説明

窓枠用排水弁装置及びこの装置を用いた窓枠の排水構造

【課題】下枠に設けた上下2個の排水孔に導かれた水を、1つの部品をもって外部に排水させることにより、部品点数や組付工数を削減してコスト低減を図るとともに、窓枠の外観的体裁を向上させうるようにした窓枠用排水弁装置を提供する。
【解決手段】下枠5の上下の排水孔44、43を覆いうる大きさの排水ケース部46を備え、この排水ケース部46の内部空間を、上部の排水孔44と連通する上部排水室49と、下部の排水孔43と連通する下部排水室50とに区画し、排水ケース部46に、上部排水室49の水を外部に排水する第2の上部排水孔51と、下部排水室50の水を外部に排水する第2の下部排水孔52とを設けるとともに、第2の下部排水孔52に、通常時はこの第2の下部排水孔52を閉塞し、下部排水室52内の水を外部に排水するときのみ開弁する排水弁54を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き違い式の障子が組み込まれた窓枠における下枠内に浸入した雨水を、室外に排水するための排水弁装置及びこの装置を用いた窓枠の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
引き違い式の障子が組み込まれた窓枠においては、その下枠に浸入した雨水が室内に入り込まないように、種々の対策が講じられている。
例えば特許文献1には、下枠における内障子(室内障子)を案内する内案内溝と外障子(室外障子)を案内する外案内溝の下部に、中空部を形成し、この中空部と内案内溝の室内露出領域との間に第1排水経路を形成し、この第1排水経路を介して、内案内溝の室内露出領域に浸入した水を、下枠における中空部の室外壁面に設けた第1排水孔より外部に排水するとともに、内案内溝における内障子の配置領域と、外案内溝における室外露出領域との間に、第2排水経路を形成し、この第2排水経路を介して、内案内溝の内障子の配置領域に浸入した水と、外案内溝の室外露出領域に浸入した水と、外障子配置領域に浸入した水とを、上記第1排水路の上方において外案内溝の室外壁面に設けた第2排水孔より外部に排水するようにした排水構造、及び上記第1排水孔と第2排水孔のそれぞれに、排水弁を装着した構成のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−139845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の排水構造に用いられている排水弁は、下枠の室外壁面に上下に離間して設けた第1排水孔と第2排水孔に導かれた水を、1個の排水弁により室外に排水する機能を有していないので、第1排水孔と第2排水孔とのそれぞれに排水弁を装着している。そのため、第1及び第2排水孔を下枠に複数設けると、排水弁の部品点数及び取付工数が増大し、コスト高となる問題がある。
また、下枠に2個ずつの排水弁が上下に離間して並設されているので、それが目立ち過ぎ、窓枠の外観的体裁が悪くなるという問題もある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、下枠に設けた上下2個の排水孔に導かれた水を、1つの部品をもって下枠の外部に排水させることにより、部品点数や組付工数を削減してコスト低減を図るとともに、窓枠の外観的体裁を向上させうるようにした窓枠用排水弁装置及びこの装置を用いた窓枠の排水構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次の各項のようにして解決される。
(1)窓枠の下枠の室内外方向の外側面に装着され、前記外側面に設けた上下2個の排水孔に導かれた水を、室外に排水するようにした窓枠用排水弁装置であって、
前記上下2個の排水孔を覆いうる大きさの排水ケース部を備え、この排水ケース部の内部空間を、前記上部の排水孔と連通する上部排水室と、前記下部の排水孔と連通する下部排水室とに区画し、前記排水ケース部に、前記上部排水室に流入した水を外部に排水する第2の上部排水孔と、下部排水室に流入した水を外部に排水する第2の下部排水孔とを設けるとともに、前記第2の下部排水孔に、通常時はこの第2の下部排水孔を閉塞し、下部排水室に流入した水を外部に排水するときのみ開弁する排水弁を設ける。
【0007】
このような構成とすると、下枠の外側面に設けた上下2個の排水孔に導かれた水を、それら2個の排水孔を覆いうる大きさの排水ケース部を備える1つの排水弁装置をもって室外に排水することができる。従って、上下の排水孔のそれぞれに、排水弁装置を装着する必要はなく、部品点数及び取付工数が削減されてコスト低減を図ることができるとともに、窓枠の外観的体裁が向上する。
【0008】
(2)上記(1)項において、排水ケース部における第2の下部排水孔と反対側の壁面に、下部排水室と連通するとともに、外周面に係合爪を有する中空筒状の嵌合部を連設し、この嵌合部を下枠の下部の排水孔に嵌合し、前記係合爪を排水孔の開口縁に係合させることにより、前記排水ケース部を、下枠の外面に装着しうるようにする。
【0009】
このような構成とすると、外周面に複数の係合爪を有する中空筒状の嵌合部を、下部の排水孔に嵌合するだけで、排水弁装置を下枠の外面に抜止めして簡単に装着しうるため、ねじ等の固定手段が不要となる。
【0010】
(3)上記(2)項において、嵌合部の外周面の対向部をコ字状に切り欠くことにより、1対の弾性片を形成し、これら両弾性片の外面に係合爪を突設する。
【0011】
このような構成とすると、嵌合部を下部の排水孔に嵌合する際に、弾性片が内向きに弾性変形するので、係合爪を排水孔の開口縁に容易に係合させうるとともに、排水弁装置の取り外しも容易となる。
【0012】
(4)上記(2)または(3)項において、嵌合部の下面の一部を、先端から基端に向かって切り欠くことにより、嵌合部の下面に、排水ケース部の下部排水室に連通する開放部を形成する。
【0013】
このような構成とすると、下部の排水孔に導かれた水を、嵌合部の下面の開放部を介して、排水ケース部の下部排水室内に速やかに流入させることができる。
【0014】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、第2の下部排水孔及び排水弁を横長の方形をなすものとし、前記排水弁の上端部を、排水ケース部に設けた横向きの支軸により回動自在に支持する。
【0015】
このような構成とすると、第2の下部排水孔の開口面積が大となるので、排水ケース部の下部排水室に流入した水を外部に速やかに排水することができる。
また、排水弁は、その上端部が支軸により回転自在に支持されているので、通常時は自重により垂下して、第2の下部排水孔を確実に閉塞するとともに、下部排水室に流入した水の圧力により容易に外方に開弁することができる。
【0016】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、上部排水室と下部排水室とを、上下方向を向く連通孔により連通させることにより、この連通孔を、上部排水室に流入した水を第2の下部排水孔を介して外部に排水する第2の上部排水孔とする。
【0017】
このような構成とすると、排水ケース部の上部排水室に流入した水を、連通孔を介して下部排水室内に流下させ、下部排水室内に流入した水と一緒に外部に排水しうるので、排水ケース部に、第2の上部排水孔を、外部に露出させて設ける必要がない。従って、外部から上部排水室内に雨水が流入する恐れがなくなる。
【0018】
(7)窓枠の下枠の上面に、引き違い式の内障子と外障子の下端部を移動可能にガイドする内ガイドレールと外ガイドレールを上向きに突設するとともに、前記下枠の内端に連設された内立上り片と前記内ガイドレールとの間、前記内外のガイドレールとの間、及び前記下枠の外端に連設された外立上り片と前記外ガイドレールとの間に、それぞれ、前記両障子の下端部が収容される内案内溝と中案内溝と外案内溝とを形成してなる窓枠の排水構造において、
前記外立上り片に上部排水孔を設けるとともに、前記下枠における下部に長手方向を向く中空部と、この中空部の外方の下枠の外面に、中空部と連通する下部排水孔を設け、前記下枠に、前記内案内溝、前記中案内溝の室内開放領域、及び前記中空部に連通し、内案内溝と中案内溝の室内開放領域に浸入した水を前記下部排水孔に導く第1排水経路と、前記中案内溝の室外開放領域と前記外案内溝とに連通し、中案内溝の室外開放領域と外案内溝に浸入した水を前記上部排水孔に導く第2排水経路とをそれぞれ形成し、前記下枠の外面に、請求項1〜6のいずれかに記載の排水弁装置を、その排水ケース部により前記上下の排水孔を覆うとともに、排水ケース部の上部排水室と下部排水室とが、それぞれ前記上部排水孔と下部排水孔とに連通するようにして装着する。
【0019】
このような構成とすると、下枠に形成した第1排水経路と第2排水経路を介して、下枠の外面に設けた上下の排水孔に導かれた水を、それら上下の排水孔を覆いうる大きさの排水ケース部を備える1つの排水弁装置をもって室外に排水することができるので、上下の排水孔のそれぞれに、排水弁装置を装着する必要はなく、部品点数及び取付工数が削減されてコスト低減を図ることができるとともに、窓枠の外観的体裁が向上する。
また、下枠に、経路の異なる第1排水経路と第2排水経路を形成し、下枠の室内側に浸入した水を、第1排水経路を介して排水弁装置の下部排水室に流入させ、室外に排水しうるとともに、下枠の室外側に浸入した水を、第2排水経路を介して、排水弁装置における上部排水室に流入させ、室外に排水しうるので、室内が負圧になるなどしても、第2排水経路の水が第1排水経路側に流入して、下枠の室内側に逆流する恐れはない。
【0020】
(8)上記(7)項において、外案内溝の底面を、室外側に向かって斜め下向きに傾斜する傾斜面とする。
【0021】
このような構成とすると、外案内溝に流入した第2排水経路の水を、上部排水孔及びそれに連通する排水弁装置における排水ケース部の上部排水室内に速やかに流入させて、室外に排水することができる。
また、外案内溝と連通する上部排水孔を下部排水孔に近づけることができるので、上下の排水孔を覆う排水ケース部の上下寸法を小さくしてこれを小型化することができる。
【0022】
(9)上記(7)または(8)項において、中案内溝における内障子と外障子とが重なる召し合せ部に、室内開放領域と室外開放領域との間の水の流れを遮断する仕切部材を設ける。
【0023】
このような構成とすると、第1排水経路と第2排水経路を完全に別経路としうるので、第2排水経路の水が第1排水経路に逆流する恐れがない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の排水弁装置によれば、下枠に設けた上下の排水孔のそれぞれに、排水弁装置を装着する必要がないので、部品点数及び取付工数が削減されてコスト低減を図ることができるとともに、窓枠の外観的体裁が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用した窓枠とそれに装着した引き違い障子を室内側より見た正面図である。
【図2】図1のII−II線拡大縦断側面図である。
【図3】同じく、III−III線拡大横断平面図である。
【図4】下枠の側端部とそれに装着される排水弁装置の斜視図である。
【図5】下枠の拡大平面図である。
【図6】図5のVI−VI線拡大縦断側面図である。
【図7】同じく、VII−VII線拡大縦断側面図である。
【図8】本発明の排水弁装置を室外側より見た正面図である。
【図9】同じく平面図である。
【図10】同じく底面図である。
【図11】同じく側面図である。
【図12】図8のXII−XII線縦断側面図である。
【図13】第2の実施形態の排水弁装置の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を適用した方形枠状の窓枠1、及びそれに装着した内外2枚の引き違い障子2、3を、室内側より見た正面図、図2は、図1のII−II線拡大縦断側面図、図3は、同じくIII−III線拡大横断平面図である。
【0027】
窓枠1は、例えば塩化ビニール樹脂等により成形された上枠4、下枠5、及び左右の側枠6、6よりなり、建物の躯体7の開口部に取り付けられている。なお、上枠4と側枠6は、概ね同じ断面形状とされ、また、下枠5は、その左右寸法が一定の長さ以上であるときには、内部に補強部材(図示略)を挿入して補強される。
【0028】
内障子2と外障子3は、塩化ビニール樹脂等により成形された上框8、下框9、召し合せ部の内框10、及び戸当たり部の外框11よりなる方形の框枠12と、この框枠12内に、シール材13を介して水密的に嵌め込まれた内外二重の窓ガラス14、14とからなっている。なお、上框8と下框9と外框11は、ほぼ同じ断面形状とされている(図2、図3参照) 。
内障子2における内框9の外側面には、施錠装置15が取付けられている。
【0029】
図3に示すように、内障子2と外障子3との召し合せ部A、すなわち内框10、10の対向面間に形成される隙間は、それら対向面のいずれか一方に取付けられた上下方向のシール材16によりシールされ、両障子2、3が閉じられているとき、室外側から室内側に雨水や外気が入り込むのを防止している。
【0030】
図4の拡大斜視図、図5の拡大平面図、及び図6の拡大縦断面図に示すように、上記下枠5の上片5aの上面には、室外側(図6の左方)から順に、網戸用ガイドレールを兼ねる外立上り片17と、それよりも若干高さの高い外障子3用の外ガイドレール18と、この外ガイドレール18と等高をなす内障子2用の内ガイドレール19と、内立上り片20とが、長手方向に全長に亘って一体的に立設されている。
【0031】
外立上り片17と外ガイドレール18との間、外ガイドレール18と内ガイドレール19との間、及び内ガイドレール19と内立上り片20との間には、それぞれ長手方向を向く外案内溝21と、中案内溝22と、内案内溝23とが形成されている。中案内溝22と内案内溝23の上面は、ほぼ水平をなし、外案内溝21の底面は、外立上り片17と外ガイドレール18との間の上片5aを室外側に向かって斜め下向きに傾斜させることにより、下向きの傾斜面24としてある。
【0032】
このように、外案内溝21の底面を室外側に向かって下向きの傾斜面24とすると、下枠5の外面に設けられる後記の第1下部排水孔43と第1上部排水孔44とを上下に近づけることができるので、それらを覆うようにして下枠5に装着される後記の排水弁装置45の上下寸法を小さくして、これを小型化することができる。
また、外案内溝21に浸入した水が、第1上部排水孔44より速やかに排出されるようになる。
【0033】
外ガイドレール18と内ガイドレール19との上面に形成された凹孔25、25の上端部には、金属製のレール部材26、26が圧嵌されている。なお、両ガイドレール18、19の上面にレール部材を一体的に成形し、金属製のレール部材26を省略してもよい。
図2に示すように、内障子2と外障子3の下面の下向凹孔27内の奥面に取付けられた戸車28、28を、内外のレール部材26、26により転動可能に支持するとともに、両障子2、3の上部を、上枠4の下面の下向きの外ガイドレール29と内ガイドレール30とに、けんどん式に嵌合することにより、内障子2と外障子3は、内ガイドレール19と外ガイドレール18を跨ぐように、かつ両ガイドレール18、19を挟む内外の下端部が、各案内溝21、22、23内に若干収容されるようにして、左右方向に引き違い式に開閉しうるように装着されている。
網戸31は、その上下の端部が、外立上り片17と、上枠4の下面の下向きガイドレール32とにより、左右方向に移動可能に支持されている(図2参照)。
【0034】
図2、図3及び図5に示すように、内障子2と外障子3とが重なる召し合せ部Aにおいて、中案内溝22内には、上面にブラシまたはモヘア状のシール材33を有するブロック状の仕切部材34が取付けられ、中案内溝22を中央部の召し合せ部Aにおいて左右に仕切ることにより、風雨等が中案内溝22の右側から左側へ浸入しにくいようにしてある。なお、上面のシール材33には、両障子2、3の対向部の下面が摺接するようになっている。
【0035】
外立上り片17の垂下片17aの下端と、内立上り片20の垂下片20aの下端とには、水平をなす下片5bと、倒立L字状断面をなす躯体取付片5cとが、上片5aとの対向面間に空間が形成されるようにして連設され、かつ上片5aと下片5bとの対向面の室外側の対向面同士を、内外に離間する上下方向を向く仕切片35、35をもって連結することにより、下枠5における外立上り片17と外ガイドレール18との間の内部と、外ガイドレール18の下方の内部とには、長手方向を向く外中空部36と内中空部37とが形成されている。
【0036】
図5〜図7に示すように、召し合せ部Aよりも左側の室内開放領域Bにおいて、下枠5の内ガイドレール19の下端部には、中案内溝22と内案内溝23とを連通させる左右2個の第1水抜き孔38、38が形成されている。
【0037】
また、中案内溝22の左側端部の底面と仕切部材34を取付けた部分の底面とには、下枠5内の第2中空部37内に連通する横長の第2水抜き孔39、39が、外ガイドレール18と近接するようにして形成されている。仕切部材34の下面には、中案内溝22における室内開放領域Bに浸入した水を、右側の第2水抜き孔39に導くための導水溝40を設けてある。
【0038】
右方の第2水抜き孔39は、目立ちにくくするためと、異物が入るのを防止するために、仕切部材34の直下に設けてあるが、例えば仕切部材34と近接する左方に設けてもよい。このようにすると、仕切部材34の導水溝40は不要となる。
【0039】
左右の第2水抜き孔39と対応する位置において、外側の仕切片35の下端部には、外中空部36と内中空部37とを連通させる連通孔41が形成されている(図6参照)。なお、外側の仕切片35及びそれに設けた連通孔41を省略し、下枠5の室外側の内部に形成される大きな中空部を、第2水抜き孔39及び後記する第1下部排水孔43と連通させるようにしてもよい。
【0040】
召し合せ部Aの右方の室外開放領域Cにおいて、外ガイドレール18の下端部には、外案内溝21と中案内溝22とを連通させる左右2個の第3水抜き孔42、42が形成されている(図5、図7参照)。
なお、上述した第1、第2、第3水抜き孔38、39、42、及び連通孔41の孔数は、下枠5の左右寸法に応じて適宜選択しうることは勿論である。
【0041】
外中空部36の室外側の側壁、すなわち外立上り片17より垂下する垂下片17aと、外案内溝21の室外側の側壁である外立上り片17の下端部とには、室外に開口する3個ずつの概ね横長楕円形の第1下部排水孔43と、円形の第1上部排水孔44とが、上下に近接して並設され、第1下部排水孔43は第1中空部36内に、第1上部排水孔44は外案内溝21内にそれぞれ連通している。なお、第1上部排水孔44は、横長の長孔としてもよく、また、第1下部排水孔43と第1上部排水孔44の孔数も、下枠5の左右寸法に応じて適宜選択することができる。
【0042】
下枠5における第1下部排水孔43と第1上部排水孔44との形成部の室外側の外面には、図8〜図12に拡大して示すような本発明の排水弁装置45が装着されている。なお、便宜上、排水弁装置45を室外から見た図8を正面図とし、以下、この図に基づいて前後左右等を説明する。
この排水弁装置45は、下枠5に形成された第1下部排水孔43と第1上部排水孔44を覆いうる大きさの合成樹脂よりなる方形箱状の排水ケース部46と、そのやや下方寄りの後面に連設された第1下部排水孔43への嵌合部47とを備え、排水ケース部46の内部空間は、水平の仕切片48により、左右方向に長い上部排水室49と、それよりも上下寸法の大きな下部排水室50とに、上下に区画されている(図12参照)。
【0043】
上部排水室49の後面は、下枠5側、すなわち室内側に開口しており、排水弁装置45を下枠5に装着した際、上部排水室49は第1上部排水孔44と連通するようになっている。
排水ケース部46の上端部の左右両側面には、上部排水室49に連通する第2上部排水孔51、51が形成され、両第2上部排水孔51を介して、上部排水室49に流入した水を室外に排水しうるようになっている。
【0044】
排水ケース部46の前面板46aと後面板46bとには、それぞれ下部排水室50に連通する方形の第2下部排水孔52と通水孔53とが形成されている。
下部排水室50内には、第2下部排水孔52とほぼ同じ大きさの合成樹脂よりなる板状の排水弁54の上端部の厚肉部が、排水ケース部46の両側面より挿入した左右1対の支軸55、55により、前後方向に回動可能、かつ常時自重により垂下するようにして収容されている。この排水弁54は、逆止弁式のもので、下部排水室50内に溜まった水を第2下部排水孔52より外部に排水するときのみ、図12の2点鎖線のように外方に回動し、通常時は自重により垂下して第2下部排水孔52を閉じることにより、雨水や外気等が通水孔53を介して下枠5内に逆流するのを防止しうるようになっている。
【0045】
上記嵌合部47は、第1下部排水孔43に適正に嵌合可能な、前後両方向に開口する横長の楕円中空筒状をなし、図10〜図12に示すように、嵌合部47の下面の一部を先端から基端に向かって切り欠くことにより、下面には、下部排水室50に連通する開放部56が形成されている。このような開放部56を設けると、排水弁装置45を下枠5に装着した際に、外中空部36内に流入した水が、開放部56及び通水孔53を介して、下部排水室50に流入し易くなる(図6参照)。
【0046】
嵌合部47の上面には、第1下部排水孔43の開口部の内側上縁に係合可能な左右1対の係合爪57、57が、上向きに突設されている。
また、図11及び図12に示すように、嵌合部47の両側面には、その部分を側面視後向きコ字状に切り欠くことにより、後端部を中心として左右方向に弾性変形可能な弾性片58、58が一体的に連設され、それらの外側面には、第1下部排水孔43の内側の開口縁に弾性係合可能な係合爪59、59が、外向きに突設されている。なお、嵌合部47の上面の係合爪57は省略することもある。
【0047】
嵌合部47を、室外側より第1下部排水孔43に嵌合すると、各係合爪57、59が第1下部排水孔43の開口部の内縁に係合して抜止めされることにより、排水弁装置45は、図6及び図7に示すように、下枠5の外面の第1下部排水孔43と第1上部排水孔44を排水ケース部46により覆うとともに、上部排水室49と下部排水室53とが、それぞれ第1上部排水孔44と第1下部排水孔43とに連通するようにして、水密的に装着される。なお、下枠5と排水ケース部46との当接面に、パッキン等を介在させてもよい。
【0048】
窓枠1が風雨にさらされると、図3に示すように、下枠5における召し合せ部Aの右方の室外開放領域Cに雨水が大量に入り込み、外案内溝21と中案内溝22に溜まり易くなる。
また、台風等により風雨が強くなった際には、外障子3が配置されている部分の外ガイドレール18や、内障子2が配置されている内ガイドレール19を乗り越えた雨水が、室内開放領域Bの中案内溝22や内案内溝23に浸入することがある。
【0049】
図6に矢印で示すように、下枠5には、内案内溝23、第1水抜き孔38、中案内溝22、第2水抜き孔39、内中空部37、連通孔41、及び外中空部36を介して、3個の第1下部排水孔43に連通する第1排水経路60と、図7に矢印で示すように、室外開放領域Cの中案内溝22、第3水抜き孔42、及び外案内溝21を介して、3個の第1上部排水孔44に連通する第2排水経路61とが形成され、これら第1、第2排水経路60、61を介して、下枠5の各案内溝21、22、23に浸入した水を室外に排水することができる。
【0050】
内案内溝23の全領域に浸入した水と、室内開放領域Bの中案内溝22に浸入した水は、第1排水経路60を介して室外に排水される。
すなわち、図5の矢印にも示すように、内案内溝23に浸入した水は、室内開放領域Bの内ガイドレール19に設けた左右2個の第1水抜き孔38を介して、室内開放領域Bの中案内溝22に流出し、中案内溝22に浸入した水と合流して、左右2個またはいずれか1個の第2水抜き孔39介して内中空部37内に流入する。
【0051】
内中空部37に流入した水は、仕切片35の連通孔41を介して外中空部36内に流出し、下枠5の垂下片17aに装着した3個の排水弁装置45の下部排水室50に流入したのち、排水弁54を水圧により開いて、排水ケース部46の第2下部排水孔52より室外に排水される。
【0052】
一方、室外開放領域Cの中案内溝22及び外案内溝21の全領域に浸入した水は、第2排水経路61を介して室外に排水される。
すなわち、図5及び図7の矢印で示すように、室外開放領域Cの中案内溝22に浸入した水は、室外開放領域Cの外ガイドレール18に設けた左右2個の第3水抜き孔42を介して、外案内溝21に流出する。
【0053】
外案内溝21に流出した水は、外立上り片17に設けた3個の第1上部排水孔44を介して、各排水弁装置45の上部排水室49に流入し、左右2個の第2上部排水孔51より室外に排水される。この際、室外開放領域Cの中案内溝22から外案内溝21に至る排水経路は短いので、室外開放領域Cの中案内溝22に溜まった水を外案内溝21に速やかに流出させて、排水弁装置45の第2上部排水孔51より室外に排水することができる。また、外案内溝21の底面を下向きの傾斜面24としてあるので、外案内溝21に溜まった水を、より速やかに排水することができる。
【0054】
このように、上記の排水構造においては、下枠5に、経路の異なる第1排水経路60と第2排水経路61を形成し、主として下枠5の室内側に浸入した水を、第1排水経路60を介して、排水弁装置45における下部排水室50に流入させ、排水弁54を開いて第2下部排水孔52より室外に排水するとともに、下枠5の室外側に浸入した水を、第2排水経路61を介して、排水弁装置45における上部排水室49に流入させ、その第2上部排水孔51より室外に排水するようにしているので、室内が負圧になるなどしても、第2排水経路61の水が第1排水経路60側に流入して、下枠5の室内側に逆流する恐れはない。
【0055】
また、上記実施形態の排水弁装置45においては、下枠5に設けた第1下部排水孔43と第1上部排水孔44を覆いうる大きさの排水ケース部46内に、下枠5側に開口するとともに、第2上部排水孔51を有する上部排水室49と、内部に逆止弁式の排水弁54を収容した下部排水室50とを、上下に区画して形成し、嵌合部47を第1下部排水孔43に嵌合して、排水弁装置45を下枠5に装着することにより、上部排水室49を第1上部排水孔44に、下部排水室50を第1下部排水孔43にそれぞれ連通させるようにしているので、異なる排水経路60、61を介して、上下に離間する第1下部排水孔43と第1上部排水孔44に導かれた水を、1つの排水弁装置45をもって室外に排水することができる。
【0056】
従って、従来のように、第1下部排水孔43と第1上部排水孔44とのそれぞれに、排水弁装置45を装着する必要はなく、部品点数及び取付工数が削減されてコスト低減を図ることができるとともに、窓枠1の外観的体裁が向上する。
【0057】
また、複数の係合爪57、59を有する嵌合部47を、第1下部排水孔43に嵌合するのみで、排水弁装置45を下枠5に抜止めして簡単に装着しうるため、ねじ等の固定手段が不要となる。
【0058】
図13は、排水弁装置45の第2の実施形態を示す縦断側面図で、この実施形態においては、排水ケース部46の仕切片48と後面板46bとに、上部排水室49と下部排水室50とに連通する上下方向を向く連通孔62を設け、この連通孔62を第2上部排水孔として、排水ケース部46の上部排水室49に流入した第2排水経路61の水を、連通孔62を介して下部排水室50内に流下させ、下部排水室50内に流入した第1排水経路60の水と一緒に、排水弁54を開いて第2下部排水孔52より室外に排水しうるようにしたものである。
【0059】
このようにすると、上述した実施形態の排水弁装置45のような、外部に露出する第2上部排水孔51を設ける必要がなく、かつ排水弁54は常時閉じているので、室外から上部排水室49内に雨水が流入する恐れがなくなる。
【0060】
なお、上記実施形態の排水弁装置45においては、その装着を容易とするために、嵌合部47を一体的に連設してあるが、この嵌合部47を省略して排水ケース部46のみとし、この排水ケース部46を、ねじや接着等の固定手段により、下枠5の外面に取付けることもある。
【符号の説明】
【0061】
1 窓枠
2 内障子
3 外障子
4 上枠
5 下枠
5a上片
5b下片
5c躯体取付片
6 側枠
7 躯体
8 上框
9 下框
10 内框
11 外框
12 框枠
13 シール材
14 窓ガラス
15 施錠装置
16 シール材
17 外立上り片
17a垂下片
18 外ガイドレール
19 内ガイドレール
20 内立上り片
20a垂下片
21 外案内溝
22 中案内溝
23 内案内溝
24 傾斜面
25 凹孔
26 レール部材
27 下向凹孔
28 戸車
29 外ガイドレール
30 内ガイドレール
31 網戸
32 下向きガイドレール
33 シール材
34 仕切部材
35 仕切片
36 外中空部
37 内中空部
38 第1水抜き孔
39 第2水抜き孔
40 導水溝
41 連通孔
42 第3水抜き孔
43 第1下部排水孔(下部排水孔)
44 第1上部排水孔(上部排水孔)
45 排水弁装置
46 排水ケース部
46a前面板
46b後面板
47 嵌合部
48 仕切片
49 上部排水室
50 下部排水室
51 第2上部排水孔
52 第2下部排水孔
53 通水孔
54 排水弁
55 支軸
56 開放部
57 係合爪
58 弾性片
59 係合爪
60 第1排水経路
61 第2排水経路
62 連通孔(第2上部排水孔)
A 召し合せ部
B 室内開放領域
C 室外開放領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠の下枠の室内外方向の外側面に装着され、前記外側面に設けた上下2個の排水孔に導かれた水を、室外に排水するようにした窓枠用排水弁装置であって、
前記上下2個の排水孔を覆いうる大きさの排水ケース部を備え、この排水ケース部の内部空間を、前記上部の排水孔と連通する上部排水室と、前記下部の排水孔と連通する下部排水室とに区画し、前記排水ケース部に、前記上部排水室に流入した水を外部に排水する第2の上部排水孔と、下部排水室に流入した水を外部に排水する第2の下部排水孔とを設けるとともに、前記第2の下部排水孔に、通常時はこの第2の下部排水孔を閉塞し、下部排水室に流入した水を外部に排水するときのみ開弁する排水弁を設けたことを特徴とする窓枠用排水弁装置。
【請求項2】
排水ケース部における第2の下部排水孔と反対側の壁面に、下部排水室と連通するとともに、外周面に係合爪を有する中空筒状の嵌合部を連設し、この嵌合部を下枠の下部の排水孔に嵌合し、前記係合爪を排水孔の開口縁に係合させることにより、前記排水ケース部を、下枠の外面に装着しうるようにしたことを特徴とする請求項1記載の窓枠用排水弁装置。
【請求項3】
嵌合部の外周面の対向部をコ字状に切り欠くことにより、1対の弾性片を形成し、これら両弾性片の外面に係合爪を突設したことを特徴とする請求項2記載の窓枠用排水弁装置。
【請求項4】
嵌合部の下面の一部を、先端から基端に向かって切り欠くことにより、嵌合部の下面に、排水ケース部の下部排水室に連通する開放部を形成したことを特徴とする請求項2または3記載の窓枠用排水弁装置。
【請求項5】
第2の下部排水孔及び排水弁を横長の方形をなすものとし、前記排水弁の上端部を、排水ケース部に設けた横向きの支軸により回動自在に支持したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の窓枠用排水弁装置。
【請求項6】
上部排水室と下部排水室とを、上下方向を向く連通孔により連通させることにより、この連通孔を、上部排水室に流入した水を第2の下部排水孔を介して外部に排水する第2の上部排水孔としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の窓枠用排水弁装置。
【請求項7】
窓枠の下枠の上面に、引き違い式の内障子と外障子の下端部を移動可能にガイドする内ガイドレールと外ガイドレールを上向きに突設するとともに、前記下枠の内端に連設された内立上り片と前記内ガイドレールとの間、前記内外のガイドレールとの間、及び前記下枠の外端に連設された外立上り片と前記外ガイドレールとの間に、それぞれ、前記両障子の下端部が収容される内案内溝と中案内溝と外案内溝とを形成してなる窓枠の排水構造において、
前記外立上り片に上部排水孔を設けるとともに、前記下枠における下部に長手方向を向く中空部と、この中空部の外方の下枠の外面に、中空部と連通する下部排水孔を設け、前記下枠に、前記内案内溝、前記中案内溝の室内開放領域、及び前記中空部に連通し、内案内溝と中案内溝の室内開放領域に浸入した水を前記下部排水孔に導く第1排水経路と、前記中案内溝の室外開放領域と前記外案内溝とに連通し、中案内溝の室外開放領域と外案内溝に浸入した水を前記上部排水孔に導く第2排水経路とをそれぞれ形成し、前記下枠の外面に、請求項1〜6のいずれかに記載の排水弁装置を、その排水ケース部により前記上下の排水孔を覆うとともに、排水ケース部の上部排水室と下部排水室とが、それぞれ前記上部排水孔と下部排水孔とに連通するようにして装着したことを特徴とする窓枠の排水構造。
【請求項8】
外案内溝の底面を、室外側に向かって斜め下向きに傾斜する傾斜面としたことを特徴とする請求項7記載の窓枠の排水構造。
【請求項9】
中案内溝における内障子と外障子とが重なる召し合せ部に、室内開放領域と室外開放領域との間の水の流れを遮断する仕切部材を設けたことを特徴とする請求項7または8記載の窓枠の排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−87567(P2013−87567A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231287(P2011−231287)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(300088186)株式会社エクセルシャノン (30)
【出願人】(000175560)三協立山株式会社 (529)
【Fターム(参考)】