説明

空気/燃料を混合するための高せん断処理

エンジンにおける効率的な燃焼のための含気燃料を製造する方法における高せん断機械装置の使用である。ある場合には、当該方法はエンジンに導入する前に気体と液体燃料のエマルジョンを高せん断装置内で生成することを含む。含気燃料を製造するためのある車両システムは高せん断装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府に支援された研究又は開発に関する記述
適用されない。
【0002】
本開示は一般に内燃機関に関する。より詳細には、本開示は内燃機関の稼動に関する。
【背景技術】
【0003】
オイル及びオイル留分に関する揮発性物質の市場は、消費者の燃料コストに影響を与える。そのようなコストの増加は、灯油、ガソリン、及び軽油のコストの上昇によって明らかになる。需要及び価格が上昇するにつれて、消費者は彼らの内燃機関よりも改善された効率を求める。エンジンの効率は燃費に関連するため、一般にエンジンの効率は、燃料中の全化学エネルギーと、運動エネルギーの形で燃料から抽出される利用可能なエネルギーとの比較を含む。エンジンの効率において最も基本的な考えは、熱力学サイクルによって規定される燃料からエネルギーを抽出するための熱力学的な限界である。最も総合的で経済的に重要な考えは、エンジンの経験的な燃費、例えば自動車用途における1ガロンあたりのマイル数である。
【0004】
自動車において見られるような内燃機関は、燃焼室で燃料と酸化剤が混合されて燃やされるエンジンである。一般に、これらのエンジンは4ストロークのエンジンである。4ストロークサイクルは、吸気、圧縮、燃焼、及び排気ストロークを有する。燃焼反応は、熱と膨張することができる加圧ガスとを生じる。産出されたガスの膨張がエンジンの機械部品に作用することによって利用可能な動力を生むことができる。産出されたガスは、圧縮された燃料/酸化剤の混合物よりも多くの利用可能なエネルギーを有する。利用可能なエネルギーが取り出されると、動力に変換されなかった熱は廃熱として冷却システムによって除去される。
【0005】
燃焼しなかった燃料は排気ストロークの間にエンジンから放出される。ほぼ完全な燃焼を実現するために、酸化剤に対する燃料の理論混合比に近い状態でエンジンを稼動する必要がある。これは燃焼しない燃料の量を低減するものの、ある種の規制された汚染物質の排出を増加させる。これらの汚染物質は、燃焼室への導入の前における燃料と酸化剤との不十分な混合にも関係する。また、理論混合比近くでの稼動は異常燃焼の危険性を増加させる。異常燃焼は、燃焼ストロークの終了前にエンジン内で燃料が自然発火する危険な状態である。異常燃焼は壊滅的なエンジンの故障を引き起こす場合がある。これらの状態を回避するために、エンジンは過剰な燃料を用いて稼動される。
【0006】
したがって、産業界には内燃機関への噴射前に燃料と酸化剤とを混合する改良された方法に対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−315617号公報
【発明の概要】
【0008】
含気燃料生産のための高せん断システム及び方法が開示されている。エマルジョンを形成する方法は、少なくとも5m/秒の先端速度を生じるよう構成された少なくとも一つのロータ/固定子のセットを備える高せん断装置を提供すること、前記高せん断装置に気体と液体燃料とを導入すること、及び気体と液体燃料とのエマルジョンを形成することを含み、前記気体は約5μm未満の平均直径を有する気泡を含む。
【0009】
本開示中に記載されているある実施形態においては、方法は高せん断機械装置を利用することによって、改善された時間、温度及び圧力の条件を提供し、結果的に改善された多相の化合物の分散をもたらすことができる。
【0010】
これら及びその他の実施形態、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかになる。
【0011】
本発明の好適な実施形態のより詳細な説明のために、添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本開示中のある実施形態における高せん断燃料システムの概略図である。
【図2】図2は含気燃料の生産のための高せん断装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概要
本開示は、含気燃料を製造するための、液体燃料と酸化剤ガスとを高せん断装置を用いて混合することを含む装置及び方法を提供する。その装置及び方法は、高せん断機械装置を用いることによって、内燃機関への導入前に、反応装置/混合装置内の管理された環境において反応物の迅速な接触及び混合をもたらすことができる。高せん断装置は、液体燃料中に完全に酸化剤ガスを分散させることによって、燃焼を改善することができる。場合によっては、その装置は可搬型に形成される。
【0014】
液体、気体及び固体を含む化学反応及び混合は、反応速度及び混合の完全性を決める時間、温度及び圧力を含む反応速度論の法則に基づいている。二つ以上の異なる相、例えば固体と液体、液体と気体、固体と液体と気体の原材料をエマルジョン中に組み合わせることが望まれる場合、反応速度及び混合の完全性を決める律速因子の一つは反応物の接触時間である。特殊な理論に限定されないが、エマルジョン化学の分野において、液体中に分散されたサブミクロンサイズの粒子、球、又は気泡は主に拡散物中のブラウン運動効果によって移動することが周知である。
【0015】
燃焼前に酸化剤と燃料とを混合することは、爆発の更なる危険を招く。空気中での爆発限界は、室温における体積パーセントによって測定される。爆発上限、これ以降ではUELという、のパラメータは、この濃度を超えると燃料が発火するのに十分な酸化剤が存在しないためにこの濃度を超えると物質が燃焼又は爆発しない気体又は蒸気の最大濃度を指す。爆発下限、これ以降ではLELという、のパラメータは、この閾値未満では発火するのに十分な燃料が無いためにこれ未満では物質が燃焼又は爆発しない空気中の気体又は蒸気の最小濃度を指す。これらの限界値の間における燃料と酸化剤との混合は爆発の危険性を増加させる。燃焼又は爆発を起こすために、適切な比率で組み合わせられる三つの要素、すなわち燃料、酸化剤及び点火源がある。場合によっては、点火源は火花、炎、高圧、又は限定されないその他の源であってもよい。酸化剤/燃料の混合、条件、及び容器の規制は、爆発の危険性を軽減することができる手段である。
【0016】
ガソリンの場合、LELは約1.4体積%であり、UELは約7.6体積%である。軽油を用いる場合、ガソリンと比べて爆発の危険性は軽減される。これは、軽油の高い引火点によるものであり、このことは軽油が容易に蒸発して可燃性のエアロゾルを生じることを防止する。軽油燃料のLELは約3.5体積%であり、UELは約6.9体積%である。ガソリン又は軽油などの燃料混合物をLEL未満又はUELを超えるように維持することは、爆発の危険性を軽減するために重要である。
【0017】
高せん断燃料システム
図1に図示されるように、高せん断燃料システム(HSFS)100は、容器50、ポンプ5、高せん断装置40、及びエンジン10を有する。HSFS100は車両30に設置される。車両30は、車、トラック、トラクター、電車、又は限定されないその他の輸送車両であってもよい。または、車両30は可動型、携帯型又は可搬型のエンジン、例えば発電機を有しても良い。車両30はエンジン10によって駆動又は電力供給される。エンジン10は内燃機関を有する。ある実施形態においては、エンジン10は軽油又はガソリンエンジンである。または、エンジン10は、限定されること無く、酸化剤を伴う燃料の燃焼によって稼動するあらゆるエンジン、例えば灯油の又はプロパンのエンジンであっても良い。
【0018】
燃料は容器50に貯蔵される。容器50は液体燃料を貯蔵、輸送及び消費するように形成されている。容器50は少なくとも二つの開口、入口51及び出口52を備える。容器50は、入口51を介して給油するために、車両30の外部からアクセス可能である。容器50は少なくとも出口52を介してエンジン10と流体連通している。ある場合には、容器50は燃料タンク又は燃料電池を有する。ある場合には、容器50は加圧されていても良い。または、容器50は気体燃料を貯蔵するように形成されていても良い。
【0019】
出口52はポンプ5に向かう燃料経路20に連結されている。ポンプ5は燃料を容器50からエンジン10へと移動させるように形成されている。ある実施形態においては、ポンプ5は容器50及びエンジン10と流体連通している。ポンプ5は、加圧燃料経路12を形成するために、燃料経路20を加圧するように形成されている。ポンプ5は加圧燃料経路12と流体連通している。さらに、ポンプ5はHSFS100を加圧し、そこを流れる燃料流量を調整するように形成されていてもよい。ポンプ5は当業者に周知の燃焼エンジンに燃料を輸送するように形成されていてもよい。または、ポンプ5はいかなる好適なポンプ、例えば、Roper Pump Company(ジョージア州、コマース)のRoper Type 1 gear pump、又はDayton Electric Co(イリノイ州、ナイルズ)のDayton Pressure booster Pump Model 2P372Eであっても良い。ある実施例においては、ポンプ5は燃料による腐食に耐性である。または、ポンプ5の全ての接触部品はステンレス鋼を含んでいる。
【0020】
ポンプ5は燃料経路20中の燃料の圧力をおよそ大気圧、101kPa(1atm)より高く上昇させ、好ましくは、ポンプ5は圧力を203kPa(2atm)に、又は約304kPa(3atm)以上に上昇させる。ポンプ5は圧力を生じ、加圧燃料経路12を介して高せん断装置40に燃料供給する。
【0021】
加圧燃料経路12はポンプ5から流出させる。加圧燃料経路12は更に酸化剤供給装置22を備える。酸化剤供給装置22は加圧燃料経路12に酸化剤を注入するように形成されている。酸化剤供給装置22は、加圧燃料経路12内に酸化剤を注入するためのコンプレッサ又はポンプを有する。酸化剤供給装置22は空気を含む。酸化剤供給装置22は、燃料又は排出物の制御のための燃料添加剤又は代替の反応物を有しても良い。さらに、酸化剤供給装置22は、加圧燃料経路12に導入するために燃料添加剤を蒸発させる手段を有しても良い。例えば、酸化剤供給装置22は、燃焼、排出物、及び限定されない他のエンジン10稼動パラメータの効率を改善するために、水、メタノール、エタノール、酸素、亜酸化窒素、又は当業者に周知な他の化合物を有しても良い。加圧燃料経路12は、燃料及び酸化剤をHSD40に輸送するように形成されている。加圧燃料経路12はHSD40と流体連通している。酸化剤供給装置22は加圧燃料経路12を介してHSD40に流体連通している。または、酸化剤供給装置22はHSD40と直接流体連通している。
【0022】
HSD40は酸化剤供給装置22と加圧燃料経路12内の燃料とを完全に混合するよう形成されている。以下において詳細に説明するように、高せん断装置40は、例えば固定子とロータとの間に固定された隙間を有する固定子−ロータ式の混合ヘッドを利用する機械装置である。HSD40において、酸化剤ガスのマイクロバブル及びナノバブルを含むエマルジョンを形成するために、酸化剤ガスと燃料とは混合される。ある実施形態においては、得られた分散体はサブミクロンサイズの気泡を含む。ある実施形態においては、得られた分散体は約1.5μm未満の平均気泡サイズを有する。ある実施形態においては、平均気泡サイズは約0.1μm未満から約1.5μm未満である。ある実施形態においては、平均気泡サイズは約400nm未満、より好ましくは約100nm未満である。
【0023】
HSD40は燃料噴射経路19内に酸化剤ガスの気泡のエマルジョンを形成する役割を有する。エマルジョンはさらに微細な泡(micro-foam)であってもよい。ある場合には、エマルジョンは含気燃料、又は気体成分が充満した液体燃料であってもよい。特定の方法に限定されないが、エマルジョン化学の分野において、液体中に分散されたサブミクロンサイズの粒子は主にブラウン運動効果によって移動することが周知である。ある実施形態においては、高せん断混合は少なくとも約15分にわたって大気圧で分散状態を維持できる気泡を生じる。ある場合には、気泡は、気泡のサイズに応じて非常に長い期間にわたって分散状態を維持することができる。HSD40は燃料噴射経路19によってエンジン10と流体連通している。燃料噴射経路19は、燃焼するために燃料をエンジン10に輸送するよう形成されている。
【0024】
燃料噴射経路19は、燃料及び酸化剤のエマルジョンをエンジン10に輸送するよう形成されている。燃料噴射経路19はHSD40及びエンジン10と流体連結されている。燃料噴射経路19は燃料の爆発限界の外、すなわちLEL未満またはUELを超えるようにエマルジョンを維持する。燃料噴射経路19は炎、火花、熱、電荷、又はその他の可能性のある発火源に対する絶縁体を有する。ある実施例においては、燃料噴射経路19は、限定されること無く、車両の燃料噴射システムに関するあらゆる装置、例えば燃圧調整機、燃料レール、及び燃料噴射装置を有しても良い。
【0025】
HSFS100の上記説明において、HSFS100の構成要素及び稼動は、搭載プロセッサ又はエンジンコントロールユニット(ECU)75によって監視及び制御される。ECU75は、車両に設置される装置を監視し、検出し、記憶し、変更し、制御するように形成されたプロセッサを有する。さらにECU75は、エンジン稼動のパラメータを変更するために、HSFS100の稼動を調整又は変更するための手段として、センサ、ソレノイド、ポンプ、中継器、スイッチ、又は限定されない他の装置に電気的に接続されている。ECU75は、例えば燃料中における安全な酸化剤のエマルジョンを確保するために、HSD40の稼動を管理できるように形成されている。
【0026】
例示的な実施形態においては、HSFS100は軽油車両において稼動するように形成されている。HSFS100はUELを超える値で軽油を曝気する。曝気は、例えば非常に小さな泡状の酸化剤ガスを燃料に添加する処理であるため、エンジン内に噴射されると、燃料はより完全に燃焼する。
【0027】
HSFS100において、軽油燃料は容器50に貯蔵される。軽油はポンプ5によって容器50から引き出される。ポンプ5が軽油を高せん断装置40に送ると、燃料経路20内の負圧が容器50から燃料を引き出す。ポンプ5は液体軽油燃料を加圧する。
【0028】
加圧燃料ライン12はポンプ5から出ており、導入される酸化剤供給22を有するため、加圧燃料経路12は点火に必要な三つの要素のうちの二つである酸化剤と燃料との混合物を含む。この実施形態において、酸化剤は空気を含む。理論によって限定されることは無いが、加圧された液体は気化しにくい。そのため、軽油はUELすなわち爆発上限を超えた状態を維持する。酸化剤と加圧燃料はHSD40において混合が施される。システムはUELを超える圧力下にあるため、自然発火又は爆発は回避される。さらに、酸化剤ガスはマイクロバブル及びナノバブルへと細かくされて燃料中に分散される。燃料中に分散したマイクロバブル及びナノバブルはエマルジョンを含む。燃料噴射経路19は燃焼するためにエマルジョンをエンジン10に送る。
【0029】
エンジン10において、エマルジョンは大気から得られた追加の空気と共に燃焼される。軽油が空気のエマルジョンを含むため、化学量論的量以上で軽油はエンジンに注入可能である。理論によって限定されることは望まないが、軽油はより完全に燃焼することができ、例えば窒素酸化物などの規制されている汚染物質の排出を低減することができる。さらに、軽油のエマルジョンはエンジン内における異常燃焼を起こしにくい。異常燃焼は、4ストロークサイクルにおける適切な時点の前にエンジン内で燃料が発火することである。そのため、軽油のエマルジョンは燃料をより完全に燃焼させることで、排出物、出力、及び効率を改善することができる。これらのパラメータを改善するための高せん断燃料システム100は、高せん断装置40を導入することによって実現可能である。
【0030】
高せん断装置
高せん断混合装置及び高せん断ミルなどの高せん断装置40は、それらの流体混合機能に応じて一般に複数のクラスに分類される。混合は流体内における不均一な種又は粒子のサイズを低下させる処理である。混合の程度又は完全性の一つの基準は、混合装置が流体を攪乱するために生じる単位体積あたりのエネルギー密度である。クラスは伝達されるエネルギー密度に応じて区別される。一貫して0から50μmの範囲の粒子又は気泡サイズを有する混合物又はエマルジョンを形成するために十分なエネルギー密度を有する工業用の混合装置の三つのクラスが存在する。
【0031】
均一化バルブシステムは一般的に高エネルギー装置に分類される。処理される流体は非常に高い圧力によって狭い隙間のバルブを通って低圧環境へとポンプ輸送される。バルブを介する圧力勾配と得られる乱流及びキャビテーションとは流体中のあらゆる粒子を破砕するように作用する。これらのバルブシステムはミルクの均一化において最も一般的に用いられており、約0.01μmから約1μmの範囲の平均粒子サイズを実現できる。領域の反対側は低エネルギー装置に分類される高せん断混合システムである。これらのシステムは、処理される流体の容器内において高速で回転するパドル又は流体ロータを通常有しており、より一般的な用途の多くは食料品である。これらのシステムは、処理流体において20μm以上の平均粒子、球、気泡サイズが許容される場合に、通常は使用される。
【0032】
流体に伝達される混合エネルギー密度に関して、低エネルギーの高せん断混合装置と均一化バルブシステムとの間が、中間エネルギー装置に分類されるコロイドミルである。一般的なコロイドミルの形態は、厳密に調整されたロータ−固定子の隙間だけ相補的な液冷固定子から離れた円錐形又は円盤形のロータを有しており、前記隙間は0.025mmから10.0mmの範囲であっても良い。ロータは直接駆動又はベルト機構を介して電動モータによって駆動されることが好ましい。適切に調整された多くのコロイドミルは、処理された流体において約0.01μmから約25μmである粒子又は気泡の平均サイズを実現できる。これらの性能は、化粧品、マヨネーズ、シリコン/銀アマルガム及び屋根用タール混合物の調製などのコロイドと油/水ベースのエマルジョンとを含む様々な用途にコロイドミルを適合させる。
【0033】
ここで図2を参照すると、高せん断装置200の模式図が示されている。高せん断装置200は少なくとも一つのロータ−固定子の組み合わせを有する。ロータ−固定子の組み合わせは、限定されること無く、生成機220,230,240又はステージとして知られている。高せん断装置200は少なくとも二つの生成機を有しており、より好ましくは、高せん断装置は少なくとも三つの生成機を有する。
【0034】
第1の生成機220はロータ222及び固定子227を有する。第2の生成機230はロータ223及び固定子228を有する。第3の生成機はロータ224及び固定子229を有する。各生成機220,230,240において、ロータはインプット250によって回転駆動される。生成機220,230,240は回転方向265に軸260の周りを回転するように形成されている。固定子227は高せん断装置の壁255に固定するように連結されている。例えば、ロータ222,223,224は円錐形又は円盤形であり、相補的な形状の固定子227,228,229から離間している。ある実施形態におけるロータ及び固定子の両者は、相補的な形状の先端を有する周方向に離間した複数のリングを有する。リングはロータ又は固定子を取り囲む一つの面又は先端を有している。ある実施形態において、ロータ及び固定子の両者は周方向に離間した二つより多くのリング、三つより多くのリング、又は四つより多くのリングを有する。例えばある実施形態においては、三つの生成機のそれぞれが三つの相補的なリングを有するロータ及び固定子を備えることによって、処理される材料はHSD200を通過する際に9つのせん断隙間又はステージを通過する。または、生成機220,230,240のそれぞれは四つのリングを有することによって、処理される材料はHSD200を通過する際に12のせん断隙間又はステージを通過しても良い。それぞれの生成機220,230,240は必要な回転を提供するように形成された好適な駆動システムによって駆動される。
【0035】
生成機はロータと固定子の間に隙間を有する。ある実施形態においては、固定子はそれぞれの生成機(ロータ/固定子のセット)のロータ及び固定子の間に所望されるせん断隙間を得るよう調整可能である。第1の生成機220は第1の隙間225を有し、第2の生成機230は第2の隙間235を有し、第3の生成機240は第3の隙間245を有する。隙間225,235,245は約0.025mm(0.01インチ)から10.0mm(0.4インチ)幅の間である。または当該処理は、隙間225,235,245が約0.5mm(0.02インチ)から約2.5mm(0.1インチ)の間である高せん断装置200の利用を含む。ある実施例においては、隙間は約1.5mm(0.06インチ)に維持される。または、隙間225,235,245は生成機220,230,240間で異なっている。ある場合には、第1の生成機220の隙間225は第2の生成機230の隙間235より大きく、第2の生成機230の隙間235は第3の生成機240の隙間245より大きい。
【0036】
さらに、隙間225,235,245の幅は、荒い、中間、細かい、非常に細かい特性を有しても良い。ロータ222,223,224及び固定子227,228,229は歯付き構造であっても良い。それぞれの生成機は周知のようにロータ−固定子の歯の二つ以上のセットを有しても良い。ロータ222,223,224はそれぞれのロータの外周の周囲に周方向に離間した多数のロータの歯を有しても良い。固定子227,228,229は、それぞれの固定子の外周の周囲に周方向に離間した多数の固定子の歯を有しても良い。別の実施形態においては、ロータ及び固定子は約6.0cmのロータの外径と約6.4cmの固定子の外径とを有する。ある実施形態においては、ロータの外径は約11.8cmから約35cmの間である。ある実施形態においては、固定子の外径は約15.4cmから約40cmの間である。または、ロータ及び固定子は、先端速度及びせん断圧力を変化させるために互い違いの径を有しても良い。ある実施形態においては、三つのステージのそれぞれが、約0.025mmから約3mmの間の隙間を有する非常に細かい生成機を用いて稼動される。
【0037】
高せん断装置200は供給ストリーム205を含む反応混合物が供給される。供給ストリーム205は分散相と連続相のエマルジョンを含む。エマルジョンとは、容易に混合せず且つ一緒に溶解しない二つの区別可能な物質(又は相)を含む液体混合物を指す。大半のエマルジョンは、他の相又は物質の連続していない液滴、気泡、及び/又は粒子をその中に保持する連続相(又はマトリクス)を有する。エマルジョンはスラリー又はペーストのように粘度が高くても良いし、液体中に分散された小さな気泡を有する泡であってもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「エマルジョン」は、気泡を含む連続相、粒子(例えば固形触媒)を含む連続相、連続相に不溶性の流体の液滴又は球を含む連続相、及びそれらの組み合わせを包含する。
【0038】
供給ストリーム205は粒状の固形触媒成分を含んでも良い。供給ストリーム205は、生成物分散体210が形成されるように、生成機220,230,240を通してポンプで輸送される。それぞれの生成機において、ロータ222,223,224は固定された固定子227,228,229に対して高速で回転する。ロータの回転は、ロータ222の外面と固定子227の内面との間に供給ストリーム205などの流体を供給することによって、局所的な高せん断状態を作り出す。隙間225,235,245は、供給ストリーム205を処理する高せん断力を生じる。ロータと固定子との間の高せん断力は、供給ストリーム205を処理することによって生成物分散体210を生産するように機能する。供給ストリーム205が気体を含む場合には所望の気泡サイズの、または供給ストリーム205が液体を含む場合には所望の小球サイズの狭い分散を生成物分散体210中に生じるために、高せん断装置200の各生成機220,230,240は交換可能なロータ−固定子の組み合わせを有する。
【0039】
液体中の気体粒子、小球、又は気泡の生成物分散体210はエマルジョンを含む。ある実施形態においては、生成物分散体210は、以前は連続相中に非混和性又は不溶性であった気体、液体又は固体の分散物を含んでもよい。生成物分散体210は約1.5μm未満である気体粒子、小球、又は気泡の平均サイズを有し、好ましくは小球はサブミクロンサイズの直径である。場合によっては、平均球サイズは約0.1μmから約1.0μmの範囲である。または、平均球サイズは約400nm(0.4μm)未満であり、最も好ましくは約100nm(0.1μm)未満である。
【0040】
先端速度は、エネルギーを反応物に伝達する一つ以上の回転部材の端部に関連する速度(m/秒)である。回転部材の先端速度は単位時間あたりにロータの先端が移動する周方向の距離であり、一般に方程式V(m/秒)=π・D・nで表され、Vは先端速度、Dはロータの直径のメートル、及びnはロータの回転速度の回転数/秒である。そのため、先端速度はロータの直径と回転速度との関数である。
【0041】
コロイドミルの場合、通常の先端速度は23m/秒(4500フィート/分)を超えており、40m/秒(7900フィート/分)を超えることもある。本開示において、用語「高せん断」は、5m/秒(1000フィート/分)を超える先端速度を実現可能であり、反応される生成物のストリーム中にエネルギーを伝達する外部機械駆動式の電源装置を必要とするミル又はミキサーなどの機械式のロータ−固定子装置を指す。ある場合には、22.9m/秒(4500フィート/分)を超える先端速度を実現可能であり、225m/秒(44,200フィート/分)を超えることもある。高せん断装置は、速い先端速度を非常に小さなせん断隙間と組み合わせることによって、処理される材料に大きな摩擦/せん断を生じる。そのため、(せん断隙間、先端速度、及び他の要素に応じて)約1000MPa(約145,000psi)から約1050MPa(152,300psi)の範囲の局所圧とせん断混合装置の先端における温度上昇とが稼動中に生じ得る。ある実施形態においては、局所圧は少なくとも約1034MPa(約150,000psi)である。局所圧は、稼動中において先端速度、流体粘度、ロータ−固定子の隙間に依存する。
【0042】
流体に与えられるエネルギー(kW/L/分)の概算は、モータのエネルギー(kW)と流体の供給量(L/分)を測定することによって算出できる。ある実施形態では、高せん断装置の消費エネルギーは1000W/m3を超える。ある実施形態では、消費エネルギーは約3000W/m3から約7500W/m3である。高せん断装置200は速い先端速度を非常に小さなせん断隙間と組み合わせることによって、材料に対して大きなせん断を生じる。通常、せん断の量は流体の粘度に依存する。せん断速度は先端速度をせん断隙間の幅(ロータと固定子の間の最小の隙間)で割った値である。高せん断装置200で生じるせん断速度は20,000s-1を超える場合もある。ある実施形態では、せん断速度は少なくとも40,000s-1である。ある実施形態では、せん断速度は少なくとも100,000s-1である。ある実施形態では、せん断速度は少なくとも500,000s-1である。ある実施形態では、せん断速度は少なくとも1,000,000s-1である。ある実施形態では、せん断速度は少なくとも1,600,000s-1である。ある実施形態では、HSD40によって生じるせん断速度は、20,000s-1から100,000s-1の範囲である。例えばある利用形態において、ロータの先端速度は約40m/秒(7900フィート/分)であり、せん断隙間の幅は0.0254mm(0.001インチ)であり、1,600,000s-1のせん断速度を生じる。別の利用形態では、ロータの先端速度は約22.9m/秒(4500フィート/分)であり、せん断隙間の幅は0.0254mm(0.001インチ)であり、約901,600s-1のせん断速度を生じる。ロータが大きな直径を有する実施形態においては、せん断速度は9,000,000s-1を超える場合もある。
【0043】
高せん断装置200は、大気圧で少なくとも約15分にわたって分散状態を維持できる気体のエマルジョンを生成する。本開示のため、生成物分散体210において分散相である気体粒子、球、又は泡の直径が1.5μm未満であるエマルジョンは、微細な泡を含んでもよい。特定の理論により限定はされないが、エマルジョン化学の分野において、液体中に分散されたサブミクロンサイズの粒子、球、又は泡は主にブラウン運動効果によって移動することが周知である。
【0044】
高せん断装置200の選択は、処理要求量と生成される分散体210中において望まれる粒子又は泡のサイズに基づく。ある場合には、高せん断装置200は、ノースカロライナ州、ウィルミントンのIKA(登録商標) Works,Inc.及びマサチューセッツ州、ウィルミントンのAPV North America,Inc.のDispax Reactor(登録商標)を備える。例えば、DR2000/4型はベルトドライブ、4M生成機、PTFEシールリング、1インチの入口フランジ用衛生クランプ、3/4インチの出口フランジ用衛生クランプ、2馬力の動力、7900rpmの出力速度、(生成機に依存する)約300L/時から約700L/時の(水の場合の)流動能力、及び9.4m/秒から約41m/秒(約1850フィート/分から約8070フィート/分)の先端速度を有する。様々な入口/出口の連結、馬力、先端速度、出力rpm、及び流速を有する他の様々なモデルが利用可能である。例えば、Super Dispax Reactor DRS2000である。RFBユニットは、一時間あたり125,000リットルの流動能力を有するDR2000/50ユニットであっても良いし、40,000L/時の流動能力を有するDRS2000/50であっても良い。
【0045】
特定の理論に限定されることは望まないが、高せん断混合のレベル又は程度は物質移動の速度を上昇させるのに十分であり、ギブスの自由エネルギー予測に基づいて起こらないと予想される反応を引き起こすことができる局所的な非理想的状態を生じることができると考えられる。局所的な非理想状態は高せん断装置内で生じ、最も顕著な増加は局所圧であると考えられている温度及び圧力の上昇をもたらすと考えられている。高せん断装置内における圧力及び温度の上昇は、瞬間的及び局所的であり、高せん断装置から出るとすぐに大部分の又は平均のシステム状態に戻る。ある場合には、高せん断混合装置は一つ以上の反応物をフリーラジカルに分離するのに十分な強度のキャビテーションを引き起こし、これによって化学反応が増大し、又はフリーラジカルが存在しない場合に必要とされる条件よりもより厳しくない条件で反応が起こることを可能にする。また、キャビテーションは局所的な乱流及び液体の微小循環(音響流)を生じることによって輸送プロセスの速度を向上する。
【0046】
発明の好適な実施形態が示されて説明されたが、当業者は発明の精神及び教示を逸脱することなくそれらの改良を行うことができる。本明細書に記載される実施形態は単なる例示であり、限定することを意図していない。本明細書において開示される発明の多くの変形及び改良は、可能であると共に発明の範囲に属する。数値範囲又は数値限定が明確に記載されている場合、そのような表現の範囲又は限定は、明確に記載された範囲又は限定内に入る同様の桁の反復範囲又は限定を含む(例えば、約1から約10は、2,3,4などを含み、0.10より大きいは、0.11,0.12,0.13及びそれ以上を含む)ことが理解されなければならない。請求項のあらゆる部材に関する用語「任意に」の使用は、対象部材が必要である又は必要でないことを意味することを意図している。いずれの選択肢も請求項の範囲に入ることを意図している。「有する(comprise)」、「含む(includes)」、「有する(having)」などの広い用語の使用は、「からなる(consisting of)」、「ほぼ〜からなる(consisting essentially of)」、「実質的に〜からなる(comprised substantially of)などの狭い用語に対するサポートをもたらすことが理解されなければならない。
【0047】
したがって、保護の範囲は上述の説明によって限定されず、以下の請求項によってのみ限定され、その範囲は請求項の対象物の全ての均等物を含む。請求項は本発明の実施形態として明細書中に援用される。したがって、請求項は更なる説明であり、本発明の好適な実施形態の追加事項である。背景技術の欄における文献の説明は、特に本願の優先権後の発行日を有する文献が本発明の従来技術であることを認めるものではない。本明細書で引用された全ての特許、特許出願、及び公報の開示は、それらが例示的であり、手順に関し、又は本明細書に記載されるそれらを補完する他の詳細事項を提供する範囲において、参照によって本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含気燃料を製造する方法であって、
少なくとも5m/秒の先端速度を生じるよう形成された少なくとも一つのロータ−固定子のセットを有する高せん断装置を提供する工程と、
気体及び液体燃料を前記高せん断装置に導入する工程と、
気体及び液体燃料のエマルジョンを形成する工程と、
を有し、前記気体は含気燃料を生成するために約5μm未満の平均直径を有する気泡を含有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、エマルジョンを形成する工程は、前記高せん断装置内において約1.5μm未満の平均直径を有する気泡を形成する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記高せん断装置は約23m/秒を超える先端速度を有するように形成されていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記高せん断装置は約1000MPaの局所圧を先端で生じるように形成されていることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記液体燃料及び気泡に約20,000s-1を超える速度のせん断を加える工程を更に有することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記高せん断装置は少なくとも1000W/m3のエネルギーを消費するよう形成されていることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記エマルジョンはおよそ液体燃料の爆発上限(UEL)を超える液体燃料と気体との混合物を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記エマルジョンは含気燃料の微細な泡を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、気体及び液体燃料を導入する工程は液体燃料を加圧する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、液体燃料を加圧する工程は、少なくとも約203kPa(2気圧)の圧力を加えることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
含気燃料を燃料チャンバへと噴射する工程と、
含気燃料を燃焼して機械力を生じる工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、含気燃料を噴射する工程は、理論混合比になるよう酸化剤ガスを加える工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、含気燃料を噴射する工程は、化学両論的に過剰に前記エマルジョンを燃焼チャンバに導入する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記気体は、空気、水蒸気、メタノール、亜酸化窒素、プロパン、ニトロメタン、シュウ酸塩、有機硝酸塩、アセトン、灯油、トルエン、又はメチルシクロペンタジエニル・マンガン・トリカルボニルからなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
含気燃料を製造するための装置であって、
高せん断装置の上流に配置されたポンプと、
燃料中気体のエマルジョンを生成する高せん断装置と、
前記エマルジョンを燃料するよう形成されたエンジンと、
を有し、前記ポンプは前記高せん断装置の入口と流体接続されており、前記エマルジョンは約1.5μm未満である気泡の平均直径を有することを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置であって、前記高せん断混合装置は23m/秒を超える先端速度を生じることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項15に記載の装置であって、前記高せん断装置は少なくとも約1000MPaの局所圧を先端で生じるよう形成されていることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項16に記載の装置であって、前記高せん断装置は約20,000s-1を超えるせん断速度を生じるように形成されていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項15に記載の装置であって、前記エマルジョンは、およそ液体燃料の爆発上限(UEL)を超える液体燃料と気体との混合物を含むことを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項15に記載の装置であって、前記気体は、空気、水蒸気、メタノール、亜酸化窒素、プロパン、ニトロメタン、シュウ酸塩、有機硝酸塩、アセトン、灯油、トルエン、又はメチルシクロペンタジエニル・マンガン・トリカルボニルからなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−526997(P2011−526997A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516393(P2011−516393)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/045988
【国際公開番号】WO2010/002535
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(509218652)エイチ アール ディー コーポレーション (17)
【Fターム(参考)】