説明

空芯コイルの巻線方法及び巻線装置

【課題】互いに異なる内周長を有する複数の単位巻部が巻き軸方向に連続して形成されると共に、該複数の単位巻部からなる単位コイル部が巻き軸方向に連続して形成されている空芯コイルを作製することが出来る、簡易な構成の巻線装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る空芯コイルの巻線装置は、軸体5と、軸体5に対して交叉する直線の移行路に沿って導線22を移送して、軸体5の外周面に導線22を沿わせる導線移送機構と、導線22を押圧すべき押圧部材61を、軸体5を中心とする円周経路に沿って回動させることにより、導線22を軸体5の外周面に沿って屈曲させる曲げ機構6とを具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコイル層からなる空芯コイルの巻線方法及び巻線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図17に示す如く、導線(22)を渦巻き状に巻回してなる単位コイル部(23)が巻き軸方向に繰り返し並んだ空芯コイル(2)が知られている。
【0003】
そして、この様な空芯コイル(2)の製造方法として、図18(a)の如く、導線を渦巻き状に巻回することにより、互いに異なる内周長を有する第1単位巻部(25)、第2単位巻部(26)及び第3単位巻部(27)を、巻き軸方向に連続して形成すると共に、これら複数の単位巻部(25)(26)(27)からなる単位コイル部を、巻き軸方向に連続して形成して、空芯コイルの中間製品(20)を作製した後、該中間製品(20)を巻き軸方向に圧縮して、図18(b)の如く、第3単位巻部(27)の内側に第2単位巻部(26)の少なくとも一部を押し込み、該第2単位巻部(26)の内側に第1単位巻部(25)の少なくとも一部を押し込むことにより、複数のコイル層(図示する例では3層)からなる空芯コイルの完成品(21)を得る方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
図18(a)に示す中間製品(20)を作製する方法としては、該中間製品(20)の空洞形状に応じた段付きの巻線治具を用いる方法(特許文献1)や、各単位巻部の巻線工程毎に巻芯部材の形態を変化させつつ該巻芯部材の周囲に導線を巻回する自動巻線機が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−86438号公報
【特許文献2】特開2006−339407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、段付きの巻線治具を用いる方法では、巻線作業が手作業となるため、生産効率が悪い問題がある。
又、各単位巻部の巻線工程毎に巻芯部材の形態を変化させつつ該巻芯部材の周囲に導線を巻回する自動巻線機においては、各単位巻部の巻線工程毎に巻芯部材の形態を変化させるための構成が複雑となる問題がある。
【0007】
そこで本発明の目的は、簡易な構成で、互いに異なる内周長を有する複数の単位巻部が巻き軸方向に連続して形成されると共に、該複数の単位巻部からなる単位コイル部が巻き軸方向に連続して形成されている空芯コイルを作製することが出来る、空芯コイルの巻線方法及び巻線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空芯コイルにおいては、互いに異なる内周長を有する複数の単位巻部が巻き軸方向に連続して形成され、各単位巻部は、それぞれ円弧状の複数の角部を有するループ状の巻き線経路に沿って巻回され、該複数の単位巻部からなる単位コイル部が巻き軸方向に連続して形成されている。
ここで、各単位コイル部を構成する複数の単位巻部は、前記巻き軸に対して同じ位相角度に形成される複数の角部が、同じ位置に曲率中心を有する円弧状に形成されている。
【0009】
本発明に係る空芯コイルの巻線方法は、互いに異なる内周長を有する複数の単位巻部が巻き軸方向に連続して形成され、各単位巻部は、それぞれ円弧状の複数の角部を有するループ状の巻き線経路に沿って巻回され、該複数の単位巻部からなる単位コイル部が巻き軸方向に連続して形成されている空芯コイルの巻線方法であって、
軸体(5)に対して交叉する直線の移行路に沿って所定距離だけ導線(22)を移送して、軸体(5)の外周面に導線(22)を沿わせる第1工程と、
導線(22)を押圧すべき押圧部材(61)を、軸体(5)を中心とする円周経路に沿って回動させることにより、導線(22)を軸体(5)の外周面に所定角度だけ巻き付けて、円弧状の角部を形成する第2工程
とを有し、第1工程と第2工程を前記角部の数だけ繰り返すことによって1つの単位巻部を形成し、1つの単位巻部を形成する過程で、各角部の形成に際して軸体(5)の外径を変化させることにより、各単位コイル部を構成する複数の単位巻部において、前記巻き軸に対して同じ位相角度に形成される複数の角部を、同じ位置に曲率中心を有すると共に曲率半径の異なる円弧状に形成する。
【0010】
具体的態様において、前記複数の単位巻部からなる単位コイル部が巻き軸方向に連続して形成されている空芯コイルが作製された後、該空芯コイルを巻き軸方向に圧縮して、各単位コイルを構成する複数の単位巻部の内、内周長の大きな単位巻部の内側に内周長の小さな単位巻部の少なくとも一部を押し込む第3工程を有している。
これによって、各単位コイル部が少なくとも一部で多層化されることになる。
【0011】
本発明に係る空芯コイルの巻線装置は、互いに異なる内周長を有する複数の単位巻部が巻き軸方向に連続して形成され、各単位巻部は、それぞれ円弧状の複数の角部を有するループ状の巻き線経路に沿って巻回され、該複数の単位巻部からなる単位コイル部が巻き軸方向に連続して形成されている空芯コイルの巻線装置であって、
軸体(5)と、
前記軸体(5)に対して交叉する直線の移行路に沿って導線(22)を移送して、軸体(5)の外周面に導線(22)を沿わせる導線移送機構(4)と、
導線(22)を押圧すべき押圧部材(61)を、軸体(5)を中心とする円周経路に沿って回動させることにより、導線(22)を軸体(5)の外周面に沿って屈曲させる曲げ機構(6)
とを具えている。
【0012】
具体的態様において、前記軸体(5)は、巻き軸と同心軸上に配備された複数の軸部(51)(52)(53)から構成され、該軸体(5)は、中心の軸部(51)に対して他の軸部(52)(53)をそれぞれ巻き軸に沿って往復移動させる往復駆動機構に繋がっている。
【0013】
又、他の具体的態様においては、前記軸体(5)を包囲して、曲げ機構(6)によってループ状に屈曲された導線(22)をガイドするガイド板(9)が設置されている
【0014】
更に具体的な態様において、前記ガイド板(9)の表面は、前記軸体(5)と直交する面に対して単位巻部のリード角度に応じた傾斜を有している。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る空芯コイルの巻線方法及び巻線装置によって製造される空芯コイルによれば、各単位コイル部を構成する複数の単位巻部において、巻き軸に対して同じ位相角度に形成される複数の角部が、同じ位置に曲率中心を有する円弧状に形成されているので、各単位コイル部を少なくとも一部で多層化したとき、多層化部にて、内側の単位巻部と外側の単位巻部との間の隙間が可及的にゼロに近づき、この結果、導線の占積率が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係る空芯コイルの巻線装置の全体を示す平面図である。
【図2】図2は、該巻線装置の全体を示す正面図である。
【図3】図3は、第1往復台の平面図である。
【図4】図4は、軸体及びその周辺機構の正面図である。
【図5】図5は、軸体の断面図である。
【図6】図6は、軸体及びその周辺機構の平面図である。
【図7】図7は、曲げ機構の正面図である。
【図8】図8は、軸体及び曲げ機構の斜視図である。
【図9】図9は、軸体の動作を説明する斜視図である。
【図10】図10は、軸体と空芯コイル中間製品の寸法関係を説明する断面図である。
【図11】図11は、空芯コイル中間製品の角部を拡大して示す平面図である。
【図12】図12は、空芯コイルの巻線工程の第1段階を説明する一連の平面図である。
【図13】図13は、空芯コイルの巻線工程の第2段階を説明する一連の平面図である。
【図14】図14は、空芯コイルの巻線工程の第3段階を説明する一連の平面図である。
【図15】図15は、空芯コイルの巻線工程の第4段階を説明する一連の平面図である。
【図16】図16は、空芯コイルの巻線工程の第5段階を説明する一連の平面図である。
【図17】図17は、空芯コイルの完成状態の斜視図である。
【図18】図18は、空芯コイルの中間製品から完成品を得る圧縮工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図18(a)に示す空芯コイルの中間製品(20)を作製するための巻線方法及び巻線装置につき、図面に沿って具体的に説明する。尚、図1において、導線(22)は水平面上を直線に沿って右から左へ移送される。
【0018】
本発明に係る巻線装置は、図1に示す如く、水平の表面を有するベース(1)上に、導線(22)の移行路に対して直交する前後方向にスライド可能な第1往復台(11)が配備されると共に、第1往復台(11)の左側には、鉛直上方に突出する軸体(5)と、軸体(5)を中心として90度を超える角度範囲で回転が可能な回転台(12)とが配備されている。
【0019】
回転台(12)上には、図1に示す回転台(12)の初期位置にて前後方向にスライドが可能な第2往復台(13)が配備されている。
第2往復台(13)には、図6に示す如く軸体(5)側の端部に、導線(22)を押圧することが可能な押圧部材(61)が取り付けられている。
【0020】
第1往復台(11)は、図3に示す如く左右の端部に一対の往復ガイド機構(71)(72)を具え、第1往復駆動機構(7)によって前後に任意距離だけ移動させることが出来る。
又、第2往復台(13)は、図1に示す第2往復駆動機構(8)によって前後に任意距離だけ移動させることが出来る。
回転台(12)には、図4に示すベルト機構(63)を介してモータ(62)が連繋している。
これによって、軸体(5)の外周面に導線(22)を巻き付けるための曲げ機構(6)が構成される。
【0021】
第1往復台(11)には、導線(22)の上流側となる右側の端部に、導線(22)を上流側から下流側へ向けて繰り出す導線繰り出し機構(3)が連結されている。
【0022】
第1往復台(11)上には、導線(22)の移行路に沿って導線移送機構(4)が配備されている。導線移送機構(4)は、第1把持機構(41)と第2把持機構(42)とを具えている。第1把持機構(41)には、図2に示すシャフト(43)を介してモータ(44)が連結されており、モータ(44)の駆動によって、第1把持機構(41)を導線(22)の移行路に沿って往復移動させる。
【0023】
第1把持機構(41)は、導線(22)を把持した状態で下流位置から上流側へ移動することによってその移動距離に応じて導線(22)を移送し、その後、導線(22)の把持を解除した状態で元の下流位置へ復帰するものである。
第2把持機構(42)は、第1把持機構(41)による導線(22)の把持期間中は導線(22)の把持を解除し、第1把持機構(41)による導線(22)の把持解除中は導線(22)を把持するものである。
【0024】
軸体(5)は、導線(22)の移行路に沿って配備されており、図5に示す如く、巻き軸Sを中心として同軸上に、丸軸状の第1軸部(51)と、円筒状の第2軸部(52)と、円筒状の第3軸部(53)とを具え、第1軸部(51)は、図4に示す第1往復駆動機構(54)に繋がり、第2軸部(52)及び第3軸部(53)は、図5に示す第2往復駆動機構(55)及び第3往復駆動機構(56)にそれぞれ繋がっている。
【0025】
これによって、図9(a)の如く第1軸部(51)のみを突出させた第1状態と、図9(b)の如く第1軸部(51)及び第2軸部(52)を突出させた第2状態と、図9(c)の如く第1軸部(51)、第2軸部(52)及び第3軸部(53)を突出させた第3状態とを実現することが出来る。
【0026】
図10及び図11に示す如く、軸体(5)の第2軸部(52)は、第1軸部(51)の外径に対して導線の外径の2倍を加算した外径を有し、第3軸部(53)は、第2軸部(52)の外径に対して導線の外径の2倍を加算した外径を有している。
【0027】
曲げ機構(6)を構成する回転台(12)は、図6及び図8に示す如く、導線の巻き軸Sを中心とする円周線Rに沿って往復移動する。
回転台(12)上の第2往復台(13)は、図7及び図8に示す如く、導線の巻き軸Sに対して接近離間する直線経路Pに沿って往復移動する。
これによって、曲げ機構(6)を構成する押圧部材(61)は、軸体(5)に対して接近離間すると共に、軸体(5)を中心として回動することになる。
【0028】
押圧部材(61)には、図8に示す如く、導線(22)の移行路に沿って延びる凹溝(60)が形成されている。
又、軸体(5)の近傍位置には、U字状のガイド板(9)が設置されている。
【0029】
上記巻線装置による巻線工程においては、図8に示す如く、第1往復台(11)が前進することによって、導線(22)が軸体(5)の第1軸部(51)、第2軸部(52)若しくは第3軸部(53)の外周面に沿う位置まで平行移動すると共に、第2往復台(13)が前進することによって、押圧部材(61)が導線(22)を押圧することが可能な位置まで前進した状態で、先ず、導線(22)が所定距離だけ移送される。該導線(22)の移送距離は、形成せんとする単位巻部における4辺の各辺の長さに応じた大きさに設定される。
【0030】
次に、押圧部材(61)が、導線(22)に沿った初期位置から90度を超える所定の回転角度θだけ回転することによって、導線(22)を軸体(5)の第1軸部(51)、第2軸部(52)若しくは第3軸部(53)の外周面に沿わせて90度だけ屈曲させる。
尚、押圧部材(61)の回転角度θを90度よりも僅かに大きく設定することにより、導線(22)はスプリングバックによって90度の屈曲角度を有することになる。
この導線(22)の屈曲過程で、軸体(5)よりも先へ延びている導線(22)は、ガイド板(9)の表面に沿って摺動する。
【0031】
ここで、ガイド板(9)は、単位巻部のリード角に応じた傾斜角度を有しており、該ガイド板(9)の表面に沿って導線(22)が摺動することによって、該導線(22)に対して所定のリード角が付与される。
【0032】
上述の導線(22)の移送工程と折り曲げ工程とを4回繰り返すことによって、4つの円弧状の角部を有する1つの単位巻部が形成される。
そして、導線(22)を巻き付けるべき軸体(5)の軸部を外径の異なる他の軸部に変更すると共に、該軸部の外径に応じて、第1往復台(11)と第2往復台(13)を前後に移動させた状態で、同様に導線(22)の移送工程と折り曲げ工程とを4回繰り返すことによって、4つの円弧状の角部を有する次の単位巻部が形成される。
【0033】
この様にして、内周長の異なる3つの単位巻部が巻回され、これによって1つの単位コイル部が形成される。
ここで、図10に示す如く、第1単位巻部(25)を形成する際には、軸体(5)の第1軸部(51)のみを突出させてその外周面に導線を巻き付け、第2単位巻部(26)を形成する際には、第2軸部(52)を突出させてその外周面に導線を巻き付け、第3単位巻部(27)を形成する際には、第3軸部(53)を突出させてその外周面に導線を巻き付ける。
【0034】
これによって、図11に示す如く、軸体(5)の第1軸部(51)の外周面に導線を巻き付けて形成される第1単位巻部(25)の角部と、第2軸部(52)の外周面に導線を巻き付けて形成される第2単位巻部(26)の角部と、第3軸部(53)の外周面に導線を巻き付けて形成される第3単位巻部(27)の角部とが、巻き軸Sと一致する共通の曲率中心を有することになる。
【0035】
更に、上述の単位コイル部の形成工程を繰り返すことによって、図10に示す如く第1単位巻部(25)、第2単位巻部(26)及び第3単位巻部(27)を1つの単位コイル部(23)として、該単位コイル部(23)を繰り返し形成した中間製品(20)が得られることになる。
【0036】
図12〜図16は、本発明に係る巻線装置の一連の動作を表わしている。
図12のステップS1では、導線(22)を第1軸部(51)の外周面に沿わせると共に、該導線(22)に押圧部材(61)を沿わせる。
次に、ステップS2にて導線(22)を所定距離(単位巻部の長辺の長さ)だけ移送した後、ステップS3では、押圧部材(61)を回転させて、導線(22)を屈曲させる。
これによって、第1軸部(51)の外径に応じた1つ目の円弧状の角部が形成されることになる。
【0037】
次に、ステップS4の如く、押圧部材(61)を初期位置まで復帰させる。そして、ステップS5では、導線(22)を所定距離(単位巻部の短辺の長さ)だけ移送した後、ステップS6では、押圧部材(61)を回転させて、導線(22)を屈曲させる。
これによって、第1軸部(51)の外径に応じた2つ目の円弧状の角部が形成されることになる。
【0038】
次に、ステップS7の如く、押圧部材(61)を初期位置まで復帰させる。そして、図13のステップS8では、導線(22)を所定距離(単位巻部の長辺の長さ)だけ移送した後、ステップS9では、押圧部材(61)を回転させて、導線(22)を屈曲させる。
これによって、第1軸部(51)の外径に応じた3つ目の円弧状の角部が形成されることになる。
【0039】
続いて、ステップS10の如く、押圧部材(61)を初期位置まで復帰させる。そして、ステップS11では、導線(22)を所定距離(単位巻部の短辺の長さ)だけ移送した後、ステップS12では、押圧部材(61)を回転させて、導線(22)を屈曲させる。
これによって、第1軸部(51)の外径に応じた4つ目の円弧状の角部が形成され、第1単位巻部(25)が巻回されることになる。
【0040】
続いて、ステップS13の如く、押圧部材(61)を初期位置まで復帰させる。そして、図14のステップS14では、導線(22)を所定距離(単位巻部の長辺の長さ)だけ移送した後、ステップS15では、第1往復台(11)と第2往復台(13)を導線(22)の外径に応じた距離だけ後退させる。
次に、ステップS16の如く、第2軸部(52)を上昇させた後、ステップS17では押圧部材(61)を回転させて、導線(22)を屈曲させる。
これによって、第2軸部(52)の外径に応じた1つ目の円弧状の角部が形成されることになる。
【0041】
続いて、ステップS18の如く、押圧部材(61)を初期位置まで復帰させる。そして、ステップS19では、導線(22)を所定距離(単位巻部の短辺の長さ)だけ移送した後、図15のステップS20では、押圧部材(61)を回転させて、導線(22)を屈曲させる。
これによって、第2軸部(52)の外径に応じた2つ目の円弧状の角部が形成されることになる。
【0042】
続いて、ステップS21の如く、押圧部材(61)を初期位置まで復帰させる。そして、ステップS22では、導線(22)を所定距離(単位巻部の長辺の長さ)だけ移送した後、ステップS23では、押圧部材(61)を回転させて、導線(22)を屈曲させる。
これによって、第2軸部(52)の外径に応じた3つ目の円弧状の角部が形成されることになる。
【0043】
続いて、ステップS24の如く、押圧部材(61)を初期位置まで復帰させる。そして、ステップS25では、導線(22)を所定距離(単位巻部の短辺の長さ)だけ移送した後、図16のステップS26では、押圧部材(61)を回転させて、導線(22)を屈曲させる。
これによって、第2軸部(52)の外径に応じた4つ目の円弧状の角部が形成され、第2単位巻部(26)が巻回されることになる。
【0044】
続いて、ステップS27の如く、押圧部材(61)を初期位置まで復帰させる。そして、ステップS28では、導線(22)を所定距離(単位巻部の長辺の長さ)だけ移送した後、ステップS29では、第1往復台(11)と第2往復台(13)を導線(22)の外径に応じた距離だけ後退させる。
次に、ステップS30の如く、第3軸部(53)を上昇させた後、ステップS31では押圧部材(61)を回転させて、導線(22)を屈曲させる。
これによって、第3軸部(53)の外径に応じた1つ目の円弧状の角部が形成されることになる。
【0045】
以後、同様の動作を繰り返すことによって、第3単位巻部(27)が巻回され、1つ目の単位コイル部(23)が形成されることになる。
そして、次は第3軸部(53)、第2軸部(52)、第1軸部(51)の順に巻き付け軸を変更すると共に、第1往復台(11)と第2往復台(13)を導線(22)の外径に応じた距離だけ前進させつつ、第3単位巻部(27)、第2単位巻部(26)、第1単位巻部(25)の順に巻回して、次の単位コイル部(23)を形成し、この単位コイル部(23)の形成を繰り返すことによって、図10に示す中間製品(20)が完成することになる。
【0046】
上述の巻線装置においては、図8に示すガイド板(9)が、単位巻部のリード角に応じた傾斜角度を有しているので、押圧部材(61)を回動させる度に導線(22)にリード角が付与され、1つの単位巻部が形成される度に該単位巻部が1ピッチだけ押し上げられ、図10に示す如く鉛直上方へ向かって中間製品(20)の巻線が進行する。
【0047】
上述の様にして得られた中間製品(20)を、図18(a)(b)に示す様に巻き軸方向に圧縮することによって、3層空芯コイルの完成品(21)を得る。該完成品(21)においては、第3単位巻部(27)の内側に第2単位巻部(26)が押し込まれ、該第2単位巻部(26)の内側に第1単位巻部(25)が押し込まれている。
【0048】
上記の巻線方法及び巻線装置によって作製された中間製品(20)においては、図11に示す如く、各単位コイル部を構成する第1単位巻部(25)、第2単位巻部(26)及び第3単位巻部(27)は、巻き軸Sに対して同じ位相角度に形成される3つの角部が、同じ位置Sに曲率中心を有する円弧状に形成されている。
従って、空芯コイル(2)の各角部における単位巻部間の隙間がゼロとなり、導線の占積率が増大することになる。
【0049】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、導線(22)は丸線に限らず、断面矩形の角線であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
(2) 空芯コイル
(20) 中間製品
(21) 完成品
(22) 導線
(23) 単位コイル部
(25) 第1単位巻部
(26) 第2単位巻部
(27) 第3単位巻部
(1) ベース
(11) 第1往復台
(12) 回転台
(13) 第2往復台
(3) 導線繰り出し機構
(4) 導線移送機構
(5) 軸体
(51) 第1軸部
(52) 第2軸部
(53) 第3軸部
(6) 曲げ機構
(61) 押圧部材
(62) モータ
(7) 第1往復駆動機構
(8) 第2往復駆動機構
(9) ガイド板
S 巻き軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる内周長を有する複数の単位巻部が巻き軸方向に連続して形成され、各単位巻部は、それぞれ円弧状の複数の角部を有するループ状の巻き線経路に沿って巻回され、該複数の単位巻部からなる単位コイル部が巻き軸方向に連続して形成されている空芯コイルにおいて、
各単位コイル部を構成する複数の単位巻部は、前記巻き軸に対して同じ位相角度に形成される複数の角部が、同じ位置に曲率中心を有する円弧状に形成されていることを特徴とする空芯コイル。
【請求項2】
互いに異なる内周長を有する複数の単位巻部が巻き軸方向に連続して形成され、各単位巻部は、それぞれ円弧状の複数の角部を有するループ状の巻き線経路に沿って巻回され、該複数の単位巻部からなる単位コイル部が巻き軸方向に連続して形成されている空芯コイルの巻線方法において、
軸体に対して交叉する直線の移行路に沿って所定距離だけ導線を移送して、軸体の外周面に導線を沿わせる第1工程と、
導線を押圧すべき押圧部材を、軸体を中心とする円周経路に沿って回動させることにより、導線を軸体の外周面に巻き付けて、円弧状の角部を形成する第2工程
とを有し、第1工程と第2工程を前記角部の数だけ繰り返すことによって1つの単位巻部を形成し、1つの単位巻部を形成する過程で、各角部の形成に際して軸体の外径を変化させることにより、各単位コイル部を構成する複数の単位巻部において、前記巻き軸に対して同じ位相角度に形成される複数の角部を、同じ位置に曲率中心を有する円弧状に形成することを特徴とする空芯コイルの巻線方法。
【請求項3】
前記軸体は、巻き軸と同心軸上に配備された複数の軸部から構成され、中心の軸部に対して他の軸部を昇降させることによって、該軸体の外径を変化させる請求項2に記載の空芯コイルの巻線方法。
【請求項4】
前記複数の単位巻部からなる単位コイル部が巻き軸方向に連続して形成されている空芯コイルを作製した後、巻き軸方向の両側から圧縮力を加えることによって、各単位コイル部を構成する複数の単位巻部の内、内周長の大きな単位巻部の内側に内周長の小さな単位巻部の少なくとも一部を押し込む第3工程を有している請求項2又は請求項3に記載の空芯コイルの巻線方法。
【請求項5】
互いに異なる内周長を有する複数の単位巻部が巻き軸方向に連続して形成され、各単位巻部は、それぞれ円弧状の複数の角部を有するループ状の巻き線経路に沿って巻回され、該複数の単位巻部からなる単位コイル部が巻き軸方向に連続して形成されている空芯コイルの巻線装置において、
軸体と、
前記軸体に対して交叉する直線の移行路に沿って導線を移送して、軸体の外周面に導線を沿わせる導線移送機構と、
導線を押圧すべき押圧部材を、軸体を中心とする円周経路に沿って回動させることにより、導線を軸体の外周面に沿って屈曲させる曲げ機構
とを具えていることを特徴とする空芯コイルの巻線装置。
【請求項6】
前記軸体は、巻き軸と同心軸上に配備された複数の軸部から構成され、該軸体は、中心の軸部に対して他の軸部をそれぞれ巻き軸に沿って往復させる往復駆動機構に繋がっている請求項5に記載の空芯コイルの巻線装置。
【請求項7】
前記導線移送機構は、軸体と直交する方向に前後移動する第1往復台上に配備され、前記曲げ機構は、前記軸体を中心として回転する回転台と、該回転台上に設けられて前記軸体と直交する方向に前後移動する第2往復台とを具え、該第2往復台上に前記押圧部材が取り付けられている請求項5又は請求項6に記載の空芯コイルの巻線装置。
【請求項8】
前記軸体を包囲して、曲げ機構によってループ状に屈曲された導線の回動をガイドするガイド板が設置されている請求項5乃至請求項7の何れかに記載の空芯コイルの巻線装置。
【請求項9】
前記ガイド板の表面は、前記軸体と直交する面に対して単位巻部のリード角度に応じた傾斜を有している請求項8に記載の空芯コイルの巻線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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