説明

空調システム

【課題】複数の部屋に調和空気を供給することができ、かつ設置スペースを確保し易い空調システムを得ること。
【解決手段】建物150内の複数の部屋R1〜R4の各々に調和空気を供給する空調システム100Aを構成するにあたり、建物内の1つの部屋R2に、調和空気を作り出す空気調和機20と、該空気調和機から離隔した箇所に設置されて部屋R2内の調和空気を吸い込む送風装置60Aとを設置し、送風装置60Aにより上記の調和空気を吸い込んで配管部10に送出し、該配管部により上記の調和空気を各部屋に導くようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部屋の空気調和を行う空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
気密住宅および空気調和機の普及に伴い、今日では、建物の部屋毎に空気調和機の室内機を設置することも一般的になってきている。また、部屋毎に空気調和機の室内機を設置することによる個々の部屋での利用スペースの減少や施工工事の煩雑化を抑えるために、1箇所で集中的に空気調和を行って得た空気(調和空気)を各部屋に供給する集中空調システムも開発されている。
【0003】
例えば特許文献1には、建物の各室に通じるダクトと、該ダクトの基端部に接続される空気循環路と、該空気循環路内に建物内の空気を吸入しかつ吸入した空気をダクトを通して各室に送出する送風モジュールと、空気循環路内の空気を外気との間で換気し、熱源機で必要温度に調節して所定状態に調和させる空調モジュールとを備えた一体型集中空調ユニットが記載されている。この一体型集中空調ユニットでは、空調モジュールで所定状態に調和した空気を送風モジュールとダクトで各室に送るので、各室に設置した空気調和機(室内機)と1台の室外機との間で高圧の冷媒等を循環させて室毎に空気調和を行うシステムを構築する場合に比べて、施工が簡単化される。また、当該一体型集中空調ユニットを屋外に設置すれば、どの室にも空気調和機(室内機)を設置しなくてよいので、個々の室での利用スペースの減少が防止される。
【0004】
【特許文献1】特開平2−287034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された一体型集中空調ユニットは、空気循環路、送風モジュール、および空調モジュールを一体化したものであることから装置が大型であり、当該一体型集中空調ユニットを建物内の1つに部屋に設置すると、該部屋での利用スペースが大幅に減少してしまう。また、当該一体型集中空調ユニットを建物外に設置するためには、建物外に比較的広いスペースがなければならない。このため、大きな部屋や広い敷地がない場合には設置できないことがある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、複数の部屋に調和空気を供給することができ、かつ設置スペースを確保し易い空調システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の空調システムは、建物内の複数の部屋の各々に調和空気を供給する空調システムであって、建物内の部屋に設置されて調和空気を作り出す空気調和機と、空気調和機が設置された部屋内で空気調和機から離隔した箇所に設置され、調和空気を吸い込んで送出する送風装置と、送風装置から送出された調和空気を複数の部屋の各々に排出する配管部とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空調システムでは、空気調和機と送風装置とを同じ部屋の別々の箇所に設置するので、1箇所にまとまったスペースを確保できない場合でも、また建物の敷地が狭い場合でも当該空気調和機および送風装置を設置し易い。設置スペースの確保が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の空調システムの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の空調システムの一例を示す概略図である。同図に示す空調システム100Aは、計4つの部屋R1〜R4を有する2階建ての建物150内に設置されて1階の各部屋R1,R2および2階の各部屋R3,R4に調和空気を供給するシステムであり、当該空調システム100Aは、配管部10、空気調和機20、および送風装置60Aを備えている。なお、図示の例での建物150は、床部141、外周壁142、間仕切り壁143、1階側天井部144、2階側天井部145、屋根裏部146、および屋根147を備え、敷地Sに建てられている。
【0011】
上記の配管部10は、間仕切り壁143の内部を1階側から2階側に通る主管3と、主管3から分岐し、1階側天井部144内を通って部屋R1,R2に達する1階側枝管部5a,5bと、主管3から分岐し、2階側天井部145を通って部屋R3,R4に達する2階側枝管部7a,7bとを有しており、送風装置60Aから各部屋R1〜R4に供給される調和空気の流路となる。空気調和機20は1階の部屋R2に設置され、冷凍サイクルを利用して部屋R2の室内空気の温度や湿度を調節して調和空気を作り出す。なお、部屋R2に空気調和機20が設置されていることから、上述した配管部10のうちで部屋R2に達する1階側枝管部5bについては、省略することも可能である。
【0012】
送風装置60Aは、空気清浄部と送風部(いずれも図示せず)とを有し、部屋R2内での空気調和機20から離隔した箇所、例えばコーナー部においてその一部を間仕切り壁143に埋め込んだ状態で設置されて、空気調和機20が作り出した調和空気を清浄化した後に配管部10に送出する。図1においては、建物150内での調和空気の流向を二点鎖線の矢印で示している。以下、図2を参照して送風装置60Aの構成を説明する。
【0013】
図2は、図1に示した空調システムでの送風装置の構成を概略的に示す部分断面図である。同図に示すように、送風装置60Aは、筐体21と、該筐体21内に形成された風洞部22と、該風洞部22を第1吸込み風洞部22Aと第2吸込み風洞部22Bとに仕切る第1仕切り板23と、吹出し風洞部24と、該吹出し風洞部24と第2吸込み風洞部22Bとを仕切る第2仕切り板25と、第1吸込み風洞部22Aでの前面側に配置された空気清浄部26と、第2吸込み風洞部22B内に配置された第1ダンパ27と、第1および第2吸込み風洞部22A,22Bの後方に配置された送風部50とを備えている。
【0014】
上記の筐体21は前面側に四角形状の吸込み口21aを有し、上面側での後部に吹出し口21bを有する。風洞部22は吸込み口21aに続いており、吹出し口21bは吹出し風洞部24に続いている。図示の例では、第1吸込み風洞部22Aと第2吸込み風洞部22Bとが筐体21での上下方向に並設され、第2吸込み風洞部22Bの後方に吹出し風洞部24が設けられている。吹出し口21bに配管部10(図1参照)が接続される。
【0015】
空気清浄部26は、送風装置60Aが吸い込んだ空気を送風部50の手前で清浄化するものであり、塵埃を捕集する第1フィルター26aと、該第1フィルター26aを通過した微細な塵埃を捕集する第2フィルター26bと、該第2フィルター26bを通過した化学物質を除去する第3フィルター26cとが吸込み口21a側からこの順番で配置された構成を有する。また、第1ダンパ27は、送風部50により動作制御されるモータ(図示せず)により駆動されて、第2吸込み風洞部22Bを開閉する。図2においては、第2吸込み風洞部22Bが開放状態であるときの第1ダンパ27を実線で描いており、閉鎖状態であるときの第1ダンパ27を一点鎖線で描いている。
【0016】
送風部50は、送風部本体45と、該送風部本体45の上端に取り付けられた吹出し部47とを有する。送風部本体45での風洞部22側には吸込み口45aが形成されており、送風部本体45の内部には、駆動時に吸込み口45aから空気を吸い込んで吹出し部47に送出する送風ファン(図示せず)と、該送風ファンを駆動させるモータ(図示せず)と、該モータおよび前述した第1ダンパ27用のモータそれぞれの動作を制御する制御部40Aとが配置されている。吹出し部47は徳利状を呈し、送風機本体45が作り出した気流を吹出し風洞部24に吹き出す。
【0017】
図3は、図1に示した空調システムでの結線の状態を概略的に示す結線図である。同図に示すように、空調システム100A(図1参照)での空気調和機20(図3においては「空調機」と略記している)と送風装置60A(図2参照)の制御部40Aとは電源スイッチSに電気的に接続されており、該電源スイッチSがオン(閉)になると動作を開始し、オフ(閉)になると動作を停止する。
【0018】
制御部40Aは、送風部本体45(図2参照)内に配置された送風ファン31用のモータ32を動作制御する送風ファン駆動部35と、第1ダンパ27(図2参照)用のモータ28を動作制御する第1ダンパ駆動部36と、該第1ダンパ駆動部36と電源スイッチSとの間に介在して第1ダンパ駆動部36の動作時期を規定するオンタイマ37とを有している。送風ファン駆動部35とオンタイマ37とは電源スイッチSに電気的に接続されており、第1ダンパ駆動部36はオンタイマ37に電気的に接続されている。なお、第1ダンパ27は、「オン」のときに第2吸込み風洞部22Bを閉鎖状態にし、「オフ」のときに第2吸込み風洞部22Bを開放状態にする。
【0019】
上述した配管部10、空気調和機20、および送風装置60A(図1および図2参照)を備え、空気調和機20と送風装置60Aの制御部40Aと各モータ28,32(図3参照)とが所定の状態で結線されている空調システム100A(図1参照)では、ユーザが電源スイッチS(図3参照)をオン(閉)にすると空気調和機20および送風装置60Aの各々が起動して、建物150の各部屋R1〜R2(図1参照)への調和空気の供給が開始される。第1ダンパ27は、空気調和機20および送風ファン31(図3参照)より遅れて起動する。
【0020】
図4は、図1に示した空調システムでの各部の動作時期を概略的に示すタイムチャートである。同図に示すように、時刻T1でユーザが電源スイッチSをオン(閉)にすると、これに同期して空気調和機20および送風ファン31が起動(オン)する。第1ダンパ27は、オンタイマ37が第1ダンパ駆動部36(図3参照)にオン信号を出す時刻T2に起動(オン)する。
【0021】
時刻T1で起動した空気調和機20は、部屋R2の室内空気の温度や湿度を所定の状態にして調和空気を作り出す。また、時刻T2で送風ファン31が起動すると、部屋R2内の調和空気が吸込み口21aと、第1および第2吸込み風洞部22A,22Bと、吸込み口45aとを経由して送風装置60Aの送風機本体45内に吸い込まれ、ここから吹出し部47を通って吹出し風洞部24(図2参照)に吹き出す。そして、吹出し風洞部24に吹き出された調和空気は、吹出し口21b(図2参照)から配管部10(図1参照)内に送出されて、各部屋R1〜R4(図1参照)に排出(供給)される。第1吸込み風洞部22Aと第2吸込み風洞部22Aの両方が調和空気の流路として機能するので、空気調和機20が作り出した調和空気を各部屋R1〜R4に急速に供給することが可能である。
【0022】
ただし、時刻T2になるまでは第1ダンパ27が「オフ」にされて第2吸込み風洞部22Bを開放状態にしているので、空気清浄部26(図2参照)により清浄化された調和空気と、清浄化されないままの調和空気とが送風部本体45に吸い込まれて各部屋R1〜R4に供給される。時刻T2になると、第1ダンパ27がオンになって第2吸込み風洞部22Bを閉鎖状態にする。これにより第1および第2風洞部22A,22Bのうちの第1吸込み風洞部22Aのみが調和空気の流路として機能することになるので、送風装置60Aから配管部10へは清浄化された調和空気のみが送出されるようになる。
【0023】
このように動作する空調システム100A(図1参照)によれば、空気調和機20の性能や各部屋R1〜R4の広さ等に応じて時刻T1と時刻T2との時差Ta(図4参照)を適宜選定することにより、例えば帰宅直後に各部屋R1〜R4の温度環境や湿度環境を急速に整え、その後は清浄化された調和空気を個々の部屋R1〜R4に穏やかに供給して各部屋R1〜R4の温度環境や湿度環境を維持することが可能になる。
【0024】
そして、当該空調システム100Aでは、空気調和機20と送風装置60Aとを部屋R2の別々の箇所に設置するので、部屋R2内の1箇所にまとまったスペースを確保できない場合でも、また建物150の敷地S(図1参照)が狭い場合でも、空気調和機20および送風装置60Aを設置して当該空調システム100Aを構築し易い。設置スペースの確保が容易である。
【0025】
また、送風装置60Aに空気清浄部26(図2参照)が設けられているので、該空気清浄部26を適宜清掃することにより、保守が困難な配管部10内での雑菌の増殖を抑えることが可能である。さらには、調和空気を個々の部屋R1〜R4に急速に供給する場合には、空気清浄部26が設けられていない第2吸込み風洞部22B、別言すれば圧力損失が少ない第2吸込み風洞部22Bからも調和空気を吸い込むことができるので、当該場合でも送風ファン31(図3参照)の駆動力をそれ程高めなくてもよく、エネルギー消費量を抑え易い。
【0026】
実施の形態2.
本発明の空調システムは、建物での階毎または部屋毎に調和空気の供給、遮断を制御するように構成することもできる。このように空調システムを構成するにあたっては、例えば、配管部の所定箇所に該配管部での流路を開閉する第2ダンパが設けられ、建物での階毎または部屋毎に温度検出器が設けられる。
【0027】
図5は、建物での階毎に調和空気の供給、遮断を制御することができる空調システムの一例を示す概略図である。同図に示す空調システム100Bは、2階建ての建物150内に設置されて1階の各部屋R1,R2および2階の各部屋R3,R4に調和空気を供給することができると共に、建物150の階毎に調和空気の供給、遮断を制御することができるシステムである。
【0028】
この空調システム100Bでは、配管部10での1階側枝管部5a,5b内に第2ダンパ63aが1つずつ設けられていると共に、2階側枝管部7a,7b内に第2ダンパ63bが1つずつ設けられている。また、1階の部屋R1には建物150での1階の温度を検出する第1温度検出器65aが設けられており、2階の部屋R3には建物150での2階の温度を検出する第2温度検出器65bが設けられている。そして、当該空調システム100Bは、図1に示した送風装置60Aに代えて送風装置60Bを備えている。これらの点を除けば、空調システム100Bは、図1に示した空調システム100Aと同様の構成を有している。図5に示す構成要素のうちで図1に示した構成要素と共通するものについては、図1で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0029】
上記の第2ダンパ63aの各々は、送風装置60Bにより動作制御されるモータ(図示せず)により駆動され、互いに同期して、1階側枝管部5a,5bを開放状態または閉鎖状態に切り替える。同様に、第2ダンパ63bの各々は、送風装置60Bにより動作制御されるモータ(図示せず)により駆動され、互いに同期して、2階側枝管部7a,7bを開放状態または閉鎖状態に切り替える。また、第1温度検出器65aは建物150での1階の温度を検出し、第2温度検出器65bは建物150での2階の温度を検出する。これら第1温度検出器65aおよび第2温度検出器65bの検出結果は、送風装置60Bの制御部(図示せず)に送られる。勿論、送風装置60Bの制御部が第1温度検出器65aおよび第2温度検出器65bそれぞれの検出結果を読み取るように空調システム100Bを構成してもよい。
【0030】
図6は、図5に示した空調システムでの結線の状態を概略的に示す結線図である。同図に示すように、空調システム100B(図5参照)での空気調和機20(図6においては「空調機」と略記している)と送風装置60Bの制御部40Bとは電源スイッチSに電気的に接続されており、該電源スイッチSがオン(閉)になると動作を開始し、オフ(閉)になると動作を停止する。
【0031】
制御部40Bは、図3に示した制御部40Aと同様に、送風ファン31用のモータ32を動作制御する送風ファン駆動部35、第1ダンパ27(図5参照)用のモータ28を動作制御する第1ダンパ駆動部36、および第1ダンパ駆動部36と電源スイッチSとの間に介在して第1ダンパ駆動部36の動作時期を規定するオンタイマ37を有している。また、当該制御部40Bは、各第2ダンパ63a(図5参照)用のモータ64aを動作制御する1階用第2ダンパ駆動部38a、各第2ダンパ63b(図5参照)用のモータ64bを動作制御する2階用第2ダンパ駆動部38b、第1温度検出器65aの検出値を基準温度範囲と比較する第1比較器39a、および第2温度検出器65bの検出値を基準温度範囲と比較する第2比較器39bも有している。
【0032】
上記の第1比較器39aは、第1温度検出器65aの検出値が基準温度範囲から外れたときに動作信号を作成して1階用第2ダンパ駆動部38aに送り、当該動作信号を受けた1階用第2ダンパ駆動部38aは、各第2ダンパ63a用のモータ64aに駆動信号を送って、各第2ダンパ63aの開閉状態を切り替える。例えば、空気調和を行わなくてもユーザが不快に感じない温度範囲を上記の基準温度範囲として設定した場合には、第1温度検出器65aの検出値が当該基準温度範囲から外れたときに各第2ダンパ63aが閉状態から開状態に切り替えられて、各部屋R1,R2への調和空気の供給を可能にする。
【0033】
同様に、第2比較器39bは、第2温度検出器65bの検出値が基準温度範囲から外れたときに動作信号を作成して2階用第2ダンパ駆動部38bに送り、当該動作信号を受けた2階用第2ダンパ駆動部38bは、各第2ダンパ63b用のモータ64bに駆動信号を送って、各第2ダンパ63bの開閉状態を切り替える。これにより、送風装置60Bから2階の各部屋R3,R4(図2参照)への調和空気の供給を可能にする。
【0034】
したがって、空調システム100Bでは、建物150での各階の温度に応じて、階毎に調和空気の供給、遮断が自動的に制御される。なお、送風装置60Bは、第1比較器39aおよび第2比較器39bで用いられる各基準温度範囲を空調システム100Bのメーカが予め設定して、記憶部(図示せず)に格納するように構成することもできるし、ユーザが例えばリモートコントローラから設定するように構成することもできる。
【0035】
上述の構成を有する空調システム100Bは、実施の形態1で説明した空調システム100A(図1参照)と同様の技術的効果を奏する。また、建物150での階毎に調和空気の供給、遮断が自動的に制御されるので、調和空気を供給しなくてもよい温度の階にまで上記の調和空気が供給されるという無駄が防止され、結果として、実施の形態1で説明した空調システム100Aと比べてもエネルギー消費量の低減を図り易い。
【0036】
また、図6中に一点鎖線で示すように、第1比較器39aおよび第2比較器39bの各々と第1ダンパ駆動部36とを電気的に接続し、第1比較器39aおよび第2比較器39bの少なくとも一方が前述の動作信号を作成したときには該動作信号が第1ダンパ駆動部36にも送られて、第1ダンパ27が閉鎖状態から開放状態になるように空調システム100Bを構成することもできる。このように構成すると、空気調和機20が作り出した調和空気を各部屋に急速に供給する必要のないときにまで送風装置60B(図5参照)が大出力で駆動するというエネルギーの無駄を防止することができる。当該構成を実施の形態1で説明した空調システム100Aに適用すれば、同様の技術的効果が得られる。
【0037】
実施の形態3.
本発明の空調システムでは、冷凍サイクルを利用した空気調和機と、室内空気と外気との間で顕熱や潜熱を交換して空気調和を行う熱交換換気装置とを併用することができる。この場合には、室内空気と熱交換された後の外気(調和空気)を熱交換換気装置から送風装置に送り、ここから配管部に送出して建物の各部屋に供給する。
【0038】
図7は、冷凍サイクルを利用した空気調和機と熱交換換気装置とを併用した空調システムの一例を示す概略図である。同図に示す空調システム100Cは、2階建ての建物150内に設置され、冷凍サイクルを利用した空気調和機20と熱交換換気装置75とを併用して1階の各部屋R1,R2、および2階の各部屋R3,R4に調和空気を供給することができるシステムである。
【0039】
この空調システム100Cでは、建物150の屋根裏部146に熱交換換気装置75が設置されており、この熱交換換気装置75は、該熱交換換気装置75に接続された室内側排気配管部77a、室外側排気配管部77b、室外側給気配管部78a、および室内側給気配管部78bの各々と共に熱交換換気ユニット80を構成している。空調システム100Cは、熱交換換気ユニット80を備えているという点、および送風装置60Cが熱交換換気ユニット80から調和空気の供給を受けるという点をそれぞれ除き、図1に示した空調システム100Aと同様の構成を有している。図7に示す構成要素のうちで図1に示した構成要素と共通するものについては、図1で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0040】
上記の熱交換換気装置75は、室内空気を吸い込んで室外に吹き出すための排気用送風機71aと、外気を吸い込んで室内に吹き出すための給気用送風機71bと、室内空気と外気との間で顕熱や潜熱を交換する熱交換器73とを有している。この熱交換換気装置75での室内空気の吸込み口には室内側排気配管部77aが接続され、室内空気の吹出し口には室外側排気配管部77bが接続され、外気の吸込み口には室外側給気配管部78aが接続され、外気の吹出し口には室内側給気配管部78bが接続されている。
【0041】
室内側排気配管部77aは建物150での各部屋R1〜R4に連通しており、室外側排気配管部77bは建物150の外に連通している。排気用送風機71aを駆動させることにより、各部屋R1〜R4の室内空気が室内側排気配管部77aを通って熱交換換気装置75に吸い込まれ、熱交換器73中の所定の流路を流れた後に室外側排気配管部77bを通って建物150の外に排出される。図7においては、熱交換換気ユニット80での室内空気の流向を破線の矢印で示している。
【0042】
また、室外側給気配管部78aは建物150の外に連通しており、室内側給気配管部78bは送風装置60Cの第1吸込み風洞部22A(図2参照)に連通している。給気用送風機71bを駆動させることにより、外気が室外側給気配管部78aを通って熱交換換気装置75に吸い込まれ、熱交換器73中の所定の流路を流れた後に室内側給気配管部78bを通って送風装置60Cに供給される。図7においては、熱交換換気ユニット80での外気(熱交換後のものを含む)の流向を点線の矢印で示している。なお、送風装置60Cは、第1吸込み風洞部22Aでの空気清浄部26(図2参照)の外側に室内側給気配管部78b用の接続口を有するという点を除き、図2に示した送風装置60Aと同様の構成を有している。
【0043】
熱交換換気装置75の排気用送風機71aと給気用送風機71bとを駆動させると、室内空気および外気がそれぞれ上述のように熱交換器73中の所定の流路を流れ、その過程で当該室内空気と外気との間で顕熱や潜熱が交換されて、調和空気が作り出される。この調和空気は、給気用送風機71bにより室内側給気配管部78bに送られ、該室内側給気配管部78bを通って送風装置60Cに供給された後、空気調和機20が作り出した調和空気と共に各部屋R1〜R4に供給される。
【0044】
上述のように動作する熱交換換気ユニット80を備えた空調システム100Cは、実施の形態1で説明した空調システム100Aと同様の技術的効果を奏する。また、空気調和機20と送風装置60Cとの起動に同期させて、あるいは当該起動から所定時間経過後に熱交換器装置75を起動させた後は、空気調和機20による空気調和に加えて熱交換器装置75による換気および空気調和も行われるので、実施の形態1で説明した空調システム100Aよりもエネルギー消費量の低減を図り易いという技術的効果も奏する。
【0045】
実施の形態4.
本発明の空調システムでは、冷凍サイクルを利用した空気調和機と循環型の加湿装置とを併用することができる。この場合には、加湿装置で加湿した後の空気を送風装置に送り、ここから配管部に送出して建物の各部屋に供給する。
【0046】
図8は、冷凍サイクルを利用した空気調和機と循環型の加湿装置とを併用した空調システムの一例を示す概略図である。同図に示す空調システム100Dは、2階建ての建物150内に設置され、冷凍サイクルを利用した空気調和機20と循環型の加湿装置85とを併用して1階の各部屋R1,R2および2階の各部屋R3,R4に調和空気を供給することができるシステムである。
【0047】
この空調システム100Dでは、建物150の屋根裏部146に循環型の加湿装置85が設置されており、この加湿装置85は、該加湿装置85に接続された排気配管部87および給気配管部88と共に循環型加湿ユニット90を構成している。空調システム100Dは、循環型加湿ユニット90を備えているという点、および送風装置60Dが循環型加湿ユニット90から調和空気(加湿空気)の供給を受けるという点をそれぞれ除き、図1に示した空調システム100Aと同様の構成を有している。図8に示す構成要素のうちで図1に示した構成要素と共通するものについては、図1で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0048】
上記の加湿装置85は、室内空気を吸い込んで装置外に吹き出すための送風機81と、吸い込んだ室内空気を加湿する加湿部83とを有している。この加湿装置85での空気の吸込み口には排気配管部87が接続され、加湿空気の吹出し口には給気配管部88が接続されている。排気配管部87は建物150での各部屋R1〜R4に連通しており、給気配管部88は送風装置60Dの第1吸込み風洞部22A(図2参照)に連通している。
【0049】
加湿装置85の送風機81を駆動させることにより、各部屋R1〜R4の室内空気が排気配管部87を通って加湿装置85に吸い込まれ、加湿部83で加湿された後に送風機81により給気配管部88に送られ、該給気配管部88を通って送風装置60Dに供給される。図8においては、循環型加湿ユニット90での室内空気の流向を破線の矢印で示している。なお、送風装置60Dは、第1吸込み風洞部22Aでの空気清浄部26(図2参照)の外側に給気配管部88用の接続口を有するという点を除き、図2に示した送風装置60Aと同様の構成を有している。
【0050】
上述のように動作する循環型加湿ユニット90を備えた空調システム100Dは、実施の形態1で説明した空調システム100Aと同様の技術的効果を奏する。また、空気調和機20と送風装置60Dとの起動に同期させて、あるいは当該起動から所定時間経過後に加湿装置85を起動させた後は、空気調和機20による空気調和に加えて加湿装置85による空気調和(加湿)も行われるので、実施の形態1で説明した空調システム100Aよりもユーザにとっての利便性が高まるという技術的効果も奏する。
【0051】
以上、本発明の空調システムについて実施の形態を挙げて説明したが、前述のように、本発明は上記の形態に限定されるものではない。本発明の空調システムは、調和空気の流路となる配管部と、建物内の1つの部屋に設置されて調和空気を作り出す空気調和機と、空気調和機が設置された部屋内で空気調和機から離隔した箇所に設置されて配管部に接続され、部屋内の調和空気を吸い込んで配管部に送出する送風装置とを備えていれば基本的によく、他の構成は適宜変更可能である。
【0052】
例えば、空調システムを構成する送風装置に設ける吸込み風洞は1つでもよい。1つの吸込み風洞のみを送風装置に設ける場合、該吸込み風洞での前面側に空気清浄部を設けるか否かは適宜選択可能である。また、当該吸込み風洞を開閉するダンパを設けるか否かについても適宜選択可能である。ただし、建物内の各部屋に清浄な調和空気を供給するという観点からは、送風装置に設ける吸込み風洞の総数が幾つであるかに拘わらず、当該送風装置には空気清浄部を設けることが好ましい。そして、建物内の各部屋に少ないエネルギー消費量の下に調和空気を急速に供給することができる機能を空調システムに付与するうえからは、実施の形態で説明したように、前面側に空気清浄部が配置された吸込み風洞と内部にダンパが配置された吸込み風洞とを送風装置に設けることが好ましい。
【0053】
実施の形態2で説明した空調システムにおけるように、配管部にダンパを配置して調和空気の供給、遮断を制御する場合、当該ダンパは建物の階毎または部屋毎に必ず設けなければならないというものではなく、所望階のみや所望の部屋のみに設けることもできる。本発明の空調システムについては、上述した以外にも種々の変形、修飾、組み合わせ等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の空調システムは、家庭用または業務用の空調システムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の空調システムの一例を示す概略図である。
【図2】図1に示した空調システムでの送風装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【図3】図1に示した空調システムでの結線の状態を概略的に示す結線図である。
【図4】図1に示した空調システムでの各部の動作時期を概略的に示すタイムチャートである。
【図5】本発明の空調システムのうちで建物での階毎に調和空気の供給、遮断を制御することができるものの一例を示す概略図である。
【図6】図5に示した空調システムでの結線の状態を概略的に示す結線図である。
【図7】本発明の空調システムのうちで冷凍サイクルを利用した空気調和機と熱交換換気装置とを併用したものの一例を示す概略図である。
【図8】本発明の空調システムのうちで冷凍サイクルを利用した空気調和機と循環型の加湿装置とを併用したものの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0056】
10 配管部
20 空気調和機
21a 吸込み口
22 吸込み風洞部
22A 第1吸込み風洞部
22B 第2吸込み風洞部
26 空気清浄部
26a 第1フィルター
26b 第2フィルター
26c 第3フィルター
27 第1ダンパ
31 送風ファン
36 第1ダンパ駆動部
40A,40B 制御部
50 送風部
60A,60B,60C,60D 送風装置
63a 1階用第2ダンパ
63b 2階用第2ダンパ
65a 第1温度検出器
65b 第2温度検出器
75 熱交換換気装置
80 熱交換換気ユニット
85 加湿装置
90 循環型加湿ユニット
100A,100B,100C,100D 空調システム
150 建物
1,R2,R3,R4 部屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の複数の部屋の各々に調和空気を供給する空調システムであって、
前記建物内の部屋に設置されて調和空気を作り出す空気調和機と、
該空気調和機が設置された部屋内で前記空気調和機から離隔した箇所に設置され、前記調和空気を吸い込んで送出する送風装置と、
該送風装置から送出された前記調和空気を前記複数の部屋の各々に排出する配管部と、
を備えたことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記送風装置は、調和空気を清浄化する空気清浄部を有すること特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記空気清浄部は、
塵埃を捕集する第1フィルターと、
該第1フィルターを通過した微細な塵埃を捕集する第2フィルターと、
該第2フィルターを通過した化学物質を除去する第3フィルターと、
を有することを特徴とする請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記送風装置は、
前面側に形成された吸込み口と、
該吸込み口に続く第1吸込み風洞部と、
該第1吸込み風洞部に並設されて前記吸込み口に続く第2吸込み風洞部と、
を有し、
前記第1吸込み風洞部での前記吸込み口側には前記空気清浄部が配置されており、
前記第2吸込み風洞部内には該第2吸込み風洞部を開閉する第1ダンパが配置されている、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記送風装置は、該送風装置の起動時には前記第1ダンパを開放状態にしておき、該送風装置の起動から所定時間経過後に前記第1ダンパを開放状態から閉鎖状態に切り替える第1ダンパ駆動部を更に有することを特徴とする請求項4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記配管部内に配置されて、前記建物での階毎または部屋毎に調和空気の供給、遮断を制御する複数の第2ダンパと、
前記建物での階毎または部屋毎の温度を検知する温度検出器と、
を更に備え、
前記送風装置は、検出温度が基準温度範囲から外れた温度検出器があったときに該温度検出器が設置されている階または部屋への調和空気の供給、遮断を制御する第2ダンパの開閉状態を切り替える第2ダンパ駆動部を更に有する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項7】
前記建物での階毎または部屋毎の温度を検知する温度検出器を更に備え、
前記第1ダンパ駆動部は、検知温度が基準温度範囲から外れた温度検出器があったときに前記第1ダンパを閉鎖状態から開放状態に切り替えることを特徴とする請求項4または5に記載の空調システム。
【請求項8】
前記建物内に配置され、外気と前記複数の部屋それぞれの室内空気とを吸い込んで前記外気と前記室内空気との間で熱交換を行い、熱交換後の室内空気は前記建物の外に排気し、熱交換後の外気は前記送風装置に供給する熱交換換気ユニットを更に備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項9】
前記建物内に配置され、前記複数の部屋それぞれの室内空気を吸い込んで加湿した後に前記送風装置に供給する循環形加湿ユニットを更に備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の空調システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−101600(P2010−101600A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275645(P2008−275645)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】