説明

空調機及び空調システム

【課題】大きな設置容積の増大を招くことなく冗長システムの構成が可能な空調機及び該空調機を含む空調システムを提供する。
【解決手段】
複数の吹出口が設けられ、各吹出口に対応する複数の流路が独立して形成されたハウジングと、該ハウジング内に設けられ、熱源との間で熱媒体が循環し、前記流路を横切って設置された1又は複数のコイルと、該コイルを介して前記熱源からの前記熱媒体と熱交換した風を前記吹出口から吹き出すべく前記各吹出口に対応して前記吹出口が設けられたハウジングに備えられた各ファンと、前記各吹出口に対応して設けられた空気流の逆流を阻止するための逆流防止機構と、前記各ファンを駆動すべく該各ファンに対応して設けられた複数の駆動源と、該各駆動源を個別に制御可能な制御装置とを含む空調システム。複数の駆動源の個別制御を可能とすることにより、冗長構成の空調システムを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバのような情報処理電子機器本体を収容するラックが集合的に配置された部屋を冷却するのに好適な空調機及び空調システムに関し、特に、冗長システムを構成するのに好適な空調機及び空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型コンピュータが設置されたコンピュータ室や多数のサーバを収容するラックが整列して配置されたサーバ室には、これら電子機器の動作環境を維持するための空調機が不可欠である。前記したサーバが設置された大空間のコンピュータ室に適用される空調システムには、必要な冷却能力を安定して得るために一般的に予備機を含む複数の空調機で冗長システムが組まれている(例えば特許文献1及び2)。このような冗長構成の空調システムでは、例えば1台の空調機が故障しても、予備機を含む前記複数の空調機の適正な作動の制御によって、電子機器に適正な動作環境を維持することができる。
【0003】
ところで、このような冗長構成を採用するためには、空調対象となる部屋の最大熱負荷から求められた必要最小限の台数の空調機に加えて、前記した予備機として機能する空調機をさらに設置する必要が生じる。
【0004】
しかしながら、ラック列単位で区画された小型モジュールサーバ室のような比較的小空間では、冗長システムを構成するための予備の空調機の設置に充分な空間の確保が困難な場合がある。なお、ラック列単位で区画する理由は、ラックの配置換えや改修がラック列単位で行え、運用上有利なためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−6659号公報
【特許文献2】特開平7−95735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、大きな設置容積の増大を招くことなく冗長システムの構成が可能な空調機及び該空調機を含む空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空調機は、複数の吹出口が設けられ、各吹出口に対応する流路がそれぞれ独立して形成されたハウジングと、該ハウジング内に設けられ、熱源との間で熱媒体が循環し、前記各流路にそれぞれ対応して各流路を横切って設置されたコイルと、該コイルを介して前記熱源からの前記熱媒体と熱交換した風を前記吹出口から吹き出すべく前記各吹出口に対応して前記吹出口が設けられたハウジングにそれぞれ備えられた各ファンと、前記各吹出口に対応して設けられた空気流の逆流を阻止するための逆流防止機構と、前記ファンを駆動すべく各ファンに対応して設けられた駆動源と、該各駆動源を個別に制御可能な制御装置とを含む。
【0008】
前記ハウジング、コイル、ファン及び該ファンを駆動する駆動源は一般的なファンコイルユニットを構成する要素である。前記流路を共通するハウジングを用い、該ハウジング内に、コイル、ファン及び駆動源のようなハウジングを除く複数のファンコイルユニットセットの構成要素を組み込むだけでは、ファンが停止した吹出口からの室内空気の逆流を招くので、システムを実現することはできない。
【0009】
しかしながら、本発明に係る前記空調機では、前記流路がそれぞれ独立したハウジングの各吹出口に対応して設けられるファンを駆動する各駆動源が個別に制御であることから、各吹出口から吹き出る空気量を個別に制御することができる。そのため、前記吹出口の数に対応した個数の、吹出量が個別に調整可能な単位モジュールとして作動させることができ、この単位モジュールの集中配置により、大きな設置容積の増大を招くことはない。
【0010】
しかも、前記吹出口には、各吹出口に対応して吹出口空気流の逆流を阻止するための逆流防止機構が設けられおり、この逆流防止機構により、例えば1つの吹出口に対応した単位モジュールに不具合が生じても、該不具合が生じた単位モジュールの吹出口を閉鎖することができるので、該吹出口を経る空気の逆流を確実に阻止することができ、この逆流による空気流の変化を確実に防止できる。これにより、比較的小空間単位での冗長システムの構成が可能となる。
【0011】
単一のハウジングを用いることなく、複数のハウジングの結合によっても本願発明を実現できる。すなわち、本発明に係る空調機のハウジングとして、複数のハウジングであってそれぞれに1つの吹出口が設けられ該吹出口に対応する流路が形成され、該吹出口が整列するように相互に結合された複数のハウジングを用いることができる。前記各ハウジング内には、前記したと同様なコイル、ファン、逆流防止機構、駆動源が配置され、該各駆動源が制御装置により個別に制御される。これにより、前記したと同様に、比較的小空間単位での運転が可能となる。
【0012】
前記逆流防止機構をチャッキダンパーとすることにより、制御装置の作動によることなく、前記吹出口の送風停止に伴って自動的に該吹出口を閉鎖することができる。
【0013】
複数のハウジングを用いる場合、前記ハウジング毎でモジュール化された構成を採用することができるので、運搬が容易に行え、狭いエレベータにも載せ易い。
【0014】
前記コイルは、相互に上下となるように設けることもできる。この場合、熱媒体の流路が上下に構成され、前記熱源からの熱媒体が上段コイルに案内された後、下段コイルに案内される。この構成により、熱媒体の熱を有効に利用することができる。
【0015】
前記ハウジングには、前記流路に沿って前記コイルの前後のいずれか一方に該コイルと並列又は直列に接続される追加コイルを収容するに充分な奥行きを有する空間を設けることができる。これにより、空調対象の熱量の増大に応じて空調機の冷却能力を高めることができる。
【0016】
前記空間には前記追加コイルを設置するための支持具を配置し、さらに該支持具に前記コイルの点検を許すための点検用扉を設けることができる。
【0017】
本発明に係る空調機は、最大熱負荷が定められた空間の熱負荷を処理する空調機において、その空調機の容量をn分割して各単位モジュールとし、該単位モジュールの台数をn+1とし、該各単位モジュールの空気側流路を独立して形成し、該各単位モジュールに逆流防止機構を設けることができる。
【0018】
前記各単位モジュールのファンのための電動機に能力制御機能、すなわち回転速度可変機能を付与することができる。
【0019】
前記最大熱負荷が定められた空間の熱負荷を処理する台数Nからなる空調機を用いる空調システムにおいて、各空調機の容量をn分割して単位モジュールとし、
(単位モジュールの熱負荷処理能力)×(N×n−1)>最大熱負荷…(1)
又は
(単位モジュールの熱負荷処理能力)×(N×n−2)>最大熱負荷…(2)
となるように各単位モジュールの熱負荷処理能力を設定することができる。
【0020】
式(1)は1台の単位モジュールを冗長機として使用し、式(2)は2台の単位モジュールを冗長機として使用する場合のそれぞれの設定条件を示す。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前記したように、大きな設置容積の増大を招くことなく、比較的小空間単位での冗長構成が可能となる。したがって、少数のラック列単位に区画された、いわゆる小型モジュール型サーバ室にも、適切な設置スペースで、ファンの故障時に空調能力を低下させることなく対応することができる空調システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る空調機を示す断面図であり、
【図2】図1に示す線II-IIに沿って得られた断面図であり、
【図3】図1及び2に示した空調機の熱媒体の配管系を示す配管図であり、
【図4】本発明に係る空調機を用いた空調システムが適用された小型モジュールサーバ室の一例を示す側面図であり、
【図5】図4に示した小型モジュールサーバ室を概略的に示す平面図であり、
【図6】本発明に係る空調装置の他の例を用いた空調システムを示す図4と同様な側面図であり、
【図7】図6に示した空調システムを示す図5と同様な平面図である。
【図8】本発明に係る空調システムの他の例を示す図3と同様な図面であり、
【図9】図6に示した空調システムの熱媒体の配管例を示す配管図であり、
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る空調機は、各単位モジュールのハウジング(ハウジング部)のそれぞれに単一の吹出口及び各吹出口に連通する流路を独立して形成し、ハウジングを連結することができる。これに代えて、共通のハウジングを用いることができ、この場合、該ハウジングに複数の吹出口が設けられ、各吹出口に連通する流路が独立して形成される。先に、前者の例について説明する。
【0024】
本発明に係る空調機10は、図1及び図2に示されているように、台座となるフレーム12上に組み込まれた複数の単位モジュール16(16a〜16d)と、各単位モジュール16の作動を制御する制御回路18とを含む。
【0025】
各単位モジュール16(16a〜16d)は、矩形のハウジング部20(20a〜20d)を備え、各ハウジング部20は、図1に示すように、その前部に空気吹出口22−1を有し、またその後部に空気吸込口22−2を有する。各ハウジング20には、図示の例では、空気吹出口22−1の前方に突出する矩形のフード部24(図1参照)が形成されており、各フード部24には、空気吹出口22−1からの風向を調整可能に変えるための従来よく知られたルーバ26が設けられている。
【0026】
図示の例では、2列2段に配列された4つの各単位モジュール16(16a〜16d)が用いられている。各ハウジング部20は、図2に明確に示されているように、各単位モジュール16がフレーム12上で整列するように相互に結合されている。フレーム12は、棚状に形成された架台で構成することが望ましい。各矩形のハウジング部20は、その内部に対応する空気吹出口22−1及び空気吸込口22−2を連通する空気流路28(28a〜28d)を有する。
【0027】
各単位モジュール16(16a〜16d)は、図1に示すように、対応するハウジング部20(20a〜20d)内で空気吸込口22−2に近接して設けられたコイル30(30a〜30d)と、ハウジング部20(20a〜20d)内で空気吹出口22−1に近接して配置され、空気吹出口22−1へ向けて配置されたファン32(32a〜32d)と、ハウジング部20(20a〜20d)内でコイル30(30a〜30d)及びファン32(32a〜32d)間に設けられ、該ファンを駆動するための駆動源となる電動モータ34(34a〜34d)とを備える。
【0028】
各単位モジュール16(16a〜16d)の電動モータ34(34a〜34d)は、制御回路18により、個別に回転速度及び作動のオン、オフが制御可能であり、対応するファン32(32a〜32d)を作動する。各ファン32は、その作動により、対応する空気吸込口22−1からコイル30(30a〜30d)を経て空気を吸入する。この吸入空気は、対応する空気流路28(28a〜28d)を経て対応する空気吹出口22−1からルーバ26が設けられたフード部24に案内され、該フード部から空調機10の外へ放出される。したがって、制御回路18は、各駆動源34(34a〜34d)の作動制御により、各空気吹出口22−1からルーバ26を経て放出される空気流量を個別に制御可能である。
【0029】
また、図1に示すように、各空気吹出口22−1には、例えば駆動源34(34a〜34d)の停止によって空気吹出口22−1に作用する風圧が所定値以下になったとき、空気吹出口22−1を閉鎖する逆流防止機構36(36a〜36d)が設けられている。この逆流防止機構36として、ばね力を利用して開放位置に保持され、自重により閉鎖位置に復帰する従来よく知られたチャッキダンパーを用いることができる。
【0030】
各コイル30(30a〜30d)には、該コイルに熱媒体を循環するための入口及び出口が設けられている。一般的に、前記入口は、コイル30(30a〜30d)の下部に設けられ、前記出口は入口の上方に位置するようにコイル30(30a〜30d)の上部に設けられている。図3には、各コイル30(30a〜30d)と、熱源38との間で熱媒体を循環させるための不図示のポンプと熱媒体の流通する配管系40の一例が示されている。熱源38は例えば冷凍機からなり、該冷凍機から熱媒体としての冷水を供給するための冷水供給管40−1及び冷水を熱源38に戻すための冷水帰還管40−2が伸びる。
【0031】
冷水供給管40−1は冷水を各コイル30(30a〜30d)に分流するための4つの分岐支管42−1を有し、冷水供給管40−1は、各コイル30の前記入口に伸びる4つの分岐支管42−1にゲートバルブ44−1を介して接続されている。また冷水帰還管40−2は各コイル30(30a〜30d)からの冷水を集合するための4つの分岐支管42−2を有し、冷水帰還管40−2は、コイル30の前記出口に伸びる4つの分岐支管42−2にゲートバルブ44−2を介して接続されている。
【0032】
したがって、ゲートバルブ44−1、44−2を開放することにより、熱源38からの熱媒体は、冷水供給管40−1、各分岐支管42−1を経て前記入口から各コイル30(30a〜30d)に案内される。さらに、前記熱媒体は、各コイル30(30a〜30d)をその前記出口に向けて巡り、該出口から各分岐支管42−2、冷水帰還管40−2を経て熱源38に戻る。
【0033】
このように、前記熱媒体は、熱源38とコイル30(30a〜30d)との間を循環する。各コイル30(30a〜30d)の下方には、必要に応じて従来よく知られたドレンパン(図示せず)を配置することができる。また、後述する弁46の開度制御で、各コイルでのドレインの発生を防止することができ、この場合、前記ドレンパンを不要とすることができる。
【0034】
前記弁46の開度制御は、空気吹出口22の温度(給気温度)に基づいて行われ、これにより各コイル30(30a〜30d)を巡る前記熱媒体の流量は、各空気吹出口22−1から吹き出される空気温度によって決められる。また、各駆動源34(34a〜34d)の作動によるファン32(32a〜32d)の運転速度に応じて空気吹出口22−1から放出される空気流量が変化し、場合によってはホットアイル及びコールドアイル間に設けた差圧計によってホットアイルからコールドアイルへの逆流が検出されたとき、ファン32(32a〜32d)の回転数は増大される。このように、各単位モジュール16の冷房能力は、基本的に、コイル30(30a〜30d)を巡る前記熱媒体の温度、その流量及びファン32(32a〜32d)の運転速度によって決まる。湿度制御は別途外調器により行われる。
【0035】
各分岐支管42−1、42−2には、各コイル30に流入する熱媒体の流量を調整するための制御バルブとして例えば電子式の2方弁46が設けられている。各2方弁46は、制御回路18により、個別に開閉動作が可能である。この場合、制御回路18は、各弁46の開閉動作に加えて、個別にその開度調整をする。
【0036】
この運用は、次の方法により可能となる。すなわち、4つ(n+1)の各単位モジュール16(16a〜16d)を用いた例では、その1台を予備機として機能させるいわゆるコールドスタンバイ及び4つの各単位モジュール16(16a〜16d)の運転能力を最大運転能力よりも低い通常運転状態で機能させるいわゆるホットスタンバイで使用することができる。
【0037】
例えば、コールドスタンバイで使用する場合、図示の例では、空調対象となる室の最大熱負荷を3(n)台で分担するために、最大熱負荷を3(n)等分することにより、各単位モジュール16(16a〜16d)の熱容量が決定される。ここでnは、単位モジュール16の数である。
【0038】
たとえば、各単位モジュール16(16a〜16d)の横断面で見た縦横寸法は1m×1mであり、各単位モジュール16(16a〜16d)の冷却能力は30〜40kWとすることができる。この決定された等しい能力の4台(n+1)の単位モジュール16(16a〜16d)のうち、1台の単位モジュール、例えば単位モジュール16dの2方弁46が閉鎖状態に置かれ、電動モータ34dの作動が停止された状態に置かれることにより、1台の単位モジュール16dが休止状態に置かれる。この状態で、残りの3台の単位モジュール16a〜16cが相等しい通常運転状態(例えば出力35kW)に置かれる。これにより、空調機10の総冷却能力は105kWとなり、空調対象となる前記室は、適正な空調が維持される。
【0039】
制御回路18は、図示しないが各空気吹出口22−1に設けられた吹出口温度センサからの信号を受け、該信号の値に応じて各単位モジュール16の駆動源34(34a〜34d)の作動を制御する。したがって、例えば単位モジュール16a〜16cに対応する空気吹出口22−1の前記温度センサから適正な温度信号を受信している限り、前記したように、適正な空調を維持すべく単位モジュール16a〜16cが適正な運転状態に維持される。
【0040】
このとき、制御回路18が各空気吹出口22−1に設けられた前記温度センサからの温度信号によって例えば単位モジュール16aの不具合を検出すると、制御回路18は、休止状態に置かれていた単位モジュール16dを作動させるべく、その2方弁46を開放しまたその駆動源34dを作動させる。これと同時に、制御回路18は、不具合を生じた単位モジュール16aの2方弁46を閉鎖し、またその駆動源34aの作動を停止させる。なお、2方弁46は入口側でなくコイルの出口側に設けて開度制御に供しても良い。
【0041】
単位モジュール16dの作動によって、適正に冷却された冷風が該単位モジュールの空気吹出口22−1に向けられると、該空気吹出口に設けられたチャッキダンパー36dがその風圧により押し開けられ、単位モジュール16dのフード部24からはそのルーバ26を経て、他の正常動作の単位モジュール16b、16cと同等の機能で同様に適正な冷風を前記室に供給する。また、不具合を生じた単位モジュール16aの駆動源34dの作動が停止されると、該単位モジュールファン16aのチャッキダンパー36aに作用する風圧の低下により、該チャッキダンパーは、その空気吹出口22−1を閉鎖する。この不具合を生じた単位モジュール16aの空気吹出口22−1の閉鎖により、該空気吹出口を経る空気の逆流が防止される。
【0042】
したがって、複数の単位モジュール16の集中配置により、この複数の単位モジュール16をコンパクトに配置することができ、これにより、大きな容積増大を招くことなく空調機10に冗長性を与えることができる。このように、空調機10によれば、いずれか1台の単位モジュール16の不具合に拘わらず、風量の減少を生じることなく、前記室の空調を適正に維持することができる。
【0043】
空調機10をホットスタンバイで使用する場合、4(n+1)台のすべての単位モジュール16が運転状態に置かれる。これら各単位モジュール16(16a〜16d)は、前記したコールドスタンバイにおけると同様に、空調対象となる室の最大熱負荷を3(n)台で分担し得るように、その熱容量が決定される。
【0044】
このようにして設定されたすべての単位モジュール16(16a〜16d)は、同時にほぼ等しい運転状態に置かれるが、4台の合計で必要な冷房能力を達成できるように、例えば送風能力を適正に調整すべく制御回路18により駆動源34の運転速度が調整される。これにより各単位モジュール16(16a〜16d)の冷房能力が、その最大能力よりも小さな割合(例えば85%)に維持されて運転される。例えば各モジュールが25kWの冷却能力で運転されるとき空調機10の総冷却能力が100kWとなる。
【0045】
このとき、前記吹出口温度センサによる検知値が所定温度範囲を外れるなどして制御回路18が例えば単位モジュール16aの不具合を検出すると、制御回路18によって、該単位モジュール16aの作動を停止させるべくその駆動源34aが停止されまたコイル30aの2方弁46が閉鎖される。これと同時に、制御回路18は、単位モジュール16aの停止に伴う冷房能力の不足を補うべく、他の単位モジュール16b〜16dの駆動源34b〜34dの作動速度を均等に高め、あるいはそのコイル30b〜30dへの冷媒供給量を均等に増大すべく流量が調整可能な弁46を作動させる。その結果、他の単位モジュール16b〜16dの冷房能力が高められる。このように、いずれか1台の単位モジュール16(16a〜16d)の不具合に拘わらず、前記したコールドスタンバイにおけると同様に、冷房能力に変動を生じることなく、前記室の空調を適正に維持することができる。
【0046】
ハウジング部20(20a〜20d)を用いる例に代えて、前記した共通のハウジングを用いる例では、該共通のハウジングには、複数の空気吹出口(22−1)が設けられ、さらに前記ハウジング内には、各空気吹出口に連通する空気流路(28a〜28d)を独立して形成するための区画壁が形成される。
【0047】
また、各単位モジュール16の各コイル30(30a〜30d)に設けられる各弁46として、手動操作弁を採用することができる。
【0048】
図4及び5には、図1ないし3に示した空調機10を用いた空調システムの具体的な使用例が示されている。冷気の供給は床からは行わず側壁のみから行い、仕切られた天井裏から高温排熱を含む還気を空調機10に戻す方式である。室50内は、サンドイッチパネルなどの建材からなる隔壁52により、その床50a上がサーバ室54−1と機械室54−2とに区画されている。また、図4に示すように、室50の天井には、サーバ室54−1の天井部に配置された吸込口56a及び該吸込口からの吸入された空気の熱だまりを解消するために必要に応じて設けられる撹拌ファン56−1を有する通気路56が形成されている。通気路56は、ここでは天井チャンバーが採用されている。
【0049】
サーバ室54−1には、図5に示されているように、それぞれに図示しない電子機器を多段に収納する従来よく知られた多数のラック58aが整列して配置されている。図示の例では、サーバ室54−1の長手方向に沿って10台のラック58aが2つのラック列58を構成するように配列されている。このようなサーバ室54−1は、一般的に、モジュール型サーバ室と称されている。このサーバ室54−1の両ラック列58間には仕切り板が渡され、ホットアイル空間60−1が形成されている。ラック前面と前記仕切り板とで形成される空間54dには境界面に沿いラック58aの上面に接して遮蔽板が立設され、供給される冷気が上部からホットアイル空間60−1に侵入することを防いでいる。ラック列58の両外側にはサーバ室54−1の両側壁54cとの間にコールドアイル空間60−2が形成される。各ラック列58は、ラックの前面(吸気面)を側壁54c側へ向けて揃えて配列されている。図示の例では、図面の簡素化のために、各側壁54cに設けられる出入り口及びその扉が省略されている。
【0050】
機械室54−2には、空調機10が、隔壁52に設けられた送風口52−1(図4)を経てサーバ室54−1に送風可能に設置されている。すなわち、フード部24の先端に隔壁52の開口端が接し、接続部の周囲がコーキングされている。また、図4に示すように、空調機10の各単位モジュール16(16a〜16d)のコイル30(30a〜30d)と、前記したと同様な熱源38との間には、前記した冷水供給管40−1及び冷水帰還管40−2が敷設されている。図4に示した例では、冷水供給管40−1には冷水を送り出すための冷水ポンプ62が設けられている。
【0051】
図4を参照するに、冷水供給管40−1、冷水帰還管40−2を経て各単位モジュール16(16a〜16d)のコイル30(30a〜30d)を循環する冷媒は、該コイルで、ファン32(32a〜32d)の作動よって生じる前記空気流と熱交換する。この熱交換によって冷却された空気流が送風口52−1からラック列58の送風口52−1側の端面を経てコールドアイル空間60−2へ向けて流れないように前記遮蔽板が設けられている。コールドアイル空間60−2へ流れる空調機10からの前記冷風は、さらにラック58aの前記吸込面から該ラック内の前記電子機器に流れて該電子機器を冷却する。他方、ラック58a内の前記電子機器からラック58aを経てホットアイル空間60−1へ排出された排気により、サーバ室54−1の室温の上昇を防止する。
【0052】
また、ホットアイル空間60−1を流れる空気流は、図4に示されているように、吸込口56aから通気路56を経て空調機10が配置された機械室54−2に案内され、再び空気吸込口22−2から空調機10に戻され、該空調機により冷却された後、サーバ室54−1のラック58列前の空間54dへ放出される。この空気循環により、サーバ室54aの空調が適正に維持される。
【0053】
サーバ室54−1の空調のために配置される空調機10は、独立した予備機を設置するほどの大容量を占めることなく、比較的コンパクトに設定することができるので、前記したようなホットスタンバイあるいはコールドスタンバイのいずれかの態様によって運転が可能になる。したがって、比較的小容量の室の空調に冗長システムを組み込むことが可能になる。
【0054】
図6及び7に示された空調機110は、単位モジュール16(16a〜16d)のそれぞれに冷却能力の増強のための追加のコイル130が設置可能な空間112を設けた例を示す。図6及び7に示された単位モジュール16では、コイル30(30a〜30d)とファン32(32a〜32d)との配置関係が図1〜5の例と逆になっている。また、ラック列58は、ラック58aの吸気面を対向させ、排気面をラック58aの排気面を側壁54cに向けて配置されている。この配置により、サーバ室54−1内に配置されるラック列58間にコールドアイル空間60−2が形成され、各ラック列58と側壁54cとの間にホットアイル空間60−1が形成されている点で、図7は図5のラック列58の配置と異なる。その他の点は、先の例と同一である。
【0055】
空調機110の各単位モジュール16(16a〜16d)のコイル30(30a〜30d)と、対応するファン32(32a〜32d)との間には、それぞれ追加のコイル130を設置するための空間112が保持されている。この空間112には、追加のコイル130を設置するための支持具(図示せず)を配置することができ、またコイル30、130の点検を可能にするための点検用扉61を空調機コイルセションの外板に取り付けることができる。
【0056】
空間112は、コイル30(30a〜30d)毎に独立した空気流路28(28a〜28d)の空気流通方向にハウジング20(20a〜20d)が延長されて設けられている。各空間112には、ラック列58に収容される前記電子機器の増大あるいはラック列58を構成するラック58aの追加等に伴って空調機10の冷房能力の増大が望まれるとき、各空間112へのコイル130の増設により、空調機110の全体能力を段階的に増強することができる。例えば送風量を変化させずに、各コイルの空気温度差を10℃から15℃に設定した場合、空調機110の全体能力を12.5%毎に150%まで増強することができる。図6及び7は、単位モジュール16aにのみ、追加のコイル130が付加された例を示す。
【0057】
また、空調機110の送風量を変化させることなく全コイル30及び130による空気温度差を増大して空調機110の冷却能力の増大を図った場合、あるいは冷水温度を低くして空調機110からの送風量を減らした場合、ラック列58に収容された全電子機器の換気風量が空調機110の送風量を上回ることがある。そのような場合の対策を図7に示す。ここでは、2つのラック列58の対向面を前面(冷気取り入れ面)、室の外壁54cに向く面を背面(排気面)にし、ラック背面に排気チャンバーを形成し、これをホットアイル60−1としている。ホットアイル60−1は、天井ボードまで立説された遮蔽板によって区画され、天井ボードに形成された排気口及びバイパス用ダンパ64が開いたときに形成される開口を除いて閉塞された空間とされている。各ホットアイル60―1とコールドアイル60―2との間に、前記したバイパス用ダンパ64を設けることが望ましい。バイパス用ダンパ64を出た暖気は供給冷気と混合して適温となる。これにより、ラック吸込面での必要風量が確保される。その結果、各ラック58a内での空気流のショートサーキットの発生を防止することができ、またラックの吸込面でのホットスポットの発生を確実に防止することができる。
【0058】
図8及び図9は、空調機10の各単位モジュール16(16a〜16d)のコイル30(30a〜30d)への冷媒のカスケード接続の例を示す。図9に示すように、各上段の単位モジュール16a、16cのコイル30a、30cの前記入口は、冷水供給管40−1からの分岐支管42−1に接続されており、各下段の単位モジュール16b、16dのコイル30b、30dの前記出口は、冷水帰還管40−2に至る分岐支管42−2に接続されている。各下段の単位モジュール16b、16dの前記入口と、各上段の単位モジュール16a、16cの前記出口と、分岐支管42−2との間には、3方弁66が設けられている。そして3方弁66は、各下段の単位モジュール16b、16dの前記出口を、各上段の単位モジュール16a、16cの前記入口及び分岐支管42−2に選択的に連通させることができ、これにより熱媒体を選択的に流通させることができる。3方弁66は、正常動作では、各下段の単位モジュール16b、16dの前記入口を各上段の単位モジュール16a、16cの前記出口に接続する。
【0059】
3方弁66の正常動作状態では、分岐支管42−1からの熱媒体(冷媒)は、それぞれ上段の単位モジュール16a、16cのコイル30a、30cの前記入口から該コイルに流入し、該コイルを経た後、その前記出口から対応する下段の単位モジュール16b、16dのコイル30b、30dの前記入口に案内され、該入口からそのコイル30b、30dを流れた後、該コイルの前記出口から分岐支管42−2に流出する。
【0060】
このとき、例えば各上段の単位モジュール16a、16cの空気吹出口22−1から吹き出される冷風の温度が電子機器への適切な給気温度より僅かに低い例えば23℃となり、各下段の単位モジュール16b、16dの空気吹出口22−1から吹き出される冷風の温度が前記適切な給気温度よりも僅かに高い例えば27℃に設定されるように設定することができる。そのために、分岐支管42−1から各上段の単位モジュール16a、16cのコイル30a、30cに供給される冷媒の温度が例えば15℃となり、該コイルから排出され各下段の単位モジュール16b、16dのコイル30b、30dに供給される冷媒の温度が例えば20℃となり、また該コイルから分岐支管42−2へ排出される冷媒の温度が例えば25℃となるように、設定することができる。
【0061】
前記したような設定により、以下に述べるような各点で、エネルギーの効率的利用又はその他の利点の実現が可能になる。
1. 上段からより低い温度の空気が、また下段から相対的に高い温度の冷風がサーバ室54−1に供給され、ラック内へ給気されるとき混合され吸気時に混合され易いので効率的に冷却することができる。
2. コイル30(30a〜30d)での比較的大きな温度差設定に拘わらず、冷媒の循環流量の削減が可能となる。
3. 分岐支管42−2から冷水帰還管40−2を流れる帰還媒体(還水)温度が比較的高めに設定できるので、熱源38として冷凍機を運転しないフリークーリングの利用時間を延ばすことができる。
4. 空調機10からの給気温度を前記したように上下の2段構成とすることにより、上段に比較して高温の下段の単位モジュール16b、16dの外気冷房による運転時間を延ばすことができる。
5. 冷水供給管40−1を経る冷媒供給温度の低減により、上段の単位モジュール16a、16cによる除湿運転が可能となる。
6. コイル30(30a〜30d)をファン32(32a〜32d)の風下に配置することにより、駆動源34(34a〜34d)による昇温の影響を受けた空気が室内に直接供給されることを防止することができ、また該駆動源の保守に有利となる。
【0062】
前記したように、3方弁66として、対応するコイル30(30a〜30d)の前記入口、出口及び分岐支管42−2を相互に連通する状態に置く3方弁66を用いることにより、各下段の単位モジュール16b、16dのコイル30b、30dの前記入口と分岐支管42−2との間の保守用バイパス配管42−3に図示しない手動バルブ(閉止弁)を設ければ、3方弁66の異常時に前記手動バルブを閉止操作することにより、各上段の単位モジュール16a、16cのコイル30a、30cからの冷媒を確実に各下段の単位モジュール16b、16dのコイル30b、30dに導くことができるので、故障に備えた別途のバイパス管42−3のための予備のバイパス弁を不要とすることができる。
【0063】
前記したところでは、単独の空調機10又は空調機110で冗長システムを構成した例について説明した。この例に変えて複数台の空調機10、110で従来のような大型コンピュータ室の冗長システムを構成することができる。この場合特定の1台又は複数の空調機10、110を予備機として待機させるために、該当する予備機のすべての単位モジュール16を休止状態に置き、正常運転にある空調機10、110が異常を生じた場合に、この異常を生じた空調機10、110に代えて、必要台数の予備機のすべての単位モジュール16を作動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、上記実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない限り、種々に変更することができる。
【符号の説明】
【0065】
10、110 空調機
12 フレーム
16(16a〜16d) 単位モジュール
18 制御回路
20(20a〜20d) ハウジング(ハウジング部)
30(30a〜30d) コイル
32(32a〜32d) ファン
34(34a〜34d) 駆動源
36 逆流防止機構(チャッキダンパー)
38 熱源
46 制御バルブ(2方弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大熱負荷が定められた空間の熱負荷を処理する空調機において、その空調機の容量をn分割して各単位モジュールとし、該単位モジュールの台数をn+1とし、該各単位モジュールの空気側流路が独立し、該各単位モジュールに逆流防止機構が設けられている空調機。
【請求項2】
前記各単位モジュールのファンのための電動機が能力制御機能を有する請求項1に記載の空調機。
【請求項3】
最大熱負荷が定められた空間の熱負荷を処理する台数Nからなる請求項1又は2に記載の空調機を用いる空調システムにおいて、各空調機の容量をn分割して単位モジュールとし、
(単位モジュールの熱負荷処理能力)×(N×n−1)>最大熱負荷
又は
(単位モジュールの熱負荷処理能力)×(N×n−2)>最大熱負荷
となるように各単位モジュールの熱負荷処理能力を設定した空調システム。
【請求項4】
複数の吹出口が設けられ、各吹出口に対応する流路がそれぞれ独立して形成されたハウジングと、
該ハウジング内に設けられ、熱源との間で熱媒体が循環し、前記各流路にそれぞれ対応して各流路を横切って設置されたコイルと、
該コイルを介して前記熱源からの前記熱媒体と熱交換した風を前記吹出口から吹き出すべく前記各吹出口に対応して設けられたハウジングにそれぞれ備えられた各ファンと、
前記ハウジングに対応して設けられた空気流の逆流を阻止するための逆流防止機構と、
前記ファンを駆動すべく各ファンに対応して設けられた駆動源と、
該各駆動源を個別に制御可能な制御装置とを含む、空調機。
【請求項5】
それぞれに1つの吹出口が設けられ該吹出口に対応する流路が形成され、該吹出口が整列するように相互に結合された複数のハウジングと、
前記各ハウジング内に設けられ、熱源との間で熱媒体が循環するコイルと、
各ハウジング内に設けられ、前記コイルを介して前記熱源からの前記熱媒体と熱交換した風を当該ハウジングの前記吹出口から吹き出すべく該吹出口が設けられた前記各ハウジングに備えられたファンと、
前記各吹出口に対応して設けられた空気流の逆流を阻止するための逆流防止機構と、
前記ファンを駆動すべく各ファンに対応して設けられた駆動源と、
該各駆動源を個別に制御可能な制御装置とを含む、空調機。
【請求項6】
さらに、前記ハウジング毎でモジュール化された構成部分を設置するための棚状の架台を含む請求項5に記載の空調機。
【請求項7】
前記逆流防止機構はチャッキダンパーである、請求項4又は5に記載の空調機。
【請求項8】
前記コイルは、相互に上下となるように設けられ、熱媒体の流路が上下に構成され、前記熱源からの熱媒体が上段コイルに案内された後、下段コイルに案内される、請求項4又は5に記載の空調機を含む空調システム。
【請求項9】
前記ハウジングには、前記流路に沿って前記コイルの前後のいずれか一方に該コイルと並列又は直列に接続される追加コイルを収容するに充分な奥行きを有する空間が設けられている、請求項8に記載の空調システム。
【請求項10】
前記空間には前記追加コイルを設置するための支持具が配置されており、さらに該支持具には前記コイルの点検を許すための点検用扉が設けられている、請求項9に記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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