説明

空調用発泡可撓性ホース

【課題】嵌合部の滑り抵抗の高まりによる曲げ状態の形状保持力の向上や垂れ下がり性の改善がなされ、かつ外観的に高級感を有し、工場内の空調の配管および吹き出し口などの配管に用いられる空調用発泡可撓性ホースを提供する。
【解決手段】発泡樹脂、好ましくは曲げ弾性率が1000MPa以上の剛性オレフィン系樹脂70重量%以上、鉱物系フィラー30重量%以下、さらに熱可塑性樹脂を外殻成分とする熱膨張性微少球が0.1〜1.0重量%の範囲で添加された樹脂組成物を押出機から溶融押出しすることにより発泡させ、得られた異形プロファイルの断面が、ヤジリ部と首部、首部から二股分岐し先端に抜け止めのカエリを有する二本足という形態であり、その異形プロファイルが螺旋状に巻回されると同時に、隣接する二本足の開口部にヤジリ部および首部が挿入され管状形態をなす空調用発泡可撓性ホース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の異形プロファイルを螺旋状に嵌合してなる可撓性および形状保持性を有するホースに関するものであり、特に構成する樹脂を発泡させることにより、樹脂表面状態を梨地化させ、これによって嵌合部の滑り抵抗が向上して、かつ軽量化により、曲げ状態の形状保持力の向上や耐垂れ下がり性の改善がなされ、かつ外観的な高級感が得られるものであり、さらには、一般的な発泡効果である原料樹脂の低減、保温性による結露防止や送風熱ロスの低減などに優れ、工場内の空調の配管および吹き出し口などの配管に用いられる空調用発泡可撓性ホースとして有用である。
【背景技術】
【0002】
従来から、異形プロファイルを螺旋状に嵌合してなる可撓性および形状保持性を有する可撓性ホースは、工場内の空調の配管および吹き出し口などの配管に用いられ、公知である。
このような可撓性ホースは、硬質樹脂、主にはフィラーを配合し異形押出性を改質した硬質塩ビまたはポリプロピレンで成型され、広く利用されるに至っているが、特に道中配管(クリスプ用途)においては、自重によって垂れ下がる懸念から、吊り下げ固定を約1m間隔で設ける必要があり、このことが施工設置の手間となっている。さらには、吹き出し口においても、スポットに狙いをつけ送風することが目的である故に、短い固定間隔は、ホースの可撓自在性を損なうものであり、結果として曲げた形状が自重によってお辞儀するケースも見受けられる。また、ホースの保温を考慮して熱損失による環境付加を減少させるという考え方は、結露防止機能という現象回避が優先され不織布管を被覆した二重管や、ホース表面に発泡体を貼り付けた形態が利用されるに至っているが、どちらにしても、従来の可撓性ホースに機能性材料を付加した形態であって、樹脂使用量に目を転ずると使用量の増加であり、使用材料低減と機能や性能との両立が達成できない。
【0003】
従来より、ヤジリ部、首部および二股分岐し先端に抜け止めカエリを有す二本足からなる異形断面のプロファイルが螺旋状に巻回され、同時に、二本足で形成される開口部にヤジリ部と首部が挿入されることで管形態を成す可撓性ホースに関しては公知である(特許文献1および特許文献2)。
しかし、これら公知の文献には、使用する樹脂そのものに対する工夫はなされているが、樹脂表面の状態をコントロールすることにより高級感と共に勘合部の滑り抵抗を高め可撓性ホースの曲げ状態保持力をも向上させたことに関して、また軽量化することに関して、さらに結露防止等に関しては何ら考慮されていない。
【0004】
上記の、異形プロファイルを螺旋状に嵌合してなる可撓性ホースが、樹脂フィルムまたは金属箔の片面又は両面に不織布を積層した帯状体が螺旋状に巻回され重ね合わせ部に補強用芯材を有する不織布管の中に配置されたことによって断熱効果および結露防止効果を発揮する断熱二重管が、内管の可撓性および形状保持性を保持しながら目的を達する技術として提案され、工場内の空調の配管および吹き出し口などの配管に使用されるに至っている。(特許文献3)
しかし、任意の長さで切断しようとした場合、切断面において二重管間の空隙をシールし断熱空気層とする為に特殊な部材や技術が必要であり、施工面での融通性に欠ける問題点があった。
【0005】
さらには、上記可撓性ホースを任意に切断使用するにことが難しく、特殊な端部処理が必要である為、任意に切断が可能な形態として、可撓性ホース表面に螺旋ピッチと合わせて裁断した発泡体および溶融樹脂シートを螺旋巻回し固定した構造が提案されている(特許文献4)。
しかしながら、この技術は、可撓性ホースに機能部材を付け加えたことにより、重量増大による形状保持の阻害および樹脂原料の使用増大による新たな環境問題の発生等の問題点を有している。さらに構造的にも、伸長時には発泡体が間欠とならざるを得ず、発泡体が欠損している部分で結露が発生するという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−283126号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−256526公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特許第3156952号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】登録実用新案第3039444号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、硬質樹脂製の異形プロファイルを螺旋状に嵌合してなる可撓性および形状保持性を有するホースに関するものであり、特に構成樹脂を発泡させることにより、樹脂表面を梨地化させ、それにより嵌合部の滑り抵抗を高め、かつ軽量化によって、曲げ状態の形状保持力の向上や垂れ下がり性の改善が得られ、かつ外観的な高級感を付与するものであり、さらには、一般的な発泡効果である原料樹脂の低減、保温性による結露防止や送風熱ロスの低減などが達成される、工場内の空調の配管および吹き出し口などの配管に用いられる空調用発泡可撓性ホースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、発泡樹脂からなり、押出成型された異形プロファイルの断面形状が、ヤジリ部、首部、該首部から二股分岐した先端に抜け止めのカエリを有する二本の足部という形状を有し、その異形プロファイルが螺旋状に巻回されているとともに、隣接する二本足の開口部に該ヤジリ部が挿入され管状形態をなしている空調用発泡可撓性ホースである。
【0009】
そして、好ましくは、発泡樹脂が、曲げ弾性率が1000MPa(JIS7171:1994)以上の剛性オレフィン系樹脂を70重量%以上、鉱物系フィラーを30重量%以下含み、さらに熱可塑性樹脂を外殻成分とする熱膨張性微少球を0.1〜1.0重量%の範囲で含み、押出機から溶融吐出されることにより発泡させたものである上記空調用発泡可撓性ホースである。
さらにまた、好ましくは、発泡樹脂の発泡率が120%〜250%である上記の空調用発泡可撓性ホースである。
【0010】
さらに好ましくは、空調用発泡可撓性ホースの内径が25〜500mmの範囲であり、且つ、異形プロファイルの縦幅が10〜50mmの範囲にあって、異形プロファイルにおける二本足の開口幅がヤジリ幅以上の幅であり、螺旋状巻回され管成型される状態において、異形プロファイルの内外周差により開口が閉じられ、二本足のカエリが首部に接する状態をなしている上記の空調用発泡可撓性ホースである。尚、開口幅をヤジリ幅以上とし、螺旋巻回の内外周差によって首に密閉することに言及しているのは、樹脂発泡によって表面が梨地化され、螺旋巻回時のヤジリ挿入抵抗が高まった結果の有効な対応策である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可撓性および形状保持性を有する空調用可撓性ホースを構成する樹脂を発泡させることによって、樹脂表面を梨地化することにより嵌合部の滑り抵抗を向上させ、かつ軽量化によって曲げ状態の形状保持力の向上や耐垂れ下がり性の改善が得られ、かつ外観的にも高級感が得られるものであり、さらには、一般的な発泡効果である原料樹脂の低減、保温性による結露防止や送風熱ロスの低減など、工場内の空調の配管および吹き出し口などの配管に用いられる空調用発泡可撓性ホースを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】異形プロファイルが、押出機より溶融吐出された段階で発泡により体積膨張することを示す、一部断面図を含む斜視図である。
【0013】
【図2】溶融吐出され発泡した後、冷却固化された異形プロファイルが螺旋状に巻き付けられ、管状に成型された空調用発泡可撓性ホースの一例を示す、一部拡大断面図を含む斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を図面により説明する。
図1は、本発明の異形プロファイル1が押出機2の先端ダイス3から吐出された直後に発泡による体積膨張4を伴い、限定されるものではないがサイディング冷却装置5によって冷却固定されてなることを示すものである。
この発泡による体積膨張は、曲げ弾性率1000MPa(JIS7171:1994)以上の剛性オレフィン系樹脂70重量%以上、鉱物系フィラー30重量%以下、熱膨張性微少球0.1〜1.0重量%の範囲、で配合された樹脂が押出機から溶融吐出されることによって、体積膨張が120%〜250%の独立セル型発泡をなしていることが、サイディング冷却装置内の抵抗により異形プロファイルの切れを防ぐ溶融時強度と表面粘着抵抗、および、冷却後に螺旋状巻回しながら二本足6で形成される開口部7にヤジリ部8および首部9を挿入する押し込み圧力による変形に対する耐力から、成型が可能である好適な配合範囲である。
【0015】
剛性オレフィン樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)系、ポリエチレン(PE)系、ポリスチレン(PS)系などの樹脂が挙げられ、なかでもポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、鉱物系フィラーとしては、タルク、炭酸カルシュウム等が挙げられ、特にタルクが好ましい。剛性オレフィン樹脂の曲げ弾性率が1000MPa未満の場合には、螺旋巻回によって管成型する場合に、巻き付け途上で異形プロファイルが中折れすることがあり好ましくない。より好ましくは、曲げ弾性率1100〜1500MPaの範囲である。
【0016】
剛性オレフィン樹脂の配合割合は、70重量%未満、即ち鉱物系フィラーの添加量が30重量%を超える場合においては、押出時での延伸切れが多発し好ましくない。一方、鉱物系フィラーを含まない場合においては、異形押出におけるシャープなエッジ表現が劣り好ましくない。より好ましい状態としては、剛性オレフィン樹脂が80〜90重量%、鉱物系フィラーが20〜10重量%の場合である。
【0017】
発泡剤としては、例えばブタン、ペンタン、シクロペンタン、トリクロロフルオロメタン(R11)、クロロジフルオロエタン(R142b)、トリクロロトリフルオロエタン(R113)等が挙げられ、この発泡剤を内包する熱膨張性微少球系発泡剤の熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の重合体、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体、メチルメタアクリレート(MMA)とアクリロニトリルの共重合体などが挙げられる。市販品としては、例えば日本フェライト株式会社のエクスパンセル091,120DU,461,461DU,551、また松本油脂製薬株式会社のマツモトマイクロスフェアーF−30,F−50,F−80等が挙げられる。そして、このような熱膨張性微少球系発泡剤の好適な添加量としては、異形プロファイルを構成する樹脂およびフィラーの合計量に対して0.1〜1.0重量%の範囲が好ましく、0.1重量%未満の場合には、発泡の効果確認が困難となり、また1.0重量%を越える場合には異形押出成型が困難となり、共に好ましくない。より好ましくは、0.3〜0.8重量%の範囲である。
【0018】
また本発明において、可撓性ホースを構成する樹脂は発泡されていることが必要で、発泡により樹脂表面の梨地化および軽量化による嵌合部の滑り抵抗の向上が得られ、曲げ状態の形状保持力の向上や耐垂れ下がり性の改善がなされ、さらに使用する樹脂量の低減、結露防止や送風熱ロスの低減が達成される。そして、発泡の程度としては、発泡率110%〜200%が好ましく、より好ましくは120〜150%の範囲である。なお、本発明において発泡率とは、全く発泡されていない状態を100%として、比重から求めた値である。
【0019】
図2は、本発明の管成形方法の一端を示するものである。
冷却された異形プロファイルは、螺旋状に巻回(矢印A)され二本足で形成される開口部にヤジリ部および首部を連続的に挿入され、同時に、巻回時における内外周差により、開口部は、螺旋二本足先端のカエリ10が首部に接する状態で密閉11されて管状に組み込み成型された、空調用発泡可撓性ホース12である。
【0020】
このような異形プロファイルを螺旋状に巻回させることにより得られる管状物は、他の断面形状の管状物と比べ、伸長時には二本足間に挿入されたヤジリがカエリに引っかかることで、異形プロファイル脱落による管崩壊を防止しするという特長を有する。そして、このような管状物を構成する樹脂として発泡されたものを用いることにより、特には、樹脂表面状態の梨地化に起因する、嵌合部の滑り抵抗の高まりによる曲げ状態の形状保持力の向上や、外観的な高級感があげられ、さらには、一般的な発泡効果である原料樹脂の低減、軽量化による耐垂れ下がり性の改善、保温性による結露防止や送風熱ロスの低減など、という特長が得られる。
【0021】
本発明の空調用発泡可撓性ホースは、内径φ25mm〜φ500mmの範囲であることが、汎用空調機器の送風量とダクト配管スペースの問題から好適に使用される範囲であり、さらには、同範囲のホース成型において発泡および冷却固化後の異形プロファイルにおけるヤジリ部先端から足先までの縦幅(以後、単に縦幅と表記)が10〜50mmの範囲にあることが成形性、および、可撓時の曲げ半径と曲げ形状固定性とのバランスから好適な範囲である。
特に需要の多い、内径φ75mm〜φ175mmにおいては、縦幅12mm〜18mmが最適であり、内径φ175mm〜φ300mmにおいては、縦幅15mm〜22mmが最適である。
【0022】
次に、異形プロファイルの断面における各部のバランスを示す。
冷却固化された異形プロファイルにおいて、二本足間(厳密にはカエリ先端間)で形成される開口部がヤジリ幅以上であることが螺旋巻回時に挿入成型する上で重要である。
【0023】
さらには、開口部深さ(長さ)と首部からヤジリ部先端までの長さが1:0.8〜1:1.2、より好ましくは1:0.95〜1:1.05の範囲であることが、可撓ホースとして伸縮性および可撓性を効率よく発揮する上で重要である。
尚、特に限定されるものではないが、ヤジリ幅は首部厚みの1.5〜2.5倍 より好ましくは1.8〜2.2倍、さらに好ましくは約2倍程度であり、カエリ幅は首部厚みの0.3〜0.7倍、より好ましくは0.4〜0.6倍、さらに好ましくは約0.5倍程度であることが、ホースを伸長した場合にカエリが次周のヤジリ部横の突起に食い込み、異形プロファイルの脱落ちによる管崩壊を防ぐ形態として好ましい。これら全てを併せ持った形態であることが異形プロファイルの最適な形態である。
【0024】
一例ではあるが、溶融吐出され発泡した異形プロファイルは、サイディング冷却装置によって冷却固化されることが異形形状を安定させる上で好ましい。
サイディング装置とは、内部に通水させることで冷却温度を保ちバキューム機能で外側形状に沿わせ形状固定しながら樹脂引き取り力により連続成型する装置であり、本発明においては、溶融発泡樹脂にエアー空冷し粘着性を減らした上で、装置内を通過させ、直後に水中に没させて完全冷却することで発泡異形プロファイル成型に利用するものであり、異形プロファイルが溶融吐出され形状が完全に固定されてしまう前に、沿わせて通過させることで冷却し形状を固定するという機能構造から、樹脂配合による溶融時強度と溶融時の表面粘着による抵抗が安定成型上で重要な要素となっている。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0026】
実施例
曲げ弾性率1,200MPaのポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製:ノバテックEC9)100PHR、タルク15PHR、熱膨張性微少球系発泡剤(日本フィライト社製:エクスパンセルDU120)0.5PHRが配合された樹脂を吐出温度200℃で押出し、サイディング冷却装置によって冷却固定して、開口部8mm、ヤジリ幅2.8mm、首部からヤジリ部先端までの長さ9mm、開口部深さ9mm、首厚み1.2mm、縦幅19mm、発泡率133%の異形プロファイルを得た。この異形プロファイルを内径200mmで螺旋巻回すると同時に、隣接する二本足の開口部にヤジリ部および首部を挿入し、巻回数1000ピッチで収縮時長さ10m、伸長時長さ17mの空調用発泡可撓性ホースを得た。この可撓性ホースは、表面が梨地化されており、高級感を有するものであった。
【0027】
比較例
曲げ弾性率1,200MPaのポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製:ノバテックEC9)100PHR、タルク15PHRが配合された樹脂を吐出温度200℃で押出し、サイディング冷却装置によって冷却固定して、開口部8mm、ヤジリ幅2.8mm、首部からヤジリ部先端までの長さ9mm、開口部深さ9mm、首厚み1.2mm、縦幅19mmの異形プロファイルを得た。この異形プロファイルを内径200mmで螺旋巻回すると同時に、隣接する二本足の開口部にヤジリ部および首部を挿入し、巻回数1000ピッチで収縮時長さ10m、伸長時長さ17mの空調用発泡可撓性ホースを得た。このホースは発泡されておらず、ホース表面が滑り易い状態である。
【0028】
実施例における発泡による軽量化効果は、異形プロファイル比重で、「実施例:0.68」に対し「比較例:1.03」であり、これらの異形プロファイルから成る空調用発泡可撓性ホースの収縮時重量は、「実施例:1.4kg/m」に対し「比較例:2.1kg/m」であった。つまり、実施例は発泡によって従来品である比較例を約33%軽量化した状態であり、即ち使用する化石原料樹脂も約33%削減されることが示された。
【0029】
実施例1および実施例2における垂れ下がり性の比較は、それぞれホース収縮状態1mにおいて、一端部0.5mをテーブル上に固定し他端部0.5mを突き出させその先端に350gの荷重を吊し、80℃恒温室内で3時間静置した後その垂れ下がりの有無および垂れ下がり距離を比較した結果、「実施例:垂れ下がり無し」に対し比較例:15mm」であり、発泡による樹脂表面の梨地化によって抵抗が高まり、二本足の開口部に挿入したヤジリ部および首部がズレを生じ難くしていること、および軽量化によって、曲げ固定力および耐熱垂れ下がり性が改善されたことが示された。
【0030】
実施例1および実施例2における保温性能の比較は、それぞれホース収縮状態5mの試料を、風量250立米/hの空調機に3時間接続し、管中央部(2.5m位置)管内温度を25℃に調整した状態で、気温35℃湿度70%の環境条件に曝し、管中央部における結露の有無と表面温度を測定した結果、「実施例:結露無し・表面温度29.4℃」に対し「比較例:微細結露付着(滴下せず)・表面温度28.2℃」となり、当該条件における結露防止と保温性能があることが示された。
【0031】
このように、本発明の可撓性および形状保持性を有する空調用可撓性ホースは、樹脂が発泡されていることにより、樹脂表面が梨地化されており、これにより嵌合部の滑り抵抗が向上し、さらに軽量化されており、これらにより曲げ状態の形状保持力の向上や垂れ下がり性の改善がなされており、かつ外観的な高級感が付与されている。さらには、一般的な発泡効果である原料樹脂の低減、保温性による結露防止や送風熱ロスの低減など、工場内の空調の配管および吹き出し口などの配管に用いられる空調用発泡可撓性ホースを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の樹脂製の異形プロファイルを螺旋状に嵌合してなる可撓性および形状保持性を有するホースは、表面が発泡されていることにより、樹脂表面状態が梨地化されていることにより嵌合部の滑り抵抗が向上しており、さらに軽量化されており、これらにより曲げ状態の形状保持力が向上し、かつ耐垂れ下がり性の改善がなされ、さらに外観的な高級感が得られている。さらには、一般的な発泡効果である原料樹脂の低減、保温性による結露防止や送風熱ロスの低減など、工場内の空調の配管および吹き出し口などの配管に用いられる空調用発泡可撓性ホースとして有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 異形プロファイル
2 押出機
3 先端ダイス
4 発泡による体積膨張
5 サイディング冷却装置
6 二本足
7 開口部
8 ヤジリ部
9 首部
10 カエリ
11 密閉
12 空調用発泡可撓性ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂からなり、押出成型された異形プロファイルの断面形状が、ヤジリ部、首部、該首部から二股分岐した先端に抜け止めのカエリを有する二本の足部という形状を有し、その異形プロファイルが螺旋状に巻回されているとともに、隣接する二本足の開口部に該ヤジリ部が挿入され管状形態をなしている空調用発泡可撓性ホース。
【請求項2】
発泡樹脂が、曲げ弾性率が1000MPa(JIS7171:1994)以上の剛性オレフィン系樹脂を70重量%以上、鉱物系フィラーを30重量%以下含み、さらに熱可塑性樹脂を外殻成分とする熱膨張性微少球系発泡剤を0.1〜1.0重量%の範囲で含み、押出機から溶融吐出されることにより発泡させたものである請求項1に記載された空調用発泡可撓性ホース。
【請求項3】
発泡樹脂の発泡率が110%〜200%である請求項1または2に記載の空調用発泡可撓性ホース。
【請求項4】
空調用発泡可撓性ホースの内径が25〜500mmの範囲であり、且つ、異形プロファイルの縦幅が10〜50mmの範囲にあって、異形プロファイルにおける二本足の開口幅がヤジリ幅以上の幅であり、螺旋状巻回され管成型される状態において、異形プロファイルの内外周差により開口が閉じられ、二本足のカエリが首部に接する状態をなしている請求項1〜3のいずれかに記載の空調用発泡可撓性ホース。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−265914(P2010−265914A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115311(P2009−115311)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000104906)クラレプラスチックス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】