説明

窓際の暖房装置

【課題】窓下の腰壁に設置されるコールドドラフト防止用の暖房装置であって、熱効率に優れ、一層の省エネルギー化を図ることができる窓際の暖房装置を提供する。
【解決手段】窓際の暖房装置は、給湯装置から供給される温水の循環によって放熱する放熱面をその一面に各備え、かつ、通気用の隙間を介して放熱面を対向させた状態に平行かつ並列に組み付けた2枚の温水パネル1で構成される。放熱面を壁面7と平行させ且つ腰壁の床から離間させた位置に取り付けられることにより、床側の空気を通気用の隙間で加温して上方の窓8側へ放出するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓際の暖房装置に関するものであり、詳しくは、寒冷季に居室の窓で生じるコールドドラフトを防止するための窓際の暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷季においては、低温の外気で窓ガラスが冷却され、窓付近の室内空気が冷やされるため、窓際においては、床側へ向かう冷気の流れ、いわゆるコールドドラフトが生じる。コールドドラフトを防止する技術としては、例えば、居室の窓下の腰壁に設置される暖房器であって、電気式の面状発熱体が各積層された2枚のパネル部を対向配置した扁平な箱形構造に構成され、装置下部の空気導入用の開口から2枚のパネル部の間の隙間に床側の空気を導入し、これを面状発熱体で加温し、上端部の空気吹出し用の開口から窓側へ暖かい空気を放出することにより、窓付近の冷気の発生を防止するようにした壁面暖房器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−22993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような壁面設置型の暖房装置は、窓ガラス全面に対応する十分な熱量の昇温空気をいわゆる電気ヒーターによって直接生成するため、消費電力の大きさに比べて熱効率が悪く、省エネルギー化を図り難いと言う問題がある。また、一年を通じて窓下の居室空間を占有するため、コールドドラフトが発生しない温暖な時期には日常生活の妨げになると言う問題があり、一層省スペースで設置できる構造が望まれる。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、窓下の腰壁に設置されるコールドドラフト防止用の暖房装置であって、熱効率に優れ、一層の省エネルギー化を図ることができる窓際の暖房装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、居室における占有空間を一層低減できる窓際の暖房装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、2枚の温水パネルを平行かつ並列に組み付けてなる温水循環型の装置を窓下の腰壁に設置し、各温水パネルの間の隙間で床側の空気を加温し、加温された空気を窓ガラスの部屋内側に供給するようにした。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、室内の窓下の腰壁に設置される暖房装置であって、給湯装置から供給される温水の循環によって放熱する放熱面をその一面に各備え、かつ、通気用の隙間を介して放熱面を対向させた状態に平行かつ並列に組み付けた2枚の温水パネルで構成され、放熱面を壁面と平行させ且つ腰壁の床から離間させた位置に取り付けられることにより、床側の空気を通気用の隙間で加温して上方の窓側へ放出するように構成されていることを特徴とする窓際の暖房装置に存する。
【0008】
また、本発明の他の態様においては、一層の省スペース化を図るため、2枚の温水パネルは、腰壁側に取り付けられる第1の温水パネルと、当該第1の温水パネルに組み付けられた部屋内側の第2の温水パネルとからなり、少なくとも第2の温水パネルは、腰壁の壁面に対して接近離間可能に構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温水循環式の温水パネルによって構成されているため、熱効率に優れており、一層の省エネルギー化を図ることができる。床暖房設備の付帯設備として既設の居室でも簡単に設置でき、しかも、長時間に渡って安全に使用できる。また、本発明において、2枚の温水パネルのうち、部屋内側の第2の温水パネルを腰壁の壁面に対して接近離間可能に構成された態様によれば、不使用時には第2の温水パネルを壁面側に引込めることができ、居室における占有空間を一層低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る窓際の暖房装置の設置形態を示す居室の全体図である。
【図2】本発明に係る窓際の暖房装置における温水パネルの構造および設置構造を側面側から示した縦断面図である。
【図3】本発明の他の態様に係る窓際の暖房装置における温水パネルの構造および設置構造を側面側から示した縦断面図である。
【図4】温水パネルの構造を示す図であり、分図(a)はパネル内部の通水管の配置形態を示した平面図、分図(b)はパネルの部材構成を厚さ方向に沿って破断して示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る窓際の暖房装置(以下「暖房装置」と言う。)の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の暖房装置は、寒冷季に窓際で生じるコールドドラフトを防止するための装置であり、図1に符号(S)で示すように、室内の窓8の下の腰壁に設置される。図1は、2箇所に暖房装置Sを設置した例を示している。
【0012】
本発明の暖房装置Sは、図1に示すように、2枚の温水パネル1で構成されている。各温水パネル1は、窓枠の下枠に沿わせて腰壁に取り付けるため、横に細長い略長方形の正面形状を備えている。暖房装置Sの大きさは、窓8の面積および想定されるコールドドラフトの冷熱量に応じて、必要な放熱量を勘案して幾つかの規格として設計される、通常、温水パネル1の正面寸法は、長辺部分(水平方向の長さ)を80〜250cm程度、短辺部分(高さ)を15〜30cm程度に設定されている。
【0013】
各温水パネル1は、図2(c)及び図3(c)に示すように、各々、給湯装置(図示省略)から供給される温水の循環によって放熱する放熱面24cをその一面に備えており、2枚の温水パネル1は、通気用の隙間4を介して放熱面24cを対向させた状態に平行かつ並列に組み付けられている。すなわち、本発明の暖房装置Sは、腰壁側に取り付けられる第1の温水パネル1aと、当該第1の温水パネルに組み付けられた部屋内側の第2の温水パネル1bとからなる。
【0014】
図4(b)に示すように、各温水パネル1は、発泡樹脂成形体からなる断熱材としての板状基材20と、当該板状基材の一面側(図の上側)の溝に配置された温水循環路としての通水管21と、板状基材20の一面側表面に貼着された熱拡散シート23と、板状基材20の他面側(放熱面24cと反対の面側)及び熱拡散シート23の外面側(放熱面側)にそれぞれ配置された保護板24とから主に構成されている。そして、通水管21に温水を循環させることにより、温水の熱を熱拡散シート23の全面に拡散し、板状基材20一面側の保護板24を介して空気を加温するようになされている。
【0015】
具体的には、板状基材20は、平面形状が例えば細長の長方形に形成された厚さ7〜20mm程度の薄板状の発泡樹脂成形体の小片を多数配列して構成されている。発泡樹脂成形体としては、硬質ポリウレタン発泡体、硬質ポリエチレン発泡体、硬質ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、フェノール樹脂発泡体、硬質ポリ塩化ビニル発泡体、ポリメチルメタクリレート発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリフェニレンオキサイド発泡体、ポリスチレンとポリエチレン混合物の発泡体などが挙げられ、板状基材20には、通水管21を配置するための溝が当該板状基材の成型時に所定のパターンで一面に形成されている。
【0016】
通水管21は、板状基材20の上記の溝に対し、熱拡散シート23に接触する状態で配置されている。通水管21としては、外径4〜10mm、内径4〜7mmの架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、ポリプロピレン管、ポリエチレン管などの樹脂管が使用される。両方の温水パネル1を合わせて通水管21の全長は5〜25m程度とされる。また、温水パネル1の放熱面24cにおける出力を高め且つ放熱効率を高めるため、通水管21の少なくとも一部分、例えば直線状に配置された部分は、その長さ方向に直交する断面がU字状に形成された樋状の金属製伝熱部材22に収容して上記の溝に配置されていてもよい。
【0017】
図4(a)は温水パネル1の内部構造を平面的に示したものであるが、斯かる図に示すように、通水管21は、各温水パネル1における配置や連結を工夫することにより、2枚の温水パネル1において例えば1系統の温水循環路を構成している。具体的には、第1の温水パネル1aにおいては、板状基材20上に2本の通水管21が配置されている。2本の通水管21は、板状基材20の長さ方向に沿って水平に伸長され且つ左右何れかの端部で折り返された状態、すなわち、細長のU字を横に転倒させた状態で内外に入れ子状に配置される。これに対し、第2の温水パネル1bにおいては、1本の通水管21が配置されている。斯かる通水管21は、第1の温水パネル1aにおけるのと同様に細長のU字を横に転倒させ、更にU字の一端側を折り返して当該U字に添わせることにより、入れ子状に2つのU字を並べた状態に配置されている。
【0018】
第1の温水パネル1aにおいて、内側の通水管21の一端には、給湯装置から伸長された温水供給管を繋ぎ込む温水入口11が設けられ、内側の通水管21の他端には、第2の温水パネル1bへ温水を供給する連結管12が接続されている。また、外側の通水管21の一端には、第2の温水パネル1bに循環させた温水を戻す連結管12が接続され、外側の通水管21の他端には、給湯装置へ向けて伸長された温水の戻り管を繋ぎ込む温水出口14が設けられている。他方、第2の温水パネル1bにおいては、通水管21の一端に上記の連結管12が接続され、通水管21の他端に上記の連結管13が接続されている。
【0019】
すなわち、2枚の温水パネル1における上記の温水循環路は、給湯装置から温水入口11に供給された温水が最初に第1の温水パネル1aの内側の通水管21を流れた後、連結管12を介して第2の温水パネル1bの通水管21に流れ、次いで、連結管13を介して第1の温水パネル1aの外側の通水管21に流れ、そして、温水出口14から給湯装置に戻るように流路構成されている。
【0020】
図4(b)に示す熱拡散シート23は、厚さが通常は10μm〜200μm、好ましくは30μm〜100μmで且つ熱伝導性に優れた可撓性のフィルム又はシート、例えば、アルミニウム箔、錫箔、銅箔、ステンレス鋼箔などの金属箔、金属製の織布や不織布、樹脂フィルム又は樹脂シート、あるいは、これらを組合せた積層シート等によって構成されている。熱拡散シート23は、板状基材20の表面に接着剤や接着剤フィルム等よって貼着されている。
【0021】
各温水パネル1において、保護板24は、板状基材20及びその表面の熱拡散シート23を保護し、かつ、意匠性を高めるために配置されている。保護板24としては、耐衝撃性および熱伝導性能に優れた薄板状部材であれば、各種金属からなる薄板を使用できる。例えば、保護板24としては、合成樹脂シートの両面に金属シートを積層してなる複合板、すなわち、金属シート/樹脂シート/金属シートの層構成を備えた複合板が挙げられる。
【0022】
上記のような複合板としては、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)等からなる厚さ約0.1〜0.5mmのシートと、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂からなる約0.6〜1.0mmの芯材としてのシートとを積層したものが挙げられる。斯かる複合板は、溶融押出しされた合成樹脂シートの両面にアルミニウムシートを重ね合わせ、回転ロールの間に通過させ且つ接着剤を使用して密着することにより製造される。斯かる複合板としては、例えば三菱樹脂社製の「アルポリック」(登録商標)が挙げられる。
【0023】
また、本発明の暖房装置においては、居室における意匠性を考慮し、少なくとも、第2の温水パネル1bの部屋内側へ向けられた上記の保護板24の表面(図2及び図3において第2の温水パネル1bの左側の面)、すなわち、熱拡散シート23を貼着していない板状基材20の他面側に配置された保護板24の表面は、塗装、フィルムコーティング、研磨仕上などによって意匠面に形成されているのが好ましい。
【0024】
更に、図4(a)に示すように、各温水パネル1は、パネルとしての剛性を確保し且つ意匠性を高めるため、外周部が額縁状の枠部材25で枠組みされている。枠部材25は、例えば図4(b)に示すように、両端が開口する中空構造のアルミニウムの押出し型材からなり、パネルの縦横に配置されることにより、通水管21や熱拡散シート23が付設された板状基材20及びその両面の保護板24を外周側から固定している。そして、縦横の枠部材25は、これら枠部材の端部開口に挿入可能な2つのバーが互いに直交する方向に突設されたコーナー部材によって連結されている。なお、上記のような温水パネル1の単独の構造は、例えば特開2009−210189号公報に壁面設置型の暖房器として開示されている。
【0025】
また、図示しないが、各温水パネル1においては、上記のような発泡樹脂からなる板状基材20に代えて、蓄熱材としての板状基材を使用することもできる。すなわち、2枚の温水パネル1は、各々、扁平な容器に蓄熱材を封入してなる板状基材と、前述と同様の通水管21、熱拡散シート23及び保護板24で構成されていてもよい。そして、前述の態様と同様に、好ましくは、第2の温水パネル1bの部屋内側へ向けられた保護板24の表面(熱拡散シート23が貼着されていない板状基材の他面側に配置された保護板24の表面)が意匠面に形成されている。
【0026】
蓄熱材としての上記の板状基材は、前述の発泡樹脂の板状基材20と同様に、外形を扁平な直方体に形成され且つその最大面に相当する一盤面に通水管配置用の溝が設けられた中空の容器と、当該容器に封入された液状の蓄熱材とから構成されている。蓄熱材としては、例えば、ノルマルパラフィン等の有機化合物、硫酸ナトリウム10水和物や酢酸ナトリウム3水和物などの無機水和物が挙げられる。上記のように板状基材が蓄熱材として構成されている場合には、温水の熱を板状基材に蓄えることができるため、温水の循環状態、すなわち、温水の循環/停止による放熱量の変動が少なく、ほぼ一定の暖房効果が得られ、かつ、無駄なく温熱を利用でき、一層の省エネルギー効果が得られる。
【0027】
本発明の暖房装置Sは、図1に示すように、加温された空気を窓8のガラス面近傍に供給するため、温水パネル1の放熱面24c(図2及び図3参照)を壁面7と平行させ且つ腰壁の床から離間させた位置に取り付けられることにより、床側の空気を通気用の隙間4(図2(c)及び図3(c)参照)で加温して上方の窓8側へ放出するように構成されている。
【0028】
隙間4の大きさ、すなわち、第1の温水パネル1aと第2の温水パネル1bとの離間距離は、通常は20〜70mm、好ましくは40〜50mmに設定されている。隙間4の大きさを上記の範囲に設定する理由は次の通りである。すなわち、隙間4の大きさが20mmよりも狭い場合には、隙間4の空気の昇温効果は高くなるが、空間容積が小さいため、熱効率が低下する傾向にある。これに対し、隙間4の大きさが70mmを超えた場合には、隙間4で生成される加温用空気の温度が低くなり、しかも、より広い範囲に拡散するため、コールドドラフトの発生を十分に抑制できない。
【0029】
更に、図2及び図3に示すように、本発明の暖房装置Sにおいては、居室の占有空間をできる限り低減するため、第1の温水パネル1aは腰壁側に取り付けられ、第2の温水パネル1bは第1の温水パネル1aに組み付けられており、そして、少なくとも第2の温水パネル1bは、腰壁の壁面7に対して接近離間可能に構成されている。換言すれば、温水パネル1のうちの第2の温水パネル1bが使用時には腰壁からせり出した状態となり、不使用時には腰壁に近接した状態となる、いわゆる可動構造を備えている。
【0030】
上記の可動構造としては、腰壁に対して2枚の温水パネル1の全体が移動する構造、あるいは、第2の温水パネル1bだけが移動する構造が挙げられる。具体的には、2枚の温水パネル1の全体が移動する構造としては図2に示す構造が挙げられ、第2の温水パネル1bだけが移動する構造としては図3に示す構造が挙げられる。
【0031】
図2に示す暖房装置Sにおいて、2枚の温水パネル1は、これら温水パネルの枠部材25に渡って架け渡された複数の梁状のスペーサー31で連結されることにより、平行かつ並列に組み付けられている。一方、窓8の下の腰壁には、6面体の一面が開放された形状の箱状のケーシング5が開放部分を部屋内側へ向けて取り付けられており、2枚の温水パネル1は、前記の開放部分からケーシング5に摺動自在に収納されている。換言すれば、2枚の温水パネル1は、腰壁に対し、一定の大きさの通気用の隙間4を保持した状態で収納可能に取り付けられている。
【0032】
各温水パネル1の左右の枠部材25(縦枠)には、その長さの略中央部分に水平な溝(図示省略)が切り欠かれており、かつ、ケーシング5の内側面には、前記の溝に凹凸勘合する水平な突条51が案内として設けられている。更に、ケーシング5の両内側面(左右の内側面)には、細長の平板の先端部を屈曲させてなるストッパー61が回動自在に取り付けられている。
【0033】
ストッパー61は、基端がケーシング5の内側面の支点に回動自在に取り付けられ、先端の屈曲部分が第1の温水パネル1aと第2の温水パネル1bの間の隙間4に挿入されている。しかも、ストッパー61の長さは、図2(c)に示すように、当該ストッパーの長手方向を水平状態にした際、先端の屈曲部分だけが壁面7から突出する程度に設定されている。従って、突条51に沿って前後に温水パネル1をスライドさせることができ、かつ、部屋内側へ移動させた際に第1の温水パネル1aに対するストッパー61の引掛け機能により温水パネル1の移動端を規定することができる。
【0034】
すなわち、暖房装置Sは、不使用時は図2(a)に示すように2枚の温水パネル1をケーシング5に収めた状態、換言すれば、腰壁の内部に収めた状態とすることができ、使用時は図2(b)に示すように第2の温水パネル1bを部屋内側へ引き出し、更に図2(c)に示すように第1の温水パネル1aを壁面7と略面一の位置とすることにより、放熱面24cが対向し且つ上下に開口する隙間4を窓8の直下に位置させることが出来る。
【0035】
図3に示す暖房装置Sにおいて、2枚の温水パネル1は、これら温水パネルの枠部材25に渡って架け渡された複数の伸縮可能なスペーサー32で連結されることにより、平行かつ並列に組み付けられている。そして、窓8の下の腰壁には、2枚の温水パネル1のうちの第1の温水パネル1aが取り付けられている。換言すれば、第2の温水パネル1bは、腰壁に固定された第1の温水パネル1aに対して接近離間可能に構成されている。
【0036】
上記のスペーサー32は、細長の平板からなる2つのリンクを連結して構成され、各温水パネル1の左右の枠部材25(縦枠)に渡って取り付けられている。スペーサー32の連結部分に相当する一方のリンクの先端部(図3における右側のリンクの左端部分)には、当該リンクの厚さ方向に折曲げて構成され且つ2つのリンクが直線状に伸び切った状態において他方のリンク(図3における左側のリンク)の側縁を受け止めるストッパーとしての係止片が設けられている。従って、スペーサー32が直線状に伸び切るまで第2の温水パネル1bをスライドさせることができ、かつ、スペーサー32の係止片のストッパー機能により第1の温水パネル1aと第2の温水パネル1bとの隙間4を一定の大きさに保持することができる。
【0037】
また、各温水パネル1の枠部材25の横枠には、コイルバネ等の弾性体34が挿入された伸縮ガイド33が架け渡されている。伸縮ガイド33は、複数、例えば4つの円筒体を入れ子状に勘合させ且つ各円筒体の端部に掛止部を設けて構成されている。斯かる伸縮ガイド33は、第1の温水パネル1aに対して平行かつ並列状態を維持したまま第2の温水パネル1bを接近離間させるためのずれ防止手段である。
【0038】
更に、弾性体34は、2枚の温水パネル1の枠部材25に直接架け渡されており、第1の温水パネル1aから第2の温水パネル1bを離間させた場合に当該第2の温水パネルを引き戻す方向に付勢する。従って、第1の温水パネル1aから第2の温水パネル1bが離れた状態において前述のスペーサー32の中央部を僅かに押し下げることにより、弾性体34の復元力によって第1の温水パネル1aの前面に第2の温水パネル1bを重ねた状態に戻すことができる。
【0039】
すなわち、暖房装置Sは、不使用時は図3(a)に示すように第1の温水パネル1aの前面に第2の温水パネル1bを重ねた状態、換言すれば、腰壁に寄せた状態とすることができ、使用時は図3(b)に示すように第2の温水パネル1bを部屋内側へ引き出し、図3(c)に示すように第1の温水パネル1aから第2の温水パネル1bを一定間隔引き離すことにより、放熱面24cが対向し且つ上下に開口する隙間4を窓8の直下に位置させることが出来る。
【0040】
本発明の暖房装置Sは、図1に示すように、窓8の窓枠(下枠)に沿って腰壁に且つ床から離間させた位置に取り付けられる。上記のように、図2に示す態様においては、窓8の直下に隙間4が位置するように、ケーシング5から2枚の温水パネル1を引き出す。また、図3に示す態様においては、窓8の直下に隙間4を形成するように、第1の温水パネル1aに対して第2の温水パネル1bを手前に移動させる。そして、給湯装置(図示要略)から供給された温水を第1の温水パネル1a及び第2の温水パネル1bに循環させ、隙間4で床側の空気を昇温し、斯かる空気を腰壁の上部の窓8に供給する。
【0041】
なお、給湯装置としては、ガスの燃焼や電力によって温水を製造する例えば床暖房用の湯沸し装置やボイラー装置が使用される。給湯装置は、ヘッダー装置、循環用のポンプ、循環する温水の温度を検出して火力および流量を制御する制御装置などを備えており、暖房装置Sには、給湯装置から40〜80℃程度の温水が供給される。そして、暖房装置Sにおいて、第1の温水パネル1a及び第2の温水パネル1bに上記の温水を循環させた後、30〜60℃程度の温水が給湯装置へ戻される。
【0042】
上記のように、本発明の暖房装置Sは、2枚の温水パネル1を平行かつ並列に組み付けてなる温水循環型の装置であり、各温水パネル1の間の隙間4で床側の空気を加温し、加温された空気を窓8のガラスの部屋内側に供給することにより、コールドドラフトの発生を防止する。本発明においては、温水の循環によって加温された空気を生成するため、電気ヒーター等を使用した方式に比べ、熱効率に優れており、省エネルギー化を図ることができる。また、床暖房設備の付帯設備として既設の居室でも簡単に設置でき、しかも、長時間に渡って安全に使用できる。
【0043】
更に、本発明の暖房装置Sは、前述したように、少なくとも第2の温水パネル1bが腰壁の壁面7に対して接近離間可能に構成されており、不使用時には腰壁側に収めることができる。図2に示す態様においては、ケーシング5に2枚の温水パネル1を収めた状態とすることができ、また、図3示す態様においては、第1の温水パネル1aの前面に第2の温水パネル1bを重ねた状態とすることができる。従って、コールドドラフトが発生しない温暖な時期においては、居室における占有空間を低減することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 :温水パネル
1a:第1の温水パネル
1b:第2の温水パネル
11:温水入口
12:連結管
13:連結管
14:温水出口
20:板状基材
21:通水管
22:金属製伝熱部材
23:熱拡散シート
24:保護板
24c:放熱面
25:枠部材
31:スペーサー
32:スペーサー
33:伸縮ガイド
34:弾性体
4 :隙間
5 :ケーシング
51:突条
61:ストッパー
7 :壁面
8 :窓
S :暖房装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の窓下の腰壁に設置される暖房装置であって、給湯装置から供給される温水の循環によって放熱する放熱面をその一面に各備え、かつ、通気用の隙間を介して放熱面を対向させた状態に平行かつ並列に組み付けた2枚の温水パネルで構成され、放熱面を壁面と平行させ且つ腰壁の床から離間させた位置に取り付けられることにより、床側の空気を通気用の隙間で加温して上方の窓側へ放出するように構成されていることを特徴とする窓際の暖房装置。
【請求項2】
2枚の温水パネルは、腰壁側に取り付けられる第1の温水パネルと、当該第1の温水パネルに組み付けられた部屋内側の第2の温水パネルとからなり、少なくとも第2の温水パネルは、腰壁の壁面に対して接近離間可能に構成されている請求項1に記載の窓際の暖房装置。
【請求項3】
2枚の温水パネルは、腰壁に対し、一定の大きさの通気用の隙間を保持した状態で収納可能に取り付けられている請求項2に記載の窓際の暖房装置。
【請求項4】
第2の温水パネルは、腰壁に固定された第1の温水パネルに対して接近離間可能に構成されている請求項2に記載の窓際の暖房装置。
【請求項5】
2枚の温水パネルは、各々、発泡樹脂成形体からなる板状基材と、当該板状基材の一面側の溝に配置された温水循環路としての通水管と、板状基材の一面側表面に貼着された熱拡散シートと、板状基材の他面側および熱拡散シートの外面側にそれぞれ配置された保護板とから主に構成され、しかも、第2の温水パネルの部屋内側へ向けられた保護板の表面が意匠面に形成されている請求項2〜4の何れかに記載の窓際の暖房装置。
【請求項6】
2枚の温水パネルは、各々、扁平な容器に蓄熱材を封入してなる板状基材と、当該板状基材の一面側の溝に配置された温水循環路としての通水管と、板状基材の一面側表面に貼着された熱拡散シートと、板状基材の他面側および熱拡散シートの外面側にそれぞれ配置された保護板とから主に構成され、しかも、第2の温水パネルの部屋内側へ向けられた保護板の表面が意匠面に形成されている請求項2〜4の何れかに記載の窓際の暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−2375(P2012−2375A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135125(P2010−135125)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】