空調設備用チャンバー
【課題】チャンバーを小型化し、設置スペースを小さくし、圧力損出や流路抵抗が少なく、騒音、振動を抑えて装置の寿命を延ばし、コストダウンを図る。
【解決手段】壁面に、流入口11と複数の流出口12とを開口させてなる空調設備用チャンバー10において、上記流入口11に、短筒状のバッフル筒13をチャンバー10内に突き出して取り付け、該バッフル筒13の、正面と両側面の内、少なくとも一方を開口13a,13bさせたものであり、上記バッフル筒13の正面には、正面中心の左右または上下対称に円弧の中点を向き合わせた二以上の等分円の開口13aをさせ、必要ならば上記等分円の開口13aに、バッフル筒13の正面の中心を軸に、上記等分円の開口13aと同形の回転可能なシャッター板を付設し、このシャッター板の回転・固定により開口を調節可能にし、上記バッフル筒13の開口に代えてパンチングネット13cあるいは図示しないスリットまたはフィーンのいずれかを取り付けることができる。
【解決手段】壁面に、流入口11と複数の流出口12とを開口させてなる空調設備用チャンバー10において、上記流入口11に、短筒状のバッフル筒13をチャンバー10内に突き出して取り付け、該バッフル筒13の、正面と両側面の内、少なくとも一方を開口13a,13bさせたものであり、上記バッフル筒13の正面には、正面中心の左右または上下対称に円弧の中点を向き合わせた二以上の等分円の開口13aをさせ、必要ならば上記等分円の開口13aに、バッフル筒13の正面の中心を軸に、上記等分円の開口13aと同形の回転可能なシャッター板を付設し、このシャッター板の回転・固定により開口を調節可能にし、上記バッフル筒13の開口に代えてパンチングネット13cあるいは図示しないスリットまたはフィーンのいずれかを取り付けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調設備における天井、天井裏などに配置される温湿度調整済み空気分配用チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル、劇場など各種建物内の空調設備は、空調機で温湿度を調整された空気が、ダクトを経て天井に配置されたチャンバーに送られ、チャンバーで所要数に分配され、フレキシブルダクトを経て吹き出し口に至る。ここで上記チャンバーでは、フレキシブルダクトに送り出される空気量を均一にするため次に挙げる提案がなされている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−193298号公報(要約、図面)
【特許文献2】特開2001−027444号公報(要約、図面)
【0004】
上記特許文献1は、「空調用設備ユニット10は、直方体状のチャンバー本体11の周面に空気流入口12と複数の空気流出口13を備え、複数の空気流出口13には風量バランス調整用オリフィス14を備えている。また、空気流入口12は空調機器15に接続され、複数の空気流出口13にはそれぞれフレキシブルダクト16の基端部が接続されるとともに、各フレキシブルダクト16の先端部に吹き出し装置17が取り付けられた」ものである(上記符号は、特許文献1の通り)。
【0005】
また、特許文献2は、「空調機5からの供給管5aに接続され、かつ複数の空調用吹き出し口3a〜3fへそれぞれ向かうフレキシブルダクト2a〜2fなどによる分配流路を接続して空調空気を分配するチャンバー本体1を含む空調設備ユニットにおいて、チャンバー本体1の体積(m3)とフレキシブルダクト2a〜2fの総流路面積(m2)との大きさの比係数を0.15〜1.0(m)となる関係とし、チャンバー本体1からフレキシブルダクト2a〜2fへ至るそれぞれの流路構造には、全てのフレキシブルダクト2a〜2fについて相互に流量を均一化し合うための流路抵抗機構(ネット、ダンパ、スリットなど)を持たせた」ものである(上記符号は、特許文献2の通り)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術のものは、空気流入口(以下、単に「流入口」という)から直方体状のチャンバー(以下、単に「チャンバー」という)内に吐き出される空気を流出口に向けて分散させる思想は全くなく、空気流出口(以下、単に「流出口」という)にオリフィス(図示せず)などを配置して吹き出し口の空気量を調整しようとするものであるから、次のような問題をもっていた。
【0007】
第一に、流入口からチャンバー内に空気がストレートに流入するため、例えば流入口の対向壁に流出口を設けると、その流出口に空気の流れが集中するので、空気の分配調整が極めて困難である。
【0008】
第二に、上記とは逆に流入口を設けた同一壁に流出口を設けると、その流出口への空気の分配が極端に薄くならざるを得なくなる。
【0009】
第三に、上記第一と第二の理由から流入口の対向壁と同一壁に流出口を設けないとするならば、チャンバーの両側壁面に流出口を設けることになり、それによってチャンバーが長くなり、チャンバーの設置のためのスペースが大きくなる。特に空調機を接近して設置する必要があるときは、梁の強度を含めてチャンバーの設置工事が困難になる。
【0010】
第四に、チャンバーが長くなることは、流出口が流入口から遠くなるほど空気圧が下がるため、それに対応して流出口のオリフィス(流路抵抗機構)の大幅な調整が必要となり、吹き出し空気量のアンバランスと空調効率の低下、空気流の乱れと騒音・振動の原因になり、振動の発生は、流出口と吹き出し口を繋ぐフレキシブルダクトの寿命を短くする。
【0011】
第五に、流入口の対向壁、同一壁に流出口を設置できないということは、流入口の対向壁方向・同一壁方向に設けた空気吹き出し口(以下、単に「吹き出し口」という)に延びるフレキシブルダクトは迂回設置されることとなって長くなり、流路抵抗も大きくなって経済的・機能的に好ましい状態ではない。
【0012】
また第六に、上記特許文献とは別に、チャンバーに流入する空調空気の流量を調整することを目的として、流入口の上流側に図9(a)に示すようにダンパーが設けられることがある。このダンパーを開閉して風量調整するため、ダンパーを開けた場合、流入する空気の流れが上方に偏り流出口12aから12fあるいは12gから流れる空気の量のバランスがくずれ易いこととなる。
【0013】
上記状況に鑑みこの発明は、上記第一乃至第六の問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためにこの発明は、壁面に、流入口と複数の流出口とを開口させてなる空調設備用チャンバーにおいて、上記流入口に、短筒状のバッフル筒をチャンバー内に突き出して取り付け、該バッフル筒の、正面と両側面の内、少なくとも一方を開口させた(請求項1)ものであり、上記バッフル筒の正面に、正面中心の左右または上下対称に円弧の中点を向き合わせた二以上の等分円の開口を設け(請求項2)、上記等分円の開口に、バッフル筒正面の中心を軸に、上記等分円の開口と同形の回転可能なシャッター板を付設し、このシャッター板の回転・固定により開口を調節可能にし(請求項3)、上記バッフル筒の開口に代えてパンチングネット、スリット、フィーンのいずれかを取り付けた(請求項4)ものである。
【発明の効果】
【0015】
上記の如く構成するこの発明によれば、空気がチャンバー内に分散して流入するので流入口と同一壁(両サイド)および対向壁にも流出口を開口できるようになって、チャンバーを短く、かつ、小型にすることができ、各流出口から流れ出る空気の流量バランスがよくなって空調効率がよくなる。
【0016】
チャンバーが小型になることにより、天井(裏)への設置スペースが小さくなり、工事が容易になり、コストダウンに繋がり、さらにチャンバーの近くに空調機を併設することが可能となる。
【0017】
また、フレキシブルダクトの迂回設置が不要となり、最短距離で流出口と吹き出し口を繋ぐことができるようになって、圧力損出や流路抵抗を少なくし、騒音や振動を抑制し、フレキシブルダクトの寿命を延長することができる。
【0018】
また、チャンバーの流入口の上流側にダンパーを設ける場合でも、流入口にバッフル筒を設けることにより空調空気が分散してチャンバーに流入するので、流出口からの空調空気の流出の偏りが発生することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次にこの発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。この発明の実施形態は、チャンバー10の壁面に流入口11と複数の流出口12a〜12fを設け、上記流入口11に先細り短筒状のバッフル筒13をチャンバー10内に突き出して設けている。
【0020】
このバッフル筒13は、その正面と両側面に開口13a,13bを設けたもので、この開口13a,13bは、チャンバー10の壁面に設けた流出口12に向かうように設けている。従って流出口12のない方向には開口13a,13bを設けなくてもよい。
【0021】
また、チャンバー10の四方壁面に流出口12を設けるときは、上記バッフル筒13の正面と両側面にも開口13a,13bを設け、さらに空気を分散させるために両側面の開口13bに風向調整翼(図示せず)を付設することもできる。また、一般的にチャンバー10は直方体となっているが、必ず直方体でなければならない理由はなく、建物の形状・構造に合わせることもできる。
【実施例】
【0022】
図1は第一実施例に係る空調設備用チャンバー10とフレキシブルダクト15a〜15fを介して吹き出し口16a〜16fを繋いだ状態の斜視図で、図示しない空調機から延びたダクト14は、チャンバー10の流入口11に接続され、該流入口11のチャンバー10の内部にはバッフル筒13が取付けられている。
【0023】
流入口11の両側同一壁と、対向壁の両側およびチャンバーの長手方向の両端に流出口12a〜12fが開口し、それぞれの流出口12a〜12fにフレキシブルダクト15a〜15fが接続され、その先に吹き出し口16a〜16fが取り付けられている。なお、チャンバー10は、四隅のボルト17により天井に取り付けられる。
【0024】
図2は第二実施例に係る空調設備用チャンバー10の平面図、正面図および側面図で、平面では正方形で右側壁に流入口11が開口し、この流入口11に図示しない空調機から延びるダクト(図示せず)が接続され、流入口11の正面と両側壁に2個宛流出口12a〜12fが開口し、これら流出口12a〜12fに図示しないフレキシブルダクトが接続され、その端に図示しない吹き出し口が接続される(図1参照)。
【0025】
第二実施例のチャンバー10のサイズは、縦×横×高さ=550×550×300(mm)で、流入口11を250mmφ、流出口12a〜12fを150mmφとし、バッフル筒13の基部外径を250mmφ、先端外径225mmφ、高さ85mmとし、正面の開口13aを200mmφの四等分円を二個、両側面の開口13bを160×60mmを2個設けたものである。
【0026】
上記空調設備用チャンバー10の流入口11と流出口12a〜12fに、図7に示すフレキシブルダクト15a〜15fを接続し、その先に繋いだ各吹き出し口16a〜16fにおける所望風量の合計風量を流入口11に送り込んだときの、各吹き出し口16a〜16fの風量バランスを測定した結果を表1に示す。なお、参考までに本発明に係るバッフル筒を取り付けない場合のデーターを右欄に示す。
【0027】
【表1】
注記 表中の静圧はmmAq 風量はm3/H 風量バランスは%である。また、各流出側フレキシブルダクトの長さは、15a=2.0m、15b=4.3m、15c=4.0m、
15d=2.0m、15e=5.8m、15f=3.2mである。
【0028】
表1のデーターにより本発明に係る空調設備用チャンバーによれば、良好な風量バランスが得られることが分かる。
【0029】
図3は本発明に係る空調設備用チャンバーの流入口11に取り付けられるバッフル筒13の平面図、正面図、左右側面図および斜視図で、このバッフル筒13の正面中心に対称の四等分円の開口13aを二個所設け、両側面には、円周に沿って長方形で四隅を面取りした開口13bを二個所設けている。なお、ここで図示していないが上記四等分円の開口に、同一の四等分円を開口したシャッター板を、中心を軸にして回転、固定可能にすることができ、また、上記長方形の開口13bにもシャッター板を付設して流量調整するようにできる。
【0030】
図4は第三実施例に係る空調設備用チャンバーの平面図、正面図および側面図である。この実施例において、右側壁に流入口11が開口し、流入口11の対向壁に2個の流出口12d,12eと両側壁に各3個の流出口12a〜12c,12f〜12hが開口している。バッフル筒13の構造・形状は、図3で説明したものと同様である。
【0031】
図5は、バッフル筒13の他の実施例で、正面の開口は、前述のものと同じで、両側面の開口は、若干下よりに開口しており、その他は同じ形状・構造である。
【0032】
図6は、バッフル筒13の正面を蜂の巣状のパンチングネット13cとしたもので、他は図3のバッフル筒と同じである。なお、上記各実施例のバッフル筒はテーパー筒形にしているが、単なる筒形でもよい。
【0033】
以上説明したようにチャンバーの空気流入口に、本発明に係るバッフル筒を設けることにより、例えチャンバーの空気流入口の上流側にダンパーを設けたときでも、図9(c)、(d)に示すようにバッフル筒を経てチャンバー内に流入する空気は均等に分散するので各流出口から均等に空調済み空気が流出することになる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明した如くこの発明によれば、チャンバーを短く、かつ、小型にすることができ、各吹き出し口の風量バランスがよくなって空調効率がよくなり、チャンバーの小型化によって、天井(裏)への設置スペースが小さくなり、工事が容易になるとともにコストダウンに繋がり、さらにチャンバーの近くに空調機を併設することも可能となる。
【0035】
また、フレキシブルダクトの迂回設置が不要となり、圧力損出や流路抵抗による騒音や振動を抑制し、フレキシブルダクトの寿命を延長することができるなど産業上利用価値が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第一実施例に係る空調設備用チャンバーの斜視図
【図2】第二実施例に係る空調設備用チャンバーの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図
【図3】本発明に係る空調設備用チャンバー用バッフル筒の(a)左側面図、(b)平面図、(c)正面図、(d)右側面図、(e)斜視図
【図4】第三実施例に係る空調設備用チャンバーの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図
【図5】他の実施例に係るバッフル筒の(a)左側面図、(b)上面図、(c)正面図、(d)右側面図、(e)底面図
【図6】他の実施例に係るバッフル筒の(a)左側面図、(b)上面図、(c)正面図、(d)右側面図
【図7】風量バランス測定の説明図
【図8】従来の空調設備用チャンバーの平面図で(a)はその1、(b)はその2
【図9】チャンバーの上流側にダンパーを設けた場合の空気の流れを示すもので(a)、(b)は従来技術のもの、(c)、(d)は本発明のものを示す
【符号の説明】
【0037】
10 チャンバー
11 流入口
12 流出口
12a〜12h 流出口
13 バッフル筒
13a 開口(正面)
13b 開口(側面)
14 フレキシブルダクト(流入側)
15a〜15f フレキシブルダクト(流出側)
16a〜16f 吹き出し口
17 ボルト
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調設備における天井、天井裏などに配置される温湿度調整済み空気分配用チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル、劇場など各種建物内の空調設備は、空調機で温湿度を調整された空気が、ダクトを経て天井に配置されたチャンバーに送られ、チャンバーで所要数に分配され、フレキシブルダクトを経て吹き出し口に至る。ここで上記チャンバーでは、フレキシブルダクトに送り出される空気量を均一にするため次に挙げる提案がなされている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−193298号公報(要約、図面)
【特許文献2】特開2001−027444号公報(要約、図面)
【0004】
上記特許文献1は、「空調用設備ユニット10は、直方体状のチャンバー本体11の周面に空気流入口12と複数の空気流出口13を備え、複数の空気流出口13には風量バランス調整用オリフィス14を備えている。また、空気流入口12は空調機器15に接続され、複数の空気流出口13にはそれぞれフレキシブルダクト16の基端部が接続されるとともに、各フレキシブルダクト16の先端部に吹き出し装置17が取り付けられた」ものである(上記符号は、特許文献1の通り)。
【0005】
また、特許文献2は、「空調機5からの供給管5aに接続され、かつ複数の空調用吹き出し口3a〜3fへそれぞれ向かうフレキシブルダクト2a〜2fなどによる分配流路を接続して空調空気を分配するチャンバー本体1を含む空調設備ユニットにおいて、チャンバー本体1の体積(m3)とフレキシブルダクト2a〜2fの総流路面積(m2)との大きさの比係数を0.15〜1.0(m)となる関係とし、チャンバー本体1からフレキシブルダクト2a〜2fへ至るそれぞれの流路構造には、全てのフレキシブルダクト2a〜2fについて相互に流量を均一化し合うための流路抵抗機構(ネット、ダンパ、スリットなど)を持たせた」ものである(上記符号は、特許文献2の通り)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術のものは、空気流入口(以下、単に「流入口」という)から直方体状のチャンバー(以下、単に「チャンバー」という)内に吐き出される空気を流出口に向けて分散させる思想は全くなく、空気流出口(以下、単に「流出口」という)にオリフィス(図示せず)などを配置して吹き出し口の空気量を調整しようとするものであるから、次のような問題をもっていた。
【0007】
第一に、流入口からチャンバー内に空気がストレートに流入するため、例えば流入口の対向壁に流出口を設けると、その流出口に空気の流れが集中するので、空気の分配調整が極めて困難である。
【0008】
第二に、上記とは逆に流入口を設けた同一壁に流出口を設けると、その流出口への空気の分配が極端に薄くならざるを得なくなる。
【0009】
第三に、上記第一と第二の理由から流入口の対向壁と同一壁に流出口を設けないとするならば、チャンバーの両側壁面に流出口を設けることになり、それによってチャンバーが長くなり、チャンバーの設置のためのスペースが大きくなる。特に空調機を接近して設置する必要があるときは、梁の強度を含めてチャンバーの設置工事が困難になる。
【0010】
第四に、チャンバーが長くなることは、流出口が流入口から遠くなるほど空気圧が下がるため、それに対応して流出口のオリフィス(流路抵抗機構)の大幅な調整が必要となり、吹き出し空気量のアンバランスと空調効率の低下、空気流の乱れと騒音・振動の原因になり、振動の発生は、流出口と吹き出し口を繋ぐフレキシブルダクトの寿命を短くする。
【0011】
第五に、流入口の対向壁、同一壁に流出口を設置できないということは、流入口の対向壁方向・同一壁方向に設けた空気吹き出し口(以下、単に「吹き出し口」という)に延びるフレキシブルダクトは迂回設置されることとなって長くなり、流路抵抗も大きくなって経済的・機能的に好ましい状態ではない。
【0012】
また第六に、上記特許文献とは別に、チャンバーに流入する空調空気の流量を調整することを目的として、流入口の上流側に図9(a)に示すようにダンパーが設けられることがある。このダンパーを開閉して風量調整するため、ダンパーを開けた場合、流入する空気の流れが上方に偏り流出口12aから12fあるいは12gから流れる空気の量のバランスがくずれ易いこととなる。
【0013】
上記状況に鑑みこの発明は、上記第一乃至第六の問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためにこの発明は、壁面に、流入口と複数の流出口とを開口させてなる空調設備用チャンバーにおいて、上記流入口に、短筒状のバッフル筒をチャンバー内に突き出して取り付け、該バッフル筒の、正面と両側面の内、少なくとも一方を開口させた(請求項1)ものであり、上記バッフル筒の正面に、正面中心の左右または上下対称に円弧の中点を向き合わせた二以上の等分円の開口を設け(請求項2)、上記等分円の開口に、バッフル筒正面の中心を軸に、上記等分円の開口と同形の回転可能なシャッター板を付設し、このシャッター板の回転・固定により開口を調節可能にし(請求項3)、上記バッフル筒の開口に代えてパンチングネット、スリット、フィーンのいずれかを取り付けた(請求項4)ものである。
【発明の効果】
【0015】
上記の如く構成するこの発明によれば、空気がチャンバー内に分散して流入するので流入口と同一壁(両サイド)および対向壁にも流出口を開口できるようになって、チャンバーを短く、かつ、小型にすることができ、各流出口から流れ出る空気の流量バランスがよくなって空調効率がよくなる。
【0016】
チャンバーが小型になることにより、天井(裏)への設置スペースが小さくなり、工事が容易になり、コストダウンに繋がり、さらにチャンバーの近くに空調機を併設することが可能となる。
【0017】
また、フレキシブルダクトの迂回設置が不要となり、最短距離で流出口と吹き出し口を繋ぐことができるようになって、圧力損出や流路抵抗を少なくし、騒音や振動を抑制し、フレキシブルダクトの寿命を延長することができる。
【0018】
また、チャンバーの流入口の上流側にダンパーを設ける場合でも、流入口にバッフル筒を設けることにより空調空気が分散してチャンバーに流入するので、流出口からの空調空気の流出の偏りが発生することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次にこの発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。この発明の実施形態は、チャンバー10の壁面に流入口11と複数の流出口12a〜12fを設け、上記流入口11に先細り短筒状のバッフル筒13をチャンバー10内に突き出して設けている。
【0020】
このバッフル筒13は、その正面と両側面に開口13a,13bを設けたもので、この開口13a,13bは、チャンバー10の壁面に設けた流出口12に向かうように設けている。従って流出口12のない方向には開口13a,13bを設けなくてもよい。
【0021】
また、チャンバー10の四方壁面に流出口12を設けるときは、上記バッフル筒13の正面と両側面にも開口13a,13bを設け、さらに空気を分散させるために両側面の開口13bに風向調整翼(図示せず)を付設することもできる。また、一般的にチャンバー10は直方体となっているが、必ず直方体でなければならない理由はなく、建物の形状・構造に合わせることもできる。
【実施例】
【0022】
図1は第一実施例に係る空調設備用チャンバー10とフレキシブルダクト15a〜15fを介して吹き出し口16a〜16fを繋いだ状態の斜視図で、図示しない空調機から延びたダクト14は、チャンバー10の流入口11に接続され、該流入口11のチャンバー10の内部にはバッフル筒13が取付けられている。
【0023】
流入口11の両側同一壁と、対向壁の両側およびチャンバーの長手方向の両端に流出口12a〜12fが開口し、それぞれの流出口12a〜12fにフレキシブルダクト15a〜15fが接続され、その先に吹き出し口16a〜16fが取り付けられている。なお、チャンバー10は、四隅のボルト17により天井に取り付けられる。
【0024】
図2は第二実施例に係る空調設備用チャンバー10の平面図、正面図および側面図で、平面では正方形で右側壁に流入口11が開口し、この流入口11に図示しない空調機から延びるダクト(図示せず)が接続され、流入口11の正面と両側壁に2個宛流出口12a〜12fが開口し、これら流出口12a〜12fに図示しないフレキシブルダクトが接続され、その端に図示しない吹き出し口が接続される(図1参照)。
【0025】
第二実施例のチャンバー10のサイズは、縦×横×高さ=550×550×300(mm)で、流入口11を250mmφ、流出口12a〜12fを150mmφとし、バッフル筒13の基部外径を250mmφ、先端外径225mmφ、高さ85mmとし、正面の開口13aを200mmφの四等分円を二個、両側面の開口13bを160×60mmを2個設けたものである。
【0026】
上記空調設備用チャンバー10の流入口11と流出口12a〜12fに、図7に示すフレキシブルダクト15a〜15fを接続し、その先に繋いだ各吹き出し口16a〜16fにおける所望風量の合計風量を流入口11に送り込んだときの、各吹き出し口16a〜16fの風量バランスを測定した結果を表1に示す。なお、参考までに本発明に係るバッフル筒を取り付けない場合のデーターを右欄に示す。
【0027】
【表1】
注記 表中の静圧はmmAq 風量はm3/H 風量バランスは%である。また、各流出側フレキシブルダクトの長さは、15a=2.0m、15b=4.3m、15c=4.0m、
15d=2.0m、15e=5.8m、15f=3.2mである。
【0028】
表1のデーターにより本発明に係る空調設備用チャンバーによれば、良好な風量バランスが得られることが分かる。
【0029】
図3は本発明に係る空調設備用チャンバーの流入口11に取り付けられるバッフル筒13の平面図、正面図、左右側面図および斜視図で、このバッフル筒13の正面中心に対称の四等分円の開口13aを二個所設け、両側面には、円周に沿って長方形で四隅を面取りした開口13bを二個所設けている。なお、ここで図示していないが上記四等分円の開口に、同一の四等分円を開口したシャッター板を、中心を軸にして回転、固定可能にすることができ、また、上記長方形の開口13bにもシャッター板を付設して流量調整するようにできる。
【0030】
図4は第三実施例に係る空調設備用チャンバーの平面図、正面図および側面図である。この実施例において、右側壁に流入口11が開口し、流入口11の対向壁に2個の流出口12d,12eと両側壁に各3個の流出口12a〜12c,12f〜12hが開口している。バッフル筒13の構造・形状は、図3で説明したものと同様である。
【0031】
図5は、バッフル筒13の他の実施例で、正面の開口は、前述のものと同じで、両側面の開口は、若干下よりに開口しており、その他は同じ形状・構造である。
【0032】
図6は、バッフル筒13の正面を蜂の巣状のパンチングネット13cとしたもので、他は図3のバッフル筒と同じである。なお、上記各実施例のバッフル筒はテーパー筒形にしているが、単なる筒形でもよい。
【0033】
以上説明したようにチャンバーの空気流入口に、本発明に係るバッフル筒を設けることにより、例えチャンバーの空気流入口の上流側にダンパーを設けたときでも、図9(c)、(d)に示すようにバッフル筒を経てチャンバー内に流入する空気は均等に分散するので各流出口から均等に空調済み空気が流出することになる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明した如くこの発明によれば、チャンバーを短く、かつ、小型にすることができ、各吹き出し口の風量バランスがよくなって空調効率がよくなり、チャンバーの小型化によって、天井(裏)への設置スペースが小さくなり、工事が容易になるとともにコストダウンに繋がり、さらにチャンバーの近くに空調機を併設することも可能となる。
【0035】
また、フレキシブルダクトの迂回設置が不要となり、圧力損出や流路抵抗による騒音や振動を抑制し、フレキシブルダクトの寿命を延長することができるなど産業上利用価値が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第一実施例に係る空調設備用チャンバーの斜視図
【図2】第二実施例に係る空調設備用チャンバーの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図
【図3】本発明に係る空調設備用チャンバー用バッフル筒の(a)左側面図、(b)平面図、(c)正面図、(d)右側面図、(e)斜視図
【図4】第三実施例に係る空調設備用チャンバーの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図
【図5】他の実施例に係るバッフル筒の(a)左側面図、(b)上面図、(c)正面図、(d)右側面図、(e)底面図
【図6】他の実施例に係るバッフル筒の(a)左側面図、(b)上面図、(c)正面図、(d)右側面図
【図7】風量バランス測定の説明図
【図8】従来の空調設備用チャンバーの平面図で(a)はその1、(b)はその2
【図9】チャンバーの上流側にダンパーを設けた場合の空気の流れを示すもので(a)、(b)は従来技術のもの、(c)、(d)は本発明のものを示す
【符号の説明】
【0037】
10 チャンバー
11 流入口
12 流出口
12a〜12h 流出口
13 バッフル筒
13a 開口(正面)
13b 開口(側面)
14 フレキシブルダクト(流入側)
15a〜15f フレキシブルダクト(流出側)
16a〜16f 吹き出し口
17 ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に、空気流入口と複数の空気流出口とを開口させてなる空調設備用チャンバーにおいて、上記空気流入口に、短筒状のバッフル筒をチャンバー内に突き出して取り付け、該バッフル筒の、正面と両側面の内、少なくとも一方を開口させたことを特徴とする空調設備用チャンバー。
【請求項2】
上記バッフル筒の正面に、正面中心の左右または上下対称に円弧の中点を向き合わせた二以上の等分円の開口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の空調設備用チャンバー。
【請求項3】
上記等分円の開口に、バッフル筒正面の中心を軸に、上記等分円の開口と同形の回転可能なシャッター板を付設し、このシャッター板の回転・固定により開口を調節可能にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の空調設備用チャンバー。
【請求項4】
上記バッフル筒の開口に代えてパンチングネット、スリット、フィーンのいずれかを取り付けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空調設備用チャンバー。
【請求項1】
壁面に、空気流入口と複数の空気流出口とを開口させてなる空調設備用チャンバーにおいて、上記空気流入口に、短筒状のバッフル筒をチャンバー内に突き出して取り付け、該バッフル筒の、正面と両側面の内、少なくとも一方を開口させたことを特徴とする空調設備用チャンバー。
【請求項2】
上記バッフル筒の正面に、正面中心の左右または上下対称に円弧の中点を向き合わせた二以上の等分円の開口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の空調設備用チャンバー。
【請求項3】
上記等分円の開口に、バッフル筒正面の中心を軸に、上記等分円の開口と同形の回転可能なシャッター板を付設し、このシャッター板の回転・固定により開口を調節可能にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の空調設備用チャンバー。
【請求項4】
上記バッフル筒の開口に代えてパンチングネット、スリット、フィーンのいずれかを取り付けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空調設備用チャンバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2006−183930(P2006−183930A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377378(P2004−377378)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
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