説明

空調分析装置及び空調分析方法

【課題】簡易な構成でオフィスビル等の空調機器の省エネ化を図ることができる空調分析装置及びその方法を提供する。
【解決手段】空調分析装置10は、データ収集部15が建物の所定空間の空調制御の立ち上り期、通常期および立ち下げ期の各時間帯の空調量情報を収集し、記憶部16が空調量情報を複数運転日について記憶し、空調分析部17が空調量情報の所定データの最大値又は平均最大値を求めて各時間帯別に空調能力を示す空調能力分析結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機の省エネルギー化を可能とする空調分析装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機は、居室等の室内空間が所望の状態になるように居室内の冷却(冷房)、加熱(暖房)、加湿、除湿等を行う装置である。空調機によって消費される電力量を削減する行動、すなわち省エネルギー(以下、「省エネ」と称する場合がある)行動への取り組みが期待されている。
【0003】
省エネの方法は多様であるが、下記の特許文献1には、最大電力量が電力会社との契約電力を超えないように制御する、いわゆるデマンド制御に関し、デマンド要因を分析する方法において、測定対象電気機器をランク付けする方法が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、機器の動作を制御して省エネ化を図るもので、電動機によって駆動されるポンプによって、熱源機器から空調機に冷水又は温水を供給する装置において、空調機の負荷に応じて、電動機の回転を制御する装置が開示されている。また、下記の特許文献3には、熱需要量の変動と蓄積層の変動とを予測し、その予測に基づいて熱源機器の運転を制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−349519号公報
【特許文献2】特開2003−28488号公報
【特許文献3】特開平6−313605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は電力量が電力会社との契約を超えないように、又は契約電力量を小さくして費用削減を図るものに過ぎない。また、特許文献2は電動機の運転制御による省エネ化を図るものに過ぎない。また、特許文献3は熱供給プラントに関し、計画日当日の予想最高気温、予想最低気温や予想天気など予想気象情報や需要家の運転スケジュールや前日の最高気温や最低気温等の種々の情報を用い、計画日当日の1時間毎の予測熱需要量を算出し、かつ、1時間毎に見直すという複雑な構成であり、非常に複雑で都市のオフィスビル等の空調機を管理するビル管理に適用するのが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、簡易な方法でオフィスビル等の空調機器の省エネ化を図ることができる空調分析装置及び空調分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空調分析装置は、建物の所定空間の空調制御における立ち上り期、通常期および立ち下げ期の各時間帯の空調機器の空調量情報を収集するデータ収集部と、前記データ収集部からの空調量情報を複数運転日について記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶した複数の空調量情報の所定データの最大値又は平均最大値を求めて、前記各時間帯別に空調能力を示す空調能力分析結果を出力する空調分析部と、を有するものである。
【0009】
また、本発明の空調分析装置は、前記立ち上り期、前記通常期、又は前記立ち下げ期の各時間帯を変更可能な時間帯設定部を更に有するものである。
【0010】
また、本発明の空調分析装置は、さらに前記データ収集部は、前記所定空間における前記空調機器の設定温度と前記所定空間に設けられた温度センサからの検出温度とを室温情報として収集し、前記記憶部は、前記データ収集部からの室温情報と空調量情報とを関連付けて複数運転日について記憶し、前記空調分析部は、各時間帯別に室温情報が適正でないと判断した場合に、当該室温情報に関連付けられた空調量情報を除外して空調能力分析結果を出力するものである。
【0011】
また、本発明の空調分析装置は、さらに前記データ収集部は、前記所定空間に設けられた湿度センサからの検出湿度を湿度情報として更に収集し、前記記憶部は、前記データ収集部からの湿度情報と室温情報と空調量情報とを関連付けて複数運転日分記憶し、前記空調分析部は、各時間帯別に湿度情報又は温度情報が適正でないと判断した場合に、当該湿度情報及び当該室温情報に関連付けられた空調量情報を除外して空調能力分析結果を出力するものである。
【0012】
また、本発明の空調分析装置は、さらに前記空調機器はビル用マルチ方式であり、室外機と、前記室外機から媒体を介して熱エネルギー供給される複数の室内機と、前記室外機及び前記室内機を制御する空調機器制御部と、を有し、前記データ収集部は、前記空調機器制御部から空調量情報として空調負荷を収集し、前記空調分析部は、前記空調負荷に基づいて空調能力分析結果を出力するものである。
【0013】
また、本発明の空調分析装置は、さらに前記空調機器はセントラル方式であり、空調機本体と、前記空調機本体から媒体を介して熱エネルギーを前記所定空間に供給する複数の居室側アクセス機器と、前記空調機本体を制御する空調機器制御部と、を有し、前記データ収集部は、前記空調機器制御部から空調量情報として前記空調機器本体の媒体水量を制御する制御バルブ開放量または吹き出し風量を制御するインバータ消費電力量を収集し、前記空調分析部は、前記制御バルブ開放量または前記インバータ消費電力量から空調能力分析結果を出力するものである。
【0014】
本発明の空調分析方法は、建物の所定空間を空調する空調機器の空調制御の立ち上り期、通常期および立ち下げ期の各時間帯の空調量情報を複数運転日について収集し記憶し、記憶した複数の空調量情報の所定データの最大値又は平均最大値を求めて前記各時間帯別に必要な空調能力を示す空調能力分析結果を出力するものである。
【0015】
また、本発明の空調分析方法は、さらに空調量情報は時刻情報を有し、空調能力分析時に、前記立ち上り期、前記通常期、又は前記立ち下げ期の各時間帯を変更可能とするものである。
【0016】
また、本発明の空調分析方法は、さらに前記所定空間における前記空調機器の設定温度と温度センサからの検出温度とを室温情報として収集し、前記室温情報を空調量情報に関連付けて複数運転日について記憶し、空調能力の分析に際して各時間帯別に室温情報が適切でないと判断した場合は、当該室温情報に関連付けられた空調量情報を除外して空調能力分析結果を出力するものである。
【0017】
また、本発明の空調分析方法は、さらに前記所定空間における前記空調機器の設定湿度と湿度センサからの検出湿度とを湿度情報として更に収集し、湿度情報と室温情報と空調量情報とを関連付けて複数運転日について記憶し、空調能力の分析に際して各時間帯別に湿度情報又は室温情報が適正でないと判断した場合に、当該湿度情報及び当該室温情報に関連付けられた空調量情報を除外して空調能力分析結果を出力するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建物の所定空間を空調する空調機器の空調制御における立ち上り期、立ち上り後の通常期および立ち下げ期の各時間帯の空調機器の空調量情報を複数運転日について記憶し、複数の空調量情報の所定データの最大値又は平均最大値を求めて各時間帯別に必要な空調能力を示す空調能力分析結果を出力するので、少なくとも1日を3つの運転時間帯に分けて所定データの最大値又は平均最大値を求めるという簡易な分析方法により、各時間帯別に効率的に空調機器を稼働させることができ、省エネを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施形態に係る空調分析装置を示す説明図である。
【図2】空調負荷を示す説明図である。
【図3】1日の各時間帯を示す説明図である。
【図4】空調能力分析結果の表示例を示す説明図である。
【図5】空調分析装置の動作フロー説明図である。
【図6】室温/湿度情報による適否判断基準を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る空調分析装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る空調分析装置を示す説明図である。本実施形態に係る空調分析装置10は、空調コントローラ13を介して温度センサ11及び湿度センサ12からの温度/湿度情報を入力すると共に制御部14から空調量情報を入力するデータ収集部15と、データ収集部15からの情報を記憶する記憶部16と、記憶部16に記憶した情報から空調能力を分析する空調分析部17と、空調分析部17の分析結果を出力する分析結果出力部18と、空調分析のための期間及び時間帯を設定する設定部19とを備えている。
【0021】
居室20は利用者が利用する建物の空調空間としての部屋であり、例えば、オフィスビル等の執務室や会議室である。居室20には、利用者の出入口となる図示しない扉が設けられている。なお、居室20は、一つに限らず複数の部屋であっても良い。
【0022】
空調機器30はビル用マルチ方式であり、居室20内の冷房又は暖房等を行う。また、空調機器30は、温度センサ11、湿度センサ12、空調コントローラ13、制御部14、複数の室内機31、室外機32等を有している。室内機31は、例えば図示しないファンとコイル等を内蔵しており、ファンがコイルで冷却又は加熱された空気を居室20内に送り出すことにより、冷房又は暖房を行う。室外機32は室内機31に図示しない配管を介して熱エネルギーを伝達する冷媒を供給する。なお、居室20内には、一台の室内機31を設置しても良いし、複数台の室内機31を設置しても良い。また、室外機32が複数台あっても良い。
【0023】
また、室内機31は、居室20の壁面に設けられた空調コントローラ13に接続されており、この空調コントローラ13は居室20の利用者が操作可能であり、運転及び停止、居室20内の設定温度Tsetの調整、風向き及び風速等の調整を行うことができる。
【0024】
温度センサ11は居室20に設置され、居室20内の温度(以下、「室内温度Tin」と称する場合がある)を検出し、空調コントローラ13に出力する。また、湿度センサ12は居室20に設置され、居室20内の湿度(以下、「室内湿度Hin」と称する場合がる)を検出し、空調コントローラ13に出力する。
【0025】
空調コントローラ13は、室内温度Tinと設定温度Tsetとに差があると判断した場合、制御部14に温度差を補正するための温度差補正信号を出力する。また、空調コントローラ13は、室内湿度Hinと設定湿度Hsetとに差があると判断した場合、制御部14に湿度差を補正するための湿度差補正信号を出力する。また、空調コントローラ13は、設定温度Tsetと最新の室内温度Tinとを含む室温情報、設定湿度Hsetと最新の室内湿度Hinとを含む湿度情報を保持する。
【0026】
制御部14は、空調コントローラ13からの温度差/湿度差補正信号に基づき室内機31や室外機32等の空調機器30を制御する。図2は空調負荷を示す説明図であり、制御部14からの空調量情報より得られるもので、空調開始から終了までの空調負荷の推移を示す。図2において、横軸が時間軸T、縦軸が空調負荷Pであり、初期の温度差の大きい立ち上り期は負荷が急激に変化しピーク部が現れるが、その後の通常期の時間帯はほぼ平坦になり、立ち下げ期では多少の増減があるが次第に減少して停止時に負荷ゼロになる。なお、図2の縦軸は、ビル用マルチ方式では空調負荷としたが、セントラル方式では空調量情報として、熱量や媒体水量を制御する制御バルブ開放量や吹き出し風量を制御するインバータ消費電力量としても良い。
【0027】
例えば、制御部14は、冷房運転時において室内温度Tinが設定温度Tsetよりも高い場合、温度差補正信号に基づき空調機器30を制御して室内温度Tinを下げるようにする。また、制御部14は、暖房運転時において室内温度Tinが設定温度Tsetよりも低い場合、温度差補正信号に基づき空調機器30を制御して室内温度Tinを上げるようにする。また、制御部14による温度差/湿度差補正信号に基づく制御量(空調負荷)や、空調機器30の運転/停止の制御等に係る制御量(空調負荷)が空調量情報に含まれる。なお、空調量情報に室内機31や室外機32の消費電力量を含めても良い。
【0028】
図1において、データ収集部15は空調コントローラ13からの室温情報、湿度情報、制御部14からの空調量情報を受け、それらに日付及び時刻を含む時間情報を関連付けて記憶部16に記憶させる。なお、関連付ける方法としては、空調コントローラ13や制御部14がリアルタイムに最新の情報として保持する場合、データ収集部15がデータ収集した時点で時間情報を付加しても良いし、空調コントローラ13や制御部14がそれぞれの情報に時間情報を付加して保持する場合、データ収集部15が時間情報に基づきそれぞれを関連付けても良い。記憶部16は、データ収集部15からの室温情報、湿度情報、空調量情報等の情報を複数運転日について記憶する。
【0029】
空調分析部17は、記憶部16に記憶した複数の空調量情報に基づき、各時間帯別に必要な空調機器30の空調能力を示す空調能力分析結果を算出し、分析結果出力部18に出力する。
【0030】
分析結果出力部18は図示しないモニタやプリンタを有し、空調分析部17からの空調能力分析結果を表示または印刷する。管理者は表示または印刷された空調能力分析結果により、その時間帯に必要な空調能力と設定された空調能力との差異等を把握できる。
【0031】
したがって、管理者が空調機器30の空調能力が過大で余剰能力が生じている時間帯について、図示しないマンマシンインターフェースにより制御部14等を介して空調機器30の出力低減や一部運転停止など運転状態を制御することで必要な空調能力に調整し、余剰能力がない適正運転にすることで省エネ化を図ることができる。
【0032】
設定部19は空調分析部17に対し、立ち上り期、通常期、立ち下げ期の開始時刻や終了時刻を示す時間帯の設定と、何日から何日までの情報を用いるか分析期間を設定する。図3は1日の各時間帯を示す説明図である。図3において、空調開始時(T1)からピーク部で空調負荷が最大値となった後の第1所定時刻(T2)までが立ち上り期、第1所定時刻(T2)から第2所定時刻(T3)までが通常期、第2所定時刻(T3)から利用者が退室し稼働停止(T4)までが立ち下げ期である。例えばT1は始業時刻の8時30分頃である。また、例えばT2は1.5時間後の10時頃である。このT1〜T2の立ち上げ期の当初は、室内温度Tinと設定温度Tsetとの差が大きいため、空調負荷にピーク部が含まれる。また、例えばT3は定時時刻の17時頃であり、このT2〜T3の通常期は居室20の利用者の増減が少なく空調負荷が比較的安定する状態である。また、例えば、T4は定時後に残業の利用者が退室し稼働停止する時刻の21時頃であり、このT3〜T4の立ち下げ期は利用者の減少により時期によっては空調負荷に変動があるが次第に減少する。
【0033】
なお、本実施形態で説明した具体的時刻については、居室20の大きさや空調機器30の最大能力等の設備的条件や、始業/終業時刻や設定温度等の勤務的条件や季節等の影響を考慮して適宜変更することになろう。また、主に時刻設定を説明したが、空調開始から経過時間設定として各時間帯を決定しても良い。また、分析結果出力部18により表示される表示内容を参考にして時間帯を設定することもできる。
【0034】
空調分析装置10の動作を図により説明する。図4は空調能力分析結果の表示例を示す説明図であり、図5は空調分析装置の動作フロー説明図である。図4において、横軸が時間軸T、縦軸が空調負荷Pであり、100〜130はそれぞれ推移グラフであり、空調量情報に含まれる制御量により得られる空調負荷の推移を表す。なお、推移グラフ100〜130は連続した4日間の日別の推移グラフである。立ち上り期α、通常期βおよび立ち下げ期γの開始/終了時刻は、図3に示すT1〜T4に相当する。なお、立ち上げ期αは図示の通り凸状になった空調負荷のピーク部分を有する。
【0035】
また、αPmaxは立ち上り期αでの推移グラフ100〜130の空調負荷のうちの最大値、αPmavgは立ち上り期αでの推移グラフ100〜130の空調負荷のそれぞれの最大値を平均した平均最大値である。また、同様にβPmaxは通常期βでの空調負荷のうちの最大値、βPmavgは通常期βでの推移グラフ100〜130の空調負荷のそれぞれの最大値を平均した平均最大値である。また、同様にγPmaxは立ち下げ期γの空調負荷のうちの最大値、γPmaxは立ち下げ期γでの推移グラフ100〜130の空調負荷のそれぞれの最大値を平均した平均最大値である。
【0036】
まず、利用者による始業時の空調コントローラ13への運転開始操作又は自動起動設定により居室20の空調が開始されると、空調コントローラ13は、温度センサ11からの室内温度Tinと設定温度Tsetとを比較し、また、湿度センサ12からの室内湿度Hinと設定湿度Hsetとを比較し、それらの差異がそれぞれ所定値以上(例えば、温度差であれば0.5度、湿度差であれば1%)に大きいと判断した場合、温度差補正信号/湿度差補正信号を制御部14に出力する。
【0037】
また、空調コントローラ13は設定温度Tsetと温度センサ11からの最新の室内温度Tinと、設定湿度Hsetと湿度センサ12からの最新の室内湿度Hinとをそれぞれ室温情報、湿度情報として保持する。
【0038】
制御部14は、温度差補正信号/湿度差補正信号に基づき温度差/湿度差がなくなる方向に空調機器30の動作を制御する。図4のように、立ち上り期αの当初は温度差/湿度差ともに大きいため、制御部14の制御量は大きく、空調負荷Pは急激に大きな値になり、ピークを越えると低下して通常期β頃にはほぼ平坦になる。
【0039】
データ収集部15は、空調機器30から所望のデータを収集する。データ収集部15は、制御部14から空調負荷に係る制御量を含む空調量情報を収集し(ステップS01a)、収集時に日付及び時刻を含む時間情報を付加して記憶部16に出力する(ステップS02a)。また、データ収集部15は、制御部14からのデータ収集と同タイミングで空調コントローラ13から室温情報と湿度情報とを収集し(ステップS01b)、収集時に同様に時間情報を付加して記憶部16に出力する(ステップS02b)。なお、この2箇所からデータ収集する際に多少の時間差が生じても大きな問題にはならないが、本実施形態では収集開始時刻を一致させて関連付けるようにする。
【0040】
記憶部16は、データ収集部15から送出される各データを日別に纏めて記憶する(ステップS03)。また、記憶部16はデータ収集部15からの各データを同様に複数運転日について記憶する(ステップS04)。
【0041】
空調分析部17は、設定部19からの設定に基づき空調分析のための各時間帯の開始時刻及び終了時刻が決定され、また、何年何月何日から何年何月何日までが分析期間か決定されている。本実施形態では、時間帯は図3に示す通りとし、分析期間は上述の4日間とする。まず、空調分析部17は、記憶部16に記憶された各データについてデータの適否判定を行う(ステップS05)。すなわち、空調分析部17は、立ち上り期α、通常期β、立ち下げ期γの時間帯別に始めから終わりまで、室内温度Tinと設定温度Tsetとに所定値以上の差異(例えば3度)があった場合、又は室内湿度Hinと設定湿度Hsetとに所定値以上の差異があった場合(例えば10%)、不適正な情報として判断しその室温情報とその湿度情報とに関連付けられた空調量情報を除外する(ステップS06)。
【0042】
また、空調分析部17は、適正なデータと判定したものについて空調能力を分析する(ステップS07)。すなわち、空調分析部17は、4日間の制御量の時間帯別の最大値Pmax、時間帯別の最大値の4日間平均をとった平均最大値Pmavgを算出する。
【0043】
空調分析部17は、時間帯別に算出した最大値Pmax及び平均最大値Pmavg、空調負荷の推移グラフ100〜130を含めて、図4に示すような空調能力分析結果を分析結果出力部18に出力する(ステップS08)。
【0044】
分析結果出力部18は、モニタ等に当該算出結果を表示する(ステップS09)。なお、管理者は表示された空調能力分析結果から、空調機器30の時間帯別に必要な空調能力と設定された空調能力との差異を把握できるので、過剰能力にならないように、例えば室外機32の稼働レベルの低減や図示しない配管のバルブ開放量の調整等により供給する媒体量を調整し、室外機32から供給する媒体量に合わせて稼働する室内機31の台数等を調整して適切な空調能力に調整し、空調機器30を効率的に運転することで省エネ化を図ることができる。
【0045】
また、管理者は時間帯を変更することで空調能力のシミュレーションができ、空調機器30の運用管理の容易化も図れる。例えば、図4から分かるように通常期βの開始時刻を早めれば、通常期βの最大値βPmax、平均最大値βPmavgともに大きくなる。デマンド管理上や居室20の利用者の要望など様々な条件のもとで折り合いの付けられる運用管理のために大きな助力となる。なお、時間帯や分析期間の変更は設定部19を介し空調分析部17に日時等を入力して変更すれば良く、空調機器30の空調能力のシミュレーションが容易にできる。
【0046】
本実施形態の空調分析装置10では、4日間のデータを用いた空調能力分析結果の算出を例示したが、4日に限られたわけではなく、より多くの運転日のデータを用いても良い。例えば、上述の通り空調分析装置10のデータ収集部15がデータ収集し、記憶部16に5週間分(但し、週の実働5日とし休日出勤は除外する)の室温情報、湿度情報、空調量情報がカレンダーにリンクして記憶されたとする。その場合、空調分析部17が図4に示すような推移グラフが25個ある空調能力分析結果を出力することが容易に分かるであろう。なお、必ずしも日別にするものではなく、週別としても良い。例えば、5週間分のデータの場合、空調分析部17は、まず週毎に空調量情報の平均をとって5つの週別空調量情報とし、図4に示すような推移グラフを5つ有する空調能力分析結果を出力するようにしても良い。また、複数月分のデータを用い、月別空調量情報としても同様である。空調能力の調整を日別、週別又は月別するか等により適宜決めれば良い。
【0047】
また、本実施形態の空調分析装置10は、空調分析部17が室内温度Tinと設定温度Tsetとの差異が、または室内湿度Hinと設定湿度Hsetとの差異が各時間帯全般にわたり所定値以上の場合、当該室温情報と当該湿度情報とに関連付けられた空調量情報を用いないとしたが、それに限定されるものではない。例えば、図6はデータの適否判断のためのグラフであり、横軸は室内温度、縦軸は室内湿度、200〜202は空気線図グラフ、Cは適合範囲であり、この適合範囲C内に検出値(室内温度Tinと室内湿度Hin)が入らない場合は当該室温情報と当該湿度情報とに関連付けられた空調量情報を用いないようにしても良い。この適合範囲Cは、例えば、「建築物環境衛生管理基準」に適合するような条件のものを作成すれば良く、具体的には、ビル衛生環境基準値に定義される温度17度〜28度及び湿度40%RH〜70%RHの範囲としても良い。
【0048】
また、本実施形態の制御部14からの空調量情報は、空調負荷を表すものであれば良く、空調機器30の消費電力量又は使用熱量としても良い。
【0049】
また、本実施形態の空調分析装置10及びその方法は、ビル用マルチ方式について説明したが、いわゆるセントラル方式に適用できることは明らかである。空調機器30がセントラル方式の場合、例えば、室内機31を居室側アクセス機器、室外機32を空調機器本体と置き換えて考えれば良い。室内機31に代わる居室側アクセス機器は、例えば、空調機本体から送られる媒体が、冷媒水であれば室内機31と同様にコイルとファンとを用いた機器であり、暖房用蒸気や温水であればラジエータ等であり、冷風や温風であればダクトを介したその吹き出し口等が相当する。なお、空調機器30がセントラル方式の場合、空調分析装置10のデータ収集部15が収集する空調量情報には、室外機32に相当する空調機器本体からの媒体水量を制御する制御バルブ開放量または吹き出し風量を制御するインバータ消費電力量を含む情報を収集し、空調分析部17はそれら制御バルブ開放量またはインバータ消費電力量から同様に時間帯別に最大値又は平均最大値を算出して空調能力分析結果を出力すれば良い。
【0050】
なお、制御部14や空調分析部17は、例えばハードウェア資源とソフトウェア資源との協働により実現されても良い。具体的には、制御部14や空調分析部17のそれぞれの機能は、記憶媒体に記憶された制御プログラム及び演算プログラムがメインメモリに読み出されてCPU(Central Processing Unit)により実行されることによって実現される。制御プログラムや演算プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶され提供されることも可能であるし、データ通信として通信により提供されることも可能である。また、制御部14や空調分析部17は、ハードウェアで実現されても良い。また、制御部14や空調分析部17は、物理的に1つの装置により実現されても良いし、複数の装置により実現されても良い。
【0051】
本実施形態の空調分析装置10及びその方法によれば、建物の所定空間の空調制御における立ち上り期、立ち上り後の通常期および立ち下げ期の各時間帯の空調機器の空調量情報を収集するデータ収集部15、データ収集部15からの空調量情報を複数運転日について記憶する記憶部16、空調量情報に含まれる所定データから最大値又は平均最大値を求めて空調能力を対応させるための空調能力分析結果を出力する空調分析部17を備えたので、各時間帯の空調負荷に対応させて空調機器30の空調能力を設定して運転させることが可能となり、簡単な構成でオフィスビル等の空調機器30の省エネ化を図ることができる。
【0052】
さらに、空調分析装置10及びその方法は、立ち上り期α、通常期β又は立ち下げ期γの開始時刻及び終了時刻を変更可能な設定部19を有するので、各時間帯の区分けの見直しや空調能力の微細な調整をすることができる。
【0053】
さらに、空調分析装置10及びその方法は、設定温度と検出温度とを含む室温情報と空調量情報とを関連付けて複数運転日について記憶し、各時間帯別に室温情報が適正でないと判断した場合に当該室温情報と関連付けられた空調量情報を除外するので、例えば、利用者が不快に感じるような状態を除いた適切な空調制御が可能な空調能力分析結果を算出できる。
【0054】
さらに、空調分析装置10及びその方法は、設定湿度と検出湿度とを含む湿度情報と室温情報と空調量情報とを関連付けて複数運転日分記憶し、各時間帯別に湿度情報又は室温情報が適正でないと判断した場合に当該湿度情報及び当該室温情報と関連付けられた空調量情報を除外するので、例えば、利用者が不快に感じるような状態を除いた適切な空調制御が可能な空調能力分析結果を算出できる。
【0055】
さらに、空調分析装置10及びその方法は、空調機器30がビル用マルチ方式で、室外機32及び室内機31を制御する制御部14から空調量情報として空調負荷である制御量を収集し、空調能力分析結果を出力するので、同様に簡易な構成でオフィスビル等のビル用マルチ方式の空調機器30の省エネ化を図ることができる。
【0056】
さらに、空調分析装置10及びその方法は、空調機器30がセントラル方式であっても、室外機32に相当する空調機器本体及び室内機31に相当する居室側アクセス機器を制御する制御部14から空調量情報として、室外機32に相当する空調機器本体からの媒体水量を制御する制御バルブ開放量または吹き出し風量を制御するインバータ消費電力量を含む情報を収集し、空調能力分析結果を出力するので、同様に簡易な構成でオフィスビル等のセントラル方式の空調機器であっても省エネ化を図ることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 空調分析装置、11 温度センサ、12 湿度センサ、13 空調コントローラ、14 制御部、15 データ収集部、16 記憶部、17 空調分析部、18 分析結果出力部、19 設定部、20 居室、30 空調機器、31 室内機、32 室外機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の所定空間の空調制御における立ち上り期、通常期および立ち下げ期の各時間帯の空調機器の空調量情報を収集するデータ収集部と、
前記データ収集部からの空調量情報を複数運転日について記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶した複数の空調量情報の所定データの最大値又は平均最大値を求めて、前記各時間帯別に空調能力を示す空調能力分析結果を出力する空調分析部と、
を有することを特徴とする空調分析装置。
【請求項2】
前記立ち上り期、前記通常期、又は前記立ち下げ期の各時間帯を変更可能な時間帯設定部を更に有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空調分析装置。
【請求項3】
前記データ収集部は、前記所定空間における前記空調機器の設定温度と前記所定空間に設けられた温度センサからの検出温度とを室温情報として収集し、
前記記憶部は、前記データ収集部からの室温情報と空調量情報とを関連付けて複数運転日について記憶し、
前記空調分析部は、各時間帯別に室温情報が適正でないと判断した場合に、当該室温情報に関連付けられた空調量情報を除外して空調能力分析結果を出力する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調分析装置。
【請求項4】
前記データ収集部は、前記所定空間に設けられた湿度センサからの検出湿度を湿度情報として更に収集し、
前記記憶部は、前記データ収集部からの湿度情報と室温情報と空調量情報とを関連付けて複数運転日分記憶し、
前記空調分析部は、各時間帯別に湿度情報又は温度情報が適正でないと判断した場合に、当該湿度情報及び当該室温情報に関連付けられた空調量情報を除外して空調能力分析結果を出力する、
ことを特徴とする請求項3に記載の空調分析装置。
【請求項5】
前記空調機器はビル用マルチ方式であり、室外機と、前記室外機から媒体を介して熱エネルギー供給される複数の室内機と、前記室外機及び前記室内機を制御する空調機器制御部と、を有し、
前記データ収集部は、前記空調機器制御部から空調量情報として空調負荷を収集し、
前記空調分析部は、前記空調負荷に基づいて空調能力分析結果を出力する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空調分析装置。
【請求項6】
前記空調機器はセントラル方式であり、空調機本体と、前記空調機本体から媒体を介して熱エネルギーを前記所定空間に供給する複数の居室側アクセス機器と、前記空調機本体を制御する空調機器制御部と、を有し、
前記データ収集部は、前記空調機器制御部から空調量情報として前記空調機器本体の媒体水量を制御する制御バルブ開放量または吹き出し風量を制御するインバータ消費電力量を収集し、
前記空調分析部は、前記制御バルブ開放量または前記インバータ消費電力量から空調能力分析結果を出力する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空調分析装置。
【請求項7】
建物の所定空間を空調する空調機器の空調制御の立ち上り期、通常期および立ち下げ期の各時間帯の空調量情報を複数運転日について収集し記憶し、
記憶した複数の空調量情報の所定データの最大値又は平均最大値を求めて前記各時間帯別に必要な空調能力を示す空調能力分析結果を出力する、
ことを特徴とする空調分析方法。
【請求項8】
空調量情報は時刻情報を有し、空調能力分析時に、前記立ち上り期、前記通常期、又は前記立ち下げ期の各時間帯を変更可能とする、
ことを特徴とする請求項7に記載の空調分析方法。
【請求項9】
前記所定空間における前記空調機器の設定温度と温度センサからの検出温度とを室温情報として収集し、
前記室温情報を空調量情報に関連付けて複数運転日について記憶し、
空調能力の分析に際して各時間帯別に室温情報が適正でないと判断した場合は、当該室温情報に関連付けられた空調量情報を除外して空調能力分析結果を出力する、
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の空調分析方法。
【請求項10】
前記所定空間における前記空調機器の設定湿度と湿度センサからの検出湿度とを湿度情報として更に収集し、
湿度情報と室温情報と空調量情報とを関連付けて複数運転日について記憶し、
空調能力の分析に際して各時間帯別に湿度情報又は室温情報が適正でないと判断した場合に、当該湿度情報及び当該室温情報に関連付けられた空調量情報を除外して空調能力分析結果を出力する、
ことを特徴とする請求項9に記載の空調分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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