説明

空調システム

【課題】1以上の室内機のそれぞれに対して複数の室外機を並列に接続することによって構成される冷媒回路から、オイルを圧縮機に回収できる空調システムを提供する。
【解決手段】空調システムの制御装置は、オイル回収運転の開始としてのステップS5において、各四方弁に各室外回路要素の流路を冷房流路に切り換えさせ、各室内ファンを停止させ、及び各室内膨張弁の開度、各圧縮機の回転数、及び各室外ファンの回転数をそれぞれ所定減圧開度、所定圧縮機回転数、及び所定ファン回転数に制御し、所定減圧開度、所定圧縮機回転数、及び所定ファン回転数は各室内熱交換器から各圧縮機に向かう冷媒を湿り蒸気に近い過熱蒸気に保つように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上の室内機と複数の室外機とを備えている空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
暖房運転の継続によって、圧縮機に冷媒と共に供給されるオイルが冷媒回路中に滞留し、圧縮機用のオイルが不足する場合がある。このような問題を解決する技術として、特許文献1は、冷媒回路中のオイルを圧縮機に回収する空気調和装置を開示している。この空気調和装置は、暖房運転における圧縮機の運転時間が所定値に達すると、冷媒回路を冷房サイクルに切り替えることで冷媒回路中のオイルを回収し、且つ室内ファンを停止させて冷風の発生を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−23816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工場やビルなど大型の設備に設けられる空調システムは、複数の室内機と複数の室外機とを備えている。ここで、多数の部屋に対応するために複数の室内機が設けられており、空調負荷が増大している。圧縮機の大容量化によって空調負荷の増大に対応しようとするとコストアップの増大を招くので、複数の室外機が設けられている。このような空調システムにおいて、複数の室内機のそれぞれに対して複数の室外機を並列に接続することによって冷媒回路が構成されている。室内機は、設備内の各部屋に配置されるが、室外機は例えば設備の屋上に配置される。
【0005】
複数の室外機を有する空調システムでは、運転時における空調負荷の大きさに応じて、各圧縮機の出力の大きさだけでなく、駆動させる圧縮機の数が変更される。また、該空調システムは、各室外機からの冷媒を合流させる幹管と、幹管から各室内機に冷媒を分配するための枝管とを有している。幹管は比較的大きな配管径を有している。ガス冷媒用の幹管では、駆動している圧縮機の数や各圧縮機の回転数の減少により、ガス冷媒の流速が低下しやすい。この結果、幹管内で冷媒の動圧が小さくなり、ガス冷媒用の幹管にオイルが滞留する。
【0006】
特許文献1は、単独の室外機を有する空調システムを開示しているが、空調負荷としての室内機に対して複数の室外機が並列に接続される空調システムを開示していない。
【0007】
そこで、本発明は、1以上の室内機のそれぞれに対して複数の室外機を並列に接続することによって構成される冷媒回路から、オイルを圧縮機に回収できる空調システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空調システムは、1以上の室内機と複数の室外機とを備えている空調システムであって、室内機は、室内熱交換器及び室内膨張弁を備える室内回路要素と、室内熱交換器に送風する室内ファンとを備えており、室外機は、圧縮機、室外熱交換器、室外膨張弁、及び流路切換機構を備える室外回路要素と、室外熱交換器に送風する室外ファンとを備えており、空調システムは、1以上の室内回路要素のそれぞれに対して複数の室外回路要素を並列に接続することによって構成される冷媒回路と、各圧縮機、各室内膨張弁、各室外膨張弁、各流路切換機構、各室内ファン、及び各室外ファンを制御する制御装置とを備えており、制御装置は、各流路切換機構に各室外回路要素の流路を暖房流路又は冷房流路に切り換えさせることによって、冷媒回路に暖房運転又は冷房運転を実行させることができ、制御装置は、暖房運転の実行中に所定の開始条件が満たされると冷媒回路にオイル回収運転を実行させ、オイル回収運転の実行中に所定の終了条件が満たされると冷媒回路に暖房運転を再開させ、制御装置は、オイル回収運転において、(a)各流路切換機構に各室外回路要素の流路を冷房流路に切り換えさせ、(b)各室内ファンを停止させ、及び(c)各室内膨張弁の開度、各圧縮機の回転数、及び各室外ファンの回転数をそれぞれ所定値に制御し、これらの所定値は各室内熱交換器から各圧縮機に向かう冷媒を湿り蒸気に近い過熱蒸気に保つように設定されている。
【0009】
流路切換機構は、四方弁だけでなく、複数の開閉弁によって構成される弁群を含んでいる。オイル回収運転は、暖房運転が実行されているときに、定期的に暖房運転を中断して一定時間の間実行されても良い。この場合、開始条件は暖房運転が一定時間経過すると満たされ、終了条件はオイル回収運転が一定時間経過すると満たされる。
【0010】
オイル回収運転により、各室内熱交換器から各圧縮機に向けて、湿り蒸気に近い過熱蒸気が流れる。このため、各室内熱交換器から各圧縮機に至るラインに滞留しているオイルが冷媒に溶け込み、このオイルが各圧縮機に回収される。また、各圧縮機が駆動されているので、冷媒回路から回収されたオイルが各圧縮機に均一に分配される。この結果、2つの圧縮機の間でオイル量の過不足が発生しない。
【0011】
好ましくは、一部の室外機が停止された状態で暖房運転が実行されている場合、制御装置は、オイル回収運転において、停止中の室外機を含む全室外機を駆動させる。
【0012】
このため、暖房運転における室外機の駆動状況に関係なく、冷媒回路から回収されたオイルが各室外機に均一に分配される。この結果、2つの室外機の間でオイル量の過不足が発生しない。
【0013】
好ましくは、開始条件は、各室外機に存在しているオイルの量が所定量よりも低下している場合に満たされるように設定されており、終了条件は、オイル回収運転の運転時間が所定時間を超える場合、又は各室内熱交換器から各圧縮機に向かう冷媒が湿り蒸気になっている場合に満たされるように設定されている。
【0014】
各圧縮機におけるオイル不足を防止するために、過剰なオイル回収運転を実行することが防止される。このため、空調システムは、暖房運転が中断される頻度を抑制しながら、オイルを回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、暖房運転における冷媒の流れを示す空調システムの構成図である。
【図2】図2は、冷房運転及びオイル回収運転における冷媒の流れを示す空調システムの構成図である。
【図3】図3は、オイル回収運転の制御フローを示すフロー図である
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、空調システム1の構成を説明する。図1は、暖房運転における冷媒の流れを示す空調システム1の構成図である。空調システム1は、3つの室内機2(1)、2(2)、及び(3)と、2つの室外機3(1)及び3(2)と、及び接続機構4を備えている。参照符号に含まれている添字(1)、(2)、(3)は、それぞれ、1台目、2台目、3台目に対応することを指している。1台目の室外機と2台目の室外機とを区別する必要がない場合、添字は省いている。
【0017】
室内機2は、室内回路要素20と、室内ファン21とを備えている。室内回路要素20は、室内熱交換器22及び室内膨張弁23を備えている。室内ファン21は室内熱交換器22に送風する。
【0018】
室外機3は、室外回路要素30と、室外ファン31とを備えている。室外回路要素30は、室外熱交換器32、室外膨張弁33、圧縮機34、油分離器35、四方弁36、アキュームレータ37、バイパス弁38、受液器39、ガス連絡弁40、及び液連絡弁50を備えている。室外ファン31は室外熱交換器32に送風する。
【0019】
室外機3は、冷媒を通過させるラインとして、ガス管41、42、43、44、45、46、及び47と、液管51、52、及び53とを備えている。ガス冷媒はガス管41、42、43、44、45、46を通過する。液冷媒は液管51、52、及び53を通過する。ガス管41は圧縮機34と油分離器35とを接続している。ガス管42は油分離器35と四方弁36とを接続している。ガス管43は四方弁36と室外熱交換器32とを接続している。ガス管44は四方弁36とガス連絡弁40とを接続している。ガス管45は四方弁36とアキュームレータ37とを接続している。ガス管46はアキュームレータ37と圧縮機34とを接続している。ガス管47はガス管42とガス管45とをバイパス弁38を介して接続している。液管51は、液連絡弁50と受液器39とを接続している。液管52は受液器39と室外熱交換器32とを室外膨張弁33を介して接続している。
【0020】
また、室外機3は、圧縮機34を潤滑するためのオイルを通過させるオイル戻しライン48を備えている。オイル戻しライン48は油分離器35と圧縮機34とを接続している。
【0021】
接続機構4は、3つの室内回路要素20のそれぞれに対して2つの室外回路要素30を、並列に接続することにより、冷媒回路5を構成している。
【0022】
接続機構4は、ガス連絡主管61、ガス連絡室外管62、ガス連絡室内管63、ガス連絡室内管64、液連絡主管71、液連絡室外管72、液連絡室内管73、及び液連絡室内管74を備えている。ガス連絡主管61及び液連絡主管71は、1台目の室外機3(1)と1台目の室内機2(1)とを接続している。詳しくは、ガス連絡主管61はガス連絡弁40と室内熱交換器22とを接続しており、液連絡主管71は液連絡弁50と室内熱交換器22とを室内膨張弁23を介して接続している。ガス連絡室外管62は、2台目の室外機3(2)のガス連絡弁40とガス連絡主管61とを接続している。液連絡室外管72は、2台目の室外機3(2)の液連絡弁50と液連絡主管71とを接続している。ガス連絡室内管63は、2台目の室内機2(2)の室内熱交換器22とガス連絡主管61とを接続している。液連絡室内管73は、2台目の室内機2(2)の室内熱交換器22と液連絡主管71とを室内膨張弁23を介して接続している。ガス連絡室内管64は、3台目の室内機2(2)の室内熱交換器22とガス連絡主管61とを接続している。液連絡室外管74は、3台目の室内機2(3)の室内熱交換器22と液連絡主管71とを室内膨張弁23を介して接続している。
【0023】
空調システム1は、2つの制御装置6を備えている。本実施形態では、各室外機3が1つの制御装置6を備えている。2つの制御装置6は、互いに通信する機能を有しており、一体の制御装置として機能できる。制御装置6は、各四方弁36に各室外回路要素30の流路を暖房流路又は冷房流路に切り替えさせることによって、冷媒回路5に暖房運転又は冷房運転を実行させることができる。
【0024】
図1を参照して、暖房運転を説明する。空調システム1のユーザーによって暖房運転の実行が指令されると、制御装置6は冷媒回路5に暖房運転を実行させる。暖房運転において、制御装置6は、各四方弁36を制御することにより冷媒回路5の流路を暖房流路に切り替え、各室内膨張弁23の開度を最大開度にし、各室外膨張弁33の開度を暖房運転時の減圧開度にする。また、制御装置6は、ユーザーによって指定された暖房の目標温度に応じて、各圧縮機34の回転数、各室内ファン21の回転数、各室外ファン31の回転数を制御する。
【0025】
冷媒回路5の流路が暖房流路に切り替えられているとき、ガス管42がガス管44に接続され、且つガス管43がガス管45に接続される。このため、暖房運転において冷媒は、圧縮機34、油分離器35、四方弁36、ガス連絡主管61、室内熱交換器22、室内膨張弁23、液連絡主管71、受液器39、室外膨張弁33、室外熱交換器32、四方弁36、及びアキュームレータ37を順に通過し、圧縮機34に戻る。ここで、2つの室外機3からの各冷媒はガス連絡主管61において合流し、ガス連絡主管61から3つの室内機2に分配される。また、3つの室内機2からの各冷媒は、液連絡主管71において合流し、液連絡主管71から2つの室外機3に分配される。
【0026】
圧縮機34は冷媒を高圧ガスの状態で送り出す。油分離器35は、冷媒からオイルを分離する。分離されたオイルは、オイル戻しライン48から圧縮機34に戻される。冷媒は、圧縮機34から室内熱交換器22までの間、高圧ガスの状態にある。高圧ガスの冷媒は、室内熱交換器22において凝縮し、高圧液の冷媒になる。冷媒は、室内熱交換器22から室外膨張弁33までの間、高圧液の状態にある。ここで、室内膨張弁23の開度は最大開度に保たれているので、室内膨張弁23は冷媒を膨張させる作用を発揮しない。受液器39は、室内膨張弁23と室外膨張弁33との間に配置されており、高圧液の冷媒の一部を蓄える。高圧液の冷媒は、室外膨張弁33において膨張し、低圧液の冷媒になる。冷媒は、室外膨張弁33から室外熱交換器32までの間、低圧液の状態にある。低圧液の冷媒は、室外熱交換器32において蒸発し、低圧ガスの冷媒になる。冷媒は、室外熱交換器32から圧縮機34までの間、低圧ガスの状態にある。アキュームレータ37は、四方弁と圧縮機34との間に配置されており、低圧ガスの冷媒の一部を蓄える。
【0027】
図2を参照して、冷房運転を説明する。図2は、冷房運転及びオイル回収運転における冷媒の流れを示す空調システム1の構成図である。空調システム1のユーザーによって冷房運転の実行が指令されると、制御装置6は冷媒回路5に冷房運転を実行させる。冷房運転において、制御装置6は、各四方弁36を制御することにより冷媒回路5の流路を冷房流路に切り替え、各室内膨張弁23の開度を冷房運転時の減圧開度にし、各室外膨張弁33の開度を最大開度にする。また、制御装置6は、ユーザーによって指定された冷房の目標温度に応じて、各圧縮機34の回転数、各室内ファン21の回転数、各室外ファン31の回転数を制御する。
【0028】
冷媒回路5の流路が冷房流路に切り替えられているとき、ガス管42がガス管43に接続され、且つガス管44がガス管45に接続される。このため、冷房運転において冷媒は、圧縮機34、油分離器35、四方弁36、室外熱交換器32、室外膨張弁33、受液器39、液連絡主管71、室内膨張弁23、室内熱交換器22、ガス連絡主管61、四方弁36、及びアキュームレータ37を順に通過し、圧縮機34に戻る。ここで、2つの室外機3からの各冷媒は液連絡主管71において合流し、液連絡主管71から3つの室内機2に分配される。また、3つの室内機2からの各冷媒は、ガス連絡主管61において合流し、ガス連絡主管61から2つの室外機3に分配される。
【0029】
圧縮機34は冷媒を高圧ガスの状態で送り出す。油分離器35は、冷媒からオイルを分離する。冷媒は、圧縮機34から室外熱交換器32までの間、高圧ガスの状態にある。高圧ガスの冷媒は、室外熱交換器32において凝縮し、高圧液の冷媒になる。冷媒は、室外熱交換器32から室内膨張弁23までの間、高圧液の状態にある。ここで、室外膨張弁33の開度は最大開度に保たれているので、室外膨張弁33は冷媒を膨張させる作用を発揮しない。受液器39は、高圧液の冷媒の一部を蓄える。高圧液の冷媒は、室内膨張弁23において膨張し、低圧液の冷媒になる。冷媒は、室内膨張弁23から室内熱交換器22までの間、低圧液の状態にある。低圧液の冷媒は、室内熱交換器22において蒸発し、低圧ガスの冷媒になる。冷媒は、室内熱交換器22から圧縮機34までの間、低圧ガスの状態にある。アキュームレータ37は、低圧ガスの冷媒の一部を蓄える。
【0030】
図2、図3を参照して、オイル回収運転を説明する。制御装置6は、暖房運転及び冷房運転に加えて、オイル回収運転を冷媒回路5に実行させる。オイル回収運転は、冷媒回路5に滞留しているオイルを各圧縮機34に回収する運転である。ここで、オイルが滞留しやすいラインは、ガス連絡主管61である。ガス連絡主管61は、各圧縮機34と各室内熱交換器22との間に配置されているラインであって、ガス冷媒が流れるラインである。特にガス連絡主管61は、2つの圧縮機34からの冷媒が合流するラインであり、比較的大きな配管径を有している。このため、ガス連絡主管61では、駆動している圧縮機34の数や各圧縮機34の回転数の減少により、ガス冷媒の流速が低下しやすい。この結果、ガス連絡主管61内で冷媒の動圧が小さくなり、ガス連絡主管61にオイルが滞留しやすい。
【0031】
図3は、オイル回収運転の制御フローを示すフロー図である。オイル回収運転は、暖房運転の実行中に所定の開始条件が満たされると実行され、オイル回収運転の実行中に所定の終了条件が満たされると終了し、暖房運転が再開される。このため、オイル回収運転の制御フローは、暖房運転の開始と共に開始される。
【0032】
ステップS1−S4は、オイル回収運転の開始を準備する処理であり、ステップS1−S4の間、暖房運転が実行されている。ステップS5は暖房運転からオイル回収運転への切替え時における処理である。ステップS6−S7は、オイル回収運転の終了を準備する処理であり、ステップS6−S7の間、オイル回収運転が実行されている。ステップS8は、オイル回収運転から暖房運転への切替え時における処理である。
【0033】
ステップS1において、制御装置6は、所定の開始条件が満たされているか否かを判断する。
【0034】
開始条件は、各室外機3(1)、3(2)に存在しているオイルの量が所定量よりも低下している場合に、満たされるように設定されている。開始条件は、第1開始条件及び第2開始条件を含んでおり、第1開始条件及び第2開始条件の少なくとも一方が満たされる場合に開始条件が満たされる。
【0035】
第1開始条件は、いずれか1つの圧縮機34の連続駆動時間が所定駆動時間以上であることである。圧縮機34の連続駆動時間が長くなるにつれて、冷媒回路5におけるオイルの滞留量が増大していると考えられる。このため、圧縮機34の連続駆動時間に基づいて、第1開始条件が設定されている。制御装置6は、圧縮機34の連続駆動時間を計測することによって、計測された連続駆動時間が所定駆動時間以上であることを検出できる。
【0036】
第1開始条件は、式(1)に示されている。
圧縮機34(1)の連続駆動時間≧所定駆動時間 OR 圧縮機34(2)の連続駆動時間≧所定駆動時間・・・(1)
【0037】
第2開始条件は、油分離器35の所定位置からの戻しオイルの温度と油分離器35の底部からの戻しオイルの温度との温度差が所定温度差よりも小さい場合に、満たされるように設定されている。
【0038】
図1に示されるように、室外機3は、第1温度センサ11及び第2温度センサ12を備えている。第1温度センサ11は油分離器35の所定位置からのオイル戻しライン49の温度を検出し、第2温度センサ12は油分離器35の底部からのオイル戻しライン48の温度を検出する。ここで、油分離器35の底部からのオイル戻しライン48は、通常、油分離器35の所定位置からのオイル戻しライン49と比べてオイル量が多い。そのため、油分離器35の底部からのオイル戻しライン48の温度は、油分離器35の所定位置からのオイル戻しライン49の温度より低く、所定温度差が生じている。しかし、油分離器35内のオイル量が少なくなると、両方のオイル戻しライン48、49中の冷媒割合が増加して温度差が小さくなる。この現象を利用して室外機3に存在しているオイル量を検知するのである。つまり、第2開始条件の室外機3に存在しているオイル量とは、室外機3の油分離器35内のオイル量を意味している。油分離器35内のオイル量が所定量以上あれば、オイル戻しによって圧縮機34の必要オイル量を確保できるからである。
【0039】
第2開始条件は、式(2)に示されている。
油分離器35の所定位置からのオイル戻しライン49の検出温度−油分離器35の底部からのオイル戻しライン48の検出温度≦所定温度差・・・(2)
【0040】
ステップS1において開始条件が満たされている場合、処理がステップS2に移行し、さもなければ処理はステップS1に留まる。
【0041】
ステップS2において、制御装置6は、2つの圧縮機34に起動を指示する。暖房運転において2つの圧縮機34が起動していない場合、つまり1つの圧縮機34が停止している場合、制御装置6は、停止している圧縮機34に起動を指示する。一方、暖房運転において2つの圧縮機34が既に起動している場合、制御装置6は2つの圧縮機34の駆動を継続させる。
【0042】
処理はステップS2の次にステップS3に移行する。ステップS3において、制御装置6は、2つの圧縮機34が共に起動しているか否か、及び所定待機時間が経過したか否かを判断する。制御装置34は、各圧縮機34の回転数を検出することによって、各圧縮機34の起動を確認できる。また、制御装置34は、ステップS2において起動の指示が実行された時点からの経過時間を計測することによって、この経過時間が所定待機時間を超えたことを検出できる。
【0043】
ステップS3において2つの圧縮機34が共に起動している場合又は所定待機時間が経過している場合、処理がステップS4に移行し、さもなければ処理はステップS2に戻る。
【0044】
ステップS4において、制御装置6は、四方弁36を切り替えるための準備を冷媒回路5に指示する。この準備は、冷媒回路5の運転が、暖房運転、冷房運転、及びオイル回収運転の間で切り替えられる場合に行われる。四方弁36には、ガス管42、43、44、及び45からそれぞれ圧力が加えられているが、これらの圧力の間に大きな圧力差がある場合、四方弁36の切替えが抵抗を受ける。このため、四方弁36の切替えを行うために、四方弁36に掛かる圧力差を小さくする必要がある。これらの圧力差を小さくするために、制御装置6は、圧縮機34の回転数の低下及びバイパス弁38の開放を指示する。圧縮機34の回転数の低下により、ガス管47における冷媒の圧力が低下する。また、バイパス弁38の開放により、ガス管47からガス管45に冷媒が逃れ、ガス管47の圧力が低下する。この結果、ガス管42、43、44、及び45から四方弁36に掛かる各圧力が低圧に保たれ、圧力差が小さくなる。
【0045】
処理はステップS4の次にステップS5に移行する。ステップS5において、制御装置6は、冷媒回路5にオイル回収運転を開始させる。オイル回収運転の開始において、制御装置6は、各四方弁36に各室外回路要素30の流路を冷房流路に切り替えさせ、各室内ファン21を停止させる。また、制御装置は、各室内膨張弁23の開度を所定減圧開度にし、各室外膨張弁33の開度を最大開度にし、各圧縮機34の回転数を所定圧縮機回転数にし、各室外ファン31の回転数を所定ファン回転数にする。
【0046】
上述したように、ガス連絡主管61においてオイルの滞留が発生しやすい。このため、ガス連絡主管61を通過する冷媒の流量を多くし、且つ冷媒の状態を湿り冷媒に近づけることが好ましい。各室外回路要素30が冷房流路に切り替えられているとき、ガス連絡主管61を流れる冷媒の状態を、室内膨張弁23、室内ファン21、及び室外ファン32の制御により変更できる。そこで、まず、各室外回路要素30の流路を冷房流路に切り替えることによって、各室内熱交換器22から各圧縮機34にガス冷媒が流れるようにする。一方、暖房中の室内に冷風が吹き出されることは好ましくないため、各室内ファン21は停止される。更に、所定減圧開度、所定圧縮機回転数、及び所定ファン回転数が、所定の室内温度及び室外温度の条件で、各室内熱交換器22から各圧縮機34に向かう冷媒を湿り蒸気に近い過熱蒸気に保つように設定されている。なお、本実施形態では、所定減圧開度は冷房運転時の減圧開度と等しい開度に設定されている。
【0047】
冷媒の状態が湿り蒸気に近い過熱蒸気に保たれているのは、次の理由による。冷媒の状態が液状態に近くなるにつれて、滞留しているオイルが冷媒に溶け込みやすくなる。一方、液状態の冷媒が各圧縮機34に戻ると、各圧縮機34に大きな負荷が掛かる。このため、オイルを回収するためには、湿り蒸気に近い過熱蒸気が好ましい。
【0048】
オイル回収運転により、各室内熱交換器22から各圧縮機34に向けて、湿り蒸気に近い過熱蒸気が流れる。このため、各室内熱交換器22から各圧縮機34に至るライン、特にガス連絡主管61に滞留しているオイルが冷媒に溶け込み、このオイルが圧縮機34に回収される。また、各室外機3が駆動されているので、冷媒回路5から回収されたオイルが各室外機3に均一に分配される。この結果、2つの室外機3(1)、3(2)の間でオイル量の過不足が発生しない。
【0049】
ステップS5におけるオイル回収運転の開始後、処理はステップS6に移行する。ステップS6において、制御装置6は、所定の終了条件が満たされているか否かを判断する。
【0050】
終了条件は、オイル回収運転の運転時間が所定時間を超える場合、又は各室内熱交換器22から各圧縮機34に向かう冷媒が湿り蒸気になっている場合に、満たされるように設定されている。このため、終了条件は、オイル回収運転の運転時間が所定時間を超える場合に対応する第1終了条件と、各室内熱交換器22から各圧縮機34に向かう冷媒が湿り蒸気になっている場合に対応する第2終了条件とを含んでいる。
【0051】
第1終了条件は、オイル回収運転の運転時間が所定運転時間以上であることである。オイル回収運転は暖房運転を中断して実行されるため、長時間にわたってオイル回収運転が実行されることは好ましくない。このため、暖房運転の中断時間に基づいて、第1終了条件が設定されている。制御装置6はオイル回収運転の運転時間を計測し、計測された運転時間が所定運転時間を超えていることを検出できる。
【0052】
第1終了条件は、式(3)に示されている。
オイル回収運転の運転時間≧所定運転時間・・・(3)
【0053】
第2終了条件は、各室内熱交換器22から各圧縮機34に向かう冷媒が湿り蒸気になっている場合に、満たされるように設定されている。上述したように、冷媒は湿り蒸気に近い過熱蒸気に保たれている。このため、室内及び室外の温度条件や各圧縮機34の回転数などの運転条件などにより、冷媒が湿り蒸気になる可能性がある。上述したように、冷媒が湿り蒸気になることは各圧縮機34に負荷を掛けるので、好ましくない。このため、第2終了条件が設定されている。冷媒が湿り蒸気であるか否かは、冷媒の過熱度に基づいて判断される。
【0054】
図1に示されるように、室外機3は、圧力センサ14及び第3温度センサ13を備えている。圧力センサ14及び第3温度センサ13は、ガス管45に沿って配置されている。圧力センサ14は、ガス管45内の圧力を検出する。第3温度センサ13は、ガス管45の温度を検出する。ガス管45は冷媒によって加熱されるので、ガス管45の温度はガス管45を流れる冷媒の温度に概ね等しいと考えられる。制御装置6は、冷媒の圧力及び温度に基づいて、その冷媒の過熱度を特定できる。
【0055】
第2終了条件は、式(4)に示されている。
冷媒の過熱度≦第1過熱度(第1温度条件) AND 第1温度条件が満たされた状態の継続時間≧第1継続時間
OR
冷媒の過熱度≦第2過熱度(第2温度条件) AND 第2温度条件が満たされた状態の継続時間≧第2継続時間・・・(4)
ここで、第1過熱度は第2過熱度よりも大きな値であり、第1継続時間は第2継続時間よりも長い時間である。
【0056】
第2終了条件は、例えば、冷媒の過熱度が第2過熱度以上且つ第1過熱度以下である状態が第1継続時間以上継続すると、満たされる。あるいは、冷媒の過熱度が第2過熱度以下である状態が第2継続時間以上継続すると、第2終了条件は満たされる。
【0057】
上述したように、冷媒の過熱度は、冷媒自体の温度検出ではなくガス管45の温度検出に基づいて検出される。冷媒の温度低下時期に対してガス管45の温度低下時期は遅れる。冷媒の温度の検出精度を向上させるために、第2終了条件は、上述した2段階の判定を含むように設定されている。
【0058】
ステップS6において終了条件が満たされている場合、処理がステップS7に移行し、さもなければ処理はステップS5に戻る。
【0059】
ステップS7において、制御装置6は、四方弁36を切り替えるための準備を冷媒回路5に指示する。ステップS7はステップS4と同様の工程である。
【0060】
処理はステップS7の次にステップS8に移行する。ステップS8において、制御装置6は、冷媒回路5に暖房運転を開始させる。各四方弁36に各室外回路要素30の流路を暖房流路に切り替えさせ、各室内膨張弁23の開度を最大開度にし、各室外膨張弁33の開度を暖房運転時の減圧開度にする。また、制御装置6は、今回の暖房運転がオイル回収運転の直前の暖房運転と同様になるように、各圧縮機34の回転数、各室内ファン21の回転数、各室外ファン31の回転数を制御する。
【0061】
上述したように、一部の室外機3の駆動が停止された状態で暖房運転が実行されている場合、制御装置6は、オイル回収運転において、停止中の室外機3を含む全室外機3を駆動させる。オイル回収運転の実行によって暖房運転の運転条件は変更されないので、オイル回収運転の終了後に暖房運転が再開されるとき、一部の室外機3の駆動が再び停止される。
【符号の説明】
【0062】
1 空調システム
2 室内機
3 室外機
5 冷媒回路
6 制御装置
20 室内回路要素
21 室内ファン
22 室内熱交換器
23 室内膨張弁
30 室外回路要素
31 室外ファン
32 室外熱交換器
33 室外膨張弁
34 圧縮機
36 四方弁(流路切換機構)
44 ガス管
45 ガス管
61 ガス連絡主管
62 ガス連絡室外管
63 ガス連絡室内管
64 ガス連絡室内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の室内機と複数の室外機とを備えている空調システムであって、
室内機は、室内熱交換器及び室内膨張弁を備える室内回路要素と、室内熱交換器に送風する室内ファンとを備えており、
室外機は、圧縮機、室外熱交換器、室外膨張弁、及び流路切換機構を備える室外回路要素と、室外熱交換器に送風する室外ファンとを備えており、
空調システムは、
1以上の室内回路要素のそれぞれに対して複数の室外回路要素を並列に接続することによって構成される冷媒回路と、
各圧縮機、各室内膨張弁、各室外膨張弁、各流路切換機構、各室内ファン、及び各室外ファンを制御する制御装置とを備えており、
制御装置は、各流路切換機構に各室外回路要素の流路を暖房流路又は冷房流路に切り換えさせることによって、冷媒回路に暖房運転又は冷房運転を実行させることができ、
制御装置は、暖房運転の実行中に所定の開始条件が満たされると冷媒回路にオイル回収運転を実行させ、オイル回収運転の実行中に所定の終了条件が満たされると冷媒回路に暖房運転を再開させ、
制御装置は、オイル回収運転において、
(a)各流路切換機構に各室外回路要素の流路を冷房流路に切り換えさせ、
(b)各室内ファンを停止させ、及び
(c)各室内膨張弁の開度、各圧縮機の回転数、及び各室外ファンの回転数をそれぞれ所定値に制御し、これらの所定値は各室内熱交換器から各圧縮機に向かう冷媒を湿り蒸気に近い過熱蒸気に保つように設定されている、空調システム。
【請求項2】
一部の室外機の駆動が停止された状態で暖房運転が実行されている場合、制御装置は、オイル回収運転において、停止中の室外機を含む全室外機を駆動させる、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
開始条件は、各室外機に存在しているオイルの量が所定量よりも低下している場合に満たされるように設定されており、
終了条件は、オイル回収運転の運転時間が所定時間を超える場合、又は各室内熱交換器から各圧縮機に向かう冷媒が湿り蒸気になっている場合に満たされるように設定されている、請求項1又は2に記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−44512(P2013−44512A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184942(P2011−184942)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】