説明

空気輸送システム

【課題】被輸送物から分離された輸送気体を効率的に再利用することのできる空気輸送システムを提供する。
【解決手段】被輸送物を輸送気体に混合させて所定位置に輸送する空気輸送システムであり、被輸送物を圧送又は吸引するための輸送通路を内域に形成する輸送管2と、被輸送物を輸送通路内に供給する被輸送物供給装置3と、被輸送物を輸送するための気体流を輸送通路内に提供する気体流提供装置7と、被輸送物が混合された輸送気体を被輸送物と輸送気体とに分離する集塵装置5と、集塵装置5にて分離された被輸送物を貯留する被輸送物貯留装置6と、集塵装置5にて分離された輸送気体を利用して電力を発生させる発電装置8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被輸送物を輸送気体に混合させて所定位置に輸送する空気輸送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粕類、穀類、汚泥、砂、粉体又は工場等で金属製品を加工する際に生じる金属屑等の被輸送物を貯留タンク等の所定箇所まで輸送する際に、輸送通路内に圧送又は吸引される空気等の気体に被輸送物を混合して輸送する空気輸送システムが広く利用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。特許文献1の空気輸送システムは、輸送通路を内部に形成する輸送管と、被輸送物を輸送通路内に供給する被輸送物供給装置と、輸送通路内に気体流を提供する気体流提供装置とを備えるものであり、輸送途中において被輸送物を外部に飛散させることなく輸送することができる。特許文献2の空気輸送システムは、特許文献1の空気輸送システムの構成に加えて、輸送経路における下流位置に、被輸送物が混合された輸送気体を被輸送物と輸送気体とに分離する集塵装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−085968号公報
【特許文献2】特開2008−214055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の圧送・吸引式の空気輸送システムでは、集塵装置により分離された輸送気体については屋外にそのまま排気されるのみであり、排気される輸送気体の有効利用については何ら考慮されてはいなかった。この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被輸送物から分離された輸送気体を効率的に再利用することのできる空気輸送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の空気輸送システムは、被輸送物を輸送気体に混合させて所定位置に輸送する空気輸送システムであって、前記被輸送物を圧送又は吸引するための輸送通路を内域に形成する輸送管と、前記被輸送物を前記輸送通路内に供給する被輸送物供給装置と、前記被輸送物を輸送するための気体流を前記輸送通路内に提供する気体流提供装置と、前記被輸送物が混合された輸送気体を前記被輸送物と前記輸送気体とに分離する集塵装置と、該集塵装置にて分離された前記被輸送物を貯留する被輸送物貯留装置と、前記集塵装置にて分離された前記輸送気体を利用して電力を発生させる発電装置とを備えることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、集塵装置よりも下流側に設けた発電装置によって、集塵装置により分離された輸送気体のエネルギーが電力に変換される。したがって、従来技術において排気されるのみであった、集塵装置により分離された輸送気体のエネルギーを電力に変換・回収して有効利用することができる。
【0007】
請求項2に記載の空気輸送システムは、請求項1に記載の発明において、前記発電装置は、その内部に前記輸送気体を取り込むように構成される外周ケースと、該外周ケースの内部に配置され、前記輸送気体によって回転可能に支持される風車と、該風車の回転により発電する発電部とを備え、前記外周ケースには、内部に取り込んだ前記輸送気体を排気する排気路が形成されるとともに、前記排気路は前記被輸送物貯留装置に接続されることを特徴とする。
【0008】
一般に、気体流提供装置により供給される輸送気体は、発生時においては常温であるが、連続運転により上昇する気体流提供装置の温度や、輸送管内を通過する過程で生じる搬送抵抗熱等が加わって温度が上昇し、熱風状態(70〜110℃)となる。例えば、常温を20℃とし、搬送抵抗熱を50℃(1000mmAqで10℃上昇するとした場合)とすると、輸送管を通過して集塵装置及び発電装置からの排気時における輸送気体の温度は約70℃程度となる。また、連続運転によって気体流提供装置が発熱状態にある場合には、その温度分がさらに加わった温度が輸送気体の温度となる。
【0009】
上記構成によれば、発電装置において発電に利用された後に排気される輸送気体が排気路を通じて被輸送物貯留装置に供給されるように構成されている。これにより、被輸送物貯留装置内に貯留された被輸送物は、発電装置から供給された熱風(輸送気体)に曝される状態となる。よって、発電装置から排気される輸送気体をさらに利用して、被輸送物貯留装置内に貯留された被輸送物を乾燥させることができる。
【0010】
請求項3に記載の空気輸送システムは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記発電装置により発生した電力を前記気体流提供装置に供給するように構成したことを特徴とする。上記構成によれば、発電装置により発生した電力が気体流提供装置に還元されるため、気体流提供装置の連続運転に必要とされる電力を抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空気輸送システムによれば、従来、排気されるのみであった輸送気体を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の発電装置の断面図。
【図2】図1におけるX−X線断面図。
【図3】本実施形態の被輸送物貯留装置の断面図。
【図4】本実施形態の空気輸送システムを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の空気輸送システムを図面に基づいて説明する。図4は、被輸送物を輸送気体に混合させて輸送する空気輸送システムの全体構成を概略的に示している。なお、本実施形態では、NC旋盤1を用いた金属製品の加工により生じた金属屑を被輸送物として説明する。このような金属屑の種類としては鉄、鋳鉄、鋳鋼、アルミニウム等が挙げられる。
【0014】
本実施形態の空気輸送システムには、その上流側において二又に分岐した輸送管2が設けられている。輸送管2の最上流側にはそれぞれ被輸送物供給装置3が配設されている。被輸送物供給装置3はNC旋盤1から排出された金属屑を輸送管2の内域に形成される輸送通路内へ供給するものであり、このような被輸送物供給装置3としては、例えば、特開平09−240837号公報及び特開2000−142975号公報に開示されるロータリーフィーダが挙げられる。
【0015】
輸送管2の最下流側には、金属屑が混合された輸送気体を金属屑と清浄空気とに分離して金属屑を捕集するための集塵装置5が設けられている。そして、集塵装置5の下方には、捕集された金属屑を貯留するための被輸送物貯留装置としての貯留タンク6が設けられている。なお、集塵装置5としては、例えば、上記特許文献2に開示される集塵装置が挙げられる。
【0016】
集塵装置5の下流側には、気体流提供装置としての吸引ブロワー7が接続されている。この吸引ブロワー7は輸送気体の供給源であり、集塵装置5にて分離された清浄空気を吸引する。本実施形態の空気輸送システムでは、各被輸送物供給装置3によって輸送管2内に供給された金属屑が、吸引ブロワー7により吸引されることで負圧状態の輸送管2の下流側へと輸送される。また、本実施形態の空気輸送システムでは、吸引ブロワー7の下流側にさらに発電装置8が設けられている。そして、吸引ブロワー7にから排気された輸送気体が発電装置8に供給されるように構成されている。
【0017】
また、輸送管2において、各被輸送物供給装置3の近傍には切換バルブ4がそれぞれ設けられている。そして、二又に分岐した輸送管2のいずれに輸送気体を供給するかが各切換バルブ4の開閉によって選択されるようになっている。
【0018】
次に、発電装置8について図1及び図2に基づいて説明する。
平板状の基台10上には、円筒状をなす外周ケース11が連結具12によって固定されている。基台10上において、外周ケース11の両側方には一対の支持柱13が立設されるとともに、同支持柱13には外周ケース11を貫通する回転軸14が回転可能に軸支されている。回転軸14の一方の端部には、Vプーリ15が回転軸14と一体回転可能に取り付けられている。そして、Vプーリ15はVベルト17を介して発電部としての誘導モータ16に連結されている。誘導モータ16は吸引ブロワー7における、ブロワーモータを起動するインバータに内蔵される回生システムに接続されている。
【0019】
外周ケース11は、円環状の周壁11aと、円板状をなし、周壁11aの両側縁に接合される一対の第1側壁11b及び第2側壁11cとからなり、その内部に密閉空間を形成している。回転軸14は、第1側壁11b及び第2側壁11cの中心部に形成される貫通孔に挿通されている。なお、第1側壁11b及び第2側壁11cと回転軸14との間にはオイルシール(図示略)が取り付けられており、外周ケース11内の密閉状態は確保されている。
【0020】
図1に示すように、周壁11aの上部には、吸引ブロワー7に連結され、同吸引ブロワー7から排気される輸送気体を外周ケース11内に吸入するための吸気路21が、水平方向(周壁11aに対する接線方向)に延びるように接続されている。そして、第1側壁11bの中央下部には、外周ケース11内に供給された輸送空気を外部に排気するための排気路22が接続されている。
【0021】
また、外周ケース11の内部において、第1側壁11bの内側面には、開口を有する有底円筒状をなす内筒ケース23が、同開口が第1側壁11bで塞がれるような状態で固定されている。内筒ケース23の中心には回転軸14を挿通するための貫通孔24が設けられ、回転軸14はこの貫通孔24を介して、内筒ケース23に対して回転可能に挿通されている。内筒ケース23の周壁下部には、内筒ケース23の内外を連通する円形状の連通孔23aが複数設けられている。本実施形態では4つの連通孔23aを設けている。
【0022】
また、内筒ケース23の幅(回転軸14の軸方向の長さ)は、第1側壁11b及び第2側壁11cの内側面間の幅よりも小さくなるように形成されるとともに、内筒ケース23の径は、周壁11aの内径よりも小さくなるように形成されている。これにより、外周ケース11の内部において、内筒ケース23と第2側壁11cとの間、及び内筒ケース23と周壁11aとの間にそれぞれ所定の空間が形成されている。なお、内筒ケース23と周壁11aとの間の空間は、外周ケース11内を輸送気体が流れるための内部流路となる。そして、内部流路の断面形状は吸気路21の断面形状と同じかそれよりも大きくなるように形成されている。
【0023】
外周ケース11の内部において、内筒ケース23と第2側壁11cとの間の空間には、円板状をなす回転板25が収容配置されている。回転板25の中心部には、筒状の連結部28が回転板25を貫通した状態で接続されている。そして、回転板25はその中心部において、連結部28を介して回転軸14と一体回転可能に回転軸14に対して取り付けられている。回転板25は、その径が内筒ケース23の径よりも大きく、かつ周壁11aの内径よりも小さくなるように形成されている。そして、回転板25における内筒ケース23よりも径方向外側に位置する部位の側面には、内筒ケース23と周壁11aとの間の空間(内部流路)側に突出する羽根板26が複数枚、突設されている。図1に示すように、各羽根板26は回転軸14の軸心を中心として渦巻き状を形成する曲線状をなすように形成されている。また、各羽根板26の先端部は、上記内部流路内に配置され、内部流路と略同形状をなす環状板27に接続されている。本実施形態では、回転板25と連結部28と各羽根板26と環状板27とによって風車が構成されている。
【0024】
次に発電装置8の動作について説明する。まず、集塵装置5によって、被輸送物と分離された輸送気体は吸引ブロワー7及び吸気路21を介して外周ケース11内に取り込まれる。そして、取り込まれた輸送気体は吸気路21に対向するように位置している風車の羽根板26に衝突するとともに、同風車を内部流路における吸引方向(図1の矢印A方向)に回転させる。この風車の回転に伴って回転軸14及び同回転軸14に取り付けられたVプーリ15が風車と一体に回転する。Vプーリ15の回転力は、Vベルト17を通じて発電部である誘導モータ16に伝達される。そして、誘導モータ16は、輸送気体によって回転する風車の回転力に基づいて発電するとともに、その電力を吸引ブロワー7に供給する。
【0025】
また、吸気路21から外周ケース11内に取り込まれた輸送気体は、風車の羽根板26を押しつつ、内筒ケース23と周壁11aとの間の空間を羽根板26とともに、上記吸引方向に移動する。そして、外周ケース11の下部に達すると、内筒ケース23に形成される連通孔23aを通じて内筒ケース23内に移行し、排気路22から外周ケース11の外部に排気される。排気路22を通じた外周ケース11からの輸送気体の排気は、羽根板26に衝突した後も残存する輸送気体の気体流のエネルギーや、次々に流入する輸送気体によって上昇する外周ケース11内の内圧のエネルギー等によって行なわれる。
【0026】
次に、被輸送物貯留装置としての貯留タンク6について図3に基づいて説明する。
輸送管2内を輸送されてきた金属屑は、集塵装置5にて金属屑と輸送気体とに分離される。そして、分離された金属屑は集塵装置5の下方に配置される貯留タンク6に排出され、輸送気体は吸引ブロワー7へ排気される。集塵装置5の下部に設けられるバルブ5aには筒状の接続部31が連結されている。この接続部31の下方には上方に開口する有底箱状の貯留部33が配置され、この貯留部33の開口と接続部31の下部開口とが布製の被覆部32によって連結されている。本実施形態の貯留タンク6は、この接続部31と被覆部32と貯留部33とによって構成されている。
【0027】
接続部31には、発電装置8の外周ケース11から延びる排気路22が連結されており、発電装置8から排気された輸送気体が貯留タンク6内に流入するように構成されている。被覆部32は金属屑(被輸送物)の通過を許容せず、輸送気体のみを通過させる程度の通気性を有する素材により形成されている。なお、本実施形態では被覆部32を布により形成している。また、貯留部33は仕切部34によって上下に区画されている。仕切部34は、金属屑(被輸送物)の通過を許容せず、液体を通過させる通過部を有する形状に形成されている。本実施形態では仕切部34をパンチングメタルにより形成している。
【0028】
次に貯留タンク6の作用について説明する。集塵装置5から排出された金属屑は、接続部31を通過して貯留部33内の仕切部34上に貯留される。被輸送物として金属屑を輸送した場合、金属加工時に使用した切削油等の液体(油水分)が付着した状態で、金属屑が貯留タンク6まで輸送されることがある。こうした液体は仕切部34によって金属屑から分離されることになる。つまり、仕切部34を通過不能な金属屑は仕切部34上に残る一方で、仕切部34を通過可能な液体のみが仕切部34の下部に移行し、金属屑と液体とが分離されて、ろ過処理される。
【0029】
また、貯留タンク6内には、排気路22を介して発電装置8から排気される輸送気体が供給されている。吸引ブロワー7により供給される輸送気体は、その発生時においては約10度程度の熱(排気温度)を有している。そして、上記輸送気体は、発生時においては常温であるが、連続運転により上昇する吸引ブロワー7の温度や、輸送管2内を通過する過程で生じる搬送抵抗熱等が加わって温度が上昇し、熱風状態(70〜110℃)となっている。そのため、貯留部33に貯留された金属屑は、排気路22を介して供給される熱風状態の輸送気体に曝されることになり、貯留部33に貯留された金属屑は乾燥処理される。
【0030】
さらに、この輸送気体は一定のスピード、かつ相応の風速(10〜30m/秒)をもって上方から貯留部33内に供給されるため、貯留部33内に液体のろ過処理が促進される。なお、仕切部34を通過して貯留部33の下部に貯留された液体は所定の方法により廃棄或いは再利用される。
【0031】
次に、図4に基づいて、本実施形態の空気輸送システム全体の作用について説明する。
まず、吸引ブロワー7が駆動されて、輸送管2内が負圧状態になるとともに輸送管2内に輸送気体の気体流が発生する。こうした状態の輸送管2内に各被輸送物供給装置3から金属屑が供給されると、金属屑は輸送管2内を流れる輸送気体によってその下流側へと輸送される。そして、混合状態にある金属屑と輸送気体は、輸送管2の下流位置に配置される集塵装置5にて金属屑と輸送気体とに分離され、金属屑は貯留タンク6に排出されるとともに輸送気体は吸引ブロワー7を介して排気される。ここで、吸引ブロワー7から排気される輸送気体は、風速20m/秒以上、かつ一定の速度で排気される。
【0032】
そして、吸引ブロワー7から排気された輸送気体は発電装置8内に取り込まれて、その内部に備えられる風車を用いた発電に利用される。発電装置8にて発生した電力は、吸引ブロワー7に供給されて吸引ブロワー7の駆動電力として使用される。つまり、吸引ブロワー7から排気される輸送気体のエネルギーを、発電装置8にて回収するとともに電力に変換して吸引ブロワー7の駆動電力として再利用している。また、発電装置8から排気される輸送気体は、貯留タンク6に供給されて、貯留タンク6内に貯留された金属屑の乾燥に利用される。
【0033】
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態の空気輸送システムでは、輸送通路を内域に形成する輸送管2、輸送通路内に金属屑を供給する被輸送物供給装置3、輸送通路内に気体流を提供する吸引ブロワー7、金属屑が混合された輸送気体を金属屑と輸送気体とに分離する集塵装置5、集塵装置5にて分離された金属屑を貯留する貯留タンク6に加えて、集塵装置5にて分離された輸送気体を利用して電力を発生させる発電装置8を備えている。
【0034】
集塵装置5の下流側に発電装置8が設けられることにより、従来、屋外に排気されるのみであった集塵装置5から排出される輸送気体のエネルギーを電力に変換して回収することができる。とくに、吸引ブロワー7等の気体流提供装置を備える空気輸送システムにおいて排気される輸送気体は、風速20m/秒以上、かつ一定の速度の気体流であるため効率的に発電を行なうことができる。
【0035】
(2)本実施形態の空気輸送システムでは、発電装置8にて発生させた電力を吸引ブロワー7に供給して、吸引ブロワー7の駆動電力として利用している。そのため、吸引ブロワー7の連続運転に必要とされる電力を抑えることができる。
【0036】
(3)本実施形態の空気輸送システムに設けられる発電装置8は、その内部に輸送気体を取り込むように構成される外周ケース11と、外周ケース11の内部に配置され、輸送気体によって回転可能に支持される風車と、風車の回転により発電する誘導モータ16とを備えている。そして、外周ケース11には、内部に取り込んだ輸送気体を排気する排気路22を設けている。
【0037】
これにより、外周ケース11内に取り込まれ、発電に利用された後の輸送気体をそのまま外部に発散させるのではなく、排気路22を通じて再度集約して回収することができる。そのため、発電に利用した後も輸送気体のエネルギーをさらに活用することが可能となる。
【0038】
(4)本実施形態の空気輸送システムでは、発電装置8に設けられる排気路22を貯留タンク6に接続して、発電装置8から排気される輸送気体を貯留タンク6内に供給するように構成している。上で述べたとおり、発電装置8から排気される輸送気体は約80度の熱風となっている。そのため、発電装置8から排気される輸送気体を貯留タンク6内に供給することで、貯留タンク6内に貯留された金属屑を効果的に乾燥させることができる。つまり、本実施形態では、発電装置8において発電に利用された輸送気体を金属屑の乾燥に利用している。
【0039】
(5)本実施形態の空気輸送システムに設けられる貯留タンク6は、金属屑の通過を許容せず、輸送気体の通過を許容する被覆部32によって、貯留タンク6の内外を区画する壁の一部が構成されている。これにより、排気路22から貯留タンク6内に流入した輸送気体は被覆部32を介して貯留タンク6外へ排気されるため、貯留タンク6内の内圧が過度に高まることが抑制される。
【0040】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 発電装置8の構成は、輸送機体の風力を利用して発電するものであれば、どのような構成であってもよい。例えば、本実施形態の発電装置8では、輸送気体の流入方向(吸気路22の延びる方向)に対して直交する方向に延びる回転軸14を有する風車を備えていたが、輸送気体の流入方向と同じ方向の回転軸を有する風車(例えば、プロペラ型)を備える発電装置8を採用してもよい。
【0041】
・ 本実施形態では、発電装置8に設けられる外周ケース11を、その内部が密閉状態となるように構成していたが、外周ケース11内に取り込まれた輸送気体の大部分を排気路22から排気可能な構成であれば、外周ケース11の密閉状態は厳密なものでなくてもよい。
【0042】
・ 本実施形態では、発電装置8に対して外周ケース11及び排気路22を設けることにより、発電に利用された輸送気体を再度集約して回収するように構成していたが、外周ケース11及び排気路22を設けることなく、輸送気体をそのまま発散させるように構成してもよい。
【0043】
・ 本実施形態では、発電装置8にて発生させた電力を吸引ブロワー7の駆動電力として利用していたが同電力の利用方法はこれに限られるものではない。例えば、被輸送物供給装置3や集塵装置5等の空気輸送システムを構成する他の装置の駆動電力として利用してもよいし、別途、蓄電装置を設けて発電装置8にて発生させた電力を蓄電するように構成してもよい。
【0044】
・ 本実施形態では、発電装置8の排気路22を貯留タンク6に接続して、排気路22から排気される輸送気体を貯留タンク6内の金属屑の乾燥に用いていたが、同輸送気体の利用方法はこれに限られるものではない。例えば、排気路22を輸送管2の最上流部に接続して、排気路22から排気される輸送気体を新たな気体流として利用する構成としてもよい。このように構成した場合、吸引ブロワー7の連続運転時の負荷を低減することができる。
【0045】
・ 本実施形態では、貯留タンク6に設けられる被覆部32を布により形成していたが、被覆部32の構成は、金属屑の通過を許容せず、輸送気体の通過を許容するものであれば特に限定されるものではない。例えば、パンチングメタルによって被覆部32を構成してもよい。また、発電装置8の排気路22を貯留タンク6に接続しない構成とした場合には、貯留タンク6に被覆部32を設けなくてもよい。
【0046】
・ 外周ケース11に接続される吸気路21又は排気路22の位置を変更してもよい。例えば、吸気路21を第1側壁11bの中央上部に接続するようにしてもよいし、排気路22を周壁11aに対する接線方向に延びるように形成してもよい。
【0047】
・ 本実施形態の輸送システムでは、被輸送物として金属屑を輸送する空気輸送システムを採用したが、この被輸送物は金属屑に限られるものではない。すなわち、ガラス、プラスチック、板材、生ごみ、ビニール等の粉砕体や、セメント、木の粉等の粉体等を輸送する空気輸送システムを採用してもよい。
【0048】
・ 本実施形態の輸送システムには、その上流側において二又に分岐した輸送管2を設けたが、三又以上に分岐した輸送管2を設ける構成を採用してもよい。このような構成とした場合、様々な種類の金属屑(たとえば鉄、鋳鉄、鋳鋼、アルミニウム等)の輸送がその種類別に可能となり、効率的である。また、分岐を有さない輸送管2を採用してもよい。この場合、切換バルブ4は省略される。
【0049】
・ 本実施形態の輸送システムでは、気体流提供装置として吸引ブロワー7を採用していたが、供給ブロワーを採用する構成としてもよい。この場合、供給ブロワーは被輸送物供給装置3よりも上流側に設けるとともに、集塵装置5の下流に発電装置8を設ければよい。
【0050】
・ 発電装置8を設けることなく、吸引ブロワー7と貯留タンク6とを連結路を介して接続し、吸引ブロワー7から排気される輸送気体を利用して貯留タンク6内の金属屑を乾燥させるように構成してもよい。この場合、上記連結路に間に輸送気体の風速を減速させる減衰手段を設けることが好ましい。なお、減衰手段として発電装置8を設ける構成としてもよい。
【0051】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
○ 前記被輸送物貯留装置には、該被輸送物貯留装置の内外を区画する壁の一部として、被輸送物の通過を許容せず、輸送気体の通過を許容する被覆部が設けられていることを特徴とする空気輸送システム。
【0052】
○ 前記気体流提供装置は吸引ブロワーであるとともに、前記発電装置は前記気体流提供装置を介して前記集塵装置の下流に配置されていることを特徴とする空気輸送システム。
【0053】
○ 被輸送物を輸送気体に混合させて所定位置に輸送する空気輸送システムであって、前記被輸送物を圧送又は吸引するための輸送通路を内域に形成する輸送管と、前記被輸送物を前記輸送通路内に供給する被輸送物供給装置と、前記被輸送物を輸送するための気体流を前記輸送通路内に提供する気体流提供装置と、前記被輸送物が混合された輸送気体を前記被輸送物と前記輸送気体とに分離する集塵装置と、該集塵装置にて分離された前記被輸送物を貯留する被輸送物貯留装置と、前記集塵装置にて分離された前記輸送気体を前記被輸送物貯留装置内に供給する連結路とを備えることを特徴とする空気輸送システム。
【符号の説明】
【0054】
2…輸送管、3…被輸送物供給装置、5…集塵装置、6…貯留タンク、7…吸引ブロワー、8…発電装置、11…外周ケース、14…回転軸、15…Vプーリ、16…誘導モータ、17…Vベルト、21…吸気路、22…排気路、25…回転板、26…羽根板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被輸送物を輸送気体に混合させて所定位置に輸送する空気輸送システムであって、
前記被輸送物を圧送又は吸引するための輸送通路を内域に形成する輸送管と、
前記被輸送物を前記輸送通路内に供給する被輸送物供給装置と、
前記被輸送物を輸送するための気体流を前記輸送通路内に提供する気体流提供装置と、
前記被輸送物が混合された輸送気体を前記被輸送物と前記輸送気体とに分離する集塵装置と、
該集塵装置にて分離された前記被輸送物を貯留する被輸送物貯留装置と、
前記集塵装置にて分離された前記輸送気体を利用して電力を発生させる発電装置とを備えることを特徴とする空気輸送システム。
【請求項2】
前記発電装置は、その内部に前記輸送気体を取り込むように構成される外周ケースと、該外周ケースの内部に配置され、前記輸送気体によって回転可能に支持される風車と、該風車の回転により発電する発電部とを備え、
前記外周ケースには、内部に取り込んだ前記輸送気体を排気する排気路が形成されるとともに、前記排気路は前記被輸送物貯留装置に接続されることを特徴とする請求項1に記載の空気輸送システム。
【請求項3】
前記発電装置により発生した電力を前記気体流提供装置に供給するように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気輸送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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