説明

空洞を備えるフェルト及びその製法

【課題】面方向に空洞を備えるシート状フェルトを提供する。
【解決手段】羊毛繊維を調合し、カード機(図示せず)によりウエブ(700mm×1000mm、620g/m2)11、13を作成する。ウエブ11上にウエブの幅に相当する長さのPPバンド(荷造りひも)を12本並べ、その上にウエブ13を重ねる。シャワーで水を適量、散布し、次にウエブ全体をハーダー盤の下布上に配置する。そして、上から上布、フェルトをかぶせ、上下の熱盤ではさんで縮充する。縮充後、フェルトを自然乾燥し、PPバンドを抜き取ると、空洞15を備えるフェルト10が完成する。空洞内に、針金等の支持体を入れれば立体形状に成形できる。また、貴陽石を入れたベッドマットにもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルト表面に、少なくとも1本の空洞(中空部、例えばチューブ状)が設けられたシート状のフェルト及びその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェルトは、家庭用品、事務用品、工業製品等として一般的に使用されている。フェルトは、天然繊維、化学繊維、及び合繊を原料として製造され、完成品はシート状の形態で使用されることが多い。そして、その製法の違いにより、プレスフェルト、ニードルフェルト、成型フェルト等と呼ばれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、シート状のフェルトは、その使用目的に応じて所定の形状に切断されて使用されるが、例えば、シート状のフェルトは平面をそのまま利用してマットレスの中の部材の一部として使われることはあっても、シート自体に機能を持たせて寝具として使用される例は一般的でなかった。従来、シーツ類には、突起を利用した指圧効果を得たい場合があるが、その場合、シーツ自体にさらに突起を設けるか、あるいは突起物を設けたシーツを収納する袋状体を別に用意する必要があった(特許文献1及び特許文献2参照)。
また、従来のシート状フェルトは、そのままの状態で使用されるが、フェルトの質感や感触を生かして、立体状のものを作ろうとしても、フェルト自体に柔軟性があるため、他の支持体を利用してその上に「貼る」、「縫う」等する以外は、困難であった。
これらの問題に対応するため、フェルト内部に他の物体を挿入できるようにする必要があった。
【0004】
【特許文献1】実開平7−7569号公報
【特許文献2】実開昭62−21975号公報
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、フェルトの表面に沿って、1あるいは複数の空洞(中空部、例えばチューブ状)を設けたシート状フェルトの工業的に提供を目的とする。
本発明に係るシート状フェルトは、一辺部から対向する辺部に至る空洞を備えていることを特徴とする。上記空洞は略一様な形状をしており、一辺部から対向する辺部へ向けて有底状であってもよい。上記空洞は略一様な形状をしており、その中に固体、例えば粒状体、棒状体、発光体等を後加工で挿入可能である。
さらに本発明において、上記空洞は、複数設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一態様では、上記空洞内には、間隔を置いて粒状体が挿入されており、上記粒状体は、貴陽石であってよい。
そして、本発明の他の態様では、上記空洞内に、針金状あるいは弾性を有するプラスチック製である棒状体が挿入されることを特徴とする。
さらに本発明の他の態様では、上記空洞内に、発光体が挿入されており、上記発光体は、LEDであることを特徴とする。
さらに、本発明は、シート状フェルトの製造方法であって、所望の繊維からなるウエブ上に、帯状体をウエブの一辺から対向する辺へ向けて配置し、その上に上記ウエブと同形の他のウエブを重ねて縮充後、上記帯状体を引き抜いて空洞を形成することを特徴とする。前記帯状体は、プラスチック製であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
シート状フェルトの空洞の内部に種々のものを挿入することにより、いろいろな効果が得られる。例えば、空洞内に粒状体を、間隔をおいて挿入し、突起を形成したシート状フェルトの場合には、シーツの下に敷いてフェルトの柔軟さと粒状体の突起の効果により、マッサージ効果が得られる。また、空洞内に針金や折り曲げ可能な金属棒、成型可能な弾性のあるプラスチック棒を挿入した場合には、フェルト自体の柔軟性や吸湿性を失うことなく、フェルトの成形が容易になり、立体的なものを作ることが可能であって、例えば、スタンドの笠、パーティション等に利用できる。従来、フェルトを用いて立体形状化するために、「貼る」、「縫う」といった工程が必要であったが、本発明はそれらの工程を省くことによって、作業を単純化し、製造コストの削減が図れる。
本発明のシート状フェルトは、空洞部にLED、電球等の発光体を、挿入して発光させることにより、照明器具として利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明のシート状フェルトを得るための概略の工程を説明する。図1に示すように、羊毛繊維(あるいは、レーヨン、カシミヤ、シルク等の繊維との混紡されたもの)を調合してカード機にかけ作成されたウエブ11を広げ、該ウエブ上にウエブの幅の長さに切断されたポリプロピレンからなる帯状体(例えば、荷造り紐のような形態)を、ウエブの一辺から他辺に向けて等間隔に配置する。その上に、上記と同様なウエブ13を重ねて置き、シャワーで水を散布した後、縮充機により縮充する。縮充工程において、帯状体がある部分は縮充されないので、縮充工程終了後、帯状体を引き抜くと、その跡が空洞(中空部)となり、空洞部15を有するシート状フェルト10が出来上がる。
【0008】
次に、本発明のシート状フェルトの製造方法を図1に基づき、より詳細に説明する。フェルトの材料として例えば羊毛繊維を調合し、カード機(図示せず)によりウエブ11、13を作成する。ここでは、700mm×1000mm、620g/m2のウエブ11,13を2枚作成した。1枚のウエブ11上にウエブの幅に相当する長さのポリプロピレンからなる帯状体12を等間隔に12本並べ、その上にウエブ13を重ねて配置する。そして、上からシャワーで水を適量、散布する。次にウエブ全体を図2に示すように、ハーダー盤20の下布24上に配置する。そして、上から上布23、フェルト22をかぶせ、上下の熱盤21ではさんで縮充する。縮充圧力(エキセン、すなわち回転軸の偏芯幅)を6、もみ時間は5分とした。出来上がった空洞15を備えるシート状フェルト10(aに示される)の縮充後の質量は1240g、厚さは4.8mm〜5.2mmであり、空洞部15(bに拡大して示される)の箇所は、5.3mm〜5.7mmである。縮充後、フェルトを自然乾燥し、帯状体が抜き取られる。以下、このフェルト10を「空洞フェルト」という。
【0009】
図1の例では、ウエブ11上に帯状体12が、一辺から対向する辺に向けて端部から端部へ置かれたが、図2(a)に示すように、帯状体12を一辺から対向辺に向けて対向辺に達しないように、中間部までの長さとしてもよい。その場合には、縮充後、図2(b)のように帯状体が引き抜かれると、空洞部15が、帯状体がおかれた部分のみに形成され、図1のように貫通していない有底状の空洞部ができる。帯状体は自由におくことができるので、例えば、格子状、斜線状、斜め格子状等に帯状体を配置することにより、それらの形状からなる空洞部の形成が可能である。
【0010】
(実施例1)
本発明の空洞フェルト10は、図4に示すように、その空洞15内に粒状体、例えば貴陽石のような球状にされた石31を間隔をおいて挿入する。本実施例のものは、上記粒状体からのマイナスイオンと指圧効果を利用した、ベッドマットとして利用できる。
【0011】
(実施例2)
図5は、空洞フェルト10の空洞部15にLED(発光ダイオード)41をリード線42により多数接続したものを挿入し、照明器具としたものである。LEDはほとんど発熱しないので、フェルトが燃えることもない。本実施例のものは、通常の照明器具の補助用として、また、ディスプレイに使用できる。
【0012】
(実施例3)
図5は、従来のフェルトには得られない本発明の成形可能なフェルトを示すものである。空洞フェルト10の空洞15に針金51を通し、全体的に折り曲げ、立体形状にしたものの例である。本実施例のものは、針金の折り曲げ可能な性質を利用しており、空洞15の数や針金の硬度を変えることによって、立体形状の形態を変えられる。
【0013】
(実施例4)
図6は、空洞フェルト10の空洞15に鉄、ステンレス、アルミニュウムを含む金属棒、針金、又は弾性を有するプラスチック製の棒状体を挿入することにより、複数枚の空洞フェルトを縦方向に接続すると共に、横方向に縫合あるいは接続金具等で接合し、金属棒61の下部を支持台62により支持することによって、自立型パーティションとした例である。本実施例では、フェルトの吸音性能が厚さにより変化するので、空洞フェルト10の厚さを変えることにより、遮音性能のあるパーティションが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の空洞フェルトの製造工程を説明する図である。
【図2】図1に示す帯状体がシート状フェルトの一辺から対向辺に向けて、中間部の位置まで伸びるように置かれた例を示す。
【図3】図1の製造工程中、縮充機の一部を説明する図である。
【図4】本発明の空洞フェルトを健康シートに利用した例を示す図である。
【図5】本発明の空洞フェルトを照明器具としての利用を説明する図である。
【図6】本発明の空洞フェルトの空洞部に支持体を挿入し、立体状の形態とした例を示す図である。
【図7】本発明の空洞フェルトをパーティションとした例を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
10 空洞フェルト
11、13 ウエブ
12 帯状体
15 空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面方向に、一辺部から対向する辺部に至る空洞を備えていることを特徴とするシート状フェルト。
【請求項2】
前記空洞は、一辺部から対向する辺部へ向けて有底状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のシート状フェルト。
【請求項3】
前記空洞は、複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート状フェルト。
【請求項4】
前記空洞内には、間隔を置いて粒状体が挿入されていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート状フェルト。
【請求項5】
前記粒状体は、貴陽石であることを特徴とする請求項4に記載のシート状フェルト。
【請求項6】
前記空洞内に、針金状あるいは弾性を有するプラスチック製である棒状体が挿入されていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート状フェルト。
【請求項7】
前記空洞内に、発光体が挿入されている請求項1又は2記載のシート状フェルト。
【請求項8】
前記発光体は、LEDであることを特徴とする請求項6記載のシート状フェルト。
【請求項9】
所望の繊維からなるウエブ上に、帯状体をウエブの一辺から対向する辺へ向けて配置し、その上に前記ウエブと同形の他のウエブを重ねて縮充後、前記帯状体を引き抜いて空洞を形成することを特徴とするシート状フェルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−284804(P2007−284804A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110193(P2006−110193)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(504139798)
【Fターム(参考)】