説明

窒素置換式脱酸素装置、および窒素置換式脱酸素方法

【課題】窒素置換式脱酸素装置の小型化を実現でき、かつ、効率的に安定した脱酸素水を得ることができる新規な技術を提供すること。
【解決手段】水中の溶存酸素を窒素と置換することにより、水中の溶存酸素を低減する脱酸素装置であって、タンク部内に貯留された水を前記脱酸素装置内で循環させるための水循環手段と、前記水に窒素ガスを注入する窒素ガス注入部と、前記水と前記窒素ガスとを混合する窒素ガス混合部と、該窒素ガス注入部と前記タンク部との間に配設され、循環する水の流量を調整する流量調整手段と、を少なくとも備え、該流量調整手段によって、前記水循環手段の出口の圧力が0.1〜0.6MPaとなるように調整される窒素置換式脱酸素装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素置換式脱酸素装置、および窒素置換式脱酸素方法に関する。より詳しくは、ボイラ用水、冷却用循環水、飲料水などに適用可能な窒素置換式脱酸素装置、および窒素置換式脱酸素方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ用水、冷却用循環水、飲料水などの水処理分野においては、水中の溶存酸素によって、ボイラや附帯装置、蒸気配管、蒸気使用機器、ドレン(凝縮水)回収配管、冷熱機器などに腐食が生じ、その結果、装置の故障や重大な事故の発生など、大きな問題を生じさせる可能性がある。
【0003】
このような問題を防止するために、ボイラ用水、冷却用循環水、飲料水などの水処理分野においては、水中の溶存酸素を除去するために、脱酸素装置を用いたり、ボイラ給水中に脱酸素剤を注入したりする対策が講じられている。
【0004】
脱酸素装置としては、一般に、膜式脱酸素装置、真空式脱酸素装置、窒素置換式脱酸素装置などが知られている。前記膜式脱酸素装置は、特定の高分子膜を利用することにより、被処理水に含まれる溶存酸素を低減させる装置である。
【0005】
また、前記真空式脱酸素装置は、被処理水を処理槽内の上部から下部へ向かって散布し、前記処理槽内を真空吸引することにより、被処理水に含まれる溶存酸素を低減させる装置である。
【0006】
さらに、前記窒素置換式脱酸素装置は、被処理水に窒素ガスを供給し、被処理水に含まれる溶存酸素を窒素と置換して低減させる装置である。
【0007】
近年、この窒素置換式脱酸素装置に関する技術開発が進められている。例えば、特許文献1には、原水タンク内の原水を供給ポンプにて送出する原水供給系に接続され、窒素ガス源からガス供給系を経て供給される窒素ガスを、原水供給系を経て供給される原水に接触させることにより、原水中の酸素を除去する脱酸素装置本体と、脱酸素装置本体で脱酸素処理を終えた処理水を原水消費部へ供給するべく、その処理水を処理水ポンプによって給水系内の給水ポンプより上流側に供給する処理水供給系と、給水系へ供給する処理水の水量を原水消費部における原水の使用量より多くして、処理水の一部を給水系内の処理水合流点より上流側を通して原水タンクへ戻すと共に、処理水の原水タンクへの戻り量が所定範囲内に維持されるように前記処理水ポンプの能力を制御する制御部とを具備することにより、処理水の消費側に過不足のない処理水が供給でき、設備運転コストを安く抑えることができる経済性に優れた窒素式脱酸素装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、送水管内に窒素ガスを注入する窒素注入手段と、窒素ガスが注入された水を乱流混合するスタティックミキサーと、乱流混合された水を気液分離する気液分離手段とを備えることで、省エネルギー化が可能で脱酸素効率にも優れた脱酸素装置が開示されている。
【0009】
更に、特許文献3には、垂直に立ち上がった脱酸素塔にて、上方から下方に向かう被処理水と、下方から供給されて上方に向かう窒素を対向接触させ、塔の下部から脱酸素水をタンクに供給し、塔の上部から酸素を含んだ窒素ガスを排出する脱酸素装置が提案されている。この脱酸素装置では、タンク内の水を循環処理するとともに、補給水が脱酸素塔の入口に供給される装置構成となっており、給水タンクに大がかりな補強をしなくても、脱酸素塔から直接給水タンクに脱酸素水を供給することができるように工夫されている。
【0010】
以上のように、窒素置換式脱酸素装置に関する技術開発は発展の途をたどっているが、装置が大型化するという課題があった。例えば、特許文献2の装置では、装置構成が複雑であり、装置の高さが高くなるという課題があった。また、特許文献3の装置でも、特許文献2の装置に比べて更に高さが必要になるとともに、既設のタンクに後付けで設置する場合には、設置が煩雑であり、適用が制限されるという課題があった。
【0011】
また、装置の大型化以外でも、例えば特許文献3の装置では、タンクに供給された脱酸素水が水面で外気と接触することにより、外気中の酸素が再び溶解し、溶存酸素濃度が上昇してしまうという問題も生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−279466号公報
【特許文献2】特開2001−129304号公報
【特許文献3】特開2010−7866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のように、窒素置換式脱酸素装置に関する技術開発は進められているが、装置の大型化の問題、装置の構成によっては溶存酸素濃度が上昇してしまうという問題など、まだまだ解決すべき問題点を抱えているのが実情である。
【0014】
そこで、本発明では、窒素置換式脱酸素装置の小型化を実現でき、かつ、効率的に安定した脱酸素水を得ることができる新規な技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者らは、窒素置換式脱酸素技術について鋭意研究した結果、循環させる水の流量の調整方法に着目し、その流量調整方法を工夫することで省スペースな装置であるにも関わらず、効率的に安定した脱酸素水が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明ではまず、水中の溶存酸素を窒素と置換することにより、水中の溶存酸素を低減する脱酸素装置であって、
タンク部内に貯留された水を前記脱酸素装置内で循環させるための水循環手段と、
前記水に窒素ガスを注入する窒素ガス注入部と、
前記水と前記窒素ガスとを混合する窒素ガス混合部と、
該窒素ガス注入部と前記タンク部との間に配設され、循環する水の流量を調整する流量調整手段と、
を少なくとも備え、
該流量調整手段によって、前記水循環手段の出口の圧力が0.1〜0.6MPaとなるように調整される窒素置換式脱酸素装置を提供する。
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置は、前記窒素ガス注入部と前記タンク部との間で通水する水の流量の調整が行われることを特徴とする。
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置では、前記窒素ガス混合部にて混合された水と窒素との気液分離を行わずに、処理水を前記タンク部に戻すことが好ましい。即ち、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置には、前記窒素ガス混合部にて混合された水と窒素とを気液分離する気液分離手段を備えないことが好ましい。
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置における前記窒素ガス混合部では、水と窒素ガスの混合を行うことができればその形態は特に限定されないが、本発明では、前記窒素ガス混合部として蛇腹状の通水配管を用いることが好ましい。
また、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置への補給水の注入箇所は特に限定されないが、本発明においては、前記水循環手段の手前で注入することが好ましい。
更に、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置には、補給水の合流点と前記タンク部との間に、逆止弁を備えず、補給水量よりも通水量を多くすることが好ましい。
本発明においては、補給水の合流点と前記タンク部との間にクッション槽を設けることが望ましく、また、窒素ガス注入部の配管径を循環水の流速が10〜20m/sとなるように部分的に細くすることで窒素ガスの気泡を微細化することが望ましい。
【0017】
本発明では、次に、タンク部内に貯留された水を循環手段を用いて該タンク部外へ循環させ、水中の溶存酸素を窒素と置換することにより、水中の溶存酸素を低減する脱酸素方法であって、
前記水に窒素ガスを注入する窒素ガス注入工程と、
前記水と前記窒素ガスとを混合する窒素ガス混合工程と、
前記循環手段の出口の圧力が0.1〜0.6MPaとなるように、前記窒素ガス注入工程を経た後、前記水が前記タンク部に戻される前に循環する流量調整を行う流量調整工程と、
を少なくとも行う窒素置換式脱酸素方法を提供する。
本発明に係る窒素置換式脱酸素方法は、前記窒素ガス注入工程を経た後、処理水が前記タンク部に戻される前に循環する水の流量の調整が行われることを特徴とする。
本発明に係る窒素置換式脱酸素方法では、前記窒素ガス混合工程にて混合された水と窒素との気液分離を行わずに、処理水を前記タンク部に戻すことが好ましい。
本発明に係る窒素置換式脱酸素方法における前記窒素ガス混合工程では、水と窒素ガスの混合を行うことができればその方法は特に限定されないが、本発明では、前記窒素ガス混合工程において、前記窒素ガス注入工程にて窒素が注入された水を蛇腹状の通水配管に通水することで前記水と前記窒素ガスとを混合することが好ましい。
更に、補給水の合流点と前記タンク部との間にクッション槽を備えることが好ましく、また、窒素ガスの注入部の配管径を循環水の流速が10〜20m/sとなるように部分的に細くすることで窒素ガスの気泡を微細化することがより好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、極めて省スペースな装置にも関わらず、効率的かつ安定した脱酸素水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の第1実施形態を示す模式概念図である(実施例1)。
【図2】本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の第2実施形態を示す模式概念図である(実施例2)。
【図3】本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の第3実施形態を示す模式概念図である(実施例3)。
【図4】従来の窒素置換式脱酸素装置10を示す模式概念図である(比較例1)。
【図5】本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の第4実施形態を示す摸式概念図である(実施例11〜18)。
【図6】本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の第5実施形態を示す摸式概念図である(実施例20)。
【図7】本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の第6実施形態を示す摸式概念図である(実施例10)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0021】
<窒素置換式脱酸素装置>
図1は、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の一実施形態を示す模式概念図である。本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1は、水中の溶存酸素を窒素と置換することにより、水中の溶存酸素を低減する脱酸素装置であって、窒素ガス注入部11と、窒素ガス混合部12と、水循環手段13と、流量調整手段14と、タンク部15と、を備える。窒素ガス注入部11と窒素ガス混合部12と水循環手段13は直接又は配管等を介して互いに接続され、流体(液体、気体)を通す循環ラインが構成される。その循環ラインはタンク部15に接続され、タンク部15に流体が供給される。以下、各部について詳細に説明する。
【0022】
(1)窒素ガス注入部11
窒素ガス注入部11は水に窒素ガスを注入するために機能する。窒素ガスの注入方法は特に限定されず、窒素置換式脱酸素技術分野において通常用いられるあらゆる方法を自由に選択して用いることができる。例えば、水の循環ラインに圧入することにより窒素ガスを注入する方法、エゼクターなどを用いて吸入させることにより窒素ガスを注入する方法などを挙げることができる。
【0023】
なお、圧入により窒素ガスを注入する場合には、窒素ガスを注入する部材の先端に例えば散気管などを付けて、窒素ガスの気泡を微細にすることが好ましい。水中で、窒素ガスを素早く均一化させることが可能となるからである。また、窒素ガス注入部11の配管径を循環水の流速が10〜20m/sとなるように部分的に細くすることで窒素ガスの気泡を微細化する方法も有効である。なお、循環水の流速が20m/sを超えると圧力損失が大きくなりすぎ、窒素ガスが注入できなくなったり、循環ポンプの電気代が増して不経済となるため、20m/s以下となるように設定するのが望ましい。
【0024】
(2)窒素ガス混合部12
窒素ガス混合部12では、水と窒素ガスとの混合を行う。水と窒素ガスの混合を行いながら、水中の溶存酸素の窒素との置換が行われる。
【0025】
窒素ガス混合部12は、水と窒素ガスの混合を行うことができれば、その形態は特に限定されず、窒素置換式脱酸素技術分野において通常用いられるあらゆる混合方法を自由に選択して用いることができる。例えば、スタティックミキサーと呼ばれる稼動部を持たない混合器を使用した方法、通水配管をそのまま使用して混合を行う方法などを挙げることができる。
【0026】
本発明では特に、窒素ガス混合部12として蛇腹状の通水配管を用いることが好ましい。蛇腹状の通水配管は、管を巻くことで、比較的自由な大きさでコンパクトに設置できるため、この窒素ガス混合部12として蛇腹状の通水配管を用いることで、装置のコンパクト化を実現することができる。
【0027】
また、蛇腹状の通水配管は、これ自体を配管として使用することもできるため、窒素置換式脱酸素装置1内に極めて省スペースで設置することができ、これも装置のコンパクト化に貢献することができる。
【0028】
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の窒素ガス混合部12として蛇腹状の通水配管を用いる場合、蛇腹状の形態を有する通水配管であれば、公知のものを自由に選択して用いることが可能である。例えば、市販の蛇腹状フレキシブル管などを使用することができる。なお、市販のフレキシブル管には、単山(ワンピッチ)型、スパイラル型などが存在するが、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1には、いずれも用いることが可能である。また、ステンレスブレードを外装に取り付けることにより、耐圧性を高めることができるとともに、蛇腹の伸びによる形状変化を防止することが可能となる。
【0029】
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の窒素ガス混合部12として蛇腹状の通水配管を用いる場合、蛇腹状の通水配管の材質は特に限定されず、窒素置換式脱酸素技術分野において通常用いられるあらゆる材質を自由に選択して用いることができる。例えば、耐食性や耐摩耗性(エロージョン対策)を考慮すると、ステンレス鋼(SUS)などの耐食材を使用することが好ましい。
【0030】
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の窒素ガス混合部12として蛇腹状の通水配管を用いる場合、蛇腹状の通水配管の長さは特に限定されず、水中の溶存酸素濃度や目的の脱酸素効果などに応じて自由に設計することができる。本発明では特に、0.5〜20mの長さに設計するのが好ましく、1〜10mに設計するのがより好ましい。0.5m以上の長さがあれば脱酸素効果を十分に発揮することができ、20m以下とすることで生じる圧力損失を抑制することができるからである。また、このときの窒素ガス混合部12はその一部のみが蛇腹管でその他の部分は通常の通水配管であっても良い。
【0031】
なお、図1では、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1に、窒素ガス混合部12を二つ設置しているが、本発明ではこれに限定されず、単一の窒素ガス混合部12を配置してもよいし、二つ以上を配置してもよい。
【0032】
(3)水循環手段13
水循環手段13は、タンク部15内に貯留された水を、本発明に係る脱酸素装置内で循環させるために機能する。循環ラインには、水が補給される補給水合流点を設けてもよく、この場合、水循環手段13は補給された水(補給水)も循環させる。
【0033】
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1に用いることができる水循環手段13の種類は特に限定されず、窒素置換式脱酸素技術分野において通常用いられるあらゆる循環手段を自由に選択して用いることができる。例えば、渦巻ポンプを挙げることができる。
【0034】
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1に用いることができる水循環手段13の容量は特に限定されず、本発明の目的を損なわない限り、あらゆる容量のポンプなどの循環手段を自由に選択して用いることができる。本発明では特に、補給水の最大流量よりも容量の大きなポンプを用いることが好ましい。溶存酸素濃度の高い補給水の全量を循環ライン側に通水させるためである。
【0035】
また、容量的に余裕のあるポンプを選択した場合、流量調整手段14のみで流量調整すると水循環手段13の出口の圧力が上昇しすぎることがある。この場合は、水循環手段13の出口に減圧弁やバルブなどの流量調整弁を設置することも可能である。
【0036】
溶存酸素濃度の高い補給水を補給するには、補給水合流点を水循環手段13よりも上流側に設け、水循環手段13の手前で補給することが好ましい。また、タンク部15内の水位を所定の範囲内に保つように補給を制御することが好ましい。
【0037】
(4)流量調整手段14
流量調整手段14は、水循環手段13の出口の圧力が0.1〜0.6MPaとなるように、通水する水の流量を調整するために機能する。水循環手段13の出口の圧力を0.1MPa以上とすることにより溶存酸素を十分に除去することが可能となる。また、0.6MPa以下とすることにより窒素注入を効率的に行うことが可能となる。
【0038】
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1に用いることができる流量調整手段14の種類は特に限定されず、窒素置換式脱酸素技術分野において通常用いられるあらゆる流量調整手段を自由に選択して用いることができる。例えば、バルブ、オリフィス、背圧弁、保圧弁、定流量弁、散気管、スプリング式安全弁、スプリング内蔵チェックバルブ、多孔板などを挙げることができ、これらを単独で使用しても良いし、2つ以上を併用しても良い。特に2つ以上設置するのが有効であり、1つ目の流量調整手段手前の圧力が0.1〜0.4MPa、2つ目の流量調整手段手前の圧力が0.05〜0.20MPaとなるように流量調整するのが望ましい。
【0039】
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1に用いることができる流量調整手段14の設置箇所としては、窒素ガス注入部11と前記タンク部15との間であれば、細かい設置箇所は特に限定されず、自由な位置に設置することが可能である。前記窒素ガス注入部11と前記タンク部15との間に流量調整手段14を設置することで、処理水中の溶存酸素をより低下させることが可能となる。例えば、図1に示すように、窒素ガス混合部12を複数用いて、窒素ガス混合部12同士の間に流量調整手段14を設置することに限らず、窒素ガス注入部11と窒素ガス混合部12との間に流量調整手段14を設置したり(図2参照)、窒素ガス混合部12の下流側に流量調整手段14を設置したりする(図3参照)ことも可能である。
【0040】
(5)タンク部15
タンク部15は、脱酸素水を一時的に貯留する場として機能する。このタンク部15は、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1の一部として新設することは必須でなく、例えば、既設のタンクを利用して、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1を構成することにより、水系の脱酸素を行うことも可能である。窒素置換式脱酸素装置1で処理後の脱酸素水は、循環ラインの途中からボイラ等の外部装置に供給してもよいが、タンク部15からの供給が望ましい。
【0041】
タンク部15には、前記窒素ガス混合部12の一部又は全部を浸漬させることも可能である。前記窒素ガス混合部12をタンク部15に浸漬させることで、更なる省スペース化がはかられるとともに、高温の回収水をタンクに戻している場合や他の熱交換器とタンク水を循環させて熱回収することなどにより補給水に比べてタンク内の温度が高い場合は、補給水通水時に浸漬された窒素ガス混合部12において水温が上昇し、脱酸素効率が上昇するという利点もある。
【0042】
本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1をボイラ用水の脱酸素に用いる場合、ボイラに脱酸素水を供給して、発生した蒸気が熱交換してドレン化したものの回収水など、供給した脱酸素水の回収水は、通常溶存酸素濃度が低いので、タンク部15に直接回収することも可能である。ただし、回収水でも温度が低く、大気との接触により溶存酸素濃度が上昇したものについては、被処理水と同様に、前記水循環手段13の手前に補給することが好ましい。ここで、水循環手段13の手前とは、水循環手段13よりも上流側であり、回収水は、水循環手段13、窒素ガス注入部11、窒素ガス混合部12(順不同)を通ってタンク部15に供給されることになる。
【0043】
なお、補給水の合流点とタンク部15との間には逆止弁は設置せず、補給水量よりも通水量を多くすることが好ましい。このように逆止弁を設置しないことで、前記水循環手段13がトラブルにより停止した場合には、補給水が直接タンク部15に流入できるようにしておくとよい。このように設計することで、タンク部15が低水位となり、水の供給が停止してしまうことを防止することができる。
【0044】
補給水の流量が通水流量よりも大きくなることがあり得る場合は、図7に示されるように補給水の合流点とタンク部15の間にクッション槽25を設け、未処理の補給水がタンク部15に流入するのを防止することが、ボイラに給水されるタンク部15に貯留された水の溶存酸素濃度を低く保つために有効である。
【0045】
補給水の合流点とタンク部15の間に設けるクッション槽25としては、補給水合流点とタンク部15の間の容量を増すものならどのような構造のものでも良く、タンク状の容器などを用いるのが一般的であるが、この箇所の配管径を大きくして容量を増しても良い。
【0046】
クッション槽25の容量は、循環水流量と補給水流量および補給水が流入する間隔などから、補給水がタンク部15に未処理のまま流入しないように、あるいは流入する量ができるだけ少なくなるように適宜算出される。
【0047】
以上説明した本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1を用いて水中の脱酸素を行う場合、窒素ガス混合部12にて溶存酸素と窒素とが置換された脱酸素水は、そのまま気液分離せずにタンク部15または既設のタンクへ戻すことが好ましい。即ち、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1には、前記窒素ガス混合部12にて混合された水と窒素とを気液分離する気液分離手段を備えないことが好ましい。脱酸素水を、そのまま気液分離せずにタンク部15へ戻すことで、このタンク部15内において、更に溶存酸素と窒素とを置換することが可能である。この場合、浮上した気体がタンク部15または既設のタンク内の気相部に連続的に供給されることで、タンク部15につき、大気と遮断する構造を採らなくとも外気からの酸素の混入・溶解を防止することができる。
【0048】
<窒素置換式脱酸素方法>
本発明に係る窒素置換式脱酸素方法は、タンク部内に貯留された水を、循環手段を用いて該タンク部外へ循環させ、水中の溶存酸素を窒素と置換することにより、水中の溶存酸素を低減する脱酸素方法であって、窒素ガス注入工程と、窒素ガス混合工程と、流量調整工程と、を少なくとも行う方法である。以下、各工程について詳細に説明する。
【0049】
(1)窒素ガス注入工程
窒素ガス注入工程は、水に窒素ガスを注入する工程である。窒素ガス注入工程で行う窒素ガスの注入方法は特に限定されず、窒素置換式脱酸素技術分野において通常用いられるあらゆる方法を自由に選択して用いることができる。例えば、水の循環ラインに圧入することにより窒素ガスを注入する方法、エゼクターなどを用いて吸入させることにより窒素ガスを注入する方法などを挙げることができる。
【0050】
なお、圧入により窒素ガスを注入する場合には、窒素ガスの気泡を微細にすることが好ましい。水中で、窒素ガスを素早く均一化させることが可能となるからである。また、窒素ガス注入部の配管径を循環水の流速が10〜20m/sとなるように部分的に細くすることで窒素ガスの気泡を微細化する方法も有効である。なお、循環水の流速が20m/sを超えると圧力損失が大きくなりすぎ、窒素ガスが注入できなくなったり、循環ポンプの電気代が増して不経済となるため、20m/s以下となるように設定するのが望ましい。
【0051】
窒素ガス注入工程において注入する窒素ガスの注入量は、水中の溶存酸素濃度や目的に応じて自由に設定することができる。本発明においては、水中の溶存酸素をより低下させるためには、通水量1mあたり0.1Nm以上で窒素ガスを注入することが好ましい。
【0052】
(2)窒素ガス混合工程
窒素ガス混合工程は、水と窒素ガスの混合を行う工程である。水と窒素ガスの混合を行いながら、水中の溶存酸素の窒素との置換が行われる。
【0053】
窒素ガス混合工程では、水と窒素ガスの混合を行うことができれば、その具体的な方法は特に限定されず、窒素置換式脱酸素技術分野において通常用いられるあらゆる混合方法を自由に選択して用いることができる。例えば、スタティックミキサーと呼ばれる稼動部を持たない混合器を使用して混合する方法、通水配管をそのまま使用して混合を行う方法などを挙げることができる。
【0054】
本発明では特に、窒素ガス注入工程にて窒素が注入された水を、蛇腹状の通水配管に通水することで、水と窒素ガスとを混合することが好ましい。この場合、蛇腹状の通水配管に通水する水の流速は、特に限定されず、本発明の目的損なわない限り、自由に設定することができる。本発明では特に、蛇腹の内径に対して水流を0.3〜5m/sに調整するのが好ましく、更に好ましくは0.5〜3m/sに調整するのがより好ましい。0.3m/s以上とすることにより溶存酸素と窒素との置換が効率的となる。また、5m/s以下とすることにより蛇腹管における圧力損失を抑制することができるとともに、振動も小さくすることができる。また、このときの窒素ガス混合部12はその一部のみが蛇腹管でその他の部分は通常の通水配管であっても良い。
【0055】
水の流速は、後述する流量調整工程で調整することも可能であるが、処理水量に応じて蛇腹状の管の径を選定することで調整することも可能である。
【0056】
(3)流量調整工程
流量調整工程は、循環手段の出口の圧力が0.1〜0.6MPaとなるように、水の流量を調整する工程である。
【0057】
本発明に係る窒素置換式脱酸素方法において、流量調整工程は、窒素ガス注入工程を経た後、前記水が前記タンク部に戻される前に行うことを特徴とする。前記窒素ガス注入工程を行った後に流量調整工程を行うことで、処理水中の溶存酸素をより低下させることが可能となるからである。例えば、前記窒素ガス注入工程を行った直後に流量調整工程を行う方法、前記窒素ガス注入工程を行った後に流量調整工程を行う方法の いずれの方法を用いることも可能である。
【0058】
流量調整工程では、圧力に加えて水の流速も調整することが可能である。調整する流速は、目的に応じて適宜決定することができるが、例えば、窒素ガス混合工程において、蛇腹状の通水配管に通水する方法により混合を行う場合には、蛇腹の内径に対して0.3〜5m/sに調整するのが好ましく、更に好ましくは0.5〜3m/sに調整するのがより好ましい。
【0059】
以上説明した本発明に係る窒素置換式脱酸素方法では、窒素ガス混合工程にて溶存酸素と窒素とが置換された脱酸素水は、そのまま気液分離することなく、タンク部15または既設のタンクへ戻すことが好ましい。脱酸素水を、そのまま気液分離せずにタンク部15へ戻すことで、このタンク部15において、更に溶存酸素と窒素とを置換することが可能である。この場合、浮上した気体がタンク部15または既設のタンク内の気相部に連続的に供給されることで、タンク部15を大気と遮断する構造を採らなくとも外気からの酸素の混入・溶解を防止することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するとともに、本発明の効果を検証する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0061】
<実験1>
実験1では、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1において、流量調整手段14の好適な設置箇所の検証を行った。
【0062】
(1)実施例1
実施例1では、図1に示すように、容量1tのタンク部15に、2つの窒素ガス混合部12同士の間にバルブ(流量調整手段14)を設置した脱酸素装置を設置し、脱酸素水を平均2m/hでボイラに給水しながら運転した。循環ポンプ出口が0.1〜0.6MPaで、循環水量が補給水の最大流量以上となるようにポンプを選定し、循環ポンプ出口が0.1MPaとなるようにバルブ(流量調整手段14)で調整を行った。補給水としては、タンクレベルによりON/OFF制御して循環ポンプ手前に軟水を補給した。補給水の溶存酸素濃度は9.8mg/Lで一定となるように調整した。軟水の補給時の流量は2.5m/hに設定した。蒸気ドレン水のタンクへの回収は行わず、窒素ガス混合部12には長さ0.5mのスタティックミキサーを各々設置した。循環水量は3m/h、窒素ガス注入量は0.6Nm/h、窒素ガスの純度は99%のものを使用して運転した。
【0063】
(2)実施例2
図2に示すように、窒素ガス注入部11の直後に流量調整手段14を設置して、あとは実施例1と同様の条件で運転した。
【0064】
(3)実施例3
図3に示すように、循環ラインの最後段のタンク部15に戻る直前に流量調整手段14を設置して、あとは実施例1と同様の条件で運転した。
【0065】
(4)比較例1
図4に示すように、窒素ガス注入部11の前に流量調整手段14を設置して、あとは実施例1と同様の条件で運転した。
【0066】
(5)比較例2
循環ポンプの出口が0.05MPaで3m/hの通水が可能なポンプを用いること以外は実施例1と同様に運転した。
【0067】
実施例1〜3および比較例1〜2の窒素置換式脱酸素装置1を用いた場合のボイラに給水する脱酸素水の溶存酸素濃度の推移を、それぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に示す通り、窒素ガス注入部11の前に流量調整手段14を設置した比較例1に比べ、窒素ガス注入部11とタンク部15との間に流量調整手段14を設置した実施例1〜3の方が、脱酸素効果が向上することが分かった。
【0070】
また、水循環手段の出口の圧力が0.1MPa未満の比較例2と0.1MPaの実施例1〜3を比較すると、実施例1〜3の脱酸素効果の方が高いことが確認できた。なお、窒素注入を効率的に行うためには、水循環手段の出口の圧力を0.6MPa以下に調整することが好ましいと考えられる。以上のことから、一定以上の脱酸素効果を効率的に得るためには、水循環手段の出口の圧力を0.1MPa〜0.6MPaに調整可能な流量調整手段14を用いることが必要であることが分かった。
【0071】
<実験2>
実験2では、窒素ガス混合部12として蛇腹状の通水配管を用いた場合の脱酸素効果を検証した。
【0072】
図1に示すように、容量1mのタンクに、2つの窒素ガス混合部12同士の間にバルブ(流量調整手段14)を設置した脱酸素装置を設置し、脱酸素水を平均2m/hでボイラに給水しながら運転した。循環ポンプ出口が0.1〜0.6MPaで、循環水量が補給水の最大流量以上となるようにポンプを選定し、循環ポンプ出口が0.2MPaとなるようにバルブ(流量調整手段14)で調整を行った。補給水としては、タンクレベルによりON/OFF制御して循環ポンプ手前に軟水を補給した。補給水の溶存酸素濃度は9.8mg/Lで一定となるように調整した。軟水の補給時の流量は2.5m/hに設定した。蒸気ドレン水のタンクへの回収は行わず、窒素ガス混合部12の種類、長さ、循環水量、窒素ガス注入量は、下記表2に示す条件で運転した。なお、窒素ガスの純度は99%のものを使用した。ボイラに給水する脱酸素水の溶存酸素濃度の推移を、それぞれ測定した。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に示すように、窒素ガス混合部12に蛇腹状の通水配管を用いた場合、より良好な脱酸素効果が得られることが確認できた。
【0075】
<実験3>
実験3では、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置1において、補給水の好適な注入箇所の検証を行った。
【0076】
(1)実施例1
前記実験1の実施例と同様の条件で運転を行った。
【0077】
(2)実施例8
補給水をタンクに直接補給すること以外は前記実験1の実施例1と同様に運転した。
【0078】
実施例1および8の窒素置換式脱酸素装置1を用いた場合のボイラに給水する脱酸素水の溶存酸素濃度の推移を、それぞれ測定した。結果を表3に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
表3に示す通り、水循環手段の手前で補給水を注入した実施例1とタンクに直接補給した実施例8を比較すると、水循環手段の手前で補給水を注入した実施例1の脱酸素効果の方が高いことが確認できた。
【0081】
<実験4>
実験4では、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置において、補給水の合流点とタンク部の間へクッション槽を設置することによる有効性の検証を行った。
【0082】
(1)実施例9
補給水量を4m/hとすること以外は前記実験1の実施例1と同様に運転した。
(2)実施例10
補給水合流点とタンク部15の間であって、補給水合流点よりも上流側に容量200Lのクッション槽25を設置すること以外は実施例9と同様に運転した。実施例9、10の場合のボイラに給水する脱酸素水の溶存酸素濃度の推移をそれぞれ測定した結果を表に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
<実験5>
実験5では、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置において、窒素ガス混合部12として25Aの配管を用いた場合の脱酸素効果を検証した。なお、25Aと後述する10Aは配管の呼び径であり、太さ(直径)等を表す(JIS G3452参照)。例えば、25Aは外径34.0mm、厚さ3.2mm、10Aは外径17.3mm、厚さ2.3mmである。
【0085】
(1)実施例11〜18
図5に示すように、容量2mのタンク部15に、2つの窒素ガス混合部12間にバルブ(流量調整手段14)を設置した脱酸素装置を設置し、脱酸素水を平均3.5m/hでボイラに給水しながら運転した。ここで、窒素ガス混合部12はそれぞれ25Aの配管とし、循環ポンプ出口が0.1〜0.6MPaで循環水量が補給軟水の最大流量以上となるようにポンプを選定した。補給水としては野木町水軟化水を、タンクレベルによりON/OFF制御して、循環ポンプ手前に補給した。なお、「野木町水軟化水」は、栃木県下都賀郡野木町の水道水を軟化処理したものである。
【0086】
補給水の溶存酸素濃度は9.8mg/Lで一定になるように調整した。軟化水の補給時の流量は4m/hに設定した。ボイラから発生した蒸気のドレン水のタンクへの回収は行わずに運転した。循環水量は5m/hとし、供給する窒素ガスの純度は99.5%のものを使用した。ここで、窒素ガス混合部12間に設置したバルブによる脱酸素効果を示すため、循環ポンプ出口に設置したバルブ(流量調整手段14)と窒素ガス混合部に設置したバルブ(流量調整手段14)を調整して、循環ポンプ出口圧力に相当する循環ポンプ出口バルブ2次側の圧力を下記表に示す値に調整し、窒素ガスの注入量を下記表に示す値になるように設定して運転した。ボイラに給水する脱酸素水の溶存酸素濃度は、下記表に示す値となった。
【0087】
(2)比較例3,4
窒素ガス混合部12間にバルブを設置せず、循環ポンプ出口の窒素ガス注入部11以降は全て25Aの配管とし、循環ポンプ出口バルブのみで循環水量を3m/hに調整した他は上記実施例と同様の条件にて運転したところ、ボイラに給水する脱酸素水の溶存酸素濃度は下記表に示す値となった。
(3)比較例5
窒素ガス混合部12間に設置したバルブで、循環ポンプ出口バルブ2次側の圧力(=循環ポンプ出口圧力)を0.04MPaに調整した他は上記実施例と同様の条件にて運転したところ、ボイラに給水する脱酸素水の溶存酸素濃度は下記表に示す値となった。
【0088】
【表5】

【0089】
<実験6>
実験6では、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置において、窒素ガス注入部11における循環水の流速が10〜20m/sに上がるように配管径を部分的に細くすることの有効性を検証した。
【0090】
(1)実施例15
実験5の実施例15と同様の条件で運転を行った。
(2)実施例19
窒素ガス注入部11の配管を、長さ80mmに渡って配管径を25Aから10Aに変更し、窒素ガス注入部11における循環水の流速を2.3m/sから10.9m/sにした以外は実験5の実施例15と同様に運転した。
【0091】
実施例15,19の場合のボイラに給水する脱酸素水の溶存酸素濃度の推移をそれぞれ測定した結果を表6に示す。
【0092】
【表6】

【0093】
<実験7>
実験7では、本発明に係る窒素置換式脱酸素装置において、流量調整手段14を複数設置した場合の有効性の検証を行った。
【0094】
(1)実施例19
実験6の実施例と同様の条件で運転を行った。
(2)実施例20
図6に示すように、窒素ガス混合部12に、流量調整手段として、窒素ガス混合部のバルブの後段にスプリング内蔵チェックバルブ24を設置した他は、実験6の実施例19と同様に運転した。
【0095】
実施例19,20の場合のボイラに給水する脱酸素水の溶存酸素濃度の推移をそれぞれ測定した結果を表に示す。
【0096】
【表7】

【符号の説明】
【0097】
1 窒素置換式脱酸素装置
11 窒素ガス注入部
12 窒素ガス混合部
13 水循環手段
14 流量調整手段
15 タンク部
24 スプリング内臓チェックバルブ
25 クッション槽




【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の溶存酸素を窒素と置換することにより、水中の溶存酸素を低減する脱酸素装置であって、
タンク部内に貯留された水を前記脱酸素装置内で循環させるための水循環手段と、
前記水に窒素ガスを注入する窒素ガス注入部と、
前記水と前記窒素ガスとを混合する窒素ガス混合部と、
該窒素ガス注入部と前記タンク部との間に配設され、通水する水の流量を調整する流量調整手段と、
を少なくとも備え、
該流量調整手段によって、前記水循環手段の出口の圧力が0.1〜0.6MPaとなるように調整される窒素置換式脱酸素装置。
【請求項2】
前記窒素ガス混合部にて混合された水と窒素とを気液分離する気液分離手段を備えないことを特徴とする請求項1記載の窒素置換式脱酸素装置。
【請求項3】
前記窒素ガス混合部として蛇腹状の通水配管を用いる請求項1または2に記載の窒素置換式脱酸素装置。
【請求項4】
前記水循環手段の手前で補給水が注入される請求項1から3のいずれか一項に記載の窒素置換式脱酸素装置。
【請求項5】
補給水の合流点と前記タンク部との間に、逆止弁を備えないことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の窒素置換式脱酸素装置。
【請求項6】
補給水の合流点と前記タンク部との間にクッション槽を備えること特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の窒素置換式脱酸素装置。
【請求項7】
前記窒素ガス注入部の配管径を循環水の流速が10〜20m/sとなるように部分的に細くすることで窒素ガスの気泡を微細化する請求項1から6のいずれか一項に記載の窒素置換式脱酸素装置。
【請求項8】
タンク部内に貯留された水を循環手段を用いて該タンク部外へ循環させ、水中の溶存酸素を窒素と置換することにより、水中の溶存酸素を低減する脱酸素方法であって、
前記水に窒素ガスを注入する窒素ガス注入工程と、
前記水と前記窒素ガスとを混合する窒素ガス混合工程と、
前記循環手段の出口の圧力が0.1〜0.6MPaとなるように、前記窒素ガス注入工程を経た後、前記水が前記タンク部に戻される前に循環する流量調整を行う流量調整工程と、
を少なくとも行う窒素置換式脱酸素方法。
【請求項9】
前記窒素ガス混合工程にて混合された水と窒素とを気液分離せずに前記タンク部に戻すことを特徴とする請求項8記載の窒素置換式脱酸素方法。
【請求項10】
前記窒素ガス混合工程では、前記窒素ガス注入工程にて窒素が注入された水を蛇腹状の通水配管に通水することで前記水と前記窒素ガスとを混合する請求項8または請求項9記載の窒素置換式脱酸素方法。
【請求項11】
補給水の合流点と前記タンク部との間にクッション槽を備えること特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の窒素置換式脱酸素方法。
【請求項12】
窒素ガスを注入する部分の配管径を循環水の流速が10〜20m/sとなるように部分的に細くすることで窒素ガスの気泡を微細化する請求項8から11のいずれか一項に記載の窒素置換式脱酸素方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−245472(P2011−245472A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238375(P2010−238375)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】