説明

立体画像表示装置

【課題】観察者に生じる輻輳調節矛盾や不連続な運動視差を軽減するとともに高画質の立体像が得られる立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】複数の画像を表示するディスプレイパネル10と、前記ディスプレイパネル10の表示動作を制御するディスプレイ制御器11と、複数のレンズからなり、前記各レンズにより前記ディスプレイ10に表示された各画像を各々集光して立体像を結像させるレンズアレイ12と、前記レンズアレイ12のレンズよりも小さな複数のレンズから成るレンズアレイ13とを備え、前記レンズアレイ13は、前記レンズアレイ12を通過した光のうち立体像の観察者に不連続な運動視差を生じさせる部分の光がぼけるように前記第1レンズアレイから離間されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裸眼にて観察者に立体画像を視認させる立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、フライアイレンズを構成する各レンズの大きさを、観察者が各レンズを通して常に複数の画素が同時に観察できる程度以上に大きくして、レンズ毎に複数の画像光を通過させ、観察者に立体像を観測させる粗インテグラルイメジング(CII:Coarse Integral Imaging)が提案されている。
1908年に発明されたインテグラルフォトグラフィは、フライアイレンズを用いて多視点立体像を提示する技術であり、現在でも裸眼にて立体像が視えるように提示する装置等に広く使用されている。
【0003】
図1は、インテグラルイメジングによる立体像の提示を表した説明図である。図1(a)は一般的なインテグラルイメジングの動作を示し、図(b)は粗インテグラルイメジングの動作を示している。ここで、図1(a)、(b)に示した表示装置のディスプレイパネル1は、いずれもピクセルピッチがpであり同様に構成されたものである。
【0004】
一般的なインテグラルイメジングでは、例えば径の小さいレンズ2から成るレンズアレイが用いられる。このような小さなレンズ2について視野角D2を大きく設定した場合には、ディスプレイパネル1におけるピクセルピッチpの画像が、レンズ面から遠い場所では相当に拡大して、例えば図示した実像D1のように結像する。このことから、レンズ面から比較的近い場所には、表示画像全体を表した実像を明確に結像させることができるが、レンズ面から離れた場所では各ピクセルが拡大されて実像の解像度が著しく低下する。即ち、レンズアレイから離れた場所では、多方向から鮮明に視えるように立体像を提示することが難しくなる。
【0005】
上記の粗インテグラルイメジングは、レンズアレイから離れた場所においても、視野角D4を広くして立体像を提示することを可能にするもので、例えば径の大きなレンズ3から成るレンズアレイを用いて立体像を結像させている。このような大きなレンズ3について視野角を大きく設定した場合には、ピクセルピッチpのサイズの画像がレンズ面から遠く離れた場所においてもそれほど拡大せず、小さな実像D3が結像する。このことから、レンズ面から遠く離れた場所において結像する実像は、著しく拡大していない各ピクセルによって表されていることから、レンズ2を用いた場合に比べて解像度の劣化が抑えられる。
【0006】
ここで、図1(b)に示したように、例えば、レンズ3の径をd、このレンズ3の焦点距離をlとしたとき、視野角は、2tan-1(d/2l)で求められる。また、前述のようにディスプレイパネル1のピクセルピッチをp、レンズ3から像面までの距離をLとしたとき、立体像の解像度はpL/lで求めることができる。これらの式からも、視野角を広くして遠くに立体像を提示する場合には、レンズ径が大きい程、結像時の解像度は良好になることが分かる。
【0007】
また、上記の粗いレンズアレイを用いることによって、当該レンズ面から離れた場所に立体像を提示することが可能になることから、立体画像表示装置のディスプレイパネルを多層化してボリューム表示と多視点表示とを組み合わせた粗インテグラルボリュメトリックイメジング(CIVI:Coarse Integral Volumetric Imaging)も可能になる。例えば、特願2008−15121号公報に開示された装置は、画像を表示するディスプレイパネルと、エッジパターンを表示するディスプレイパネルとを重ねて構成し、例えば一辺が35mmの正方形フレネルレンズを104枚備えたレンズアレイによって上記の各ディスプレイパネルの画像を所定の場所に結像させ、多視点立体像が鮮明に視えるように構成されている。
【0008】
図2は、粗インテグラルボリュメトリックイメジングによる提示動作を示す説明図である。
この図は、重ね合せた4つのディスプレイパネル5と粗レンズアレイ6とを備えて、立体像のボリューム表示を行う過程を示している。
図2に例示した装置は、4つのディスプレイパネル5に表示される画像を、複数の大きいレンズから成る粗レンズアレイ6によってほぼ平行光として進行させ、さらに大口径レンズ7によって集光するように構成されている。大口径レンズ7を通過した各光は、所定の各位置で結像して図示したようにそれぞれ異なる4つの実像8となる。これらの実像8は、観察者9の位置から重なり合って視えることから、部分的に奥行を有する、もしくは突出部分を有する1つの立体像となって視認される。また、観察位置によって、異なる画像が観察されることから、両眼視差および運動視差を有する立体像としても視認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−15121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多くの立体画像表示装置は、裸眼にて立体像が視えるように提示を行うと、この立体像を視ている観察者に眼の疲労原因となる輻輳調節矛盾を生じさせてしまう。
上記の輻輳調節矛盾を軽減するために、ディスプレイパネルを多層化してインテグラルボリュメトリックイメジングを用いた場合、上記の多層化されたディスプレイパネルの開口部分は構成上制限を受けたものになる。この制限された構成は、通過した光にモアレ縞を発生させ易いもので、画質低下をもたらす多くの要素が新たに生じて良好な画質の立体像を得ることが難しくなるという問題点があった。
【0011】
また、視野角を広くとりながらレンズ面から遠い場所に鮮明な立体像を結像させるために、粗いレンズアレイ、即ち径の大きなレンズから成るレンズアレイを用いると、ディスプレイパネルからの画像光が当該レンズアレイを通過するとき、各レンズの継ぎ目などにおいて画像中の滑らかに連続した部分が不自然になり、不連続な運動視差が生じるという問題点があった。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、観察者に生じる輻輳調節矛盾や不連続な運動視差を軽減するとともに高画質の立体像が得られる立体画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る立体画像表示装置は、複数の画像を表示するディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルの表示動作を制御するディスプレイ制御部と、複数のレンズからなり、前記各レンズにより前記ディスプレイに表示された各画像を各々集光して立体像を結像させる第1レンズアレイと、前記第1レンズアレイのレンズよりも小さな複数のレンズから成る第2レンズアレイとを備え、前記第2レンズアレイは、前記第1レンズアレイを通過した光のうち立体像の観察者に不連続な運動視差を生じさせる部分の光がぼけるように前記第1レンズアレイから離間されることを特徴とする。
【0014】
また、前記第2レンズアレイは、該第2レンズアレイのレンズ径をd、該レンズの焦点距離をf、前記第1レンズアレイを通過する光のぼかしたい範囲をDとしたとき、D/dfの絶対値以上の距離を前記第1レンズアレイからあけて配置されることを特徴とする。
【0015】
また、前記第2レンズアレイは、複数のレンズアレイを重ね合わせて成ることを特徴とする。
【0016】
また、前記第2のレンズアレイを移動させる移動機構部をさらに備え、前記移動機構部は、前記立体像の観察者の操作に応じて前記第1レンズアレイと前記第2レンズアレイとの間の距離を調整することを特徴とする。
【0017】
また、前記ディスプレイパネルは、多層化された複数の表示面を有し、前記ディスプレイ制御部は、合成したときに立体像をなす各画像を前記各表示面に各々表示させ、粗インテグラルボリュメトリックイメジングによって立体像を提示することを特徴とする。
【0018】
また、前記第1のレンズアレイによって結像される立体像の収差を抑制する第1大口径レンズを前記第1レンズアレイの出射側に配置したことを特徴とする。
【0019】
また、前記第2レンズアレイの出射側に配置された第2大口径レンズをさらに備え、前記第1レンズアレイは、前記第2レンズアレイの近傍で立体像を結像させ、前記第2大口径レンズは、前記第2レンズアレイの近傍で結像した立体像を拡大することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、滑らかな運動視差と深い奥行を有する立体像を提示することができ、また、観察者に生じる輻輳調節矛盾を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】インテグラルイメジングによる立体像の提示を表した説明図である。
【図2】粗インテグラルボリュームイメジングによる提示動作を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例1による立体画像表示装置の概略構成図である。
【図4】図3の立体画像表示装置の動作を示す説明図である。
【図5】図3の立体画像表示装置の動作を示す説明図である。
【図6】凸レンズから成る細かいレンズアレイを用いた場合の光の屈折を示す説明図である。
【図7】凹レンズから成る細かいレンズアレイを用いた場合の光の屈折を示す説明図である。
【図8】立体画像表示装置によって結像された立体像を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例2による立体画像表示装置を示す説明図である。
【図10】本発明の実施例3による立体画像表示装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の立体画像表示装置は、大きなレンズを備えた粗レンズアレイによって生じる不自然な運動視差を抑制するために、上記の粗レンズアレイとともに細かいレンズアレイを備えている。
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0023】
図3は、本発明の実施例1による立体画像表示装置の概略構成図である。図示した立体画像表示装置は、立体像として提示する画像を表示する例えばLCDなどから成るディスプレイパネル10、ディスプレイパネル10の表示動作を制御するディスプレイ制御器11、複数のレンズを配設した例えばフライアイレンズから成り、ディスプレイパネル10に表示された画像を集光するレンズアレイ12を備えている。
レンズアレイ12は、所定の配列で複数のレンズを備えたものであり、ディスプレイパネル10に表示される画像と対応するように、例えば凸レンズから成るレンズを所定の数量配置している。
【0024】
また、上記の立体画像表示装置は、レンズアレイ12を通過した画像光を後述するように屈折させ、実像20を平滑化する細かいレンズアレイ13を備えている。細かいレンズアレイ13は、レンズアレイ12を構成する各レンズよりも小さなレンズを複数配置した例えばフライアイレンズから成る。細かいレンズアレイ13は実像20と重なっていても実像20より観察者側に配置されていてもよい。また、細かいレンズアレイ13として、目の細かいレンチキュラレンズを用いることも可能である。
【0025】
次に動作について説明する。
図4及び図5は、図3の立体画像表示装置の動作を示す説明図である。これらの図に示した各部には、図3に示したものと同一または相当する部分に同じ符号を付している。
ディスプレイ制御器11は、集光することによって立体像となる画像を、ディスプレイパネル10に表示する。
ディスプレイパネル10に表示された画像の画像光は、レンズアレイ12の各レンズを通過する。
【0026】
レンズアレイ12を通過した各画像光は、観察者15の視界内となる所定の結像位置に集光され、細かいレンズアレイ13が設置された位置もしくはその近傍に実像20が結像し、観察者15には立体像が視える。
このとき、レンズアレイ12の各レンズ同志の継ぎ目部分で屈折した画像光は、結像場所で集光するように進行せず、図5に示したように結像には関係の無い方向へ進行する。
図5(a)は、細かいレンズアレイ13を凸レンズで構成した場合を示し、図5(b)は、細かいレンズアレイ13を凹レンズで構成した場合を示している。
【0027】
大きな径のレンズから成る粗レンズアレイを用いた場合、図5のレンズアレイ12の継ぎ目部分30では、ディスプレイパネル10から出射された光が集光位置31に向かって屈折しない。そのため、集光位置31で結像した実像は滑らかに連続する部分が不自然になることがあり、観察者15に不連続な運動視差が生じることがある。
そこで、レンズアレイ12の出射側に細かいレンズアレイ13を配置し、レンズアレイ12の継ぎ目部分30によって引き起こされる不連続な運動視差や、ディスプレイパネル10を多層化した場合に生じるモアレ縞などを抑制する。
【0028】
次に、レンズアレイ12の出射側に細かいレンズアレイ13を配置した場合について説明する。
図6は、凸レンズから成る細かいレンズアレイを用いた場合の光の屈折を示す説明図である。図6に示す各凸レンズは、図中凸レンズの左側から実線で示した光が入射し、当該凸レンズの右側に二点鎖線で示した光を出射している。なお、二点鎖線で示した光は凸レンズによって屈折されている。
ここで、図6に示した凸レンズの径をd、焦点距離をfとする。
【0029】
図6(a)は、図中、凸レンズの左側において、当該凸レンズから焦点距離fの位置に提示像が結像し、この光が当該凸レンズへ入射していることを示している。
ここで、入射する像から凸レンズまでの距離をL、凸レンズによって屈折された光が集光する位置(凸レンズからの距離)をaとしたとき、
1/L+1/a=1/f ・・・(1)
と表される。
図6(a)のように凸レンズへ入射する光(提示像を表す光)が焦点距離fにおいて結像している場合は、(1)式のLはfであることからaが無限大になることが分かり、凸レンズを通過した光は集光することなく進行し、提示像はレンズ径dと等しいぼけ量を有するものになる。
【0030】
図6(b)は、図中凸レンズの右側において、当該凸レンズから距離2bの位置に提示像が結像している場合を示している。
ここで、凸レンズへ入射する光が結像する位置(凸レンズからの距離)をl、凸レンズによって屈折した光が集光する位置(凸レンズからの距離)をbとしたとき、
1/b−1/l=1/f ・・・(2)
の関係を有する。
図6(b)のように、距離2bにおいて結像する光が凸レンズへ入射した場合、(2)式のlは2bであり、b=f/2であることが分かる。凸レンズによって屈折した光は図6(b)に二点鎖線で示したように距離bの位置において集光した後で拡がり、この光が表す提示像は距離2b即ち焦点距離fの位置においてレンズ径dに等しいぼけ量を有するものになる。
【0031】
上述の図6(a)、(b)を用いた説明から、凸レンズの前後±fの範囲内に結像した提示像は、当該凸レンズを挿入することによって生じるぼけ量が、レンズ径以内に抑えられたものであることが分かる。
【0032】
図6(c)は、図5(a)に示したレンズアレイ12のレンズを通過した光が細かいレンズアレイ13の凸レンズによって屈折することにより、上記の光が表す提示像にぼけ量Dのぼかしが生じる状態を示している。このぼけ量Dは、
D=d(a+L)/a ・・・(3)
と表される。
ここで、1/L+1/a=1/fより
a=fL(L−f) ・・・(4)
となることから、上記の(3)式は、
D=dL/f ・・・(5)
と表すことができる。即ち、レンズアレイ12から、細かいレンズアレイ13の凸レンズの焦点距離fのn倍だけ当該細かいレンズアレイ13を離すことにより、上記の凸レンズの径dのn倍の幅(範囲)をぼかすことができる。
【0033】
即ち、細かいレンズアレイ13を離間する距離によって、提示像に生じさせるぼけ量を調整・制御することが可能である。
また、図示したぼけ量Dの範囲中にレンズアレイ12のレンズの継ぎ目を通過した光(ぼかしたい場所)が含まれるように、当該レンズアレイ12を通過した光を細かいレンズアレイ13に入射させることによって不自然な運動視差やモアレ縞の発生を抑制することができる。
【0034】
図7は、凹レンズから成る細かいレンズアレイを用いた場合の光の屈折を示す説明図である。図7に示す各凹レンズは、図中凹レンズの左側から実線で示した光が入射し、当該凹レンズの右側に二点鎖線で示した光を出射している。なお、二点鎖線で示した光は凹レンズによって屈折されている。
ここで、図7に示した凹レンズの径をd、焦点距離を−fとする。なお、凹レンズの焦点距離fは負の値を有するものであり、−fが正の値(距離)を表している。
【0035】
図7(a)は、図中、凹レンズの右側において、当該凹レンズから焦点距離―fの位置に提示像が結像する場合を示している。
ここで、凹レンズから結像位置までの距離をl、凹レンズによって屈折された光が集光する位置(凹レンズからの距離)をaとしたとき、
1/a+1/l=−1/f ・・・(6)
と表される。
図7(a)のように凹レンズへ入射した光(提示像を表す光)が焦点距離−fにおいて結像する場合は、(6)式からaが無限大になることが分かり、凹レンズによって屈折した光は集光することなく進行し、提示像はレンズ径dと等しいぼけ量を有するものになる。
【0036】
図7(b)は、図中、凹レンズの左側において、当該凹レンズから距離2bの位置に提示像が結像し、この光が当該凹レンズへ入射していることを示している。
ここで、入射する像から凹レンズまでの距離をL、凹レンズによって屈折された光が集光する位置(凹レンズからの距離)をbとしたとき、
1/b−1/L=−1/f ・・・(7)
と表される。
図7(b)のように、距離2bの位置において結像している光が凹レンズへ入射した場合、(7)式のLは2bであり、b=−f/2であることが分かる。凹レンズによって屈折した光は図7(b)に二点鎖線で示したように拡がり、この光が表す提示像は、距離2b即ち焦点距離fの位置においてレンズ径dに等しくなるぼけ量を有している。
【0037】
上述の図7(a)、(b)を用いた説明から、凹レンズの前後±fの範囲内に結像した提示像は、当該凹レンズを挿入することによって生じるぼけ量がレンズ径以内に抑えられたものであることが分かる。
【0038】
図7(c)は、図5(b)に示したレンズアレイ12の要素レンズを通過した光が細かいレンズアレイ13の凹レンズによって屈折し、上記の光が表す提示像にぼけ量Dのぼかしが生じる状態を示している。このぼけ量Dは、
D=d(L−b)/b ・・・(8)
と表される。
ここで、1/b−1/L=−1/fより
b=fL(f−L) ・・・(9)
となることから、上記の(8)式は、
D=−dL/f ・・・(10)
と表すことができる。即ち、レンズアレイ12から、細かいレンズアレイ13の凹レンズの焦点距離−fの絶対値のn倍だけ当該細かいレンズアレイ13を離すことにより、上記の凹レンズの径dのn倍の幅(範囲)をぼかすことができる。
即ち、前述の凸レンズから成る細かいレンズアレイ13と同様に、凹レンズから成る細かいレンズアレイ13を離間する距離によって、提示像に生じさせるぼけ量を調整・制御することが可能である。
【0039】
このように、細かいレンズアレイ13は、凸レンズで構成したものでも、凹レンズで構成したものであっても提示像を適当にぼかすことができ、不自然な運動視差を抑制することができる。
【0040】
CIVIにより、奥行き幅Wを有する多層像面を提示したいときには、焦点距離がf=W/2の凸レンズから構成されるフライアイレンズ、または焦点距離がf=−W/2の凹レンズから構成されるフライアイレンズ即ち細かいレンズアレイ13を上記の多層像面の奥行き側(観察者15側)に配置し、特に多層像面の中央部分に細かいレンズアレイ13が掛かるように配置する。
また、レンズアレイ12を構成する各レンズの継ぎ目部分等を通過した光についてぼかしたい幅(範囲)をDとしたとき、レンズ径がdの各レンズによって構成された細かいレンズアレイ13から、D/dfの絶対値以上の距離で離れている位置に上記のレンズ継ぎ目部分等(レンズアレイ12)の面を配置する。
【0041】
上記の(5)式、(10)式から分かるように、細かいレンズアレイ13の各レンズは、レンズ径dが小さい程、ぼかしが弱くなる。一方、このレンズ径dが大きい程、提示した立体像の解像度は低下する。このことから、観察者15には適当なぼけ量を有する立体像が視えるようにレンズ径dを設定し、また焦点距離fを設定する。
また、細かいレンズアレイ13の配置は実像の結像位置に近い程良く、結像位置から大きく離れて配置すると、実像の結像位置から大きく外れる光が多くなって立体像が全体的にぼけてしまう。
そこで、観察者15には適度のぼけ量を有する立体像が視えるように、細かいレンズアレイ13の位置を移動する移動機構部を立体画像表示装置に備えてもよい。この場合、観察者15等の操作に応じて、レンズアレイ12等と観察者15とを結ぶ直線上を移動するように上記の移動機構部を構成する。
【0042】
ここまで説明した立体画像表示装置は、一枚の細かいレンズアレイ13を備えたものであるが、細かいレンズアレイを複数重ね合わせて多層化し、例えば一枚のレンズでは難しい焦点距離が得られるように構成してもよい。なお、この場合においても、各細かいレンズアレイを移動させる移動機構部を備え、所望の結像位置において適当なぼけ量が生じるように各レンズアレイの位置を調整し、鮮明な立体像が視えるようにしてもよい。
【0043】
また、粗インテグラルボリュメトリックイメジング(CIVI)による立体像の提示を行う立体画像表示装置に、前述のレンズアレイ12ならびに細かいレンズアレイ13を備えることも可能である。
このとき用いられるディスプレイパネル10は、複数の表示面を多層化して備えており、ディスプレイ制御器11の制御によって、結像時に重なることにより立体像(実像)になる複数の画像を上記の各表示面にそれぞれ表示させるように構成され、例えば4つの表示面を備え、ディスプレイ制御器11は、各表示面にそれぞれ異なる画像を表示させる。
【0044】
また、CIVIで使用されるレンズアレイ12は、当該レンズアレイ12を構成する各レンズが、ディスプレイパネル10に表示される画素のうち、常に複数の画素が観察者15に観察される程度以上に十分大きな径を持つ。
この装置では、細かいレンズアレイ13の位置もしくはその近傍において、複数の実像が重なるように結像し、観察者15には一つの立体像として視えるように提示される。
【0045】
図8は、立体画像表示装置によって結像された立体像を示す説明図である。図示した各立体像は、同様な仕様の立体画像表示装置によりCIVIを用いて結像させたもので、図8(a)は、細かいレンズアレイ13を除いた装置によって提示された立体像(観察像)を示している。図8(b)は、細かいレンズアレイ13を備えた本発明の装置によって提示された立体像(観察像)を示している。
図8(a)に示す観察像にはモアレ縞や前述のレンズ継ぎ目部分による影響などが含まれているが、図8(b)に示す観察像にはこれらを確認することができず、滑らかな立体像が形成されている。
【0046】
図8(c)〜(e)は、上記の細かいレンズアレイ13を備えた装置によって提示された立体像を多方向から視たときの観察像を示している。図8(c)は左視点において視える観察像であり、図8(d)は上視点において視える観察像であり、図8(e)は右視点において視える観察像である。細かいレンズアレイ13によって、適当なぼけ量を与えることにより、多方向から視た場合でも一様な鮮明さを有する立体像を提示することができ、また、運動視差が滑らかになり、観察者に不快感を生じさせることを抑えることができる。
【実施例2】
【0047】
図9は、本発明の実施例2による立体画像表示装置を示す説明図である。この図は、実施例1の説明で用いた図4等に示したものと同一または相当する部分に同じ符号を使用している。
実施例2による立体画像表示装置は、大口径レンズ40を備えた以外は、図3に示したものと概ね同様に構成されている。ここでは、実施例1で説明した立体画像表示装置と同様に構成された部分の重複説明を省略する。
大口径レンズ40は、例えばフレネルレンズから成り、レンズアレイ12と細かいレンズアレイ13との間において、レンズアレイ12の近傍に配置されている。大口径レンズ40は、細かいレンズアレイ13の位置で結像する実像20に生じる収差を抑えるように、レンズアレイ12から出射される光を整える。
【0048】
細かいレンズアレイ13において結像している実像20は、前述のように大口径レンズ40により収差が抑制されており、また、細かいレンズアレイ13によって、レンズアレイ12のレンズ継ぎ目等において生じる不自然な部分がぼけていることから、観察者に生じる不連続な運動視差が軽減され、またモアレ縞などが抑えられた鮮明な立体像が視える。
【0049】
上述のように大口径レンズ40を備えた場合でも、ディスプレイパネル10を複数の表示面を備えて構成し、CIVIによる立体像の提示を行うことも可能である。また、実施例2による立体画像表示装置に備える細かいレンズアレイ13は、フライアイレンズであっても目の細かいレンチキュラレンズであっても同様な作用効果が得られる。
【実施例3】
【0050】
図10は、本発明の実施例3による立体画像表示装置を示す説明図である。この図は、実施例1の説明で用いた図4、図9等に示したものと同一または相当する部分に同じ符号を使用している。
実施例3による立体画像表示装置は、図3に示したものと概ね同様に構成されている。ここでは、実施例1で説明した立体画像表示装置と同様に構成された部分の重複説明を省略する。
【0051】
実施例3の立体画像表示装置に用いられるディスプレイパネル10は、複数の表示面を重ねて備え、図10では図示を省略したディスプレイ制御器11の制御により上記の各表示面に異なる画像を表示するように構成されている。
また、この立体画像表示装置は、実施例2の立体画像表示装置に、さらに例えばフレネルレンズからなる大口径レンズ50、51を備えたものである。大口径レンズ50、51は、細かいレンズアレイ13の出射側に配置されている。
なお、実施例1の立体画像表示装置のように大口径レンズ40を有していないものに、大口径レンズ50、51を備えてもよい。
【0052】
ディスプレイパネル10の各表示面に表示された各画像光は、レンズアレイ12に入射し、当該レンズアレイ12は、この光を細かいレンズアレイ13の位置で多層の実像20として結像するように集光する。さらに、大口径レンズ40は、細かいレンズアレイ13から出射された光を入射し、結像の際に生じる収差を抑制するように屈折させる。
細かいレンズアレイ13の位置において結像した多層の実像20は、大口径レンズ50、51によって拡大される。この大口径レンズ50、51は、入射した光(多層の実像20)を屈折させ、観察者の視界内の空中において多層の実像21が結像するように出射する。
【0053】
実施例3の立体画像表示装置は、上記のように複数の表示面を有するディスプレイパネル10を備え、各表示面に表示された画像をレンズアレイ12で集光し、細かいレンズアレイ13の位置において多層の実像20を結像させている。換言すると、奥行きが凝縮された多層の実像面に細かいレンズアレイ13が配置されており、結像した多層の実像20のぼける部分を小さく抑えながら、観察者に生じる輻輳調節矛盾や不連続な運動視差を軽減させている。
また、この多層の実像20を、大口径レンズ50、51を用いて拡大し、例えば空中に多層の実像21を結像させ、観察者には奥行の深い立体像が空中に浮き上がって視えるように提示することが可能であり、立体画像表示装置から離れた空中に浮き上がった立体像を提示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明による立体画像表示装置は、アミューズメントなどのアトラクションに用いられる表示装置やゲーム機器など、提示した立体画像を裸眼で視覚させる機器などに適している。
【符号の説明】
【0055】
1、5、10ディスプレイパネル
2、3要素レンズ
6粗レンズアレイ
7、40、50、51大口径レンズ
8、20、21実像
9、15観察者
11ディスプレイ制御器
12レンズアレイ
13細かいレンズアレイ
30継ぎ目部分
31集光位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像を表示するディスプレイパネルと、
前記ディスプレイパネルの表示動作を制御するディスプレイ制御部と、
複数のレンズからなり、前記各レンズにより前記ディスプレイに表示された各画像を各々集光して立体像を結像させる第1レンズアレイと、
前記第1レンズアレイのレンズよりも小さな複数のレンズから成る第2レンズアレイと、
を備え、
前記第2レンズアレイは、
前記第1レンズアレイを通過した光のうち立体像の観察者に不連続な運動視差を生じさせる部分の光がぼけるように前記第1レンズアレイから離間される
ことを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記第2レンズアレイは、
該第2レンズアレイのレンズ径をd、該レンズの焦点距離をf、前記第1レンズアレイを通過する光のぼかしたい範囲をDとしたとき、D/dfの絶対値以上の距離を前記第1レンズアレイからあけて配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記第2レンズアレイは、
複数のレンズアレイを重ね合わせて成る
ことを特徴とする請求項1または2に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記第2のレンズアレイを移動させる移動機構部をさらに備え、
前記移動機構部は、
前記立体像の観察者の操作に応じて前記第1レンズアレイと前記第2レンズアレイとの間の距離を調整する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記ディスプレイパネルは、多層化された複数の表示面を有し、
前記ディスプレイ制御部は、
合成したときに立体像をなす各画像を前記各表示面に各々表示させ、
粗インテグラルボリュメトリックイメジングによって立体像を提示することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記第1のレンズアレイによって結像される立体像の収差を抑制する第1大口径レンズを前記第1レンズアレイの出射側に配置した
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項7】
前記第2レンズアレイの出射側に配置された第2大口径レンズをさらに備え、
前記第1レンズアレイは、前記第2レンズアレイの近傍で立体像を結像させ、
前記第2大口径レンズは、前記第2レンズアレイの近傍で結像した立体像を拡大することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−80064(P2013−80064A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219527(P2011−219527)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】