説明

空調制御装置

【課題】より省燃費性能を高めることができる空調制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明による空調制御装置1は、車両の交通情報を取得する取得手段30と、交通情報から車両の停車開始時間ts及び停車終了時間teを予測する予測手段8aと、空調装置1を停車開始時間tsから停車終了時間teまでの停車時間ts〜te以前又は以降を主として動作させる空調制御手段8bと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の温度を適温に保ち乗員の快適性を確保するとともに、エネルギー効率を高めることができる空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の省燃費性能を高める目的で、車両が減速する場合の減速に伴うエネルギーを積極的に利用する、例えば特許文献1に記載されているような、空調制御装置が提案されている。特許文献1に記載の空調制御装置においては、エンジンの回転数が減少する際に、エンジンの動力により駆動されるコンプレッサの吐き出し容量を増加させ、車室内空気循環用のファンの回転数を増加させることにより、車両の減速エネルギーを活用して空調装置を動作させて、停止後においてはなるべくコンプレッサを動作させないこととして、アイドリング状態におけるエンジンの回転数をなるべく低減することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−231097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本来車両が停車している停車状態においては、エンジンのアイドリング状態における回転数をなるべく抑制するために、負荷増大の原因となるコンプレッサを含む空調装置を動作させないことが好ましい。ところが、特許文献1に記載されているような空調制御装置においては、車両が実際に停車するか否かと停車時間がどの程度であるかを事前に予測することなく空調装置の動作を制御しているため、停車状態において空調装置を動作させることを確実に回避することができず、より省燃費性能を高めることが達成できないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、より省燃費性能を高めることができる空調制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明による空調制御装置は、
車両の周辺の交通情報を取得する取得手段と、前記交通情報から前記車両の停車開始時間及び停車終了時間を予測する予測手段と、空調装置を前記停車開始時間から前記停車終了時間までの停車時間以前又は以降を主として動作させる空調制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
ここで、前記取得手段は、路車間通信を利用するものであっても、カーナビゲーションシステムを利用するものであっても、車車間通信を利用するものであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より省燃費性能を高めることができる空調制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る空調制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る空調制御装置が適用される道路の態様を示す模式図である。
【図3】本発明に係る空調制御装置の一実施形態の制御内容を示す模式図である。
【図4】本発明に係る空調制御装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る空調制御装置の一実施形態の制御内容を示す模式図である。
【図6】本発明に係る空調制御装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明に係る空調制御装置の制御対象となる空調装置の一実施形態を示す模式図である。図2は、本発明に係る空調制御装置が適用される道路の路側機の態様を示す模式図である。図3は、本発明に係る空調制御装置の制御内容を車速とともに示す模式図である。
【0012】
図1に示すように、空調装置1は、コンプレッサ2、コンデンサ3、レシーバ4、膨張弁5、エバポレータ6を含み、これらの構成要素を相互に連結して冷媒を循環させる冷媒配管7と、これらの構成要素を適宜制御するエアコンECU8(Electronic Control Unit)を含んで構成される。エアコンECU8は本発明の空調制御装置を構成する。
【0013】
エアコンECU8は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行うことにより、予測手段8a、空調制御手段8b、設定手段8c、判定手段8d、制限手段8e、報知手段8fとして機能するものである。
【0014】
コンプレッサ2は例えばレシプロ式又はスクロール式のものが用いられ、入力軸がクラッチ9を介してプーリ10に選択的に接続遮断可能に連結され、プーリ10はベルト11を介してエンジン12のクランクシャフト側のプーリ13に駆動結合される。
【0015】
エンジン12は、エンジンECU14(Electronic Control Unit)により適宜制御される。エンジン12は吸気管15を備え、吸気管15の途中にはスロットルバルブ16が備えられる。吸気管15のスロットルバルブ16が備えられる位置には、スロットルバルブ16の上流側と下流側をバイパスするバイパス通路17が備えられ、バイパス通路17にはアイドルスピードコントロールバルブ18が備えられる。エンジンECU14と、エアコンECU8はCAN(Controller Area Network)等の通信規格により接続される。
【0016】
コンプレッサ2にはロックセンサ19が備えられ、ロックセンサ19は検出したロック状態をエアコンECU8に出力する。コンデンサ3には外気温センサ20が備えられ、外気温センサ20は検出した外気温TacをエアコンECU8に出力する。
【0017】
コンデンサ3と膨張弁5との間の冷媒配管7には圧力センサ21が備えられ、圧力センサ21は検出した冷媒の圧力PhをエアコンECU8に出力する。車室内には車室内温度THRを検出する温度センサ22が備えられ、温度センサ22は検出した車室内温度THRをエアコンECU8に出力する。
【0018】
車室内のセンターコンソール近傍には、エアコンスイッチ23が備えられており、エアコンスイッチ23が運転者によりオンとされると、オン信号ACSWがエアコンECU8に出力される。車両の従動輪には車速Vを検出する車速センサ24が備えられており、検出された車速Vは、エアコンECU8とエンジンECU14の双方に出力される。
【0019】
スロットルバルブ16の揺動軸近傍には、スロットルバルブ16が全閉であるか否かを検出するアイドルスイッチ25が備えられており、全閉である場合には全閉状態信号ISWがエンジンECU14に出力される。スロットルバルブ16の上流側には、例えばスロットル開度VTAを検出するスロットル開度センサ26が備えられており、検出したスロットル開度VTAはエンジンECU14に出力される。
【0020】
エンジン12には、図示しないエンジンブロックのウォータージャケット内の冷却水の水温Thwを検出する水温センサ27が備えられており、検出された水温ThwはエンジンECU14に出力される。エンジン12の、図示しないクランクシャフト近傍にはエンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ28が備えられており、検出されたエンジン回転数Neは、エンジンECU14とエアコンECU8の双方に出力される。
【0021】
エンジンECU14は、上述したように入力される各種信号に基づいて、燃料噴射信号FO、点火信号IG、アイドルスピードコントロールバルブ制御信号PMT、スロットルバルブ16の図示しないアクチュエータ制御信号、クラッチオン信号ONCLを適宜出力する。
【0022】
エアコンECU8にはディスプレイ及びタッチパネルを含む操作パネル29が接続されており、エアコンECU8の設定手段8cは、運転者が操作パネル29より選択した通常設定温度Tnに対して、エアコンECU8は、予め定められた不感帯ΔTの半分である1/2ΔT高い通常設定温度上限Tnmaxと、1/2ΔT低い通常設定温度下限Tnminとを演算して求める。
【0023】
エアコンECU8の空調制御手段8bは、ロックセンサ19によりコンプレッサ2のロック状態が検出されない場合で、検出された車室内温度THRが通常設定温度上限Tnmaxを超過すると、クラッチ接続要求信号SCLをエンジンECU14に対して出力し、エンジンECU14はクラッチ接続要求信号SCLの入力に基づいて、クラッチ9にクラッチオン信号ONCLを出力し、クラッチ9が接続されて、エンジン12の駆動力がコンプレッサ2の入力軸に伝達されて、コンプレッサ2が駆動される。
【0024】
コンプレッサ2が駆動されると、コンプレッサ2の入力側の冷媒配管7の低温低圧の冷媒が圧縮されて高温高圧となり、高温高圧の冷媒はコンデンサ3において凝縮されて外気に対して放熱し、凝縮されて常温高圧となった冷媒はレシーバ4において液体成分が分離されて、膨張弁5において膨張された低圧低温の霧状となった冷媒はエバポレータ6に送り込まれて、エバポレータ6において冷媒は気化されて、車室内送風用の空気流から熱を冷媒が奪って吸熱して、車室内の冷却が行われる。
【0025】
車室内の冷却が継続的に実行されて、車室内温度THRが通常設定温度下限Tnminを下回った場合には、エアコンECU8の空調制御手段8bは、クラッチ接続要求信号SCLを出力することを停止して、これに伴い、エンジンECU14は、クラッチ9にクラッチオン信号ONCLを出力することを停止する。これにより、クラッチ9は遮断されて、エンジン12の駆動力はコンプレッサ2の入力軸に伝達されず、コンプレッサ2は停止される。以上が、通常時の冷却制御である。
【0026】
本実施例1においてはさらに、エアコンECU8には車両側の路車間通信装置30がCAN(Controller Area Network)等の通信規格により接続される。車両側の路車間通信装置30は、図示しない送信機及び受信機それらを制御するマイクロコンピュータを含み、スペクトラム拡散方式等の適宜の手法を用いた無線による路車間通信を実現して取得手段を構成するものである。図2に示す路側機31には路側の路車間通信装置32は設置される。路車間通信装置32も、図示しない送信機及び受信機それらを制御するマイクロコンピュータを含み、スペクトラム拡散方式を用いた無線による路車間通信を実現するものである。
【0027】
路側機31の路車間通信装置32は同じく路側に設置される図示しないセンタ等から有線又は無線により、車両が走行している道路の交通情報を適宜のタイミングで取得する。交通情報とは、例えば、前方の交差点の信号機の灯色、灯色の変化時間、変化周期、変化時間までの残時間、前方の交差点の一時停止線の位置、横断歩道の位置、一時停止線の位置、渋滞情報等を含むものとする。車両側の路車間通信装置30は路車間通信により路側機31の路車間通信装置32から、交通情報を取得する。
【0028】
エアコンECU8の予測手段8aは、車両側の路車間通信装置30の取得した交通情報と車両の車速V及び予め定められる減速度から、図3上段に示すような、車両が減速を開始する減速開始時間tb1、前方の交差点や横断歩道、一時停止線等における停止開始時間ts、停止終了時間teを予測する。
【0029】
さらに、エアコンECU8の判定手段8dは、図3下段に示すような、停車開始時間tsより前の減速開始時間tb1における車両の車室内温度THR(tb1)と、減速開始時間tb1から停車終了時間teまでの第一残時間te−tb1と車両の車室内温度の上昇特性k1に基づいて、車両の停車終了時間teにおける車室内温度THR(te)=THR(tb1)+k1・(te−tb1)が通常設定温度上限Tnmaxより高くなるか否かを判定する。
【0030】
加えて、エアコンECU8の設定手段8cは、第一残時間te−tb1と車両の車室内温度の上昇特性k1と通常設定温度上限Tnmaxに基づいて、図3下段に示すような減速開始時間tb1以降の空調装置1の動作における第一目標温度Te1を設定する。具体的には第一目標温度Te1は、第一残時間te−tb1に上昇特性k1を乗じた温度上昇値k1・(te−tb1)を、通常設定温度上限Tnmaxから減じた値Tnmax−k1・(te−tb1)とする。
【0031】
車両の停車終了時間teにおける車室内温度THR(te)=THR(tb1)+k1・(te−tb1)が通常設定温度上限Tnmaxより高くなり、エアコンECU8の判定手段8dが肯定と判定した場合に、エアコンECU8の空調制御手段8bは、減速開始時間tb1以降に空調装置1を動作させるべく、クラッチ接続要求信号SCLを車室内温度THRが第一目標温度Te1まで低下するまでの間継続してエンジンECU14に対して出力し、エンジンECU14はクラッチ接続要求信号SCLの入力に基づいて、クラッチ9にクラッチオン信号ONCLを出力しクラッチ9が接続されて、エンジン12の駆動力がコンプレッサ2の入力軸に伝達されコンプレッサ2が駆動されて、先取り冷却が実行される。
【0032】
なお、本実施例1においては、エアコンECU8の制限手段8eは、操作パネル29の運転者による許可操作が実行された場合には、減速開始時間tb1以降の空調装置1の先取り冷却動作の実行を許可し、許可操作が実行されない場合には減速開始時間tb1以降の空調装置1の先取り冷却動作の実行を禁止し、操作パネル29において運転者が低下許容値αを選択している場合には、第一目標温度Te1を通常設定温度下限Tnminから低下許容値α内に制限して足切りを行うこととしている。
【0033】
以下に以上述べたエアコンECU8の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図4は、本発明に係わる空調制御装置を構成するエアコンECU8の制御内容を示すフローチャートである。
【0034】
図4のステップS1において、エアコンECU8の報知手段8fは、操作パネル29により、運転者に対して通常設定温度Tnの選択と、低下許容値αの選択を促す選択画面を表示し、運転者が通常設定温度Tnと、低下許容値αを選択する選択操作を行うと、エアコンECU8の設定手段8cは、通常設定温度Tnと不感帯ΔTに基づいて、通常設定温度上限Tnmaxと通常設定温度下限Tnminを設定し、低下許容値αを制御値として設定する。
【0035】
ステップS2において、路車間通信装置30は路側機31の路車間通信装置32から交通情報を取得し、エアコンECU8の予測手段8aは路車間通信装置30から交通情報を受信して、ステップS3において、交通情報から、車両の減速開始時間tb1、停車開始時間ts、停車終了時間teを予測して、車両が走行中の車線前方の交差点等に停止することが見込まれるか否かを判定し、肯定である場合にはステップS4にすすみ、否定である場合には、ステップS10にすすむ。
【0036】
ステップS4において、エアコンECU8の判定手段8dは、停車中の停車終了時間teにおける車室内温度THR=THR(tb1)+k1・(te−tb1)を推定して、ステップS5において、車室内温度THRが通常設定温度上限Tnmaxを超えるか否かを判定し、肯定であればステップS6にすすみ、否定であればステップS10にすすむ。
【0037】
ステップS6において、エアコンECU8の設定手段8cは、第一目標温度Te1=Tnmax−k1・(te−tb1)つまり先取り冷却目標温度を設定する。また、ステップS6において、エアコンECU8の制限手段8eは、操作パネル29の運転者による許可操作が実行された場合には、減速開始時間tb1以降の空調装置1の動作の実行を許可し、許可操作が実行されない場合には減速開始時間tb1以降の空調装置1の動作の実行を禁止し、操作パネル29において運転者が低下許容値αを選択している場合には、第一目標温度Te1を通常設定温度下限Tnminから低下許容値α内に制限する。
【0038】
ステップS7において、エアコンECU8の判定手段8dは、車速Vから車両が停車中であるか否かを判定し、肯定であればステップS10にすすみ、否定であれば、ステップS8にすすむ。
【0039】
ステップS8において、エアコンECU8の空調制御手段8bは、空調装置1を動作させるために、クラッチ接続要求信号SCLをエンジンECU14に対して出力する。エンジンECU14はクラッチ接続要求信号SCLの入力に基づいて、クラッチ9にクラッチオン信号ONCLを出力し、クラッチ9が接続されて、エンジン12の駆動力がコンプレッサ2の入力軸に伝達されて、コンプレッサ2が駆動されて、先取り冷却が実行される。
【0040】
ステップS9において、エアコンECU8の空調制御手段8bは、車室内温度THRが第一目標温度Te1まで低下して到達したか否かを判定して、肯定であればステップS10にすすみ、否定であれば、ステップS7に戻る。
【0041】
ステップS10において、エアコンECU8の空調制御手段8bは、空調装置1の動作を終了させるために、クラッチ接続要求信号SCLをエンジンECU14に対して出力することを停止する。エンジンECU14はクラッチ接続要求信号SCLの入力の終了に基づいて、クラッチ9にクラッチオン信号ONCLの出力を停止して、クラッチ9が遮断されて、エンジン12の駆動力はコンプレッサ2の入力軸に伝達されなくなり、コンプレッサ2が停止されて、先取り冷却が終了される。
【0042】
これらの制御内容により実現される本実施例1の空調制御装置によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、特許文献1に記載された従来技術においては、図3中中段で示すように、減速開始時間tb1から冷却を開始するとともに、通常設定温度下限Tnmaxを引き下げることにより停車時間ts〜teのほぼ全てにおいてコンプレッサ2がエンジン12の動力を使用する問題が生じるが、本実施例1においてはこの問題を解決することができる。
【0043】
すなわち、図3下段で示すように、予測された停車時間ts〜teより前の予め予測される減速開始時間tb1から空調装置1を動作させて先取り冷却を行うので、空調装置1の動作時間をなるべく短くすることができる。つまり、停車時間ts〜te中において、車両のエンジン12のエネルギーをなるべく空調装置1が使用しないこととすることができるので、車両の省燃費性能をより高めることができる。
【0044】
さらに、本実施例1においては、通常設定温度上限Tnmax及び通常設定温度下限Tnminを設定する設定手段8cを含み、停車開始時間tsより前の減速開始時間tb1における車両の車室内温度THR(tb1)と、減速開始時間tb1から停車終了時間teまでの第一残時間te−tb1と車両の車室内温度の上昇特性k1に基づいて、車両の停車終了時間teにおける車室内温度THR(te)が通常設定温度上限Tnmaxを加えた値より高くなるか否かを判定する判定手段8dを含みこととしている。さらに、判定手段8dが肯定と判定する場合に、空調制御手段8bが、減速開始時間tb1以降に空調装置1を動作させるので、以下のような作用効果を得ることができる。
【0045】
つまり、予め減速開始時間tb1以降に空調装置1を動作させることにより、停車時間ts〜teにおいて空調装置1を動作させない場合に、停車終了時間teにおいても車室内温度THRが通常設定温度上限Tnmaxを超えないこととすることができる。これとともに、停車時間ts〜teにおいてなるべく空調装置1を動作させないこととして、車両のエンジン12のエネルギーをなるべく空調装置1が使用しないこととすることができるので、車両の省燃費性能をより高めることができる。また、車両の減速エネルギーをなるべく有効活用して空調装置1を動作させることができる。
【0046】
加えて、本実施例1の空調制御装置においては、設定手段8cが、第一残時間te−tb1と車両の車室内温度THRの上昇特性k1と通常設定温度上限Tnmaxに基づいて、減速開始時間ts以降の空調装置1の動作における第一目標温度Te1を設定することとし、第一目標温度Te1は、第一残時間te−tb1に上昇特性k1を乗じた又は、第一残時間te−tb1において上昇特性k1を積分して得られた温度上昇値k1・(te−tb1)を、通常設定温度上限Tnmaxから減じた値としているので、さらに以下のような作用効果を得ることができる。
【0047】
すなわち、停車時間ts〜teにおいて空調装置1を動作させない場合に、停車終了時間teにおいても車室内温度THRが通常設定温度上限Tnmaxを超えないこととするために、予め減速開始時間tb1以降に空調装置1を動作させるにあたって必要最低限の第一目標温度Te1を、減速開始時間tb1の車室内温度THR(tb1)により近い値として設定することができる。これにより、まず先取り冷却における過冷却を防止することができ、運転者が意図しない寒さを感じることを防止することができる。
【0048】
加えて、停車時間ts〜teに対して空調装置1を動作させて先取り冷却を開始した後、第一目標温度Te1を極力高い温度とすることで、空調装置1の動作の終了までの時間を極力短くして、停車時間ts〜teにおいて、車両のエンジン12のエネルギーをなるべく空調装置1が使用しないこととすることができるので、車両の省燃費性能をより高めることができる。
【0049】
なお、本実施例1の空調制御装置においては、減速開始時間ts以降の空調装置1の動作の実行を運転者が許可又は第一目標温度Te1を通常設定温度下限Tnminから低下許容値α内に制限可能な制限手段8eを含むこととしているので、更に以下のような作用効果を得ることができる。
【0050】
つまり、空調装置1の動作を実行する前に予め先取り冷却を許可するか否か、又は先取り冷却による車室内温度THRの低下量を低下許容値α以下とするか否かの運転者の意思を確認して、運転者に先取り冷却の許可、禁止、先取り冷却による車室内温度THRの低下量の制限の選択肢を付与して、より運転者の意思を尊重した空調装置1の先取り冷却制御を実行することができる。
【0051】
なお、本実施例1の空調制御装置において、第一目標温度Te1が通常設定温度下限Tnmin未満となる場合に、エアコンECU8の空調制御手段8bが減速開始時間ts以降に空調装置1を動作させる前に、車両の運転者に対して減速開始時間ts以降の空調装置1の先取り冷却動作を実行することを操作パネル29のマーク表示により報知する報知手段8fを含むこととすることもできる。これによれば、さらに以下のような作用効果を得ることができる。
【0052】
すなわち、第一目標温度Te1が通常設定温度下限Tnmin未満となり、運転者が意図しない寒さを感じるおそれがある場合のみ、予め運転者に対して報知手段8fが先取り冷却制御の実行を報知することができるので、運転者に煩わしさを感じさせることなく、報知に基づいて、運転者は空調装置1の先取り冷却制御の実行に対して、許可、禁止、制限を行うことができる。
【0053】
なお、上述した実施例1においては、停車時間ts〜teに対して空調装置1のコンプレッサ2を先取りして動作させて、先取り冷却を実行することとしたが、後出しでコンプレッサ2を動作させて、後出し冷却を行うこともできる。以下これについての実施例2について述べる。
【実施例2】
【0054】
図1は、本発明に係る空調制御装置の制御対象となる空調装置の一実施形態を示す模式図である。図2は、本発明に係る空調制御装置が適用される道路の路側機の態様を示す模式図である。図5は、本発明に係る空調制御装置の制御内容を車速とともに示す模式図である。
【0055】
本実施例2においても図1に示すように、空調装置1は、コンプレッサ2、コンデンサ3、レシーバ4、膨張弁5、エバポレータ6を含み、これらの構成要素を相互に連結する冷媒配管7と、これらの構成要素を適宜制御するエアコンECU8を含んで構成される。エアコンECU8は本発明の空調制御装置を構成する。
【0056】
エアコンECU8は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行うことにより、予測手段8a、空調制御手段8b、設定手段8c、判定手段8dとして機能するものである。なお、空調装置1を構成する他の構成要素及びエンジン12に関連する構成要素は実施例1に示したものと同様であるため、重複する説明は割愛する。
【0057】
本実施例2においては、エアコンECU8の設定手段8cは、運転者が操作パネル29により選択した通常設定温度Tnと上昇許容値βに基づいて、通常設定温度上限Tnmax及び通常設定温度下限Tnminを設定し、図5に示す停車時間ts〜teにおける上昇許容値βを制御値として設定する。
【0058】
エアコンECU8の判定手段8dは、停車時間ts〜teに含まれる停車中の所定時間tp(>ts)における車両の車室内温度THR(tp)と、所定時間tpから停車終了時間teまでの第二残時間te−tpと車両の車室内温度THRの上昇特性k1に基づいて、車両の停車終了時間teにおける車室内温度THR(te)が通常設定温度上限Tnmaxに上昇許容値βを加えた値である、許容設定温度上限Tnmax+βより高くなるか否かを判定する。
【0059】
エアコンECU8の判定手段8dが肯定と判定する場合に、空調制御手段8bが、車室内温度THRが通常設定温度上限Tnmaxに上昇許容値βを加えた値Tnmax+βより高くなる超過時間to以降に空調装置1を動作させる。さらに、エアコンECU8の設定手段8cは、車両の車室内温度THRの上昇特性k1と通常設定温度上限Tnmax、上昇許容値β、空調装置1による車室内温度THRの低下特性k2に基づいて、超過時間to以降の空調装置1の動作における第二目標温度Te2を設定する。
【0060】
ここで、第二目標温度Te2は、図5に示す横軸を時間軸、縦軸を車室内温度THRとするグラフ上において、座標(to、Tnmax+β)から低下特性k2で右肩下がりに低下する第一曲線と、座標(te、Tnmaxβ+β)から上昇特性k1で左肩下がりに低下する第二曲線との交点の縦軸上の座標値とする。
【0061】
以下に以上述べたエアコンECU8の制御内容を、フローチャートを用いて説明する。図6は、本発明に係わる空調制御装置を構成するエアコンECU8の制御内容を示すフローチャートである。
【0062】
図6のステップS11において、操作パネル29により運転者が選択した、通常設定温度Tnと、上昇許容値βを制御値として設定する。
【0063】
ステップS12において、路車間通信装置30は路側機31の路車間通信装置32から交通情報を取得し、エアコンECU8の予測手段8aは路車間通信装置30から交通情報を受信して、ステップS13において、交通情報と車速Vから、車両が交差点等に停止中であるか否かを判定し、肯定である場合にはステップS14にすすみ、否定である場合には、ステップS20にすすむ。
【0064】
ステップS14において、エアコンECU8の判定手段8dは、停車中の停車終了時間teにおける車室内温度THR(te)=THR(tp)+k1・(te−tp)を推定して、車室内温度THR(te)が通常設定温度上限Tnmaxを超えるか否かを判定し、肯定であればステップS15にすすみ、否定であればステップS13の手前に戻る。
【0065】
ステップS15において、エアコンECU8の判定手段8dは、停車中の停車終了時間teにおける車室内温度THR(te)=THR(tp)+k1・(te−tp)を推定して、ステップS16において、車室内温度THR(te)が許容設定温度上限Tnmax+βを超えるか否かを判定し、肯定であればステップS17にすすみ、否定であればステップS18にすすむ。
【0066】
ステップS17において、エアコンECU8の設定手段8cは、第二目標温度Te2=を図5に示したグラフ上の交点を演算することにより設定して、車室内温度THRが第二目標温度Te2に到達するまで、空調装置1を動作させるために、クラッチ接続要求信号SCLをエンジンECU14に対して出力する。エンジンECU14はクラッチ接続要求信号SCLの入力に基づいて、クラッチ9にクラッチオン信号ONCLを出力し、クラッチ9が接続されて、エンジン12の駆動力がコンプレッサ2の入力軸に伝達されて、コンプレッサ2が駆動されて、後出し冷却に先行する短時間の冷却が実行される。ステップS17が終了すると、ステップS16の手前に戻る。
【0067】
ステップS18において、エアコンECU8の判定手段8dは、車速Vから車両が発射したか否かを判定し、肯定であればステップS20にすすみ、否定であれば、ステップS19にすすむ。
【0068】
ステップS19において、エアコンECU8の空調制御手段8bは、空調装置1のコンプレッサ2の動作を禁止するべく、クラッチ接続要求信号SCLをエンジンECU14に対して出力することを停止する。
【0069】
ステップS20において、エアコンECU8の空調制御手段8bは、車室内温度THRが許容設定温度上限Tnmax+βを再度超えたか否かを判定して、肯定であればENDにすすみ、否定であれば、ステップS18の手前に戻る。
【0070】
これらの制御内容により実現される本実施例2の空調制御装置によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、通常設定温度上限Tnmax及び通常設定温度下限Tnminを設定し、停車時間ts〜teにおける上昇許容値βを設定する設定手段8cと、停車時間ts〜teに含まれる所定時間tpにおける車両の車室内温度THR(tp)と、所定時間tpから停車終了時間teまでの第二残時間te−tpと車両の車室内温度THRの上昇特性k1に基づいて、車両の停車終了時間teにおける車室内温度THR(te)が通常設定温度上限に上昇許容値を加えた値である許容設定温度上限Tnmax+βより高くなるか否かを判定する判定手段8dを含み、判定手段8dが肯定と判定する場合に、空調制御手段8bが、車室内温度THRが許容設定温度上限Tnmax+βより高くなる超過時間to以降に空調装置1を動作させるので、以下のような作用効果を得ることができる。
【0071】
つまり、主として停車終了時間te以降に空調装置1を動作させて後出し冷却を行うことにより、停車時間ts〜teにおいてなるべく空調装置1を動作させないこととした上で、停車終了時間teにおいて車室内温度THRが許容設定温度上限Tnmax+βを超える場合には、超過時間toから停車終了時間teの間において限定的に空調装置1を動作させることとすることができる。これにより、停車時間ts〜te内の特に停車終了時間teに近い領域における車室内温度THRの過度の上昇により運転者が不快感を得ることをなるべく回避した上で、車両のエンジン12のエネルギーをなるべく空調装置1が使用しないこととして、車両の省燃費性能をより高めることができる。
【0072】
加えて、本実施例2においては、設定手段8cが、車両の車室内温度THRの上昇特性k1と通常設定温度上限Tnmax、上昇許容値β、空調装置1による車室内温度THRの低下特性k2に基づいて、超過時間to以降の空調装置1の動作における第二目標温度Te2を設定することしているので、さらに以下のような作用効果を得ることができる。
【0073】
すなわち、主として停車終了時間te以降に空調装置1を動作させる後出し冷却を行うことにより、停車時間ts〜teにおいてなるべく空調装置1を動作させないこととした上で、停車終了時間teにおいて車室内温度THRが許容設定温度上限Tnmax+βを超える場合に、超過時間toから停車終了時間teの間において車室内温度THRが第二目標温度Te2に低下するまでの限定的な時間において空調装置1を動作させることとすることができる。
【0074】
これにより、停車時間ts〜te内における車室内温度THRの過度の上昇により運転者が不快感を得ることをなるべく回避した上で、空調装置1の動作による車室内温度の低下量を必要最低限のものとして、車両のエンジン12のエネルギーをなるべく空調装置1が使用しないこととして、車両の省燃費性能をより高めることができる。
【0075】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、より省燃費性能を高めることができる空調制御装置に関するものであり、比較的取得の容易なパラメータに基づく軽微な制御上の変更に基づいて、所望の効果を得ることができるので、乗用車、トラック、バス等の各車両に適用して特に有益なものである。
【符号の説明】
【0077】
1 空調装置
2 コンプレッサ
3 コンデンサ
4 レシーバ
5 膨張弁
6 エバポレータ
7 冷媒配管
8 エアコンECU8(空調制御装置)
8a 予測手段
8b 空調制御手段
8c 設定手段
8d 判定手段
8e 制限手段
8f 報知手段
9 クラッチ
10 プーリ
11 ベルト
12 エンジン
13 プーリ
14 エンジンECU
15 吸気管
16 スロットルバルブ
17 バイパス通路
18 アイドルスピードコントロールバルブ
19 ロックセンサ
20 外気温センサ
21 圧力センサ
22 温度センサ
23 エアコンスイッチ
24 車速センサ
25 アイドルスイッチ
26 スロットル開度センサ
27 水温センサ
28 エンジン回転数センサ
29 操作パネル
30 路車間通信装置(取得手段)
31 路側機
32 路車間通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺の交通情報を取得する取得手段と、前記交通情報から前記車両の停車開始時間及び停車終了時間を予測する予測手段と、空調装置を前記停車開始時間から前記停車終了時間までの停車時間以前又は以降を主として動作させる空調制御手段と、を含むことを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
通常設定温度上限及び通常設定温度下限を設定する設定手段と、前記停車開始時間より前の減速開始時間における前記車両の車室内温度と、前記減速開始時間から前記停車終了時間までの第一残時間と前記車両の車室内温度の上昇特性に基づいて、前記車両の前記停車終了時間における車室内温度が通常設定温度上限又は前記通常設定温度上限より高くなるか否かを判定する判定手段を含み、前記判定手段が肯定と判定する場合に、前記空調制御手段が、前記減速開始時間以降に前記空調装置を動作させるとともに、前記設定手段が、前記第一残時間と前記車両の車室内温度の上昇特性と前記通常設定温度上限に基づいて、前記減速開始時間以降の前記空調装置の動作における第一目標温度を設定することを特徴とする請求項1に記載の空調制御装置。
【請求項3】
通常設定温度上限及び通常設定温度下限を設定し、前記停車時間における上昇許容値を設定する設定手段と、前記停車時間に含まれる所定時間における前記車両の車室内温度と、前記所定時間から前記停車終了時間までの第二残時間と前記車両の車室内温度の上昇特性に基づいて、前記車両の前記停車終了時間における車室内温度が前記通常設定温度上限又は前記通常設定温度上限に上昇許容値を加えた値より高くなるか否かを判定する判定手段を含み、前記判定手段が肯定と判定する場合に、前記空調制御手段が、前記車室内温度が前記通常設定温度上限より高くなる超過時間以降に前記空調装置を動作させるとともに、前記設定手段が、前記車両の車室内温度の上昇特性と前記通常設定温度上限、前記上昇許容値、前記空調装置による前記車室内温度の低下特性に基づいて、前記超過時間以降の前記空調装置の動作における第二目標温度を設定することを特徴とする請求項1に記載の空調制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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