説明

窒素酸化物選択還元触媒及びその製造方法

【課題】ゼオライトに常磁性の鉄(III)イオンが高い濃度で担持されており、300℃以下の低温域から十分に高い窒素酸化物選択還元活性を発揮することが可能な窒素酸化物選択還元触媒、並びに、その窒素酸化物選択還元触媒を効率よく且つ確実に製造することが可能な窒素酸化物選択還元触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】酸素過剰雰囲気下において窒素酸化物を還元剤により還元する際に使用される窒素酸化物選択還元触媒であって、ゼオライトと、前記ゼオライトに担持された鉄とを備え、前記ゼオライトにイオン交換により常磁性の鉄(III)イオンとして担持された鉄の量が、担体の全量に対して金属換算で1.0質量%以上であることを特徴とする窒素酸化物選択還元触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物選択還元触媒並びにその製造方法に関し、より詳しくは、酸素過剰雰囲気下において窒素酸化物をアンモニアで還元する際に用いられる窒素酸化物選択還元触媒並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4価のケイ素イオン(Si4+)の一部を3価のアルミニウムイオン(Al3+)で置き換えたゼオライトは、不足した正電荷を他のカチオン(例えばナトリウムイオン(Na)、水素イオン(H)カルシウムイオン(Ca2+))で補うため、イオン交換能を示すという特徴を備えている。
【0003】
このようなゼオライトへの金属のイオン交換方法としては、金属塩水溶液を用いた液相イオン交換法が一般的に採用されている。そして、ゼオライトに対して、アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、タリウム(Tl)等の金属のイオン交換を行う場合には、このような液相イオン交換法を採用することによってゼオライトへの高いイオン交換効率が得られている。
【0004】
一方、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)や希土類金属等のような価数が大きい金属、金属イオンの水和半径が大きい金属あるいは酸化物アニオンを形成しやすい金属においては、液相イオン交換法を採用してもイオン交換効率が低いため固相イオン交換法や気相イオン交換法が好適に採用される。ここで、固相イオン交換法とは、ゼオライトに金属塩又は金属酸化物を混合又は担持し、還元雰囲気若しくは不活性雰囲気で熱処理することによって金属とゼオライトとの固相反応によりイオン交換を行う方法である。また、前記気相イオン交換法とは、金属塩化物や金属カルボニル錯体の蒸気を脱気処理したゼオライトに導入して吸着させることにより、イオン交換を行う方法である。そして、このようなイオン交換法を採用して金属が担持されたゼオライトは、窒素酸化物(NO:NO+NO)選択還元触媒として利用されている。そして、酸素過剰雰囲気下においてNOをNH等の還元剤により選択的に還元する際に用いられるNO選択還元触媒としては、Feをゼオライトに担持したFe/ゼオライト触媒が知られている。このようなNO選択還元触媒(Fe/ゼオライト触媒)は、300℃以下の低温域においても十分な活性を示すことから、ディーゼルエンジンを代表とする希薄燃焼方式の内燃機関から排出されるNOの浄化用触媒として期待されてきた。
【0005】
例えば、特公昭54−8351号公報(特許文献1)においては、ゼオライトと、ゼオライトにイオン交換して担持されたFeとを備えるNO選択還元触媒を用いた窒素酸化物還元方法が開示されており、このようなNO選択還元触媒の製造方法として、塩化鉄(II)水溶液にゼオライトを100℃で含浸した後、ろ過し、液相イオン交換によりFeを担持せしめる方法が記載されている。
【0006】
また、特開2003−305338号公報(特許文献2)においては、鉄置換型ゼオライトを含むNO選択還元触媒が開示されており、前記鉄置換型ゼオライトの製造方法として、硝酸鉄(III)水溶液にゼオライトを含浸し、蒸発乾固させてFeを担持せしめる方法が記載されている。
【0007】
また、特開2002−1067号公報(特許文献3)においては、ゼオライトと、ゼオライトにイオン交換して担持されたFeとを備えるNO選択還元触媒を用いたNO還元方法が開示されており、このようなNO選択還元触媒の製造方法として、2価若しくは3価の塩化鉄とゼオライトとを混合して300℃で熱処理する固相イオン交換を採用してFeを担持せしめる方法が記載されている。
【0008】
さらに、ゼオライトに鉄を担持せしめる方法としては、例えば、Feカルボニル錯体の蒸気をゼオライトに導入する気相イオン交換によりFeを担持せしめる方法が開示されている(Inorg.Chem.,18(1979)p558−564 「Adduct formation and further reactivity of iron carbonyl complexes introduced into a zeolite matrix」(非特許文献1)参照)。
【0009】
また、NO選択還元触媒のNO選択還元活性に関し、様々な製造方法を採用して得られた種々のNO選択還元触媒をそれぞれ用いてNH(還元剤)によりNOxを還元させてその活性の調査を行った結果が報告されている(Applied Catalysis B:Environmental,55(2005)p149−155,「Selective catalytic reduction of nitric oxide with ammonia on Fe−ZSM‐5 catalysts prepared by different methods」(非特許文献2)参照)。そして、このような報告においては、塩化鉄(III)(FeCl)を昇華させて、その蒸気をゼオライトに導入する気相イオン交換による調製方法を採用してFeを担持せしめたゼオライトを備えるNO選択還元触媒が最も高活性であった旨が記載されている。
【特許文献1】特公昭54−8351号公報
【特許文献2】特開2003−305338号公報
【特許文献3】特開2002−1067号公報
【非特許文献1】Inorg.Chem.,18(1979)p558−564 「Adduct formation and further reactivity of iron carbonyl complexes introduced into a zeolite matrix」
【非特許文献2】Applied Catalysis B:Environmental,55(2005)p149−155,「Selective catalytic reduction of nitric oxide with ammonia on Fe−ZSM‐5 catalysts prepared by different methods」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載のような液相イオン交換法を採用して得られたNO選択還元触媒や特許文献2に記載のようなFe塩水溶液にゼオライトを含浸して蒸発乾固する方法を採用して得られたNO選択還元触媒においては、十分なNO選択還元活性が得られなかった。また、特許文献3に記載のような固相イオン交換法を採用して得られたNO選択還元触媒や前述の気相イオン交換法(非特許文献1)を採用して得られたNO選択還元触媒においては、特許文献1〜2に記載のようなNO選択還元触媒と比較すると活性は高くなるものの、やはり十分な活性が得られなかった。このようなNO選択還元触媒においては、その活性点がゼオライトの持つイオン交換サイトでイオン交換されたFe種(常磁性Fe3+イオン)であるため、このような常磁性Fe3+イオンの担持量を増やすことによって低温から高いNOx浄化率を得ることができることとなるが、上述の従来技術においては、ゼオライトに十分な量の常磁性Fe3+イオンが担持された窒素酸化物選択還元触媒が得られていなかった。
【0011】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ゼオライトに常磁性の鉄(III)イオンが高い濃度で担持されており、300℃以下の低温域から十分に高い窒素酸化物選択還元活性を発揮することが可能な窒素酸化物選択還元触媒、並びに、その窒素酸化物選択還元触媒を効率よく且つ確実に製造することが可能な窒素酸化物選択還元触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ゼオライトと前記ゼオライトに担持された鉄とを備える触媒前駆体を高温で熱処理することによって、常磁性の鉄(III)イオンをゼオライトに高い濃度で担持することが可能となり、これによって得られた窒素酸化物選択還元触媒が300℃以下の低温域から十分に高い窒素酸化物選択還元活性を発揮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の窒素酸化物選択還元触媒は、酸素過剰雰囲気下において窒素酸化物を還元剤により還元する際に使用される窒素酸化物選択還元触媒であって、ゼオライトと、前記ゼオライトに担持された鉄とを備え、前記ゼオライトにイオン交換により常磁性の鉄(III)イオンとして担持された鉄の量が、担体の全量に対して金属換算で1.0質量%以上であることを特徴とするものである。
【0014】
ここで、本発明にかかる常磁性の鉄(III)イオンとして担持された鉄の量の測定方法について説明する。すなわち、本発明においては、常磁性の鉄(III)イオン(常磁性Fe3+イオン)として担持された鉄(Fe)の量を測定するために、メスバウアー分析を採用する。このようなメスバウアー分析は様々なFeの状態及びその量を調べることができる分析手法である。このようなメスバウアー分析によって常磁性Fe3+イオンの量の測定が可能となる。そして、このような常磁性の鉄(III)イオンとして担持された鉄の量の算出方法としては、メスバウアー分析により測定されたゼオライトに担持されたFeのメスバウアースペクトルの全面積と、ゼオライトに常磁性Fe3+イオンとして担持されたFeのメスバウアースペクトルの面積との相対比を求め、求められた相対比にゼオライトに担持されているFeの全担持量を掛け合わせる方法が採用される。なお、本発明において、常磁性Fe3+イオンのスペクトル解析に用いるパラメーターは、異性体シフト;+0.39mm/s、四極分裂;0.55mm/s、内部磁場;0kOeとする。また、ゼオライトに担持されているFeの全担持量は、誘導結合プラズマ−原子発光分析(ICP−AES)により定量することができる。
【0015】
また、本発明の窒素酸化物選択還元触媒の製造方法は、ゼオライトと、前記ゼオライトに担持された鉄とを備え、前記ゼオライトにイオン交換により常磁性の鉄(III)イオンとして担持された鉄の量が、担体の全量に対して金属換算で1.0質量%以上である窒素酸化物選択還元触媒の製造方法であって、
還元雰囲気又は不活性雰囲気下において、ゼオライトに鉄を担持させた触媒前駆体を400℃〜900℃の範囲の温度条件で熱処理し、窒素酸化物選択還元触媒を得ることを特徴とする方法である。
【0016】
上記本発明においては、二酸化窒素分子を飽和吸着させた触媒の触媒床を温度50℃〜600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して脱離する窒素酸化物分子の量を測定する二酸化窒素昇温脱離試験において、270℃〜600℃の温度範囲において脱離した窒素酸化物分子の全量が75μmol/g以上となるものであることが好ましい。
【0017】
上記本発明においては、前記ゼオライトがMFI型ゼオライト、β型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フェリエライト型ゼオライト、L型ゼオライト及びホージャサイト型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種のゼオライトを含有するものであることが好ましい。
【0018】
なお、本発明の窒素酸化物選択還元触媒及びその製造方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、ゼオライトに担持された鉄には、上述のような高活性Fe種(常磁性Fe3+イオン)以外に、低温域では活性を示さない結晶性のα−Fe(ヘマタイト)等の低活性Fe種が存在する。そして、このような低活性Fe種はゼオライト細孔内にも存在するため、場合によっては細孔を塞いで反応ガスが上記高活性Fe種に接触するのを阻害するという問題を引き起こす。しかしながら、本発明の窒素酸化物選択還元触媒の製造方法においては、Feが担持されたゼオライトを還元雰囲気下又は不活性雰囲気下において高温で熱処理するため、低活性Fe種による細孔の閉塞を十分に防止することができるとともに、低活性Fe種から高活性Fe種を生成することが可能となる。すなわち、前記低活性Fe種は酸化雰囲気下においては3価で存在するが、高温の還元雰囲気下又は不活性雰囲気下では還元される。このようにして還元された低活性Fe種は、ゼオライトとの結合性が弱くなってモビリティーが向上するためゼオライト細孔内を容易に拡散することから、細孔の閉塞を十分に防止できるとともに、低活性Fe種がゼオライトのイオン交換サイトに達して高活性Fe種が生成される。また、このようにして得ることが可能な本発明の窒素酸化物選択還元触媒においては、ゼオライトに高活性Fe種が高い濃度で担持されていることから、NOと高活性Fe種との接触性が向上し、これによってNO浄化活性が向上するものと推察される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ゼオライトに常磁性の鉄(III)イオンが高い濃度で担持されており、300℃以下の低温域から十分に高い窒素酸化物選択還元活性を発揮することが可能な窒素酸化物選択還元触媒、並びに、その窒素酸化物選択還元触媒を効率よく且つ確実に製造することが可能な窒素酸化物選択還元触媒の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
先ず、本発明の窒素酸化物選択還元触媒について説明する。すなわち、本発明の窒素酸化物選択還元触媒は、酸素過剰雰囲気下において窒素酸化物を還元剤により還元する際に使用される窒素酸化物選択還元触媒であって、ゼオライトと、前記ゼオライトに担持された鉄とを備え、前記ゼオライトにイオン交換により常磁性の鉄(III)イオンとして担持された鉄の量が、担体の全量に対して金属換算で1.0質量%以上であることを特徴とするものである。
【0022】
このようなゼオライトとしては特に制限されず、結晶性のアルミナケイ酸塩であればよく、天然ゼオライトあっても、合成ゼオライトあってもあるいは人工ゼオライトであってもよい。このようなゼオライトとしては、例えば、ホウフッ石群、ホウソーダ石群、リュウフッ石群、モルデンフッ石群等の各種のゼオライト族に属する鉱物系のゼオライト;β型、A型、X型、Y型、L型、MFI型等のゼオライト;ホージャサイト型ゼオライト;モルデナイト型ゼオライト;フェリエライト型ゼオライト;フィリップサイト型ゼオライト;水和ソーダライト型ゼオライトを挙げることができる。このようなゼオライトは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
このようなゼオライトとしては、耐熱性に優れているという観点から、MFI型ゼオライト、β型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フェリエライト型ゼオライト、L型ゼオライト及びホージャサイト型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種のゼオライトを含有するものが好ましく、MFI型ゼオライト、β型ゼオライト、フェリエライト型ゼオライトがより好ましい。
【0024】
また、このようなゼオライトとしては、Si/Alのモル比が20〜100であることが好ましく、30〜60であることがより好ましい。このようなモル比が前記下限未満では、耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、イオン交換サイトが減少し、活性が低下する傾向にある。
【0025】
本発明の窒素酸化物選択還元触媒は、ゼオライトと、前記ゼオライトに担持された鉄とを備え、前記ゼオライトにイオン交換により常磁性Fe3+イオンとして担持されたFeの量が、担体の全量に対して金属換算で1.0質量%以上のものである。なお、ここにいう担体とは、前記鉄が担持されたゼオライトをいう。
【0026】
このような常磁性の鉄(III)イオン(常磁性Fe3+イオン)は、ゼオライトのイオン交換サイトにおいてイオン交換されてゼオライトに担持された高活性なFe種である。そして、このような常磁性Fe3+イオンは、窒素酸化物選択還元触媒を用いてNOを還元する際の活性点となる。そのため、ゼオライトに担持された鉄の中でも常磁性Fe3+イオンとして担持された鉄の量が多いほど、窒素酸化物選択還元活性が向上することとなる。
【0027】
このようなゼオライトに常磁性の鉄(III)イオンとして担持されている鉄の量は、前記担体の全量に対して金属換算で1.0質量%以上である。このような常磁性Fe3+イオンとして担持されているFeの量の前記担体の全量に対する質量比率が1.0質量%未満であると、得られる窒素酸化物選択還元触媒において活性点が減少し、十分な活性が得られない。
【0028】
このような窒素酸化物選択還元触媒においてゼオライトに担持されたFeの全担持量は、前記担体に対して金属換算で1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがより好ましい。このようなFeの担持量が前記下限未満では、Feの担持量が少なすぎてゼオライトにイオン交換により担持される常磁性Fe3+イオンの量が十分なものとならない傾向にあり、他方、前記上限を超えると全Fe中のα−Fe(ヘマタイト)の割合が増加し、窒素酸化物を還元する際にNHの酸化反応が起こるため、NO還元の選択性が低下する傾向にある。
【0029】
また、このような窒素酸化物選択還元触媒としては、NOと常磁性Fe3+イオンとの接触性がより向上するという観点から、二酸化窒素分子を飽和吸着させた触媒の触媒床を温度50℃〜600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して脱離する窒素酸化物分子の量を測定する二酸化窒素昇温脱離試験において、270℃〜600℃の温度範囲において脱離した窒素酸化物分子の全量が75μmol/g以上となるものが好ましい。
【0030】
さらに、本発明の窒素酸化物選択還元触媒の形態としては特に制限されず、常磁性Fe3+イオンが前記質量比率で担体に担持された粉末状の触媒をそのまま用いてもよく、粉末状の触媒を定法によりペレット成形してペレット状の触媒としてもよく、更には粉末状の触媒を含有するスラリーを他の基材に被覆成形して用いてもよい。
【0031】
また、このような窒素酸化物選択還元触媒は、酸素過剰雰囲気下において窒素酸化物を還元剤により還元する際に使用される。このような還元剤としては、アンモニア(NH)及びNH源としての尿素等が挙げられる。このような還元剤を用い、酸素過剰雰囲気下において排ガスと本発明の窒素酸化物選択還元触媒とを接触せしめることによって、前記ゼオライトに担持された常磁性Fe3+イオン上で排ガス中のNOを選択的にNに還元できる。
【0032】
次に、本発明の窒素酸化物選択還元触媒を製造する方法として好適に採用することが可能な本発明の窒素酸化物選択還元触媒の製造方法について説明する。すなわち、本発明の窒素酸化物選択還元触媒の製造方法は、ゼオライトと、前記ゼオライトに担持された鉄とを備え、前記ゼオライトにイオン交換により常磁性の鉄(III)イオンとして担持された鉄の量が、担体の全量に対して金属換算で1.0質量%以上である窒素酸化物選択還元触媒の製造方法であって、
還元雰囲気又は不活性雰囲気下において、ゼオライトに鉄を担持させた触媒前駆体を400℃〜900℃の範囲の温度条件で熱処理し、窒素酸化物選択還元触媒を得ることを特徴とする方法である。
【0033】
このような触媒前駆体を製造する際に用いられるゼオライトは、上述の本発明の窒素酸化物選択還元触媒において説明したゼオライトと同様のものである。
【0034】
また、このような触媒前駆体の製造方法としては、ゼオライトにFeを担持せしめることが可能な方法であればよく特に制限されず、例えば、Feの塩(Fe(NO9HO等)が溶解した水溶液にゼオライトを含浸せしめた後に蒸発乾固することによりゼオライトにFeを担持せしめる方法や、FeClを昇華させてゼオライトに流通させる気相イオン交換法等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0035】
また、このような触媒前駆体を製造する際に用いられるFeの塩やFeClの量としては、用いるゼオライトの種類や目的とする触媒の設計等に応じて適宜その量を調整するものではあるが、ゼオライト中のAlとFeとのモル比(Fe/Al)が0.02〜10となる量であることが好ましく、0.1〜2となる量であることがより好ましい。このようなモル比が前記下限未満では、担持されるFeの量が少なくなって最終的に得られる触媒中の常磁性Fe3+イオンの量が十分なものとならない傾向にあり、他方、前記上限を超えると常磁性Fe3+イオン以外のα−Fe(ヘマタイト)などが増加し、窒素酸化物を還元する際にNH酸化等の副反応が起きてNO還元の選択性が低下する傾向にある。
【0036】
また、本発明においては、上述のように還元雰囲気又は不活性雰囲気下において前記触媒前駆体に熱処理を施す。このように還元雰囲気又は不活性雰囲気下において熱処理を施す理由を以下に説明する。すなわち、高温の還元雰囲気又は不活性雰囲気下においては、ゼオライトに担持されたα−Fe(ヘマタイト)等の低活性Fe種は還元されてゼオライトとの結合性が弱くなるため、還元された低活性Fe種は移動性が向上してゼオライトの細孔内を拡散し易くなる。これにより低活性Fe種による細孔の閉塞が防止され、更に細孔内を拡散した低活性Fe種がゼオライトの細孔内のイオン交換サイトに達すると、イオン交換により高活性Fe種(常磁性Fe3+イオン)として担持される。そのため、還元雰囲気又は不活性雰囲気下において熱処理することで、ゼオライトに担持される常磁性Fe3+イオンとNOxとの接触性を向上させることができ、更に前記常磁性Fe3+イオンの量を増加させることが可能となる。なお、ここにいう還元雰囲気又は不活性雰囲気としては、例えばH(5容量%)、N(95容量%)からなるガスの雰囲気、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気が挙げられる。
【0037】
また、本発明においては、前記触媒前駆体を400℃〜900℃(より好ましくは650℃〜850℃)の範囲の温度条件下で熱処理する。このような熱処理の温度条件が400℃未満では、熱処理によるFeの還元性が低下して結晶性のα−Fe(ヘマタイト)等の低活性Fe種をゼオライト細孔内に十分に拡散することができないため常磁性Fe3+イオンとして担持されたFeの量を十分に得られない。他方、前記熱処理の温度条件が900℃を超えると、ゼオライトに脱アルミニウム現象や構造破壊等が起き、得られる触媒に十分な活性が得られない。
【0038】
また、このような熱処理の時間としては特に制限されないが、1時間以上であることが好ましい。このような熱処理の時間が前記下限未満では、結晶性のα−Fe(ヘマタイト)等の低活性Fe種をゼオライト細孔内に拡散させてイオン交換により高活性Fe種(常磁性Fe3+イオン)を生成することが困難になり、ゼオライトに常磁性Fe3+イオンとして担持されるFeの量が低下する傾向にある。
【0039】
そして、このような熱処理を施した後においては、大気中において300〜700℃程度の温度条件で1〜5時間程度加熱して焼成することが好ましい。このようにして加熱焼成することで、還元されたFeを再酸化し、触媒が作動し易くなる傾向にある。
【0040】
このようにして、上述の本発明の窒素酸化物選択還元触媒を得ることができ、二酸化窒素分子を飽和吸着させた触媒の触媒床を温度50℃〜600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して脱離する窒素酸化物分子の量を測定する二酸化窒素昇温脱離試験において、270℃〜600℃の温度範囲において脱離した窒素酸化物分子の全量が75μmol/g以上となる窒素酸化物選択還元触媒を製造することも可能となる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
ゼオライトとしてSi/Al比が27であるH型ZSM‐5ゼオライト(東ソー株式会社製の商品名「HSZ830」)を用いて、窒素酸化物選択還元触媒を製造した。すなわち、先ず、Fe/Al比が1となるようにしてFe(NO9HOが溶解した水溶液をゼオライトに含浸せしめ、これを蒸発乾固し、100℃の温度条件で12時間乾燥させた後、大気中にて650℃の温度条件で5時間焼成して触媒前駆体を得た。なお、得られた触媒前駆体は約1000kgf/cmの圧力で圧粉成型した後、破砕、整粒して0.5mm〜1.0mmのペレット状のものとした。
【0043】
次に、得られたペレット状の触媒前駆体を、H(5容量%)、N(95容量%)からなるガスを流通させた還元雰囲気下において650℃の温度条件(A)で5時間熱処理した後、大気中において650℃の温度条件で5時間加熱焼成し、本発明の窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0044】
(実施例2)
前記温度条件(A)を650℃から750℃に変更した以外は実施例1と同様にして本発明の窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0045】
(実施例3)
前記温度条件(A)を650℃から850℃に変更した以外は実施例1と同様にして本発明の窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0046】
(実施例4)
前記H(5容量%)、N(95容量%)からなるガスをN(100容量%)からなるガスに代え、前記温度条件(A)を650℃から750℃に変更した以外は実施例1と同様にして本発明の窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0047】
(実施例5)
触媒前駆体を得る際に前記Fe/Al比が0.5となるようにして前記水溶液をゼオライトに含浸せしめた以外は実施例1と同様にして本発明の窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0048】
(実施例6)
ゼオライトとしてSi/Al比が27であるH型ZSM‐5ゼオライト(東ソー株式会社製の商品名「HSZ830」)を用いて、窒素酸化物選択還元触媒を製造した。すなわち、先ず、前記ゼオライトに対して、N(100容量%)からなるガスを流通させた不活性雰囲気下において、650℃の温度条件で7時間脱気処理を行った。次に、Nガス雰囲気下においてFe/Al比が1になるようにして、上述のようにして脱気処理がなされたゼオライトとFeClを物理混合し、更に、N(100容量%)のガスを流通させた不活性雰囲気下において、650℃の温度条件で2.5時間保持し、ゼオライトにFeを担持せしめた。
【0049】
次いで、このようにして得られたFeを担持せしめたゼオライトに対して、洗浄、ろ過を3回繰り返し、100℃で12時間乾燥させた後、大気中にて650℃で5時間焼成して触媒前駆体を得た。なお、得られた触媒前駆体は約1000kgf/cmの圧力で圧粉成型した後、破砕、整粒して0.5mm〜1.0mmのペレット状のものとした。
【0050】
次に、得られたペレット状の触媒前駆体を、H(5容量%)、N(95容量%)からなるガスを流通させた還元雰囲気下において、650℃の温度条件(B)で5時間熱処理した後、大気中において650℃の温度条件で5時間加熱焼成し、本発明の窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0051】
(比較例1)
温度条件(A)で熱処理する工程を施さなかった以外は実施例1と同様にして比較のための窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0052】
(比較例2)
前記温度条件(A)を650℃から350℃に変更した以外は実施例1と同様にして比較のための窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0053】
(比較例3)
前記温度条件(A)を650℃から950℃に変更した以外は実施例1と同様にして比較のための窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0054】
(比較例4)
(5容量%)、N(95容量%)からなるガスをO(10容量%)、N(90容量%)からなるガスに代え、前記温度条件(A)を650℃から750℃に変更した以外は実施例1と同様にして比較のための窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0055】
(比較例5)
温度条件(A)で熱処理する工程を施さなかった以外は実施例5と同様にして比較のための窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0056】
(比較例6)
温度条件(B)で熱処理する工程を施さなかった以外は実施例6と同様にして比較のための窒素酸化物選択還元触媒を得た。
【0057】
実施例1〜6及び比較例1〜6において採用されたFeの担持方法及び熱処理の条件、並びに、実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた窒素酸化物選択還元触媒のゼオライトに担持されたFeの担持量(担体に対する金属換算による質量比)を表1に示す。なお、このようなFeの担持量は、誘導結合プラズマ−原子発光分析(ICP−AES)により定量した。
【0058】
【表1】

【0059】
<実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた窒素酸化物選択還元触媒の特性の評価>
〈常磁性Fe3+イオンの測定〉
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた窒素酸化物選択還元触媒について、ゼオライトに常磁性Fe3+イオンとして担持されている鉄の量をメスバウアー分析により求めた。なお、このような常磁性Fe3+イオンとして担持されている鉄の量は、ゼオライトに担持されているFeのメスバウアースペクトルの全面積と、常磁性Fe3+イオンとして担持されているFeのメスバウアースペクトルの面積との相対比を求め、得られた相対比にゼオライトに担持されているFeの全担持量を掛け合わせることで求めた。また、常磁性Fe3+イオンのスペクトル解析に用いるパラメーターは、異性体シフト;+0.39mm/s、四極分裂;0.55mm/s,内部磁場;0kOeである。このような測定により得られた結果を表1及び図1に示す。なお、図1は、実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた窒素酸化物選択還元触媒のゼオライトに担持されたFeの担持量(担体に対する金属換算による質量比)と、ゼオライトに常磁性Fe3+イオンとして担持されているFeの量(担体に対する金属換算による質量比)との関係を示すグラフである。
【0060】
図1に示す結果からも明らかなように、Feの担持量が等しい場合には、本発明の窒素酸化物選択還元触媒(実施例1〜6)の方が、比較のための窒素酸化物選択還元触媒(比較例1〜6)よりも常磁性Fe3+イオンとして担持されるFeの量が高いことが確認された。
【0061】
〈NO昇温脱離試験〉
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた窒素酸化物選択還元触媒を用いて、NO昇温脱離試験を行った。すなわち、固定床流通型石英管に各窒素酸化物選択還元触媒をそれぞれ0.4g設置し、600℃でO(5容量%)/He(95容量%)のガスを供給して前処理を施した後、100℃の温度条件下においてNOを飽和吸着させ、He(100容量%)ガスの流通下で触媒床温度を50℃〜600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温しながら、脱離するNO分子を四重極型質量分析計(Q−MS)及び熱伝導度型検出器(TCD)で分析した。
【0062】
このような試験の結果を図2〜4に示す。なお、図2は、実施例1及び比較例1で得られた窒素酸化物選択還元触媒のNO昇温脱離スペクトルを示すグラフであり、図3は、実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた窒素酸化物選択還元触媒のゼオライトに担持されたFeの担持量(担体に対する金属換算による質量比)と、270℃〜600℃の温度範囲におけるNO(NO+NO)の脱離量との関係を示すグラフであり、図4は、実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた窒素酸化物選択還元触媒のゼオライトに常磁性Fe3+イオンとして担持されたFeの量(担体に対する金属換算による質量比)と、270℃〜600℃の温度範囲におけるNO(NO+NO)の脱離量との関係を示すグラフである。
【0063】
図2に示すグラフからも明らかなように、実施例1及び比較例1で得られた窒素酸化物選択還元触媒は、NO昇温脱離スペクトルにいずれも2つの脱離ピークを持っているが、270℃以上の高温側のNO昇温脱離ピークの強度に大きな差が見られることが確認された。このような高温側のNO昇温脱離ピークは、高活性Fe種に接触して吸着されていたNOの量に対応するものであり、本発明の窒素酸化物選択還元触媒(実施例1)の方が、比較のための窒素酸化物選択還元触媒(比較例1)よりも常磁性Fe3+イオンとして担持されている高活性Fe種から脱離したNO量が多いことが確認された。また、図3に示すグラフから、Feの担持量が等しい場合には、本発明の窒素酸化物選択還元触媒(実施例1〜6)の方が、比較のための窒素酸化物選択還元触媒(比較例1〜6)よりも高活性Fe種と接触して吸着したNO量が多いことが確認された。さらに図4に示すグラフから、本発明の窒素酸化物選択還元触媒(実施例1〜6)の方が、比較のための窒素酸化物選択還元触媒(比較例1〜6)よりも常磁性Fe3+イオン及びNO脱離量が共に多く、これにより高活性Fe種の量が多く且つ反応ガスと高活性Fe種との接触性が高いことが確認された。
【0064】
〈触媒活性試験〉
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた窒素酸化物選択還元触媒のNO浄化性能を評価した。すなわち、実施例1〜6及び比較例1〜6の触媒1gを常圧固定床流通型反応装置に設置し、NO(0.1容量%)、NH(0.1容量%)、O(8容量%)、CO(10容量%)、HO(8容量%)およびN(残部)からなるモデルガスを3.5L/分の速度で供給してNO浄化率を算出してNO浄化活性を評価した。
【0065】
また、このようなNO浄化率を算出するために、入りガス温度を250℃〜350℃まで50℃刻みで変化させ、各温度の定常状態における入りガス及び出ガス中のNO濃度を測定した。そして、NO浄化率は、入りガス中のNO濃度に対する出ガス中のNO濃度の割合を求めることにより算出した。得られた結果を表2及び図5〜7に示す。なお、図5は、入りガス温度250℃における実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた窒素酸化物選択還元触媒のNO浄化率を示すグラフであり、図6は、入りガス温度250℃における実施例5及び比較例5で得られた窒素酸化物選択還元触媒のNO浄化率を示すグラフであり、図7は、入りガス温度250℃における実施例6及び比較例6で得られた窒素酸化物選択還元触媒のNO浄化率を示すグラフである。
【0066】
【表2】

【0067】
表2及び図5〜7に示す結果からも明らかなように、実施例1と比較例1で得られた窒素酸化物選択還元触媒、実施例5と比較例5で得られた窒素酸化物選択還元触媒、実施例6と比較例6で得られた窒素酸化物選択還元触媒をそれぞれ比較すると、Fe担持量やFeの担持方法に関わらず、還元雰囲気において650℃の温度条件(A)で熱処理を施した本発明の窒素酸化物選択還元触媒の方が、NO浄化率が向上することが確認された。
【0068】
また、本発明の窒素酸化物選択還元触媒(実施例1〜6)においては、温度条件(A)が400℃〜900℃の範囲内であれば、より高い温度条件で熱処理して得られた触媒の方がより高いNO浄化活性が得られることが確認された。一方、400〜900℃の温度範囲以外の温度条件で熱処理して得られた比較のための窒素酸化物選択還元触媒(比較例2〜3)においては、十分なNO浄化活性が得られないことが確認された。
【0069】
また、N(100質量%)からなるガスを用いた不活性雰囲気下において熱処理を施した本発明の窒素酸化物選択還元触媒(実施例4)においては、NO浄化活性が十分に向上することが確認され、酸化雰囲気で熱処理を施した比較のための窒素酸化物選択還元触媒(比較例4)においては、NO浄化活性が十分に向上しないことが確認された。
【0070】
以上の結果から、本発明の窒素酸化物選択還元触媒の製造方法により得られる本発明の窒素酸化物選択還元触媒においては、ゼオライトに常磁性の鉄(III)イオンがより多く担持され、反応ガスと高活性Fe種との接触性が高く、しかも低温から高いNO浄化活性を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明によれば、ゼオライトに常磁性の鉄(III)イオンが高い濃度で担持されており、300℃以下の低温域から十分に高い窒素酸化物選択還元活性を発揮することが可能な窒素酸化物選択還元触媒、並びに、その窒素酸化物選択還元触媒を効率よく且つ確実に製造することが可能な窒素酸化物選択還元触媒の製造方法を提供することが可能となる。
【0072】
したがって、本発明の窒素酸化物選択還元触媒は、NO浄化活性に優れるため、ディーゼルエンジン等の希薄燃焼方式の内燃機関から排出されるNOの浄化用触媒等として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施例1〜6及び比較例1〜6ので得られた各窒素酸化物選択還元触媒のゼオライトに担持されたFeの担持量(担体に対する金属換算による質量比)と、ゼオライトに常磁性Fe3+イオンとして担持されているFeの量(担体に対する金属換算による質量比)との関係を示すグラフである。
【図2】実施例1及び比較例1で得られた窒素酸化物選択還元触媒のNO昇温脱離スペクトルを示すグラフである。
【図3】実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた窒素酸化物選択還元触媒のゼオライトに担持されたFeの担持量(担体に対する金属換算による質量比)と、270℃〜600℃の温度範囲におけるNO(NO+NO)の脱離量との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた窒素酸化物選択還元触媒のゼオライトに常磁性Fe3+イオンとして担持されたFeの量(担体に対する金属換算による質量比)と、270℃〜600℃の温度範囲におけるNO(NO+NO)の脱離量との関係を示すグラフである。
【図5】入りガス温度250℃における実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた窒素酸化物選択還元触媒のNO浄化率を示すグラフである。
【図6】入りガス温度250℃における実施例5及び比較例5で得られた窒素酸化物選択還元触媒のNO浄化率を示すグラフである。
【図7】入りガス温度250℃における実施例6及び比較例6で得られた窒素酸化物選択還元触媒のNO浄化率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素過剰雰囲気下において窒素酸化物を還元剤により還元する際に使用される窒素酸化物選択還元触媒であって、ゼオライトと、前記ゼオライトに担持された鉄とを備え、前記ゼオライトにイオン交換により常磁性の鉄(III)イオンとして担持された鉄の量が、担体の全量に対して金属換算で1.0質量%以上であることを特徴とする窒素酸化物選択還元触媒。
【請求項2】
二酸化窒素分子を飽和吸着させた触媒の触媒床を温度50℃〜600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して脱離する窒素酸化物分子の量を測定する二酸化窒素昇温脱離試験において、270℃〜600℃の温度範囲において脱離した窒素酸化物分子の全量が75μmol/g以上となるものであることを特徴とする請求項1に記載の窒素酸化物選択還元触媒。
【請求項3】
前記ゼオライトが、MFI型ゼオライト、β型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フェリエライト型ゼオライト、L型ゼオライト及びホージャサイト型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種のゼオライトを含有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒素酸化物選択還元触媒。
【請求項4】
酸素過剰雰囲気下において窒素酸化物を還元剤により還元する際に使用される窒素酸化物選択還元触媒であって、ゼオライトと、前記ゼオライトに担持された鉄とを備え、前記ゼオライトにイオン交換により常磁性の鉄(III)イオンとして担持された鉄の量が、担体の全量に対して金属換算で1.0質量%以上である窒素酸化物選択還元触媒の製造方法であって、
還元雰囲気又は不活性雰囲気下において、ゼオライトに鉄を担持させた触媒前駆体を400℃〜900℃の範囲の温度条件で熱処理し、窒素酸化物選択還元触媒を得ることを特徴とする窒素酸化物選択還元触媒の製造方法。
【請求項5】
前記窒素酸化物選択還元触媒が、二酸化窒素分子を飽和吸着させた触媒の触媒床を温度50℃〜600℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して脱離する窒素酸化物分子の量を測定する二酸化窒素昇温脱離試験において、270℃〜600℃の温度範囲において脱離した窒素酸化物分子の全量が75μmol/g以上となるものであることを特徴とする請求項4に記載の窒素酸化物選択還元触媒の製造方法。
【請求項6】
前記ゼオライトが、MFI型ゼオライト、β型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フェリエライト型ゼオライト、L型ゼオライト及びホージャサイト型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種のゼオライトを含有するものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の窒素酸化物選択還元触媒の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−222742(P2007−222742A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45393(P2006−45393)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】