説明

突起付き基材の製造方法、及び突起付き基材の製造装置

【課題】基材の表面上に複数の突起が点在した状態で設けられたフロアマット等の突起付き基材を、効率的に生産する。
【解決手段】基材4を用意する工程と、基準面35と基準面35から突出し且つ突起6の外形に対応する形状の内空部38を囲む環状突部42を備えた複数の突起成形型部36とを有する金型28を用意する工程と、基材4上に熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料16を配置する工程と、基材4上に配置された成形材料16に金型28を押し当て、少なくとも環状突部42で成形材料16を加圧することにより環状突部42で加圧された成形材料16を基材4に接着するとともに環状突部42に囲まれた内空部38内に対向する成形材料16から突起6を成形する工程と、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17を基材4上に残して、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18を剥ぎ取る工程を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面上に複数の突起を点在させた状態で設ける突起付き基材の製造方法及び製造装置に関し、例えば、フロアマットの製造方法及び製造装置に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から一般的に知られている自動車用フロアマットとして、図13に示すように、繊維材料からなるマット基材82の裏面全体に樹脂シート84が接着されると共に、樹脂シート84の裏面に滑り防止用突起86が突設されたものがある。このように滑り防止用突起86を備えたフロアマット80は、位置ずれが生じにくく、安全運転に支障を来さないようになっている。
【0003】
図13に示すフロアマット80の製造時においてマット基材82の裏面に樹脂シート84を接着する際、押し出し機によってシート状に形成されるとともに加熱により軟化した熱可塑性樹脂とマット基材82とが、滑り防止用突起86の外形に対応する形状の凹部を円筒面に備えた円筒金型ローラと円筒支持ローラとによって挟圧されることで、マット基材82と樹脂シート84との加圧接着と滑り防止用突起86の成形が同時に行われる。なお、このように、マット基材と樹脂シートとを一対の円筒ローラで挟圧して加圧接着すると共に、マット基材と樹脂シートとの加圧接着と同時に滑り防止用突起の成形を行う構成は、特許文献1にも記載されている。
【特許文献1】特開2005−313387号公報
【0004】
しかし、上記の製造方法で製造されたフロアマット80は、図13に示すように、マット基材82の裏面全体が樹脂シート84で覆われているため、フロアマット80の表面から入射してきた音を樹脂シート84で反射してしまい、フロアマット80の下側に配置される車輌フロア材の吸音性能を阻害することとなり、車内の騒音を十分に低減することができない欠点を有していた。
【0005】
これに対して、車内騒音の反射を防止できるフロアマットとして、図14に示すように、樹脂シートに代えて吸音材94をマット基材92裏面に貼り合わされたものが知られている。しかし、このフロアマット90は、裏面側に滑り防止用突起を備えていないため、位置ずれが生じやすく、安全運転に支障を来す恐れがある。
【0006】
上記のような問題に鑑みて、マット表面から入射した車内騒音の反射を防止できる構造でありながら、裏面側に滑り防止用突起を備えたフロアマットの開発が望まれている。そのようなフロアマットの具体的な構成としては、マット基材の裏面上に、複数の滑り防止用突起を点在させた状態で設けることが考えられる。そうすることにより、マット表面から入射した騒音を滑り防止用突起間の空間において通過させることで、騒音の反射を防止しつつ、フロアマットの位置ずれを防止できるためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように、マット基材の裏面上に複数の滑り防止用突起を点在させた状態で設けるためには、マット基材の裏面全体に樹脂シートを接着させていた従来の製造技術を用いることができない。従って、基材の表面上に複数の突起を点在した状態で設けるための生産性に優れた製造技術を、新たに開発することが求められる。また、当該製造技術は、フロアマット以外の製品を製造する場合にも応用できる可能性を有している。
【0008】
そこで、本発明は、基材の表面上に複数の突起が点在した状態で設けられたフロアマット等の突起付き基材を、効率的に生産することができる突起付き基材の製造方法及び突起付き基材の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る突起付き基材の製造方法は、第1の表面と第2の表面を備えた基材の上記第1の表面上若しくは第2の表面上又はそれらの両方に複数の突起を点在させた状態で設けるものであって、
上記基材を用意する工程と、
基準面と上記基準面から突出し且つ上記突起の外形に対応する形状の内空部を囲む環状突部を備えた複数の突起成形型部とを有する金型を用意する工程と、
上記基材上に熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料を配置する工程と、
上記基材上に配置された成形材料に上記金型を押し当て、少なくとも上記環状突部で上記成形材料を加圧することにより上記環状突部で加圧された成形材料を上記基材に接着するとともに上記環状突部に囲まれた内空部内に対向する高分子材料から突起を成形する工程と、
上記複数の突起成形型部に対向する成形材料を上記基材上に残して、上記複数の突起成形型部に対向する高分子料以外の成形材料を剥ぎ取る工程を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る突起付き基材の製造方法は、上記基材上に上記成形材料を配置する前に上記成形材料を加熱して軟化させる工程を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係る突起付き基材の製造方法は、上記基材上に上記成形材料を配置した後に上記成形材料を加熱して軟化させる工程を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係る突起付き基材の製造方法は、上記金型で上記成形材料を成形しつつ加熱することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に係る突起付き基材の製造方法は、上記基材が繊維材料からなることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6に係る突起付き基材の製造方法は、上記成形材料が、樹脂又はゴムのいずれかであることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7に係る突起付き基材の製造装置は、基材の表面に複数の突起を点在させた状態で設けるものであって、
上記基材の表面に配置された熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料に、基準面と上記基準面から突出し且つ上記突起の外形に対応する形状の内空部を囲む環状突部を備えた複数の突起成形型部とを有する金型を押し当て、少なくとも上記環状突部で上記成形材料を加圧することにより上記環状突部で加圧された成形材料を上記基材に接着するとともに上記環状突部に囲まれた内空部内に対向する成形材料から突起を成形する手段と、
上記複数の突起成形型部に対向する成形材料を上記基材上に残して、上記複数の突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料を剥ぎ取る手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項8に係る突起付き基材の製造装置は、上記突起を成形する手段が、上記金型に対向して配置され、上記金型と共に上記基材と上記成形材料を挟圧する支持部材を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項9に係る突起付き基材の製造装置は、上記金型が上記基準面となる円筒面を備えた円筒ローラからなることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項10に係る突起付き基材の製造装置は、上記支持部材が円筒ローラからなることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項11に係る突起付き基材の製造装置は、上記剥ぎ取る手段が、上記複数の突起成形型部に対向する成形材料が接着された上記基材を第1の方向に向けて引っ張る第1の手段と、上記複数の突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料を上記第1の方向と異なる第2の方向に向けて引っ張る第2の手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項12に係る突起付き基材の製造装置は、基材の第1の表面と第2の表面に複数の第1の突起と第2の突起をそれぞれ点在させた状態で設けるものであって、
上記基材の第1の表面に配置された熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料に、第1の基準面と上記第1の基準面から突出し且つ上記第1の突起の外形に対応する形状の第1の内空部を囲む第1の環状突部を備えた複数の第1の突起成形型部とを有する第1の金型を押し当て、少なくとも上記第1の環状突部で上記成形材料を加圧することにより上記第1の環状突部で加圧された成形材料を上記基材の第1の表面に接着するとともに上記第1の環状突部に囲まれた第1の内空部内に対向する成形材料から第1の突起を成形する第1の成形手段と、
上記基材の第2の表面に配置されたシート状の成形材料に、第2の基準面と上記第2の基準面から突出し且つ上記第2の突起の外形に対応する形状の第2の内空部を囲む第2の環状突部を備えた複数の第2の突起成形型部とを有する第2の金型を押し当て、少なくとも上記第2の環状突部で上記成形材料を加圧することにより上記第2の環状突部で加圧された成形材料を上記基材の第2の表面に接着するとともに上記第2の環状突部に囲まれた第2の内空部内に対向する成形材料から第2の突起を成形する第2の成形手段と、
上記複数の第1の突起成形型部に対向する成形材料を上記基材の第1の表面上に残して、上記第1の突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料を剥ぎ取る第1の剥ぎ取り手段と、
上記複数の第2の突起成形型部に対向する成形材料を上記基材の第2の表面上に残して、上記第2の突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料を剥ぎ取る第2の剥ぎ取り手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項13に係る突起付き基材の製造装置は、上記第1の金型が上記第1の基準面となる第1の円筒面を備えた第1の円筒ローラからなり、上記第2の金型が上記第2の基準面となる第2の円筒面を備えた第2の円筒ローラからなることを特徴とする。
【0022】
上本発明の請求項14に係る突起付き基材の製造装置は、記第1の成形手段と第2の成形手段との間に、上記基材を表裏反転する反転手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シート状の成形材料を基材上に配置した状態で、金型の基準面から突出した複数の突起成形型部の環状突部で加圧することにより、環状突部で加圧された成形材料が基材に接着されるとともに環状突部で囲まれた内空部内に対向する成形材料から突起が成形された後、突起成形型部に対向する成形材料を基材上に残して、突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料を剥ぎ取ることで、基材の表面上に複数の突起が点在した状態で設けられた突起付き基材を効率的に生産することができる。
【0024】
また、本発明により製造された突起付き基材は、基材の表面上に突起が点在した状態で設けられており、基材の表面が樹脂等で覆われていないため、基材を繊維材料等の通気性素材で構成した場合、音が基材を良好に通過することができる。従って、本発明により、マット基材の裏面上に滑り防止用突起が点在した状態で設けられた自動車用フロアマットを製造した場合、マット基材表面から入射した車内騒音が、マット基材及びその裏面側の滑り防止用突起間の空間を良好に通過するため、フロアマットの下側に配置される車輌フロア材の吸音性能を有効に発揮させることができ、車内の静粛性を高めることができる。
【0025】
さらに、本発明は、基材上に残す成形材料以外の成形材料を、切断することなく剥ぎ取るものであるため、成形材料を切断するための装置及び工程を設ける必要がなく、製造コストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
先ず、図1〜図6に基づいて、本発明の第1の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態では、滑り防止用突起を備えた自動車用のフロアマットの製造について説明するが、本発明は、自動車用フロアマットの製造に限られず、その他の突起付き基材の製造にも適用することができる。ここで言う「突起付き基材」とは、基材の表面上に複数の突起が点在した状態で設けられたものを指す。フロアマット以外で考えられる「突起付き基材」が使用される分野として、例えば、床、天井若しくは壁などの建築関連分野の部材、自動車室内の天井材若しくはエンジンルーム天板の吸音材などの自動車関連分野の部材、道路防音壁若しくは工事用吸音材などの土木関連分野の部材、又はエンジンモーター周りなどの一般工業用音源発生部位用の部材等が挙げられる。
【0027】
図5及び図6に示すフロアマット2は、マット基材4と、マット基材4の裏面に接着された多数の滑り防止用突起6とから構成されている。
【0028】
マット基材4は、通気性を有する素材で構成され、具体的には、繊維材料で構成されている。繊維材料としては、例えば、カーペット、又は、不織布若しくはフェルト等からなる吸音材が用いられる。また、繊維材料として、複数の層で構成されたものを用いても良く、例えばカーペット層と吸音材層とを積層したものを用いても良い。繊維材料の原料としては、少なくとも1種類の天然繊維又は合成繊維が用いられ、繊維の種類は特に限定されるものではない。
【0029】
滑り防止用突起6の素材としては、熱可塑性材料又は熱硬化性材料が用いられ、具体的には、樹脂又はゴムが用いられる。熱可塑性材料としては、熱可塑性エラストマーが好適に用いられ、熱硬化性材料としては、ゴム又はゴム発泡体が好適に用いられる。滑り防止用突起6の原料としては、合成樹脂、天然樹脂、再生樹脂、合成ゴム、天然ゴム又は再生ゴムのいずれを用いても良い。また、滑り防止用突起6は、上記の原料に、老化防止剤、補強剤、充填剤、軟化剤又はその他の薬品を、要求される機能に応じて適宜混合して製造される。
【0030】
滑り防止用突起6は、フロアマット2の裏面側から見て、円形に形成されているが、滑り防止用突起6の形状は円形に限られず、任意に設定することができる。また、滑り防止用突起6は、所定の厚みを有する例えば円盤状の基部8と、基部8の外周を取り囲む外縁部10と、基部8中央に突設された突出部12とを備えている。滑り防止用突起6の外縁部10は、基部8よりも薄肉に形成されている。滑り防止用突起6の突出部12は、先端に向かうに連れて小径となる略円錐状に形成されている。突出部12の高さは、例えば1〜5mmとされている。
【0031】
滑り防止用突起6は、フロアマット2の裏面上に点在した状態で設けられており、具体的には、所定のピッチで格子状に配置されている。滑り防止用突起6のピッチは、例えば5〜20mmとされている。また、各滑り防止用突起6のマット基材4との接着面積は、例えば5〜150mmとされている。
【0032】
このフロアマット2は、マット基材4の裏面上に滑り防止用突起6が点在した状態で設けられているため、マット基材4表面から入射した車内騒音が、マット基材4及びその裏面側の滑り防止用突起6間の空間を良好に通過するため、フロアマット2の下側に配置される車輌フロア材の吸音性能を有効に発揮させることができる。なお、滑り防止用突起6は、マット基材4上に点在した状態で設けるようにすれば良く、必ずしも所定のピッチで格子状に配置する必要はない。
【0033】
図1に示すように、フロアマット2の製造装置は、熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料16をマット基材4に接着するとともに、上記成形材料16のうちの後述する一部の成形材料17から滑り防止用突起6を成形する手段14と、上記一部の成形材料17をマット基材4上に残して、上記一部の成形材料17以外の成形材料18を剥ぎ取る手段15とを有している。
【0034】
上記滑り防止用突起6を成形する手段14は、基準面となる円筒面35と円筒面35から突出した複数の突起成形型部36とを有する金型としての円筒金型ローラ28と、円筒金型ローラ28と共にマット基材4と成形材料16を挟圧する支持部材としての円筒支持ローラ26とを備えている。円筒支持ローラ26は、円筒金型ローラ28に対向して配置されている。
【0035】
図2に示すように、円筒金型ローラ28の表層30は、所定の厚みを有する金型層34で覆われている。一方、表層30の内側には、冷却水用通路32が設けられている。冷却水用通路32には、金型層34を冷却するための冷却水が通されるようになっている。
【0036】
上記複数の突起成形型部36は、円筒金型ローラ28の円筒面、すなわち金型層34の外表面35から径方向外側に向かって突出して設けられている。複数の突起成形型部36は、マット基材4裏面における滑り防止用突起6の配置に対応して、金型層34外表面35において例えば5〜20mmのピッチで格子状に配置されている。
【0037】
突起成形型部36は、滑り防止用突起6の外形に対応する形状の内空部38と、この内空部38を囲む環状突部42とを備えている。内空部38は、滑り防止用突起6の基部8の形状に対応した形状を有しており、所定深さを有する例えば円形の凹部となっている。
【0038】
内空部38の底面には、滑り防止用突起6の突出部12の形状に対応した形状の突出部成形穴40が設けられている。突出部成形穴40の深さは、滑り防止用突起6の突出部12の高さに対応して、例えば1〜5mmに設定されている。突出部成形穴40は、金型層34を貫通して設けられ、金型層34と表層30との間の僅かな隙間に連通している。
【0039】
環状突部42は、滑り防止用突起6の外縁部10の形状に対応した形状を有しており、円筒金型ローラ28の径方向外側から見て、例えば円環状に形成されている。環状突部42先端の外縁に囲まれた領域の面積は、滑り防止用突起6のマット基材4との接着面積に対応して、例えば5〜150mmとなるように設定されている。
【0040】
突起成形型部36の高さHは、成形材料16の厚みと比較して同等又は大きくなるように設定されている。これにより、マット基材4上に配置された状態で円筒金型ローラ28と円筒支持ローラ26との間に挿入された成形材料16が、図3に示すように、突起成形型部36の少なくとも環状突部42で加圧され、金型層34の外表面35では加圧されないようになっている。従って、環状突部42で加圧される成形材料16がマット基材4に接着し、これによって、突起成形型部36に対向する成形材料17がマット基材4に固着され、突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18は、マット基材4に固着されることなく重なった状態となる。
【0041】
ただし、突起成形型部36の高さHは、必ずしも成形材料16の厚みと比較して同等又は大きく設定する必要はなく、突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18がマット基材4に接着しないか又は容易に剥がせる程度の微弱な接着力で接着するような高さであれば、成形材料16の厚みよりも小さく設定しても良いものとする。
【0042】
環状突部42の高さLは、環状突部42に囲まれた内空部38内に対向する成形材料16が内空部38及び突出部成形穴40に充填可能なように、成形材料16の厚みと比較して小さく設定されている。これにより、滑り防止用突起6の基部8及び突出部12の成形不良を防止することができる。
【0043】
上記剥ぎ取る手段15は、図1に示すように、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17が接着されたマット基材4を第1の方向Pに向けて引っ張る第1の手段46と、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18を第1の方向Pと異なる第2の方向Qに向けて引っ張る第2の手段48を備えている。
【0044】
第1の手段46は、互いに対向する一対の円筒ローラ47からなり、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17が接着されたマット基材4を一対の円筒ローラ47間に挟み込んだ状態で、一対の円筒ローラ47を回転させることで、円筒ローラ47間に挟み込まれたマット基材4を第1の方向Pに向けて引っ張りながら搬送するように構成されている。
【0045】
第2の手段48は、互いに対向する一対の円筒ローラ49からなり、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17以外に成形材料18を一対の円筒ローラ49間に挟み込んだ状態で、一対の円筒ローラ49を回転させることで、円筒ローラ49間に挟み込まれた成形材料18を第2の方向Qに向けて引っ張りながら搬送するように構成されている。
【0046】
なお、第1の手段46及び第2の手段48は、必ずしも一対の円筒ローラ47,49から構成する必要はなく、シート状の部材を所定の方向に向けて引っ張ることができるものであれば良い。
【0047】
図1に基づいて、フロアマット2の製造方法について説明する。滑り防止用突起6の材料である成形材料16は、図示しない押し出し機により、厚みが例えば0.5〜3mmとなるようにシート状に形成された後、加熱炉22により加熱されて軟化して、加熱炉用コンベア24により搬送経路下流側へ搬送される。加熱炉用コンベア24から供給された成形材料16は、加熱炉用コンベア24の下流側端部の下方において対向配置された円筒金型ローラ26と円筒支持ローラ28との間に挿入される。
【0048】
一方、マット基材4は、その裏面が外側となるように円筒支持ローラ26外周の一部に巻き付けられて搬送された後、円筒支持ローラ26と円筒金型ローラ28との間に供給される。これにより、成形材料16は、マット基材4の裏面に配置されるとともに、円筒金型ローラ28と円筒支持ローラ26とによって挟み込まれた状態で、円筒金型ローラ28が押し当てられる。
【0049】
このとき、成形材料16は、図3に示すように、突起成形型部36の少なくとも環状突部42で加圧され、これにより、環状突部42で加圧された成形材料16がマット基材4に接着するとともに、環状突部42に囲まれた内空部38内に対向する成形材料16から滑り防止用突起6が成形される。
【0050】
環状突部42で加圧された成形材料16がマット基材4に接着することにより、突起成形型部36に対向する成形材料17がマット基材4に固着される。また、成形材料16は、金型層34の外表面35によっては加圧されず、突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18は、マット基材4に固着されることなく重なった状態となる。
【0051】
ただし、金型層34の外表面35が成形材料16を微弱な力で加圧することを妨げるものではなく、その場合、突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18がマット基材4に接着しないか又は容易に剥がせる程度の微弱な接着力で接着するようにすれば良い。
【0052】
上記のように、突起成形型部36に対向する成形材料17がマット基材4に固着され、突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18はマット基材4に固着されないが、マット基材4に固着された成形材料17と、マット基材4に固着されない成形材料18とは、切断されることなく連続した状態となっている。
【0053】
滑り防止用突起6の成形は、マット基材4に対する成形材料16の接着と同時に行われる。すなわち、成形材料16が環状突部42で加圧される際、環状突部42に囲まれた内空部38内に対向する成形材料16が、内空部38及び突出部成形穴40に充填されることで、滑り防止用突起6の基部8と突出部12が成形される。また、環状突部42に対向する成形材料16が、環状突部42による加圧で圧縮されることで薄肉に形成され、滑り防止用突起6の外縁部10が成形される。
【0054】
このとき、突起成形型部36に対向する成形材料17の外縁部を環状突部42で押さえつけることで、突起成形型部36に対向する成形材料17が周囲へ流れ出るのを防止するとともに、マット基材4に対する成形材料17の接着と滑り防止用突起6の成形を確実に行うことができるようになっている。
【0055】
また、突出部成形穴40が金型層34を貫通して設けられているため、滑り防止用突起6の成形時においてガスが発生しても、ガスが金型層34と表層30との間の僅かな隙間から抜けるため、突出部成形穴40にガスが溜まることを防いで、滑り防止用突起6の成形不良を防止することができる。
【0056】
さらに、成形材料16は、マット基材4上に配置する前に加熱して軟化させるため、成形材料16として熱可塑性材料を用いた場合、マット基材4への接着と滑り防止用突起6の成形を良好に行うことができる。ただし、成形材料16は、マット基材4上に配置した後に加熱して軟化させることを妨げるものではなく、その場合、突起成形型部36で成形材料16を成形しつつ加熱するようにしても良い。
【0057】
上記のように加圧接着されたマット基材4と成形材料16は、円筒金型ローラ28に巻き付けられて、円筒金型ローラ28の回転により搬送経路の下流側へ搬送される。マット基材4と成形材料16が、円筒金型ローラ28に巻き付けられた状態において、成形材料16は、冷却水通路32を冷却水が流れることにより冷却された金型層34により冷却され固化する。このようにして冷却され固化した成形材料16は、円筒金型ローラ28の金型層34から外れやすくなっており、搬送経路下流側へスムーズに搬送される。ただし、このように冷却水を用いて成形材料16を冷却する工程は、必ずしも設けなくても良いものとする。
【0058】
マット基材4及び成形材料16は、重ねられた状態で搬送ローラ43,44によってさらに下流側へ搬送された後、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17が接着されたマット基材4が、第1の手段46によって第1の方向Pに向けて引っ張られ、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18が、第2の手段48によって第2の方向Qに向けて引っ張られる。これにより、図4に示すように、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17がマット基材4上に残され、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18が剥ぎ取られる。
【0059】
このようにして、マット基材4の裏面に複数の滑り防止用突起6が点在した状態で設けられたフロアマット2を得ることができる。また、剥ぎ取られた成形材料18は、何度も再生利用することができ、材料コストを低減できる。
【0060】
第1の実施形態では、円筒金型ローラ28及び円筒支持ローラ26の回転によって、マット基材4と成形材料16とが、搬送経路の上流側から下流側へ搬送されるため、フロアマット2の連続生産が可能となっており、生産コストを低減することができる。
【0061】
なお、マット基材4を複数の層で構成する場合は、マット基材4における一部の層のみを、円筒支持ローラ26と円筒金型ローラ28との間に挿入して、マット基材4における上記一部の層における一方の表面に滑り防止用突起6を接着した後に、マット基材4における残りの層を上記一部の層における他方の表面側に接着等により積層するようにしても良い。例えば、マット基材4がカーペット層と吸音材層とから構成される場合、マット基材4の吸音材層のみを、円筒支持ローラ26と円筒金型ローラ28との間に挿入して、吸音材層の一方の表面に滑り防止用突起6を接着した後に、カーペット層を吸音材層の他方の表面に接着するようにしても良い。
【0062】
図7及び図8は、本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態は、プレス機50を用いたフロアマットの製造方法であり、本実施形態においても、マット基材4とシート状の成形材料16とを加圧接着するとともに、成形材料16から滑り防止用突起6を成形することで、第1の実施形態と同じ構成のフロアマット2を製造することができる。
【0063】
プレス機50は、基準面57と基準面57から突出した複数の突起成形型部36とを有する金型としての上側プレス体52と、上側プレス体52と共にマット基材4と成形材料16を挟圧する支持部材としての下側プレス体54とを備えている。
【0064】
上側プレス体52の下面は、複数の突起成形型部36を備えた金型層56で形成されている。突起成形型部36は、金型層56表面すなわち上側プレス体52下面に、水平方向に所定の間隔を空けて配置されている。下側プレス体54の上面は、プレス機50によってプレスされる部材を載置するための水平な載置面58となっている。
【0065】
プレス機50を用いて上記の加圧接着及び滑り防止用突起6の成形を行う際、マット基材4及び成形材料16を、マット基材4上に成形材料16を重ねて配置した状態で下側プレス体54の載置面58に載置する。その後、プレス機50を閉じて、所定圧力での加圧及び所定温度での加熱を所定時間行うことで、マット基材4と成形材料16との加圧接着、及び滑り防止用突起6の成型が同時に行われる。なお、成形材料16をマット基材4上に配置する前に、成形材料16を予備加熱することを妨げるものではない。
【0066】
プレス機50を閉じた状態では、図8(b)に示すように、マット基材4上に配置された成形材料16に上側プレス体52が押し当てられ、突起成形型部36の少なくとも環状突部42で成形材料16が加圧され、これにより、加圧された成形材料16がマット基材4に接着するとともに、環状突部42で囲まれた内空部38内に対向する成形材料16から滑り防止用突起6が成形される。
【0067】
環状突部42で加圧された成形材料16がマット基材4に接着することにより、突起成形型部36に対向する成形材料17がマット基材4に固着される。他方、突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18は、マット基材4に固着されることなく重なった状態となる。このとき、マット基材4に固着された成形材料17と、マット基材4に固着されていない成形材料18とは、切断されることなく連続した状態となっている。
【0068】
また、成形材料16が環状突部42で加圧される際、環状突部42に囲まれた内空部38内に対向する成形材料16が、内空部38及び突出部成形穴40に充填されることで、滑り防止用突起6の基部8と突出部12が成形される。また、環状突部42に対向する成形材料16が、環状突部42による加圧で圧縮されることで薄肉に形成され、滑り防止用突起6の外縁部10が成形される。
【0069】
その後、マット基材4と成形材料16とをプレス機50から取り出して、複数の突起成形型部36に対向する成形材料17以外の成形材料18を剥ぎ取ることで、第1の実施形態と同様、マット基材4の裏面に複数の滑り防止用突起6が点在した状態で設けられたフロアマット2を得ることができる。
【0070】
なお、第2の実施形態において、その他の構成及び効果は第1の実施形態と同様であり、図7及び図8において、第1の実施形態と同様の機能を有する部材については同符号を付してある。また、第2の実施形態では、自動車用フロアマットの製造方法について説明したが、その他の突起付き基材の製造にも適用することができる。
【0071】
図9は、本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態に係る突起付き基材の製造方法及び突起付き基材の製造装置は、基材64の第1の表面と第2の表面に、複数の第1の突起6aと第2の突起6bをそれぞれ点在させた状態で設けるものである。
【0072】
本実施形態に係る突起付き基材の製造装置は、熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料16aを基材64の第1の表面に接着するとともに、上記成形材料16aのうちの後述する一部の成形材料17aから第1の突起6aを成形する第1の成形手段14aと、熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料16bを基材64の第2の表面に接着するとともに、上記成形材料16bのうちの後述する一部の成形材料17bから第2の突起6bを成形する第2の成形手段14bを備えている。
【0073】
第1の成形手段14aは、第1の基準面となる第1の円筒面35aと第1の円筒面35aから突出した複数の第1の突起成形型部36aとを有する第1の金型としての第1の円筒金型ローラ28aと、第1の円筒金型ローラ28aと共に基材64と成形材料16aを挟圧する第1の支持部材としての第1の円筒支持ローラ26aとを備えている。第1の円筒支持ローラ26aは、第1の円筒金型ローラ28aに対向して配置されている。
【0074】
第2の成形手段14bは、第2の基準面となる第2の円筒面35bと第2の円筒面35bから突出した複数の第2の突起成形型部36bとを有する第2の金型としての第2の円筒金型ローラ28bと、第2の円筒金型ローラ28bと共に基材64と成形材料16bを挟圧する第2の支持部材としての第2の円筒支持ローラ26bとを備えている。第2の円筒支持ローラ26bは、第2の円筒金型ローラ28bに対向して配置されている。
【0075】
第1の円筒金型ローラ28a及び第2の円筒金型ローラ28bは、第1の実施形態に係る円筒金型ローラ28と同様の構成であり、第1の実施形態に係る突起成形型部36と同様の構成からなる第1の突起成形型部36aと第2の突起成形型部36bをそれぞれ備えている。ただし、第1の突起成形型部36aと第2の突起成形型部36bは、形状、大きさ及び高さが相違していても良く、第1の突起成形型部36aの形状等と第2の突起成形型部36bの形状等を異ならせることで、第1の突起6aの形状、大きさ及び高さと、第2の突起6bの形状、大きさ及び高さとを異ならせるようにしても良い。
【0076】
第1の突起成形型部36aは、第1の実施形態に係る突起成形型部36と同様の構成であるため図示を省略するが、第1の突起6aの外形に対応する形状の第1の内空部と、第1の内空部を囲む第1の環状突部を備えている。同様に、第2の突起成形型部36bは、第2の突起6bの外形に対応する形状の第2の内空部と、第2の内空部を囲む第2の環状突部を備えている。
【0077】
第1の内空部及び第2の内空部は、第1の実施形態に係る内空部38と同様の構成からなり、第1の環状突部及び第2の環状突部は、第1の実施形態に係る環状突部42と同様の構成からなる。
【0078】
第2の成形手段14bは、第1の成形手段14aの搬送経路下流側に設けられ、第1の成形手段14aと第2の成形手段14bとの間に、基材64を表裏反転させる反転手段60が設けられている。反転手段60は、一対の搬送ローラ61,62からなる。一対の搬送ローラ61,62は、搬送経路上流側の搬送ローラ61と下流側の搬送ローラ62との間において基材4を表裏反転させながら、基材64を搬送するように構成されている。
【0079】
また、本実施形態に係る突起付き基材の製造装置は、上記一部の成形材料17aを基材64の第1の表面上に残して、上記一部の成形材料17a以外の成形材料18aを剥ぎ取る第1の剥ぎ取り手段15aと、上記一部の成形材料17bを基材64の第2の表面上に残して、上記一部の成形材料17b以外の成形材料18bを剥ぎ取る第2の剥ぎ取り手段15bを備えている。
【0080】
第1の剥ぎ取り手段15a及び第2の剥ぎ取り手段15bは、第2の成形手段14bの搬送経路下流側に設けられている。また、第1の剥ぎ取り手段15aは、第2の剥ぎ取り手段15bよりも例えば下流側に設けられている。ただし、第1の剥ぎ取り手段15aは、第2の剥ぎ取り手段15bよりも上流側に設けるようにしても良い。また、第1の剥ぎ取り手段15aは、第1の成形手段14aと第2の成形手段14bとの間に設けるようにしても良い。
【0081】
第1の剥ぎ取り手段15a及び第2の剥ぎ取り手段15bは、第1の実施形態に係る上記剥ぎ取る手段15と同様の構成からなり、それぞれ第1の手段46a,46bと第2の手段48a,48bとを備えている。
【0082】
また、本実施形態に係る突起付き基材の製造装置は、基材64の第1の表面に配置される成形材料16aを加熱して供給するための第1の加熱炉22a及び第1の加熱炉用コンベア24aと、基材64の第2の表面に配置される成形材料16bを加熱して供給するための第2の加熱炉22b及び第2の加熱炉用コンベア24bを備えている。
【0083】
以下、本実施形態に係る突起付き基材の製造方法について説明する。基材64は、その第1の表面が外側となるように第1の円筒支持ローラ26a外周の一部に巻きつけられて搬送された後、第1の円筒金型ローラ28aと第1の円筒支持ローラ26aとの間に供給される。
【0084】
他方、第1の突起6aの材料であるシート状の成形材料16aは、第1の加熱炉22aにより加熱されて軟化した状態で、加熱炉用コンベア24aから搬送経路下流側へ搬送され、第1の円筒金型ローラ28aと第1の円筒支持ローラ26aとの間に供給される。これにより、成形材料16aは、基材64の第1の表面に配置されるとともに、第1の円筒金型ローラ28aと第1の円筒支持ローラ26aとによって挟み込まれた状態で、第1の円筒金型ローラ28aが押し当てられる。
【0085】
このとき、第1の実施形態と同様に、成形材料16aが少なくとも第1の環状突部で加圧され、加圧された成形材料16aが基材64の第1の表面に接着するとともに、第1の環状突部に囲まれた内空部内に対向する成形材料16aから第1の突起6aが成形される。
【0086】
基材64及び成形材料16aは、基材64が外側となるように重ねられた状態で、円筒金型ローラ28aの外周の一部に巻きつけられて搬送された後、反転手段60へ供給される。
【0087】
基材64及び成形材料16aは、基材64が内側となるように重ねられた状態で、反転手段60の上流側の搬送ローラ61外周の一部に巻きつけられて搬送された後、基材64が表裏反転するように捻りが加えられ、反転手段60の下流側の搬送ローラ62へ供給される。基材64及び成形材料16aは、基材64が内側となるように重ねられた状態で、反転手段60の下流側の搬送ローラ62外周の一部に巻きつけられて搬送された後、第2の成形手段14bに供給される。第2の成形手段14bに供給された基材64及び成形材料16aは、基材64が外側となるように重ねられた状態で、第2の円筒支持ローラ26b外周に巻きつけられて搬送された後、第2の円筒金型ローラ28bと第1の円筒支持ローラ26bとの間に供給される。
【0088】
第2の突起6bの材料であるシート状の成形材料16bは、第2の加熱炉22bにより加熱されて軟化した状態で、加熱炉用コンベア24bから搬送経路下流側へ搬送され、第2の円筒金型ローラ28bと第1の円筒支持ローラ26bとの間に供給される。これにより、成形材料16bは、基材64の第2の表面に配置されるとともに、第2の円筒金型ローラ28bと第2の円筒支持ローラ26bとによって挟み込まれた状態で、第2の円筒金型ローラ28bが押し当てられる。
【0089】
このとき、第1の実施形態と同様に、成形材料16bが少なくとも第2の環状突部で加圧され、加圧された成形材料16bが基材64の第2の表面に接着するとともに、第2の環状突部に囲まれた内空部内に対向する成形材料16bから第2の突起6bが成形される。
【0090】
その後、基材64と基材64の第1の表面及び第2の表面に接着した成形材料16a,16bとは、さらに搬送経路の下流側へ搬送され、第2の剥ぎ取り手段15bへ供給される。
【0091】
基材64と成形材料16a,16bが第2の剥ぎ取り手段15bに供給されると、基材64と、基材64の第1の表面に重なる成形材料16aとが、第1の手段46bによって第1の方向Pに向けて引っ張られ、基材64の第2の表面側において複数の第2の突起成形型部36bに対向する成形材料17b以外の成形材料18bが、第2の手段48bによって第2の方向Qに向けて引っ張られる。これにより、基材64の第2の表面側において、複数の第2の突起成形型部36bに対向する成形材料17bが基材64の第2の表面上に残され、複数の第2の突起成形型部36bに対向する成形材料17b以外の成形材料18bが剥ぎ取られる。
【0092】
基材64と基材64の第1の表面に重なる成形材料16aとは、第2の剥ぎ取り手段15bにおける第1の手段46bによって搬送経路下流側へ搬送され、第1の剥ぎ取り手段15aへ供給される。基材64は、第1の剥ぎ取り手段15aにおける第1の手段46aによって第1の方向Pに向けて引っ張られ、基材64の第1の表面側において複数の第1の突起成形型部36aに対向する成形材料17a以外の成形材料18aが、第2の手段48aによって第2の方向Qに向けて引っ張られる。これにより、基材64の第1の表面側において、複数の第1の突起成形型部36aに対向する成形材料17aが基材64の第1の表面上に残され、複数の第1の突起成形型部36aに対向する成形材料17a以外の成形材料18aが剥ぎ取られる。
【0093】
なお、第3の実施形態において、その他の構成及び効果は第1の実施形態と同様であり、図9において、第1の実施形態と同様の機能を有する部材については同符号を付してある。また、第3の実施形態では、第1の金型及び第2の金型をそれぞれ円筒ローラにより構成する場合について説明したが、第1の金型及び第2の金型は、第2の実施形態において説明した上側プレス体又は下側プレス体により構成しても良い。
【0094】
例えば、第1の金型を上側プレス体で構成し、第2の金型を下側プレス体で構成した場合、上側プレス体の下面に複数の第1の突起成形型部36aを設け、下側プレス体の上面に複数の第2の突起成形型部36bを設けて、基材64の上面である第1の表面上に成形材料16aを配置するとともに、基材64の下面である第2の表面の下側に成形材料16bを配置した状態で、プレス機を閉じることで、基材64の第1の表面と第2の表面に複数の第1の突起6aと第2の突起6bをそれぞれ点在させた状態で設けることができる。なお、この場合、第1の突起成形型部36aと第2の突起成形型部36bとは、プレス機を閉じた際において互いに干渉しないように水平方向にずらして配置する必要がある。
【実施例】
【0095】
第1の実施形態の製造方法で製造したフロアマットについて、吸音性能及び滑り防止性能を確認するため、実施例1、比較例1及び比較例2のそれぞれのサンプルを作製して、以下の試験を行った。
【0096】
実施例1のサンプルとしては、マット基材がカーペット層と不織布層とからなり、不織布層に複数の滑り防止用突起が接着されたものを用いた。また、実施例1のサンプルは、上記第1の実施形態に係る製造方法により、シート状の成形材料(厚み1.2mm、比重1.4g/cm)と、不織布(厚み2mm、目付200g/m)とを加圧接着すると共に、その加圧接着と同時に滑り防止用突起の成形を行った後、不織布における滑り防止用突起との接着面とは反対側の面にカーペット(目付800g/m、パイル長8mm)を接着して作製した。
【0097】
比較例1のサンプルは、図13に示す従来品を適当な大きさに裁断して作製し、比較例2のサンプルは、図14に示す従来品を適当な大きさに裁断して作製した。
【0098】
(吸音性能評価試験)
図10は、実施例1、比較例1及び比較例2のサンプルを、サンプル単体で測定した垂直入射法吸音率を示すグラフである。一方、図11は、実施例1、比較例1及び比較例2のサンプルを、車輌フロア材の上に設置した状態で測定した垂直入射法吸音率を示すグラフである。音の入射方向は、サンプルのカーペット層表面から音が入射するように設定し、測定はJISA1405に準じて行った。
【0099】
図10に示すように、サンプル単体の測定では、実施例1、比較例1及び比較例2のサンプルの吸音率に大きな差は見られなかった。しかし、図11に示すように、サンプルを車輌フロア材の上に設置した状態での測定では、実施例1及び比較例2のサンプルの吸音率が、比較例1のサンプルと比較して著しく高いことが確認できた。
【0100】
すなわち、比較例1のサンプルが、マット基材の裏面全体が樹脂シートで覆われていることにより、マット表面から入射した音を樹脂シートで反射してしまい、車輌フロア材の吸音性能を有効に発揮させることができないのに対して、実施例1及び比較例2のサンプルでは、比較例1のような樹脂シートによる音の反射が生じず、音がサンプルを通り抜けて車輌フロア材に達するため、車輌フロア材の吸音性能を有効に発揮させることができることを確認できた。
【0101】
(滑り防止性能評価試験)
図12は、実施例1、比較例1及び比較例2のサンプルの滑り抵抗値を示すグラフである。滑り防止性能評価試験では、実施例1、比較例1及び比較例2のサンプルごとに、100×140mmの大きさに裁断した試験片を作製した。そして、それぞれの試験片を車輌フロア材の上に設置し、試験片に1kgf(9.8N)の荷重をかけた状態で、100mm/分の速度で車輌フロア材表面と平行な方向へ引っ張って、滑り抵抗値(N)を測定した。
【0102】
図12に示すように、比較例2のサンプルの滑り抵抗値が最も低く、滑り防止用突起を備えた実施例1及び比較例1のサンプルは、ほぼ同等で且つ高い滑り抵抗値を示すことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】第1の実施形態に係るフロアマットの製造装置を示す図である。
【図2】円筒金型ローラの突起成形型部を示す拡大断面図である。
【図3】マット基材に成形材料を加圧接着する部分を示す断面図である。
【図4】突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料をマット基材から剥ぎ取る状態を示す斜視図である。
【図5】フロアマットを示す斜視図である。
【図6】フロアマットを示す断面図である。
【図7】第2の実施形態に係るフロアマットの製造方法に用いるプレス機を示す断面図である。
【図8】図7に示すプレス機を用いてマット基材に成形材料を加圧接着する状態を示す拡大断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る突起付き基材の製造装置を示す図である。
【図10】吸音性能評価試験において、サンプル単体で測定した垂直入射吸音率を示すグラフである。
【図11】吸音性能評価試験において、サンプルを車輌フロア材の上に設置した状態で測定した垂直入射吸音率を示すグラフである。
【図12】滑り防止性能評価試験において、サンプルの試験片を車輌フロア材の上に設置した状態で測定した滑り抵抗値を示すグラフである。
【図13】マット基材の裏面全体が樹脂シートで覆われた従来のフロアマットを示す断面図である。
【図14】マット基材の裏面に吸音材が貼り付けられた従来のフロアマットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0104】
2 フロアマット(突起付き基材)、
4 マット基材(基材)、
6 滑り防止用突起(突起)、
6a 第1の突起、
6b 第2の突起、
14,14a,14b 突起を成形する手段、
15,15a,15b 剥ぎ取る手段、
16,16a,16b 成形材料、
17,17a,17b 突起成形型部に対向する成形材料、
18,18a,18b 突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料、
26,26a,26b 円筒支持ローラ(支持部材)、
28,28a,28b 円筒金型ローラ(金型)、
35,35a,35b 円筒金型ローラの円筒面(基準面)、
36,36a,36b 突起成形型部、
38 内空部、
42 環状突部、
46,46a,46b 第1の手段、
48,48a,48b 第2の手段、
52 上側プレス体(金型)、
54 下側プレス体(支持部材)、
57 上側プレス体の下面(基準面)、
60 反転手段、
64 基材、
P,P,P 第1の方向、
Q,Q,Q 第2の方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面を備えた基材の上記第1の表面上若しくは第2の表面上又はそれらの両方に複数の突起を点在させた状態で設ける突起付き基材の製造方法であって、
上記基材を用意する工程と、
基準面と上記基準面から突出し且つ上記突起の外形に対応する形状の内空部を囲む環状突部を備えた複数の突起成形型部とを有する金型を用意する工程と、
上記基材上に熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料を配置する工程と、
上記基材上に配置された成形材料に上記金型を押し当て、少なくとも上記環状突部で上記成形材料を加圧することにより上記環状突部で加圧された成形材料を上記基材に接着するとともに上記環状突部に囲まれた内空部内に対向する成形材料から突起を成形する工程と、
上記複数の突起成形型部に対向する成形材料を上記基材上に残して、上記複数の突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料を剥ぎ取る工程を備えたことを特徴とする突起付き基材の製造方法。
【請求項2】
上記基材上に上記成形材料を配置する前に上記成形材料を加熱して軟化させる工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の突起付き基材の製造方法。
【請求項3】
上記基材上に上記成形材料を配置した後に上記成形材料を加熱して軟化させる工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の突起付き基材の製造方法。
【請求項4】
上記金型で上記成形材料を成形しつつ加熱することを特徴とする請求項3に記載の突起付き基材の製造方法。
【請求項5】
上記基材が繊維材料からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の突起付き基材の製造方法。
【請求項6】
上記成形材料が、樹脂又はゴムのいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の突起付き基材の製造方法。
【請求項7】
基材の表面に複数の突起を点在させた状態で設ける突起付き基材の製造装置であって、
上記基材の表面に配置された熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料に、基準面と上記基準面から突出し且つ上記突起の外形に対応する形状の内空部を囲む環状突部を備えた複数の突起成形型部とを有する金型を押し当て、少なくとも上記環状突部で上記成形材料を加圧することにより上記環状突部で加圧された成形材料を上記基材に接着するとともに上記環状突部に囲まれた内空部内に対向する成形材料から突起を成形する手段と、
上記複数の突起成形型部に対向する成形材料を上記基材上に残して、上記複数の突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料を剥ぎ取る手段を備えたことを特徴とする突起付き基材の製造装置。
【請求項8】
上記突起を成形する手段が、上記金型に対向して配置され、上記金型と共に上記基材と上記成形材料を挟圧する支持部材を有することを特徴とする請求項7に記載の突起付き基材の製造装置。
【請求項9】
上記金型が上記基準面となる円筒面を備えた円筒ローラからなることを特徴とする請求項7又は8のいずれかに記載の突起付き基材の製造装置。
【請求項10】
上記支持部材が円筒ローラからなることを特徴とする請求項8又は9のいずれかに記載の突起付き基材の製造装置。
【請求項11】
上記剥ぎ取る手段が、上記複数の突起成形型部に対向する成形材料が接着された上記基材を第1の方向に向けて引っ張る第1の手段と、上記複数の突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料を上記第1の方向と異なる第2の方向に向けて引っ張る第2の手段を備えたことを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の突起付き基材の製造装置。
【請求項12】
基材の第1の表面と第2の表面に複数の第1の突起と第2の突起をそれぞれ点在させた状態で設ける突起付き基材の製造装置であって、
上記基材の第1の表面に配置された熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料に、第1の基準面と上記第1の基準面から突出し且つ上記第1の突起の外形に対応する形状の第1の内空部を囲む第1の環状突部を備えた複数の第1の突起成形型部とを有する第1の金型を押し当て、少なくとも上記第1の環状突部で上記成形材料を加圧することにより上記第1の環状突部で加圧された成形材料を上記基材の第1の表面に接着するとともに上記第1の環状突部に囲まれた第1の内空部内に対向する成形材料から第1の突起を成形する第1の成形手段と、
上記基材の第2の表面に配置された熱可塑性又は熱硬化性を有するシート状の成形材料に、第2の基準面と上記第2の基準面から突出し且つ上記第2の突起の外形に対応する形状の第2の内空部を囲む第2の環状突部を備えた複数の第2の突起成形型部とを有する第2の金型を押し当て、少なくとも上記第2の環状突部で上記成形材料を加圧することにより上記第2の環状突部で加圧された成形材料を上記基材の第2の表面に接着するとともに上記第2の環状突部に囲まれた第2の内空部内に対向する成形材料から第2の突起を成形する第2の成形手段と、
上記複数の第1の突起成形型部に対向する成形材料を上記基材の第1の表面上に残して、上記第1の突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料を剥ぎ取る第1の剥ぎ取り手段と、
上記複数の第2の突起成形型部に対向する成形材料を上記基材の第2の表面上に残して、上記第2の突起成形型部に対向する成形材料以外の成形材料を剥ぎ取る第2の剥ぎ取り手段を備えたことを特徴とする突起付き基材の製造装置。
【請求項13】
上記第1の金型が上記第1の基準面となる第1の円筒面を備えた第1の円筒ローラからなり、上記第2の金型が上記第2の基準面となる第2の円筒面を備えた第2の円筒ローラからなることを特徴とする請求項12に記載の突起付き基材の製造装置。
【請求項14】
上記第1の成形手段と第2の成形手段との間に、上記基材を表裏反転する反転手段を備えたことを特徴とする請求項13に記載の突起付き基材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−185913(P2007−185913A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7432(P2006−7432)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【Fターム(参考)】