説明

空調用フィルタ

【課題】従来の高性能空調用フィルタは、空気中に含まれる微粒子を効率良く捕集する性能を要求されるため、長時間の使用に耐える機能が十分でないといった問題があった。捕集性能とフィルタの寿命とは一般的傾向として両立し難い関係にあり、捕集性能が良好な程目詰りによる圧力上昇が激しく寿命は短くなるし、逆に寿命を長くしょうとすると、捕集性能が低下する。その両立し難い性能を解決しようとしたものである。
【解決手段】第1の解決手段は気流方向に対して上流側となる低密度層と下流側となる高密度層の2層以上の構造を有した1枚の濾材シートで濾材を構成し、この濾材をジグザグ状に折り畳んで適宜材質のセパレータまたはビート状接着剤を挟み、全周を接着剤で枠に気密に取り付け、上流側となる低密度層で大きな粒子を捕捉し、下流側となる高密度層で微粒子を捕捉して、寿命の長いコンパクトな空調用フィルタを提供すること、第2の解決手段は前記濾材と他の適宜密度層の濾材とを重ね合わせて寿命の長いコンパクトな空調用フィルタを提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に空調用フィルタは空気中に含まれる粒子を効率良く捕集する性能と、長時間使用に耐える即ちフィルタの寿命が長いという性能が、基本的性能として要求される。ところが、捕集性能とフィルタの寿命とは一般的傾向として両立し難い関係にあり、捕集性能が良好な程目詰りによる圧力上昇が激しくフィルタの寿命は短くなる。逆にフィルタの寿命を長くしょうとすると、捕集性能が低下する。そこで、本発明は、これらの問題点を解決した空調用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粒子に対して高い捕集効率を有する空調用フィルタを空調系統に設置する場合、高い捕集効率を有する空調用フィルタの目詰まりを防止するため、高い捕集効率を有する空調用フィルタの前に前記フィルタより捕集効率の低いフィルタを配置した2段フィルタの構成としているが、2段フィルタにした場合設置スペースの制約および構造の複雑化さらにコストアップの観点から、特許文献1に2枚の濾材を重ね合わせることにした構造すなわち気流方向に対して上流側には粒径0.3μmの粒子に対して75%以上で99.97%未満の捕集効率を有する濾材を配し、下流側には粒径0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集効率を有する濾材を配して、これら2層の濾材を密接に重ね合わせた状態で、空気通路を確保するための適宜材質のセパレータを挟んでジグザグ状に折り畳み、空気もれが生じないようにその全周を接着剤で枠に気密に取りつけた高性能フィルタの発明が開示されている。しかしながら、特許文献1には、寿命は考慮されておらず濾材の目詰まりが早くなってしまうといった問題については、解決されていなかった。
【0003】
このため、上記の問題を解決するために、特許文献2に気流方向の上流側より粒径0.3μmの粒子に対して40〜70%の捕集効率の低効率濾材と、粒径0.3μmの粒子に対して90〜99.99%の捕集効率を有する高効率濾材を密接して重ね、これら各濾材の濾材面積を25〜35m2/台である濾材構成で寿命を長く持たせた発明が考えられているが、2枚の濾材シートを重ね合わせてジグザグ状に折り畳んでひだ折り加工するため、濾材全体の厚みが必要以上に大きくなってしまいフィルタの処理風量を比較した場合、通常のフィルタのサイズに比べ大きくならざるを得なかった。
【特許文献1】 特開昭54−94176号公報
【特許文献2】 特開2002−292215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の課題を解決するためのものであり、高い捕集効率でありながら、圧力損失の小さい、しかも寿命の長いコンパクトな空調用フィルタを提供することを目的とする。
【発明が解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の解決手段は気流方向に対して上流側となる低密度層と下流側となる高密度層の2層以上の構造を有した1枚の濾材シートで濾材を構成し、この濾材をジグザグ状に折り畳んで適宜材質のセパレータまたはビート状接着剤を挟み、全周を接着剤で枠に気密に取り付け、上流側となる低密度層で大きな粒子を捕捉し、下流側となる高密度層で微粒子を捕捉して、寿命の長い且つ高い捕集効率で圧力損失の低いコンパクトな空調用フィルタを、さらに第2の解決手段は前記濾材と他の適宜密度層の濾材とを重ね合わせて寿命の長いコンパクトな空調用フィルタを提供するものである。
【0006】
次に濾材について説明する。濾材は、低密度層と高密度層の2層以上の構造を有する1枚の濾材シートからなるもので、この濾材シートの低密度層と高密度層の材質は特に制限はないが、繊維状の材料を用いたものが好ましい。
【0007】
そして、上流側となる低密度層は、有機繊維、無機繊維を適宜用いることができる。そして、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、レーヨン繊維、ポリアクリルニトリル繊維等の有機繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、ロックウール繊維等の無機繊維が使用可能である。これらを単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0008】
また、上流側の低密度層に用いる繊維の繊維径は0.5〜10μm好ましくは1〜6μmである。この径を有する繊維は繊維重量の50重量%以上含有されているのが好ましい。
【0009】
下流側に配置される高密度層は、上流側の層に使用した繊維と同様の有機繊維、無機繊維が使用され、繊維径0.5μm以下の繊維が配合されていることが望ましい。
【0010】
これらのシート形成法としては、湿式抄紙法を用いる方法や乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法などが用いられる。
【0011】
このようにして、作成されたシート状構造物は強度アップ、加工性を向上させる目的で、樹脂を含浸させるが、用いる樹脂はフエノール系、アクリル系、酢酸ビニール系、スチレン系、エポキシ系などの一般的樹脂が広く使用可能である。
【0012】
また、上記課題解決手段による作用は次の通りである。すなはち、濾材は、上流側となる低密度層と、下流側となる高密度層の2層以上の構造から出来ているので、空調用フィルタを通過する空気中の大きな粒子は低密度層で捕捉され、低密度層を通過した微粒子は高密度層で捕捉される。このように予め低密度層で大きな粒子を捕捉し、高密度層で微粒子を捕捉するので、高い捕集効率を有しながら圧力損失を低く抑えられ、寿命を長く維持出来るものである。しかも1枚の濾材シートから濾材を形成したのでコンパクトで軽量な空調用フィルタを提供できるものである。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明の空調用フィルタは次のような効果が得られる。
(1)低密度層と高密度層の2層以上の構造を有した1枚の濾材シートで濾材を構成したので、外形寸法、縦610×横610×幅292mmの場合でも、本発明の濾材シートは40m/台以上の面積まで折り込みが容易で、それだけ低圧損で寿命が長くできる。
(2)低密度層で大きな粒子を粗取りするため、高密度層の負担を大幅に低減出来、寿命の長い空調用フィルタを提供できる。
(3)低密度層と高密度層の2層以上の構造を有した1枚の濾材で空調用フィルタを製作するので、コンパクト化が図れ且つ軽量化も図れる。
(4)低密度層と高密度層の2層以上の構造を有した1枚の濾材と他の適宜密度の繊維層からなる濾材とを密接して重ねた空調用フィルタはプレフィルタと中性能と高性能あるいは中性能と高性能と超高性能の3つの機能を1台で兼ね備えることが出来るので非常にコンパクト化が図れる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る空調用フィルタを添付図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本実施形態では、空調用フィルタ1について説明する。この空調用フィルタ1は、図1に示すように、枠2と、この枠2内にビード状接着剤3を介してジクザグ状に折り畳んで収納した濾材4と、枠2全周内面に前記濾材4を気密に取り付けた接着剤5とから構成されている。
【0015】
前記濾材4は、繊維径が1〜6μmで且つ繊維重量の50重量%以上含有の有機繊維、無機繊維の単独あるいは適宜混合して製作した低密度層の繊維層と繊維径が0.5μm以下で且つ繊維重量の50重量%以上含有の有機繊維、無機繊維の単独あるいは適宜混合した高密度層の繊維層とからなる濾材シートを適宜寸法に裁断したものである。
【0016】
前記濾材シートは湿式抄紙法を用いて製造される。
【0017】
前記濾材シートは粒径0.3μmの粒子に対して40〜70%の捕集効率を有する上流側の中性能繊維層と、粒径0.3μmの粒子に対して90〜99.99%の捕集効率を有する下流側の高性能繊維層とから構成されている。
【0018】
または、前記濾材シートは粒径0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集効率を有する上流側の高性能繊維層と、粒径0.3μmの粒子に対して99.999%以上の捕集効率を有する下流側の超高性能繊維層とから構成されている。
【0019】
(第2実施形態)
本実施形態では、空調用フィルタ6について説明する。この空調用フィルタ6は、図2に示すように、枠2と、この枠2内に金属または合成樹脂製波形セパレータ7を介してジクザグ状に折り畳んで収納した濾材4と、枠2全周内面に前記濾材4を気密に取り付けた接着剤5とから構成されている。
【0020】
前記濾材は第1実施形態と同じものである。
【0021】
次に前記濾材シートの製造方法を説明する。
【0022】
(実施例1)
低密度層として、繊維径約1μmのガラス繊維60%、繊維径約5μmのポリエステル繊維20%とバインダー繊維20%を水中に均一に分散し、スラリーを調整した。
【0023】
高密度層として、繊維径約0.1μmのガラス繊維80%とバインダー繊維20%を分散剤と共に水中に均一に分散し、スラリーを調整した。
【0024】
低密度層を70g/m、高密度層を30g/mのシートからなる2層を抄き合わせ、120℃で乾燥後、150℃で1分間熱処理を行った。その後樹脂含浸を行い、乾燥後、150℃で10分間キュアリングを行った。さらに、撥水剤を含浸し乾燥を行い濾材シートを得た。
【0025】
(実施例2)
低密度層の配合を繊維径約10μmのポリエステル繊維50%、繊維径約5μmのポリエステル繊維30%、ポリエステルバインダー繊維20%とし、高密度層の配合を繊維径約1μmのポリエステル繊維60%、繊維径約0.1μmのポリエステル繊維20%、ポリエステルバインダー繊維20%とした以外は実施例1と同様の方法で濾材シートを得た。
【0026】
尚、上記実施形態では1実施例を述べただけで、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。例えば、金属または合成樹脂製波形セパレータ7に限定されることなく、金属に樹脂をコーチングしたものも使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、微粒子に対して高い捕集効率を有しながら、長い寿命とコンパクト化を図ったもので、ガスタービンプラントの空気圧縮機などに対する大気塵の付着を軽減して、発電出力の低下を防止し、長時間に亘りフィルタの交換を不要とした用途に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明の1実施例を示す空調用フィルタの斜視図で、部分的に破断したものである。
【図2】 本発明の他の実施例を示す空調用フィルタの斜視図で、部分的に破断したものである。
【符号の説明】
【0029】
2・・・枠 3・・・ビード状接着剤 4・・・濾材
5・・・接着剤 7・・・金属または合成樹脂製波形セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流方向の上流側となる低密度層と下流側となる高密度層の2層以上の構造を有した濾材をジグザグ状に折り畳んでひだ折り加工し、ひだ折りした濾材間に適宜材質のセパレータまたはビート状接着剤を挟み込んで全周を接着剤で枠に気密に取り付けたことを特徴とする空調用フィルタ。
【請求項2】
前記上流側となる低密度層が粒径0.3μmの粒子に対して40〜70%の捕集効率を有する中性能繊維層で、下流側となる高密度層が粒径0.3μmの粒子に対して90〜99.99%の捕集効率を有する高性能繊維層であることを特徴とする請求項1記載の空調用フィルタ。
【請求項3】
前記上流側となる低密度層が粒径0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集効率を有する高性能繊維層で、下流側となる高密度層が粒径0.3μmの粒子に対して99.9999%以上の捕集効率を有する超高性能繊維層であることを特徴とする請求項1記載の空調用フィルタ。
【請求項4】
気流方向の上流側となる低密度層と下流側となる高密度層の2層以上の構造を有した濾材と、他の適宜密度の繊維層からなる濾材とを密接して重ね、これらの濾材をジグザグ状に折り畳んでひだ折り加工し、ひだ折りした濾材間に適宜材質のセパレータまたはビート状接着剤を挟み込んで全周を接着剤で枠に気密に取り付けたことを特徴とする空調用フィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−838(P2006−838A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207906(P2004−207906)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000193047)進和テック株式会社 (36)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【Fターム(参考)】