説明

立体画像表示用柱状レンズシート、及びそれを用いた液晶表示装置

【課題】裸眼立体視にレンチキュラーレンズを用いる際に、経時的にレンズの寸法が変化して左右視差画像のクロストークが生じるのを改善し、さらにその寸法安定性を活かせる様に容易に位置合わせ出来る立体画像表示用柱状レンズシートと、それを用いた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】立体画像表示用柱状レンズシート10は、延伸フィルムの基材フィルム1上に単位柱状レンズ2を一方向daに配列した柱状レンズ群3を有し、基材フィルムの分子主軸の配向方向と単位柱状レンズの稜線方向dpとの傾斜角θが全域で0°≦θ≦50°となっており、更に有効画面領域Aの外側にある柱状レンズ群の表面上に一枚当たり2個以上の位置合わせマークMが設けられている。このレンズシートを液晶パネルと組み合わせ立体画像表示可能な液晶表示装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種立体画像表示装置用途、特に立体視に特殊な眼鏡を必要としない裸眼立体画像表示に好適な、レンチキュラーレンズの様な単位柱状レンズを有する立体画像表示用柱状レンズシートと、それを用いた液晶表示装置に関する。
中でも特に、経時的なレンズの寸法変化に起因する左右の視差画像のクロストークが生じ難く、且つこの特徴を有効に活かせる様に位置合わせが容易な立体画像表示用柱状レンズシートと、それを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイパネルの高精細化等の技術が進歩したことから、2次元画像を表示する液晶パネル等のフラットパネルディスプレイを用いて、三次元画像を表示できる様にした3Dテレビ等の立体画像表示装置が急速に広まってきている。現在普及している立体画像表示装置としては、立体画像表示方式として眼鏡を必要とするものが多いが、眼鏡を必要としない裸眼で立体画像が見られる裸眼立体画像表示装置も実用化されてきている。この、裸眼で立体視を可能とする裸眼立体視の方式の一つとしてレンチキュラーレンズを用いるレンチキュラー方式があり、各種提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−78342号公報
【特許文献2】特開平10−232369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コスト、製造の容易さ等の観点からは、レンチキュラーレンズは樹脂製のものが好ましい。ここで、ディスプレイパネルが液晶パネル(液晶表示素子)の場合で言えば、この様な樹脂製のレンチキュラーレンズを液晶パネルに組み合わせたときに、樹脂製であるが故に、レンチキュラーレンズの配列周期が、経時的に熱によって微妙に寸法変化を来たす。一方、液晶パネルは表裏の基板がガラス製である為に、樹脂に比べて寸法変化が少ない。このため、液晶パネルの画素とレンチキュラーレンズの配列方向(稜線方向とは直交方向)との相対的位置が経時的にずれることになる。しかし、立体画像を表示するには、レンチキュラーレンズは、液晶パネルの画素と高精度な位置関係で維持されていることが必要である。
【0005】
そして、液晶パネルの画素とレンチキュラーレンズの相対的位置関係に狂いが生じると、液晶パネルで表示する左用画像と右用画像とを、レンチキュラーレンズによって左目と右目に振り分ける精度が低下し、左右視差画像が混じり合う所謂クロストークが生じ、立体画像の品質が低下してしまう。
左右視差画像のクロストークの問題は観察者の観察位置の移動によっても生じ、この為、その改善策が種々提案されてきたが、レンチキュラーレンズと液晶パネルの画素との相対的位置関係が正しく維持されている事を前提とするものであり、レンズと画素との相対的位置関係を維持する方策ではなかった。
【0006】
また、レンズと画素との相対的位置関係の維持には、上記する経時的な寸法変化を防ぐ他に、その前提として、なりよりも、液晶パネルに対してレンチキュラーレンズが正しい位置に位置合わせされて組み付けられていることが必要である。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、裸眼立体視の為にレンチキュラーレンズの様な単位柱状レンズを用いる際に、単位柱状レンズの経時的な寸法変化、特に配列方向の寸法変化を少なくして、左右視差画像のクロストークが経時的に発生することを改善し、さらにその寸法安定性の特徴を活かせる様に、容易に位置合わせ出来る立体画像表示用柱状レンズシートと、それを用いた液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の構成の立体画像表示用光学部材と、それを用いた液晶表示装置とした。
(1)基材フィルムの一方の面に、単位柱状レンズをその稜線を互いに平行に一方向に配列した柱状レンズ群を有し、前記基材フィルムを構成する樹脂の分子主軸の配向方向と前記単位柱状レンズの稜線方向とが、該基材フィルムの一方の面に平行な平面内において成す角度のうち劣角として定義される傾斜角θが、前記基材フィルムの全域において、0°≦θ≦50°であり、
有効画面領域の外側に於ける柱状レンズ群の表面上に、一枚当たり少なくとも2個の位置合わせマークを有する、立体画像表示用柱状レンズシート。
(2)上記位置合わせマークが柱状レンズ群と同一材料からなり、該位置合わせマークが該柱状レンズ群に対して凸形状となる部分で該位置合わせマークと該柱状レンズ群との間に界面が存在しない連続層で一体化している、上記(1)の立体画像表示用柱状レンズシート。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の立体画像表示用柱状レンズシートを液晶パネルの画面上に設置して、液晶パネルの平面画像を立体画像として表示する、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明による立体画像表示用柱状レンズシートによれば、単位柱状レンズの配列周期の経時的な寸法変化を小さくできるので、特に加熱環境下に於ける経時変化によって、左右視差画像のクロストークが経時的に生じるのを防げる。しかも、位置合わせマーク(アライメントマーク)を有効画面領域外に少なくとも一枚当たり2個有するので、画面表示に影響せずに液晶パネル等のディスプレイパネルの画素に対して、容易に位置合わせが出来る。
(2)また、位置合わせマークが柱状レンズ群と同一材料で界面のない連続層で一体化しているものとすれば、柱状レンズ群の形成と同時に形成した位置合わせマークであるので、柱状レンズ群を構成する単位柱状レンズと位置合わせマークとの位置関係の誤差が皆無となり、位置合わせマーク自体が高精度に形成されており、正しい位置関係に位置合わせが容易に出来る。
(3)本発明による液晶表示装置によれば、液晶パネルの平面画像から立体画像を表示する液晶表示装置として、上記効果を有する立体画像表示用柱状レンズシートを用いて立体視を行うので、該柱状レンズシートが備える単位柱状レンズの経時的な寸法変化によって、左右視差画像のクロストークが経時的に生じるのを防げる。また、液晶パネルのガラス基板に光線制御パターンなどの遮光パターンがある場合に、これが経時的に見えてくることを防げる。
しかも、位置合わせマークによって、立体画像表示用柱状レンズシートを液晶パネルに容易に位置合わせ出来ているので、上記左右視差画像のクロストークが経時的に生じるのを防げる効果を有効に活かせる液晶表示装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による立体画像表示用柱状レンズシートの一実施形態を説明する斜視図であり、全体図(a)と、位置合わせマークの近傍図(b)。
【図2】本発明による立体画像表示用柱状レンズシートの単位柱状レンズ部分に注目して、その一実施形態を説明する斜視図(a)と平面図(b)。
【図3】本発明による立体画像表示用柱状レンズシートを利用した立体画像表示用光学部材の一例を説明する斜視図。
【図4】本発明による位置合わせマークの別の一例を説明する斜視図。
【図5】本発明による位置合わせマークの凸形態と凹形態を説明する断面図。
【図6】本発明による位置合わせマークの平面視形状の一例を説明する平面図。
【図7】本発明による位置合わせマークの平面視形状の別の一例を説明する平面図。
【図8】本発明による位置合わせマークの平面視形状の別の一例(ガイドマーク付き)を説明する平面図。
【図9】本発明による位置合わせマークの平面視形状の各種形状と、相手方位置合わせマーク、及びこれらを正しく位置合わせ時のマーク外観を例示する平面図。
【図10】本発明による位置合わせマークの平面視形状の一例(a)、相手方位置合わせマーク(b)、及び位置合わせ時の状態(c)を例示する平面図。
【図11】本発明による液晶表示装置の一実施形態を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0013】
〔A〕立体画像表示用柱状レンズシート:
先ず、本発明による立体画像表示用柱状レンズシートの一実施形態を、図1(a)及び図1(b)の斜視図に示す。
なお、図1では、立体画像表示用柱状レンズシート10の平面(後述する基材フィルム1の一方の面1pに平行な面)がXY平面に平行で、立体画像の画像表示において、X軸方向が左右の視差画像を観察者の左右に振り分ける水平方向、Y軸方向が鉛直方向乃至は水平方向と直交方向で、立体画像表示用柱状レンズシート10の前記XY平面に対して法線方向をZ軸方向としてある。
【0014】
同図に示す立体画像表示用柱状レンズシート10は、単位柱状レンズ2が基材フィルム1の一方の面1pに、その稜線2pを互いに平行に一方向da(図面ではX軸方向)に多数配列されている。単位柱状レンズ2の該一方向daでの配列周期Pは一定である。そして、多数の単位柱状レンズ2が周期的に配列したものが柱状レンズ群3を構成する。立体画像表示用柱状レンズシート10は、この柱状レンズ群3と基材フィルム1とから構成される。
【0015】
さらに、基材フィルム1には2軸延伸フィルム等の延伸フィルムが使われており、基材フィルム1を構成する高分子の分子主軸のフィルム面内での配向方向が、単位柱状レンズ2の稜線方向と特定の関係にしてある。具体的には、後で詳述するように、分子主軸の配向方向dmと、単位柱状レンズ2の稜線方向dpとの成す角度のうち小さい方の角度(劣角)として定義される傾斜角θが、基材フィルム1の全域において、0°≦θ≦50°の範囲内に収まるように設定してある。
【0016】
さらに、同図の例では、立体画像表示用柱状レンズシート10の有効画面領域Aの外側には、2個の位置合わせマークMが形成されている。2個の位置合わせマークMは、長方形形状の立体画像表示用柱状レンズシート10において、なるべく互いの距離が大きくなる様な位置に、対角をなす四隅の近くに形成した例である。
【0017】
以上の様な傾斜角θを特定範囲内とする設定と共に、位置合わせマークMを有効画面領域Aの外に設けた構成とすることで、第1に、熱などによる経時的な単位柱状レンズ2の配列方向daの寸法変化が小さくなり、その結果、左右視差画像のクロストークが経時的に生じるのを防げることになる。第2に、位置合わせマークMによって、画面表示に影響せずに、液晶パネル等のディスプレイパネルの画素に対して、容易に位置合わせが出来るようになり、寸法変化の小さい利点を有効に活かせることになる。
【0018】
次に、図2は、立体画像表示用柱状レンズシート10の単位柱状レンズ2の部分に注目して、その一実施形態を説明する斜視図(a)と平面図(b)である。図2を参照して、分子主軸の配向方向dmと、傾斜角θについて、更に詳述する。
図2では、立体画像表示用柱状レンズシート10の平面(後述する基材フィルム1の一方の面1pに平行な面)がXY平面に平行で、立体画像の画像表示において、X軸方向が観察者Sが見る左右の視差画像を左右に振り分ける水平方向、Y軸方向が鉛直方向乃至は水平方向と直交方向で、立体画像表示用柱状レンズシート10に対して立体画像の観察者Sの方向をZ軸方向に想定してある。
【0019】
同図に示す立体画像表示用柱状レンズシート10は、単位柱状レンズ2が基材フィルム1の一方の面1pに、その稜線2pを互いに平行に一方向da(図面ではX軸方向)に多数配列されている。単位柱状レンズ2の該一方向daでの配列周期Pは一定である。なお、配列周期Pは、隣接する単位柱状レンズ2の稜線2p間の距離である。或いは、配列周期Pは、隣接する単位柱状レンズ2間の谷部2vについて、隣接する谷部2v間の距離としても捉えることができる(不図示)。そして、多数の単位柱状レンズ2が周期的に配列したものが柱状レンズ群3を構成する。立体画像表示用柱状レンズシート10は、この柱状レンズ群3と基材フィルム1とから構成される。
【0020】
(分子主軸の配向方向dm)
基材フィルム1には2軸延伸フィルム等の延伸フィルムが使われており、その結果、基材フィルム1を構成する高分子の分子主軸のフィルム面内での方向が、無秩序ではなく配向している。
分子主軸の配向は、本発明では、使用する基材フィルム1が延伸フィルムであることから、フィルム面内において、言い換えると、基材フィルム1の一方の面1pに平行な面内に於いて、フィルムを構成する高分子の個々の分子の分子軸の方向が完全にランダムではなく、ある程度揃っていることに関係する。この為、個々の分子の分子軸の方向つまり配向方向を、該分子よりも十分大きく且つ適用するディスプレイパネルの画素よりも小さい面積内、例えば10μm四方の領域内にて、全体として平均化すると或る方向性を示す。この個々の分子の分子軸の配向方向を全体として平均化した方向が、分子主軸の配向方向dmである。図2(b)で符号dmで示す両矢印が、この分子主軸の配向方向である。
尚、分子主軸の配向方向dmがある程度揃うと言っても、通常は、完全に全面に亙って該配向方向dmが一方向に揃うことは無く、分子主軸の配向方向dmは図2(b)で言えば、XY平面(基材フィルム1の一方の面1pと平行な面)内の位置座標(X、Y)の函数dm(X、Y)として分布する。即ち、基材フィルム1の(一方の面1pと平行な)面内の場所によって、分子主軸の配向方向dmは、ある範囲(傾斜角θが、0°≦θ≦50°となる範囲)内で異なっている。
【0021】
(傾斜角θ)
そして、分子主軸の配向方向dmと、単位柱状レンズ2の稜線2pが延在する方向である稜線方向dp(図面ではY軸方向)との成す角度のうち小さい方の角度の劣角として定義される傾斜角θもXY平面(基材フィルム1の一方の面1pと平行な面)内の位置座標(X、Y)の函数θ(X、Y)として分布するが、基材フィルム1の全域において、0°≦θ≦50°の範囲内に収まるように設定されている。
【0022】
ところで、傾斜角θは、0°となる領域を、基材フィルム1が少なくとも有する様にするのが好ましい。
傾斜角θが0°である領域は、基材フィルム1の全域であるのが理想的である。従って、偏光板用のフィルムの様に分子主軸の配向方向dmを極度に均一化したフィルムを基材フィルムとして使用しても良い。但し、この様なフィルムは高度な製造技術を要し且つ極めて高価となる点で実用的とは言えない。そこで、或る程度の配向方向dm(X、Y)の不均一性が存在することによる配向方向dmの面内分布は許容することにして、少なくとも傾斜角θが0°である領域を部分的にでも有する様にするのが良い。
【0023】
また、傾斜角θが0°となる部分は、単位柱状レンズ配列方向に於ける中央近傍が効果的である。そこで、傾斜角θが0°となる部分を、基材フィルム1の単位柱状レンズ2の配列方向daに於ける両端間の寸法を距離Lとし、前記基材フィルムの幅方向両端部のうちの一方の端部から測った距離が、(L/2)±(L/4)となる中央近傍の領域内に有する基材フィルム1とするのが良い。
又、基材フィルム1内に該傾斜角θが0°である領域が含まれない場合は、基材フィルム1の中央近傍に於いて、傾斜角θの値が、傾斜角θの分布範囲の平均値或はそれに近い値となる様に設定すると良い。
【0024】
以上のように、傾斜角θの面内分布を設定することによって、経時での、立体画像表示用柱状レンズシート10の単位柱状レンズ2の配列方向daの寸法変化(收縮)を最小限に抑えることが出来、好ましい。
【0025】
(立体画像表示用光学部材への適用)
立体画像表示用柱状レンズシート10は、柱状レンズ群3が形成されていない側の面、或いは、柱状レンズ群3が形成されている側の面、或いはこれら両方の面に、他の光学要素を積層することができる。
例えば、立体画像表示用柱状レンズシート10は、柱状レンズ群3が形成されていない側に、ガラス基板5を密着積層して、図3で例示する立体画像表示用光学部材20として使用することができる。
図3の立体画像表示用光学部材20は、図1で例示した立体画像表示用柱状レンズシート10に対して、更に、多数の単位柱状レンズ2からなる柱状レンズ群3を有する一方の面1pとは反対側の面、つまり、基材フィルム1の他方の面1qに粘着剤層4を介して、平板状のガラス基板5が積層されたものである。
【0026】
図3の立体画像表示用光学部材20は、光線制御パターン6を、ガラス基板5の粘着剤層4に接する面とは反対側の図面下方の面に有する。この光線制御パターン6は、前記単位柱状レンズ2の配列方向である一方向da(X軸方向)において、前記単位柱状レンズ2の配列周期Pと対応した(関連付けられた)周期となっている。該光線制御パターン6は、例えば、カラーの液晶パネルにおいては、その前面ガラス基板に形成されたカラーフィルタ内のブラックマトリックスの遮光パターンが対応する。また、この遮光パターンとしての光線制御パターン6は、観察者Sの視点位置が左右方向(図面X軸方向)に僅かにずれた時に、画像表示素子で表示する左右視差画像の隣の画像が見えてしまうこと、即ち、左右視差画像のクロストークが発生し難い様にする機能も有する。
【0027】
なお、正面のみを立体視の観察可能範囲とする立体画像表示装置の場合、つまり2眼表示の場合は、レンチキュラー方式では単位柱状レンズ2の1配列周期P(言い換えると一つの単位柱状レンズ2)に対応させて、画像表示素子で表示する二次元画像の視差画像は、左目用画像と右目用画像の2つの画像で足りる。このため、2眼表示の場合は、該配列周期Pの方向に該2つの画像を交互に表示すれば、立体視可能となる。したがって、前記光線制御パターン6として左右視差画像間に遮光パターンを設ける場合は、該遮光パターンの前記一方向daにおける周期は、単位柱状レンズ2の配列周期Pの細かさが2倍の周期となる。
【0028】
以上の様な構成にて、使用した立体画像表示用柱状レンズシート10が、単位柱状レンズ2の稜線方向dpと基材フィルム1の分子主軸dmとの成す傾斜角θが規定されており、熱などの存在下に於ける経時的な単位柱状レンズ2の配列方向daの寸法変化が最小化され、左右視差画像のクロストークが経時的に生じるのを防げる寸法安定性を有するので、ガラス基板の光線制御パターン6が遮光パターンである場合に、熱の存在下に於いて経時的に見えてくることを防げる。その結果、遮光パターンが見えることによる輝度低下を防げることになる。
【0029】
なお、立体画像表示用柱状レンズシート10の適用例として、図3で例示した立体画像表示用光学部材20では、立体画像表示用柱状レンズシート10は、その柱状レンズ群3側のレンズ面を、観察者S側に向けて配置した。しかし、図示はしないが、この逆に、基材フィルム1側、つまり他方の面1q側を、観察者S側に向けて配置することもできる。
また、立体画像表示用柱状レンズシート10は、ディスプレイパネルの背面の光源側に、光源とディスプレイパネルとの間に配置することもできる。この場合、柱状レンズ群3のレンズ面の向きは、ディスプレイパネル側(観察者S側)、或いは光源側の何れもあり得る。
【0030】
以下、立体画像表示用柱状レンズシートの各構成要素について更に説明する。
【0031】
〔基材フィルム〕
基材フィルム1としては、透明な延伸フィルムで、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の透明樹脂フィルムが挙げられる。なかでも、ポリエステル系樹脂の一種であるポリエチレンテレフタレートは代表的であり、その2軸延伸フィルムは、コスト、透明性、機械的強度等の点で好適な基材フィルムである。但し、延伸による分子配向が生じているので、本発明の様に分子主軸の配向方向dmに関する傾斜角θを規定することで、経時的なクロストーク発生を防止しつつ使用可能となる。
なお、基材フィルム1は「フィルム状」であるが、ここで「フィルム」とは、「シート」、「板」の概念も含むものであり、これらの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。つまり、厚みや剛性によって区別されるものではない。例えば、基材フィルム1の厚さは、50μm〜5mm等である。
【0032】
なお、通常は、基材フィルム1の平面視(XY面)での大きさ及び形状は立体画像表示用柱状レンズシート10の大きさ及び形状に等しい。
立体画像表示用柱状レンズシート10を、図3を参照して説明した立体画像表示用光学部材20の様に、ガラス基板5と積層した場合は、基材フィルム1の大きさ及び形状は、ガラス基板5の大きさ及び形状に等しいか、その大きさよりも小さい。
【0033】
〔単位柱状レンズ〕
単位柱状レンズ2は、柱状のレンズであり、その主切断面の形状が円、楕円、抛物線、双曲線、正弦(波)曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、又はサイクロイド曲線の一部など曲線からなる、代表的には所謂蒲鉾形状のレンズである。断面蒲鉾形状の単位柱状レンズ2は代表的には、レンチキュラーレンズである。なお、単位柱状レンズ2の寸法は、立体画像表示用柱状レンズシート10と組み合わせる、二次元画像を表示する画像表示素子の画素の細かさ、光線制御パターン6の配列周期、立体視を可能とする観察可能範囲の設定距離、構成材料の屈折率、2眼式や多眼式等の立体視の方式等に応じて決められる。
【0034】
なお、「主切断面」とは、基材フィルム1の一方の面1pに立てた法線n(図2(a)参照)に平行な断面のうち、単位柱状レンズ2の配列方向daにも平行な断面のことを言う。言い換えると、該法線nに平行で且つ単位柱状レンズ2の稜線方向dpに直交する断面である。なお、図2(a)に於いては、Z軸が該法線nと平行方向となっている。
【0035】
また、単位柱状レンズ2は、ガラス等の無機材料ではなく、コスト的に安価で製造も容易な点で、樹脂から構成される。ガラス等の無機材料で単位柱状レンズ2を構成すれば、寸法変化に起因する左右視差画像のクロストークは発生しない。
単位柱状レンズ2を構成する樹脂としては、基本的には特に限定はない。例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂、紫外線や電子線で硬化する、アクリレート系やエポキシ系等の電離放射線硬化性樹脂等である。
熱可塑性樹脂の場合は、例えば、単位柱状レンズ2を基材フィルム1の一方の面1pに、溶融押出法、射出成形法、熱プレスによるエンボス法等の熱成形法で形成することができる。また、電離放射線硬化性樹脂の場合には、例えば、単位柱状レンズ2を基材フィルム1の一方の面1pに、未硬化の電離放射線硬化性樹脂液を接触させ且つ該樹脂液を成形型と前記基材フィルム1とで挟んだ状態で、電離放射線照射で樹脂を架橋硬化させる成形法によって形成することができる。なお、樹脂液に電離放射線硬化性樹脂を使用して電離放射線で硬化させる場合は、所謂2P法(フォトポリマー法)と呼ばれている。
なかでも、2P法は、電離放射線硬化性樹脂の硬化が迅速で生産性に優れる上、なによりも、立体画像品質に直接的に影響する単位柱状レンズ2の形状を高精度に形成できる点で、熱可塑性樹脂を用いる熱成形法に比べて優れており、高精度が要求される立体視用として、好ましい。
【0036】
なお、基材フィルム1上に配列された単位柱状レンズ2同士の間の谷部2vに於いては、基材フィルム1の一方の面1pが露出していても、図2(a)の様に単位柱状レンズ2を構成する樹脂で該一方の面1pが被覆されていても良い。
【0037】
〔傾斜角θ〕
傾斜角θは、基材フィルム1を構成する高分子の分子主軸の配向方向dmに関係する角度である。本発明では、使用する基材フィルム1が延伸フィルムであることから、フィルム面内において、言い換えると、基材フィルム1の一方の面1pに平行な面内に於いて、フィルムを構成する高分子の個々の分子の分子軸の方向が完全にランダムではなく、ある程度揃っていることに関係する。この為、個々の分子の分子軸の方向つまり配向方向を、、該分子よりも十分大きく画素よりも小さい面積内、例えば10μm四方の領域内にて、全体として平均化すると或る方向性を示す。この個々の分子の分子軸の配向方向を全体として平均化した方向が、分子主軸の配向方向dmである。
そして、図2(b)に示す様に、分子主軸の配向方向dmの向きを、単位柱状レンズ2の稜線2pが延在する稜線方向dpとの角度として定義する。すなちわ、基材フィルム1の一方の面1pに平行な面内(同図ではXY平面)の各点(X、Y)に於いて、分子主軸の配向方向dmと、単位柱状レンズ2の稜線方向dpとが成す角度のうち小さい方の角度、つまり劣角を傾斜角θ(点(X、Y)の函数θ(X、Y)となる)として定義する。
【0038】
そして、本発明では、この傾斜角θが0°となる領域を、基材フィルム1が少なくとも有する様にするのが好ましい。
【0039】
傾斜角θが0°である領域は、基材フィルム1の全域であるのが理想的である。従って、偏光板用のフィルムの様に分子主軸の配向方向dmを極度に均一化したフィルムを基材フィルムとして使用しても良い。但し、この様なフィルムは高度な製造技術を要し且つ極めて高価となる点で実用的とは言えない。そこで、或る程度の配向方向dmの不均一性が存在することによる配向方向dmの面内分布は許容することにして、少なくとも傾斜角θが0°である領域を有する様にするのである。
【0040】
ところで、基材フィルム1等の各種フィルムとして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは代表的な延伸フィルムの一種であるが、分子主軸の配向方向dmは一般に帯状フィルムの状態において、特にその幅方向で異なるのが普通である。また、一般に幅方向中央の配向方向dmに対して両端部にいく程、配向方向dmが傾いてくる。
この為、なるべく汎用的でコスト的に有利なフィルムを用いることにして、それによる、相応の分子主軸の配向方向dmの不均一性に基づく面内分布は、許容できる様に使用するのが好ましいことになる。
そこで、本発明では更に好ましくは、傾斜角θが0°でない領域を有するとしても、基材フィルム1の全域において、傾斜角θは50°以下、より好ましくは45°以下とする。つまり、傾斜角θは、0°≦θ≦50°とすることが好ましく、0°≦θ≦45°とすることがより好ましい。
また、傾斜角θが0°となる領域は、なるべく中央近傍とするのが効果的である。ここで中央近傍とは、図2(b)に示す様に、基材フィルム1の単位柱状レンズ2の配列方向daにおける両端間を距離L、前記基材フィルム1の幅方向両端部のうちの一方の端部から測った距離が、(L/2)±(L/4)を満足する領域である。
【0041】
傾斜角θについて以上の様にすることで、より確実に単位柱状レンズ2の配列方向daの寸法変化を最小化できるので、左右視差画像のクロストーク、及び積層するガラス基板の光線制御パターン6が遮光パターンである場合に、それが経時的に見えてくるのをより確実に防げることになる。
以上の様に、分子主軸の配向方向dmと単位柱状レンズ2の稜線方向dpとの傾斜角θを規定すると、それが如何にして単位柱状レンズ2の寸法変化の安定性に好影響しているかは現在のところ不明であるが、とにかく、該寸法変化を少なくできることが判明した。
【0042】
〔位置合わせマーク〕
位置合わせマークMは、立体画像表示用柱状レンズシート10を、ディスプレイパネルなどの他の光学部材に対して正しい位置関係に位置合わせする為に使用するマーク(アライメントマーク)である。本発明では、この位置合わせマークMを、透明基材1の他方の面1qにではなく、単位柱状レンズ2の表面、言い換えると多数の単位柱状レンズ2から構成される柱状レンズ群3の表面に設けてある。位置合わせマークMを、透明基材1の他方の面1qにではなく、柱状レンズ群3の表面に設けることで、柱状レンズ群3を構成する単位柱状レンズ2との相対的位置関係をより正確にして形成することが可能となる。
【0043】
[平面位置]
位置合わせマークMは、立体画像表示用柱状レンズシート10の有効画面領域Aの外側に、少なくとも一枚当たり2個設けられる。有効画面領域Aとは、液晶パネルなどディスプレイパネルに立体画像表示用柱状レンズシート10を適用したときに、該ディスプレイパネルの画像表示に使用される領域である。
【0044】
位置合わせマークMを設ける位置は、この有効画面領域Aの外側であれば、特に制限はない。位置合わせマークMは、2個のみ設ける場合でも、例えば、図1(a)で言えば、図示の如く両個の位置合わせマークMのXY両座標の値が共に異なる配置の他、2個の位置合わせマークMをY軸座標は同じでX座標のみ変えた位置に、或いは、2個の位置合わせマークMをX軸座標は同じでY座標のみ変えた位置等にしても良い。
【0045】
ただ、位置合わせには、ディスプレイパネル等の他の光学部材に対して、その水平方向の位置と鉛直方向の位置とを正しい位置関係で合わせることになるが、ディスプレイパネル等の他の光学部材に対する立体画像表示用柱状レンズシート10の回転(ねじれ)も調整してゼロにする必要がある。このため、最低の2個設ける場合は、この2個については、なるべく互いに距離が離れた箇所に設けることが、回転角の検知が容易となる点で好ましい。図1(a)の例は、対角を成すコーナー部近傍に2個設けることで、長方形形状の立体画像表示用柱状レンズシート10に対して、最大限乃至は可能な限り最大限、距離を離す位置とした例でもある。
【0046】
最低数の2個設ける場合で言えば、立体画像表示用柱状レンズシート10では、単位柱状レンズ2の配列方向daにおける位置合わせ精度が、単位柱状レンズ2の稜線方向dpよりも必要とされる。従って、この2個については、なるべく互いに配列方向daで距離を離すことが、配列方向daでの位置合わせ精度が上がる点で好ましい。図1(a)の例は、対角を成すコーナー部近傍に設けることで、長方形形状の立体画像表示用柱状レンズシート10に対して、配列方向daに平行なX軸方向で最大限距離を離す位置とした例でもある。
【0047】
位置合わせマークMは、1個の位置合わせマークMを1つの単位柱状レンズ2の表面に収まる様に設けても良いし、隣接する2つの単位柱状レンズ2を跨る様に設けても良いし、連接する3個以上の単位柱状レンズ2を跨る様に設けても良い。
なお、位置合わせマークMを設ける位置を、それ専用に単位柱状レンズ2を設けないで平面としておく必要はない。
【0048】
位置合わせマークMを、3個以上設ける場合、そのうちの少なくも2個は、以上述べたことを考慮した位置とすることが好ましい。残りの位置合わせマークMの位置は任意である。
【0049】
[形状]
位置合わせマークMの形状は、特に制限はない。例えば図1(b)に例示の位置合わせマークMは、平面視が「十字」形状で、隣接する2つの単位柱状レンズ2を跨ぐ様にして、隣接する単位柱状レンズ2同士の間の谷部2vをX軸方向(配列方向da)でのマーク中心点として設けた例であった。
この様な十字形状とすることによって、配列方向da及びこれと直交する稜線方向dpでの位置合わせが容易にできる。
また、位置合わせマークMは、一箇所において、複数の小片から一個の位置合わせマークMが構成されるものでも良い。例えば、図4の位置合わせマークMは、図1(b)と同様に、隣接する2つの単位柱状レンズ2を跨ぐ様にして一箇所設けた例であるが、ここでの一個の位置合わせマークMは複数の小片Msから構成される例でもある。小片Msは平面視が稜線方向dpに延在する直線状である。この小片Msが互いに等間隔で間を開けて配列方向daに複数配列したもので、一箇所に一個の位置合わせマークMを構成した例である。
この様にすると、特に精度が要求される配列方向daでの位置合わせが、複数の小片Msにより多重化される為に、容易になる。
【0050】
(断面形状:表面の凹凸)
図5の断面図で示す様に、一個の位置合わせマークMの部分の表面は、そうでない部分の表面に対して凸形状であってもよく{図5(a)}、凹形状であってもよく{図5(b)}、凸形状と凹形状を共に有するものであっても良く(不図示)、或いは同一水準面であっても良い。図1(b)及び図2(b)は、共に、凸形状の例であった。
凸形状の位置合わせマークMは、それを成型する時に成形型において、成型面は凹形状となる関係上、単位柱状レンズ2とは逆凹凸形状の凹状溝をバイトによる切削加工などで形成した後から、更に位置合わせマークMの部分だけ追加的に切削加工することによって、位置合わせマークMと単位柱状レンズ2からなる柱状レンズ群3を同時に形成できる成形型を容易に作製できる利点がある。
逆に、凹形状の位置合わせマークMでは、型面を形成する際に位置合わせマークMに対応した部分をレンズ形状に対する型面よりも突出させることにより作成は可能である。尚、凹形状の位置合わせマークMに対して、更に凹形状の内部に着色インキを充填して、位置合わせマークMとその周囲の部分と水準面が同一となり、且つ着色乃至は不透明な位置合わせマークMとすることもできる。
【0051】
凸形状の場合、図1(b)及び図4の様に、凸部の上面に平面を有する形状としても良い。上面が平面の位置合わせマークMとすることによって、該位置合わせマークMは柱状レンズ群3の表面に形成されることから、位置合わせマークMが無色透明であった場合でも、立体画像表示用柱状レンズシート10を垂直に透過する光線の進路が、位置合わせマークM部分では直進し、そうでない部分では柱状レンズ群3のレンズによって屈折して直進しない。この結果、垂直進行光を主体にして透過光を測れば、位置合わせマークM部分が明るくなり、そうでない部分が暗くなるので、透過光の濃度変化として、位置合わせマークMを検知できる利点がある。
【0052】
凸形状の位置合わせマークMの場合、図1(b)及び図4の例では、位置合わせマークMは、単位柱状レンズ2の谷部に対して凸形状となるのはもちろんだが、単位柱状レンズ2の稜線部分に対しても凸形状の例であった。
しかし、図示はしないが、位置合わせマークMは、単位柱状レンズ2の稜線部分に対して凸形状でも凹形状でもなく、稜線部分と同じ高さ(Z軸座標)となる形状としても良い。この様にすると、稜線部分より凸形状となることによる、立体画像表示用柱状レンズシート10の位置合わせマークM部分での厚み増や、それに伴う磨耗を防げる。
【0053】
(平面視形状とその寸法)
ここで、図6〜図8は、位置合わせマークMの平面視形状と寸法例である。なお、この図6〜図8も含めて各図に於ける位置合わせマークMは、それが、無色透明、着色透明或いは不透明の何れか特定のものであるかを示すものではない。
図6の位置合わせマークMは、図1(b)で例示した様な位置合わせマークMであり、太さ0.1mmで長さ0.3mmの直線が十字状に交差した十字形状の例である。
図7の位置合わせマークMは、太さ0.1mmで長さ0.3mmの直線と、太さ0.1mmで長さ0.5mmの直線とがT字状に交差したT字形状の例である。
【0054】
図8の位置合わせマークMは、底辺0.01mmで高さ0.1mmの二等辺三角形状の小片Msが、その底辺を一直線に揃えて平行に隙間なく頂点を同じ側にして複数配列して構成した位置合わせマークMの例である。図面右側の左向きの矢印は、位置合わせマークMではなく、位置合わせマークMの存在位置を判り易すくガイドする為のガイドマークMgである。このガイドマークMg自体は、位置合わせには使用しない。ガイドマークMgは、肉眼或いは機械操作による位置合わせにおいて、位置合わせマークMをより早く見つける為のガイドマークである。なお、ガイドマークMgは、一箇所の位置合わせマークMに対して、1個でも良いが、複数個設けても良い。位置合わせマークMとガイドマークMgとの距離は、同図では、位置合わせマークMの大きさ程度としてあるが、この限りではない。ガイドマークMgは位置合わせマークMで述べた様な材料で形成することができる。ガイドマークMgは位置合わせマークMと同一材料で位置合わせマークMと同時に形成するのが、形成が容易な点では好ましい。
また、位置合わせマークMを複数の小片Msとする場合、図4で例示した様に小片Msとして太さ一定の直線を多数配列するのではなく、二等辺三角形など太さが漸減又は漸増する形状を多数配列することで、相手方の位置合わせマークの形状との相互作用で重なった形状によって、位置合わせ状態を分かり易くすることができる。
【0055】
(位置合わせマークMと組となる相手方の位置合わせマークM2)
立体画像表示用柱状レンズシート10の位置合わせマークMと共に、立体画像表示用柱状レンズシート10の位置合わせ対象となる他の光学部材にも、該位置合わせマークMと組となる相手方の位置合わせマークM2を設けておくのが好ましい。相手方の位置合わせマークM2は、光学部材、例えば、ガラス基板上の透明電極パターン、光線制御パターン、カラーフィルタのブラックマトリックス、などに対応した位置で、その有効画面領域の外に設けておくのが好ましい。
この際、立体画像表示用柱状レンズシート10の位置合わせマークMと相手方の位置合わせマークM2とが、正しい位置関係になった時に、それが判別し易い互いの形状としておくのは、好ましいことである。
【0056】
図9は、位置合わせマークMの平面視形状について、その他の各種形状例のうちの幾つかを例示したものである。また、同図では、これと組となる相手方の位置合わせマークM2も例示した。上段が位置合わせマークMであり、中断が相手方の位置合わせマークM2であり、下段が、これらが正しく位置合わせされ重なり合ったときの、位置合わせ時形状M+M2を示す。図9中、(a)ば×印と四角形の組、(b)は十字と十字の組、(c)は十字と白抜き十字内包四角形の組、(d)は小四角と、白抜き小四角内包四角形の組、(e)は四分円2個と上下反転四分円2個の組、(f)は二等辺三角形と上下反転二等辺三角形の組、(g)は縦直線と縦直線の組、(h)はコの字と反転コの字の組である。
【0057】
位置合わせマークMと相手方の位置合わせマークM2との相互作用で、位置合わせをより容易する為の工夫は、各種とり得る。図9の位置合わせマークMはその例でもあった。図10は、(a)の位置合わせマークMと、(b)の相手方の位置合わせマークM2とを例示したものである。位置合わせマークMと位置合わせマークM2とは、それぞれの小片Msの配列ピッチが同一ではなく異なる設定とした例である。配列ピッチを変えることで、図10(c)の様に、これらが重ね合わされたときに、干渉縞が発生し、干渉縞の模様によって、位置合わせ状態を判断できることになる。
【0058】
[材料]
位置合わせマークMを構成する材料は、基本的には特に制限はない。位置合わせマークMは、柱状レンズ群3と同一材料でもよく、異種材料でも良い。また、位置合わせマークMは無色透明、着色透明、及び不透明のいずれでも良い。不透明の場合には、金属薄膜、着色インクなどにより形成したものでも良い。また、着色透明では、着色透明インキにより形成したものでも良い。
【0059】
ただ、位置合わせマークMは、柱状レンズ群3と同一材料であり、しかも位置合わせマークMと柱状レンズ群3とが縦断面{図1(b)で言えばZ軸に平行な平面であり例えばXZ平面やYZ平面など}に於いて界面が存在しない連続層で一体化している形態が、好ましい。
この形態は、製法的に言えば、位置合わせマークMを柱状レンズ群3と、同一の成形型で同時に一括して成型して得た、位置合わせマークMと柱状レンズ群3とを意味する。要は、先に柱状レンズ群3を形成して、その後から、柱状レンズ群3の表面に追加的に位置合わせマークMを形成したものではないということである。同一の成形型から位置合わせマークMと柱状レンズ群3とを同時成型して形成することで、柱状レンズ群3の単位柱状レンズ2に対する位置合わせマークMの位置を安定して高精度に形成できることになる。柱状レンズ群3を形成してから、位置合わせマークMを形成したのでは、柱状レンズ群3の単位柱状レンズ2に対する位置合わせマークMの位置を安定して高精度に形成することは容易ではない。
【0060】
柱状レンズ群3と位置合わせマークMとが同時成型で形成された物であることによる特徴は、該位置合わせマークMが該柱状レンズ群3に対して凸形状となる部分で該位置合わせマークMと該柱状レンズ群3との間に界面が存在しない連続層で一体化していることである。ここで、図5の断面図に戻って説明すれば、図5(a)の凸形状の位置合わせマークMの場合、図中で、横線の破線で示す部分が位置合わせマークMと柱状レンズ群3との仮想的な境界Bdである。境界Bdより図面上方の部分を位置合わせマークMの領域、境界Bdより図面下方の部分を柱状レンズ群3の領域と見立てた場合に、どちらの領域も同じ材料から構成されている。しかも、境界Bdはあくまでも仮想的なものであり、明確な界面は観察されない。従って、位置合わせマークMの領域と柱状レンズ群3の領域とは仮想的な境界Bdの部分で連続した連続層で一体化している。この様な、同一材料で界面が存在せず連続層で一体化した形態は、位置合わせマークMと柱状レンズ群3とを同一材料で同時成型により形成する以外に、あり得ない。
【0061】
一方、図5(b)の様に位置合わせマークMが凹形状である形態では、仮想的な境界Bd自体が存在しない。但し、同時成型より形成する場合には、凹形状は凸形状よりも成形型の型面の作製により高度な技術が必要とされる。
【0062】
この様に、位置合わせマークMが柱状レンズ群3よりも凸形状の部分で、柱状レンズ群3と同一材料で界面のない連続層で一体化しているものとすれば、柱状レンズ群3の形成と同時に形成した位置合わせマークMとできるので、柱状レンズ群3を構成する単位柱状レンズ2と位置合わせマークMとの位置関係の誤差がゼロに出来る。その結果、位置合わせマークMそれ自体が高精度に形成され、この高精度の位置合わせマークMを使用して、容易に位置合わせが出来る。
【0063】
以下、立体画像表示用柱状レンズシート10を適用した立体画像表示用柱状光学部材20で追加的な構成要素について更に説明する。
【0064】
〔粘着剤層〕
粘着剤層4には、透明な粘着剤が使用され、光学用途など公知のものを適宜採用すれば良い。また、立体画像表示用柱状レンズシート10とガラス基板5との貼り合わせの失敗時に剥がせる点では、再剥離性の粘着剤が好ましい。この様な粘着剤層に使用できる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0065】
〔ガラス基板〕
ガラス基板5には、透明な平板状のガラス板が使用され、光学用途など公知のものを適宜採用すれば良い。なお、ガラス基板5は、立体画像の元になる平面画像を表示する画像表示素子のガラス基板(例えば前面ガラス基板)を兼用させても良いし、兼用させなくても良い。
【0066】
〔光線制御パターン〕
光線制御パターン6は、立体画像を表示する際に、立体画像表示用柱状レンズシート10を透過しようとする光線を遮断するなどの操作する為のパターンであり、且つ該パターンがランダムではなく周期性を有するパターンである。しかも、その周期性が、単位柱状レンズ2の配列方向daに周期性を有し、且つ単位柱状レンズ2の配列周期Pに対応した周期性を有するパターンである。なお、該周期性とは配列方向da(図1でX軸方向)でのことである。従って、単位柱状レンズ2の稜線方向dpに於いては、光線制御パターン6としては、該稜線方向dpと平行なパターンを有するパターンに限定されず、稜線方向dpと斜めや折れ線等となるパターンを排除しない。また、例えば、液晶パネルのカラー画素等の表示画素に対応したブラックマトリックスの場合には、格子状となる。
又、この様な光線制御パターン6の形成位置は、図3の如くガラス基板5の立体画像表示用柱状レンズシート10とは反対側面の他、立体画像表示用柱状レンズシート10の画像観察者側面、立体画像表示用柱状レンズシート10とガラス基板5との間等とすることも出来る。又、この様な光線制御パターン6は、通常、何らかの基板(支持体)上に形成されるが、その基板としては、図1の如くガラス基板5とする他、ガラス基板5とは独立した別の基板上に形成することも出来る。
【0067】
光線制御パターン6は、立体視に必要な可視光線について、その透過率、反射率、進行方向、偏光状態、位相(差)などの1又は2以上が変化する様な光線制御を行うパターンである。光線制御パターン6によって、この様な光線制御される部分がパターン状にガラス基板5に形成されている。例えば、透過率を抑制することで透過する光を遮断する遮光パターンである。なお、図3に例示の実施形態では、光線制御パターン6は、ガラス基板5の図面下方の面の片面に形成された例であるが、形成面はこれに限定されず、ガラス基板5の図面上方の面、或いは上下の両面でも良い。
なお、光線制御パターン6が有する、単位柱状レンズ2の配列周期Pに対応した周期性とは、画像表示素子の平面画像を表示する画素を立体画像表示用柱状レンズシート10によって立体画像として立体視可能とするに供する様な、前記配列周期Pで配列した単位柱状レンズ2の位置と関連付けられた所定の位置関係となる様な周期性のことである。
【0068】
例えば、Z軸方向の正面の中央方向のみを立体視の観察可能範囲とする立体画像表示装置に適用する場合、つまり2眼表示の場合、レンチキュラー方式では単位柱状レンズ2の配列周期Pに対応させて、画像表示素子には該配列周期Pの方向に左目用画像の画素と右目用画像の画素とを交互に配置して表示する。この時、隣接する左目用画像の画素と右目用画像の画素との間に、遮光パターンを設けておくと、視点が横方向(配列方向da)にずれたときに、直ちに隣接する画素からの光線が観察者の目に入るのが防げるので、左目用画像と右目用画像のクロストークを防げる。このときの、遮光パターンとしての光線制御パターン6の周期性は、一つの単位柱状レンズ2に対して左右二つの視差画像を対応させることから、2つの光線制御パターン6が対応する周期性となる。
【0069】
また、上記の場合、1つの左目用又は右目用の画素を、例えば、赤、緑、青の3色のサブ画素で構成してカラー表示する画像表示素子を用いる場合、サブ画素が単位柱状レンズ2の配列方向daの方向(図3でX軸方向)に等間隔で並んでいるときは、これらサブ画素間を区画するブラックマトリックスが遮光パターンとなり得る。このときの遮光パターンとしての光線制御パターンは、その分より細かいものとなる。ただし、赤、緑、青の3色のサブ画素が単位柱状レンズ2の配列方向daに対して直交する方向(図1でY軸方向)に並んでいるときは、前記と同じである。
【0070】
〔その他〕
なお、立体画像表示用光学部材20は、上記した構成要素以外のその他の要素を含んでいても良い。例えば、後述する液晶パネルに適用して立体画像表示可能な液晶表示装置とする場合の様に、偏光板を含んでいても良い。
【0071】
〔クロストークの測定〕
なお、左右視差画像のクロストークは、目視で行っても良いが、例えば、左目用画像に白を表示させ、右目用画像に黒を表示させることにより計測することができる。この場合、本来ならば左目の観察位置では白、右目の観察位置では黒にしか見えないが、クロストークが生じると、左目の観察位置では白に黒が混じり、右目の観察位置では黒に白が混じる。これを、カメラ等の光学装置で測定することで、数値化もできる。
【0072】
〔用途〕
本発明による立体画像表示用柱状レンズシート10の用途は、立体画像の元になる平面画像を表示する画像表示素子と共に使用されて、裸眼立体画像を表示する立体画像表示装置に使用することができる。平面画像を表示する画像表示素子としては、特に限定されるものではなく、液晶パネルなど平面画像表示を行う公知の各種画像表示素子が組み合わせの対象となり得る。
また、上記では、立体画像表示用柱状レンズシート10は、画像表示素子の前面に配置されることで該画像表示素子からの左右視差画像を観察者の左右の目に振り分ける所謂レンチキュラー方式の立体画像表示を前提に説明した。しかし、立体画像表示用柱状レンズシート10は、立体画像表示用の光学部材として、更に好ましくはその経時的な寸法安定性を活かせる立体画像表示用途であれば、その使用法は特に制限はない。また、この意味において、本発明の立体画像表示用柱状レンズシート10は、その単位柱状レンズ2がレンチキュラーレンズの様な主切断面形状が曲線のみからなる柱状レンズの他に、主切断面形状が例えば三角形などの直線を含む柱状プリズムの場合でも、寸法安定性の効果が得られる。
【0073】
〔B〕液晶表示装置:
本発明による液晶表示装置は、少なくとも、液晶パネルと、上記した立体画像表示用柱状レンズシート10とを備える、立体視可能な立体画像表示装置である。更に、通常は液晶パネルの画像を視認可能とする光源を備える。図11の断面図は、本液晶表示装置30の一実施形態を概念的に示す図である。同図の液晶表示装置30は、背面光源としての光源31の出光面上に液晶パネル32を備え、該液晶パネル32の前面に上記した立体画像表示用光学部材20を備える。この立体画像表示用光学部材20は、前記した立体画像表示用柱状レンズシート10を備える。
液晶パネル32は前面ガラス基板32aと後面ガラス基板32bとの間に液晶層32cを有する。なお、同図では、ガラス基板32a,32bの内面に形成される透明電極、基板表面に積層される偏光板等の図示は省略してある。また、カラー画像を表示する場合には、前面ガラス基板32aの内面にはカラーフィルタ(不図示)も形成され、カラーフィルタは例えば赤、緑、青の各色間に光線制御パターン6となるブラックマトリックスを有する。なお、光源31、液晶パネル32、及びこれらに関する上記で説明した以外の構成要素は、従来公知の液晶パネル乃至は立体視用の構成部材を、適宜採用することができる。
【0074】
また、同図の液晶表示装置30では、図1(a)で例示した様な立体画像表示用柱状レンズシート10を備える図3で例示した様な立体画像表示用光学部材20、に於けるガラス基板5が、液晶パネル32の構成要素である前面ガラス基板32aでもある。そして、ガラス基板5に形成されている光線制御パターン6が、前記した前面ガラス基板32aの内面に形成されている遮光パターンであるブラックマトリックスである(不図示)。また、立体画像表示用光学部材20が備える立体画像表示用柱状レンズシート10に於ける単位柱状レンズ2は、X軸方向に配列されている。そして、X軸方向が画像の観察者Sにとっての左右方向に対応する。
【0075】
そして、液晶パネル32の液晶層32cの画素で表示される平面画像としての左右視差画像を、立体画像表示用柱状レンズシート10によって、液晶表示装置30の正面の観察可能範囲に位置する観察者Sが、立体画像として立体視できる様になっている。
なお、本実施形態では、液晶パネル32はその前面及び後面に偏光板(不図示)を有し、前面ガラス基板32aの前面には偏光板が積層され、立体画像表示用光学部材20は、立体画像表示用柱状レンズシート10に積層された粘着剤層4とガラス基板5間にこの偏光板を有する構成となる。
【0076】
そして、この様な液晶表示装置30には、上記した様な、単位柱状レンズ2の配列周期Pの経時的な寸法変化の少ない立体画像表示用柱柱状レンズシート10を採用した立体画像表示用光学部材20を用いてあるので、立体画像に左右の視差画像が混じり合うクロストークや、光線制御パターンである遮光パターンが見えることで輝度が暗くなる現象が、経時的に生じるのを防ぐことができる。この為、経時的な立体画像品質の低下を防げる。
なお、本実施形態では、光線制御パターンが遮光パターンとしてのブラックマトリックスの例であったが、光線制御パターンとしては、これに限定されるものではない。
【0077】
〔用途〕
本発明による液晶表示装置30の用途は、立体画像を表示する用途であれば、特に限定されない。例えば、立体ディスプレイ、立体テレビジョン等である。立体ディスプレイは、携帯電話、携帯情報端末、携帯乃至は固定式遊戯機器、パーソナルコンピュータの表示部、電子看板、デジタルフォトフレーム、医療用ディスプレイ等である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に説明する。
【0079】
〔実施例1〕
図1及び図2(a)に示す様な、単位柱状レンズ2として蒲鉾型のレンチキュラーレンズを多数周期配列し、その有効画面領域Aの外側の対角を成す角部近傍の単位柱状レンズ2の表面に2箇所に位置合わせマークMを設けた立体画像表示用柱状レンズシート10を作製した。
【0080】
先ず、成形型として多数の単位柱状レンズ2からなる柱状レンズ群3とは逆凹凸形状の柱状レンズパターンの型面であって、図1(b)の様な位置合わせマークMとは逆凹凸形状を角部近傍に有する型面の金属製のシリンダ状(円筒状)の成形型を用意した。そして、この成形型に、透明なアクリル系の紫外線硬化性樹脂液を塗布し、更にその上に、厚み125μmの透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を重ねた状態で、紫外線照射によって該樹脂液を硬化させた。そして、単位柱状レンズ2がその稜線を互いに平行に、基材フィルム1の一方の面1pに配列して成る、立体画像表示用柱状レンズシート10を作製した。
【0081】
この際、基材フィルム1の分子主軸の配向方向dmは、該基材フィルム1を偏光軸を互い直交させたクロスニコルの状態にした2枚の偏光板の間に入れて回転させたときの透過光の状態から確認した。そして、長方形形状の基材フィルム1の長手方向の幅Lに対して、該長方形形状の長手方向の両端部のうちの一方の端部から測った長さがL/2となる、幅方向中央の位置に於いて、前記配向方向dmと単位柱状レンズ2の稜線方向dpとが平行になり、傾斜角θが、幅方向TDの中央部に於ける面内での最小値が0°、幅方向TDの側端部に於ける面内での最大値が23°となる様にして、基材フィルム1上に単位柱状レンズ2を形成した。
なお、単位柱状レンズ2の稜線方向dpは基材フィルム1の長方形形状の長手方向に直交する方向である。従って、該長方形形状の幅方向中央部に於ける分子主軸の配向方向dmも、基材フィルム1の長方形形状の長手方向に直交する方向である。
【0082】
なお、上記単位柱状レンズ2の形状は、主切断面形状が高さ67μm(谷部2vと稜線2pとのZ軸方向の標高差)、曲率半径500μm、F値1のレンズとなる、主切断面形状が楕円の一部から形成される蒲鉾型のレンチキュラーレンズである。また、この単位柱状レンズ2の配列方向daでの幅及び配列周期Pは500μmで、基材フィルム1の一方の面1pの全面を完全に被覆している。
また、位置合わせマークMの形状は、図1(b)に示す様な十字形状であり図6に示す寸法を有する。
【0083】
次に、上記立体画像表示用柱状レンズシート10の裏面側である基材フィルム1の他方の面1qに、透明なアクリル系粘着剤を用いた光学材料用粘着フィルム(パナック工業株式会社製、PD−S1)を貼り付けて、表面がセパレータフィルムで保護された、厚み25μmの粘着剤層4を積層した。
【0084】
次の、上記粘着剤層付きの立体画像表示用柱状レンズシート10から、上記セパレータフィルムを剥がして、粘着剤層4を介して立体画像表示用柱状レンズシート10を透明なガラス基板5の一方の面に貼り付けて、立体画像表示用光学部材20を作製した。このとき、位置合わせマークMによって、立体画像表示用柱状レンズシート10とガラス基板5との位置合わせをした。
なお、このガラス基板5の他方の面には、周期的な光線制御パターン6が形成されており、その周期は単位柱状レンズ2の配列方向daにおいて、単位柱状レンズ2の500μmの配列周期Pと対応した周期となっており、且つ柱状単位レンズ2の稜線2pと同方向に延在した黒色パターンとなっている。なお、この光線制御パターン6は、液晶パネルの前面ガラス基板に形成されたカラーフィルタ内の遮光パターンであるブラックマトリックスである。また、位置合わせマークMと対応した同じ箇所に、位置合わせマークMと同形状、同寸法の遮光性の位置合わせマークM2が設けられている。
上記液晶パネルは、赤、緑、青のサブ画素で1画素が構成され、サブ画素の周囲にブラックマトリックスが形成される。
【0085】
〔実施例2〜5〕
実施例1に於いて、基材フィルム1の長手方向での幅方向中央部(一方の端部からの距離がL/2となる部分)の位置での分子主軸の配向方向dmと、単位柱状レンズ2の稜線とが成す傾斜角θを、面内に於ける最小値0°及び最大値23°に代えて、実施例2は面内に於ける最小値20°及び最大値32°、実施例3は面内に於ける最小値40°及び最大値46°、実施例4は面内に於ける最小値45°及び最大値48°、実施例5は面内に於ける最小値48°及び最大値50°にした以外は、実施例1と同様にして、立体画像表示用柱状レンズシート10、及び立体画像表示用光学部材20を作製した。なお、単位柱状レンズ2の稜線方向dpは基材フィルム1の長方形形状の長手方向に直交する方向である。
【0086】
〔比較例1〜2〕
実施例1に於いて、基材フィルム1の長手方向での幅方向中央部(一方の端部からの距離がL/2となる部分)の位置での分子主軸の配向方向dmと、単位柱状レンズ2の稜線とが成す傾斜角θを、面内に於ける最小値0°及び最大値23°に代えて、比較例1は面内に於ける最小値70°及び最大値84°、比較例2は面内に於ける最小値83°及び最大値90°にした以外は、実施例1と同様にして、立体画像表示用柱状レンズシート10、及び立体画像表示用光学部材20を作製した。なお、単位柱状レンズ2の稜線方向dpは基材フィルム1の長方形形状の長手方向に直交する方向である。
【0087】
〔性能評価〕
上記の立体画像表示用光学部材20を、80℃の環境下に1000時間放置する信頼性試験を行い、単位柱状レンズ2の配列周期Pの変化の度合いを測定、評価した。
なお、寸法変化は、立体表示方式が2眼式の場合100ppm以下であればクロストークが問題となる様な寸法変化にはならず許容範囲内であるとされている。ただ、2眼式は原理的に観察可能範囲が正面など限定されるために主要な用途は小型表示装置になるが、小型の為に実質的に単位柱状レンズ2の配列周期Pの累積誤差は大型よりも小さく、観察可能範囲も正面など限られた方向である為に、さほど問題とはならない。テレビジョンの様な大型で多人数で見ることを前提とする場合は、10程度の多眼式を採用することが多く、10眼式の場合は、寸法変化は300ppmまで許容できるとされている。
そこで、この許容誤差を前記配列周期Pの500μmの場合に当てはめれば、100ppmは0.05μm、300ppmは0.15μmである。この為、性能評価は、安全を見て、寸法変化が0.13μm以下(260ppm以下)の場合を良好(表1中○印)、0.15μm以下の場合はやや良好(表1中△印)、0.15μm超過を不良(表1中×印)と評価した。
【0088】
【表1】

【0089】
表1のとおり、傾斜角θが面内に於ける最小値0°及び最大値23°の実施例1、及び傾斜角θが面内に於ける最小値20°及び最大値32°の実施例2、傾斜角θが面内に於ける最小値40°及び最大値46°の実施例3、傾斜角θが面内に於ける最小値45°及び最大値48°の実施例4は、いずれも余裕を以って目標とする寸法変化以下であり良好であった。そして、傾斜角θが面内に於ける最小値48°及び最大値50°の実施例5も目標とする寸法変化以下に留まり、やや良好であった。しかし、傾斜角θが面内に於ける最小値70°及び最大値84°の比較例1、傾斜角θが面内に於ける最小値83°及び最大値90°の比較例2は、目標とする寸法変化を超過し、不良であった。
この為、各比較例では、レンチキュラー方式の立体画像表示装置に利用した時に、経時的な、左右視差画像のクロストークや光線制御パターンであるブラックマトリックの視認による輝度低下に繋がる可能性がある。しかし、各実施例では、左右視差画像のクロストークやブラックマトリックの視認による輝度低下に繋がらず、経時的に品質の高い立体画像を表示できることが期待される。
また、位置合わせマークMによって、位置合わせが容易となった。
【符号の説明】
【0090】
1 基材フィルム
1p 一方の面
1q 他方の面
2 単位柱状レンズ
2p 稜線(頂部)
2v 谷部
3 柱状レンズ群
4 粘着剤層
5 ガラス基板
6 光線制御パターン
10 立体画像表示用柱状レンズシート
20 立体画像表示用光学部材
30 液晶表示装置
31 光源
32 液晶パネル
32a 前面ガラス基板
32b 背面ガラス基板
32c 液晶層(画素の層)
A 有効画面領域
Bd 境界
da 一方向(=配列方向)
dm 分子主軸の配向方向
dp 稜線方向
L 配列方向に於ける幅
M 位置合わせマーク
M2 相手の位置合わせマーク
M+M2 位置合わせ時形状
Mg 位置合わせマークの存在位置の目印となるガイドマーク
Ms 位置合わせマークの小片
n 法線
P 配列周期
S 観察者
θ 傾斜角(稜線と分子主軸の成す劣角)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に、単位柱状レンズをその稜線を互いに平行に一方向に配列した柱状レンズ群を有し、前記基材フィルムを構成する樹脂の分子主軸の配向方向と前記単位柱状レンズの稜線方向とが、該基材フィルムの一方の面に平行な平面内において成す角度のうち劣角として定義される傾斜角θが、前記基材フィルムの全域において、0°≦θ≦50°であり、
有効画面領域の外側に於ける柱状レンズ群の表面上に、一枚当たり少なくとも2個の位置合わせマークを有する、立体画像表示用柱状レンズシート。
【請求項2】
上記位置合わせマークが柱状レンズ群と同一材料からなり、該位置合わせマークが該柱状レンズ群に対して凸形状となる部分で該位置合わせマークと該柱状レンズ群との間に界面が存在しない連続層で一体化している、請求項1記載の立体画像表示用柱状レンズシート。
【請求項3】
請求項1又は2記載の立体画像表示用柱状レンズシートを液晶パネルの画面上に設置して、液晶パネルの平面画像を立体画像として表示する、液晶表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−181221(P2012−181221A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41976(P2011−41976)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】