説明

空洞充填材

【課題】圧送中における気泡の破壊を抑制できるとともに、コストの軽減を図ることができる空洞充填材を提供する。
【解決手段】水と、固化材と、石炭灰と、増粘材と、気泡を含有する空洞充填材であって、前記石炭灰が、10.0%以下の強熱減量を示すフライアッシュであり、前記増粘材が、ベントナイトであり、このベントナイトの量が、水に対し、2.5〜4.0重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプラインの空洞への充填材、シールドトンネルの裏込材、防空壕の充填材等として使用する空洞充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
石油や天然ガスを運ぶために地盤中に恒久的に埋設したパイプライン内に敷設されたガス管の周囲の空洞を充填する空洞充填材としては、エアミルクやエアモルタルが用いられている。近年、数百メートル〜数キロメートルのパイプラインの空洞を充填する工事が多く、エアミルク充填材を長距離の圧送管によりポンプ圧送している。エアモルタルの一例としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【特許文献1】特開2004−238214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、長距離の圧送管によりポンプ圧送する場合、圧送中にエアミルク・エアモルタル充填材に含まれる気泡が破壊し、圧送後にはエアミルク・エアモルタル充填材に要求される軽量性や材料分離抵抗性能が発揮されないという課題を有している。
また、水と、固化材と、気泡を構成材料とするエアミルク充填材や、水と、固化材と、気泡と、ミクロサンドを構成材料とするエアモルタル充填材はコストが高くなるという課題を有している。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、圧送中における気泡の破壊を抑制できるとともに、コストの軽減を図ることができる空洞充填材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、水と、固化材と、石炭灰と、増粘材と、気泡を含有する空洞充填材であって、
前記石炭灰が、10.0%以下の強熱減量を示すフライアッシュであることを特徴とする。
【0006】
前記固化材としては、ポルトランドセメントが好ましいが、ポルトランドセメントに代えて、混合セメントである高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等を使用してもよい。
石炭灰は、10.0%以下の強熱減量を示すフライアッシュであるが、好ましくは、5.0%以下の強熱減量を示すフライアッシュがよく、さらに好ましくは、3.0%以下の強熱減量を示すフライアッシュがよい。フライアッシュの強熱減量が10.0%を超えると、空洞充填材中の気泡の消泡率が10%以上となり好ましくない。
また、石炭灰であるフライアッシュは、空洞充填材1m3あたり50〜100Kg含まれているのが好ましい。フライアッシュが50Kg未満では、フライアッシュの含有量が少なすぎて、コスト減をあまり図ることができず、一方、100Kgを超えると、気泡が壊れ易くなるからである。
【0007】
気泡は、動物性蛋白質系起泡剤を水で希釈した水溶液を、発泡機により発泡させることで生成される。起泡剤は動物性タンパク質系のエアーボールMT(株式会社立花マテリアル製)が好ましいが、代わりに界面活性剤系を用いてもよい。
【0008】
前記増粘材は、気泡の破壊を抑制するために添加するものである、例えば、ベントナイトが好ましいが、ベントナイト以外のものでもよい。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空洞充填材において、前記増粘材が、ベントナイトであることを特徴とする。
【0010】
ベントナイトとしては、クニゲルV1(クニミネ工業株式会社製)が好ましいが、その代わりに他のベントナイトを用いてもよく、ベントナイトのグレードについては格別の制限はない。
また、ベントナイトの量は、水に対し、2.5〜4.0重量%であることが望ましい。
【0011】
そこで、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空洞充填材において、前記ベントナイトの量が、水に対し、2.5〜4.0重量%であることを特徴とする。
【0012】
ベントナイトの量が、2.5重量%未満では、ブリーディングが発生し易くなり、一方、4.0重量%を超えると、空洞充填材の粘度が大きくなり、圧送時における内部圧力が大きくなって気泡が壊れ易くなる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の空洞充填材において、前記石炭灰が空洞充填材1m3あたり50〜100Kg含まれていることを特徴とする。
【0014】
石炭灰が50Kg未満では、石炭灰の含有量が少なすぎて、コスト減をあまり図ることができず、一方、100Kgを超えると、気泡が壊れ易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水と、固化材と、石炭灰と、増粘材と、気泡を含有する空洞充填材であるので、石炭灰の分だけ固化材を少なくすることができ、その分、コストの軽減を図ることができる。特に石炭灰を、空洞充填材1m3あたり50〜100Kg含ませることによって、気泡を壊れ難くするとともに、コストの軽減を図ることができる。
また、本発明に係る空洞充填材をパイプラインの空洞充填材として用いる場合、セメントの増加による硬化しすぎを防止できる。
また、石炭灰が、10.0%以下の強熱減量を示すフライアッシュであるので、圧送中における気泡の破壊を抑制できる(消泡率を10%以下にすることができる。)。
また、増粘材が、ベントナイトであり、このベントナイトの量が、水に対し、2.5〜4.0重量%であるので、ブリーディングが発生し難くなるとともに、圧送時における気泡の破壊も少なくなる。
したがって、材料分離抵抗性能、自己充填性能、長距離圧送性能に優れ、なおかつ施工コストの低減も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、空洞充填材を、水と、固化材と、石炭灰と、増粘材と、気泡を含有するものとした。
固化材としてはポルトランドセメントを使用し、石炭灰としては、5.0%以下の強熱減量を示すフライアッシュを使用した。また、増粘材としては、ベントナイトを使用し、ベントナイトの量は、水に対し3.0重量%とした。
また、本実施の形態の空洞充填材の配合(配合1)としては、ポルトランドセメント250kg、石炭灰50kg、水(練混ぜ水)300kg、ベントナイト10kgとした。
比較例としての空洞充填材として、ポルトランドセメント250kg、石炭灰50kg、水(練混ぜ水)300kgの配合(配合2)のものを用意した。石炭灰は上記と同様、5.0%以下の強熱減量を示すフライアッシュを使用した。
【0017】
そして、パイプラインの空洞充填材の長距離圧送性能の確認を目的として、小型圧送試験装置を用いて圧送実験を行った。この小型圧送試験装置は、エアミルク、エアモルタル等の空洞充填材を長距離圧送する試験に使用される装置であって、空洞充填材を貯留する貯留タンクと、この貯留タンク内の空洞充填材を圧送するポンプと、このポンプに接続された圧送管とを備えており、前記圧送管の内径が1/4〜1/2インチであり、長さが20〜100メートルである。また、圧送に使用するポンプとしてはスクイズポンプを使用した。
なお、このような小型圧送試験装置による場合と、実際に現場で使用する、規模の大きな装置による場合とでは、圧送後の空洞充填材の性状はほぼ等しいことが確認できた。
表1に本実施の形態の空洞充填材の配合と、比較例の空洞充填材の配合を示し、表2に実験の結果を示す。
【表1】

【表2】

表2から明らかなように、配合1(本実施の形態)では、ブリーディング率は圧送前後共に、0%であった。
配合2(比較例)では、ブリーディング率は圧送前で16.1%、圧送後で29.4%と大きかった。
このように、ベントナイトを、水に対し3.0重量%含有させることによって、材料分離抵抗性に優れていることが分かる。
【0018】
また、図1に石炭灰の強熱減量と圧送後の空洞充填材の消泡率の関係について示す。
この図に示すように、強熱減量の増加に伴って、消泡率が増加しているが、強熱減量が10%以下の石炭灰(フライアッシュ)を用いることによって、消泡率を10%以下に抑えることができる。
なお、消泡率は、次式で求める。
消泡率(%)={1−圧送後の気泡量(%)/圧送前の気泡量(%)}×100
【0019】
以上のように本実施の形態によれば、パイプラインの空洞充填材として、水と、固化材と、石炭灰と、増粘材と、気泡を含有するものを使用し、固化材としてポルトランドセメント、石炭灰として、5.0%以下の強熱減量を示すフライアッシュを使用し、また、増粘材として、ベントナイトを使用し、ベントナイトの量を、水に対し3.0重量%としたので、ブリーディング率は0%となり、材料分離特性に優れ、シリンダーフローは160〜250mmの範囲となり、自己充填性に優れ、長距離の圧送管によりポンプ圧送する場合であっても、圧送中にパイプラインの空洞充填材に含まれる気泡の破壊は少なくなり、また、これによる、気泡の破壊による単位体積重量の増加は少なくなり、圧送後におけるパイプラインの空洞充填材の品質の低下は抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】石炭灰の強熱減量と圧送後の空洞充填材の消泡率の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、固化材と、石炭灰と、増粘材と、気泡を含有する空洞充填材であって、
前記石炭灰が、10.0%以下の強熱減量を示すフライアッシュであることを特徴とする空洞充填材。
【請求項2】
前記増粘材が、ベントナイトであることを特徴とする請求項1に記載の空洞充填材。
【請求項3】
前記ベントナイトの量が、水に対し、2.5〜4.0重量%であることを特徴とする請求項2に記載の空洞充填材。
【請求項4】
前記石炭灰が空洞充填材1m3あたり50〜100Kg含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の空洞充填材。

【図1】
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【公開番号】特開2007−297274(P2007−297274A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−179930(P2007−179930)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【Fターム(参考)】