説明

立体状重合体の連続表面処理装置及び連続表面処理方法

【課題】本発明の目的は、陰電圧パルスによるプラズマイオン注入によって立体の形状を有する重合体の表面の帯電防止及び伝導性などの向上のための連続表面処理装置及び方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は陰電圧パルスによるプラズマイオン注入によって立体の形状を有する重合体の表面の帯電防止及び伝導性などの向上のための連続表面処理装置及び方法に関し、プラズマを発生させてイオン注入するために高周波電力供給装置とマッチングボックス及びアンテナを含む高周波供給部と、プラズマを構成するためのイオン化される工程ガスを供給するガス導入装置と、これに連結されるガス供給源と、真空ポンプなどが具備される処理室を含む表面処理装置において、上記処理室の前後に互いに隣接して取り付けられる、脱気可能な引入室と脱気可能な引出室と、上記引入室、処理室及び引出室を順次に経由するように取り付けられる移送装置と、上記移送装置を駆動する移送手段を含んでなり、上記引入室と、上記引出室と、上記引入室と処理室の間の隔壁及び上記処理室と引出室の間の隔壁に上記移送装置が通過することができる自動開閉が可能なドアを含んでなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体状重合体の連続表面処理に関する。より詳細には、本発明は陰電圧パルスによるプラズマイオン注入によって立体の形状を有する重合体の表面の帯電防止及び伝導性などの向上のための連続表面処理装置及び連続表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子素材は軽量性、成形性及び加工性、透明性、電気絶縁性などの特徴によってその用途が非常に多様で広範囲な素材である。高分子素材は使用目的によって高分子素材全体の性質は変化させずに表面特性のみを改善させる必要性があるが、特に表面の親水または疎水特性は高分子素材の濡れ性(wettability)、印刷性(printability)、着色性(colorability)、生体適合性、静電気防止性、接着性、防水性、防湿性などに決定的な影響を及ぼすので、これを向上させるための様々な方法が利用されている。
【0003】
このような高分子素材の表面改質方法では化学的処理、コロナ処理、プラズマ処理などを挙げることができる。化学的処理方法の代表的な例では Na/NH3を用いるフッ素系高分子表面処理法(アメリカ合衆国特許第2,789,063号、イギリス特許第793,731号参照) などがある。この方法は一般的な化学反応によって表面に形成される作用基を予測することができるという長所はあるが、処理工程が煩わしく汚染物質である廃棄液の問題を引き起こすという短所がある。
【0004】
一方、大気圧で行われるコロナ放電処理は包装用材であるポリオレフィンやポリエチレンテレフタルレートフィルムなどの表面処理(J.Pochan、L.Gerenser、and J.Elman、Polymer、第27巻、1058頁、1986年発行参照) などに使われているが、改質層が非常に薄いので、処理後時間によって容易に劣化(aging)するという問題があり、大気中の湿度など処理工程変数の最適化が難しいという短所がある。
【0005】
低い圧力でのプラズマを用いた高分子表面処理方法には酸素プラズマを用いてポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの新水性を向上させること(M.Morra、E.Occhiello、and F.Garbassi、Journal of Applied Polymer Science、第39巻、249頁、1990年発行参照) などがある。
【0006】
プラズマは物質の第4状態と見なされ、部分的にイオン化した気体を意味する。その構成成分は電子、陽イオンそして中性原子及び中性分子などである。気体粒子にエネルギーが加えられると、最外角電子が軌道を離脱して自由電子になるため、気体粒子は陽電荷を有するようになる。
【0007】
このように形成された電子とイオン化した気体が多数集まり全体的に電気的中性を維持し、その構成粒子間の相互作用によって独特の光を放出し、粒子が活性化して高い反応性を有するようになる。このようなプラズマ処理はコロナ処理に比べて反応ガスを選択することができ、処理圧力など工程変数を調節することができるという長所はあるが、同様に改質した表面層が薄いので、処理後時間による劣化が問題として知られている。
【0008】
また、最近では酸素雰囲気内で不活性元素(Ar)のイオンビームを高分子試料に入射させて新水性を改善した方法が報告されているが(S.Koh、S.Song、W.Choi、and H.Jung、Journal of Materials Research、第10巻、2390頁、1995年発行参照)、この方法も同様に時間による親水特性の急激な低下が問題とされており、イオンビームを使わなければならないので装置が複雑で大面的の均一処理が難しいという短所がある。
【0009】
一方、3次元物体のイオン注入に相応しい技術として、アメリカ合衆国特許第4,764,394号に記載したプラズマ源イオン注入方法及び装置が知られている。
【0010】
韓国特許公開公報公開番号第1987-7562号には半導体、金属または絶縁物の表面のエッチング、表面の改質(modification)、表面清浄化、表面への不純物注入、表面への薄膜堆積などの各種処理を行う表面処理方法及びそれに使われる表面処理装置が開示されており、ここでは少なくとも1種類の元素を含むイオンビームを固体ターゲットの表面に入射させて粒子を前方に散乱させ、上記少なくとも1種類の元素を含む前方散乱粒子ビームを生成した後、前方散乱粒子ビームを被加工物の表面に向けて入射させ、上記被加工物の表面をエッチングまたは改質したり、上記被加工物の表面上に膜を堆積する工程を含む表面処理方法を記述している。
【0011】
韓国公開特許公報公開番号第1997-73239号にはプラズマイオン注入によって高分子素材表面の親水特性または疎水特性を向上させる表面改質方法及びそれに使われる装置が開示されており、ここでは真空槽内に位置する試料台上に板状の高分子素材を位置させる段階、真空槽内にプラズマ源ガスを導入する段階、導入したプラズマ源ガスからイオンプラズマを発生させる段階、パルス電圧が-1kVないし-20kVで、パルス-オフ時の電圧が0Vないし-1kVで、パルス幅が1μsないし50μsで、パルス周波数が10Hzないし500kHzである負(-)の高電圧パルスを上記高分子素材試料に加え、プラズマから抽出されたイオンが高エネルギーを保有したまま上記試料の表面に注入されるようにする段階からなることを特徴とする高分子素材の表面改質方法が記述されている。
【0012】
しかし、上記方法は全て高分子素材の新水性または疎水性を増減させるためのものであって、帯電防止及び伝導性などの向上のためのものではない。
帯電防止及び伝導性重合体の場合、重合体に伝導性炭素(conductive carbon)及び炭素纎維(carbon fiber)を混練して使っているが、これらの帯電防止用重合体及び伝導性重合体の場合、成形後に炭素及び炭素纎維の粒子が剥離して製品に大きな損傷を引き起こすだけでなく、電子製品、半導体及び液晶表示装置(LCD(liquid crystal display)基板)に粒子が付着してパターンやチップに大きな損傷を引き起こしている。このような帯電防止のための帯電防止剤の使用は、その自らの帯電防止効果が一定時間経つと消滅する現象を引き起こしており、帯電防止効果を期待することができなくなる場合がある。
【0013】
ポリピロール及びポリアニリンの伝導性重合体を溶解した水溶液や芳香族重合体及びアタクチック重合体溶液を使い、このような溶液に含浸させてから取り出して乾燥させた製品の場合、キズ(scratch)や水分などに敏感で帯電防止効果及び伝導性が損失する現象を引き起こす問題点がある。
【0014】
また、イオンビームを用いた重合体の表面改質の場合、ビームを加速させ、ビームを散乱して中性子が存在する領域を離隔させて製品を処理しなければならず、器具上に立体的なプラズマイオンを注入することができず、製品を回転させる治具を使って製品の収率上において量産化の連続工程を行うにはかなりの困難を抱えている。
【0015】
また、韓国公開特許公報公開番号第2002-20010号には3次元立体高分子素材及び製品の表面特性及び表面の電気伝導度を向上させるためにプラズマイオン注入技術を用いる表面改質方法及びその装置が開示されており、ここでは(a)真空槽内のグリッド内に立体高分子材料を位置させる段階;(b)真空槽内の上記材料表面から一定距離離れた所にグリッドを位置させる段階;(c)真空槽内の上記材料表面に抵抗度を低める黒鉛層形成のために気体プラズマイオンを形成する段階、(d)上記グリッドに陰電圧パルスを加えて気体プラズマイオンを上記材料の表面に注入させる段階を含むグリッドを用いた立体高分子のプラズマイオン注入による立体高分子材料の表面処理方法が記述されている。しかし上記の方法は大量生産に適合しないという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、本発明は陰電圧パルスによるプラズマイオン注入によって立体の形状を有する重合体の表面の帯電防止及び伝導性などの向上のための連続表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による立体状重合体の連続表面処理装置は、プラズマを発生させてイオン注入するために高周波電力供給装置とマッチングボックス及びアンテナを含む高周波供給部と、プラズマを構成するためのイオン化される工程ガスを供給するガス導入装置と、これに連結されるガス供給源と、真空ポンプなどが具備される処理室を含む表面処理装置において、上記処理室の前後に互いに隣接して取り付けられる、脱気可能な引入室と脱気可能な引出室と、上記引入室、処理室及び引出室を順次に経由するように取り付けられる移送装置と上記移送装置を駆動する移送手段を含んでなり、上記引入室と、上記引出室と、上記引入室と処理室の間の隔壁及び上記処理室と引出室の間の隔壁に上記移送装置が通過することができる自動開閉が可能なドアを含んでなる。
【0018】
上記移送手段としては、回転可能に取り付けられる移送ローラがある。
上記移送装置は移送板と、上記移送板の上端に一体に固定され、移送手段としての移送ローラと接触して可変する移送羽根と, 上記移送板の下端に一体に固定され、立体状重合体を懸架或いは固定させることができる固定具を含んでなる。
【0019】
上記引入室に隣接して表面処理される立体状重合体に70ないし85℃の温度の乾燥熱風を噴射させて前処理するための前処理室がさらに含まれ、上記前処理室には熱風を前処理室内に吹き入れるための送風機と、上記送風機へ供給される熱風の流れを断続するための第1断続弁と、上記前処理室から空気を排出させて真空化させるための排気空気の流れを断続するための第2断続弁、及び上記第2断続弁を経由して上記前処理室から空気を排出させるための真空ポンプが連結される。
【0020】
上記第1断続弁には熱風を発生させるためのエアコンプレッサをさらに連結することができる。
【0021】
上記前処理室は2つ並列に形成することができ、このためには上記前処理室に加えて第2前処理室を併設することができ、上記第2前処理室には熱風を前処理室内に吹き入れるための第2送風機と、上記第2送風機へ供給される熱風の流れを断続するための第3断続弁と、上記第2前処理室から空気を排出させて真空化させるための排気空気の流れを断続するための第4断続弁、及び上記第4断続弁を経由して上記前処理室から空気を排出させるための真空ポンプが連結される。ここで真空ポンプは一つの真空ポンプを上記第2断続弁と第4断続弁を経由して共用化することができる。また、熱風を発生させるためのエアコンプレッサを上記第3断続弁を経由して共用化することができる。
【0022】
また本発明による立体状重合体の連続表面処理方法は、プラズマイオン注入技術を用いる表面改質において、(1)脱気可能な引入室内に処理しようとする立体状重合体物品を引入させる引入段階;(2)上記立体状重合体が引入された引入室内部を減圧、脱気させる第1真空化段階;(3)上記引入室内の立体状重合体を上記処理室に移送させる第1移送段階;(4)上記処理室内に移送された立体状重合体にプラズマを用いて表面処理する表面処理段階;(5)脱気可能な引出室内部を減圧、脱気させる第2真空化段階;(6)表面処理が完了した立体状重合体を真空化された上記引出室内に移送させる第2移送段階;及び(7)上記引出室内の立体状重合体を外部に引き出す引出段階;を含んでなる。
【0023】
上記(2)の第1真空化段階の前後で上記引入室内の立体状重合体に熱風を加えて立体状重合体から水分を除去する前処理段階;をさらに行うことができる。
【0024】
上記(4)の表面処理段階はアルゴン、窒素またはこれらの混合物でなる工程ガスを15ないし100sccmの量で連続的に上記処理室に供給しながらパルス幅20ないし30ms、プラズマ発生のための高周波の周波数500ないし1500Hz及び高電圧パルス21ないし25KVの工程条件で表面処理を行うことでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施例を添付した図面を参照して詳しく説明する。
【0026】
図1に図示したように、本発明による立体状重合体の連続表面処理装置は、プラズマを発生させてイオン注入するために高周波電力供給装置(27)と、マッチングボックス(26)、及びアンテナ(25)を含む高周波供給部と、プラズマを構成するためのイオン化される工程ガスを供給するガス導入装置(71)と、これに連結されるガス供給源(72)と、真空ポンプなどが具備される処理室(21)を含む表面処理装置において、上記処理室(21)前後に互いに隣接して取り付けられる、脱気可能な引入室(11)と脱気可能な引出室(31)と、上記引入室(11)、処理室(21) 及び引出室(31)を順次に経由するように取り付けられる移送装置(51)と,上記移送装置(51)を駆動する移送手段を含んでなり、上記引入室(11)と、上記引出室(31)と、上記引入室(11)と処理室(21) の間の隔壁及び上記処理室(21)と引出室(31) の間の隔壁に上記移送装置(51)が通過することができる自動開閉が可能なドアを含んでなることを特徴とする。
【0027】
上記でプラズマを発生させてイオン注入するために高周波電力供給装置(27)とマッチングボックス(26)及びアンテナ(25)を含む高周波供給部と、プラズマを構成するためのイオン化される工程ガスを供給するガス導入装置(71)と、これに連結されるガス供給源(72)と、真空ポンプなどが具備される処理室(21)を含む表面処理装置は、当業者が常用的に購入して使うことができる程度に公知されたものと理解される。
【0028】
このようなプラズマを用いる表面処理装置は、真空化した処理室(21)内にイオン化される工程ガスを供給し、強い磁場の中で高周波電力を印加して工程ガスを部分的にイオン化させて第4の物質状態と称されるプラズマを形成させ、これを高電圧で帯電された試料台などに被加工物を載せたりまたはグリッド(24)内に被加工物を位置させ、プラズマを構成するイオンの中で上記試料台またはグリッド(24)に印加された電流の極性に対向するイオンが主にグリッド(24)などに高電圧パルスを印加することによって静電気的に誘導されて被加工物の表面に適用されることで被加工物の表面にイオン注入がなされるようにする。
【0029】
すなわち、本発明ではこのような公知の表面処理装置で被加工物を連続的に処理するようにするために、上記処理室(21)前後に引入室(11)と引出室(31)を設置し、上記引入室(11)と引出室(31)はそれぞれ脱気可能になるように真空ポンプなどを具備してなり、上記引入室(11)、処理室(21) 及び引出室(31)にはこれらを順次に経由するように取り付けられる移送装置(51)と上記移送装置(51)を駆動する移送手段を含んでなる。
【0030】
また、上記移送装置(51)は移送手段によって移送され、望ましくは上記移送手段としては上記引入室(11)、処理室(21) 及び引出室(31)に回転可能に取り付けられる移送ローラ(61)がある。
【0031】
上記移送ローラ(61)によって移送される移送装置(51)は、図2に示されたように、移送板(52)と、上記移送板(52)の上端に一体に固定され、ローラと接触して可変する移送羽根(53)と, 上記移送板(52)の下端に一体に固定され、立体状重合体(41)を懸架或いは固定させることができる固定具(54)を含んでなる。上記では移送ローラ(61)とこれらの移送ローラ(61)によって移送される移送装置(51)に特定して説明しているが、立体状重合体(41)を移送させることができる他の手段も可能であり、単に、これらの移送装置(51)と移送ローラ(61)を構成する材質は上記処理室(21)を構成するステンレススチールと同一または類似する材質から構成することができ、プラズマや高周波電力及び高電圧パルスなどに影響を与えない材質から構成することで充分に達成される。
【0032】
上記移送装置(51)による立体状重合体(41)の移送のためには、上記引入室(11)と、上記引出室(31)と上記引入室(11)と処理室(21)の間の隔壁及び上記処理室(21)と引出室(31)の間の隔壁に上記移送装置(51)が通過することができる自動開閉の可能なドアが含まれる。これらドアはソレノイド、空圧シリンダまたは油圧シリンダなど公知の動作手段によって開閉動作が可能であり、開放によって立体状重合体(41)が固定された移送装置(51)の通過が可能になり、閉鎖によって気体の通過が不可能になり一定の真空度を維持することができるドアの構成によって達成される。
【0033】
特に望ましくは、上記ドアは短時間内に開閉可能にさせて立体状重合体(41)の通過後は速やかに密閉することができるように立体状重合体(41)の一番狭い幅を基準に開閉し、立体状重合体(41)が通過することができる程度に開閉されるスライド式のドア構造が可能であり、このような構造は当業者が容易に理解することができる程度に公知されたものと理解される。
【0034】
図3に示したように、上記引入室(11)に隣接して表面処理される立体状重合体(41)に70ないし85℃の温度の乾燥熱風を噴射させて前処理するための前処理室(81)がさらに含まれ、上記前処理室(81)には熱風を前処理室(81)内に吹き入れるための送風機(82)と、上記送風機(82)へ供給される熱風の流れを断続するための第1断続弁(83)と、上記前処理室(81)から空気を排出させて真空化させるための排気空気の流れを断続するための第2断続弁(85)、及び上記第2断続弁(85)を経由して上記前処理室(81)から空気を排出させるための真空ポンプが連結される。
【0035】
上記第1断続弁(83)には熱風を発生させるためのエアコンプレッサ(84)をさらに連結することができる。
【0036】
上記前処理室(81)は2つ並列に形成することができ、このためには上記前処理室(81)に加えて第2前処理室(87)を併設することができ、上記第2前処理室(87)には熱風を前処理室(81)内に吹き入れるための第2送風機(88)と、上記第2送風機(88)へ供給される熱風の流れを断続するための第3断続弁(89)と、上記第2前処理室(87)から空気を排出させて真空化させるための排気空気の流れを断続するための第4断続弁(90)、及び上記第4断続弁(90)を経由して上記前処理室(81)から空気を排出させるための真空ポンプが連結される。
【0037】
ここで真空ポンプは一つの真空ポンプを上記第2断続弁(85)と第4断続弁(90)を経由して共用化することができる。また、熱風を発生させるためのエアコンプレッサ(84)を上記第3断続弁(89)を経由して共用化することができる。
【0038】
また、上記前処理室(81)を別途に具備しなくても、上記引入室(11)上に上記前処理室(81)で具備される送風機(82)と熱風の断続のための断続弁及びこれを経由して連結されるエアコンプレッサ(84)などを具備させることによって引入室(11)で熱風の適用による前処理ができるようにすることもできる。
【0039】
図1を基準に説明すると、上記構成によって立体状重合体(41)を移送させるための移送装置(51)は立体状重合体(41)を固定したまま、まずは上記第1ドア(13)を開放させて第1ドア(13)を通じて引入室(11)内に引入された後、上記第1ドア(13)を閉鎖させ、真空ポンプを動作させて引入室(11)内を充分に真空化させた後、引入室(11)と処理室(21)の間の第2ドア(28)を開放させ、移送ローラ(61)を駆動させて上記移送装置(51)を処理室(21)に移送させて上記移送装置(51)に固定された立体状重合体(41)が上記処理室(21)内のグリッド(24)内に位置されるようにして上記第2ドア(28)を閉鎖させた後、プラズマ処理を行う。
【0040】
プラズマ処理は従来のプラズマ処理と同一または類似のものであって、内部を真空化させた後、処理ガスを流入させ、高周波電力供給装置(27)とマッチングボックス(26) 及び高電圧パルス発生装置(23)などを駆動させてアンテナ(25)を経由して高周波電力が供給されるものであって、プラズマを発生させて高電圧パルスが印加されるグリッド(24)側に陽イオンを静電気的に引き入れてグリッド(24)内に位置する立体状重合体(41)の表面に注入されるようにする。
【0041】
以後、表面処理が完了すると、上記処理室(21)と引出室(31)の間の第3ドア(33)を開放させ、同様に移送ローラ(61)を駆動させて上記移送装置(51)を引出室(31)に移送させる。移送室に移送された上記移送装置(51)は以後も上記移送ローラ(61)の駆動によって第4ドア(34)を通じて完全に外部に引出されるようになる。
【0042】
第4ドア(34)の開放によって移送装置(51)が引出され、第4ドア(34)を閉鎖した後、引出室(31)の内部は真空化される。このような引出室(31)の真空化は後続の第3ドア(33)の開放時に上記処理室(21)内に外部空気が流入しないようにする機能を果し、処理室(21) 内での連続処理のための工程条件を早い時間内に復旧し、表面処理を行う準備ができるようにする。
【0043】
上記のような方法で立体の形状を有する重合体(41)を連続的に表面処理することができるようになる。上記移送装置(51)は処理される立体状重合体(41)を固定させて引入室(11)に引入させ、処理されて引出された立体状重合体(41)は引き離す方法で循環によって繰り返し使うことができる。
【0044】
また、本発明による立体状重合体の連続表面処理方法は、プラズマイオン注入技術を用いる表面改質において、(1)脱気可能な引入室内で処理しようとする立体状重合体物品を引入させる引入段階;(2)上記立体状重合体が引入された引入室内部を減圧、脱気させる第1真空化段階;(3)上記引入室内の立体状重合体を上記処理室に移送させる第1移送段階;(4)上記処理室内に移送された立体状重合体にプラズマを用いて表面処理する表面処理段階;(5)脱気可能な引出室内部を減圧、脱気させる第2真空化段階;(6)表面処理が完了した立体状重合体を真空化された上記引出室内に移送させる第2移送段階;及び(7)上記引出室内の立体状重合体を外部に引き出す引出段階;を含んでなることを特徴とする。
【0045】
上記(1)の引入段階は、上記処理室(21)の真空度には影響を与えずに立体状重合体(41)物品を上記処理室(21)内に連続的に供給するようにするための前段階として機能するようにするために、脱気可能な引入室(11)内に処理しようとする立体状重合体(41)物品を引入させる段階である。
【0046】
以後、(2)は第1真空化段階で上記立体状重合体(41)物品が引入された引入室(11)内部を減圧、脱気させる段階である。上記(2)の第1真空化段階で上記引入室(11)内部を真空化させることで、上記移送機によって上記引入室(11)内の被加工物としての立体状重合体(41) 物品を上記処理室(21)に移送させる時、処理室(21)の真空度など内部工程条件を大きく変化させずに上記立体状重合体(41)物品を上記処理室(21)内に移送させることができる条件が整うようになる。
【0047】
続いて、上記(3)の第1移送段階では、上記引入室(11)内の立体状重合体(41)物品を上記処理室(21)に移送させる段階であり、以後上記(4)の表面処理段階で上記処理室(21)内に移送された立体状重合体(41)物品にプラズマを用いて表面処理を行うようになる。続いて、上記(5)の第2真空化段階では、逆に上記脱気可能な引出室(31)内部を減圧、脱気させ、これは上記引出室(31)内部を真空化させ、同様に上記処理室(21)の真空度には影響を与えずに表面処理が完了した立体状重合体(41)物品を上記引出室(31)に移送させることができるように真空化する段階である。
【0048】
以後、上記(6)の第2移送段階で、上記表面処理が完了した重合体(41)物品を真空化された上記引出室(31)内に移送させた後、上記(7)の排出段階では上記引出室(31)内に移送された後、上記引出室(31)から表面処理が完了した重合体(41)を排出することで立体状重合体(41)物品を連続的に表面処理するようにする。
【0049】
上記(2)の第1真空化段階の前後で、上記引入室(11)内の立体状重合体(41)物品に熱風を加えて水分などを除去する前処理段階をさらに行うことができる。上記前処理段階は上記引入室(11) 内の立体状重合体(41)物品を予め加熱して立体状重合体(41)物品の表面へのイオンの注入をより深い所まで可能にさせる。上記前処理段階では70ないし85℃の温度の熱風を適用させて水分を除去し、部分的に立体状重合体(41)を加熱させ、加熱温度は重合体(41)物品を構成する重合体(41)の種類と物性及び大きさなどによって変えることができ、当業者は適切な加熱温度を理論的かつ経験によって実験的に決めることができる。
【0050】
上記(4)の表面処理段階は、アルゴン、窒素またはこれらの混合物でなる工程ガスを15ないし100sccmの量で連続的に上記処理室(21)に供給しながらパルス幅20ないし30ms、プラズマ発生のための高周波の周波数500ないし1500Hz及び高電圧パルスとして21ないし25KVの高電圧を印加する工程条件で表面処理を行うことでなる。このような工程条件は、立体状重合体(41)の種類、大きさ及び形状などによって変えることができ、当業者は理論的かつ経験的に適切な工程条件を決めて表面処理によるイオン注入を行うことができることは当然である。
【0051】
上記本発明による表面処理装置及び表面処理方法によって加工される被加工物としての立体状重合体(41)としては、公知された全ての種類の重合体が可能であり、望ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのビニール重合体(41)類、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのナイロン類、その他ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタルレート(PET)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリイミド(PI)、変性ポリフェニレンオキサイド(MPPO)、変性ポリスルフォン(MPSU ; Modified polysulfone)、変性ポリエーテル(MPES ; Modified polyether)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。
【0052】
以下で本発明の望ましい実施例及び比較例について説明する。
以下の実施例は、本発明を例証するためのものであって、本発明の範囲を局限させるものではない。
【0053】
(実施例1及び2)
図1に図示したような装置を用いて引入室(11)内に処理しようとする被加工物としてポリエチレン製の立体状重合体(41)物品を引入させた後、引入室(11)内を減圧、脱気させて真空化し、真空化が完了した後、続いて引入室(11)内の立体状重合体(41)物品を移送させながらプラズマ表面処理を行い、表面処理の工程条件を下記表1のように行った後、引出室(31)内部を減圧、脱気させて真空化した後、表面処理が完了した立体状重合体(41)物品を真空化された上記引出室(31)内に移送させた後、最終的に引出室(31)外に引出させる方法で連続表面処理を行い、その結果として、工程時のイオン密度及び処理後の被加工物としての立体状重合体の表面抵抗を測定して同様に表1に現わした。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
したがって、本発明によると107ないし108Ω/cm2の低い表面抵抗を達成して立体状重合体(41)の表面の帯電防止及び伝導性などを向上させることができ、特に立体状重合体(41)を連続的に表面処理することができるようにすることで大量生産を容易にする効果がある。
【0055】
以上で本発明は記載した具体例についてのみ詳しく説明したが、本発明の技術思想範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは当業者にとって明白であり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による立体状重合体の連続表面処理装置の一つの具体的な実施例を図示した構成図である。
【図2】図1の装置に使われる移送装置の一つの具体的な実施例を図示した斜視図である。
【図3】本発明による立体状重合体の連続表面処理装置に連結して使われる前処理装置の一つの具体的な実施例を図示した構成図である。
【符号の説明】
【0057】
11 引入室
21 処理室
24 グリッド
25 アンテナ
26 マッチングボックス
27 高周波電力供給装置
31 引出室
41 立体状重合体
51 移送装置
52 移送板
52 移送羽根
54 固定具
61 移送ローラ
71 ガス導入装置
72 ガス供給源
81 前処理室
82 送風機
83 第1断続弁
84 エアコンプレッサ
85 第2断続弁
87 第2前処理室
88 第2送風機
89 第3断続弁
90 第4断続弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを発生させてイオン注入するために高周波電力供給装置とマッチングボックス及びアンテナを含む高周波供給部と、プラズマを構成するためのイオン化される工程ガスを供給するガス導入装置と、これに連結されるガス供給源と、真空ポンプなどが具備される処理室を含む表面処理装置において、
上記処理室の前後に互いに隣接して取り付けられる、脱気可能な引入室と脱気可能な引出室と、上記引入室、処理室及び引出室を順次に経由するように取り付けられる移送装置と、上記移送装置を駆動する移送手段を含んでなり、上記引入室と、上記引出室と、上記引入室と処理室の間の隔壁及び上記処理室と引出室の間の隔壁に上記移送装置が通過することができる自動開閉が可能なドアを含んでなることを特徴とする立体状重合体の連続表面処理装置。
【請求項2】
上記移送手段が回転可能に取り付けられる移送ローラであることを特徴とする第1項記載の立体状重合体の連続表面処理装置。
【請求項3】
上記移送装置が移送板と、上記移送板の上端に一体に固定され、移送手段としての移送ローラと接触して可変する移送羽根と, 上記移送板の下端に一体に固定され、立体状重合体を懸架或いは固定させることができる固定具を含んでなることを特徴とする第1項記載の立体状重合体の連続表面処理装置。
【請求項4】
上記引入室に隣接して表面処理される立体状重合体に70ないし85℃の温度の乾燥熱風を噴射させて前処理するための前処理室がさらに含まれ、上記前処理室には熱風を前処理室内に吹き入れるための送風機と、上記送風機へ供給される熱風の流れを断続するための第1断続弁と、上記前処理室から空気を排出させて真空化させるための排気空気の流れを断続するための第2断続弁、及び上記第2断続弁を経由して上記前処理室から空気を排出させるための真空ポンプが連結されてなることを特徴とする第1項記載の立体状重合体の連続表面処理装置。
【請求項5】
上記第1断続弁には熱風を発生させるためのエアコンプレッサがさらに連結されてなることを特徴とする第4項記載の立体状重合体の連続表面処理装置。
【請求項6】
上記前処理室に加えて第2前処理室が併設され、上記第2前処理室には熱風を前処理室内に吹き入れるための第2送風機と、上記第2送風機へ供給される熱風の流れを断続するための第3断続弁と、上記第2前処理室から空気を排出させて真空化させるための排気空気の流れを断続するための第4断続弁、及び上記第4断続弁を経由して上記前処理室から空気を排出させるための真空ポンプが連結されてなることを特徴とする第4項記載の立体状重合体の連続表面処理装置。
【請求項7】
プラズマイオン注入技術を用いる表面改質において、
(1) 脱気可能な引入室内に処理しようとする立体状重合体物品を引入させる引入段階;
(2) 上記立体状重合体が引入された引入室内部を減圧、脱気させる第1真空化段階;
(3) 上記引入室内の立体状重合体を上記処理室に移送させる第1移送段階;
(4) 上記処理室内に移送された立体状重合体にプラズマを用いて表面処理する表面処理段階;
(5) 脱気可能な引出室内部を減圧、脱気させる第2真空化段階;
(6) 表面処理が完了した立体状重合体を真空化された上記引出室内に移送させる第2移送段階; 及び
(7) 上記引出室内の立体状重合体を外部に引き出す引出段階;
を含んでなることを特徴とする立体状重合体の連続表面処理方法。
【請求項8】
上記(2)の第1真空化段階の前後で、上記引入室内の立体状重合体に熱風を加えて立体状重合体から水分を除去する前処理段階;をさらに含んでなることを特徴とする第7項記載の立体状重合体の連続表面処理方法。
【請求項9】
上記(4)の表面処理段階はアルゴン、窒素またはこれらの混合物でなる工程ガスを15ないし100sccmの量で連続的に上記処理室に供給しながらパルス幅20ないし30ms、プラズマ発生のための高周波の周波数500ないし1500Hz、及び高電圧パルス21ないし25KVの工程条件で表面処理を行うことでなることを特徴とする第7項記載の立体状重合体の連続表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−520569(P2007−520569A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504417(P2005−504417)
【出願日】平成15年10月13日(2003.10.13)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002110
【国際公開番号】WO2005/007728
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(506022522)エポン カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】