説明

空洞含有樹脂成形体

【課題】遮光性及び気体透過防止性を有すると共に、耐引き裂き性を有する空洞含有樹脂成形体の提供。
【解決手段】空洞含有樹脂成形体は、内部に空洞を含有する空洞含有樹脂成形体であって、下記式(1)で表されるアスペクト比が2〜1,000である平板粒子を含有する。平板粒子が1辺の平均長さが0.002μm〜1μmである態様などが好ましい。アスペクト比=(前記平板粒子の1辺の平均長さ)/(前記平板粒子の平均厚み)・・・式(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空洞含有樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遮光性を有する空洞含有樹脂成形体が開示され、特許文献2には、非相溶樹脂を用いた空洞含有樹脂成形体が開示されているが、これらの空洞含有樹脂成形体は、空洞を含有しているため、気体透過性が高い。
特許文献3には、ポリアミドと層状ケイ酸塩とを含有し、燃料の壁面透過の大幅防止、低温衝撃性、曲げこわさなどのチューブ性能に優れるチューブが開示されているが、このチューブは、遮光性が低い。
遮光性及び気体透過防止性の両方を満たす成形体は、感熱転写受像シートの受像層として有用であり、また、色素などの光及び酸素により劣化する物質を覆う包装材として有用であるが、未だ開発されておらず、斯かる成形体の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第08/129715号パンフレット
【特許文献2】特開平4−202540号公報
【特許文献3】特開平5−293916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、遮光性及び気体透過防止性を有すると共に、耐引き裂き性を有する空洞含有樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 内部に空洞を含有する空洞含有樹脂成形体であって、下記式(1)で表されるアスペクト比が2〜1,000である平板粒子を含有することを特徴とする空洞含有樹脂成形体である。
アスペクト比=(前記平板粒子の1辺の平均長さ)/(前記平板粒子の平均厚み)
・・・式(1)
<2> 平板粒子は、1辺の平均長さが0.002μm〜1μmである前記<1>に記載の空洞含有樹脂成形体である。
<3> 平板粒子は、層状ケイ酸塩である前記<1>から<2>のいずれかに記載の空洞含有樹脂成形体である。
<4> 層状ケイ酸塩は、層状フィロケイ酸塩である前記<3>に記載の空洞含有樹脂成形体である。
<5> 層状フィロケイ酸塩は、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイト、バーミキュライト、ハロサイトから選択される少なくとも1種を含む前記<4>に記載の空洞含有樹脂成形体である。
<6> 550nmの波長の光における光線透過率が30%以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の空洞含有樹脂成形体である。
<7> 空洞が実質的に無核である前記<1>から<6>のいずれかに記載の空洞含有樹脂成形体である。
<8> 空洞が有核である前記<1>から<6>のいずれかに記載の空洞含有樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、遮光性及び気体透過防止性を有すると共に、耐引き裂き性を有する空洞含有樹脂成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の空洞含有樹脂成形体の製造方法の一例を示す図である。
【図2A】図2Aは、本発明の空洞含有樹脂成形体の斜視図である。
【図2B】図2Bは、図2Aにおける空洞含有樹脂成形体のA−A’断面図である。
【図2C】図2Cは、図2Aにおける空洞含有樹脂成形体のB−B’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(空洞含有樹脂成形体)
本発明の空洞含有樹脂成形体は、内部に、空洞及び後述する平板粒子を含有するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記空洞含有樹脂成形体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、シート状、繊維状などが挙げられる。
前記空洞含有樹脂成形体は、例えば、以下に示す製造方法によって得ることができる。
図1は、空洞含有樹脂成形体の製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。図1に示す二軸延伸フィルム製造装置は、Roll to Roll延伸を行うフィルム製造装置である。
図1に示すように、原料樹脂(ポリマー組成物)11は、押出機12(原料形状や、製
造規模によって、二軸押出機を用いたり、単軸押出し機を用いたりする)内部で熱溶融、
混練された後、Tダイ13から柔らかい板状(フィルム又はシート状)に吐出される。
次に、吐出されたフィルム又はシートFは、キャスティングドラム14で冷却固化され
て、製膜される。製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15に送られる。
そして、製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15内で再び加熱され、速度の
異なるロール15a間で、縦に延伸される。この縦延伸により、フィルム又はシートFの
内部に延伸方向に沿って空洞が形成される。そして、空洞が形成されたフィルム又はシー
トFは、横延伸機16の左右のクリップ16aで両端を把持されて、巻取機側(図示せず
)へ送られながら横に延伸されて、空洞含有樹脂成形体1となる。なお、前記工程において、縦延伸のみを行ったフィルム又はシートFを横延伸機16に供さず、空洞含有樹脂成形体1として使用してもよい。
【0009】
前記空洞含有樹脂成形体は、ポリマー成形体からなる。
前記ポリマー成形体は、単一の結晶性ポリマーを含むポリマー組成物からなり、必要に
応じてその他の成分を含んでなる。
【0010】
−ポリマー組成物−
前記ポリマー組成物は、単一あるいは複数の結晶性ポリマー及び後述する平板粒子を含み、必要に応じて、空洞の発現に寄与しないその他の成分を含んでなる。
【0011】
−−結晶性ポリマー−−
一般に、ポリマーは、結晶性を有するポリマー(結晶性ポリマー)と非晶性(アモルフ
ァス)ポリマーとに分けられるが、結晶性を有するポリマーといえども100%結晶とい
うことはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に
並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。
したがって、本発明のポリマー成形体における前記結晶性ポリマーとしては、分子構造
の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在
していてもよい。
【0012】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ
、例えば、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン類(例えば、ポリプロピレン、ポリエチ
レン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン
−シクロオレフィン共重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1など)、ポ
リアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、ポリ
エステル類(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PPT、PHT、PBN、PE
S、PBSなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサル
ファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(
LCP)、フッ素樹脂、などが挙げられる。その中でも、力学強度や製造の観点から、ポ
リオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、シンジオタクチック・ポリスチレン(
SPS)、液晶ポリマー類(LCP)が好ましく、ポリエステル類、ポリアミド類がより好ましい。
【0013】
前記結晶性ポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する
ことができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa
・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが特に好ましい。前記溶融粘度が5
0Pa・s〜700Pa・sであると、溶融製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の
形状が安定し、均一に製膜しやすくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50Pa・
s〜700Pa・sであると、溶融製膜時の粘度が適切になって押出ししやすくなったり
、製膜時の溶融膜がレベリングされて凹凸を低減できたりする点で好ましい。
ここで、前記溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーター
により測定することができる。
【0014】
前記結晶性ポリマーのMFR(メルトフローレート)としては、特に制限はなく、目的
に応じて適宜選択することができるが、0.1(g/10min)〜100(g/10m
in)が好ましく、0.5(g/10min)〜60(g/10min)がより好ましく
、1(g/10min)〜35(g/10min)が特に好ましい。前記MFRが1(g
/10min)〜35(g/10min)であると、製膜されたフィルムの強度が高くな
り、効率よく延伸することができる点で好ましい。
ここで、前記MFRは、例えば、セミオートメルトインデックサ 2A(東洋精機(株
)製)により測定することができる。
【0015】
前記結晶性ポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択
することができるが、100℃〜350℃が好ましく、100℃〜300℃がより好まし
く、100℃〜260℃が特に好ましい。前記融点が40℃〜350℃であると、通常の
使用で予想される温度範囲で形を保ちやすくなる点で好ましく、高温での加工に必要とさ
れる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製膜ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0016】
−−−ポリエステル樹脂−−−
前記ポリエステル類(以下、「ポリエステル樹脂」と称することがある。)は、エステ
ル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。したがって、前記結
晶性ポリマーとして好適な前記ポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエ
チレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチ
レンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPT(ポリペンタメ
チレンテレフタレート)、PHT(ポリヘキサメチレンテレフタレート)、PBN(ポリ
ブチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBS(ポリブチレン
サクシネート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得
られる高分子化合物が全て含まれる。
【0017】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することがで
き、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカ
ルボン酸、多官能酸などが挙げられ、中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0018】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニル
ジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキ
シエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられ、テレフタル
酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレ
フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0019】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン
酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。
前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられ
る。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前
記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。前記
脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸の中では、コハク酸、アジピン酸、シクロヘ
キサンジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸がより好ましい。
【0020】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、
例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポ
リアルキレングリコールなどが挙げられ、中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
【0021】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタ
ンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチ
レングリコールなどが挙げられ、中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタン
ジオール、ヘキサンジオールが好ましい。前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0022】
前記ポリエステル樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択す
ることができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500P
a・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが特に好ましい。前記溶融粘度が
大きいほうが延伸時に空洞(ボイド)を発現しやすいが、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。また、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0023】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適
宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく
、0.7〜0.9が特に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時に空洞(ボイド)を発現しやすいが、前記IVが0.4〜1.2であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。さらに、前記IVが0.4〜1.2であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記IVが0.4〜1.2であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0024】
前記ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択するこ
とができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、150℃〜300℃が好ましく、160
℃〜270℃がより好ましい。
【0025】
−−−ポリオレフィン樹脂−−−
前記ポリオレフィン類(以下、「ポリオレフィン樹脂」と称することがある。)は、エ
チレンを基本とするαオレフィンを重合して得られるポリマーを意味する。前記結晶性ポ
リマーとして好適な前記ポリオレフィン樹脂としては、前記したように、例えば、ポリプ
ロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール
共重合体、エチレン−シクロオレフィン共重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペン
テン−1などが挙げられる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましく、ポ
リプロピレンが特に好ましい。
【0026】
前記ポリオレフィン樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択
することができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500
Pa・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが特に好ましい。前記溶融粘度
が大きいほうが延伸時に空洞(ボイド)を発現しやすいが、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。また、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0027】
前記ポリオレフィン樹脂のMFR(メルトフローレート)としては、特に制限はなく、
目的に応じて適宜選択することができるが、0.1(g/10min)〜100(g/1
0min)が好ましく、0.5(g/10min)〜50(g/10min)がより好ま
しく、1(g/10min)〜35(g/10min)が特に好ましい。前記MFRが大
きいほうが延伸時に空洞(ボイド)を発現しやすいが、前記MFRが、0.1(g/10min)〜100(g/10min)であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。さらに、前記MFRが、0.5(g/10min)〜50(g/10min)であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記MFRが、1(g/10min)〜35(g/10min)であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
【0028】
前記ポリオレフィン樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する
ことができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、150℃〜300℃が好ましく、16
0℃〜270℃がより好ましい。
【0029】
−−−ポリアミド樹脂−−−
前記ポリアミド類(以下、「ポリアミド樹脂」と称することがある。)は、その主鎖が主としてアミド結合(−NHCO−)により結合している重合体であり、ジカルボン酸とジアミンとよりなるナイロン塩やアミノカルボン酸の重縮合、ラクタムの開環重合又はナイロン塩とラクタムとの共重合などにより製造される。その主なものは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、シクロヘキサン環などを有する脂環族ポリアミド、脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸その他の芳香族ジカルボン酸とのナイロン塩を重縮合させて得られるポリアミド、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とのナイロン塩を重縮合させて得られるポリアミド、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とのナイロン塩を重縮合させて得られるポリアミドなどがある。また、これらのポリアミドの混合物も用いられる。
【0030】
これらのポリアミドの原料であるラクタム又はアミノカルボン酸としては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸などが挙げられる。また、ナイロン塩の原料である二塩基酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンニ酸、ドデカンニ酸、ヘキサデカンニ酸、ヘキサデセンニ酸、オクタデカンニ酸、オクタデセンニ酸、エイコサニ酸、エイコセンニ酸、ドコサンニ酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸のような脂肪族カルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸のような芳香族ジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸のような芳香族環を含有する脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0031】
また、ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトレメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4′アミノシクロヘキシル)メタンのような脂環式ジアミン、キシリレンジアミンのような芳香族環を含有する脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0032】
上述のポリアミドのなかでも、ε−カプロラクタムの開環重合体であるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とのナイロン塩の縮合重合体であるナイロン66、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とのナイロン塩の縮合重合体であるナイロンMXD6などが、入手が容易であり、かつフィルム製造に際しての延伸操作が容易なので好ましい。一般にポリアミドは吸湿性が大きいが、吸湿したものをそのままフィルム製造に用いると溶融押出しに際し水蒸気やオリゴマーが発生して成形作業の障害となるので、水分含有率0.1重量%以下にまで乾燥してから成形に供するのが好ましい。
【0033】
前記ポリアミド樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する
ことができるが、50Pa・s〜700Pa・sが好ましく、70Pa・s〜500Pa
・sがより好ましく、80Pa・s〜300Pa・sが特に好ましい。前記溶融粘度が大
きいほうが延伸時に空洞(ボイド)を発現しやすいが、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。また、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50Pa・s〜700Pa・sであると、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0034】
前記ポリアミド樹脂のMFR(メルトフローレート)としては、特に制限はなく、目的
に応じて適宜選択することができるが、0.1(g/10min)〜100(g/10m
in)が好ましく、0.5(g/10min)〜60(g/10min)がより好ましく
、1(g/10min)〜20(g/10min)が特に好ましい。前記MFRが大きい
ほうが延伸時に空洞(ボイド)を発現しやすいが、前記MFRが、0.1(g/10min)〜100(g/10min)であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。さらに、前記MFRが、0.5(g/10min)〜60(g/10min)であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記MFRが、1(g/10min)〜20(g/10min)であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
【0035】
前記アミド樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することがで
きるが、耐熱性や製膜性などの観点から、150℃〜300℃が好ましく、160℃〜2
70℃がより好ましい。
【0036】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、空洞の発現に寄与しない成分であれば、特に制限はなく、
目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
前記空洞の発現に寄与しない成分としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、
核剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤及び蛍光増白剤などが挙げられる。前記その
他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性ポリ
マー以外の成分(例えば、後記する各成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0038】
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例
えば、公知のヒンダードフェノール類などが挙げられる。前記ヒンダードフェノール類と
しては、例えば、イルガノックス1010、同スミライザーBHT、同スミライザーGA
−80などの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
また、前記酸化防止剤を一次酸化防止剤として利用し、更に二次酸化防止剤を組み合わ
せて適用することもできる。前記二次酸化防止剤としては、例えば、スミライザーTPL
−R、同スミライザーTPM、同スミライザーTP−Dなどの商品名で市販されている酸
化防止剤が挙げられる。
【0039】
前記蛍光増白剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例
えばユビテック、OB−1、TBO、ケイコール、カヤライト、リューコプア、EGMな
どの商品名で市販されているものを用いることができる。なお、前記蛍光増白剤は、1種
単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。このように蛍光増白剤を添加する
ことで、より鮮明で青味のある白色性を与え、高級感を持たせることができる。
【0040】
図2Aは、空洞含有樹脂成形体の斜視図であり、図2Bは、図2Aにおける空洞含有樹脂成形体のA−A’断面図であり、図2Cは、図2Aにおける空洞含有樹脂成形体のB−B’断面図である。
【0041】
また、前記空洞含有樹脂成形体における、膜厚方向の空洞100の平均の個数Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が特に好ましい。
ここで、前記膜厚方向の空洞100の個数は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0042】
このように、前記空洞含有樹脂成形体は、前記空洞を含有していることにより、例えば、反射率や光沢性、熱伝導率などにおいて、様々な優れた特性を有している。言い換えると、前記空洞含有樹脂成形体に含有される空洞の態様を変化させることで、反射率や光沢性、熱伝導率などの特性を調節することができる。
【0043】
また、図2B及び図2Cに示すように、前記空洞含有樹脂成形体において、平板粒子50は、延伸方向に配向する。
また、前記空洞含有樹脂成形体における、膜厚方向の平板粒子50の平均の個数Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10個以上が好ましく、
15個以上がより好ましく、20個以上が特に好ましい。
ここで、前記膜厚方向の平板粒子50の個数は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0044】
−光線透過率−
前記空洞含有樹脂成形体の光線透過率としては、550nmの波長の光において、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましい。
前記光線透過率が30%を超えると、反射率が低下することがある。一方、前記透過率が前記特に好ましい範囲内であると、遮光性と気体透過性を両立できる点で有利である。
ここで、前記光線透過率は、分光光度計により測定することができる。
【0045】
−気体透過防止性−
前記空洞含有樹脂成形体の気体透過性としては、酸素透過率が 200cc・mm/(m・day・atm)以下が好ましく、150cc・mm/(m・day・atm)以下がより好ましく、100cc・mm/(m・day・atm)以下が特に好ましい。
前記酸素透過率が20cc・mm/(m・day・atm)を超えると、前記空洞含有樹脂成形体中の内容物が経時で酸化劣化する可能性があることがある。一方、前記酸素透過率が前記特に好ましい範囲内であると、前記空洞含有樹脂成形体中の内容物が経時しても十分な鮮度を保たれる点で有利である。
なお、前記酸素透過率は、OX−TRAN 2/20MH(MOCON製)を用いて、同圧法(JIS7126B ASTM D3985 試験法)に則って測定した値である。
【0046】
−耐引き裂き性−
前記空洞含有樹脂成形体の耐引き裂き性としては、引裂強度が10N/cm以上が好ましく、70N/cm以上がより好ましく、100N/cm以上が特に好ましい。
前記引裂強度が10N/cm未満であると、例えば、包装材として使用する場合、易裂性が大きく衝撃等で容易にやぶれてしまうことがある。一方、前記引裂強度が前記特に好ましい範囲内であると、衝撃に強くなり、またパッケージ等に使用すると直線カット性も発言する、等の点で有利である。
なお、前記引裂強度は、エレメンドルフ引裂強度試験(JIS K 7128)に準拠して、(商品名:デジタルエレメンドルフ・引き裂き試験機 SA−WP、(株)東洋精機製作所製)を用いて測定した値である。
【0047】
−反射率−
前記空洞含有樹脂成形体の反射率としては、550nmの波長の光において、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。
前記反射率が50%未満であると、遮光性の低下が起こることがある。一方、前記反射率が前記特に好ましい範囲内であると、遮光性が十分確保され、内容物の劣化が抑えられる点で有利である。
なお、前記550nmの波長の光における反射率は、積分球を取り付けた分光光度計(「V−570」;日本分光製)を用いて測定した値である。
【0048】
−表面平滑性−
前記空洞含有樹脂成形体の表面平滑性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ra=0.3μm以下が好ましく、Ra=0.25μm以下がより好ましく、Ra=0.1μm以下が特に好ましい。
【0049】
−コシの強さ−
前記空洞含有樹脂成形体は、薄くてもコシが強い。前記コシの評価は、前記空洞含有樹脂成形体を ループスティフネステスタ((株)東洋精機製作所製)で15mm×165mm、ループ円周100mmの条件で測定することにより、評価される。前記ループスティフネスが、0.20kg/cm2〜0.70kg/cm2であることが好ましい。
【0050】
<空洞>
前記空洞とは、樹脂成形体内部に存在する、真空状態のドメインもしくは気相のドメイ
ンを意味する。
【0051】
前記空洞含有樹脂成形体の空洞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、実質的に無核であっても、有核であってもよいが、空洞含有樹脂成形体の外観(シワ、剥がれ、割れ、など)の点で、実質的に無核であることが好ましい。
ここで、空洞が実質的に無核であるとは、空洞含有樹脂成形体の断面を走査型電子顕微鏡を用いて600倍〜10,000倍に拡大して観察、撮影した断面画像を用いて、1,000μm2当りの全空洞(ボイド)数と核を有する空洞(ボイド)数を数え、(核を有する空洞(ボイド)数)/(全空洞(ボイド)数)=5%未満である場合を示す。
また、空洞が実質的に有核である空洞含有樹脂成形体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、クリスパー(東洋紡績株式会社製)ルミラーE60L(東レ株式会社製)、などが挙げられる。
上記製造方法により作製された空洞含有樹脂成形体は、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する。
【0052】
<平板粒子>
前記平板粒子のアスペクト比としては、2〜1,000である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3〜800が好ましく、4〜600がより好ましく、5〜500が特に好ましい。
前記アスペクト比が、2未満であると、気体透過性が低下することがあり、1,000を超えると、製膜時のムラなどの製造適性の悪化や耐引き裂き性の悪化、及び、コストの上昇を生じることがある。一方、前記アスペクト比が前記特に好ましい範囲内であると、気体透過性などの諸性能と製造適性の両立ができる点で有利である。
なお、前記アスペクト比は、ミクロト−ムにより超薄切片(50nm−100nm)を作製し、透過型電子顕微鏡(商品名:JEM 2010 日本電子製)を用いて、前記平板粒子の1辺の長さ及び厚みをそれぞれ100点測定し、算出した1辺の平均長さ及び平均厚みを下記式(1)に代入することにより算出される。
アスペクト比=(前記平板粒子の1辺の平均長さ)/(前記平板粒子の平均厚み)
・・・式(1)
【0053】
前記平板粒子の1辺の平均長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.002μm〜1μmが好ましく、0.02μm〜0.8μmがより好ましく、0.05μm〜0.6μmが特に好ましい。
前記1辺の平均長さが、0.002μm未満であると、製膜時のメルトフローレートの上昇による製膜の悪化や気体透過性の悪化を引き起こすことがあり、1μmを超えると、製膜時の膜厚ムラや延伸時の破断が起こることがある。一方、前記1辺の平均長さが前記特に好ましい範囲内であると、フィルム諸性能と製造適性の両立の点で有利である。
前記1辺の平均長さは、透過型電子顕微鏡(商品名:JEM 2010 日本電子製)を用いて、前記平板粒子の1辺の長さを100点測定し、平均することにより算出される。
【0054】
前記平板粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、層状ケイ酸塩、などが挙げられる。
【0055】
<<層状ケイ酸塩>>
前記層状ケイ酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等の層で構成される層状フィロケイ酸塩、などが挙げられる。
前記層状フィロケイ酸塩としては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロサイト、などが挙げられる。これらは天然物でも、合成物でもよい。
前記層状ケイ酸塩は、組成物中に分散した際に、平均2nm以上の層間距離を保ち、均一に分散していることが好ましい。ここで,層間距離とは層状ケイ酸塩の平板の重心間の距離を示し、均一に分散するとは、層状ケイ酸塩の平板が、平均的に5層以下で重なった多層物が平行に、もしくはランダムに、もしくは平行とランダムが混在した状態で、50重量%以上が、好ましくは70重量%以上が局所的な塊を形成することなく分散した状態を示す。
【0056】
また、前記平板粒子は、前記空洞の形成に実質的に関与していない。ここで、前記平板粒子が前記空洞の形成に実質的に関与していないとは、空洞含有樹脂成形体の断面を走査型電子顕微鏡を用いて600倍〜10,000倍に拡大して観察、撮影した断面画像を用いて、1,000μm2当りの全空洞(ボイド)数と、前記平板粒子が核となって空洞形成に関与した空洞(ボイド)数を数え、(平板粒子が核となって空洞形成に関与した空洞(ボイド)数)/(全空洞(ボイド)数)=5%未満である場合を示す。
【0057】
<感熱転写受像シートの受像層>
本発明の空洞含有樹脂成形体を感熱転写受像シートの受像層として用いると、断熱性が良好で、酸素透過性が低下するので、受像層の色素の光堅牢性が向上させることができる。
【0058】
<包装材>
本発明の空洞含有樹脂成形体を有する包装材は、遮光性及び気体透過防止性を有すると共に、耐引き裂き性を有するので、前記包装材で包装された容器に収容された物質の光及び気体(酸素など)による劣化を抑制することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
<空洞含有樹脂成形体の作製>
まず、特開2007−308361号公報記載の方法を参考にして合成されたモンモリロナイト(アスペクト比200、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を、特開昭62−74957号公報記載の方法を参考にして、12-アミノドデカン酸により有機化した。つぎに同じ特開昭62-74957号公報記載の方法を参考に、有機化したモンモリロナイト4kgに対し、ε-カプロラクタム100kgを用いて重縮合反応(in-situ重合:これを粒子充填法のA法と称する。)を行い、モンモリロナイトを含むナイロン6のペレットを得た。95%濃硫酸中、温度25℃、濃度0.5g/dlの条件で測定した相対粘度が2.8であった。次に、乾燥させた上記合成ナイロン6を、押出機に投入し、温度270℃に加熱したシリンダー内で溶融し、Tダイオリフィスよりシート状に押出し、40℃に設定されたキャストロールに対しノズルから噴き出した空気により押し付けて密着させて冷却し、厚さ160μmの未延伸フィルムを得た。次に、この未延伸フィルムを第1吸水槽に浸漬させた。この第1吸水槽は、設定温度が40℃であった。続いて、60℃に設定された第2吸水槽にてフィルムに含水させて水分率を調節した。その後、一軸延伸機に導いて、120℃で予熱したあとに、延伸温度130℃で、縦方向に4倍の倍率で延伸した。その後、オフラインで温度220℃で熱処理し、3%の弛緩処理を行って、厚み約40μmのモンモリロナイトを含むナイロン6フィルムを得た。このフィルムの概観は白銀色であった。
【0061】
<<平板粒子の1辺の平均長さとアスペクト比の測定>>
前記1辺の平均長さは、透過型電子顕微鏡(商品名:JEM 2010 日本電子製)を用いて、前記平板粒子の1辺の長さを100点測定し、平均することにより算出される。
前記アスペクト比は、ミクトト−ムにより超薄切片(50nm−100nm)を作製し、透過型電子顕微鏡(商品名:JEM 2010 日本電子製)を用いて、前記平板粒子の1辺の長さ及び厚みをそれぞれ100点測定し、算出した1辺の平均長さ及び平均厚みを下記式(1)に代入することにより算出される。
アスペクト比=(前記平板粒子の1辺の平均長さ)/(前記平板粒子の平均厚み)
・・・式(1)
【0062】
<空洞含有樹脂成形体の有核空洞(ボイド)率の測定>
作製した空洞含有樹脂成形体の断面を走査型電子顕微鏡を用いて600倍〜10,000倍に拡大して観察、撮影した断面画像を用いて、1,000μm2当りの全空洞(ボイド)数と核を有する空洞(ボイド)数を数え、有核空洞(ボイド)率=(核を有する空洞(ボイド)数)/(全空洞(ボイド)数)を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
<空洞含有樹脂成形体の光線透過率の測定>
作製した空洞含有樹脂成形体について、550nmの波長の光における光線透過率(%)を分光光度計を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0064】
<空洞含有樹脂成形体の反射率の測定>
空洞含有樹脂成形体の550nmの波長の光における反射率(%)を、積分球を取り付けた分光光度計(「V−570」;日本分光製)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0065】
<空洞含有樹脂成形体の酸素透過率の測定>
作製した空洞含有樹脂成形体について、酸素透過率(%)を、OX−TRAN 2/20MH(MOCON製)を用いて、同圧法(JIS7126B ASTM D3985 試験法)に則って測定した。結果を表2に示す。なお、表2における酸素透過性の評価は、比較例1の酸素透過率を1にしたときの相対値で表した。
【0066】
<空洞含有樹脂成形体の引裂強度の測定>
前記引裂強度は、エレメンドルフ引裂強度試験(JIS K 7128)に準拠して、(商品名:デジタルエレメンドルフ・引き裂き試験機 SA−WP、(株)東洋精機製作所製)を用いて測定した値である。
なお、耐引き裂き性の評価は、引裂強度が20N/cm以上を○とし、20N/cm未満5N/cm以上を△とし、5N/cm未満を×とした。
【0067】
(実施例2)
実施例1において、モンモリロナイト(アスペクト比200、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いることに代えて、モンモリロナイト(アスペクト比460、1辺の平均長さ0.56μm)平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
【0068】
(実施例3)
実施例1において、モンモリロナイト(アスペクト比200、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いることに代えて、モンモリロナイト(アスペクト比800、1辺の平均長さ1.2μm)平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
【0069】
(実施例4)
実施例1において、モンモリロナイト(アスペクト比200、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いることに代えて、モンモリロナイト(アスペクト比100、1辺の平均長さ0.1μm)平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
【0070】
(実施例5)
まず、95%濃硫酸中、温度25℃、濃度0.5g/dlの条件で測定した相対粘度が2.9のナイロン6を合成した。次に、WO99/50340号記載の方法(実施例1)を参考にしてモンモリロナイト(アスペクト比100、1辺の平均長さ0.1μm)を有するナイロン6ペレットを得た(B法)。モンモリロナイトはドデシルアミンにて有機化し、ナイロン6に対する添加量は4質量%であった。その後の工程の溶融製膜と延伸は実施例1に記載の方法で、厚み約40μmのモンモリロナイトを含むナイロン6フィルムを得た。このフィルムの概観は白銀色であった。
さらに、得られた空洞含有樹脂成形体について、実施例1と同様に、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
【0071】
(実施例6)
実施例5において、モンモリロナイト(アスペクト比100、1辺の平均長さ0.1μm)平板状粒子を用いることに代えて、モンモリロナイト(アスペクト比850、1辺の平均長さ1.2μm)平板状粒子を用いたこと以外は、実施例5と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
【0072】
(実施例7)
まず、特開2007−308361号公報記載の方法を参考にして合成されたモンモリロナイト(アスペクト比100、1辺の平均長さ0.1μm)平板状粒子を、特開昭62−74957号公報記載の方法を参考にして、12-アミノドデカン酸により有機化した。つぎに同じ特開昭62-74957号公報記載の方法を参考に、有機化したモンモリロナイト4kgに対し、テレフタル酸ジメチル50kg、1,4−ブタンジオール60kgを用いて、分散安定性をよくするため、5−スルホン酸磯フタル酸ナトリウムを2.5モル%添加して、重縮合反応(in-situ重合:これを粒子充填法のA法と称する。)を行い、モンモリロナイトを含むPBTのペレットを得た。有機化モンモリロナイトを除いて同じ条件で重縮合反応させたPBTのIV値は0.73であった。次に、乾燥させた上記合成PBTを、押出機に投入し、温度 260℃に加熱したシリンダー内で溶融し、Tダイオリフィスよりシート状に押出し、30℃に設定されたキャストロールに対しノズルから噴き出した空気により押し付けて密着させて冷却し、厚さ230μmの未延伸フィルムを得た。次に、この未延伸フィルムを、一軸延伸機に導いて、延伸温度45℃で、縦方向に5倍の倍率で延伸した。その後、オフラインでテンションをかけながら温度100℃で熱処理し、厚み約50μmのモンモリロナイトを含むPBTフィルムを得た。このフィルムの概観は銀色であった。
さらに、実施例1と同様に、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。
【0073】
(実施例8)
実施例7において、樹脂としてPBTを用いる(モノマーとしてテレフタル酸ジメチルと1,4−ブタンジオールを用いる)代わりに、樹脂としてPETを用いた(モノマーとしてテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを用いた)こと以外は、実施例7と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
【0074】
(実施例9)
実施例1において、モンモリロナイト(アスペクト比200、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いることに代えて、合成マイカ(アスペクト比700、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
なお、合成マイカは、市販品(テトラシリリックマイカ(NA−TS);トピー工業(株)製をそのまま用いた。
【0075】
(実施例10)
実施例5において、モンモリロナイト(アスペクト比100、1辺の平均長さ0.1μm)平板状粒子を用いることに代えて、サポナイト(アスペクト比100、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いたこと以外は、実施例5と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
なお、サポナイトは、市販品(スメクトンSA;クニミネ社製)を特開2007−308361号記載の方法で水熱処理を行いアスペクト比を調整したものを用いた。
【0076】
(実施例11)
実施例1において、モンモリロナイト(アスペクト比200、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いることに代えて、ヘクトライト(アスペクト比640、1辺の平均長さ0.55μm)平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
なお、ヘクトライトは、市販品(ルーセンタイトSWN;コープケミカル社製)を特開2007−308361号記載の方法で水熱処理を行いアスペクト比を調整した。
【0077】
(実施例12)
実施例5において、モンモリロナイト(アスペクト比100、1辺の平均長さ0.1μm)平板状粒子を用いることに代えて、スティーブンサイト(アスペクト比300、1辺の平均長さ0.3μm)平板状粒子を用いたこと以外は、実施例5と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
なお、スティーブンサイトは、市販品(スメクトンST;クニミネ社製)を特開2007−308361号記載の方法で水熱処理を行いアスペクト比を調整したものを用いた。
【0078】
(実施例13)
実施例1において、モンモリロナイト(アスペクト比200、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いることに代えて、スティーブンサイト(アスペクト比700、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
なお、スティーブンサイトは、市販品(スメクトンST;クニミネ社製)を特開2007−308361号記載の方法で水熱処理を行いアスペクト比を調整した。
【0079】
(比較例1)
実施例1において、モンモリロナイトを含むナイロン6のペレットを用いることに代えて、ナイロン6のペレットを用いたこと以外は、実施例1と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
【0080】
(比較例2)
実施例2において、延伸時の予熱温度を120℃から175℃に、延伸温度を130℃から190℃に変更することにより、空洞を含有しないナイロン6フィルムを作製したこと以外は、実施例2と同様に、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
【0081】
(比較例3)
実施例5において、モンモリロナイト(アスペクト比100、1辺の平均長さ0.1μm)平板状粒子を用いることに代えて、球状シリカ(アスペクト比1.1、1辺の平均長さ1μm)を用いたこと以外は、実施例5と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
なお、シリカは、市販品(シーホスターKE P100;日本触媒(株)製)をそのまま用いた。
【0082】
(比較例4)
実施例1において、モンモリロナイト(アスペクト比200、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いることに代えて、スティーブンサイト(アスペクト比1010、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
なお、スティーブンサイトは、市販品(スメクトンST;クニミネ社製)を特開2007−308361号記載の方法で水熱処理を行いアスペクト比を調整したものを用いた。実施例13の水熱処理時間より3倍の時間をかけてアスペクト比を更に引き上げた。
【0083】
(比較例5)
実施例1において、モンモリロナイト(アスペクト比200、1辺の平均長さ1μm)平板状粒子を用いることに代えて、繊維状の炭化珪素ウィスカー(アスペクト比10〜40、1辺の平均長さ0.5μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様に、空洞含有樹脂成形体の作製、有核空洞(ボイド)率の測定、光線透過率、反射率、酸素透過率、引き裂き強度の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
なお、炭化珪素ウィスカーは、市販品(トーカウィスカー;東海カーボン(株)製)をそのまま用いた。

【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
表1及び2より、本発明の空洞含有樹脂成形体は、平板粒子を含有しているため、2軸延伸せずに、1軸延伸するだけで、耐引き裂き性(引張強度)を向上させることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の空洞含有樹脂成形体は、包材の他、感熱転写の受像シートの受像層に利用できる。光と酸素が同時に劣化に関与する色素の光褪色を改良できる。
【符号の説明】
【0088】
1 空洞含有樹脂成形体
1a 表面
11 原料
12 2軸押出機/単軸押出機
13 Tダイ
14 キャスティングドラム
15 縦延伸機
15a ロール
16 横延伸機
16a クリップ
50 平板粒子
100 空洞
F フィルム又はシート
L 空洞の長さ
r 空洞の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞を含有する空洞含有樹脂成形体であって、下記式(1)で表されるアスペクト比が2〜1,000である平板粒子を含有することを特徴とする空洞含有樹脂成形体。
アスペクト比=(前記平板粒子の1辺の平均長さ)/(前記平板粒子の平均厚み)
・・・式(1)
【請求項2】
平板粒子は、1辺の平均長さが0.002μm〜1μmである請求項1に記載の空洞含有樹脂成形体。
【請求項3】
平板粒子は、層状ケイ酸塩である請求項1から2のいずれかに記載の空洞含有樹脂成形体。
【請求項4】
層状ケイ酸塩は、層状フィロケイ酸塩である請求項3に記載の空洞含有樹脂成形体。
【請求項5】
層状フィロケイ酸塩は、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイト、バーミキュライト、ハロサイトから選択される少なくとも1種を含む請求項4に記載の空洞含有樹脂成形体。
【請求項6】
550nmの波長の光における光線透過率が30%以下である請求項1から5のいずれかに記載の空洞含有樹脂成形体。
【請求項7】
空洞が実質的に無核である請求項1から6のいずれかに記載の空洞含有樹脂成形体。
【請求項8】
空洞が有核である請求項1から6のいずれかに記載の空洞含有樹脂成形体。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公開番号】特開2011−26500(P2011−26500A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175476(P2009−175476)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】