空調室内機
【課題】導風板の結露を防止することができる空調室内機を提供する。
【解決手段】空調室内機では、コアンダ羽根32が、利用時に吹出空気の風向を調整し、非利用時に吹出空気の風路および吹出口の前方から外れた位置に収容される。制御部は、コアンダ羽根32の利用時に、導風板と吹出口の形成壁との隙間が収容時よりも大きくなるように導風板を制御するので、導風板の両面に空気が通過するようになる。その結果、導風板への結露が防止される。
【解決手段】空調室内機では、コアンダ羽根32が、利用時に吹出空気の風向を調整し、非利用時に吹出空気の風路および吹出口の前方から外れた位置に収容される。制御部は、コアンダ羽根32の利用時に、導風板と吹出口の形成壁との隙間が収容時よりも大きくなるように導風板を制御するので、導風板の両面に空気が通過するようになる。その結果、導風板への結露が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コアンダ効果を利用して吹出空気を所定ゾーンへ到達させる空気調和機が検討されるようになった。例えば、特許文献1(特開2003−232531)に開示されている空気調和機は、吹出口の前面で且つ吹出空気の通り道に横ルーバが配置された構成である。吹出空気は、コアンダ効果によって横ルーバに沿った上向きのコアンダ気流となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この上向きのコアンダ気流は、ケーシング前面部に沿って吸込口に引き込まれる、いわゆるショートサーキットを引き起こす要因となるので、可動の導風板を吹出口近傍に配置して、ケーシング前面部から離れる方向へ気流を導いている。しかしながら、導風板の片面に冷風が流れる状態が長く継続するとその反対側の面が結露するので、断熱材を貼付する必要がある。
【0004】
本願発明の課題は、導風板の結露を防止することができる空調室内機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る空調室内機は、吸込口から取り入れられ本体ケーシング内で調和された後に吹出口から吹き出される吹出空気の流れを所定の方向へ変更可能な空調室内機であって、可動の導風板と、制御部とを備えている。導風板は、利用時に吹出空気の風向を調整し、非利用時に吹出空気の風路および吹出口の前方から外れた位置に収容される。制御部は、導風板の利用時に、導風板と吹出口の形成壁との隙間が収容時よりも大きくなるように導風板を制御する。
【0006】
この空調室内機では、例えば、見栄えを良くするために、導風板収容時の導風板と吹出口の形成壁との隙間を小さく設定している場合でも、利用時に吹出口の形成壁との隙間が収容時よりも大きくなるので、導風板の両面に空気が通過するようになる。その結果、導風板への結露が防止される。
【0007】
本発明の第2観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機であって、導風板と吹出口の形成壁との隙間は、収容時にほぼゼロとなる。
【0008】
この空調室内機では、導風板と吹出口の形成壁との隙間がある場合は、見栄えが悪くなる可能性があるので、その隙間がほぼゼロになることは、少なくとも意匠性の低下を抑制することができる。
【0009】
本発明の第3観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機であって、収容部が本体ケーシングの前面部に設けられている。本体ケーシングの前面部は、コアンダ効果の発生を防止する形状が形成されている。
【0010】
本体ケーシングの前面部上方に吸込口がある場合、導風板と吹出口の形成壁との隙間を通過した空気がケーシング前面部に沿ったコアンダ気流になって、吸込口に吸われてショートサーキットを引き起こす。しかし、この空調室内機では、本体ケーシングの前面部にコアンダ効果の発生を防止する形状が形成されているので、本体ケーシングの前面部に沿ったコアンダ気流の発生が防止され、ショートサーキットが防止される。
【0011】
本発明の第4観点に係る空調室内機は、第1観点から第3観点のいずれか1つに係る空調室内機であって、導風板が、吹出口の近傍に設けられ、吹出空気を自己の下面に沿わせたコアンダ気流にするコアンダ羽根である。
【0012】
この空調室内機では、従来品のようにコアンダ羽根と導風板との組み合わせをしなくとも、吹出空気を上吹き、又は天井吹きに偏向することができる。さらに、コアンダ羽根の両面に空気が通過するようになるのでコアンダ羽根への結露も防止される。
【0013】
本発明の第5観点に係る空調室内機は、第1観点から第4観点のいずれか1つに係る空調室内機であって、本体ケーシングの天面に吸込口が設けられ、本体ケーシングの前面部には吸込口が設けられていない。
【0014】
この空調室内機では、本体ケーシングの前面部に吸込口が無いので、コアンダ羽根と本体ケーシングの前面部との隙間を通る風が吸込口に吸い込まれてショートサーキットになるという現象が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1観点に係る空調室内機では、例えば、見栄えを良くするために、導風板収容時の導風板と吹出口の形成壁との隙間を小さく設定している場合でも、利用時に吹出口の形成壁との隙間が収容時よりも大きくなるので、導風板の両面に空気が通過するようになる。その結果、導風板への結露が防止される。
【0016】
本発明の第2観点に係る空調室内機では、導風板と吹出口の形成壁との隙間がある場合は、見栄えが悪くなる可能性があるので、その隙間がほぼゼロになることは、少なくとも意匠性の低下を抑制することができる。
【0017】
本発明の第3観点に係る空調室内機では、本体ケーシングの前面部にコアンダ効果の発生を防止する形状が形成されているので、本体ケーシングの前面部に沿ったコアンダ気流の発生が防止され、ショートサーキットが防止される。
【0018】
本発明の第4観点に係る空調室内機では、従来品のようにコアンダ羽根と導風板との組み合わせをしなくとも、吹出空気を上吹き、又は天井吹きに偏向することができる。さらに、コアンダ羽根の両面に空気が通過するようになるのでコアンダ羽根への結露も防止される。
【0019】
本発明の第5観点に係る空調室内機では、コアンダ羽根と本体ケーシングの前面部との隙間を通る風が吸込口に吸い込まれてショートサーキットになるという現象が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る運転停止時の空調室内機の断面図。
【図2】運転時の空調室内機の断面図。
【図3A】吹出空気が通常前吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3B】吹出空気が通常前方下吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3C】コアンダ気流前方吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3D】コアンダ気流天井吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3E】下吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図4A】吹出空気の方向およびコアンダ気流の方向を示す概念図。
【図4B】風向調整羽根とコアンダ羽根との開き角度の一例を表す概念図。
【図5A】コアンダ気流前方吹き時のスクロールの終端Fの接線とコアンダ羽根とが成す内角と、スクロールの終端Fの接線と風向調整羽根とが成す内角との比較図。
【図5B】コアンダ気流天井吹き時のスクロールの終端Fの接線とコアンダ羽根とが成す内角と、スクロールの終端Fの接線と風向調整羽根とが成す内角との比較図。
【図6A】コアンダ羽根が第1姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図6B】コアンダ羽根が第2姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図6C】コアンダ羽根が第4姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図7A】制御部とリモコンとの関係を示すブロック図。
【図7B】「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューを表した表示部の正面図。
【図8A】コアンダ羽根が第3姿勢のときの風向調整羽根とコアンダ羽根の側面図。
【図8B】コアンダ羽根が第5姿勢のときの風向調整羽根とコアンダ羽根の側面図。
【図9】変形例に係る空調室内機の収容部周辺の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
(1)空調室内機10の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る運転停止時の空調室内機10の断面図である。また、図2は、運転時の空調室内機10の断面図である。図1及び図2において、空調室内機10は壁掛けタイプであり、本体ケーシング11、室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40が搭載されている。
【0023】
本体ケーシング11は、天面部11a、前面パネル11b、背面板11c及び下部水平板11dを有し、内部に室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40を収納している。
【0024】
天面部11aは、本体ケーシング11の上部に位置し、天面部11aの前部には、吸込口(図示せず)が設けられている。
【0025】
前面パネル11bは室内機の前面部を構成しており、吸込口がないフラットな形状を成している。また、前面パネル11bは、その上端が天面部11aに回動自在に支持され、ヒンジ式に動作することができる。
【0026】
室内熱交換器13及び室内ファン14は、底フレーム16に取り付けられている。室内熱交換器13は、通過する空気との間で熱交換を行う。また、室内熱交換器13は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状の形状を成し、その下方に室内ファン14が位置する。室内ファン14は、クロスフローファンであり、室内から取り込んだ空気を、室内熱交換器13に当てて通過させた後、室内に吹き出す。
【0027】
本体ケーシング11の下部には、吹出口15が設けられている。吹出口15には、吹出口15から吹き出される吹出空気の方向を変更する風向調整羽根31が回動自在に取り付けられている。風向調整羽根31は、モータ(図示せず)によって駆動し、吹出空気の方向を変更するだけでなく、吹出口15を開閉することもできる。風向調整羽根31は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0028】
また、吹出口15の近傍にはコアンダ羽根32が設けられている。コアンダ羽根32は、モータ(図示せず)によって前後方向に傾斜した姿勢をとることが可能であり、運転停止時に前面パネル11bに設けられた収容部130に収容される。コアンダ羽根32は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0029】
また、吹出口15は、吹出流路18によって本体ケーシング11の内部と繋がっている。吹出流路18は、吹出口15から底フレーム16のスクロール17に沿って形成されている。
【0030】
室内空気は、室内ファン14の稼動によって吸込口、室内熱交換器13を経て室内ファン14に吸い込まれ、室内ファン14から吹出流路18を経て吹出口15から吹き出される。
【0031】
制御部40は、本体ケーシング11を前面パネル11bから視て室内熱交換器13及び室内ファン14の右側方に位置しており、室内ファン14の回転数制御、風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の動作制御を行う。
【0032】
(2)詳細構成
(2−1)前面パネル11b
図1に示すように、前面パネル11bは本体ケーシング11の上部前方からなだらかな円弧曲面を描きながら下部水平板11dの前方エッジに向かって延びている。前面パネル11bの下部に本体ケーシング11の内側に向かって窪んだ領域がある。この領域の窪み深さはコアンダ羽根32の厚み寸法に合うように設定されており、コアンダ羽根32が収容される収容部130を成している。収容部130の表面もなだらかな円弧曲面である。
【0033】
(2−2)吹出口15
図1に示すように、吹出口15は、本体ケーシング11の下部に形成されており、横方向(図1紙面と直交する方向)を長辺とする長方形の開口である。吹出口15の下端は下部水平板11dの前方エッジに接しており、吹出口15の下端と上端とを結ぶ仮想面は前方上向きに傾斜している。
【0034】
(2−3)スクロール17
スクロール17は、室内ファン14に対峙するように湾曲した隔壁であり、底フレーム16の一部である。スクロール17の終端Fは、吹出口15の周縁近傍まで到達している。吹出流路18を通る空気は、スクロール17に沿って進み、スクロール17の終端Fの接線方向に送られる。したがって、吹出口15に風向調整羽根31がなければ、吹出口15から吹き出される吹出空気の風向は、スクロール17の終端Fの接線L0に概ね沿った方向である。
【0035】
(2−4)垂直風向調整板20
垂直風向調整板20は、図1及び図2に示すように、複数の羽根片201と、複数の羽根片201を連結する連結棒203を有している。また、垂直風向調整板20は、吹出流路18において、風向調整羽根31よりも室内ファン14近傍に配置されている。
【0036】
複数枚の羽根片201は、連結棒203が吹出口15の長手方向に沿って水平往復移動することによって、その長手方向に対して垂直な状態を中心に左右に揺動する。なお、連結棒203は、モータ(図示せず)によって水平往復移動する。
【0037】
(2−5)風向調整羽根31
風向調整羽根31は、吹出口15を塞ぐことができる程度の面積を有している。風向調整羽根31が吹出口15を閉じた状態において、その外側面31aは前面パネル11bの曲面の延長上にあるような外側に凸のなだらかな円弧曲面に仕上げられている。また、風向調整羽根31の内側面31b(図2参照)も、外面にほぼ平行な円弧曲面を成している。
【0038】
風向調整羽根31は、下端部に回動軸311を有している。回動軸311は、吹出口15の下端近傍で、本体ケーシング11に固定されているステッピングモータ(図示せず)の回転軸に連結されている。
【0039】
回動軸311が図1正面視反時計方向に回動することによって、風向調整羽根31の上端が吹出口15の上端側から遠ざかるように動作して吹出口15を開ける。逆に、回動軸311が図1正面視時計方向に回動することによって、風向調整羽根31の上端が吹出口15の上端側へ近づくように動作して吹出口15を閉じる。
【0040】
風向調整羽根31が吹出口15を開けている状態において、吹出口15から吹き出された吹出空気は、風向調整羽根31の内側面31bに概ね沿って流れる。すなわち、スクロール17の終端Fの接線方向に概ね沿って吹き出された吹出空気は、その風向が風向調整羽根31によってやや上向きに変更される。
【0041】
(2−6)コアンダ羽根32
コアンダ羽根32は、空調運転が停止している間や後述する通常吹出モードでの運転では収容部130に収納されている。コアンダ羽根32は回動することによって収容部130から離れる。コアンダ羽根32の回動軸321は、収容部130の下端近傍で且つ本体ケーシング11の内側の位置(吹出流路18上壁の上方の位置)に設けられており、コアンダ羽根32の下端部と回動軸321とは所定の間隔を保って連結されている。それゆえ、回動軸321が回動してコアンダ羽根32がケーシング前面部の収容部130から離れるほど、コアンダ羽根32の下端の高さ位置は低くなるように回転する。また、コアンダ羽根32が回転して開いたときの傾斜はケーシング前面部の傾斜よりも緩やかである。
【0042】
本実施形態では、収容部130は、送風路の外に設けられており、収容時にコアンダ羽根32の全体が送風路の外側に収容される。かかる構造に代えて、コアンダ羽根32の一部のみが送風路の外側に収容され、残りが送風路内(たとえば、送風経路の上壁部)に収容されるようにしてもよい。
【0043】
また、回動軸321が図1正面視反時計方向に回動することによって、コアンダ羽根32の上端および下端ともに円弧を描きながら収容部130から離れるが、そのとき、上端と吹出口より上方のケーシング前面部の収容部130との最短距離は、下端と収容部130との最短距離より大きい。すなわち、コアンダ羽根32は前方に行くにしたがって前記ケーシング前面部から離れるような姿勢に制御される。そして、回動軸321が図1正面視時計方向に回動することによって、コアンダ羽根32は収容部130に近づき、最終的に収容部130収容される。コアンダ羽根32の運転状態の姿勢としては、収容部130に収納された状態、回転して前方上向きに傾斜した姿勢、さらに回転してほぼ水平な姿勢、さらに回転して前方下向きに傾斜した姿勢がある。
【0044】
コアンダ羽根32が収容部130に収容された状態で、コアンダ羽根32の外側面32aは前面パネル11bのなだらかな円弧曲面の延長上にあるような外側に凸のなだらかな円弧曲面に仕上げられている。また、コアンダ羽根32の内側面32bは、収容部130の表面に沿うような円弧曲面に仕上げられている。
【0045】
また、コアンダ羽根32の長手方向の寸法は、風向調整羽根31の長手方向の寸法以上となるように設定されている。この理由は風向調整羽根31で風向調節された吹出空気すべてをコアンダ羽根32で受けるためであり、その目的はコアンダ羽根32の側方からの吹出空気がショートサーキットすることを防止することである。
【0046】
(3)吹出空気の方向制御
本実施形態の空調室内機は、吹出空気の方向を制御する手段として、風向調整羽根31のみを回動させて吹出空気の方向を調整する通常吹出モードと、風向調整羽根31及びコアンダ羽根32を回動させてコアンダ効果によって吹出空気をコアンダ羽根32の外側面32aに沿わせたコアンダ気流にするコアンダ効果利用モードと、風向調整羽根31及びコアンダ羽根32それぞれの先端を前方下向きにして吹出空気を下方に導く下吹きモードを有している。
【0047】
風向調整羽根31及びコアンダ羽根32は、上記各モードにおいて空気の吹出方向ごとに姿勢が変化するので、各姿勢について図3A〜図3Eを参照しながら説明する。なお、吹出方向の選択は、ユーザーがリモコン等を介して行なうことができるものとする。また、モードの変更や吹出方向は自動的に変更されるように制御することも可能である。
【0048】
(3−1)通常吹出モード
通常吹出モードは、風向調整羽根31のみを回動させて吹出空気の方向を調整するモードであり、「通常前吹き」と「通常前方下吹き」とを含む。
【0049】
(3−1−1)通常前吹き
図3Aは、吹出空気が通常前吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Aにおいて、ユーザーが「通常前吹き」を選択したとき、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bが略水平になる位置まで風向調整羽根31を回動させる。なお、本願実施形態のように風向調整羽根31の内側面31bが円弧曲面をなしている場合は、内側面31bの前方端E1における接線が略水平になるまで風向調整羽根31を回動させる。その結果、吹出空気は、前吹き状態となる。
【0050】
なお、コアンダ羽根32は収容部130に収容されているので、コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの間に空気が通過できるような隙間は生じないので、空気がコアンダ羽根32の内側面32b側を通過することができない。
【0051】
(3−1−2)通常前方下吹き
図3Bは、吹出空気が通常前方下吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Bにおいて、ユーザーは吹出方向を「通常前吹き」よりも下方に向けたいとき、「通常前方下吹き」を選択すればよい。
【0052】
このとき、制御部40は、風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線が水平よりも前下がりになるまで風向調整羽根31を回動させる。その結果、吹出空気は、前方下吹き状態となる。
【0053】
なお、コアンダ羽根32は収容部130に収容されているので、コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの間に空気が通過できるような隙間は生じないので、空気がコアンダ羽根32の内側面32b側を通過することができない。
【0054】
(3−2)コアンダ効果利用モード
コアンダ(効果)とは、気体や液体の流れのそばに壁があると、流れの方向と壁の方向とが異なっていても、壁面に沿った方向に流れようとする現象である(朝倉書店「法則の辞典」)。コアンダ利用モードは、このコアンダ効果を利用した「コアンダ気流前方吹き」および「コアンダ気流天井吹き」を含む。
【0055】
また、吹出空気の方向およびコアンダ気流の方向については、基準位置の取り方次第で定義の方法が異なるので、以下に一例を示す、但し、それに限定されるものではない。図4Aは、吹出空気の方向およびコアンダ気流の方向を示す概念図である。図4Aにおいて、コアンダ羽根32の外側面32a側にコアンダ効果を生じさせるには、風向調整羽根31によって変更された吹出空気の方向(D1)の傾斜がコアンダ羽根32の姿勢(傾斜)に近くなる必要がある。両者が離れすぎているとコアンダ効果が生じない。そのため、本コアンダ効果利用モードでは、コアンダ羽根32と風向調整羽根31とが所定の開き角度以下になる必要があり、両調整板(31、32)がその範囲内を成すようにして、上記の関係が成立するようにしている。これにより、図4Aに示すように、吹出空気の風向が風向調整羽根31によってD1に変更された後、さらにコアンダ効果によりD2に変更される。
【0056】
また、本実施形態のコアンダ効果利用モードでは、コアンダ羽根32が風向調整羽根31の前方(吹出の下流側)かつ上方の位置あるのが好ましい。
【0057】
また、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との開き角度については、基準位置の取り方次第で定義の方法が異なるので、以下に一例を示す。但し、それに限定されるものではない。図4Bは、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との開き角度の一例を表す概念図である。図4Bにおいて、風向調整羽根31の内側面31bの前後端を結ぶ直線と水平線との角度を風向調整羽根31の傾斜角θ1とし、コアンダ羽根32の外側面32aの前後端を結ぶ直線と水平線との角度をコアンダ羽根32の傾斜角θ2としたとき、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との開き角度θ=θ2−θ1である。なお、θ1及びθ2は絶対値ではなく、図4B正面視において水平線よりも下方となる場合は負の値である。
【0058】
「コアンダ気流前方吹き」および「コアンダ気流天井吹き」ともに、風向調整羽根31およびコアンダ羽根32は、スクロール17の終端Fの接線とコアンダ羽根32とが成す内角が、スクロール17の終端Fの接線と風向調整羽根31とが成す内角よりも大きい、という条件を満たす姿勢をとるのが好ましい。
【0059】
なお、内角については、図5A(コアンダ気流前方吹き時のスクロール17の終端Fの接線L0とコアンダ羽根32とが成す内角R2と、スクロール17の終端Fの接線L0と風向調整羽根31とが成す内角R1との比較図)、および図5B(コアンダ気流天井吹き時のスクロール17の終端Fの接線L0とコアンダ羽根32とが成す内角R2と、スクロール17の終端Fの接線L0と風向調整羽根31とが成す内角R1との比較図)を参照のこと。
【0060】
また、図5Bに示すように、コアンダ効果利用モードにおけるコアンダ羽根32では、コアンダ羽根32の先端部が水平より前方上向で、吹出口15よりも外側上方に位置する。その結果、コアンダ気流はより遠方に到達する上に、コアンダ羽根32の上側において、風がスクロール17に沿って斜め下方に直進することが抑制されるため、コアンダ気流の上方への誘導が阻害されにくくなる。
【0061】
また、コアンダ羽根32の後端部の高さ位置は運転停止時よりも低くなっているので、上流側でのコアンダ効果によるコアンダ気流が生成し易い。
【0062】
(3−2−1)コアンダ気流前方吹き
図3Cは、コアンダ気流前方吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Cにおいて、「コアンダ気流前方吹き」が選択されたとき、制御部40は、風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平よりも前下がりになるまで風向調整羽根31を回動させる。
【0063】
次に、制御部40は、コアンダ羽根32の外側面32aが略水平になる位置までコアンダ羽根32を回動させる。なお、本願実施形態のようにコアンダ羽根32の外側面32aが円弧曲面をなしている場合は、外側面32aの前方端E2における接線L2が略水平になるまでコアンダ羽根32を回動させる。つまり、図5Aに示すように、接線L0と接線L2とが成す内角R2は、接線L0と接線L1とが成す内角R1よりも大きくなる。
【0064】
風向調整羽根31で前方下吹きに調整された吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aに付着した流れとなり、この外側面32aに沿ったコアンダ気流に変わる。
【0065】
したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方下吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が水平であるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち水平方向に吹き出される。
【0066】
このように、コアンダ羽根32がケーシング前面部から離れて傾斜が緩やかになり、吹出空気が前面パネル11bよりも前方でコアンダ効果を受け易くなる。その結果、風向調整羽根31で風向調節された吹出空気が前方下吹きであっても、コアンダ効果によって水平吹きの空気となる。これは、風向調整羽根31の通風抵抗による圧損が抑制されつつ風向が変更されることを意味する。
【0067】
なお、図3Cに示すようにコアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間は収容時よりも大きくなっており、コアンダ羽根32の内側面32b側にも空気が通過する。それゆえ、コアンダ羽根32への結露が防止される。
【0068】
(3−2−2)コアンダ気流天井吹き
図3Dは、コアンダ気流天井吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Dにおいて、「コアンダ気流天井吹き」が選択されたとき、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平になるまで風向調整羽根31を回動させる。
【0069】
次に、制御部40は、外側面32aの前方端E2における接線L2が前方上向きとなるまでコアンダ羽根32を回動させる。つまり、図5Bに示すように、接線L0と接線L2とが成す内角R2は、接線L0と接線L1とが成す内角R1よりも大きくなる。風向調整羽根31で水平吹きに調整された吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aに付着した流れとなり、この外側面32aに沿ったコアンダ気流に変わる。
【0070】
したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が前方上吹きであるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち天井方向に吹き出される。コアンダ羽根32の先端部は吹出口15より外側に突出しているので、コアンダ気流はより遠方に到達する。さらに、コアンダ羽根32の先端部は吹出口15よりも上方に位置しているので、コアンダ羽根32の上側において、風がスクロール17に沿って斜め下方に直進することが抑制されるため、コアンダ気流の上方への誘導が阻害されにくい。
【0071】
このように、コアンダ羽根32がケーシング前面部から離れて傾斜が緩やかになり、吹出空気が前面パネル11bよりも前方でコアンダ効果を受け易くなる。その結果、風向調整羽根31で風向調節された吹出空気が前方吹きであっても、コアンダ効果によって上向きの空気となる。これは、風向調整羽根31の通風抵抗による圧損が抑制されつつ風向が変更されることを意味する。
【0072】
その結果、吹出口15が開き気味のまま、吹出空気が天井方向へ誘導される。つまり、通風抵抗が低く保たれた状態で吹出空気が天井方向へ誘導される。
【0073】
なお、コアンダ羽根32の長手方向の寸法は、風向調整羽根31の長手方向の寸法以上である。それゆえ、風向調整羽根31で風向調節された吹出空気すべてをコアンダ羽根32で受けることができ、コアンダ羽根32の側方から吹出空気がショートサーキットすることが防止されるという効果も奏している。
【0074】
なお、図3Dに示すように、天井吹き姿勢のコアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間は、前方吹き姿勢のときよりは小さいものの、収容時よりも大きくなっており、コアンダ羽根32の内側面32b側にも空気が通過することができる。それゆえ、コアンダ羽根32への結露が防止される。
【0075】
(3−3)下吹きモード
図3Eは、下吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Eにおいて、「下吹き」が選択されたとき、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線が下向きなるまで風向調整羽根31を回動させる。
【0076】
次に、制御部40は、外側面32aの前方端E2における接線が下向きとなるまでコアンダ羽根32を回動させる。その結果、吹出空気は、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との間を通過し、下向きに吹き出される。
【0077】
特に、風向調整羽根31がスクロール17の終端部の接線角度より下向きになったときでも、制御部40が下吹きモードを実行することによって、コアンダ羽根32の外側面32aに当てて下向きの気流を生成することができる。
【0078】
(4)動作
上記のような吹出空気の方向制御を利用した空調室内機の動作について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0079】
(4−1)コアンダ羽根32の第1姿勢
図6Aは、コアンダ羽根32が第1姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図6Aにおいて、空調室内機10は室内側壁の上方に設置されている。コアンダ羽根32は、収納部130に収納されている状態(以後、第1姿勢とよぶ)である。コアンダ羽根32が第1姿勢のときに風向調整羽根31の姿勢を水平よりも上向きにすることによって、風向調整羽根31の内側面31bで風向調整された吹出空気がその内側面31bを離れた後、コアンダ羽根32の外側面32aに引っ張られるように方向を変え、第1コアンダ気流となってコアンダ羽根32の外側面32aおよび前面パネル11bに沿うように流れる。
【0080】
この第1姿勢は、ショートサーキットを形成させたいときに選択される。その目的は、公知文献(特開平10−9659号公報)にも開示されているように、冷風感を生じさせることなく室内を除湿することである。
【0081】
ここで、ユーザーがコアンダ気流を選択する方法について説明する。図7Aは、制御部40とリモコン50との関係を示すブロック図である。図7Aにおいて、リモコン50は赤外線信号を無線で送信する。リモコン50には、風向を切り換えるための切換手段を有している。具体的には、ユーザーが風向を選択できるように、風向選択メニューを表示する表示部52と、各風向選択メニューを指定するためのカーソル52aを有している。
【0082】
先ず、ユーザーは、表示部52に表示されたメニューの中から「コアンダ風向設定」をカーソル52aで選択する。なお、リモコン50によるメニューの選択および確定するための技術は広く公開されているので詳細な説明は省略する。
【0083】
図7Bは、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューを表した表示部52の正面図である。図7Bにおいて、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューには、第1〜第5コアンダ角度が予め準備されており、カーソル52aで第1コアンダ角度を指定して確定することによって、コアンダ羽根32は図6Aに示す第1姿勢をとり、第1コアンダ角度に応じた第1の向きのコアンダ気流が発生する。
【0084】
(4−2)コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢
次に、図6Bは、コアンダ羽根32が第2姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図6Bにおけるコアンダ羽根32の第2姿勢は、図7Bにおいてカーソル52aで第2コアンダ角度を指定し確定することによって成し得る。コアンダ羽根32が第2姿勢のときに発生するコアンダ気流は、「(3−2−2)コアンダ気流天井吹き」の段で説明したコアンダ気流に相当する。第2コアンダ角度が選択されたとき、図3Dに示すように、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平になるまで風向調整羽根31を回動させ、次に、外側面32aの前方端E2における接線L2が前方上向きとなるまでコアンダ羽根32を回動させる。したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が前方上吹きであるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち天井方向に吹き出される。
【0085】
なお、一旦、コアンダ気流が発生すると、風向調整羽根31を動かさずにコアンダ羽根32の角度のみを変動させてコアンダ気流の風向を調整することができる。例えば、図8Aは、コアンダ羽根32が第3姿勢のときの風向調整羽根31とコアンダ羽根32の側面図である。図8Aにおいて、コアンダ羽根32の第3姿勢は第2姿勢よりも下向きである。なお、図8Aでは、比較のために第2姿勢のコアンダ羽根32を2点鎖線で、第3姿勢のコアンダ羽根32を実線で描いている。
【0086】
第2姿勢でコアンダ気流が確実に発生し、且つ、風向調整羽根31の姿勢が変わらないとすれば、第2姿勢よりも下向きである第3姿勢でコアンダ気流がコアンダ羽根32の外側面32aから剥離しないことは明らかである。このように、コアンダ気流天井吹きを実施したいときは、図7Bにおいてカーソル52aで第2コアンダ角度、若しくは第3コアンダ角度を選択することによって成し得る。
【0087】
コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢では、風向調整羽根31によって吹出空気がコアンダ羽根32の湾曲面320に近づく方向へ風向調整され、コアンダ羽根32がその風向調整された吹出空気を自己の湾曲面320に沿ったコアンダ気流に変えるので、風向偏向効果が大きい。
【0088】
また、第2姿勢および第3姿勢では、コアンダ羽根32の先端部は天井向きになっているので、コアンダ羽根32の湾曲面320に沿ったコアンダ気流は、前面パネル11bから離れながら、且つ、天上向きに進むことができる。この場合は、本体ケーシング11の前面上方に吸込口があってもショートサーキットを防止することができる。
【0089】
他方、コアンダ羽根32の後端部は下向きであるので、スクロール17自体の角度、つまり下向きの角度に近い角度となり、コアンダ羽根32に吹出空気が沿いやすくなる。なお、仮に後端部が上向きならば、スクロール角度とのギャップが大きくなり、コアンダ羽根に吹出空気が沿わなくなる。
【0090】
さらに、コアンダ羽根32の先端部が上向きで後端部が下向きであるので、風を捕まえるようにコアンダ羽根32の後端部で気流を外側面32aに沿わせておき、段々と上向きに曲げていくことが可能となる。
【0091】
本実施形態では、コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢は、調和空気を遠方に飛ばしたいときに選択されることを想定している。例えば、吹出口15から天井までの高さ距離、および吹出口15からその対面壁までの対面距離がともに大きい場合は、コアンダ羽根32の姿勢は第2姿勢が好ましい。他方、吹出口15から天井までの高さ距離は小さいが、吹出口15からその対面壁までの対面距離が大きい場合などはコアンダ羽根32の姿勢は第3姿勢が好ましい。このようにユーザーは、リモコン50を介して室内空間の大きさに応じてコアンダ羽根32の姿勢を選択することができるので、使い勝手がよい上に、調和空気を空調対象空間に均一に行き渡らせることが可能となる。
【0092】
(4−2−1)コアンダ羽根32の形状について
コアンダ羽根32の形状について、コアンダ羽根32の外側面32aは、凸状に湾曲している形状であっても、平面形状であってもよいが、以下の点で、外側面32aは凸状に湾曲していることが好ましい。
【0093】
図8Aにおいて、コアンダ羽根32の外側面32aは、凸状に湾曲して湾曲面320を形成している。コアンダ羽根32の姿勢は、吹出口15から離れるにしたがって前面パネル11bから離れる姿勢となるので、コアンダ羽根32の湾曲面320に沿ったコアンダ気流は、前面パネル11bから離れながら、且つ、上向きに進むことができる。また、コアンダ羽根32先端部の角度が上向きの角度となり、コアンダ羽根の傾斜角度を急にすることなく、上向きの気流を発生させることができる。
【0094】
また、スクロール17の終端部の接線が下向きであっても、吹出空気がコアンダ羽根32の湾曲面320に沿った上向きのコアンダ気流となる。
【0095】
また、前面パネル11bとコアンダ羽根32の湾曲面320とは1つの連続的な仮想曲面上に並ぶように湾曲させることによって、コアンダ羽根32収容時のケーシング前面部の見栄えがよくなる。
【0096】
なお、コアンダ羽根32の湾曲面320は、湾曲度合いの異なる複数の湾曲面で形成されてもよい。なぜなら、複数の湾曲面で偏向度合いを徐々に高めることによって、コアンダ気流が湾曲面から剥離することを抑制しつつ、吹出空気の方向からコアンダ気流の方向への偏向度合いを高めることができるからである。
【0097】
(4−3)コアンダ羽根32の第4姿勢および第5姿勢
さらに、図6Cは、コアンダ羽根32が第4姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図6Cにおけるコアンダ羽根32の第4姿勢は、図7Bにおいてカーソル52aで第4コアンダ角度を指定し確定することによって成し得る。コアンダ羽根32が第4姿勢のときに発生するコアンダ気流は、「(3−2−1)コアンダ気流前方吹き」の段で説明したコアンダ気流に相当する。第4コアンダ角度が選択されたとき、図3Cに示すように、制御部40は、風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平よりも前下がりになるまで風向調整羽根31を回動させ、次に、コアンダ羽根32の外側面32aが略水平になる位置までコアンダ羽根32を回動させる。したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方下吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が水平であるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち水平方向に吹き出される。
【0098】
なお、一旦、コアンダ気流が発生すると、風向調整羽根31を動かさずにコアンダ羽根32の角度のみを変動させてコアンダ気流の風向を調整することができる。例えば、図8Bは、コアンダ羽根32が第5姿勢のときの風向調整羽根31とコアンダ羽根32の側面図である。図8Bにおいて、コアンダ羽根32の第5姿勢は第4姿勢よりも下向きである。なお、図8Bでは、比較のために比較のために第4姿勢のコアンダ羽根32を2点鎖線で、第5姿勢のコアンダ羽根32を実線で描いている。
【0099】
第4姿勢でコアンダ気流が確実に発生し、且つ、風向調整羽根31の姿勢が変わらないとすれば、第4姿勢よりも下向きである第5姿勢でコアンダ気流がコアンダ羽根32の外側面32aから剥離しないことは明らかである。このように、コアンダ気流前方吹きを実施したいときは、図7Bにおいてカーソル52aで第4コアンダ角度、若しくは第5コアンダ角度を選択することによって成し得る。
【0100】
なお、上記の説明で明らかなように、コアンダ羽根32の第1姿勢、第2姿勢および第4姿勢それぞれに対して風向調整羽根31の姿勢が異なる。言い換えると、コアンダ羽根32によるコアンダ気流は、風向調整羽根31の姿勢とコアンダ羽根32の姿勢との組み合わせによって如何なる方向にも仕向けることができる。
【0101】
(5)特徴
(5−1)
空調室内機10では、コアンダ羽根32が、利用時に吹出空気の風向を調整し、非利用時に吹出空気の風路および吹出口の前方から外れた位置、すなわち、収容部130に収容される。制御部40は、コアンダ羽根32の利用時に、コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間が収容時よりも大きくなるようにコアンダ羽根32を制御するので、コアンダ羽根32の両面に空気が通過するようになる。その結果、コアンダ羽根32への結露が防止される。
【0102】
なお、空調室内機10では、従来品のようにコアンダ羽根と導風板との組み合わせをしなくとも、コアンダ羽根32だけで吹出空気を上吹き、又は天井吹きに偏向することができる。
【0103】
(5−2)
空調室内機10では、コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間は、収容時にほぼゼロとなるので、少なくとも意匠性の低下を抑制することができる。
【0104】
(6)変形例
上記実施形態では、コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間を通過する空気は、量としてはそれほど多くなく、ほとんどがコアンダ羽根32の内側面32bに沿って流れる。
【0105】
しかし、収容部130の前面壁においてコアンダ効果が作用し、その壁面に沿ったコアンダ気流が発生した場合、それが本体ケーシング11の上部に到達して吸込口に吸い込まれ、ショートサーキットとなる可能性もある。それゆえ、収容部130の下方にコアンダ気流の発生を阻止する形状を設けることが好ましい。
【0106】
図9は、変形例に係る空調室内機10の収容部130周辺の側面図である。図9において、突起140が、収容部130の下部と吹出口15の上部形成壁15aとをつなぐ壁面上に設けられている。
【0107】
コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間を通過する空気のうち、一部はコアンダ羽根32の内側面32bに沿うように流れ、一部は突起140に衝突する。
【0108】
突起140は外側に突出しているので、突起140に衝突した空気は、突起140の先端部において剥離し、突起140の後方はいわゆる死水域となる。
【0109】
それゆえ、収容部130の壁面および前面パネル11bに沿ったコアンダ気流の発生は防止される。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、壁掛け式空調室内機に有用である。
【符号の説明】
【0111】
10 空調室内機
15 吹出口
32 コアンダ羽根
32a 外側面(下面)
40 制御部
130 収容部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開2003−232531号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コアンダ効果を利用して吹出空気を所定ゾーンへ到達させる空気調和機が検討されるようになった。例えば、特許文献1(特開2003−232531)に開示されている空気調和機は、吹出口の前面で且つ吹出空気の通り道に横ルーバが配置された構成である。吹出空気は、コアンダ効果によって横ルーバに沿った上向きのコアンダ気流となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この上向きのコアンダ気流は、ケーシング前面部に沿って吸込口に引き込まれる、いわゆるショートサーキットを引き起こす要因となるので、可動の導風板を吹出口近傍に配置して、ケーシング前面部から離れる方向へ気流を導いている。しかしながら、導風板の片面に冷風が流れる状態が長く継続するとその反対側の面が結露するので、断熱材を貼付する必要がある。
【0004】
本願発明の課題は、導風板の結露を防止することができる空調室内機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る空調室内機は、吸込口から取り入れられ本体ケーシング内で調和された後に吹出口から吹き出される吹出空気の流れを所定の方向へ変更可能な空調室内機であって、可動の導風板と、制御部とを備えている。導風板は、利用時に吹出空気の風向を調整し、非利用時に吹出空気の風路および吹出口の前方から外れた位置に収容される。制御部は、導風板の利用時に、導風板と吹出口の形成壁との隙間が収容時よりも大きくなるように導風板を制御する。
【0006】
この空調室内機では、例えば、見栄えを良くするために、導風板収容時の導風板と吹出口の形成壁との隙間を小さく設定している場合でも、利用時に吹出口の形成壁との隙間が収容時よりも大きくなるので、導風板の両面に空気が通過するようになる。その結果、導風板への結露が防止される。
【0007】
本発明の第2観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機であって、導風板と吹出口の形成壁との隙間は、収容時にほぼゼロとなる。
【0008】
この空調室内機では、導風板と吹出口の形成壁との隙間がある場合は、見栄えが悪くなる可能性があるので、その隙間がほぼゼロになることは、少なくとも意匠性の低下を抑制することができる。
【0009】
本発明の第3観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機であって、収容部が本体ケーシングの前面部に設けられている。本体ケーシングの前面部は、コアンダ効果の発生を防止する形状が形成されている。
【0010】
本体ケーシングの前面部上方に吸込口がある場合、導風板と吹出口の形成壁との隙間を通過した空気がケーシング前面部に沿ったコアンダ気流になって、吸込口に吸われてショートサーキットを引き起こす。しかし、この空調室内機では、本体ケーシングの前面部にコアンダ効果の発生を防止する形状が形成されているので、本体ケーシングの前面部に沿ったコアンダ気流の発生が防止され、ショートサーキットが防止される。
【0011】
本発明の第4観点に係る空調室内機は、第1観点から第3観点のいずれか1つに係る空調室内機であって、導風板が、吹出口の近傍に設けられ、吹出空気を自己の下面に沿わせたコアンダ気流にするコアンダ羽根である。
【0012】
この空調室内機では、従来品のようにコアンダ羽根と導風板との組み合わせをしなくとも、吹出空気を上吹き、又は天井吹きに偏向することができる。さらに、コアンダ羽根の両面に空気が通過するようになるのでコアンダ羽根への結露も防止される。
【0013】
本発明の第5観点に係る空調室内機は、第1観点から第4観点のいずれか1つに係る空調室内機であって、本体ケーシングの天面に吸込口が設けられ、本体ケーシングの前面部には吸込口が設けられていない。
【0014】
この空調室内機では、本体ケーシングの前面部に吸込口が無いので、コアンダ羽根と本体ケーシングの前面部との隙間を通る風が吸込口に吸い込まれてショートサーキットになるという現象が抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1観点に係る空調室内機では、例えば、見栄えを良くするために、導風板収容時の導風板と吹出口の形成壁との隙間を小さく設定している場合でも、利用時に吹出口の形成壁との隙間が収容時よりも大きくなるので、導風板の両面に空気が通過するようになる。その結果、導風板への結露が防止される。
【0016】
本発明の第2観点に係る空調室内機では、導風板と吹出口の形成壁との隙間がある場合は、見栄えが悪くなる可能性があるので、その隙間がほぼゼロになることは、少なくとも意匠性の低下を抑制することができる。
【0017】
本発明の第3観点に係る空調室内機では、本体ケーシングの前面部にコアンダ効果の発生を防止する形状が形成されているので、本体ケーシングの前面部に沿ったコアンダ気流の発生が防止され、ショートサーキットが防止される。
【0018】
本発明の第4観点に係る空調室内機では、従来品のようにコアンダ羽根と導風板との組み合わせをしなくとも、吹出空気を上吹き、又は天井吹きに偏向することができる。さらに、コアンダ羽根の両面に空気が通過するようになるのでコアンダ羽根への結露も防止される。
【0019】
本発明の第5観点に係る空調室内機では、コアンダ羽根と本体ケーシングの前面部との隙間を通る風が吸込口に吸い込まれてショートサーキットになるという現象が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る運転停止時の空調室内機の断面図。
【図2】運転時の空調室内機の断面図。
【図3A】吹出空気が通常前吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3B】吹出空気が通常前方下吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3C】コアンダ気流前方吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3D】コアンダ気流天井吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図3E】下吹き時の風向調整羽根およびコアンダ羽根の側面図。
【図4A】吹出空気の方向およびコアンダ気流の方向を示す概念図。
【図4B】風向調整羽根とコアンダ羽根との開き角度の一例を表す概念図。
【図5A】コアンダ気流前方吹き時のスクロールの終端Fの接線とコアンダ羽根とが成す内角と、スクロールの終端Fの接線と風向調整羽根とが成す内角との比較図。
【図5B】コアンダ気流天井吹き時のスクロールの終端Fの接線とコアンダ羽根とが成す内角と、スクロールの終端Fの接線と風向調整羽根とが成す内角との比較図。
【図6A】コアンダ羽根が第1姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図6B】コアンダ羽根が第2姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図6C】コアンダ羽根が第4姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図。
【図7A】制御部とリモコンとの関係を示すブロック図。
【図7B】「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューを表した表示部の正面図。
【図8A】コアンダ羽根が第3姿勢のときの風向調整羽根とコアンダ羽根の側面図。
【図8B】コアンダ羽根が第5姿勢のときの風向調整羽根とコアンダ羽根の側面図。
【図9】変形例に係る空調室内機の収容部周辺の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
(1)空調室内機10の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る運転停止時の空調室内機10の断面図である。また、図2は、運転時の空調室内機10の断面図である。図1及び図2において、空調室内機10は壁掛けタイプであり、本体ケーシング11、室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40が搭載されている。
【0023】
本体ケーシング11は、天面部11a、前面パネル11b、背面板11c及び下部水平板11dを有し、内部に室内熱交換器13、室内ファン14、底フレーム16、及び制御部40を収納している。
【0024】
天面部11aは、本体ケーシング11の上部に位置し、天面部11aの前部には、吸込口(図示せず)が設けられている。
【0025】
前面パネル11bは室内機の前面部を構成しており、吸込口がないフラットな形状を成している。また、前面パネル11bは、その上端が天面部11aに回動自在に支持され、ヒンジ式に動作することができる。
【0026】
室内熱交換器13及び室内ファン14は、底フレーム16に取り付けられている。室内熱交換器13は、通過する空気との間で熱交換を行う。また、室内熱交換器13は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状の形状を成し、その下方に室内ファン14が位置する。室内ファン14は、クロスフローファンであり、室内から取り込んだ空気を、室内熱交換器13に当てて通過させた後、室内に吹き出す。
【0027】
本体ケーシング11の下部には、吹出口15が設けられている。吹出口15には、吹出口15から吹き出される吹出空気の方向を変更する風向調整羽根31が回動自在に取り付けられている。風向調整羽根31は、モータ(図示せず)によって駆動し、吹出空気の方向を変更するだけでなく、吹出口15を開閉することもできる。風向調整羽根31は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0028】
また、吹出口15の近傍にはコアンダ羽根32が設けられている。コアンダ羽根32は、モータ(図示せず)によって前後方向に傾斜した姿勢をとることが可能であり、運転停止時に前面パネル11bに設けられた収容部130に収容される。コアンダ羽根32は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。
【0029】
また、吹出口15は、吹出流路18によって本体ケーシング11の内部と繋がっている。吹出流路18は、吹出口15から底フレーム16のスクロール17に沿って形成されている。
【0030】
室内空気は、室内ファン14の稼動によって吸込口、室内熱交換器13を経て室内ファン14に吸い込まれ、室内ファン14から吹出流路18を経て吹出口15から吹き出される。
【0031】
制御部40は、本体ケーシング11を前面パネル11bから視て室内熱交換器13及び室内ファン14の右側方に位置しており、室内ファン14の回転数制御、風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の動作制御を行う。
【0032】
(2)詳細構成
(2−1)前面パネル11b
図1に示すように、前面パネル11bは本体ケーシング11の上部前方からなだらかな円弧曲面を描きながら下部水平板11dの前方エッジに向かって延びている。前面パネル11bの下部に本体ケーシング11の内側に向かって窪んだ領域がある。この領域の窪み深さはコアンダ羽根32の厚み寸法に合うように設定されており、コアンダ羽根32が収容される収容部130を成している。収容部130の表面もなだらかな円弧曲面である。
【0033】
(2−2)吹出口15
図1に示すように、吹出口15は、本体ケーシング11の下部に形成されており、横方向(図1紙面と直交する方向)を長辺とする長方形の開口である。吹出口15の下端は下部水平板11dの前方エッジに接しており、吹出口15の下端と上端とを結ぶ仮想面は前方上向きに傾斜している。
【0034】
(2−3)スクロール17
スクロール17は、室内ファン14に対峙するように湾曲した隔壁であり、底フレーム16の一部である。スクロール17の終端Fは、吹出口15の周縁近傍まで到達している。吹出流路18を通る空気は、スクロール17に沿って進み、スクロール17の終端Fの接線方向に送られる。したがって、吹出口15に風向調整羽根31がなければ、吹出口15から吹き出される吹出空気の風向は、スクロール17の終端Fの接線L0に概ね沿った方向である。
【0035】
(2−4)垂直風向調整板20
垂直風向調整板20は、図1及び図2に示すように、複数の羽根片201と、複数の羽根片201を連結する連結棒203を有している。また、垂直風向調整板20は、吹出流路18において、風向調整羽根31よりも室内ファン14近傍に配置されている。
【0036】
複数枚の羽根片201は、連結棒203が吹出口15の長手方向に沿って水平往復移動することによって、その長手方向に対して垂直な状態を中心に左右に揺動する。なお、連結棒203は、モータ(図示せず)によって水平往復移動する。
【0037】
(2−5)風向調整羽根31
風向調整羽根31は、吹出口15を塞ぐことができる程度の面積を有している。風向調整羽根31が吹出口15を閉じた状態において、その外側面31aは前面パネル11bの曲面の延長上にあるような外側に凸のなだらかな円弧曲面に仕上げられている。また、風向調整羽根31の内側面31b(図2参照)も、外面にほぼ平行な円弧曲面を成している。
【0038】
風向調整羽根31は、下端部に回動軸311を有している。回動軸311は、吹出口15の下端近傍で、本体ケーシング11に固定されているステッピングモータ(図示せず)の回転軸に連結されている。
【0039】
回動軸311が図1正面視反時計方向に回動することによって、風向調整羽根31の上端が吹出口15の上端側から遠ざかるように動作して吹出口15を開ける。逆に、回動軸311が図1正面視時計方向に回動することによって、風向調整羽根31の上端が吹出口15の上端側へ近づくように動作して吹出口15を閉じる。
【0040】
風向調整羽根31が吹出口15を開けている状態において、吹出口15から吹き出された吹出空気は、風向調整羽根31の内側面31bに概ね沿って流れる。すなわち、スクロール17の終端Fの接線方向に概ね沿って吹き出された吹出空気は、その風向が風向調整羽根31によってやや上向きに変更される。
【0041】
(2−6)コアンダ羽根32
コアンダ羽根32は、空調運転が停止している間や後述する通常吹出モードでの運転では収容部130に収納されている。コアンダ羽根32は回動することによって収容部130から離れる。コアンダ羽根32の回動軸321は、収容部130の下端近傍で且つ本体ケーシング11の内側の位置(吹出流路18上壁の上方の位置)に設けられており、コアンダ羽根32の下端部と回動軸321とは所定の間隔を保って連結されている。それゆえ、回動軸321が回動してコアンダ羽根32がケーシング前面部の収容部130から離れるほど、コアンダ羽根32の下端の高さ位置は低くなるように回転する。また、コアンダ羽根32が回転して開いたときの傾斜はケーシング前面部の傾斜よりも緩やかである。
【0042】
本実施形態では、収容部130は、送風路の外に設けられており、収容時にコアンダ羽根32の全体が送風路の外側に収容される。かかる構造に代えて、コアンダ羽根32の一部のみが送風路の外側に収容され、残りが送風路内(たとえば、送風経路の上壁部)に収容されるようにしてもよい。
【0043】
また、回動軸321が図1正面視反時計方向に回動することによって、コアンダ羽根32の上端および下端ともに円弧を描きながら収容部130から離れるが、そのとき、上端と吹出口より上方のケーシング前面部の収容部130との最短距離は、下端と収容部130との最短距離より大きい。すなわち、コアンダ羽根32は前方に行くにしたがって前記ケーシング前面部から離れるような姿勢に制御される。そして、回動軸321が図1正面視時計方向に回動することによって、コアンダ羽根32は収容部130に近づき、最終的に収容部130収容される。コアンダ羽根32の運転状態の姿勢としては、収容部130に収納された状態、回転して前方上向きに傾斜した姿勢、さらに回転してほぼ水平な姿勢、さらに回転して前方下向きに傾斜した姿勢がある。
【0044】
コアンダ羽根32が収容部130に収容された状態で、コアンダ羽根32の外側面32aは前面パネル11bのなだらかな円弧曲面の延長上にあるような外側に凸のなだらかな円弧曲面に仕上げられている。また、コアンダ羽根32の内側面32bは、収容部130の表面に沿うような円弧曲面に仕上げられている。
【0045】
また、コアンダ羽根32の長手方向の寸法は、風向調整羽根31の長手方向の寸法以上となるように設定されている。この理由は風向調整羽根31で風向調節された吹出空気すべてをコアンダ羽根32で受けるためであり、その目的はコアンダ羽根32の側方からの吹出空気がショートサーキットすることを防止することである。
【0046】
(3)吹出空気の方向制御
本実施形態の空調室内機は、吹出空気の方向を制御する手段として、風向調整羽根31のみを回動させて吹出空気の方向を調整する通常吹出モードと、風向調整羽根31及びコアンダ羽根32を回動させてコアンダ効果によって吹出空気をコアンダ羽根32の外側面32aに沿わせたコアンダ気流にするコアンダ効果利用モードと、風向調整羽根31及びコアンダ羽根32それぞれの先端を前方下向きにして吹出空気を下方に導く下吹きモードを有している。
【0047】
風向調整羽根31及びコアンダ羽根32は、上記各モードにおいて空気の吹出方向ごとに姿勢が変化するので、各姿勢について図3A〜図3Eを参照しながら説明する。なお、吹出方向の選択は、ユーザーがリモコン等を介して行なうことができるものとする。また、モードの変更や吹出方向は自動的に変更されるように制御することも可能である。
【0048】
(3−1)通常吹出モード
通常吹出モードは、風向調整羽根31のみを回動させて吹出空気の方向を調整するモードであり、「通常前吹き」と「通常前方下吹き」とを含む。
【0049】
(3−1−1)通常前吹き
図3Aは、吹出空気が通常前吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Aにおいて、ユーザーが「通常前吹き」を選択したとき、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bが略水平になる位置まで風向調整羽根31を回動させる。なお、本願実施形態のように風向調整羽根31の内側面31bが円弧曲面をなしている場合は、内側面31bの前方端E1における接線が略水平になるまで風向調整羽根31を回動させる。その結果、吹出空気は、前吹き状態となる。
【0050】
なお、コアンダ羽根32は収容部130に収容されているので、コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの間に空気が通過できるような隙間は生じないので、空気がコアンダ羽根32の内側面32b側を通過することができない。
【0051】
(3−1−2)通常前方下吹き
図3Bは、吹出空気が通常前方下吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Bにおいて、ユーザーは吹出方向を「通常前吹き」よりも下方に向けたいとき、「通常前方下吹き」を選択すればよい。
【0052】
このとき、制御部40は、風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線が水平よりも前下がりになるまで風向調整羽根31を回動させる。その結果、吹出空気は、前方下吹き状態となる。
【0053】
なお、コアンダ羽根32は収容部130に収容されているので、コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの間に空気が通過できるような隙間は生じないので、空気がコアンダ羽根32の内側面32b側を通過することができない。
【0054】
(3−2)コアンダ効果利用モード
コアンダ(効果)とは、気体や液体の流れのそばに壁があると、流れの方向と壁の方向とが異なっていても、壁面に沿った方向に流れようとする現象である(朝倉書店「法則の辞典」)。コアンダ利用モードは、このコアンダ効果を利用した「コアンダ気流前方吹き」および「コアンダ気流天井吹き」を含む。
【0055】
また、吹出空気の方向およびコアンダ気流の方向については、基準位置の取り方次第で定義の方法が異なるので、以下に一例を示す、但し、それに限定されるものではない。図4Aは、吹出空気の方向およびコアンダ気流の方向を示す概念図である。図4Aにおいて、コアンダ羽根32の外側面32a側にコアンダ効果を生じさせるには、風向調整羽根31によって変更された吹出空気の方向(D1)の傾斜がコアンダ羽根32の姿勢(傾斜)に近くなる必要がある。両者が離れすぎているとコアンダ効果が生じない。そのため、本コアンダ効果利用モードでは、コアンダ羽根32と風向調整羽根31とが所定の開き角度以下になる必要があり、両調整板(31、32)がその範囲内を成すようにして、上記の関係が成立するようにしている。これにより、図4Aに示すように、吹出空気の風向が風向調整羽根31によってD1に変更された後、さらにコアンダ効果によりD2に変更される。
【0056】
また、本実施形態のコアンダ効果利用モードでは、コアンダ羽根32が風向調整羽根31の前方(吹出の下流側)かつ上方の位置あるのが好ましい。
【0057】
また、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との開き角度については、基準位置の取り方次第で定義の方法が異なるので、以下に一例を示す。但し、それに限定されるものではない。図4Bは、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との開き角度の一例を表す概念図である。図4Bにおいて、風向調整羽根31の内側面31bの前後端を結ぶ直線と水平線との角度を風向調整羽根31の傾斜角θ1とし、コアンダ羽根32の外側面32aの前後端を結ぶ直線と水平線との角度をコアンダ羽根32の傾斜角θ2としたとき、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との開き角度θ=θ2−θ1である。なお、θ1及びθ2は絶対値ではなく、図4B正面視において水平線よりも下方となる場合は負の値である。
【0058】
「コアンダ気流前方吹き」および「コアンダ気流天井吹き」ともに、風向調整羽根31およびコアンダ羽根32は、スクロール17の終端Fの接線とコアンダ羽根32とが成す内角が、スクロール17の終端Fの接線と風向調整羽根31とが成す内角よりも大きい、という条件を満たす姿勢をとるのが好ましい。
【0059】
なお、内角については、図5A(コアンダ気流前方吹き時のスクロール17の終端Fの接線L0とコアンダ羽根32とが成す内角R2と、スクロール17の終端Fの接線L0と風向調整羽根31とが成す内角R1との比較図)、および図5B(コアンダ気流天井吹き時のスクロール17の終端Fの接線L0とコアンダ羽根32とが成す内角R2と、スクロール17の終端Fの接線L0と風向調整羽根31とが成す内角R1との比較図)を参照のこと。
【0060】
また、図5Bに示すように、コアンダ効果利用モードにおけるコアンダ羽根32では、コアンダ羽根32の先端部が水平より前方上向で、吹出口15よりも外側上方に位置する。その結果、コアンダ気流はより遠方に到達する上に、コアンダ羽根32の上側において、風がスクロール17に沿って斜め下方に直進することが抑制されるため、コアンダ気流の上方への誘導が阻害されにくくなる。
【0061】
また、コアンダ羽根32の後端部の高さ位置は運転停止時よりも低くなっているので、上流側でのコアンダ効果によるコアンダ気流が生成し易い。
【0062】
(3−2−1)コアンダ気流前方吹き
図3Cは、コアンダ気流前方吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Cにおいて、「コアンダ気流前方吹き」が選択されたとき、制御部40は、風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平よりも前下がりになるまで風向調整羽根31を回動させる。
【0063】
次に、制御部40は、コアンダ羽根32の外側面32aが略水平になる位置までコアンダ羽根32を回動させる。なお、本願実施形態のようにコアンダ羽根32の外側面32aが円弧曲面をなしている場合は、外側面32aの前方端E2における接線L2が略水平になるまでコアンダ羽根32を回動させる。つまり、図5Aに示すように、接線L0と接線L2とが成す内角R2は、接線L0と接線L1とが成す内角R1よりも大きくなる。
【0064】
風向調整羽根31で前方下吹きに調整された吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aに付着した流れとなり、この外側面32aに沿ったコアンダ気流に変わる。
【0065】
したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方下吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が水平であるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち水平方向に吹き出される。
【0066】
このように、コアンダ羽根32がケーシング前面部から離れて傾斜が緩やかになり、吹出空気が前面パネル11bよりも前方でコアンダ効果を受け易くなる。その結果、風向調整羽根31で風向調節された吹出空気が前方下吹きであっても、コアンダ効果によって水平吹きの空気となる。これは、風向調整羽根31の通風抵抗による圧損が抑制されつつ風向が変更されることを意味する。
【0067】
なお、図3Cに示すようにコアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間は収容時よりも大きくなっており、コアンダ羽根32の内側面32b側にも空気が通過する。それゆえ、コアンダ羽根32への結露が防止される。
【0068】
(3−2−2)コアンダ気流天井吹き
図3Dは、コアンダ気流天井吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Dにおいて、「コアンダ気流天井吹き」が選択されたとき、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平になるまで風向調整羽根31を回動させる。
【0069】
次に、制御部40は、外側面32aの前方端E2における接線L2が前方上向きとなるまでコアンダ羽根32を回動させる。つまり、図5Bに示すように、接線L0と接線L2とが成す内角R2は、接線L0と接線L1とが成す内角R1よりも大きくなる。風向調整羽根31で水平吹きに調整された吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aに付着した流れとなり、この外側面32aに沿ったコアンダ気流に変わる。
【0070】
したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が前方上吹きであるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち天井方向に吹き出される。コアンダ羽根32の先端部は吹出口15より外側に突出しているので、コアンダ気流はより遠方に到達する。さらに、コアンダ羽根32の先端部は吹出口15よりも上方に位置しているので、コアンダ羽根32の上側において、風がスクロール17に沿って斜め下方に直進することが抑制されるため、コアンダ気流の上方への誘導が阻害されにくい。
【0071】
このように、コアンダ羽根32がケーシング前面部から離れて傾斜が緩やかになり、吹出空気が前面パネル11bよりも前方でコアンダ効果を受け易くなる。その結果、風向調整羽根31で風向調節された吹出空気が前方吹きであっても、コアンダ効果によって上向きの空気となる。これは、風向調整羽根31の通風抵抗による圧損が抑制されつつ風向が変更されることを意味する。
【0072】
その結果、吹出口15が開き気味のまま、吹出空気が天井方向へ誘導される。つまり、通風抵抗が低く保たれた状態で吹出空気が天井方向へ誘導される。
【0073】
なお、コアンダ羽根32の長手方向の寸法は、風向調整羽根31の長手方向の寸法以上である。それゆえ、風向調整羽根31で風向調節された吹出空気すべてをコアンダ羽根32で受けることができ、コアンダ羽根32の側方から吹出空気がショートサーキットすることが防止されるという効果も奏している。
【0074】
なお、図3Dに示すように、天井吹き姿勢のコアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間は、前方吹き姿勢のときよりは小さいものの、収容時よりも大きくなっており、コアンダ羽根32の内側面32b側にも空気が通過することができる。それゆえ、コアンダ羽根32への結露が防止される。
【0075】
(3−3)下吹きモード
図3Eは、下吹き時の風向調整羽根31及びコアンダ羽根32の側面図である。図3Eにおいて、「下吹き」が選択されたとき、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線が下向きなるまで風向調整羽根31を回動させる。
【0076】
次に、制御部40は、外側面32aの前方端E2における接線が下向きとなるまでコアンダ羽根32を回動させる。その結果、吹出空気は、風向調整羽根31とコアンダ羽根32との間を通過し、下向きに吹き出される。
【0077】
特に、風向調整羽根31がスクロール17の終端部の接線角度より下向きになったときでも、制御部40が下吹きモードを実行することによって、コアンダ羽根32の外側面32aに当てて下向きの気流を生成することができる。
【0078】
(4)動作
上記のような吹出空気の方向制御を利用した空調室内機の動作について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0079】
(4−1)コアンダ羽根32の第1姿勢
図6Aは、コアンダ羽根32が第1姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図6Aにおいて、空調室内機10は室内側壁の上方に設置されている。コアンダ羽根32は、収納部130に収納されている状態(以後、第1姿勢とよぶ)である。コアンダ羽根32が第1姿勢のときに風向調整羽根31の姿勢を水平よりも上向きにすることによって、風向調整羽根31の内側面31bで風向調整された吹出空気がその内側面31bを離れた後、コアンダ羽根32の外側面32aに引っ張られるように方向を変え、第1コアンダ気流となってコアンダ羽根32の外側面32aおよび前面パネル11bに沿うように流れる。
【0080】
この第1姿勢は、ショートサーキットを形成させたいときに選択される。その目的は、公知文献(特開平10−9659号公報)にも開示されているように、冷風感を生じさせることなく室内を除湿することである。
【0081】
ここで、ユーザーがコアンダ気流を選択する方法について説明する。図7Aは、制御部40とリモコン50との関係を示すブロック図である。図7Aにおいて、リモコン50は赤外線信号を無線で送信する。リモコン50には、風向を切り換えるための切換手段を有している。具体的には、ユーザーが風向を選択できるように、風向選択メニューを表示する表示部52と、各風向選択メニューを指定するためのカーソル52aを有している。
【0082】
先ず、ユーザーは、表示部52に表示されたメニューの中から「コアンダ風向設定」をカーソル52aで選択する。なお、リモコン50によるメニューの選択および確定するための技術は広く公開されているので詳細な説明は省略する。
【0083】
図7Bは、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューを表した表示部52の正面図である。図7Bにおいて、「コアンダ風向設定」メニューの下位メニューには、第1〜第5コアンダ角度が予め準備されており、カーソル52aで第1コアンダ角度を指定して確定することによって、コアンダ羽根32は図6Aに示す第1姿勢をとり、第1コアンダ角度に応じた第1の向きのコアンダ気流が発生する。
【0084】
(4−2)コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢
次に、図6Bは、コアンダ羽根32が第2姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図6Bにおけるコアンダ羽根32の第2姿勢は、図7Bにおいてカーソル52aで第2コアンダ角度を指定し確定することによって成し得る。コアンダ羽根32が第2姿勢のときに発生するコアンダ気流は、「(3−2−2)コアンダ気流天井吹き」の段で説明したコアンダ気流に相当する。第2コアンダ角度が選択されたとき、図3Dに示すように、制御部40は風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平になるまで風向調整羽根31を回動させ、次に、外側面32aの前方端E2における接線L2が前方上向きとなるまでコアンダ羽根32を回動させる。したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が前方上吹きであるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち天井方向に吹き出される。
【0085】
なお、一旦、コアンダ気流が発生すると、風向調整羽根31を動かさずにコアンダ羽根32の角度のみを変動させてコアンダ気流の風向を調整することができる。例えば、図8Aは、コアンダ羽根32が第3姿勢のときの風向調整羽根31とコアンダ羽根32の側面図である。図8Aにおいて、コアンダ羽根32の第3姿勢は第2姿勢よりも下向きである。なお、図8Aでは、比較のために第2姿勢のコアンダ羽根32を2点鎖線で、第3姿勢のコアンダ羽根32を実線で描いている。
【0086】
第2姿勢でコアンダ気流が確実に発生し、且つ、風向調整羽根31の姿勢が変わらないとすれば、第2姿勢よりも下向きである第3姿勢でコアンダ気流がコアンダ羽根32の外側面32aから剥離しないことは明らかである。このように、コアンダ気流天井吹きを実施したいときは、図7Bにおいてカーソル52aで第2コアンダ角度、若しくは第3コアンダ角度を選択することによって成し得る。
【0087】
コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢では、風向調整羽根31によって吹出空気がコアンダ羽根32の湾曲面320に近づく方向へ風向調整され、コアンダ羽根32がその風向調整された吹出空気を自己の湾曲面320に沿ったコアンダ気流に変えるので、風向偏向効果が大きい。
【0088】
また、第2姿勢および第3姿勢では、コアンダ羽根32の先端部は天井向きになっているので、コアンダ羽根32の湾曲面320に沿ったコアンダ気流は、前面パネル11bから離れながら、且つ、天上向きに進むことができる。この場合は、本体ケーシング11の前面上方に吸込口があってもショートサーキットを防止することができる。
【0089】
他方、コアンダ羽根32の後端部は下向きであるので、スクロール17自体の角度、つまり下向きの角度に近い角度となり、コアンダ羽根32に吹出空気が沿いやすくなる。なお、仮に後端部が上向きならば、スクロール角度とのギャップが大きくなり、コアンダ羽根に吹出空気が沿わなくなる。
【0090】
さらに、コアンダ羽根32の先端部が上向きで後端部が下向きであるので、風を捕まえるようにコアンダ羽根32の後端部で気流を外側面32aに沿わせておき、段々と上向きに曲げていくことが可能となる。
【0091】
本実施形態では、コアンダ羽根32の第2姿勢および第3姿勢は、調和空気を遠方に飛ばしたいときに選択されることを想定している。例えば、吹出口15から天井までの高さ距離、および吹出口15からその対面壁までの対面距離がともに大きい場合は、コアンダ羽根32の姿勢は第2姿勢が好ましい。他方、吹出口15から天井までの高さ距離は小さいが、吹出口15からその対面壁までの対面距離が大きい場合などはコアンダ羽根32の姿勢は第3姿勢が好ましい。このようにユーザーは、リモコン50を介して室内空間の大きさに応じてコアンダ羽根32の姿勢を選択することができるので、使い勝手がよい上に、調和空気を空調対象空間に均一に行き渡らせることが可能となる。
【0092】
(4−2−1)コアンダ羽根32の形状について
コアンダ羽根32の形状について、コアンダ羽根32の外側面32aは、凸状に湾曲している形状であっても、平面形状であってもよいが、以下の点で、外側面32aは凸状に湾曲していることが好ましい。
【0093】
図8Aにおいて、コアンダ羽根32の外側面32aは、凸状に湾曲して湾曲面320を形成している。コアンダ羽根32の姿勢は、吹出口15から離れるにしたがって前面パネル11bから離れる姿勢となるので、コアンダ羽根32の湾曲面320に沿ったコアンダ気流は、前面パネル11bから離れながら、且つ、上向きに進むことができる。また、コアンダ羽根32先端部の角度が上向きの角度となり、コアンダ羽根の傾斜角度を急にすることなく、上向きの気流を発生させることができる。
【0094】
また、スクロール17の終端部の接線が下向きであっても、吹出空気がコアンダ羽根32の湾曲面320に沿った上向きのコアンダ気流となる。
【0095】
また、前面パネル11bとコアンダ羽根32の湾曲面320とは1つの連続的な仮想曲面上に並ぶように湾曲させることによって、コアンダ羽根32収容時のケーシング前面部の見栄えがよくなる。
【0096】
なお、コアンダ羽根32の湾曲面320は、湾曲度合いの異なる複数の湾曲面で形成されてもよい。なぜなら、複数の湾曲面で偏向度合いを徐々に高めることによって、コアンダ気流が湾曲面から剥離することを抑制しつつ、吹出空気の方向からコアンダ気流の方向への偏向度合いを高めることができるからである。
【0097】
(4−3)コアンダ羽根32の第4姿勢および第5姿勢
さらに、図6Cは、コアンダ羽根32が第4姿勢をとるときのコアンダ気流の風向を示す空調室内機設置空間の側面図である。図6Cにおけるコアンダ羽根32の第4姿勢は、図7Bにおいてカーソル52aで第4コアンダ角度を指定し確定することによって成し得る。コアンダ羽根32が第4姿勢のときに発生するコアンダ気流は、「(3−2−1)コアンダ気流前方吹き」の段で説明したコアンダ気流に相当する。第4コアンダ角度が選択されたとき、図3Cに示すように、制御部40は、風向調整羽根31の内側面31bの前方端E1における接線L1が水平よりも前下がりになるまで風向調整羽根31を回動させ、次に、コアンダ羽根32の外側面32aが略水平になる位置までコアンダ羽根32を回動させる。したがって、風向調整羽根31の前方端E1における接線L1方向が前方下吹きであっても、コアンダ羽根32の前方端E2における接線L2方向が水平であるので、吹出空気は、コアンダ効果によってコアンダ羽根32の外側面32aの前方端E2における接線L2方向、すなわち水平方向に吹き出される。
【0098】
なお、一旦、コアンダ気流が発生すると、風向調整羽根31を動かさずにコアンダ羽根32の角度のみを変動させてコアンダ気流の風向を調整することができる。例えば、図8Bは、コアンダ羽根32が第5姿勢のときの風向調整羽根31とコアンダ羽根32の側面図である。図8Bにおいて、コアンダ羽根32の第5姿勢は第4姿勢よりも下向きである。なお、図8Bでは、比較のために比較のために第4姿勢のコアンダ羽根32を2点鎖線で、第5姿勢のコアンダ羽根32を実線で描いている。
【0099】
第4姿勢でコアンダ気流が確実に発生し、且つ、風向調整羽根31の姿勢が変わらないとすれば、第4姿勢よりも下向きである第5姿勢でコアンダ気流がコアンダ羽根32の外側面32aから剥離しないことは明らかである。このように、コアンダ気流前方吹きを実施したいときは、図7Bにおいてカーソル52aで第4コアンダ角度、若しくは第5コアンダ角度を選択することによって成し得る。
【0100】
なお、上記の説明で明らかなように、コアンダ羽根32の第1姿勢、第2姿勢および第4姿勢それぞれに対して風向調整羽根31の姿勢が異なる。言い換えると、コアンダ羽根32によるコアンダ気流は、風向調整羽根31の姿勢とコアンダ羽根32の姿勢との組み合わせによって如何なる方向にも仕向けることができる。
【0101】
(5)特徴
(5−1)
空調室内機10では、コアンダ羽根32が、利用時に吹出空気の風向を調整し、非利用時に吹出空気の風路および吹出口の前方から外れた位置、すなわち、収容部130に収容される。制御部40は、コアンダ羽根32の利用時に、コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間が収容時よりも大きくなるようにコアンダ羽根32を制御するので、コアンダ羽根32の両面に空気が通過するようになる。その結果、コアンダ羽根32への結露が防止される。
【0102】
なお、空調室内機10では、従来品のようにコアンダ羽根と導風板との組み合わせをしなくとも、コアンダ羽根32だけで吹出空気を上吹き、又は天井吹きに偏向することができる。
【0103】
(5−2)
空調室内機10では、コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間は、収容時にほぼゼロとなるので、少なくとも意匠性の低下を抑制することができる。
【0104】
(6)変形例
上記実施形態では、コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間を通過する空気は、量としてはそれほど多くなく、ほとんどがコアンダ羽根32の内側面32bに沿って流れる。
【0105】
しかし、収容部130の前面壁においてコアンダ効果が作用し、その壁面に沿ったコアンダ気流が発生した場合、それが本体ケーシング11の上部に到達して吸込口に吸い込まれ、ショートサーキットとなる可能性もある。それゆえ、収容部130の下方にコアンダ気流の発生を阻止する形状を設けることが好ましい。
【0106】
図9は、変形例に係る空調室内機10の収容部130周辺の側面図である。図9において、突起140が、収容部130の下部と吹出口15の上部形成壁15aとをつなぐ壁面上に設けられている。
【0107】
コアンダ羽根32と吹出口15の上部形成壁15aとの隙間を通過する空気のうち、一部はコアンダ羽根32の内側面32bに沿うように流れ、一部は突起140に衝突する。
【0108】
突起140は外側に突出しているので、突起140に衝突した空気は、突起140の先端部において剥離し、突起140の後方はいわゆる死水域となる。
【0109】
それゆえ、収容部130の壁面および前面パネル11bに沿ったコアンダ気流の発生は防止される。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、壁掛け式空調室内機に有用である。
【符号の説明】
【0111】
10 空調室内機
15 吹出口
32 コアンダ羽根
32a 外側面(下面)
40 制御部
130 収容部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開2003−232531号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口から取り入れられ本体ケーシング(11)内で調和された後に吹出口(15)から吹き出される吹出空気の流れを所定の方向へ変更可能な空調室内機であって、
利用時に前記吹出空気の風向を調整し、非利用時に吹出空気の風路および前記吹出口(15)の前方から外れた位置に収容される可動の導風板(32)と、
前記導風板(32)の利用時に、前記導風板(32)と前記吹出口(15)の形成壁との隙間が収容時よりも大きくなるように前記導風板(32)を制御する制御部(40)と、
を備える空調室内機(10)。
【請求項2】
前記導風板(32)と前記吹出口(15)の形成壁との隙間は、収容時にほぼゼロとなる、
請求項1に記載の空調室内機(10)。
【請求項3】
前記収容部(130)は前記本体ケーシング(11)の前面部に設けられており、
前記本体ケーシング(11)の前面部に、コアンダ効果の発生を防止する形状が形成されている、
請求項1に記載の空調室内機(10)。
【請求項4】
前記導風板(32)は、前記吹出口(15)の近傍に設けられ、前記吹出空気を自己の下面(32a)に沿わせたコアンダ気流にするコアンダ羽根である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空調室内機(10)。
【請求項5】
前記本体ケーシング(11)の天面に吸込口が設けられ、前記本体ケーシング(11)の前面部には吸込口が設けられていない、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空調室内機(10)。
【請求項1】
吸込口から取り入れられ本体ケーシング(11)内で調和された後に吹出口(15)から吹き出される吹出空気の流れを所定の方向へ変更可能な空調室内機であって、
利用時に前記吹出空気の風向を調整し、非利用時に吹出空気の風路および前記吹出口(15)の前方から外れた位置に収容される可動の導風板(32)と、
前記導風板(32)の利用時に、前記導風板(32)と前記吹出口(15)の形成壁との隙間が収容時よりも大きくなるように前記導風板(32)を制御する制御部(40)と、
を備える空調室内機(10)。
【請求項2】
前記導風板(32)と前記吹出口(15)の形成壁との隙間は、収容時にほぼゼロとなる、
請求項1に記載の空調室内機(10)。
【請求項3】
前記収容部(130)は前記本体ケーシング(11)の前面部に設けられており、
前記本体ケーシング(11)の前面部に、コアンダ効果の発生を防止する形状が形成されている、
請求項1に記載の空調室内機(10)。
【請求項4】
前記導風板(32)は、前記吹出口(15)の近傍に設けられ、前記吹出空気を自己の下面(32a)に沿わせたコアンダ気流にするコアンダ羽根である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空調室内機(10)。
【請求項5】
前記本体ケーシング(11)の天面に吸込口が設けられ、前記本体ケーシング(11)の前面部には吸込口が設けられていない、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空調室内機(10)。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【公開番号】特開2013−96638(P2013−96638A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239779(P2011−239779)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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