説明

突起付き糖衣品及びその製法

【課題】突起の高さを0.5mm以上に設定することができると共に、その高さに拘わらず突起の強度を高くすることができるため、喫食者に視覚的なインパクトや楽しさを与え、更には、センターである可食性食品の制約を受けず、短時間で量産可能な突起付き糖衣品を提供する。
【解決手段】糖衣層表面に複数の突起を有する突起付き糖衣層によって可食性食品を被覆した突起付き糖衣品であって、該突起付き糖衣層は下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有するものであり、固形分換算で(A)成分100重量部に対し、(B)成分及び(C)成分の合計が110重量部を超えて含有することを特徴とする突起付き糖衣品によって達成する。
(A)エリスリトール
(B)ソルビトール
(C)キシリトール、トレハロース及びマルチトールのうち1種又は2種以上

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性食品を糖衣層で被覆した突起付き糖衣品及びその製法に関する。さらに詳しくは、糖衣品表面に複数の突起が形成された突起付き糖衣品及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糖衣掛製品は、ショ糖を主体とする糖衣層で菓子類や医薬品等の可食性のセンターを被覆したものであり、該センターを回転釜内で転動させつつ、これに糖衣液を適量添加し、送風乾燥させ、糖衣液の結晶を析出させる作業を繰り返して、糖衣層を形成する方法で製造されてきた。しかしながら、近年、ショ糖によるう蝕性及び高カロリー等の問題点から、消費者の健康志向の高まりに伴い、代替甘味料として抗う蝕性及び低カロリーの糖アルコール等を使用した糖衣掛製品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1の糖衣方法によって得られる糖衣掛製品は、表面が平滑で均斉な糖衣層を有しており、糖衣層表面に突起はまったく形成されておらず、形状から得られる視覚的インパクトや楽しさを提供するものではない。上記特許文献1の比較例3には、均斉な糖衣層を形成することができなかったとの開示があるが、比較例3によって得られる糖衣掛製品は、図4に示すような、糖衣層表面に起伏の緩やかな凸凹が形成された単なる粗面状態であり、突起が形成されることはなく、視覚的インパクトや楽しさを与えるものとは掛け離れたものであった。また、センターを保護し、平滑で均斉な糖衣層を得るためには、何度も糖質液掛けを繰り返すことから、糖衣工程に約10時間もの長時間を必要とした。
【0003】
一般に、表面に突起を有する糖衣掛製品として、金平糖がよく知られている。
しかしながら、金平糖の糖衣層の糖質成分は結晶性の良い砂糖を100%用いなければ突起をうまく形成せず、また一旦形成した突起は崩壊しやすいため、平鍋をゆっくり回転させなければならず、2週間もの長い製造時間が必要である。更に、う蝕性、高カロリーといった健康志向にそぐわないという問題点もある。
【0004】
一方、シュガーレスの要望が高まる中、D−ソルビット単体を用いた模様入り糖衣品の製法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この製法は、被糖衣物の表面に、主成分がD−ソルビットからなる糖衣蜜と20〜100メッシュのD−ソルビット粉末を繰り返し掛け、乾燥工程を備えることで、糖衣層表面に微妙な凸凹模様を形成するものである。
しかしながら、上記の微妙な凹凸模様は、ソルビトール100%の糖衣層からなり、特許文献1と同様に、図4に示すような、糖衣層表面に起伏が緩やかな凸凹が不均一に分散した粗面状態であるため、視覚的インパクトや楽しさを与えるには改良の余地があった。
【0005】
また、他に、糖アルコールを利用したシュガーレス突起糖衣食品として、キシリトールによる糖衣層や、ソルビトールにエリスリトール若しくはマンニトールの少なくとも一方を組み合わせた糖衣層による、表面に突起を有する糖衣食品が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
上記糖衣食品は、糖衣表面に突起を形成させるために、回転しているコーティングパン内のセンター核に繰り返し糖衣液を掛ける際に、糖衣液でセンター核全体がまだ濡れている段階で40〜85℃の高温の温風を入れて素早く乾燥させる手法によって製造される。このような40℃を超えた高温を用いて、センター核の表面に付着した糖衣液からの水分の蒸発・飛散が不均斉となることを利用する製法は、突起が表面に均一に分散しないため、外観の見映えが悪く、喫食時の視覚的インパクトや楽しさに欠けるものであった。また、突起が表面から外に向けて成長し難く、製造効率の点に問題があると共に、突起が成長
したとしても強度が低く、流通・販売時に崩壊してしまう突起もある。更に、高温の温風を受けても変形や溶解しないようなセンター核を使用しなければならず、センター核の制限を受けるという問題点があった。また、糖衣工程で、上記のような高温の温風で乾燥しないとしても、突起の高さが高くなると、強度が低くなり、製造、流通、販売時に殆どの突起が崩壊してしまい、喫食時には、視覚的インパクトや楽しさを付与できる糖衣品とは掛け離れたものとなった。特に上記特許文献3の実施例5の突起は、成長しにくく作業効率の点で、また突起の高さが十分でなく外観の見栄えの点で問題があった。以上のように、糖類の組合せ方で、突起を得ようとしてもその組合せる数は膨大で、また、強度のある突起を得るという技術は確立されていないのが実情である。
【0006】
【特許文献1】特許第3332987号公報
【特許文献2】特公平6−59167号公報
【特許文献3】特開2006−129824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、突起の高さを0.5mm以上に設定することができると共に、その高さに拘わらず突起の強度を高くすることができるため、喫食者に視覚的なインパクトや楽しさを与え、更には、センターである可食性食品の制約を受けず、短時間で量産可能な突起付き糖衣品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、糖衣層表面に複数の突起を有する突起付き糖衣層によって可食性食品を被覆した突起付き糖衣品であって、該突起付き糖衣層は下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有するものであり、固形分換算で(A)成分100重量部に対し、(B)成分及び(C)成分の合計が110重量部を超えて含有することを特徴とする突起付き糖衣品により前記目的を達成する。
(A)エリスリトール
(B)ソルビトール
(C)キシリトール、トレハロース及びマルチトールのうち1種又は2種以上
【0009】
また、本発明は、下記工程を具備することを特徴とする突起付き糖衣品の製法により前記目的を達成する。
(1)固形分換算で下記(A)成分100重量部に対し、(B)成分及び(C)成分の合計が110重量部を超えるように混合して混合物を調製する工程
(A)エリスリトール
(B)ソルビトール
(C)キシリトール、トレハロース及びマルチトールのうち1種又は2種以上
(2)上記混合物100重量部を9〜158重量部の水性媒体に溶解させて、突起付き糖衣層用糖質液を調製する工程
(3)上記突起付き糖衣層用糖質液を可食性食品表面に施与した後、乾燥するという一連の工程を複数回繰り返して突起付き糖衣層を積層し、突起付き糖衣品を得る工程
【0010】
好ましくは、工程(3)の突起付き糖衣層用糖質液を可食性食品表面に施与した後、乾燥するという一連の工程を複数回繰り返す工程中、上記乾燥前に、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース及びマルチトールのうちの1種又は2種以上の粉末状糖質の施与を組合せた一連の工程を1回もしくは複数回有する。
【0011】
すなわち、本発明者らは、シュガーレス突起付き糖衣品の中でも、製造、流通及び販売
時にその突起が崩壊することなく、喫食時まで視覚的なインパクトや楽しさを付与する形状が維持される糖衣品を得るべく鋭意検討を行った結果、糖衣層の糖質組成に着目し、検討を続けた結果、特定の糖アルコール及びトレハロースの組合せ、つまり、エリスリトールとソルビトールの他に、キシリトール、トレハロース及びマルチトールのうち1種又は2種以上を組合せることによって、突起の高さを0.5mm以上に設定することができると共に、その高さに拘わらず突起の強度を高くすることができるため、喫食時までその突起の崩壊等を防止し得、喫食者に視覚的なインパクトや楽しさを与えることができ、更には効率的に突起を形成することができるので、短時間でも量産可能な突起付き糖衣品が得られることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の糖衣品は、特定の糖アルコールやトレハロースを組合せた糖衣層であるため、高さ0.5mm以上の強度の高い複数の突起を、糖衣品の表面に均一に分散形成し得ることができ、しかも、製造、流通、販売時においても、突起が崩壊しにくく、喫食時まで特徴的な形状を維持し得るため、喫食者に対して視覚的なインパクトや楽しさを与えることができる。更に、糖衣層が固形分換算でショ糖100%で構成されてなるものに比べて、う蝕を起こしにくく、低カロリーに設定することができる。
本発明の突起付き糖衣品を口中、特に舌近傍に滞留させたり、転がすことで、舌への適度な刺激から唾液の分泌が促進されるので、味覚改善、口内炎防止、口臭防止を促す可能性がある。
また、本発明によれば、糖衣品のセンターである可食性食品の種類や形態を選ばないため、様々な大きさや形状の可食性食品を用いた場合にも突起形成が可能である。例えば、星形の可食性食品に雪の結晶のように突起を形成させたり、楕円形の可食性食品であっても均一に突起を形成できる。
また、糖衣層形成工程の初期段階から突起が形成し始めるため、突起付き糖衣層が効率良く得られ、例えば直径5〜20mm程度の球形の可食性食品であれば、従来の10時間もの長時間を要することがなく、約5時間程度の短時間で量産することが可能である。更に、上記糖衣層形成工程時の糖質液施与後に粉末状糖質の施与工程を加えることで、製造工程中に可食性食品同士の付着を防止することができ、作業性が良好となり、且つ強度の高い突起を有した糖衣層を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を詳しく説明する。
本発明の突起付き糖衣品とは、表面に複数の突起が形成された突起付き糖衣層で可食性食品を被覆したものである。この突起付き糖衣品を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の突起付き糖衣品の一例を示す斜視図であり、図2は、図1の突起付き糖衣品の縦中央断面図である。
【0014】
突起付き糖衣品1は、センターとして可食性食品2が用いられ、糖衣品の最外層に突起付き糖衣層3が設けられてなるものであり、該糖衣層3は平滑部4と突起5とで構成される。
上記平滑部4は、その表面が略平ら状態である。この平滑部4の厚みは、0.5mm以下であることが、突起付き糖衣層が効率よく得られ作業性の点で好適である。
本発明に係る突起5とは、平滑部4の表面から外方向Xに向かって伸びるように形成されており、突起の底面の長径Lと高さHの比が1:0.5以上、更に好ましくは1:1〜3である突起を意味する。なお、上記長径Lとは、底面形状が三角形等の円形以外の場合には、底面形状の中心を通って、外周上に両端を有する線分の中の最長の線分を意味する。上記突起の高さHは、底面から頂点までの高さを意味するものであるが、図3の部分断面説明図に示すように、突起によってはその底面の位置が一定でなく(平滑部4の厚みが部位によって異なる)、高さがH1とH2で示すように異なる場合があり、その場合には
、H1とH2の平均値を突起の高さとする。これは、異なる3つ以上の高さが存在する場合にも同様の考え方である。上記突起の高さHは、0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上、より好ましくは1〜2mmであることが、視覚的なインパクトや楽しさを付与し得る点で好適である。
【0015】
上記突起付き糖衣層3は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する組合せとすることが重要である。
(A)エリスリトール
(B)ソルビトール
(C)キシリトール、トレハロース及びマルチトールのうち1種又は2種以上
すなわち、上記組合せとすることで、後述する突起付き糖衣層の形成工程において、突起付き糖衣層用糖質液を可食性食品に施与して乾燥することを複数回繰り返す初期段階から、可食性食品の表層に上記糖質の結晶化による小さな突起が形成されるため、上述の高さを有する本発明の突起を得ることができるのである。
【0016】
上記組合せの中でも、特に、エリスリトールとソルビトールとキシリトールとの組合せが、突起形状にばらつきがなく、平滑部4上に均一に分散形成し、強度が高く大きな突起付き糖衣層を簡便に得ることができる点で更に好適である。
【0017】
上記突起付き糖衣層に用いられる(A)成分のエリスリトールとは、ブドウ糖を原料に、酵母の発酵により産出される四価の糖アルコールである。その製品例としては、Cerester社製の「Eridex」等が挙げられる。
【0018】
上記突起付き糖衣層に用いられる(B)成分のソルビトールとは、ブドウ糖を還元して合成される糖アルコールである。その製品例としては、東和化成工業(株)製の「ソルビット」等が挙げられる。
【0019】
上記突起付き糖衣層に用いられる(C)成分のキシリトールとは、D−キシロースを還元して合成される5価の糖アルコールである。その製品例としては、日研化成(株)製の「キシリトール」等が挙げられる。
【0020】
上記突起付き糖衣層に用いられる(C)成分のトレハロースとは、澱粉の酵素転移により合成されるD−グルコース2分子が結合した二糖類の低甘味糖である。その製品例としては、(株)林原商事製の「トレハ」等が挙げられる。
【0021】
上記突起付き糖衣層に用いられる(C)成分のマルチトールとは、マルトース(麦芽糖)を還元した糖アルコールである。その製品例としては、東和化成工業(株)製の「レシス」等が挙げられる。
【0022】
上記成分の剤型は、特に限定するものではなく、糖質液の場合は、粉体、顆粒や液状物等が、粉末掛けの場合は粉体、顆粒等が挙げられ、適宜選択すればよい。
【0023】
上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の重量比率は、固形分換算で上記(A)成分100重量部に対し、(B)成分及び(C)成分の合計が110重量部を超えることが、突起の根元が広がらずに外方向(図1における方向X)へ伸びて立体的で高く、強度が高い突起付き糖衣層を形成する点で重要である。
特に、(A)成分100重量部に対し、(B)成分及び(C)成分の合計を好ましくは110重量部を超えて9000重量部以下、更に好ましくは110重量部を超えて1000重量部以下、より好ましくは110重量部を超えて500重量部以下とすることが、更に強度の高い突起付き糖衣層が得られる点で好適である。
【0024】
上記(B)成分と(C)成分の重量比率は、特に限定するものではないが、好ましくは(B)成分1重量部に対し、(C)成分が0.1〜8重量部に設定されていることが、突起形成及び突起の高さの点で好適である。
【0025】
また、突起5の形状は、特に限定するものではないが、例えば、円錐,三角錐,四角錐,多角錐等の錐形や、円柱,三角柱,四角柱,多角柱等の柱形等のいずれでもよく、円錐または円柱は、特に視覚的インパクトや楽しさがあり好ましい。なお、上記錐形とは、底面に対して頂点が先細りしている形状であればよく、頂点が鋭角であることを限定するものではない。
【0026】
突起付き糖衣品1における突起付き糖衣層3の合計量は、可食性食品2の形状、表面積等によって異なるが、特に限定するものではなく、適宜設定すればよい。好ましくは、上記糖衣層3が可食性食品2全体重量に対して15〜25重量%となるように設定することが、突起を好適な高さに設定しやすく、強度を高める点で好適である。
【0027】
上記糖衣層3には、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の他に副原料を含有してもよいが、好ましくは、糖衣層3全体重量中、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計重量が固形分換算で80重量%以上、更に好ましくは95重量%以上であることが、本発明の効果を得ると共に低カロリーに抑えることができる点で好適である。
上記副原料としては、澱粉類(澱粉、化工澱粉、変性澱粉、澱粉分解物等)や、油脂、乳類、粉末呈味原料(粉末茶類、卵白粉末、卵黄粉末、調味料、粉末果汁、粉末エキス等)、香料、酸味料、安定剤、ゼラチン等のゲル化剤、アラビアガムやプルラン等の増粘剤、カルシウム等の塩類、着色料、栄養素(食物繊維、ビタミン類、ミネラル、DHA、ビフィズス菌増殖因子等)、ガルシニア・カンボジアエキス粉末、ギムネマ粉末等を単独もしくは複数組合せて用いればよい。この中でも、特にアラビアガム、プルラン等の増粘剤は、高さの高い突起が効率よく形成される点で好ましく、増粘剤の中でも特にアラビアガムが望ましい。増粘剤を用いる場合、その含有量は、突起付き糖衣層全体重量中、固形分換算で2〜10重量%であることが、突起の均一分散性、突起の強度、作業性の点で好ましい。
【0028】
突起付き糖衣品1のセンターである可食性食品2としては、例えばチューインガム、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、グミ、錠菓、チョコレート、タブレット、クッキーやビスケット等の焼菓子、スナック類、ナッツ類、果実や野菜等の乾燥物の小片、コーンパフ、ザラメ糖等の糖質顆粒、錠剤や丸薬等の医薬品類、各種食品素材や栄養成分の粉末を造粒したもの等、可食性であれば何ら限定されるものではなく、単独又は複数組合せて用いてもよい。
その形状としては、一般的な球形、円盤形、枕形は勿論のこと、例えば、半球形、フットボール形、カプセル形、星形、直方体、立方体、円筒形、円錐形、角錐形、更には金平糖のような多数の突起や角部を有する形状でも用いることができる。
その大きさは、特に限定するものではないが、特に一口で食べられる大きさ、例えば、球形状の場合、直径約5〜20mm程度が喫食する上で好ましい。
【0029】
なお、センターとして用いる可食性食品2は、上記のような食品そのものでもよく、もしくは上記のような食品表面が平滑な糖衣層で被覆された食品であってもよい。特に、上記のような食品そのものの表面に、傷様又は帯状の凹みや起伏等がある場合、予め表面全体に平滑な糖衣層を施した糖衣層形成可食性食品としておくことが、後工程での突起付き糖衣層形成による視覚的インパクト及び楽しさを与える点で好適である。すなわち、上記表面全体が平滑な糖衣層で被覆された可食性食品とすることで、突起付き糖衣層の作業性が向上し、高さの高い突起を均一分散して形成することができる点で好適である。
上記表面全体が平滑な糖衣層に用いる糖質としては、結晶化する糖質であれば特に限定する必要はなく、例えばショ糖、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、マルチトール等)、トレハロース等の低甘味糖質等が挙げられ、この中でも、エリスリトール、キシリトールは上記効果がより得られる点で好適である。
【0030】
次に、上記原料を用いて本発明の突起付き糖衣ハードキャンディは、例えば次のようにして製造することができる。
すなわち、まず、常法に従い、センターとなるハードキャンディを調製する。糖質(果糖、ブドウ糖、タガトース、アラビノース等の単糖類、ショ糖、乳糖、オリゴ糖、麦芽糖、トレハロース等の少糖類、水あめ、還元水あめ、粉末水あめ、デキストリン、糖アルコール等)に、香料、栄養素等の副原料を混合し、更に加熱混合して均質化した後、適切な水分量に調整し、押し出し成形等で適宜成形することによりハードキャンディを得ることができる。
【0031】
次に、突起付き糖衣層用糖質液を、以下のように調製する。
まず、固形分換算で上記(A)成分100重量部に対し、上記(B)成分及び(C)成分の合計が110重量部を超えるように混合して混合物を調製する。次いで、上記混合物を水性媒体に溶解させ、突起付き糖衣層用糖質液を調製する。
上記混合物と水性媒体の重量比は、混合物100重量部に対し、好ましくは水性媒体9〜158重量部、更に好ましくは25〜158重量部とすることが、突起付き糖衣層用糖質液が適度な粘性となり、作業性が良好となる点及び突起の均一分散性の点で好ましい。
上記水性媒体とは、水道水、ジュース類等の水溶性媒体が挙げられる。
なお、得られた糖質液を施与する際には、液温を50〜80℃に保つことが、作業性を良好にする点及び突起が突起付き糖衣層形成工程の初期段階から形成される点で好ましい。
【0032】
この際、用いる糖質の組合せにより、最終製品の突起形状を設定することができる。例えば、円柱の突起は、糖質全体重量中エリスリトール19重量%、ソルビトール24重量%、キシリトール57重量%である突起付き糖衣層用糖質液を用いることで形成することができる。また、円錐は、例えば、糖質全体重量中エリスリトール46重量%、ソルビトール27重量%、キシリトール27重量%である突起付き糖衣層用糖質液を用いることで形成することができる。このように、突起形状は、突起付き糖衣層用糖質液の糖質の組合せにより適宜調整すればよい。
【0033】
次に、可食性食品を、一般に糖衣に用いられる回転釜内に複数個投入して転動させつつ、これに上記糖質液を適量添加し、可食性食品表面に糖質液を施与する。なお、1回に掛ける上記糖質液の量は、上記食品の表面全体に行き渡る程度にすることが望ましい。具体的には、可食性食品全体重量に対して、固形分換算で0.5〜2重量%である。
【0034】
ここで、可食性食品に突起付き糖衣層用糖質液を施与した直後に、粉末状糖質を施与することが、可食性食品同士の付着を防止し、突起の強度を高める点で好適である。但し、最外層は、突起付き糖衣層用糖質液となるように施与することが、作業性の点で望ましい。
上記粉末状糖質としては、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース及びマルチトールから選ばれる1種又は2種以上の粉末状糖質を含有することが、可食性食品同士の付着を防止して作業性を高め、強度の高い突起を得る点で好適である。なお、粉末状糖質と突起付き糖衣層用糖質液の糖質組成は、同一であることに限定されるものではないが、少なくとも1種類は同一の糖質を用いることが、効率的に突起を形成する点で好適である。
上記粉末状糖質の施与量は、可食性食品の表面が均一に被覆される程度が望ましく、上
記可食性食品の大きさや形状に合わせて適宜設定すればよい。具体的には、可食性食品全体重量に対して、固形分換算で5〜15重量%であることが、可食性食品同士の付着を防止し、突起の強度を高める点で好適である。
なお、粉末状糖質は、突起付き糖衣層用糖質液を施与する毎に施与する必要はなく、例えば糖質液を施与して粉末状糖質を施与した後は、次の糖質液を施与した後に粉末状糖質は施与しないの繰り返し等、適宜の間隔で粉末状糖質を施与してもよい。
【0035】
次に、上記突起付き糖衣層用糖質液、もしくは該糖質液及び粉末状糖質が被覆された可食性食品の表面を乾燥させる。
なお、乾燥するタイミングは、上記糖質液もしくは糖質液及び粉末状糖質が可食性食品表面に行き渡ったら10秒以内に送風乾燥を開始することが、高さ0.5mm以上の突起を形成する点で好ましい。
乾燥は送風により行い、この場合20〜40℃の温風を使用することが、可食性食品の溶融等を抑えることができ、短時間で好適な高さにまで突起を成長させ、強度の高い突起とする点で好適である。
また、乾燥の条件は、可食性食品の表面の水分含量が2重量%以下となるまで行うことが、突起を伸長させ、強度を高める点で好適である。
【0036】
上記突起付き糖衣層用糖質液施与から乾燥するという一連の工程を、所定の突起の高さに至るまで複数回繰り返して突起付き糖衣層を積層することにより、本発明の突起付き糖衣品を得ることができる。
繰り返す回数は、突起付き糖衣層用糖質液を構成する糖質の組成や、所望の突起の高さ等により適宜設定すればよく、具体的には約10〜30回繰り返せばよい。
例えば、エリスリトールとソルビトールとキシリトールの固形分合計量100重量部を水道水44重量部に溶解した突起付き糖衣層用糖質液を用い、高さ(図2に示す高さH)が1.5mmの突起を形成する場合、上記一連の工程を3〜4回繰り返して行った頃から糖衣層表面に初期の突起(小さな突起)が形成し始め、最終的に所定の高さに至るには約20回程度である。
【0037】
更に、必要に応じて、最終的に得られた突起付き糖衣品の表面に、被覆液を施与して突起表面を滑らかにしたり、着色料溶液を施与して着色したり、あるいはココア微粉末等の各種粉末食品素材を施与して風味に変化を持たせたり、光沢剤(蜜蝋、カルナバロウ、シェラック、ワックス等)等を施与して光沢を付与する等の加工を施してもよい。
【0038】
なお、可食性食品に、予め平滑な糖衣層を形成する場合は、その糖衣方法は公知の方法で行えばよい。例えば、可食性食品として、ハードキャンディ表面全体に、平滑な糖衣層を形成したハードキャンディとする場合は、ハードキャンディを一般に糖衣に用いられる回転釜内に投入して転動させつつ、これに上述の糖質を溶液化した糖質液を適量添加し、ハードキャンディ表面に糖質液を施与する。その後、必要に応じて、上記糖質液と同じ糖質で構成される粉末状糖質を施与し、乾燥する。そして、この一連の工程を複数回繰り返すことにより、平滑な糖衣層を形成したハードキャンディを得ることができる。好ましくは、平滑な糖衣層の厚みが0.5mm以上になるまで繰り返すことが、次の突起付き糖衣層形成工程の作業性の点及び外観が良好となる点で好適である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を用いて例示するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0040】
<実施例1〜14>
まず、常法に従い、可食性食品として球状ハードキャンディを調製した。すなわち、シ
ョ糖、還元水あめ、香料を混合し、更に加熱混合して均質化した後、水分量3重量%に調整し、押し出し成形で直径10mmの球状に成形することにより球状ハードキャンディを得た。
次に、表1に示す組成で、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び必要に応じ副原料を混合し、水道水で加熱溶解して突起付き糖衣層用糖質液を調製後、50℃で保温状態に維持した。
上記の球状ハードキャンディ300gを回転釜(レボリングパン)に投入し、回転釜を23〜30rpmで回転させて、球状ハードキャンディを転動させながら、上記突起付き糖衣層用糖質液を適量施与した後、粉末状糖質を振り掛け、その直後約30℃の温風によって、表面の水分含量が、2重量%以下になるまで送風乾燥した。この糖質液施与から乾燥までの一連の工程を約150分〜約300分かけて20回繰り返して(この20回のうちの複数回が粉末状糖質を施与する工程を具備するものである)突起付き糖衣層を積層し、突起付き糖衣ハードキャンディを得た。この時の糖衣層の合計量は、45〜75g(球状ハードキャンディ全体重量の15〜25重量%で、そのうち糖質液由来は10〜20重量%、粉末状糖質由来は5〜15重量%である)であった。
なお、表中の括弧内の数値は、突起付き糖衣層用糖質液と粉末状糖質を合算し、最終突起付き糖衣層の糖質全体重量における各糖質の重量を示している。
【0041】
<実施例15>
実施例4の突起付き糖衣層用糖衣液を用いて、該糖衣液を球状ハードキャンディに適量施与した後、粉末状糖質を振り掛けることなく、送風乾燥する以外は、実施例4と同様に突起付き糖衣ハードキャンディを得た。
なお、表中の括弧内の数値は、最終突起付き糖衣層の糖質全体重量における各糖質の重量を示している。
【0042】
<実施例16>
粉末状糖質の組成を変更する以外は、実施例2と同様に突起付き糖衣ハードキャンディを得た。
【0043】
<実施例17>
可食性食品として、球状ハードキャンディに、エリスリトール及びキシリトールによる糖衣を10回施して平滑な糖衣層(厚み0.5mm)で被覆した球状ハードキャンディを使用する以外は、実施例10と同様に突起付き糖衣ハードキャンディを得た。
【0044】
<比較例1〜5>
表1に示す組成で、上記実施例と同様の製造方法で、糖衣或いは突起付き糖衣ハードキャンディを得た。なお、比較例2〜5は、粉末状糖質掛け工程を備えなかった。
【0045】
【表1】

【0046】
以上のようにして得られた実施例品と比較例品について、目視にて、糖衣品の表面形状、突起の高さ、突起の均一分散性、視覚的インパクト・楽しさの4項目を評価した。また、突起付き糖衣層製造工程での作業性及び突起強度についても評価した。なお、突起強度については、突起突き糖衣ハードキャンディ10個をパウチに収容して含気密封し、該パウチを12袋ダンボールに詰め、輸送テスト(約500km間を平均時速60kmで2往復させた)後にパウチを開封し、突起の崩壊状態を確認し、折れた突起の重量換算により評価した。
その結果を表1に合わせて示す。
【0047】
以上の結果から、全実施例で得られた突起付き糖衣ハードキャンディは、高さ0.5mm以上の各種形状の突起が略均一分散した状態で形成された糖衣ハードキャンディであり、各評価において優れた結果を得ることができた。特に、実施例1〜3、13、14及び16は、全ての評価項目で良好な結果を得ることができ、得られた突起付き糖衣ハードキャンディは、高さの高い突起が外方向に向かって伸びるように形成されており、その突起形状は、視覚的なインパクトと楽しさを与える外観を呈していた。また、輸送テストによる振動を与えても突起が崩壊することがなく、喫食時までその形状を維持することができた。
実施例15は、どの評価項目においても、本発明の効果を奏するものであったが、粉末状糖質を振り掛けることなく突起付き糖衣層を形成したため、突起付き糖衣層用糖質液同配合の実施例4に比べ、製造工程中に球状ハードキャンディ同士の付着が部分的に生じ、作業性及び突起の強度が若干劣るものであった。
実施例17は、突起付き糖衣層用糖衣液同配合の実施例10よりも、さらに突起の均一分散性及び作業性が優れた結果となった。
【0048】
一方、比較例1、2、4及び5は、糖衣層表面が扁平であり、突起が形成されなかった。従って、視覚的インパクトや楽しさを付与し得るものでは到底なく、他の評価項目については、評価不可能であった。
比較例3は、0.5mm以上の突起を形成したが、突起付き糖衣層を形成する際に球状
ハードキャンディ同士が付着して作業性が劣り、突起が糖衣層表面に不均一に分散されると共に、輸送テストで20%以上の突起が折れてしまうほど強度が低く、輸送テスト後に得られた突起付き糖衣物は、視覚的インパクトや楽しさを付与し得るものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の突起付き糖衣品の一例を示す斜視図
【図2】図1の突起付き糖衣品の縦中央断面図
【図3】平滑部の底面から頂点までの高さが異なる突起の部分断面説明図
【図4】従来の表面が粗面状態の糖衣品の一例を示す斜視図
【符号の説明】
【0050】
1 突起付き糖衣品
2 可食性食品
3 突起付き糖衣層
4 平滑部
5 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖衣層表面に複数の突起を有する突起付き糖衣層によって可食性食品を被覆した突起付き糖衣品であって、該突起付き糖衣層は下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有するものであり、固形分換算で(A)成分100重量部に対し、(B)成分及び(C)成分の合計が110重量部を超えて含有することを特徴とする突起付き糖衣品。
(A)エリスリトール
(B)ソルビトール
(C)キシリトール、トレハロース及びマルチトールのうち1種又は2種以上
【請求項2】
下記工程を具備することを特徴とする突起付き糖衣品の製法。
(1)固形分換算で下記(A)成分100重量部に対し、(B)成分及び(C)成分の合計が110重量部を超えるように混合して混合物を調製する工程
(A)エリスリトール
(B)ソルビトール
(C)キシリトール、トレハロース及びマルチトールのうち1種又は2種以上
(2)上記混合物100重量部を9〜158重量部の水性媒体に溶解させて、突起付き糖衣層用糖質液を調製する工程
(3)上記突起付き糖衣層用糖質液を可食性食品表面に施与した後、乾燥するという一連の工程を複数回繰り返して突起付き糖衣層を積層し、突起付き糖衣品を得る工程
【請求項3】
工程(3)の突起付き糖衣層用糖質液を可食性食品表面に施与した後、乾燥するという一連の工程を複数回繰り返す工程中、上記乾燥前に、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース及びマルチトールのうちの1種又は2種以上の粉末状糖質の施与を組合せた一連の工程を1回もしくは複数回有する請求項2記載の突起付き糖衣品の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−283924(P2008−283924A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133490(P2007−133490)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(393029974)クラシエフーズ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】