説明

窓サッシ

【課題】意匠に配慮されていることに加えて、優れた遮音性能を有する窓サッシを提供する。
【解決手段】断面矩形の管状部材1により四方枠10が形成され、この四方枠10の各辺の内周面10a上には、2つのスペーサ部材5,5と2つの押縁6,6とが固定されている。そして、スペーサ部材5と押縁6との間に板ガラス2,2を挟み込むことにより、2枚の板ガラス2,2が所定間隔を隔てて四方枠10内に固定されている。また、板ガラス2,2間に形成された間隙層13と中空部11とを連通する連通孔3が、四方枠10の内周面10a側に設けられている。内部が中空な四方枠10に連通孔3を設けて共鳴器を形成したため、この共鳴器の吸音作用によって、窓サッシの遮音性能が向上する仕組みとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた遮音性能を有する窓サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、窓サッシの遮音性能を向上させるために多くの工夫がなされてきた。例えば、特許文献1には、窓サッシを2つ併設して防音サッシを形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、ガラスによって遮音性能を向上させる技術が記載されており、板ガラスと板ガラスの間に共鳴器が介装され、該共鳴器によって板ガラス間の間隔が保持された遮音ガラスが開示されている。そして、板ガラス間の間隙部と共鳴器内部の中空部とを連通する貫通孔が共鳴器に設けられていて、特に中低周波数域における遮音性能が向上されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−205218号公報
【特許文献2】特開2003−63844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の窓サッシは、前サッシと後サッシを併設して防音効果を高めるものであるため、窓サッシ2つ分のコストを要するという問題があった。また、窓サッシを嵌め込む開口部の見込み寸法が大きくなるので、取りつけられる建築物に制約が出たり、障子を開放する際の操作性がよくないという問題もあった。
さらに、特許文献2の遮音ガラスにおいては、ガラスによって遮音性能を得るものであるため、共鳴器を板ガラスの間に介装しなければならず、共鳴器の形状や大きさが制限される。さらに、共鳴器又はスペーサ部材が板ガラスの間に介装されているため、共鳴器やスペーサ部材が遮音ガラスから露出して外部から見えやすいという意匠上の問題もあった。さらにまた、板ガラス間に共鳴器を備えなければならないので、ガラス自体が重量化するとともに、高価となる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、意匠に配慮されていることに加えて、優れた遮音性能を有する窓サッシを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る窓サッシは、屋外側に配される第一ガラスと屋内側に配される第二ガラスとを、所定間隔を隔てて重ね合わせた状態で、枠体に嵌め殺し状に組み込んでなる窓サッシにおいて、前記第一ガラスの屋外側面を支持する第一ガラス屋外側支持部と、前記第一ガラスの屋内側面を支持する第一ガラス屋内側支持部と、前記第二ガラスの屋外側面を支持する第二ガラス屋外側支持部と、前記第二ガラスの屋内側面を支持する第二ガラス屋内側支持部とを、前記枠体に一体又は別体に設け、前記第一ガラス屋外側支持部と前記第一ガラス屋内側支持部とで前記第一ガラスの外周縁部を挟み、前記第二ガラス屋外側支持部と前記第二ガラス屋内側支持部とで前記第二ガラスの外周縁部を挟むことにより前記両ガラスを前記枠体に固定するとともに、前記枠体の少なくとも一部を中空な管状部材で構成し、前記管状部材の前記第一ガラス屋内側支持部と前記第二ガラス屋外側支持部との間の位置に、前記管状部材の中空部と前記両ガラス間の間隙層とを連通する連通孔を設けたことを特徴とする。
【0007】
本発明の窓サッシは、建築物の開口部に嵌め込んでFIX窓(嵌め殺し窓)を形成することができるが、可動式窓の構成部品である障子とすることもできるので、建築物の開口部に嵌め込まれる枠に開閉可能に装着して可動式窓を形成することもできる。すなわち、FIX窓の場合は、ガラスが固定される前記枠体が、建築物の開口部に嵌め込まれる枠の一部又は全体を構成する。なお、FIX窓の枠の形状は方形状に限定されるものではなく、円形状,三角形状等であってもよい。一方、可動式窓の場合は、ガラスが固定される前記枠体は、建築物の開口部に嵌め込まれる枠に開閉可能に装着される障子の框の一部又は全体を構成する。
【0008】
また、前記連通孔と略同一断面形状の空間を前記連通孔に連続して形成し、前記連通孔を前記管状部材から前記間隙層に向けて延長する延長部材を、前記管状部材に取り付けることが好ましい。このとき、前記延長部材を、前記連通孔と略同一断面形状の貫通孔を有する有孔部材で構成し、前記貫通孔と前記連通孔とが連続するように前記有孔部材を前記管状部材に取り付け、前記貫通孔によって前記連通孔を前記管状部材から前記間隙層に向けて延長することもできる。また、前記延長部材が前記第一ガラス屋内側支持部と前記第二ガラス屋外側支持部とを構成してもよい。
【0009】
さらに、前記管状部材の中空部に吸音材を充填することが好ましい。さらに、前記管状部材の内面のうち前記連通孔が開口している側の面に、吸音材を配してもよい。
本発明の窓サッシにおいては、枠又は障子の框を構成する枠体に中空部を設け、前記第一ガラスを透過した音を共鳴によって減音させることにより、遮音性能を向上させている。つまり、ガラスを固定する部材である枠体に、中空部と前記両ガラス間の間隙層とを連通する連通孔を設け、前記間隙層と中空部とが連通した構造とすることにより、枠体に共鳴器としての機能を持たせている。
【0010】
このように、間隙層と中空部とが連通孔で連通した構造を備えることにより、枠体が共鳴器としての機能を有することとなるので、本発明の窓サッシは優れた遮音性能を有している。本発明の窓サッシは、主に中低周波数域の遮音性能が優れているが、このような性能は、共鳴器の構造及び設置位置、並びに、中空部の容積、さらには連通孔の幅(板ガラスの厚さ方向の長さ)や長さ(間隙層と中空部とを連通する連通孔の連通方向の長さ)に起因する。
【0011】
従来の遮音ガラスにおいては、共鳴器として機能する部材が2つのガラスの間に介装されているが、共鳴器として機能する部材は2つのガラスの間の間隔内に収められなければならないため、その容積には限界があった。しかしながら、本発明の窓サッシにおいては、共鳴器の中空部をガラスの外側(ガラスの外周端面に対向する位置)となる枠又は障子の框に配したので、中空部の容積を大きくとることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の窓サッシは、意匠に配慮されていることに加えて、優れた遮音性能を有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の窓サッシの構造を示す要部断面図である。
【図2】図1の窓サッシを建築物の開口部に嵌め込んで形成したFIX窓の縦断面図である。
【図3】図2のFIX窓の水平断面図である。
【図4】本実施形態の変形例の窓サッシを建築物の開口部に嵌め込んで形成したFIX窓の縦断面図である。
【図5】図4のFIX窓の水平断面図である。
【図6】本実施形態の窓サッシを障子として備える枠を建築物の開口部に嵌め込んで形成した可動式窓の縦断面図である。
【図7】図6の可動式窓の水平断面図である。
【図8】本実施形態の窓サッシを障子として備える枠を建築物の開口部に嵌め込んで形成した別種の可動式窓の縦断面図である。
【図9】図8の可動式窓の水平断面図である。
【図10】図1の窓サッシの変形例の構造を示す要部断面図である。
【図11】窓サッシの遮音性能の試験装置を説明する図である。
【図12】窓サッシの遮音性能の周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る窓サッシの実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態の窓サッシの下側端部を板ガラスの横方向に直交する平面で破断した要部断面図である。
なお、以下の説明における「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、及び「後」のような方向を示す用語は、特に断りがない限り、説明の便宜上、図1におけるそれぞれの方向を意味するものである(「前」及び「後」は、紙面に対して前方及び後方を意味する)。したがって、以下の説明における「上下」は板ガラスの高さ方向を意味し、「左右」は板ガラスの厚さ方向を意味し、「前後」は板ガラスの横方向を意味する。
【0015】
断面矩形の管状部材1により、四角形状の枠体10(以降は「四方枠」と記す)が形成されている。この四方枠10の各辺の内周面10a上には、四方枠10の各辺の長手方向(図1では前後方向)に沿って延びる2つのスペーサ部材5,5と2つの押縁6,6とが、ネジ留め等の慣用の固着手段により固定されている。すなわち、四方枠10の各辺の内周面10a上には、押縁6、スペーサ部材5、スペーサ部材5、及び押縁6が、それぞれ所定の間隔を空けつつ、右側(屋外側)から左側(屋内側)に向かって該順序で固定されている。なお、押縁6と四方枠10との間に、両者の間の空隙を塞ぐ気密材を介装してもよい。
【0016】
そして、スペーサ部材5と押縁6との間に、ゴム等の緩衝材7を介して板ガラス2,2の外周縁部を挟み込むことにより、2枚の板ガラス2,2が所定間隔を隔てて四方枠10内に嵌め殺し状に固定されている。すなわち、2つのスペーサ部材5,5により形成される間隔を隔てて、2枚の板ガラス2,2が四方枠10に固定される。
なお、図1中の右側の板ガラス2が本発明の構成要件である第一ガラスに相当し、左側の板ガラス2が本発明の構成要件である第二ガラスに相当する。また、図1中の右側の押縁6が本発明の構成要件である第一ガラス屋外側支持部に相当し、右側のスペーサ部材5が本発明の構成要件である第一ガラス屋内側支持部に相当する。さらに、左側のスペーサ部材5が本発明の構成要件である第二ガラス屋外側支持部に相当し、左側の押縁6が本発明の構成要件である第二ガラス屋内側支持部に相当する。
【0017】
また、本実施形態の窓サッシにおいては、図1に示すように、板ガラス2,2間に形成された間隙層13と共鳴器として機能する管状部材1の中空部11とを連通する連通孔3が、四方枠10の内周面10a側(2つのスペーサ部材5,5の間の位置)に設けられている。
四方枠10は管状部材1で構成されており、内部が中空となっているとともに、該中空部11と間隙層13とが連通孔3によって連通されている。連通孔3の内部及びその近傍部分の空気が特定の周波数で強く振動し、連通孔3の内壁面と空気との摩擦によって音響エネルギーが熱エネルギーに変換され摩擦熱として消費されるため、吸音作用が生じて騒音が吸音される。このとき、連通孔3の幅(左右方向の長さ)やスペーサ部材5の寸法及び中空部11の容積は、共鳴周波数が所望の値となるように設定すればよい。
【0018】
さらに、2つのスペーサ部材5,5の対向面に挟まれた、左右方向幅が連通孔3と同幅の空間(以降はスリット空間と記すこともある)が、連通孔3と連続している。すなわち、2つのスペーサ部材5,5により、連通孔3と略同一断面形状(左右方向に沿う平面による断面)の空間が連通孔3に連続して形成され、このスリット空間により、連通孔3が管状部材1(内周面10a)から間隙層13に向けて延長されている(上下方向に延びている)。
【0019】
なお、図1においては、スペーサ部材5,5は、本発明の構成要件である延長部材に相当しており、第一ガラス屋内側支持部及び第二ガラス屋外側支持部を兼ねる部材となっている。図1においては、スペーサ部材5,5が延長部材と第一ガラス屋内側支持部及び第二ガラス屋外側支持部とを兼ねているが、スリット空間を連通孔3に連続して形成することにより連通孔3を延長する延長部材を、スペーサ部材5,5とは別に設けてもよい。
【0020】
また、図1においては、2つの延長部材でスリット空間を形成しているが、1つの延長部材でスリット空間を形成してもよい。すなわち、延長部材を、連通孔3と略同一断面形状(左右方向に沿う平面による断面)の貫通孔を有する有孔部材で構成し、この貫通孔と連通孔3とが連続するように前記有孔部材を管状部材1に取り付けて、前記貫通孔によって連通孔3を管状部材1から間隙層13に向けて延長してもよい。この場合は、前記有孔部材が、スペーサ部材5,5(第一ガラス屋内側支持部及び第二ガラス屋外側支持部)を兼ねてもよいし、前記有孔部材とスペーサ部材5,5とを別部材としてもよい。
【0021】
本実施形態の窓サッシは、図1のように、板ガラス2の外周端面2aに対向する位置となる四方枠10に中空部11が配されており、間隙層13と中空部11とを連通する連通孔3と中空部11とにより共鳴器が形成されているので、共鳴器が板ガラス2の間に介装されている場合と比べて、大きい中空部11を形成することができる。特に、中空部11の空気層の幅が大きいと吸音性能を高められるため、本実施形態の窓サッシは優れた遮音性能を有する仕様とすることが可能である。
【0022】
さらに、本実施形態の窓サッシは、中空部11,スペーサ部材5,押縁6が板ガラス2,2の間に介装されておらず、中空部11は板ガラス2の外周端面2aに対向する位置に配され、スペーサ部5材及び押縁6はその近傍に配されているので、窓等に設置された窓サッシを外部から見た際に、中空部11,スペーサ部材5が露出しない。
このような本実施形態の窓サッシは、優れた遮音性能を有しているので、住宅,ビル等の建築物や、車両,船舶,航空機等の輸送機器のガラス窓として好適である。本実施形態の窓サッシを建築物の開口部20に嵌め込んでFIX窓(嵌め殺し窓)を形成した例を、図2,3に示す。また、本実施形態の変形例の窓サッシを建築物の開口部20に嵌め込んでFIX窓を形成した例を、図4,5に示す。
【0023】
さらに、本実施形態の窓サッシは、可動式窓の構成部品である障子とすることもできるので、建築物等の開口部に嵌め込まれる枠に開閉可能に装着して可動式窓を形成することもできる。すなわち、四方枠10が障子の框となる。可動式窓の種類は特に限定されるものではなく、例えば、引き違い窓,片引き窓,引き分け窓,上げ下げ窓,内倒し窓,外倒し窓,突き出し窓,回転窓,開き窓があげられる。本実施形態の窓サッシを障子として備える枠を建築物の開口部20に嵌め込んで可動式窓を形成した例を、図6〜9に示す。図6,7は、開き窓の例であり(図7中の符号22が、障子を開閉するための回転軸である)、図8,9は、片引き窓の例である。
【0024】
本実施形態の窓サッシを可動式窓の障子として用いる場合は、本実施形態の窓サッシである障子を開閉可能に装着した枠を、建築物等の開口部に嵌め込んで可動式窓を形成してもよいが、建築物等に既に取り付けられている通常の可動式窓のうち障子のみを、本実施形態の窓サッシに交換すれば、通常の可動式窓を優れた遮音性能を有する可動式窓に変更することができる。
【0025】
本実施形態の窓サッシにおいては、連通孔3の断面形状は特に限定されるものではなく、円形,楕円形,矩形,三角形等があげられる。また、連通孔3の個数は特に限定されるものではなく、板ガラス2の外周端面2aに沿う方向(図1においては前後方向)に複数個並べて設けてもよい。例えば、複数個の連通孔3を一定間隔毎に並べて設けてもよい。さらに、連通孔3を、板ガラス2の外周端面2aに沿う方向に延びる長孔としてもよく、1個の長孔を四方枠10の一辺の両端にわたって形成してもよい。長孔とする場合は、中空部11を備えるとともにスペーサ部材5及び押縁6が一体的に形成された四方枠10を、アルミニウム押出形材で構成することが可能になるため、コストの軽減につながる。
【0026】
一方、連通孔3の幅(左右方向の長さ)によって共鳴周波数が異なるため、例えば、特定周波数域を遮音するのに特化した窓サッシとすることもできる。さらには、四方枠10の各辺において連通孔3の幅に多様性を持たせることにより、幅広い周波数域に対して遮音性能が優れる窓サッシとすることができる。このように、連通孔3の幅や設置形態を変更することにより、バリエーションに富んだ窓サッシを得ることが可能である。
【0027】
さらに、延長部材を用いて連通孔3を管状部材1から間隙層13に向けて延長した場合は、連通孔3の延長方向(図1では上下方向)の長さ(以降は首部長さと記す)に応じて共鳴周波数が異なる。首部長さが長いほど共鳴周波数は低くなり、短いほど共鳴周波数は高くなる。このように、首部長さを調節することで、共鳴周波数を変えることができるため、用途に応じた窓サッシを得ることが可能である。
【0028】
以下に、四方枠10の構造と共鳴周波数(f0)との相関式を示す。本発明における共鳴器は、ヘルムホルツ共鳴器を応用した構造であるため、共鳴器の共鳴周波数(f0)は、窓サッシの構造により可変的である。共鳴周波数(f0)は、下記相関式を用いて、下記の各ファクターにより算出され、相関式から算出される共鳴周波数(f0)付近において高い吸音性能が得られる。
【0029】
【数1】

【0030】
b:連通孔の幅
B:中空部の空気層の幅(左右方向の長さ)
L:中空部の空気層の厚さ(上下方向の長さ)
A:中空部の断面積(=B×L)
t:首部長さ
p:開口率(b/B)
t’:開口端補正
C:空気中の音速
0:共鳴周波数
【0031】
なお、開口端補正t’は、首部長さを補正するためのパラメータである。前述したように、前記スリット空間内の空気が振動するが、実際にはスリット空間の上端の若干上方及び下端の若干下方の空気も振動しており、吸音に寄与している。よって、共鳴周波数を算出する際には、この部分を補正する必要があるため、首部長さtを開口端補正t’で補正している。
【0032】
ここで、共鳴周波数を算出した例を示す。連通孔の幅bが1mm、中空部の空気層の幅Bが95mm、中空部の空気層の厚さLが25mm、中空部の断面積Aが2375mm2 、首部長さtが20mm、開口率pが0.01、開口端補正t’が2.6、空気中の音速Cが340000mm/sの場合は、共鳴周波数f0は233Hzとなる。連通孔の幅bが5mmの場合は、上記各ファクターのうち開口端補正t’のみが7.5に変化し、共鳴周波数f0は473Hzとなる。
【0033】
さらに、本実施形態の窓サッシにおいては、中空部11の全体又は一部分に図1には図示しない吸音材を充填するか、又は、図10に示すように中空部の内面のうち連通孔3が開口している側の面に、連通孔3の開口を跨ぐように吸音材8を配すれば、振動する空気の音響エネルギーから熱エネルギーへの変換が促進されるため、窓サッシの遮音性能をさらに向上させることができる。
【0034】
吸音材の種類は特に限定されるものではないが、グラスウール,ロックウール等の繊維材が好ましい。また、アルミニウム繊維,アルミニウム切削屑,アルミニウム焼結体等のアルミニウム製吸音材が好ましい。アルミニウム製吸音材は、吸湿しないため劣化が起こりにくい上、リサイクル性に優れている。
さらに、管状部材1をアルミニウム押出形材で構成すれば、管状部材1を低コストで製造することができる。また、管状部材1と押縁6とを一体的に製造することも可能であるので、管状部材1と押縁6との接合作業を行う必要が無く、作業量やコストを軽減することができる。また、四方枠10がアルミニウム製となるので、窓サッシの軽量化が図れるとともに、リサイクル性が良好となる。
【0035】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、管状部材1で四方枠10を形成し、窓サッシの周縁部全周に中空部11と連通孔3とからなる共鳴器が設けられている構成としたが、共鳴器は窓サッシの周縁部全周に設けられていなくてもよく、窓サッシの周縁部の一部に設けられている構成としてもよい。例えば、窓サッシの四辺のうち一辺〜三辺に共鳴器が設けられている構成としてもよいし、窓サッシの一辺のうちの一部分に共鳴器が設けられている構成としてもよい。
【0036】
共鳴器が窓サッシの周縁部の一部分に設けられている場合は、枠又は框を構成する枠部材を別途用意して、該枠部材の内側に管状部材1を収容してもよい。また、窓サッシの周縁部全周に共鳴器が設けられている場合は、枠部材の内側に管状部材1(すなわち四方枠10)を収容してもよいが、四方枠10を枠又は框として利用することもできる。
また、本実施形態においては、窓サッシに備えられる板ガラス2は2枚であったが、窓サッシの質量及びコストが許容される場合は、板ガラス2は3枚以上であっても差し支えない。
【0037】
さらに、板ガラス2の種類は特に限定されるものではなく、一般的なシリカガラスの他、強化ガラス,合わせガラス,網入りガラス,線入りガラス等を使用することができる。さらに、ポリカーボネート,アクリル樹脂等の樹脂製板ガラスも使用可能である。さらに、板ガラス2の厚さも特に限定されるものではない。なお、複数の板ガラス2を全て同種又は同一厚さの板ガラスとする必要はなく、種類や厚さの異なる板ガラスを組み合わせて使用することもできる。
【0038】
さらに、板ガラス2間の間隙部13に充填される気体は空気に限定されるものではなく、窒素ガス,アルゴンガス,クリプトンガス等を使用することもできる。
さらに、吸音材にシリカゲル等の乾燥剤を混合して用いてもよい。そうすれば、板ガラス2間の間隙部13内や中空部11内の吸湿を行うことができる。ただし、中空部11内やスペーサ部材5に、乾燥剤を収納するスペースを設けてもよい。
【0039】
さらに、四方枠10の中空部11の内部の水を窓サッシの外部に排出する水抜き孔を設けてもよい。この水抜き孔は、連通孔3とは別の孔とする必要がある。また、中空部11の内部の水を十分に排水するためには、できる限り窓サッシの下部に水抜き穴を設けることが好ましい。
さらに、中空体を別途用意し、中空部11を有する管状部材1を用いることに代えて前記中空体を四方枠10に取り付けてもよい。その際には、中空体の内部空間と間隙部13とが連通するようにする。このような中空体を用いれば、四方枠10を構成する枠部材として管状部材1を用いる必要がなく、例えば、管状部材の周囲四面のうち一面が開放している断面略コ字状の枠部材を用いることも可能となるので、材料選定の自由度が高くなる。
【0040】
〔実施例〕
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
縦1500mm、横1250mmの矩形の板ガラスを2枚使用して、前述した実施形態とほぼ同様の構成の窓サッシを製作し、その遮音性能を実測した。なお、板ガラスの厚さは、室外側が8mmで室内側が5mmである。また、両板ガラス間の間隔は25mmである。さらに、中空部の連通孔は、四方枠の一辺の両端にわたって一定間隔毎に並べて設けられた複数の円形孔(以降は、これらの円形孔をスリットと記す)である。
【0041】
試験装置は、図11に示すように、試料である窓サッシを挟んで隣接する2つの残響室と、音源装置及び受音装置とで構成される。そして、日本工業規格JIS A1416に規定された方法による平均音圧レベルの測定と、日本工業規格JIS A1409に規定された方法による残響時間の測定とを行った。
前者の測定は、音源用残響室でスピーカーにより音を発生させ、音源用残響室及び受音用残響室の複数のマイクロホンによりそれぞれの音圧レベルを測定するというものである。後者の測定は、受音用残響室で音を発生させ、同室内の音が定常状態に達したら音の放射を止め、その時点から同室内の音圧レベルが60dB減衰するまでの時間を測定するというものである。
【0042】
測定周波数は、次の中心周波数(1/3オクターブバンド)について行った。すなわち、中心周波数は100,125,160,200,250,315,400,500,630,800,1000,1250,1600,2000,2500,3150,4000,及び5000Hzである。そして、試料の音響透過損失は、音源用残響室及び受音用残響室のそれぞれの平均音圧レベル、並びに、受音用残響室の吸音力を測定し、次式により算出した。
【0043】
TL=D+10log(S/A)
D=L−L
A=0.16・V・(1/T)
ここで、TLは音響透過損失(dB)、Sは試料の面積(m2 )、Aは受音用残響室の等価吸音面積(m2 )、Dは室間音圧レベル差(dB)、Lは音源用残響室の平均音圧レベル(dB)、Lは受音用残響室の平均音圧レベル(dB)Tは、受音用残響室の残響時間(sec)、Vは受音用残響室の容積(m3 )である。
【0044】
実測した試料は3種類である。試料1は、中空部に左右方向幅5mmのスリットを備えており、中空部内に吸音材としてグラスウール(GW)が充填されているものである。試料2は、中空部に左右方向幅5mmのスリットを備えており、中空部内にGWが充填されていないものである。試料3は、中空部にスリットを備えておらず、中空部内にGWが充填されていないものである。
【0045】
3種の試料についての音響透過損失の周波数特性を、図12のグラフに示す。中空部にスリットを備えておらず、枠に板ガラスを固定しただけの従来例である試料3と比較すると、本発明の実施例に相当する試料1及び試料2は、遮音性能が優れており、特に中低周波数域(150〜500Hz)における遮音性能が優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0046】
1 管状部材
2 板ガラス
2a 外周端面
3 連通孔
5 スペーサ部材
6 押縁
8 吸音材
10 四方枠
11 中空部
13 間隙層
20 建築物の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外側に配される第一ガラスと屋内側に配される第二ガラスとを、所定間隔を隔てて重ね合わせた状態で、枠体に嵌め殺し状に組み込んでなる窓サッシにおいて、
前記第一ガラスの屋外側面を支持する第一ガラス屋外側支持部と、前記第一ガラスの屋内側面を支持する第一ガラス屋内側支持部と、前記第二ガラスの屋外側面を支持する第二ガラス屋外側支持部と、前記第二ガラスの屋内側面を支持する第二ガラス屋内側支持部とを、前記枠体に一体又は別体に設け、前記第一ガラス屋外側支持部と前記第一ガラス屋内側支持部とで前記第一ガラスの外周縁部を挟み、前記第二ガラス屋外側支持部と前記第二ガラス屋内側支持部とで前記第二ガラスの外周縁部を挟むことにより前記両ガラスを前記枠体に固定するとともに、
前記枠体の少なくとも一部を中空な管状部材で構成し、前記管状部材の前記第一ガラス屋内側支持部と前記第二ガラス屋外側支持部との間の位置に、前記管状部材の中空部と前記両ガラス間の間隙層とを連通する連通孔を設けたことを特徴とする窓サッシ。
【請求項2】
建築物の開口部に嵌め込まれる枠に開閉自在に装着される障子であることを特徴とする請求項1に記載の窓サッシ。
【請求項3】
前記連通孔と略同一断面形状の空間を前記連通孔に連続して形成し、前記連通孔を前記管状部材から前記間隙層に向けて延長する延長部材を、前記管状部材に取り付けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窓サッシ。
【請求項4】
前記延長部材を、前記連通孔と略同一断面形状の貫通孔を有する有孔部材で構成し、前記貫通孔と前記連通孔とが連続するように前記有孔部材を前記管状部材に取り付け、前記連通孔を前記管状部材から前記間隙層に向けて延長したことを特徴とする請求項3に記載の窓サッシ。
【請求項5】
前記延長部材が前記第一ガラス屋内側支持部と前記第二ガラス屋外側支持部とを構成することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の窓サッシ。
【請求項6】
前記管状部材の中空部に吸音材を充填したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の窓サッシ。
【請求項7】
前記管状部材の内面のうち前記連通孔が開口している側の面に、吸音材を配したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の窓サッシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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