説明

空間多重通信装置及び方法

【課題】受信器に位置合わせ用の光源を設けることなく、送信器と受信器との位置合わせを精度良く行うことが可能な空間多重通信装置を提供する。
【解決手段】送信器10の発光部32には、所定の位置関係にある通信用光源306と位置検出用受光素子307との組を複数設ける。受信器20の受光部42には、発光部31の所定の位置関係に対応付けて通信用受光素子409及び導光部408を設ける。発光部32は、通信用光源306から導光部408に向けて光信号を出射し、導光部408から戻ってきた光信号を位置検出用受光素子307で検出する。光信号を出射した通信用光源306と光信号を検出した位置検出用受光素子307との関係から、導光部408の位置、すなわち受光部42の位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信器が複数の光源(発光素子)を用いて送信した信号を、受信器が複数の受光素子を利用して受光する、空間多重通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の情報機器を専用の端末に近接させることにより、例えばクーポン等の情報コンテンツの取得や決裁処理を行うことができる、非接触通信サービスが普及しつつある。この非接触通信サービスは、情報機器と専用端末とを物理的に接続する手間が無く便利である。しかも、通信エリアをごく近距離に絞ることにより、情報漏えいや他の電子機器への悪影響を避けることが容易である。このため、今後は、非接触通信によって、大容量のコンテンツを瞬時にダウンロード可能な情報配信サービス等の実現が期待されている。
【0003】
上述した非接触通信の利点を活かしつつ、高速通信を実現する1つの方法として、空間多重光通信方式が有効である。この空間多重光通信方式は、送信器が複数の光源を利用して、複数の光信号を別々の空間に多重送信し、受信器が複数の受光素子を利用してこれらの光信号を並列受信することによって、高速通信を実現するものである。さらには、光の狭指向性及び遮蔽性を利用することにより、空間多重効率の向上及び情報漏えいの抑止を実現することが可能である。
【0004】
空間多重光通信方式では、各光源からの光信号を、対応する各受光素子の位置へ精度良く到達させることが課題となる。その方法として、受信器の発光素子から放射された参照光の到来方向を、送信器が電荷結合素子を用いて推定し、その結果に基づいて、光信号の放射方向を受信器の受光素子へ向ける方法が、従来より提案されている(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特許第3064839号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、受信器に参照光を放射するための光源(発光素子)が必要であり、送信器だけでなく受信器にも光源と受光素子との両方を設けなければならず、受信器の装置規模や消費電力が大きくなるという課題がある。
【0006】
それ故に、本発明の目的は、受信器に位置合わせ用の光源を設けることなく、送信器と受信器との位置合わせを精度良く行うことが可能な空間多重通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、送信器と受信器との間で光空間通信を行う空間多重通信装置に向けられている。そして、上記目的を達成するために、本発明の空間多重通信装置は、送信器に、光信号を出射する複数の通信用光源と、複数の通信用光源と所定の位置関係を有して設けられ、複数の通信用光源から出射された複数の光信号のいずれか1つに応答して受信器から戻ってくる光信号を受光する、少なくとも1つの位置検出用受光素子とを備え、受信器に、 光信号を受光する複数の通信用受光素子と、複数の通信用受光素子と所定の位置関係を有して設けられ、複数の通信用光源のいずれか1つから出射された光信号を入力し、入力した光信号を導光して送信器の少なくとも1つの位置検出用受光素子に向けて出射する導光部とを備える構成を採用する。この構成により、送信器は、光信号を出射した複数の通信用光源のいずれか1つの位置と、光を受光した少なくとも1つの位置検出用受光素子の位置との相対関係に基づいて、複数の通信用光源と複数の通信用受光素子との位置関係を特定する。
【0008】
好ましくは、複数の通信用光源及び複数の通信用受光素子は、所定半径の円周上にそれぞれ配置されており、またその円周上に等間隔で配置されていることが望ましい。なお、複数の通信用光源及び複数の通信用受光素子は、所定半径が異なる複数の円周上に配置されていてもよく、同様に複数の円周上に等間隔で配置されていることが望ましい。
【0009】
また、少なくとも1つの位置検出用受光素子が、複数の通信用光源に対応して複数設けられている場合には、所定半径と異なる半径の円周上に配置されており、また円周上に等間隔で配置されていることが好ましい。この場合、複数の通信用受光素子の隣接する2つの素子と円周の中心点とで形成される内角は、複数の通信用光源の隣接する2つの光源と円周の中心点とで形成される内角の整数倍であることが望ましい。
【0010】
また、複数の通信用光源に、光を所定範囲に拡散して放出するための導光板を備えてもよいし、少なくとも1つの位置検出用受光素子や複数の通信用受光素子に、所定範囲の光を集光するための導光板を備えてもよい。また、複数の通信用光源は、隣接する2つが互いに異なる偏光状態の光を放射してもよいし、複数の通信用受光素子や複数の位置検出用受光素子は、隣接する2つが互いに異なる偏光状態のみを透過するフィルタをそれぞれ備えてもよい。
【0011】
なお、少なくとも1つの位置検出用受光素子は、複数の通信用光源に対応して1つ設けられてもよく、この場合には円周の中心に配置されていることが好ましい。
【0012】
さらに、上記目的を達成するために、本発明の他の空間多重通信装置は、送信器に、所定半径の円周上に配置され、光信号を出射する複数の通信用光源と、所定半径の円の中心に配置され、位置特定用の光信号を出射する標識光源と、複数の通信用光源と所定の位置関係を有して所定半径と異なる半径の円周上に配置され、標識光源から出射された光信号に応答して受信器から戻ってくる光信号を受光する、複数の位置検出用受光素子とを備え、受信器に、光信号を受光する複数の通信用受光素子と、複数の通信用受光素子と所定の位置関係を有して設けられ、標識光源から出射された光信号を入力し、入力した光信号を導光して送信器の複数の位置検出用受光素子に向けて出射する導光部とを備える構成を採用する。この構成により、送信器は、光を受光した複数の位置検出用受光素子の位置に基づいて、複数の通信用光源と複数の通信用受光素子との位置関係を特定する。
【0013】
ここで、標識光源は、さらに、受信器に情報データを送信してもよいし、受信器との通信を行うための同期信号を送信してもよいし、受信器との通信状態を光の発光色や点灯パターンで示してもよい。また、受信器は、さらに、標識光源から出射される光信号を受光するための標識光源用受光素子を設けてもよいし、標識光源から出射される光信号を用いて発電を行ってもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明によれば、受信器に位置合わせ用の光源を設けることなく、送信器と受信器との位置合わせを精度良く行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明の各実施形態に係る空間多重通信装置に共通する基本構成を説明する。
図1は、本発明の空間多重通信装置の基本構成を示す図である。図1において、本発明の空間多重通信装置は、発光部3xを有する送信器10と、受光部4xを有する受信器20とで構成される。発光部3xから出力された光信号50が受光部4xで受光されることによって、通信が行われる。
【0016】
以下、この発光部3x及び受光部4xが取り得る様々な構成を用いた実施形態を、詳細に説明する。なお、上記参照符号の‘x’部分には、各実施形態の番号が入るものとする。また、発光部3xの発光面と受光部4xの受光面とは、通常は図1に示すように対向して配置されている状態にあるが、各実施形態における説明を容易にするため、各図面上で横並びに描画することにする。
【0017】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る空間多重通信装置に用いられる発光部31(図2(a))及び受光部41(図2(b))の構成を説明する図である。
【0018】
発光部31は、通信用光源306及び位置検出用受光素子307を一対とする枠308を複数備えた構成である。図2(a)の例では、この枠308を8行8列の格子状の配置した場合を示している。受光部41は、1つの導光部408と、複数の通信用受光素子409とを備えた構成である。導光部408は、発光部31の枠308を2つ結合させた長さの導光路を有しており、一方側に入射された光信号を導光して、他方側から出射する役割を果たす。図2(b)の例では、10個の通信用受光素子409が導光部408を囲うように配置された場合を示している。
【0019】
次に、上述した発光部31及び受光部41の構成において、近接した受信器20の位置を送信器10が特定する手順を説明する。
送信器10は、受信器20が近接すると、複数の通信用光源306を順に発光させる。本第1の実施形態では、1行1列目の枠308から8行8列目の枠308まで、通信用光源306を番号順に1つずつ発光させることを行う。なお、通信用光源306は、1つずつではなく複数同時に発光させてもよい。例えば、奇数列→偶数列→奇数行→偶数行の順番で発光させるといった方法もある。また、送信器10は、受信器20が近接したことを、受信器20によって形成される影による位置検出用受光素子307の受光レベルの変化等で、検知することができる。
【0020】
今、受光部41が発光部31の図2(a)の太枠に対応する位置で、受信器20が送信器10に近接した場合を想定する。
この場合、まず、送信器10は、1行1列目の枠308から3行5列目の枠308まで順番に通信用光源306が受信器20に向けて光信号を出射するが、その光信号は受光部41の枠外平面又は通信用受光素子409に当たって乱反射する。よって、送信器10の各位置検出用受光素子307の受光レベルは、いずれも大きく変化しない[状態A]。
【0021】
次に、送信器10は、3行6列目の枠308にある通信用光源306が受信器20に向けて光信号を出射する。この光信号は、導光部408(受光部41の2行2列目の枠)へ入射され、導光部408(受光部41の2行3列目の枠)から送信器10の方向へ出射される。よって、送信器10では、光信号を出射した3行6列目の枠308とは異なる4行6列目の枠308にある位置検出用受光素子307の受光レベルが、大きく変化する[状態B]。
【0022】
次に、送信器10は、3行7列目の枠308から4行5列目の枠308まで順番に通信用光源306が受信器20に向けて光信号を出射するが、その光信号は受光部41の枠外平面又は通信用受光素子409に当たって乱反射する。よって、送信器10の各位置検出用受光素子307の受光レベルは、いずれも大きく変化しない[状態A]。
【0023】
次に、送信器10は、4行6列目の枠308にある通信用光源306が受信器20に向けて光信号を出射する。この光信号は、導光部408(受光部41の2行3列目の枠)へ入射され、導光部408(受光部41の2行2列目の枠)から送信器10の方向へ出射される。よって、送信器10では、光信号を出射した4行6列目の枠308とは異なる3行6列目の枠308にある位置検出用受光素子307の受光レベルが、大きく変化する[状態B]。
【0024】
さらに、送信器10は、4行7列目の枠308から8行8列目の枠308まで順番に通信用光源306が受信器20に向けて光信号を出射するが、その光信号は受光部41の枠外平面又は通信用受光素子409に当たって乱反射する。よって、送信器10の各位置検出用受光素子307の受光レベルは、いずれも大きく変化しない[状態A]。
【0025】
このように、光信号を出射した枠以外の枠における受光レベルの変化[状態B]を検知することで、受信器20側の導光部408の位置、すなわち受光部41の位置を特定することができる。図2の例では、受信器20の受光部41が、送信器10の発光部31の図2(a)の太枠に対応する位置にあることを特定できる。
【0026】
そして、受信器20の受光部41における導光部408及び通信用受光素子409の配置構成を、送信器10側で予め把握しておくことによって、上記受光部41の位置が特定がされた後に、該当する通信用光源306と通信用受光素子409との間で通信を行うことができる。図2の例では、送信器10は2行5列目、2行6列目、2行7列目、3行5列目、3行7列目、4行5列目、4行7列目、5行5列目、5行6列目、及び5行7列目の枠308にある通信用光源306を用いて、通信を行う。
【0027】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る空間多重通信装置によれば、受信器20に形成される導光部408を用いて送信器10から出射される光信号を送信器10へ戻す。これにより、受信器20に位置合わせ用の光源を設けることなく、送信器10と受信器20との位置合わせを精度良く行うことが可能となる。また、受信器20に能動素子である光源を設けないため、受信器20の消費電力を削減できると共に、携帯端末等の電池駆動を想定した場合には使用可能時間を延ばすことができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、導光部408が複数の枠にまたがる構成を一例として示したが、必ずしも導光部408が複数の枠にまたがらなくてもよい。例えば、1つの枠に相当する導光部(あるいは光を到来方向に反射する反射部)を、導光部408に代えて設けてもよい。この場合、通信用光源306からの光信号がこの導光部に照射されると、同一枠内で光信号が導光されて送信器10の方向へ出射される。よって、送信器10では、光信号を出射した通信用光源306と同一枠内にある位置検出用受光素子307の受光レベルが、大きく変化する。一方、通信用光源306からの光信号がこの枠の導光部以外に照射されても、その光信号は乱反射するため、光信号を出射した通信用光源306と同一枠にない各位置検出用受光素子307の受光レベルは、いずれも大きく変化しない。従って、これらの2つの状態のうち、前者の状態を検知することによって、送信器10は、受信器20の受光部41の位置を特定することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、受信器20における受光部41の位置を特定できるが、その条件として導光部408の向きが発光部31の枠308の配列方向に対して水平又は垂直である場合に限られる。従って、受信器20の回転動作に弱いという課題がある。
そこで、以下の実施形態では、受信器20が回転した場合であっても受信器20における受光部41の位置を特定できる空間多重通信装置を説明する。
【0030】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る空間多重通信装置に用いられる発光部32(図3(a))及び受光部42(図3(b))の構成を説明する図である。
【0031】
発光部32は、中心点Pかつ半径rAの円周上に並べられた複数の通信用光源306と、中心点Pかつ半径rBの円周上に並べられた複数の位置検出用受光素子307とを備えた構成である。図3(a)の例では、半径rA>半径rBとして、8個の通信用光源306を同じ内角(隣接する2つの光源と中心点Pとで形成される角θA)で等間隔に配置し、8個の位置検出用受光素子307を中心点Pと8個の通信用光源306とを結ぶ各直線上にそれぞれ配置した場合を示している。すなわち、この複数の位置検出用受光素子307は、複数の通信用光源306と一対一で対応付けられていることになる。
【0032】
受光部42は、1つの導光部408と、複数の通信用受光素子409とを備えた構成である。導光部408は、発光部32の通信用光源306と位置検出用受光素子307との距離、すなわち|半径rA−半径rB|の長さの導光路を有しており、一方側に入射された光信号を導光して、他方側から出射する役割を果たす。図3(b)の例では、導光部408は、一方側が中心点Qかつ半径rAの円周上に、他方側が中心点Qかつ半径rBの円周上にくるように配置され、4個の通信用受光素子409が同じ内角(隣接する2つの素子と中心点Qとで形成される角θB)で等間隔に配置された場合を示している。
【0033】
次に、上述した発光部32及び受光部42の構成において、近接した受信器20の位置を送信器10が特定する手順を説明する。
送信器10は、発光部32の中心点Pと受光部42の中心点Qとがほぼ一致する状態で、受信器20が近接すると、複数の通信用光源306を順に発光させる。本第2の実施形態では、番号(i)から番号(viii)まで、通信用光源306を番号順に1つずつ発光させることを行う。なお、通信用光源306は、1つずつではなく複数同時に発光させてもよい。また、送信器10は、受信器20が近接したことを、受信器20によって形成される影による位置検出用受光素子307の受光レベルの変化等で、検知することができる。
【0034】
まず、送信器10は、番号(i)から番号(vi)まで順番に通信用光源306が受信器20に向けて光信号を出射するが、その光信号は受光部42の枠外平面又は通信用受光素子409に当たって乱反射する。よって、送信器10の各位置検出用受光素子307の受光レベルは、いずれも大きく変化しない[状態A]。
【0035】
次に、送信器10は、番号(vii)の通信用光源306が受信器20に向けて光信号を出射する。この光信号は、導光部408の外側へ入射され、導光部408の内側から送信器10の方向へ出射される。よって、送信器10では、光信号を出射した通信用光源306に対応付けられた位置検出用受光素子307の受光レベルが、大きく変化する[状態B]。
【0036】
さらに、送信器10は、番号(viii)の通信用光源306が受信器20に向けて光信号を出射するが、その光信号は受光部42の枠外平面又は通信用受光素子409に当たって乱反射する。よって、送信器10の各位置検出用受光素子307の受光レベルは、いずれも大きく変化しない[状態A]。
【0037】
このように、光信号を出射した通信用光源306に対応する位置検出用受光素子307の受光レベルの変化[状態B]を検知することで、受信器20側の導光部408の位置、すなわち受光部42の回転角度を特定することができる。図3の例では、受光部42の番号(i)の通信用受光素子409が、発光部32の番号(vii)の通信用光源306に対応する位置にあることを特定できる。
【0038】
そして、受信器20の受光部42における導光部408及び通信用受光素子409の配置構成を、送信器10側で予め把握しておくことによって、上記受光部42の回転角度が特定がされた後に、該当する通信用光源306と通信用受光素子409との間で通信を行うことができる。図3の例では、送信器10は番号(i)、番号(iii)、番号(v)、及び番号(vii)の通信用光源306を用いて、通信を行う。
【0039】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る空間多重通信装置によれば、送信器10及び受信器20の光源及び素子の配置を同心円で配置すると共に、受信器20に形成される導光部408を用いて送信器10から出射される光信号を送信器10へ戻す。これにより、受信器20に位置合わせ用の光源を設けることなく、送信器10と受信器20との位置合わせ、特に回転角度の位置合わせを精度良く行うことが可能となる。また、受信器20に能動素子である光源を設けないため、受信器20の消費電力を削減できると共に、携帯端末等の電池駆動を想定した場合には使用可能時間を延ばすことができる。
【0040】
なお、上述した発光部32及び受光部42の構成は一例であって、図3に示したものに限られない。受光部42の通信用受光素子409の内角θBは、発光部32の通信用光源306の内角θAの整数倍であればよく、等間隔である必要もない。また、半径rA<半径rBであっても構わない。さらに、受光部42の導光部408は、いずれかの通信用受光素子409との内角が発光部32の通信用光源306の内角θAの整数倍であればよく、いずれかの通信用受光素子409と重ねる必要はない。
【0041】
また、通信用光源306の配置は、単一の円周上に限定されるものではなく、例えば図4のように、同心円状(複数の円周上)に並べても良い。もちろん、通信用受光素子409や位置検出用受光素子307についても同様である。
【0042】
また、光信号50同士の干渉を防ぐため、例えば通信用光源306毎に異なる波長、偏光、又は変調周波数等を用いてもよい。同様に、位置検出用受光素子307及び通信用受光素子409においても、波長フィルタ、偏光フィルタ、又は周波数フィルタ等を使用して、特定の光信号50を抽出する機構を設けてもよい。
【0043】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る空間多重通信装置に用いられる発光部33(図5(a))及び受光部43(図5(b))の構成を説明する図である。
【0044】
図5に示すように、第3の実施形態の発光部33は、上記第2の実施形態の発光部32が有する複数の位置検出用受光素子307を、中心点Pの位置に1つだけ設けたことが異なる。これに対応して、第3の実施形態の受光部43は、導光部408が中心点Qから半径rAの長さの導光路を有していることが、上記第2の実施形態の受光部42と異なる。
【0045】
この発光部33及び受光部43が実現する送信器10による受信器20の位置特定も、原理は基本的に同じである。すなわち、どの通信用光源306が光信号を出射した時に位置検出用受光素子307の受光レベルが変化したかを判断することで、受信器20側の導光部408の位置、すなわち受光部43の回転角度を特定することができる。
【0046】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態に係る空間多重通信装置に用いられる発光部34(図6(a))及び受光部44(図6(b))の構成を説明する図である。
【0047】
図6に示すように、第4の実施形態の発光部34は、上記第2の実施形態の発光部32が有する複数の通信用光源306の周囲に導光板312をそれぞれ設けたことが異なる。同様に、第4の実施形態の受光部44は、複数の通信用受光素子409の周囲に導光板412をそれぞれ設けたことが異なる。
【0048】
この導光板312及び412により発光範囲及び受光範囲が広がるため、中心点Pと中心点Qとの位置精度が良くない場合や、送信器10と受信器20との角度が、通信用光源306の配置間隔(角度)に丁度合わない場合に効果を発揮できる。
【0049】
なお、図7に示すように、上記第3の実施形態の発光部33における複数の通信用光源306及び位置検出用受光素子307、及び受光部43における複数の通信用受光素子409の周囲に導光板312及び412をそれぞれ設けてもよい。
【0050】
(第5の実施形態)
図8は、本発明の第5の実施形態に係る空間多重通信装置に用いられる発光部35(図8(a))及び受光部45(図8(b))の構成を説明する図である。
【0051】
図8に示すように、第5の実施形態の発光部35は、上記第2の実施形態の発光部32に、位置特定専用の標識光源311をさらに加えたことが異なる。これに対応して、第5の実施形態の受光部45は、導光部408が中心点Qから半径rBの長さの導光路を有していることが、上記第2の実施形態の受光部42と異なる。
【0052】
この標識光源311を備えることで、送信器10は、複数の通信用光源306を順番に発光させて位置検出を行う必要がなくなり、通信開始までの時間を短縮することが可能となる。なお、標識光源311は、位置検出の時だけ使用する以外にも、実通信時に情報データの伝送や通信用のクロック信号の伝送等に用いても構わない。また、この伝送に応じて、受光部45の中心点Qの位置に標識光源から出射される光信号を受光するための標識光源用受光素子を設けてもよい。さらに、標識光源311は、通信状態を色や点滅で表示(通信成功は緑、通信失敗は赤、待機中はアンバー等)しても良い。また、受光部45の中心点Qにソーラーパネル等の光発電装置を設けて標識光源311からの光信号で発電し、周辺装置に供給することも可能である。
【0053】
なお、上記第2〜第5の実施形態では、送信器10の中心点Pと受信器20の中心点Qとの大凡の位置が合っていることを前提に、受光部42〜45の回転角度を特定する技術を説明した。しかしながら、導光部408の導光路が双方向に光信号を伝搬するため、中心点Pと中心点Qとがずれていても通信用光源306から出射された光信号が位置検出用受光素子307に戻ってくる場合がある。従って、この場合の対策としては、導光部408の導光路を一方向だけ光信号を伝搬するように設計すればよい。
【0054】
また、利用者の利便性を考慮すれば、図9に示すような構造を受信器20側に設けることも考えられる。利用者が送信器10に受信器20を近接させる場合、図9(a)に示すように、中心点Qは受信器20の裏面(利用者から見えない側)に位置することになる。従って、受信器20の表面(利用者から見える面)に、中心点Qに対応した位置を示すマーク(○や×)や光源等を配置してもよい。又は、図9(b)のように、裏面から表面に光を透過する透過部410を受信器20の中心点Qに配置すれば、受信器20の表面側から送信器10の中心点Pの位置を見極めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る空間多重通信装置は、非接触通信の分野等で利用可能であり、特に送信器と受信器との位置合わせを精度良く行いたい場合等に適している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の空間多重通信装置の基本構成を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態の発光部31及び受光部41の構成を示す図
【図3】本発明の第2の実施形態の発光部32及び受光部42の構成を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態の発光部32及び受光部42の他の構成を示す図
【図5】本発明の第3の実施形態の発光部33及び受光部43の構成を示す図
【図6】本発明の第4の実施形態の発光部34及び受光部44の構成を示す図
【図7】本発明の第4の実施形態の発光部34及び受光部44の他の構成を示す図
【図8】本発明の第5の実施形態の発光部35及び受光部45の構成を示す図
【図9】本発明の受信器20の構造例を説明する図
【符号の説明】
【0057】
10 送信器
20 受信器
31〜35 発光部
41〜45 受光部
50 光信号
306 通信用光源
307 位置検出用受光素子
308 枠
311 標識光源
312、412 導光板
408 導光部
409 通信用受光素子
410 透過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信器と受信器との間で光空間通信を行う空間多重通信装置であって、
前記送信器は、
光信号を出射する複数の通信用光源と、
前記複数の通信用光源と所定の位置関係を有して設けられ、前記複数の通信用光源から出射された複数の光信号のいずれか1つに応答して前記受信器から戻ってくる光信号を受光する、少なくとも1つの位置検出用受光素子とを備え、
前記受信器は、
光信号を受光する複数の通信用受光素子と、
前記複数の通信用受光素子と所定の位置関係を有して設けられ、前記複数の通信用光源のいずれか1つから出射された光信号を入力し、入力した光信号を導光して前記送信器の前記少なくとも1つの位置検出用受光素子に向けて出射する導光部とを備え、
前記送信器は、光信号を出射した前記複数の通信用光源のいずれか1つの位置と、光を受光した前記少なくとも1つの位置検出用受光素子の位置との相対関係に基づいて、前記複数の通信用光源と前記複数の通信用受光素子との位置関係を特定することを特徴とする、空間多重通信装置。
【請求項2】
前記複数の通信用光源は、所定半径の円周上に配置されており、
前記複数の通信用受光素子は、前記所定半径の円周上に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の空間多重通信装置。
【請求項3】
前記複数の通信用光源は、前記円周上に等間隔で配置されており、
前記複数の通信用受光素子は、前記円周上に等間隔で配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の空間多重通信装置。
【請求項4】
前記複数の通信用光源は、所定半径が異なる複数の円周上に配置されており、
前記複数の通信用受光素子は、前記所定半径が異なる複数の円周上に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の空間多重通信装置。
【請求項5】
前記複数の通信用光源は、前記複数の円周上に等間隔で配置されており、
前記複数の通信用受光素子は、前記複数の円周上に等間隔で配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の空間多重通信装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの位置検出用受光素子は、前記複数の通信用光源に対応して複数設けられており、前記所定半径と異なる半径の円周上に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の空間多重通信装置。
【請求項7】
前記複数の位置検出用受光素子は、前記円周上に等間隔で配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の空間多重通信装置。
【請求項8】
前記複数の通信用受光素子の隣接する2つの素子と前記円周の中心点とで形成される内角は、前記複数の通信用光源の隣接する2つの光源と前記円周の中心点とで形成される内角の整数倍であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の空間多重通信装置。
【請求項9】
前記複数の通信用光源は、光を所定範囲に拡散して放出するための導光板を備えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の空間多重通信装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの位置検出用受光素子は、所定範囲の光を集光するための導光板を備えることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の空間多重通信装置。
【請求項11】
前記複数の通信用受光素子は、所定範囲の光を集光するための導光板を備えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の空間多重通信装置。
【請求項12】
前記複数の通信用光源は、隣接する2つが互いに異なる偏光状態の光を放射することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の空間多重通信装置。
【請求項13】
前記複数の通信用受光素子は、隣接する2つが互いに異なる偏光状態のみを透過するフィルタをそれぞれ備えることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の空間多重通信装置。
【請求項14】
前記複数の位置検出用受光素子は、隣接する2つが互いに異なる偏光状態のみを透過するフィルタをそれぞれ備えることを特徴とする、請求項6〜13のいずれかに記載の空間多重通信装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの位置検出用受光素子は、前記複数の通信用光源に対応して1つ設けられており、前記円周の中心に配置されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の空間多重通信装置。
【請求項16】
送信器と受信器との間で光空間通信を行う空間多重通信装置であって、
前記送信器は、
所定半径の円周上に配置され、光信号を出射する複数の通信用光源と、
前記所定半径の円の中心に配置され、位置特定用の光信号を出射する標識光源と、
前記複数の通信用光源と所定の位置関係を有して前記所定半径と異なる半径の円周上に配置され、前記標識光源から出射された光信号に応答して前記受信器から戻ってくる光信号を受光する、複数の位置検出用受光素子とを備え、
前記受信器は、
光信号を受光する複数の通信用受光素子と、
前記複数の通信用受光素子と所定の位置関係を有して設けられ、前記標識光源から出射された光信号を入力し、入力した光信号を導光して前記送信器の前記複数の位置検出用受光素子に向けて出射する導光部とを備え、
前記送信器は、光を受光した前記複数の位置検出用受光素子の位置に基づいて、前記複数の通信用光源と前記複数の通信用受光素子との位置関係を特定することを特徴とする、空間多重通信装置。
【請求項17】
前記標識光源は、さらに、前記受信器に情報データを送信することを特徴とする、請求項16に記載の空間多重通信装置。
【請求項18】
前記標識光源は、さらに、前記受信器との通信を行うための同期信号を送信することを特徴とする、請求項16に記載の空間多重通信装置。
【請求項19】
前記標識光源は、さらに、前記受信器との通信状態を光の発光色や点灯パターンで示すことを特徴とする、請求項16に記載の空間多重通信装置。
【請求項20】
前記受信器は、さらに、前記標識光源から出射される光信号を受光するための標識光源用受光素子を設けることを特徴とする、請求項16に記載の空間多重通信装置。
【請求項21】
前記受信器は、さらに、前記標識光源から出射される光信号を用いて発電を行うことを特徴とする、請求項16に記載の空間多重通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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