説明

立体不織布構造の製造装置及び製造方法

【課題】メルトブロー製造工程により立体で良好な均等性を有する立体不織布構造を製造する製造装置を提供する。
【解決手段】調整可能な支持部110と、立体型120と、立体型120と調整可能な支持部110を連結させ前記調整可能な支持部110に対し立体型120を回転させる回転軸130と、複数本の繊維をメルトブローする複数の孔を有するメルトブロー装置140とを備え、立体型120が前記孔の前で回転して繊維を受け、前記立体型120に立体不織布構造150を形成させる立体不織布構造の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不織布構造の製造装置に関し、特に、メルトブロー製造工程によって立体不織布構造を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維工業の発展につれて、いろいろな繊維製品がすでに私たちの日常生活に幅広く応用されている。通常の繊維製品として、下着、外着、靴、帽子等が挙げられ、製造する時において、ほとんどカッティング、縫合又は接着等の工程が必要とされ、一体成形で縫い目のない要求を満たすことが困難で、時間がかかる。
【0003】
また、立体不織布構造が製造され、縫い目のない製品として提供されているが、その生産量及び製品の厚みの均等性はまた不十分であり、一体成形で良好な均等性を有する不織布立体構造が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、立体で良好な均等性を有する立体不織布構造を製造するための装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、調整可能な支持部と、立体型と、立体型と調整可能な支持部を連結させ、調整可能な支持部に対し、立体型を回転させる回転軸と、複数本の繊維をメルトブローする複数の孔を有するメルトブロー装置とを備え、立体型が孔の前で回転して繊維を受け、立体型に立体不織布構造を形成させる立体不織布構造の製造装置を提供する。
【0006】
このとき、立体型の両側と回転軸の間の最大幅がほぼ同じであるのが好ましい。メルトブロー装置の孔の密度が立体型の形状に合わせて調整される。また、立体不織布構造の製造装置は、立体型に近接して設けられ、余計な繊維を除去する収集軸を備える。更に、立体不織布構造の製造装置は、立体不織布構造を加熱してプレスするホットプレス装置を備える。
【0007】
また、本発明は、コンベヤーと、複数本の繊維をメルトブローする複数の孔を有するメルトブロー装置と、複数の立体型と、立体型とコンベヤーを連結させ、立体型をコンベヤーで回転させる複数の回転軸とを備え、立体型のいずれかがコンベヤーによって孔の前に移動された時に、繊維が回転中の立体型上に付着して立体不織布構造を形成する立体不織布構造の製造装置を提供する。
【0008】
このとき、立体型の両側と回転軸の間の最大幅がほぼ同じであるのが好ましい。メルトブロー装置の孔の密度が立体型の形状に合わせて調整される。また、立体不織布構造の製造装置は、立体型に近接して設けられ、余計な繊維を除去する収集軸を備える。更に、立体不織布構造の製造装置は、立体不織布構造を加熱してプレスするホットプレス装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、立体型をメルトブロー装置の孔の前に素早く回転させ、メルトブロー装置からメルトブローされた繊維を立体型の表面に付着、沈積させ、立体不織布構造を形成することができる。また、本発明によれば、調整可能な支持部の位置、回転軸と立体型がなす角、孔の分布密度、立体型の回転速度、収集軸による余計な繊維を収集する方法等を調整することにより、立体不織布構造の均等性を向上して、剥離強度を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
下記図面の簡単な説明は、本発明の前記または他の目的、特徴、メリット、実施形態をより分かりやすくするためのものである。
【図1】本発明に係る立体不織布構造の製造装置の第1の実施形態を示す模式図。
【図2】本発明に係る立体不織布構造の製造装置における立体型120と回転軸130の相対位置関係を示す模式図。
【図3】本発明に係る立体不織布構造の製造装置における孔144の分布密度と立体型120の相互関係を示す模式図。
【図4】本発明に係る立体不織布構造の製造装置の第2の実施形態を示す模式図。
【図5】本発明に係る立体不織布構造の製造装置の第3の実施形態を示す模式図。
【図6】本発明に係る立体不織布構造の製造装置の第4の実施形態を示す模式図。
【図7】本発明に係る立体不織布構造の製造装置の第5の実施形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面及び詳細な説明によって本発明をより詳しく説明し、当該分野の技術を熟知しているものであれば、本発明の好適な実施形態を理解した後、本発明の精神と領域を離脱しない範囲内で、多様の変動や修正を加えることができる。
【0012】
図1は、本発明に係る立体不織布構造の製造装置の第1の実施形態の模式図である。立体不織布構造の製造装置100は、調整可能な支持部110、立体型120、調整可能な支持部110と立体型120を連結させる回転軸130、及びメルトブロー装置140を備える。立体型120は、規則又は不規則な形状であってよく、回転軸130によって、調整可能な支持部110に対して回転する。また、調整可能な支持部110によって、立体型120の高さと傾斜角度が調整される。メルトブロー装置140は、プラスチック原料を融溶状態に溶かして噴出し、繊維を形成する。メルトブロー装置140のノズル部材142に複数の孔144を有し、ノズル部材142から繊維を形成する原料が噴出される。立体型120をノズル部材142の前方に設置して回転させ、繊維を立体型120に付着させて、立体不織布構造150を形成する。
【0013】
調整可能な支持部110は、立体型120の高さと傾斜角度を変える外に、立体型120とノズル部材142の間の距離と角度を変えるように、調整可能な支持部110自身が移動可能である。回転軸130は、モーター132を備え、ノズル部材142に対して立体型120を回転させ、モーター132の回転速度を自由に調整することにより、立体型120の回転速度を調整する。立体型120の高さや、傾斜角度、回転速度、ノズル部材142との距離と角度等を含むパラメーターを調整することにより、一体成形の立体不織布構造150の厚みを一層に均等させることができる。
【0014】
図2は、本発明に係る立体不織布構造の製造装置における立体型120と回転軸130の相対位置関係を示す模式図である。立体型120が規則で対称軸を有する形状である場合は、回転軸130を対称軸に直接に沿って設けてよいが、立体型120が不規則な形状である場合は、立体型120とノズル部材(図1を参照)の間の距離が回転軸130と立体型120の間の角度に影響され、立体不織布構造(図1を参照)の均等性が影響される。このため、立体不織布構造の均等性を向上するために、立体型120を適切に配置する必要がある。
【0015】
本実施形態に示すように、立体型120は、中段部122、先端部124及び踵部126の幅と高さがいずれも異なり、不規則な形状を有する靴型であってよい。複数回の実験により、先端部124から回転軸130までの距離d1と、踵部126から回転軸130までの距離d2とがほぼ同じである時に、得られた立体不織布構造の均等性がより理想的である。即ち、立体型120の両端から回転軸130までのそれぞれの最大距離が、本実施例に示すように先端部124と踵部126から回転軸130までの距離d1及びd2がほぼ同じになるように、回転軸130と立体型120の間の角度を調整すれば、得られた立体不織布構造の均等性がより理想的である。
【0016】
図3は、本発明に係る立体不織布構造の製造装置におけるノズル部材142の孔144の分布密度と立体型120の相互関係を示す模式図である。靴型を立体型120として、中段部122の表面積が明らかに先端部124や踵部126の表面積より大きいので、同じ回転時間において、ノズル部材142が先端部124や踵部126を通す面積よりも、ノズル部材142が中段部122を通す面積が大きくなる。即ち、繊維が先端部124や踵部126に付着する時間よりも、繊維が中段部122に付着するための時間が長くなる。
【0017】
中段部122に沈積される繊維の厚みが先端部124と踵部126に沈積される厚みより厚くならないように、立体型120の形状に合わせて孔144の分布密度を調整して、例えば中段部122のような沈積される繊維が厚くなり易い箇所に対応する孔144の数を減らして、製品の均等性を向上するのを図る。実際に、沈積される繊維が厚くなり易い箇所を見つけるために、複数回の実験を行い、対応する孔144を塞いだりして、製品の均等性を有効に向上させることができる。
【0018】
実験の結果により、孔144と立体型120の間の距離は40〜70cmであってよく、好ましくは50〜60cmである。繊維の射出する方向と、立体型120と回転軸130が成す角は0度〜180度であってよく、好ましくは80度〜100度で、90度程度で製造が直接に行われることが一般的である。立体型120の回転速度は200rpm〜550rpmであってよく、200rpm〜250rpmである場合に、剥離強度が最適で好ましい。メルトブローする時間は製品の厚みによって決められる。
【0019】
図4は、本発明に係る立体不織布構造の製造装置の第2の実施形態を示す模式図である。立体不織布構造を製造する装置100は、調整可能な支持部110、立体型120、前記調整可能な支持部110と立体型120を連結させる回転軸130、及びメルトブロー装置140を備える外に、ホットプレス装置160を更に備える。メルトブロー装置140によってメルトブローされた繊維が立体型120に付着、沈積され、立体不織布構造150を形成した後、立体型120と前記形成された立体不織布構造150がホットプレス装置160によって加圧、加熱され、更に立体不織布構造150の形を定着させる。図5は、本発明に係る立体不織布構造の製造装置の第3の実施形態を示す模式図である。立体不織布構造の製造装置100は、調整可能な支持部110、立体型120、前記調整可能な支持部110と立体型120を連結させる回転軸130、メルトブロー装置140、及びホットプレス装置160を備える外に、立体型120に近接して設けられる収集軸170を更に備える。立体型120の形状が不規則な形状の場合、メルトブロー装置140から繊維をメルトブローする時に、多少に繊維が立体型120をはずれる可能性がある。この場合、収集軸170により立体型120に付着されたが有効に接着されていない余計な繊維を引いて収集して除去し、立体不織布構造150の均等性を向上させ、剥離強度を強化する。
【0020】
図6は、本発明に係る立体不織布構造の製造装置の第4の実施形態を示す模式図である。立体不織布構造の製造装置200は、調整可能な支持部210、立体型220、前記調整可能な支持部210と立体型220を連結させる回転軸230、メルトブロー装置240、及び収集軸270を備える。図に示すように、立体型220は、長さがメルトブロー装置240のノズル部材242の幅より長い。
【0021】
回転中の立体型220が連続的に進行するように、メルトブロー装置240に対し調整可能な支持部210が移動し、メルトブロー装置240からメルトブローされた繊維が立体型220に付着、沈積され、縫い目のない立体不織布構造250を形成する。立体型220には、直径の広い箇所と狭い箇所を有するので、立体不織布構造250の均等性を向上するために、立体型220の形状に合わせて、例えば、立体型220の直径の広い箇所がノズル部材242を通す時に、立体型220の滞留時間を伸ばすように、調整可能な支持部210の進行速度を調整してもよい。
【0022】
前記と同様に、立体型220の直径の狭い箇所がノズル部材242を通す時に、収集軸270により余計な繊維を除去し、不規則な形状の立体型220による余計な繊維の問題を解決し、立体不織布構造250全体均等性を向上して、剥離強度を強化する。
【0023】
図7は、本発明に係る立体不織布構造の製造装置の第5の実施形態を示す模式図である。立体不織布構造の製造装置300は、コンベヤー310、メルトブロー装置320、複数の立体型330、複数の回転軸340、ホットプレス装置350、及び繊維回収装置360を備える。コンベヤー310は、予定の方向に進行し、ループ状に設けられることが好ましい。立体型330がコンベヤー310の上で立って回転するように、回転軸340に支持される。繊維回収装置360は、メルトブロー装置320に近接して設けられる。
【0024】
立体型330は、メルトブロー装置320の前の所定領域に入る前に、第1の方向に回転され、メルトブロー装置320の前の所定領域に入った後に、第2の方向に回転される。これによって、付着した望ましくない繊維を引張って切断して、製品の均等性がこのような繊維に影響されることを回避する。
【0025】
前記のように、立体型330がメルトブロー装置320の前で所定の時間に回転し、メルトブロー装置320からメルトブローされた繊維を立体型330上に付着、沈積し、立体不織布構造370を形成する。そして、立体不織布構造370を立体型330に形成されたまま、ホットプレス装置350に入れ、ホットプレス装置350によって立体不織布構造370を加熱、加圧し、形状を定着させ、剥離強度を強化する。
【0026】
繊維回収装置360は、メルトブロー装置320に近接して設けられ、立体型330に付着していない繊維を回収する。繊維回収装置360は、集糸器362を備える。集糸器362は、メルトブロー装置320に対向して設けられるのが好ましく、立体型330をはずれた余計な繊維を回収する。繊維回収装置360は、メルトブロー装置320の原料の添加口に接続され、集糸器362に回収された余計な繊維を再利用可能な原料として、メルトブロー装置320に送って再び製造に利用される。
【0027】
本発明に係る立体不織布構造の製造装置は、靴、潜水服、マスク、頭巾、帽子、女性下着、運動下着、膝サポーター、腕サポーター等の製造に用いることができる。立体型は、規則又は不規則な形状であってよい。メルトブロー装置に用いる原料は、弾性プラスチック又は非弾性プラスチックであってよく、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、スチレン/ブタジエン/スチレン共重合物の熱可塑性弾性体(TPE)、熱可塑性ゴム(TPR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、セルロース(Cellulose)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ホットメルト接着剤(EMA、EVA)等材料であってよい。
【0028】
前記本発明の好適な実施形態により、本発明を応用すれば、下記のメリットが挙げられる。本発明によれば、立体型をメルトブロー装置のノズル部材の前に素早く回転させ、メルトブロー装置からメルトブローされた繊維を立体型の表面に付着、沈積させ、立体不織布構造を形成することができる。また、本発明によれば、調整可能な支持部の位置、回転軸と立体型がなす角、孔の分布密度、立体型の回転速度、収集軸による余計な繊維を収集する方法等を調整することにより、立体不織布構造の均等性を向上して、剥離強度を強化することができる。
【0029】
本発明では好適な実施形態を前述の通り開示したが、これは決して本発明を限定するものではなく、当該分野の技術を熟知しているものであれば、本発明の精神と領域を離脱しない範囲内で、多様の変動や修正を加えることができる。従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0030】
100:装置
110:調整可能な支持部
120:立体型
122:中段部
124:先端部
126:踵部
130:回転軸
132:モーター
140:メルトブロー装置
142:ノズル部材
144:孔
150:立体不織布構造
160:ホットプレス装置
170:収集軸
200:装置
210:調整可能な支持部
220:立体型
230:回転軸
240:メルトブロー装置
242:ノズル部材
250:立体不織布構造
270:収集軸
300:装置
310:コンベヤー
320:メルトブロー装置
330:立体型
340:回転軸
350:ホットプレス装置
360:繊維回収装置
362:集糸器
370:立体不織布構造
d1、d2:距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整可能な支持部と、
立体型と、
前記立体型と前記調整可能な支持部を連結させ、前記調整可能な支持部に対し前記立体型を回転させる回転軸と、
複数本の繊維をメルトブローする複数の孔を有するメルトブロー装置とを備え、
前記立体型が前記孔の前で回転して前記繊維を受け、前記立体型に立体不織布構造を形成させる立体不織布構造の製造装置。
【請求項2】
前記立体型の両側と前記回転軸の間の最大幅が同じである請求項1に記載の立体不織布構造の製造装置。
【請求項3】
前記立体型に近接して設けられ、余計な繊維を除去する収集軸を更に備える請求項1に記載の立体不織布構造の製造装置。
【請求項4】
コンベヤーと、
複数本の繊維をメルトブローする複数の孔を有するメルトブロー装置と、
複数の立体型と、
前記立体型と前記コンベヤーを連結させ、前記立体型を前記コンベヤーで回転させる複数の回転軸とを備え、
前記立体型のいずれかが前記コンベヤーによって前記孔の前に移動された時に、前記繊維が回転中の前記立体型上に付着して立体不織布構造を形成する立体不織布構造の製造装置。
【請求項5】
それぞれの前記立体型の両側と対応する前記回転軸の間の最大幅が同じである請求項4に記載の立体不織布構造の製造装置。
【請求項6】
前記メルトブロー装置に近接して設けられ、余計な繊維を除去する繊維回収装置を更に備える請求項4に記載の立体不織布構造の製造装置。
【請求項7】
立体型を提供するステップと、
複数本の繊維をメルトブローする複数の孔を有するメルトブロー装置を提供するステップと、
前記立体型を前記孔の前で回転し、前記繊維を前記立体型に接着させて立体不織布構造を形成するステップと、
前記立体不織布構造をホットプレスするステップと
を含む立体不織布構造の製造方法。
【請求項8】
前記立体型は、前記メルトブロー装置の所定領域に入る前に第1の方向に回転し、前記メルトブロー装置の所定領域に入った後に第2の方向に回転する請求項7に記載の立体不織布構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−31555(P2012−31555A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140809(P2011−140809)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(504427651)財團法人紡織産業綜合研究所 (10)
【Fターム(参考)】