説明

空調用エアダクト

【課題】発泡ポリオレフィンシートにより形成された空調用エアダクトにおいて、内部を空気が通る際に内部で発生するノイズを低減させる。
【解決手段】エアダクト内表面の微細な凹凸の凹部12の深さaを50〜300μmの範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の空調用エアコンなどに接続されるエアダクト(通風管)に関し、さらに詳述すると、発泡ポリオレフィンシートにより形成された空調用エアダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、室内の空調のため、エアコンで適当な温度に調整した空気を空調用エアダクトを用いて室内に導いている。従来、このエアダクトには金属や硬質プラスチックの成型品あるいはそれらの複合品が使用されていたが、自動車内の比較的狭い空間に上記エアダクトを通すため、エアダクトの断熱が不十分となり、エアコンからの空気がエアダクトを通過する間に空気の温度が変化してしまうという問題があった。そこで、上記問題を解決するため、発泡ポリオレフィンシートにより形成された断熱性の高いエアダクトが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−181334号公報
【特許文献2】EP 0445592 A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した発泡ポリオレフィンシートにより形成されたエアダクトは、断熱性には優れているが、内部を空気が通る際に内部でノイズが発生し、このノイズによって自動車の室内空間の快適性が損なわれるという問題を有していた。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、発泡ポリオレフィンシートにより形成されたエアダクトであって、内部を空気が通る際に内部で発生するノイズを低減させた空調用エアダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、発泡ポリオレフィンシートにより形成されたエアダクトは内表面に微細な凹凸を有し、この凹凸と内部を通る空気との接触に起因して内部でノイズが発生すること、また、発泡ポリオレフィンシートにより形成されたエアダクトにおいては、上記微細な凹凸の凹部の深さを特定の範囲に制御し、内表面の平滑性を向上させることにより、内部を空気が通る際に内部で発生するノイズを低減させることができることを見出した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、発泡ポリオレフィンシートにより筒状に形成され、内表面に微細な凹凸を有する空調用エアダクトであって、前記内表面の凹凸の凹部の深さが50〜300μmの範囲にあることを特徴とする空調用エアダクトを提供する。
【0008】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。本発明のエアダクトを形成する発泡ポリオレフィンシートとしては、独立気泡構造を有する発泡ポリエチレンシートや発泡ポリプロピレンシート、特に架橋発泡ポリエチレンシートや架橋発泡ポリプロピレンシートを好適に用いることができる。また、上記架橋発泡ポリオレフィンシートとしては、例えば、化学架橋方式により製造されたものでもよく、電子線架橋方式により製造されたものでもよい。
【0009】
本発明では、エアダクト内表面の凹凸の凹部の深さを50〜300μmの範囲、より好ましくは75〜200μmの範囲とする。本発明において、上記凹部の深さとは、図1に模式的に示すように、発泡ポリオレフィンシートの気泡10によりエアダクト内表面に形成された凹部12の深さaをいう。上記凹部の深さを50μm未満とすることは、発泡ポリオレフィンシートの製造や加工を困難にする。また、上記凹部の深さが300μmを超えると、エアダクト内部を空気が通る際にエアダクト内部で大きいノイズが発生する。
【0010】
本発明において、上記凹部の深さを50〜300μmの範囲に制御する方法としては、例えば、(A)エアダクトを形成する発泡ポリオレフィンシートの気泡径を100〜600μmの範囲に制御する方法、(B)発泡ポリオレフィンシートのダクト内表面となる表皮を加熱した後、気泡が破壊されない圧力で上記表皮にロールや平板を圧着させて凹部の深さを小さくする方法、あるいは(A)と(B)の方法を組み合わせる方法などを挙げることができる。
【0011】
本発明のエアダクトの製造方法に限定はないが、前記特許文献2(EP 0445592 A2)に記載された方法を好適に採用することができる。特許文献2の方法は、下記(1)〜(4)の工程からなる、圧力および熱の適用下に依然として変形の可能な熱可塑性または弾性プラスチックフォームから中空体を製造する方法である。
(1)プラスチックフォームからなる1個または2個以上の部分を、プラスチックフォームの軟化温度よりも高い温度に加温後、割り型に入れる。
(2)割り型を閉じることにより、上記部分をそれらのへりに沿って互いに接合させて、それらの部分の間の中間空間を少なくともかなりの程度まで密閉する。
(3)加圧下の流体を上記部分の間の中間空間へ導入することにより、それらの部分を割り型の壁に押付け、形を整える。
(4)上記部分が冷却された後、成形物を脱型する。
【0012】
上述した特許文献2の方法においては、前記割り型を閉じることによって、前記部分をそれらのへりに沿って互いに融着させることができる。また、前記部分として、実質的に平らなプレート状プラスチックフォームを使用することができる。さらに、割り型に入れるときの前記部分の温度を130〜200℃、好ましくは150〜170℃とすることができる。
【0013】
本発明のエアダクトを特許文献2の方法によって製造する場合、発泡ポリオレフィンシートとして、特許文献2の方法による加工前の密度が30〜250kg/m、加工前の厚さが3〜15mmの発泡ポリオレフィンシートを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空調用エアダクトは、発泡ポリオレフィンシートで形成したことにより、断熱性に優れ、かつ軽量であるとともに、内表面の凹凸の凹部の深さを50〜300μmの範囲としたことにより、空気が通る際に内部で発生するノイズを低減させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。図2は本発明に係る空調用エアダクトの一実施形態を示す断面図である。本例のエアダクト20は、前述した方法(A)、方法(B)あるいは方法(A)と(B)の組み合わせによりダクト内表面となる表皮の凹部の深さを50〜300μmの範囲に制御した2枚の発泡ポリオレフィンシート22、24を、前述した特許文献2の方法により接合して筒状に形成したものである。発泡ポリオレフィンシート22、24のへりの部分26、28は互いに融着されている。また、本例のエアダクト20は内表面に微細な凹凸を有し、その凹凸の凹部の深さは50〜300μmの範囲にある。
【実施例】
【0016】
次に、実施例によって本発明をさらに具体的に示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。本実施例においては、図2に示したエアダクトを特許文献2の方法により製造した。この場合、2枚の発泡ポリオレフィンシートとしては、加工前の密度が80kg/m、加工前の厚さが4mmの化学架橋方式により製造された架橋発泡ポリエチレンシートを用い、これらの架橋発泡ポリエチレンシートを150℃に加温した後、割り型を用いて接合した。
【0017】
本実施例においては、エアダクトとして内表面の凹部の深さが様々なものを製造し、上記凹部の深さと、エアダクト内部を空気が通る際にエアダクト内部で発生するノイズの大きさとの関係を調べた。ノイズの測定では、図3に示すように、2つの開口30、32を有する防音ボックス34内に、L字状に折れ曲がったエアダクト36を、その両端を開口30、32内に挿入させた状態で配置した測定装置を用いた。そして、開口30からエアダクト36内に空気38を流速27m/sで流入させ、マイクロホン40によってエアダクト36の内部で発生したノイズ(トータルサウンドレベル)を測定した。なお、防音ボックス34およびエアダクト36のサイズを図3に示したとおりである。
【0018】
ノイズの測定結果を図4に示す。図4より、発泡ポリオレフィンシートにより形成されたエアダクトにおいては、内表面の凹部の深さが50〜300μmの範囲にある場合、内部を空気が通る際に内部で発生するノイズの大きさが小さいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る空調用エアダクトの内表面の微細な凹凸を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係る空調用エアダクトの一実施形態を示す断面図である。
【図3】エアダクト内部で発生するノイズの測定装置を示す説明図である。
【図4】凹部の深さとノイズの大きさとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0020】
a 凹部の深さ
10 気泡
12 凹部
20 エアダクト
22、24 発泡ポリオレフィンシート
34 防音ボックス
36 エアダクト
38 空気
40 マイクロホン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリオレフィンシートにより筒状に形成され、内表面に微細な凹凸を有する空調用エアダクトであって、前記内表面の凹凸の凹部の深さが50〜300μmの範囲にあることを特徴とする空調用エアダクト。
【請求項2】
前記内表面の凹凸の凹部の深さが75〜200μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の空調用エアダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−144984(P2008−144984A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329360(P2006−329360)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(506405611)トロセレン ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】Trocellen GmbH
【住所又は居所原語表記】Muelheimer Strasse 26,D−53840,Troisdorf,Germany
【Fターム(参考)】