説明

空調システムおよびそれを搭載した電気自動車

【課題】従来の空調システムおよびそれを搭載した電気自動車では、バッテリーの充電率が低下すると、空調システムがすべて止まり、快適性が低くなるという課題がある。
【解決手段】バッテリー2からの給電で作動する空調装置3と、バッテリー2からの給電で作動するシートヒータ10、輻射ヒータ11、床暖房ヒータ12の少なくとも1つからなる補助暖房装置と、制御手段13とを備え、制御手段13はバッテリー2の充電率が所定の管理閾値よりも低下すると空調装置3の作動を禁止し、補助暖房装置の作動のみ許可する。これにより、補助暖房装置が低消費電力で直接人体を暖めるので、空調装置3の停止により車室内温度が低下しても体感温度を維持でき、快適性を低下させず走行距離を延ばすことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の空調装置として、推進用のバッテリーと、推進用のバッテリーから電力を得るエアコンを有した電気自動車がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、特許文献1に記載された従来の空調システムおよびそれを搭載した電気自動車のブロック図である。
【0004】
電気自動車1には、推進用の電力を蓄えたバッテリー2と、車内の冷房暖房をするエアコン(空調装置)3と制御手段4が配されている。エアコン3は、制御手段4に制御され、バッテリー2の電力を用いてコンプレッサーやブロアモータを動作する。
【0005】
制御手段4は、バッテリー2の充電率を把握しており、充電率が低下したときにはエアコン3の動作を禁止することでバッテリー2の電力消耗を抑制し、走行距離を延ばすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−245104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の空調システムおよびそれを搭載した電気自動車では、運転および空調使用によりバッテリー2を消耗して充電率が低下したときに、空調が効かなくなって快適性が低下するといった課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、本発明は、バッテリーの充電率が低下しても、低電力で効率的な暖房を行うことで快適性の向上と、走行可能距離の延長を両立させる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明の空調システムおよびそれを搭載した電気自動車は、電気自動車に搭載され、推進用電力を蓄えるバッテリーからの給電で作動する空調装置と、前記バッテリーからの給電で作動するシートヒータ、輻射ヒータ、床暖房ヒータ等の少なくとも1つからなる補助暖房装置と、前記空調装置と前記補助暖房装置とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は前記バッテリーの充電率が所定の管理閾値よりも低下すると前記空調装置の作動を禁止し、前記補助暖房装置の作動のみ許可することを特徴としたものである。
【0010】
これにより、バッテリーの充電率が所定の管理閾値よりも低下して空調装置の作動が禁止されても、前記補助暖房装置が低消費電力で直接人体を暖めるので、空調装置の停止により車室内温度が低下しても体感温度を維持でき、できるだけ快適性を低下させないことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空調システムおよびそれを搭載した電気自動車は、バッテリーの充電率が低下したときに、空調装置の作動を禁止しても、低電力で暖房できる補助暖房装置を作動させ続けることで、効率的な暖房を行うことができ快適性の向上と、走行可能距離の延長を両立させる空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における電気自動車の空調システムのブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における空調システムを搭載した電気自動車の構成図
【図3】従来の電気自動車の空調システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、電気自動車に搭載され、推進用電力を蓄えるバッテリーからの給電で作動する空調装置と、前記バッテリーからの給電で作動するシートヒータ、輻射ヒータ、床暖房ヒータ等の少なくとも1つからなる補助暖房装置と、前記空調装置と前記補助暖房装置とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は前記バッテリーの充電率が所定の管理閾値よりも低下すると前記空調装置の作動を禁止し、前記補助暖房装置の作動のみ許可することを特徴とすることにより、前記補助暖房装置が低消費電力で直接人体を暖めるので、空調装置の停止により車室内温度が低下しても体感温度を維持することができる。
【0014】
そのため、低電力で補助暖房装置を作動させ続けることで、効率的な暖房を行うことができ快適性の向上と、走行可能距離の延長を両立させる空調システムを提供することができる。
【0015】
第2の発明は、特に第1の発明の空調システムにおいて、在席検知手段を備え、在席部だけ補助暖房装置の作動を許可することを特徴とすることにより、各座席に人の着座を検出する在席検知手段を配置し、人の着座を検出した座席の補助暖房装置のみ作動させることにより、無駄な電力消費を抑えることができるため、さらに走行可能距離の延長させることができる空調システムを提供することができる。
【0016】
第3の発明は、特に第1または第2のいずれか1つの発明の空調システムにおいて、所定の閾値とは、現在地から最寄の充電スタンドまで走ることのできる充電率とすることにより、GPSやカーナビゲータなどの情報から、現在地と最寄の充電スタンドまでの距離と必要な充電率を把握して、充電率がそれ下回る前に空調装置を停止し補助空調装置のみの通電に切り替えることとなり、より確実に充電可能な場所まで到達でき、さらに空調装置による暖房の停止をできる限り引き伸ばすことができ、さらに空調装置が停止しても、補助暖房装置により暖房を続けることができるので快適性の向上と、走行可能距離の延長を両立させる空調システムを提供することができる。
【0017】
第4の発明は、特に第1または第2のいずれか1つの発明の空調システムにおいて、所定の閾値とは、現在地から予め入力設定された登録地点まで走ることのできる充電率とすることで、カーナビゲータの登録地点、例えば自宅や自社の位置情報と、GPSなど情報から検出された現在地情報から、登録地点までの距離と必要な充電率を算出、充電率がそれを下回る前に空調装置を停止し補助空調装置のみの通電に切り替えることとなり、より確実に充電可能な場所まで到達でき、さらに暖房の停止をできる限り引き伸ばすことができ、さらに空調装置が停止しても補助暖房装置により暖房を続けることができるので快適性の向上と、走行可能距離の延長を両立させる空調システムを提供することができる。
【0018】
第5の発明は、特に第1から第4のいずれか1つの発明の空調システムを搭載した電気自動車とすることで、推進も空調もバッテリーの電力で賄う電気自動車の、限られたバッテリーの電力を有効に使用し、効率的な暖房による快適性の向上と、走行可能距離の延長
を両立させる空調システムを有する電気自動車を提供することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態における加熱装置およびそれを搭載した電気自動車について図1および図2を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態における空調システムおよびそれを搭載した電気自動車のブロック図、図2は本発明の第1の実施の形態の空調システムを搭載した電気自動車の構成図である。
【0021】
図1、図2に示すように電気自動車1には、推進用の電力を蓄えたバッテリー2と、車内の冷房暖房をするエアコン3(空調装置)とシートヒータ10、輻射ヒータ11、床暖房ヒータ12(補助暖房手段)と、制御手段13が配されている。
【0022】
エアコン3は、制御手段13に制御され、バッテリー2の電力を用いてコンプレッサーやブロアモータを動作する。
【0023】
また、制御手段4は、バッテリー2の充電率を把握しており、充電率が低下して管理閾値を下回ったときにはエアコン3の動作を禁止することでバッテリー2の電力消耗を抑制し、走行距離を延ばすようにしている。ただこのとき、制御手段13はシートヒータ10、輻射ヒータ11、床暖房ヒータ12の作動は許可するようにする。これらの補助暖房装置はエアコン3に比べると消費電力が小さいわりに人体の近くで作用するため体感温度を維持でき快適性を損なわない。
【0024】
さらに、個々の座席には圧電センサ(在席検知手段)14が配置されており、人15の着座している座席のシートヒータ10、輻射ヒータ11、床暖ヒータ12通電を許可しているため、バッテリー2の消費をさらに抑えることができる。
【0025】
従って、電気自動車の走行距離の延長と、快適性の向上を両立することができる。
【0026】
このときバッテリー2の充電率の所定の管理閾値とは、現在地から最寄の充電スタンドまで走ることのできる充電率とする。現在地と最寄の充電スタンドの距離は、GPSやカーナビゲータなどの位置情報、ルート情報また距離情報から計算して必要な電力を算出することで充電率の管理閾値とする。そして充電率が管理閾値を下回ったときには警告音とともにカーナビゲータの画面に充電を促す警告を表示すると伴にエアコン3を停止してシートヒータ10、輻射ヒータ11、床暖房ヒータ12のみの通電に切り替えることにより、暖房全体の消費電力を抑え走行可能距離を延ばしより確実に充電スタンドまで到達できるようになる。
【0027】
このように限られたバッテリー2の電力を有効に使用し、快適性を損なわない暖房と走行可能距離の延長を両立させる空調システムを有する電気自動車を提供することができる。
【0028】
またバッテリー2の充電率の所定の管理閾値を次のようにしても良い、現在地から予め入力設定された登録地点例えば自宅や自社まで走ることのできる充電率とする。そして充電率が管理閾値を下回ったときには警告音とともにカーナビゲータの画面に充電を促す警告を表示すると伴にエアコン3を停止してシートヒータ10、輻射ヒータ11、床暖房ヒータ12のみの通電に切り替えることにより、暖房全体の消費電力を抑え走行可能距離を延ばしより確実に自宅や自社に到達し充電することができるようになる。
【0029】
このように限られたバッテリー2の電力を有効に使用し、快適性を損なわない暖房と走行可能距離の延長を両立させる空調システムを有する電気自動車を提供することができる。
【0030】
本実施の形態では補助暖房手段として、シートヒータ10、輻射ヒータ11、床暖房ヒータ12を配置する構成としたが、これに限られることは無く、このうちのどれか1つ、または2つを配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる空調システムは、限られたバッテリーの電力を有効に使用し、効率的な暖房による快適性の向上と、走行可能距離の延長を両立させる空調システムを有するため、エンジンの廃熱の小さいハイブリッド自動車のエアコン暖房の快適性の向上と、走行距離を延長する装置としても応用可能である。また乗用車に限らずバス、トラックなどの商用車の電気自動車にも応用可能である。
【符号の説明】
【0032】
2 バッテリー
3 エアコン(空調装置)
10 シートヒータ(補助暖房装置)
11 輻射ヒータ(補助暖房装置)
12 床暖ヒータ(補助暖房装置)
13 マイコン(制御手段)
14 圧電センサ(在席検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車に搭載され、推進用電力を蓄えるバッテリーからの給電で作動する空調装置と、前記バッテリーからの給電で作動するシートヒータ、輻射ヒータ、床暖房ヒータ等の少なくとも1つからなる補助暖房装置と、前記空調装置と前記補助暖房装置とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は前記バッテリーの充電率が所定の管理閾値よりも低下すると前記空調装置の作動を禁止し、前記補助暖房装置の作動のみ許可することを特徴とした空調システム。
【請求項2】
在席検知手段を備え、在席部だけ補助暖房装置の作動を許可することを特徴とした請求項1記載の空調システム。
【請求項3】
所定の閾値とは、現在地から最寄の充電スタンドまで走ることのできる充電率とした請求項1または請求項2のいずれか1項記載の空調システム。
【請求項4】
所定の閾値とは、現在地から予め入力設定された登録地点(=自宅、自社、目的地など)まで走ることのできる充電率とした請求項1または請求項2のいずれか1項記載の空調システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の空調システムを搭載した電気自動車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate