剤などが使用できる。粒子捕捉剤に配合する陽イオン界面活性剤の配合比率は、特に限定されるものではないが、50ppm含むものから30パーセントまで幅広い範囲で使用しても抗菌、防カビの効果が得られる。つまり、50ppmに達しない場合では、空気中の浮遊物が多量にエアフィルタ16a,16bの表面に付着したときに、十分な抗菌、防カビの効果が得られないことがある。また、30パーセントを超える量では、粒子捕捉剤の流動性、粘性が低くなって、浮遊物の捕捉能力が損なわれるおそれがある。
【0079】
この実施の形態5によれば、粒子捕捉剤に抗菌、防カビ剤を配合しているので、エアフィルタ16a,16bの表面上での空気中の浮遊物の捕捉および抗菌、防カビの効果を同時に得ることができる。
【0080】
なお、この実施の形態5では、抗菌剤や防カビ剤として塩化ベンザルコニウムなどの陽イオン界面活性剤を例にあげて説明したが、陽イオン界面活性剤に限定されるものではなく、ベンズイミダゾール系、フタルイミド系、フェノール系、ニトリル系、ピリンジ系、ヨード系、イソチアゾロン系などの一般的な防菌、防カビ剤も使用可能である。また、機器外部へ排出しないように対策をとれば、さらに一般的に普及しているクロルクレゾールなどの揮発性の高い薬剤を使用しても、機器内部の防菌防カビ効果が得られる。
【0081】
また、一般的には、陽イオン界面活性剤は粘性が高いので、一般的には粘性の低い非イオン界面活性剤を配合して粘度を調節してもよい。
陽イオン界面活性剤については、そのもの自体が粒子捕捉剤の特性を有しているため、単体で、粒子捕捉剤と抗菌、防カビ剤として用いることもできる。
また、粒子捕捉剤に抗菌剤および防カビ剤を配合するものとして説明したが、抗菌剤または防カビ剤のいずれか一方を粒子捕捉剤に配合するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明の実施の形態1に係る空気調和機の要部の構成をわかりやすく説明するために構成要素を部分的に切除した斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る空気調和機のフィルタ支持部の斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る空気調和機のフィルタ装着部の斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る空気調和機のフィルタ清掃部にスポンジが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る空気調和機の側面の要部断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る空気調和機が捕捉した浮遊物の収集動作を説明するためのクリーニング装置の要部拡大断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る空気調和機の側面の要部断面図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る空気調和機の側面の要部断面図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係る空気清浄機における側板を考慮しない要部透視図である。
【符号の説明】
【0083】
1A〜1C 空気調和機(空気調節機)、2A〜2C クリーニング装置、3A,3B 筐体、7A,7B フィルタ装着部、12b 枠、16a,16b エアフィルタ、18a〜18f スキージ(清掃具)、19a,19b 通風路、25a,25b 空気吸い込み口、27a,27b 空気吐出口、29a〜29f スポンジ(粒子捕捉剤供給手段)、37a〜37c 定量塗布具(粒子捕捉剤供給手段)、39 空気清浄機(空気調節機)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路が空気吸い込み口と空気吐出口との間に形成される筐体と、
上記通風路を遮って配設されるエアフィルタと、該エアフィルタの表面を清浄するクリーニング装置と、
を備える空気調節機において、
上記クリーニング装置は、
上記エアフィルタが装着されて上記通風路を遮って配設されるフィルタ装着部と、
上記エアフィルタの上記空気吸い込み口側の表面に摺接して、該エアフィルタに捕捉された空気中の浮遊物を除去する清掃具と、
上記エアフィルタの表面に流動性かつ粘着性を有する粒子捕捉剤を供給する粒子捕捉剤供給手段と、
を備えていることを特徴とする空気調節機。
【請求項2】
上記粒子捕捉剤は、液状の両親媒性物質であることを特徴とする請求項1記載の空気調節機。
【請求項3】
上記エアフィルタは上記フィルタ装着部の枠内を覆って装着され、
上記エアフィルタの表面と上記枠の表面とは、親水性あるいは疎水性の相互に異なる特性を有し、上記両親媒性物質は、上記エアフィルタの表面の特性に一致する親水性あるいは疎水性の特性を有することを特徴とする請求項2記載の空気調節機。
【請求項4】
上記粒子捕捉剤は、抗菌剤および防カビ剤の少なくとも一方が配合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の空気調節機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−247961(P2007−247961A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71313(P2006−71313)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】