説明

立体視画像生成装置、立体視画像生成方法およびプログラム

【課題】投射変換を用いた画像処理によって生理的立体視要素の影響を取り除く。
【解決手段】ホロプター面画像投影部311は、信号線129を介して供給された非立体画像を、ホロプター円を含む円筒面(ホロプター面)に投影するものである。ホロプター円情報として、例えば半径を用いてホロプター円の大きさが特定される。また、両眼間距離により、両眼との関係が特定される。表示面右目投影部316は、ホロプター面に投影された画像を右目用の表示面に投影するものである。表示面左目投影部317は、ホロプター面に投影された画像を左目用の表示面に投影するものである。これにより、両眼に対して同一の網膜像を供給して、生理的立体視要素の影響を取り除き、立体視的な深みを与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体視画像生成装置に関し、特に非立体画像から立体視画像を生成する立体視画像生成装置、および、その処理方法ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置の大型化または広視野角化が進み、従来よりも臨場感の高い画像表示が可能になりつつある。しかし、従来のディスプレイ装置では、ディスプレイ装置の表示面上に画像があるように強制的に知覚されてしまい、影や構図などの感覚的立体視要素による立体感発生が阻害されるおそれがある。これは、両眼からディスプレイ装置の表示面を知覚した際の輻輳角の変化や、両眼視差による歪の発生といった、生理的立体視要素から生じる影響によるものと考えられる。
【0003】
このような生理的立体視要素による影響を取り除くための光学的装置としてシノプター(synopter)と呼ばれる立体視鏡が知られている。シノプターは、ハーフミラーを組み合わせることにより、同一位置において受けた光を両眼に分けて供給するものである。このシノプターによれば、両眼の網膜像が同一になり、非立体画像に対して立体視的な深みを与え得ることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jan J Koenderink他著,「On so-called paradoxical monocular stereoscopy」,Perception,Pion Publication(英国),1994年,第23巻,p.583−594
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、シノプターなどの光学的装置によれば、生理的立体視要素による影響を取り除いて両眼の網膜像を同一にすることにより、非立体画像から立体視的な深みを得ることができる。このような光学的装置によれば簡易な機構により立体視を実現することができるが、その反面、ディスプレイ装置側には自由度がなく、それ以上の視覚効果を得ることは難しくなる。
【0006】
そこで、本発明では、画像処理によって生理的立体視要素の影響を取り除くことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その第1の側面は、両眼に接する仮想円を含む円筒面に対して2次元入力画像を投影して円筒画像を生成する円筒面投影部と、上記両眼のそれぞれを基準として上記円筒画像を表示面に対して投影して上記両眼のそれぞれに射影される表示画像を生成する表示面投影部とを具備する立体視画像生成装置、その立体視画像生成方法またはプログラムである。これにより、両眼のそれぞれに同一の網膜像を供給して、生理的立体視要素から生じる影響を取り除くという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記仮想円の半径は、想定される観察距離または表示サイズに応じて設定されてもよい。これにより、観察距離または表示サイズに適した画像を表示させるという作用をもたらす。この場合において、この第1の側面において、上記表示面と観察位置との距離を測定する観察距離測定部をさらに具備し、上記仮想円の半径は、上記観察距離測定部により測定された観察距離に応じて設定されてもよい。これにより、測定された観察距離に適した画像を表示させるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記仮想円の半径は、上記表示画像の歪度が所定の閾値より小さくなるように設定されてもよい。これにより、歪が許容できる範囲内において画像を表示させるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記2次元入力画像から奥行き情報を生成する奥行き情報生成部と、上記奥行き情報を上記円筒画像に合成する奥行き情報合成部とをさらに具備し、上記表示面投影部は、上記奥行き情報が合成された円筒画像を表示面に対して投影して上記表示画像を生成してもよい。これにより、さらに立体感を増強した画像を表示させるという作用をもたらす。
【0011】
また、本発明の第2の側面は、両眼のそれぞれの視線に直交する2次元平面に対して2次元入力画像を投影して両眼のそれぞれに対応する照射画像を生成する照射面投影部と、上記両眼のそれぞれを基準として対応する上記照射画像を表示面に対して投影して上記両眼のそれぞれに射影される表示画像を生成する表示面投影部とを具備する立体視画像生成装置、その立体視画像生成方法またはプログラムである。これにより、両眼のそれぞれに同一の網膜像を供給して、生理的立体視要素から生じる影響を取り除くという作用をもたらす。
【0012】
また、この第2の側面において、上記照射画像の位置は、想定される観察距離に応じて設定されてもよい。これにより、観察距離に適した画像を表示させるという作用をもたらす。この場合において、上記表示面と観察位置との距離を測定する観察距離測定部をさらに具備し、上記照射画像の位置は、上記観察距離測定部により測定された観察距離に応じて設定されてもよい。これにより、測定された観察距離に適した画像を表示させるという作用をもたらす。
【0013】
また、本発明の第3の側面は、表示面から右目および左目のそれぞれに投影される映像が同一となるように2次元入力画像を変換してそれぞれ右目画像および左目画像を生成する立体視画像生成装置、その立体視画像生成方法またはプログラムである。これにより、両眼のそれぞれに同一の網膜像を供給して、生理的立体視要素から生じる影響を取り除くという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画像処理によって生理的立体視要素の影響を取り除くことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における立体視画像生成装置の一構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例のホロプター面への投影の一態様を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例のホロプター面への投影の具体例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例の表示面への投影の一態様を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例の表示面への投影の具体例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例による処理手順例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第2の実施例を示す図である。
【図9】ホロプター円の大きさと輻輳点の位置との関係を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第2の実施例のホロプター面への投影の一態様を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第2の実施例のホロプター面への投影の具体例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第3の実施例を示す図である。
【図13】ホロプター円と画像の歪度の関係例を示す図である。
【図14】角度θと画像の歪度Qの関係例を示す図である。
【図15】ホロプター円と円周角の関係例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第4の実施例を示す図である。
【図17】ホロプター円と表示面の関係例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例のあおり面への投影の一態様を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例のあおり面への投影の具体例を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例の表示面への投影の具体例を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例による処理手順例を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例を示す図である。
【図24】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例による処理の概要を示す図である。
【図25】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例によるホロプター面の深度マップの一例を示す図である。
【図26】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例による奥行き情報の推定例を示す図である。
【図27】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例の深度マップ合成部363の一構成例を示す図である。
【図28】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例による立体画像の生成例を示す図である。
【図29】本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例による立体画像の他の生成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態における立体視画像生成装置の一構成例を示す図である。この立体視画像生成装置は、画像信号入力部110と、信号処理部120と、三次元変換部130と、パラメータ設定部140と、観察距離測定部150と、後処理部160と、フォーマット変換部170と、ソース選択部180と、表示部190とを備えている。
【0018】
画像信号入力部110は、非立体画像の画像信号入力を受け付けるものである。入力される非立体画像は、静止画に限定されず、動画であってもよい。非立体画像のソース機器としては、テレビ放送受信機、映像再生装置(プレーヤ)または撮像装置(カムコーダ:CAMera and reCORDER)などが想定される。
【0019】
信号処理部120は、入力された非立体画像に対して所定の信号処理を施すものである。この信号処理として、例えば、ホワイトバランス調節、ノイズ軽減処理、レベル補正処理およびガンマ補正処理等が想定される。
【0020】
三次元変換部130は、本発明の特徴的部分であり、二次元の非立体画像を三次元に変換するものである。この三次元変換部130における三次元変換処理により、非立体画像に基づく三次元画像が生成される。この三次元画像として、例えば、左目用の画像と右目用の画像とが得られる。
【0021】
パラメータ設定部140は、三次元変換部130における三次元変換処理に必要なパラメータを設定するものである。そのようなパラメータとしては、例えば、後述するホロプター円を特定するための半径などが想定される。
【0022】
観察距離測定部150は、表示部190と視聴者の観察位置との間の距離を測定するものである。この観察距離測定部150により測定された観察距離に基づいて、三次元変換部130における三次元変換処理を行うことができる。ただし、観察距離を実測せずに、予め想定された観察距離を用いるようにしてもよい。
【0023】
後処理部160は、三次元変換部130における三次元変換処理により得られた三次元画像に対して、エリアシング(aliasing)を防ぐための後処理を行うものである。例えば、表示部190において1ライン毎に左目用の画像と右目用の画像とを交互に表示することを想定すると、エリアシングによるジャギー(階段状のギザギザ)が表示されるおそれがある。これを防ぐために、後処理部160は、垂直方向にフィルタをかけて画像の変化を滑らかにする。
【0024】
フォーマット変換部170は、三次元画像を表示部190の対応するフォーマットに変換するものである。このフォーマット変換部170は、表示部190の対応するフォーマットに合わせて、例えば、左目用の画像と右目用の画像とが1ライン毎に交互に配置されるように変換することができる。
【0025】
ソース選択部180は、表示すべき画像をソースとして選択するものである。すなわち、このソース選択部180は、非立体画像をそのまま表示する場合には信号処理部120の出力を選択し、立体視のための三次元画像を表示する場合にはフォーマット変換部170の出力を選択する。
【0026】
表示部190は、画像を表示するディスプレイである。ここでは、表示部190として、立体視のための三次元画像を表示する機能を有することを前提とするが、その機能の実現手段は特に限定されない。例えば、特開2002−365593号公報に記載されているように、1ライン置きに分割波長板を配設し、表示画面の偶数ラインと奇数ラインからの直線偏光を互いに直交するものに変換して、両眼に異なる画像の光を入射させることが考えられる。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例を示す図である。この三次元変換部130の第1の実施例は、ホロプター面画像投影部311と、表示面右目投影部316と、表示面左目投影部317とを備える。
【0028】
ホロプター面画像投影部311は、信号処理部120から信号線129を介して供給された非立体画像を、ホロプター円(horopter)を含む円筒面に投影するものである。ホロプター円とは両眼に接する円周であり、このホロプター円上の点に対する両眼網膜像は同一になることが知られている。この円筒面をホロプター面と呼称し、ホロプター面に投影された画像をホロプター画像と呼称する。また、両眼の視線の交点を輻輳点と呼称し、その成す角を輻輳角または円周角と呼称する。ホロプター円上では、輻輳角は等しくなる。この第1の実施例では、ホロプター円情報によりホロプター円の大きさを特定する。また、両眼間距離「2a」により両眼との相対的位置関係を特定する。これらホロプター円情報および両眼間距離「2a」は、信号線149を介してパラメータ設定部140から供給される。なお、以下では、ホロプター円情報として半径「r」を用いてホロプター円の大きさを特定しているが、両眼の中心からホロプター円の頂点までの距離や円周角などを用いてホロプター円の大きさを特定してもよい。なお、ホロプター面画像投影部311は、特許請求の範囲に記載の円筒面投影部の一例である。
【0029】
表示面右目投影部316は、ホロプター画像を右目用の表示面に投影するものである。表示面左目投影部317は、ホロプター画像を左目用の表示面に投影するものである。表示面右目投影部316および表示面左目投影部317は、両眼間距離「2a」、ホロプター円の半径「r」、想定される観察距離「d」に基づいて、右目用および左目用の表示面への投影を行う。右目用の表示面に投影された画像を右目画像と呼称し、左目用の表示面に投影された画像を左目画像と呼称する。これら右目画像および左目画像は、信号線139を介して後処理部160に供給される。なお、表示面右目投影部316および表示面左目投影部317は、特許請求の範囲に記載の表示面投影部の一例である。
【0030】
図3は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例のホロプター面への投影の一態様を示す図である。ホロプター円520は、右目511、左目512、および、輻輳点531(頂点)または532を通る円である。ここで、右目511および左目512は、両眼の中央から「a」ずつ離れていることを想定している。すなわち両眼間距離は「2a」である。また、ホロプター円520の半径は「r」である。
【0031】
このホロプター円520上の点に対する右目511および左目512の両眼網膜像は同一になる。これは、ホロプター円520上の点を輻輳点とした場合の輻輳角が常に等しいからである。例えば、輻輳点531に対する輻輳角533と、輻輳点532に対する輻輳角534とは等しくなる。このようなホロプター円520を含む円筒面(ホロプター面)に非立体画像をホロプター画像530として投影することにより、右目511および左目512には両眼視差のない同一の網膜像を形成することができる。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例のホロプター面への投影の具体例を示す図である。
【0033】
図4(a)は、信号処理部120から信号線129を介して供給される入力画像I(p,q)の座標系を示している。入力画像は非立体画像であるため、二次元の座標系を用いている。座標系の原点は入力画像の中央点に設定されている。また、入力画像サイズ(幅)は「2L」を想定している。
【0034】
図4(b)は、ホロプター画像530が投影されるホロプター面の座標系を示している。ホロプター面は三次元になるため、ここでは(x,y,z)の三次元の座標系を用いている。座標系の原点はホロプター円520の中心に設定されている。図4(b)は、ホロプター面に対する垂直方向、すなわち、y軸の垂直方向から見た図になっている。
【0035】
このとき、ホロプター画像H(x,y,z)は、半径rのホロプター円に入力画像I(p,q)を投影したものであり、次式により表される。
H(x,y,z)=I((π/2−ψ)×r,y)
ただし、
2+x2=r2
ψ=tan-1(z/x)
である。
【0036】
なお、ここでは、入力画像サイズ(幅)「2L」は、表示面サイズ(幅)と等倍であることを想定したが、前段に入力画像をスケーリングする機能を設けることにより、画像の物理サイズを変更するようにしてもよい。
【0037】
図5は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例の表示面への投影の一態様を示す図である。
【0038】
ここでは、ホロプター円520上の輻輳点532を表示面540に投影することを考える。輻輳点532から右目511に形成される像は、表示面540上では表示位置541に表示される。一方、輻輳点532から左目512に形成される像は、表示面540上では表示位置542に表示される。すなわち、同一のホロプター画像530であっても、表示面540に表示されるべき画像は、右目511と左目512とで基本的に異なる画像になる。
【0039】
図6は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例の表示面への投影の具体例を示す図である。
【0040】
図6(a)は、ホロプター面および表示面の座標系を示している。ここでは(x,y,z)の三次元の座標系を用いているが、図4(a)の場合と異なり、xy平面上の原点の位置は右目511と左目512の中間点に設定されている。ここで、この座標系における原点とホロプター円520の中心との距離cは、
c=(r2−a21/2
となる。
【0041】
図6(b)は、表示面に投影された表示画像J(s,t)の座標系を示している。表示画像は、右目511および左目512のそれぞれに関して得られる。それぞれは二次元画像であるため、二次元の座標系を用いている。座標系の原点は表示画像の中央点に設定されている。
【0042】
このとき、右目511からホロプター画像上の位置H(x0,y0,z0)を通って投影される表示面540上の位置D(xR,yR,zR)は、次式により与えられる。
D(xR,yR,zR)=J(xR,yR)=H(x0,y0,z0
【0043】
また、視聴者の観察位置との間の距離が観察距離dであることから、zR=dであり、以下の式が成り立つ。
(x0−a)/(xR−a)=y0/yR=z0/d
02+(z0−c)2=r2
0>0
【0044】
これにより、表示面540上の位置D(xR,yR,zR)に投影すべき画像を、位置H(x0,y0,z0)から求めることができる。すなわち、{xR,yR,zR}から{x0,y0,z0}を求めることになる。
【0045】
なお、ここでは、右目511から投影される位置D(xR,yR,zR)について説明したが、左目512からホロプター画像上の位置H(x0,y0,z0)を通って投影される表示面540上の位置D(xL,yL,zL)についても同様に求めることができる。
【0046】
また、ここでは、半径「r」によってホロプター円の大きさを特定する例を挙げて説明したが、上述のように、両眼の中心からホロプター円の頂点までの距離や円周角などを用いてホロプター円の大きさを特定してもよい。両眼の中心から輻輳点までの距離fは、次式により与えられる。
f=r+c
=r+(r2−a21/2
rを左辺に移動して両辺を二乗すると、
2−2rf+r2=r2−a2
r=(f2+a2)/2f
となるため、両眼の中心から輻輳点までの距離「f」と両眼間距離「2a」とから半径「r」を求めることができる。円周角と半径との関係については、次の実施例(図15)において説明する。
【0047】
図7は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例による処理手順例を示す図である。
【0048】
まず、信号処理部120から信号線129を介して入力画像I(p,q)が入力されると(ステップS911)、入力画像I(p,q)はホロプター面にホロプター画像H(x,y,z)として投射される(ステップS912)。なお、ステップS912は、特許請求の範囲に記載の円筒面投影手順の一例である。
【0049】
そして、右目および左目のそれぞれについて以下のようにして表示画像が生成される(ループL901)。まず、右目511からホロプター画像上の位置H(x0,y0,z0)を通って投影される表示面540上に対して透視変換が行われ、三次元上の位置D(xR,yR,zR)が得られる(ステップS913)。そして、この三次元上の位置から、表示面の二次元の表示画像J(xR,yR)が得られる(ステップS914)。同様に、左目512からホロプター画像上の位置H(x0,y0,z0)を通って投影される表示面540上に対して透視変換が行われ、三次元上の位置D(xL,yL,zL)が得られる(ステップS913)。そして、この三次元上の位置から、表示面の二次元の表示画像J(xL,yL)が得られる(ステップS914)。なお、ステップS913およびS914は、特許請求の範囲に記載の表示面投影手順の一例である。
【0050】
このように、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第1の実施例では、ホロプター円情報により特定されるホロプター円520に対して非立体画像をホロプター画像として投影する。そして、実測もしくは推定された観察距離における表示面にホロプター画像を投影することにより、右目511および左目512に対する立体画像を生成することができる。
【0051】
図8は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第2の実施例を示す図である。この三次元変換部130の第2の実施例は、ホロプター面画像投影部321と、輻輳点設定部322と、表示面右目投影部326と、表示面左目投影部327とを備える。
【0052】
ホロプター面画像投影部321は、ホロプター面画像投影部311と同様に、信号処理部120から信号線129を介して供給された非立体画像を、ホロプター円を含む円筒面に投影するものである。この第2の実施例では、輻輳点設定部322により設定された輻輳点に基づく半径「r」を用いてホロプター円を特定する。なお、ホロプター面画像投影部321は、特許請求の範囲に記載の円筒面投影部の一例である。
【0053】
輻輳点設定部322は、輻輳点を設定してこの輻輳点に基づく半径「r」を供給するものである。この輻輳点設定部322は、両眼間距離「2a」、観察距離「d」、表示面サイズ「2M」および入力画像サイズ「2L」によって輻輳点を設定する。
【0054】
表示面右目投影部326および表示面左目投影部327は、第1の実施例と同様に、ホロプター画像を右目用または左目用の表示面に投影するものである。なお、表示面右目投影部326および表示面左目投影部327は、特許請求の範囲に記載の表示面投影部の一例である。
【0055】
図9は、ホロプター円の大きさと輻輳点の位置との関係を示す図である。ホロプター円は、両眼間距離および半径によって一意に特定される。したがって、半径を固定しない場合には、同図のように、両眼を通るホロプター円は何通りも想定することができる。一般に、輻輳点が近いほど輻輳角は広くなり、半径は小さくなる。
【0056】
ここで、入力画像サイズを固定した上でこれをホロプター円に投影すると、同図のように、表示面におけるサイズ(幅)がホロプター円毎に異なることがわかる。すなわち、ホロプター円521のように輻輳点が近いほど表示面のサイズ(幅)は広くなり、ホロプター円522のように輻輳点が遠いほど表示面のサイズ(幅)は小さくなる。そこで、入力画像を表示面一杯に表示することを目的として、表示面上の投影サイズから逆算してホロプター円の輻輳点を設定するのがこの第2の実施例である。
【0057】
図10は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第2の実施例のホロプター面への投影の一態様を示す図である。ここでは、まず、入力画像サイズ(幅)を「2L」として、表示面上に投影されるサイズ(幅)「2m」がどのような式で表されるかを考える。
【0058】
ホロプター円の内部において、長さp、q、rの各辺からなる直角三角形を想定すると、pおよびqは次式により表される。
p=r・sinφ
q=r・cosφ
ここで、角度φは、長さqおよびrの両辺のなす角である。この角度φは次式により表される。
φ=(L/(2πr))・2π=L/r
【0059】
また、表示面上に投影されるサイズ(幅)「2m」のうち、上述の直角三角形を通過する部分をxとし、その右部分をyとする。直角三角形における相似関係から、
p:x=q:(d−c)
したがって、xは次式により与えられる。
x=p・(d−c)/q
【0060】
また、頂点Tの直角三角形における相似関係から、
t:a=(t+c):s
t:a=(t+c+q):p
したがって、sは次式により得られる。
s=((p−a)/(a・(c+q)))・((a・(c+q)/(p−a))+c)・a
=(a・q−c・p)/(c+q)
【0061】
また、長さsおよび半径rの各辺によって形成される三角形における相似関係から、
s:y=q:(q−(d−c))
したがって、yは次式により与えられる。
y=((q−d+c)/q)・s
=((q−d+c)・(a・q−c・p))/(q・(c+q))
【0062】
このようにして得られたxとyを加算したものが表示面上に投影されるサイズ(幅)の半分「m」となる。
m=x+y
=p・(d−c)/q
+((q−d+c)・(a・q−c・p))/(q・(c+q))
【0063】
図11は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第2の実施例のホロプター面への投影の具体例を示す図である。第2の実施例では、上述のように、表示面540上の投影幅が表示面540一杯に表示されるように輻輳点を設定する。したがって、同図に示すように、表示面540自体の幅「2M」と、上式により得られた表示面上の投影幅「2m」とを一致させることになる。
【0064】
輻輳点設定部322には、表示面540のサイズ(幅)「2M」、入力画像サイズ(幅)「2L」、両眼間距離「2a」、観察距離「d」が与えられるため、上式により得られた表示面上の投影サイズ(幅)「2m」が「2M」と一致するようにして、ホロプター円の半径rを求めることができる。
【0065】
このように、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第2の実施例では、表示面540のサイズを予め想定することにより、表示面540上の投影画像が表示面540一杯に表示されるような輻輳点を設定し、ホロプター円を一意に特定することができる。
【0066】
図12は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第3の実施例を示す図である。この三次元変換部130の第3の実施例は、表示面における画像の歪度が大きくならないように輻輳点を定めるものである。両眼の各眼の真正面からずれるほど、画像の中央と周辺との間の歪度が大きくなるため、この歪度が許容範囲内に収まるように輻輳点が設定される。この三次元変換部130の第3の実施例は、ホロプター面画像投影部331と、輻輳点設定部332と、表示面右目投影部336と、表示面左目投影部337とを備える。
【0067】
ホロプター面画像投影部331は、ホロプター面画像投影部311と同様に、信号処理部120から信号線129を介して供給された非立体画像を、ホロプター円を含む円筒面に投影するものである。この第3の実施例では、輻輳点設定部332により設定された輻輳点に基づく円周角「τ」を用いてホロプター円を特定する。なお、ホロプター面画像投影部331は、特許請求の範囲に記載の円筒面投影部の一例である。
【0068】
輻輳点設定部332は、輻輳点を設定してこの輻輳点に基づく円周角「τ」を供給するものである。この輻輳点設定部332は、両眼間距離「2a」、観察距離「d」、最大歪度「Qmax」および微小角度「δ」によって輻輳点を設定する。設定の詳細については次図により説明する。
【0069】
表示面右目投影部336および表示面左目投影部337は、第1の実施例と同様に、ホロプター画像を右目用または左目用の表示面に投影するものである。なお、ここでは、輻輳点設定部332から供給される円周角「τ」を用いて表示面への投影を行っているが、第1の実施例における半径「r」と本実施例における円周角「τ」は輻輳点を設定するという意味では等価である。したがって、両者を適宜入れ換えて使用してもよい。なお、表示面右目投影部336および表示面左目投影部337は、特許請求の範囲に記載の表示面投影部の一例である。
【0070】
図13は、ホロプター円と画像の歪度の関係例を示す図である。ここでは、左目512に関して歪度を求めるが、右目511についても同様である。
【0071】
左目512から真正面を見たホロプター円上の位置535と、その位置から角度θ回転した位置536において、それぞれ微小角度「δ」ずれた場合の、表示面540上の距離を比較する。位置535において微小角度「δ」ずれた場合、ホロプター円の中心点oの見込角は「2δ」となるから、ホロプター円上の位置535では「2δr」のずれが生じる。この点、位置536において微小角度「δ」ずれた場合も、ホロプター円の中心点oの見込角は「2δ」となるから、ホロプター円上の位置536では同様に「2δr」のずれが生じる。
【0072】
ホロプター円上の位置535に対応する表示面540上の位置545では、観察距離「d」を一辺とし、角度「δ/2」を有する直角三角形を想定すると、ずれ幅Q1は次式のようになる。
Q1=2d・tan(δ/2)
【0073】
一方、ホロプター円上の位置536に対応する表示面540上の位置546では、観察距離「d」を一辺とし、角度「θ」を有する直角三角形を想定すると、ずれ幅Q2は次式のようになる。
Q2=2d・(tanθ−tan(θ−δ/2))
【0074】
したがって、歪度Qは、次式により得られる。
Q=Q2/Q1
=(2d・(tanθ−tan(θ−δ/2)))/(2d・tan(δ/2))
=(tanθ−tan(θ−δ/2))/tan(δ/2)
【0075】
図14は、角度θと画像の歪度Qの関係例を示す図である。ここでは、図13において微小角度δを「0.01」として、角度θを「−70°」から「+70°」まで変化させた場合の歪度Qを示している。
【0076】
この例からもわかるように、眼の真正面からずれるほど、画像の中央と周辺との間の歪度Qが大きくなっている。そこで、この第3の実施例では、歪度の閾値として最大歪度「Qmax」を与え、歪度がこれより小さくなるように角度θを設定する。
【0077】
図15は、ホロプター円と円周角の関係例を示す図である。円周角が「τ」であるとすると、右目511と左目512とからホロプター円520の中心点oを見込んだ角は「2τ」である。この角は、中心点oから両眼の中心への垂線によって2等分され、それぞれ「τ」となる。この図では、左目512を基準とした「τ」について示している。
【0078】
右目511および左目512の中心線とホロプター円520との交点537と、左目512と、ホロプター円520の中心点oとからなる三角形に注目すると、交点537および左目512における角度は何れも「τ/2」となる。左目512から真正面を見たホロプター円上の位置535と左目512とを結ぶ直線が、右目511および左目512の中心線と並行であることから、交点537と入力画像の端点538とによって左目512において形成される角度は「θ−τ/2」となる。ただし、角度θは、位置535と入力画像の端点538とによって左目512において形成される角度である。したがって、交点537と入力画像の端点538とからホロプター円520の中心点oを見込んだ角度は「2・(θ−τ/2)」となる。この場合の円弧が入力画像のサイズ(幅)の「L」と一致することから次式が成り立つ。
2・(θ−τ/2)・r=L
【0079】
また、右目511および左目512の中心点と、ホロプター円520の中心点oと、左目512とからなる直角三角形に注目すると、半径rは次式により表される。すなわち、円周角「τ」と両眼間距離「2a」とから半径「r」を求めることができることがわかる。
r=a/sin(τ)
したがって、上の2式から半径rを消去して、次式が得られる。
2・(θ−τ/2)・(a/sin(τ))=L
上式より、角度「θ」、両眼間距離の半分「a」、および、入力画像のサイズ「L」が既知であれば、円周角「τ」が得られることがわかる。
【0080】
このように、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第3の実施例では、微小角度「δ」および最大歪度「Qmax」を与えることにより、画面中央と周辺の歪が最大歪度以下となるように輻輳点を設定し、ホロプター円を特定することができる。
【0081】
図16は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第4の実施例を示す図である。この三次元変換部130の第4の実施例は、表示面における画像の歪が大きくならないように輻輳点を定めるとともに、入力画像が表示面一杯に表示されるように入力画像のサイズ(幅)をスケーリングするものである。この三次元変換部130の第4の実施例は、ホロプター面画像投影部341と、輻輳点設定部342と、スケーリング部343と、表示面右目投影部346と、表示面左目投影部347とを備える。
【0082】
輻輳点設定部342は、輻輳点を設定してこの輻輳点に基づく半径「r」および角度「θ」を供給するものである。この輻輳点設定部342は、両眼間距離「2a」、観察距離「d」、最大歪度「Qmax」、微小角度「δ」および表示面サイズ「2M」によって輻輳点を設定する。
【0083】
スケーリング部343は、信号処理部120から信号線129を介して供給された非立体画像を、輻輳点設定部342によって設定された輻輳点に応じて拡大または縮小(スケーリング)するものである。
【0084】
ホロプター面画像投影部341は、スケーリング部343によってスケーリングされた非立体画像を、ホロプター円を含む円筒面に投影するものである。なお、ホロプター面画像投影部341は、特許請求の範囲に記載の円筒面投影部の一例である。
【0085】
表示面右目投影部346および表示面左目投影部347は、第1の実施例と同様に、ホロプター画像を右目用または左目用の表示面に投影するものである。なお、表示面右目投影部346および表示面左目投影部347は、特許請求の範囲に記載の表示面投影部の一例である。
【0086】
図17は、ホロプター円と表示面の関係例を示す図である。この第4の実施例では、第3の実施例と同様に、微小角度「δ」に対して歪度が最大歪度「Qmax」よりも小さくなるように角度「θ」が決定される。そして、この角度「θ」に基づいて、ホロプター円が決定されるとともに、入力画像のサイズが決定される。
【0087】
入力画像の端点538はホロプター円520上にあるため、右目511と左目512とから入力画像の端点538を見込んだ角度は「τ」である。また、左目512および入力画像の端点538を結ぶ直線と表示面540との交点548、左目512および左目真正面の点535を結ぶ直線と表示面540との交点545および左目512の位置からなる直角三角形に着目すると、左目512から交点548においてなす角は「π/2−θ」となる。また、頂点Tを含む直角三角形に着目すると、頂点Tから交点549においてなす角は「tan-1(x/a)」である。ここで、xは、
x:a=(x+d):M
を満たすことから、
x=a・d/(M−a)
により与えられる。
【0088】
したがって、交点549における内側の角度は「π−tan-1(x/a)」となる。これにより、角度「τ」は次式により与えられる。すなわち、次式が成立するようにτを設定することにより、ホロプター円が決定される。
τ=θ−(π/2)+tan-1(x/a)
【0089】
また、第3の実施例において算出したように、交点537と入力画像の端点538とからホロプター円520の中心点oを見込んだ角度は「2・(θ−τ/2)」となる。この場合の円弧が入力画像のサイズ(幅)の「L」と一致することから次式が成り立つ。
L=2・(θ−τ/2)・r
【0090】
第3の実施例では入力画像のサイズを固定としたが、この第4の実施例では入力画像のサイズは可変であり、上式を満たすようにスケーリング部343によって入力画像のスケーリングが行われる。
【0091】
このように、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第4の実施例では、画面中央と周辺の歪が最大歪度以下となるように輻輳点を設定してホロプター円を特定するとともに、入力画像をスケーリングして入力画像を表示面一杯に表示することができる。
【0092】
図18は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例を示す図である。この三次元変換部130の第5の実施例は、非立体画像をホロプター円に投射する手順を経ずに、各眼に対応するあおり面に非立体画像をそれぞれ投射した後に表示面に投影することにより、立体画像を生成するものである。ただし、後に示すように、この第5の実施例により表示される画像は、第1乃至4の実施例により説明したホロプター円を介して表示された画像と等価である。そこで、ここでは、立体画像を生成する際にホロプター円を想定し、このホロプター円の半径をパラメータとして与えるものとする。この三次元変換部130の第5の実施例は、あおり面右目設定部354と、あおり面左目設定部355と、表示面右目投影部356と、表示面左目投影部357とを備える。
【0093】
あおり面右目設定部354は、両眼から等距離にある輻輳点を右目から見た視点を想定し、この視点に対して垂直に交わるあおり面を設定して、信号処理部120から信号線129を介して供給された非立体画像を右目用のあおり画像として投影するものである。あおり面左目設定部355は、両眼から等距離にある輻輳点を左目から見た視点を想定し、この視点に対して垂直に交わるあおり面を設定して、信号処理部120から信号線129を介して供給された非立体画像を左目用のあおり画像として投影するものである。あおり面右目設定部354およびあおり面左目設定部355は、両眼間距離「2a」、ホロプター円の半径「r」、想定される観察距離「d」、あおり面距離「k」に基づいて、右目用および左目用のあおり面への投影を行う。なお、あおり面は、特許請求の範囲に記載の照射面の一例である。また、あおり面右目設定部354およびあおり面左目設定部355は、特許請求の範囲に記載の照射面投影部の一例である。
【0094】
表示面右目投影部356は、右目用のあおり画像を右目用の表示面に投影するものである。表示面左目投影部357は、左目用のあおり画像を左目用の表示面に投影するものである。表示面右目投影部356および表示面左目投影部357は、両眼間距離「2a」、ホロプター円の半径「r」、想定される観察距離「d」に基づいて、右目用および左目用の表示面への投影を行う。右目用の表示面に投影された画像を右目画像と呼称し、左目用の表示面に投影された画像を左目画像と呼称する。これら右目画像および左目画像は、信号線139を介して後処理部160に供給される。なお、表示面右目投影部356および表示面左目投影部357は、特許請求の範囲に記載の表示面投影部の一例である。
【0095】
図19は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例のあおり面への投影の一態様を示す図である。
【0096】
右目511および左目512の中心線とホロプター円520との交点は、両眼から等距離にある輻輳点527である。右目用あおり面550は、右目511から輻輳点527を見た視点に対して点551において垂直に交わる面である。左目用あおり面560は、左目512から輻輳点527を見た視点に対して点561において垂直に交わる面である。右目511の位置および左目512の位置を結ぶ線分と点551および561を結ぶ線分との間の距離をあおり面距離「k」とする。
【0097】
ここでは、右目用あおり面550および左目用あおり面560上の画像を表示面570に投影することを考える。右目511および左目512と表示面570との間の距離を観察距離「d」とする。右目用あおり面550上の点551から距離「S」離れた点552に形成される像は、表示面570上では表示位置571に表示される。左目用あおり面560上の点561から距離「S」離れた点562に形成される像は、表示面570上では表示位置572に表示される。このとき、右目511および点571を結ぶ直線と、左目512および点572を結ぶ直線とは、ホロプター円520上の交点522で交わる。すなわち、この第5の実施例により表示される画像は、第1乃至4の実施例により説明したホロプター円を介して表示された画像と等価である。
【0098】
図20は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例のあおり面への投影の具体例を示す図である。
【0099】
図20(a)は、信号処理部120から信号線129を介して供給される入力画像I(p,q)の座標系を示している。入力画像は非立体画像であるため、二次元の座標系を用いている。座標系の原点は入力画像の中央点に設定されている。また、入力画像サイズ(幅)は「2L」を想定している。
【0100】
図20(b)は、あおり画像が投影されるあおり面の座標系を示している。あおり面は三次元になるため、ここでは(x,y,z)の三次元の座標系を用いている。座標系の原点は右目511と左目512の中心に設定されている。図20(b)は、あおり面に対する垂直方向、すなわち、y軸の垂直方向から見た図になっている。
【0101】
右目511および左目512からホロプター円520上の輻輳点を見込んだ角度を輻輳角「τ」とすると、右目用あおり面550および左目用あおり面560は、水平線からそれぞれ「τ/2」の角度を有している。
【0102】
両眼を結ぶ直線に対して左目用あおり面560上の点561から垂直に下ろした交点582に着目すると、左目512と交点582の距離は「k・tan(τ/2)」となる。したがって、原点からz軸に沿ってあおり面距離「k」離れた位置の点589と、左目用あおり面560上の点561との距離は、「a−k・tan(τ/2)」となる。したがって、左目用あおり面560における左目用あおり画像L(x,y,z)と入力画像I(p,q)の関係は、次式により表される。
L(x,y,z)=I((x+a−k・tan(τ/2))/(cos(τ/2))
,y)
ただし、この左目用あおり画像L(x,y,z)では、
z=k−((x+a−k・tan(τ/2))/sin(τ/2))
である。
【0103】
また、同様に、右目用あおり面550における右目用あおり画像R(x,y,z)と入力画像I(p,q)の関係は、次式により表される。
R(x,y,z)=I((x−a+k・tan(τ/2))/(cos(τ/2))
,y)
ただし、この右目用あおり画像R(x,y,z)では、
z=k+((x−a+k・tan(τ/2))/sin(τ/2))
である。
【0104】
図21は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例の表示面への投影の具体例を示す図である。
【0105】
図21(a)は、あおり面および表示面の座標系を示している。ここでは(x,y,z)の三次元の座標系を用いている。
【0106】
図21(b)は、表示面に投影された表示画像J(s,t)の座標系を示している。表示画像は、右目511および左目512のそれぞれに関して得られる。それぞれは二次元画像であるため、二次元の座標系を用いている。座標系の原点は表示画像の中央点に設定されている。
【0107】
このとき、左目512から左目用あおり画像上のL(x0,y0,z0)を通って投影される表示面570上のDL(xL,yL,zL)は、次式により与えられる。
L(xL,yL,zL)=J(xL,yL)=L(x0,y0,z0
【0108】
また、視聴者の観察位置との間の距離が観察距離dであることから、zR=dであり、以下の式が成り立つ。
(x0+a)/(xL+a)=y0/yL=z0/d
0>0
ただし、図20により説明したように、
0=k−((x0+a−k・tan(τ/2))/sin(τ/2))
である。
【0109】
なお、ここでは、左目512から投影されるDL(xL,yL,zL)について説明したが、右目511から右目用あおり画像上のR(x0,y0,z0)を通って投影される表示面570上のDR(xR,yR,zR)についても同様に求めることができる。
【0110】
図22は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例による処理手順例を示す図である。
【0111】
まず、信号処理部120から信号線129を介して入力画像I(p,q)が入力されると(ステップS921)、入力画像I(p,q)はあおり画像としてそれぞれ投射される。ただし、第1の実施例と異なり、右目用および左目用に別個のあおり面が設けられ、以下のようにして表示画像が生成される(ループL902)。
【0112】
入力画像I(p,q)が右目用あおり面550において右目用あおり画像R(x,y,z)として投射されると(ステップS922)、表示面570上に対して透視変換が行われ、三次元上のDR(xR,yR,zR)が得られる(ステップS923)。そして、この三次元上の位置から、表示面の二次元の表示画像J(xR,yR)が得られる(ステップS924)。同様に、入力画像I(p,q)が左目用あおり面550において左目用あおり画像L(x,y,z)として投射されると(ステップS922)、表示面570上に対して透視変換が行われ、三次元上のDL(xL,yL,zL)が得られる(ステップS923)。そして、この三次元上の位置から、表示面の二次元の表示画像J(xL,yL)が得られる(ステップS924)。なお、ステップS922は、特許請求の範囲に記載の照射面投影手順の一例である。また、ステップS923およびS924は、特許請求の範囲に記載の表示面投影手順の一例である。
【0113】
このように、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第5の実施例では、右目用および左目用のあおり面に対して非立体画像をそれぞれ右目用および左目用のあおり画像として投影する。そして、実測もしくは推定された観察距離における表示面に右目用および左目用のあおり画像を投影することにより、右目511および左目512に対する立体画像を生成することができる。
【0114】
図23は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例を示す図である。この第6の実施例は、奥行き情報に基づく深度マップ(depth map)に応じた立体画像を生成するものである。この三次元変換部130の第6の実施例は、入力画像深度マップ生成部361と、ホロプター面深度マップ生成部362と、深度マップ合成部363と、表示面右目投影部366と、表示面左目投影部367とを備える。
【0115】
入力画像深度マップ生成部361は、信号処理部120から信号線129を介して供給された非立体画像(入力画像)について深度マップを生成するものである。深度マップは画素毎に奥行きに関する情報を保持するものであり、例えば輝度、高周波成分、動き、彩度などに基づいて推定される。例えば、特開2007−502454号公報には、入力画像において検出されたエッジに基づいて深度マップを生成するマルチビュー画像生成ユニットが記載されている。なお、入力画像深度マップ生成部361は、特許請求の範囲に記載の奥行き情報生成部の一例である。
【0116】
ホロプター面深度マップ生成部362は、ホロプター面について深度マップを生成するものである。ホロプター面は、第1の実施例と同様に、ホロプター円情報によりホロプター円の大きさが特定され、両眼間距離「2a」により両眼との相対的位置関係が特定される。
【0117】
深度マップ合成部363は、入力画像深度マップ生成部361によって生成された入力画像の深度マップと、ホロプター面深度マップ生成部362によって生成されたホロプター面の深度マップとを合成するものである。なお、深度マップ合成部363は、特許請求の範囲に記載の奥行き情報合成部の一例である。
【0118】
表示面右目投影部366は、信号処理部120から信号線129を介して供給された非立体画像について、深度マップ合成部363によって合成された合成深度マップを考慮して、右目用の立体画像を右目用の表示面に投影するものである。また、表示面左目投影部367は、信号処理部120から信号線129を介して供給された非立体画像について、深度マップ合成部363によって合成された合成深度マップを考慮して、左目用の立体画像を左目用の表示面に投影するものである。
【0119】
図24は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例による処理の概要を示す図である。
【0120】
この第6の実施例では、入力画像深度マップ生成部361によって奥行き情報を推定して、これをホロプター面に対して合成する。これにより、これまでに説明したホロプター円の性質を用いた奥行き感に加えて、さらにシーンの三次元構造に対応した奥行き情報を付加することにより、さらに立体感を増強することができる。
【0121】
例えば、合成後の点621は、ホロプター円よりも前方に存在するため、これを表示面に投影すると、より近い位置に存在するものとして把握される。また、合成後の点622は、ホロプター円よりも後方に存在するため、これを表示面に投影すると、より遠い位置に存在するものとして把握される。
【0122】
図25は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例によるホロプター面の深度マップの一例を示す図である。
【0123】
ここでは、ホロプター面の深度マップをdpHにより表す。ホロプター面はホロプター円を含む三次元形状であり、x平面からの距離により特定される。すなわち、ホロプター面の深度マップはxおよびyの関数となり、次式により表される。
dpH(x,y)=z(x,y)
このとき、座標(xi,yi)に対するx平面からのホロプター面の距離をdiとすると、関数z(x,y)は、次式により与えられる。
z(xi,yi)=di (i=1、2、...、n)
【0124】
図26は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例による奥行き情報の推定例を示す図である。
【0125】
ここでは、奥行き情報の深度マップをdpIにより表す。奥行き情報は各画素に対応する奥行きを示すものであり、三次元の情報として表される。すなわち、奥行き情報の深度マップはxおよびyの関数となり、次式により表される。
dpI(x,y)=z(x,y)
このとき、座標(xi,yi)に対するx平面からの奥行き情報の値をeiとすると、関数z(x,y)は、次式により与えられる。
z(xi,yi)=ei (i=1、2、...、n)
【0126】
図27は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例の深度マップ合成部363の一構成例を示す図である。深度マップ合成部363は、上述のように入力画像深度マップ生成部361によって生成された入力画像の深度マップと、ホロプター面深度マップ生成部362によって生成されたホロプター面の深度マップとを合成するものである。この深度マップ合成部363は、平均値算出部3631と、減算器3632と、加算器3633とを備えている。
【0127】
平均値算出部3631は、入力画像毎に深度マップの平均値を算出するものである。減算器3632は、入力画像の画素毎の深度マップに対して深度マップの入力画像毎の平均値をそれぞれ減算するものである。これにより、平均値を中心値とする深度マップの交流成分が得られる。加算器3633は、減算器3632から供給される入力画像の深度マップの交流成分をホロプター面の深度マップに加算するものである。これにより、ホロプタ面上の合成された深度マップが得られる。
【0128】
図28は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例による立体画像の生成例を示す図である。この例では、入力された非立体画像を左目用画像630として、深度マップに対応する曲面620に投影し、曲面620上の各点に対応する右目用画像640に投影する。
【0129】
例えば、左目512から見た左目用画像630上の点631は、曲面620上では点621に投影される。そして、この点621を右目511によって見ると、右目用画像640上では点641に投影される。同様に、左目512から見た左目用画像630上の点632は、曲面620上では点622に投影される。そして、この点622を右目511によって見ると、右目用画像640上では点642に投影される。
【0130】
なお、この図では、説明の便宜上、左目用画像630と右目用画像640とをz方向に相互に位置をずらして示しているが、実際には両者は同一平面上に位置する。
【0131】
図29は、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例による立体画像の他の生成例を示す図である。この例では、入力された非立体画像を右目と左目の中央513から見た画像(入力画像650)として、深度マップに対応する曲面620に投影し、曲面620上の各点に対応する左目用画像630および右目用画像640に投影する。
【0132】
例えば、中央513から見た入力画像650上の点651は、曲面620上では点621に投影される。そして、この点621を左目512によって見ると左目用画像630上では点631に投影され、右目511によって見ると右目用画像640上では点641に投影される。同様に、中央513から見た入力画像650上の点652は、曲面620上では点622に投影される。そして、この点622を左目512によって見ると左目用画像630上では点632に投影され、右目511によって見ると右目用画像640上では点642に投影される。
【0133】
なお、この図では、説明の便宜上、左目用画像630、右目用画像640および入力画像650をz方向に相互に位置をずらして示しているが、実際には全て同一平面上に位置する。
【0134】
このように、本発明の実施の形態における三次元変換部130の第6の実施例では、他の実施例により説明したホロプター面を利用した立体視に、奥行き情報に基づく深度マップを組み合わせることによって、より立体感のある立体画像を生成することができる。
【0135】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、上述のように特許請求の範囲における発明特定事項とそれぞれ対応関係を有する。ただし、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
【0136】
また、本発明の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))等を用いることができる。
【符号の説明】
【0137】
110 画像信号入力部
120 信号処理部
130 三次元変換部
140 パラメータ設定部
150 観察距離測定部
160 後処理部
170 フォーマット変換部
180 ソース選択部
190 表示部
311、321、331、341 ホロプター面画像投影部
316、326、336、346、356、366 表示面右目投影部
317、327、337、347、357、367 表示面左目投影部
322、332、342 輻輳点設定部
343 スケーリング部
354 あおり面右目設定部
355 あおり面左目設定部
361 入力画像深度マップ生成部
362 ホロプター面深度マップ生成部
363 深度マップ合成部
520 ホロプター円
530 ホロプター画像
540、570 表示面
620 合成後曲面
630 左目用画像
640 右目用画像
650 入力画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両眼に接する仮想円を含む円筒面に対して2次元入力画像を投影して円筒画像を生成する円筒面投影部と、
前記両眼のそれぞれを基準として前記円筒画像を表示面に対して投影して前記両眼のそれぞれに射影される表示画像を生成する表示面投影部と
を具備する立体視画像生成装置。
【請求項2】
前記仮想円の半径は、想定される観察距離または表示サイズに応じて設定される請求項1記載の立体視画像生成装置。
【請求項3】
前記表示面と観察位置との距離を測定する観察距離測定部をさらに具備し、
前記仮想円の半径は、前記観察距離測定部により測定された観察距離に応じて設定される
請求項2記載の立体視画像生成装置。
【請求項4】
前記仮想円の半径は、前記表示画像の歪度が所定の閾値より小さくなるように設定される請求項1記載の立体視画像生成装置。
【請求項5】
前記2次元入力画像から奥行き情報を生成する奥行き情報生成部と、
前記奥行き情報を前記円筒画像に合成する奥行き情報合成部とをさらに具備し、
前記表示面投影部は、前記奥行き情報が合成された円筒画像を表示面に対して投影して前記表示画像を生成する
請求項1記載の立体視画像生成装置。
【請求項6】
両眼のそれぞれの視線に直交する2次元平面に対して2次元入力画像を投影して両眼のそれぞれに対応する照射画像を生成する照射面投影部と、
前記両眼のそれぞれを基準として対応する前記照射画像を表示面に対して投影して前記両眼のそれぞれに射影される表示画像を生成する表示面投影部と
を具備する立体視画像生成装置。
【請求項7】
前記照射画像の位置は、想定される観察距離に応じて設定される請求項6記載の立体視画像生成装置。
【請求項8】
前記表示面と観察位置との距離を測定する観察距離測定部をさらに具備し、
前記照射画像の位置は、前記観察距離測定部により測定された観察距離に応じて設定される請求項7記載の立体視画像生成装置。
【請求項9】
表示面から右目および左目のそれぞれに投影される映像が同一となるように2次元入力画像を変換してそれぞれ右目画像および左目画像を生成する立体視画像生成装置。
【請求項10】
両眼に接する仮想円を含む円筒面に対して2次元入力画像を投影して円筒画像を生成する円筒面投影手順と、
前記両眼のそれぞれを基準として前記円筒画像を表示面に対して投影して前記両眼のそれぞれに射影される表示画像を生成する表示面投影手順と
を具備する立体視画像生成方法。
【請求項11】
両眼のそれぞれの視線に直交する2次元平面に対して2次元入力画像を投影して両眼のそれぞれに対応する照射画像を生成する照射面投影手順と、
前記両眼のそれぞれを基準として対応する前記照射画像を表示面に対して投影して前記両眼のそれぞれに射影される表示画像を生成する表示面投影手順と
を具備する立体視画像生成方法。
【請求項12】
両眼に接する仮想円を含む円筒面に対して2次元入力画像を投影して円筒画像を生成する円筒面投影手順と、
前記両眼のそれぞれを基準として前記円筒画像を表示面に対して投影して前記両眼のそれぞれに射影される表示画像を生成する表示面投影手順と
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項13】
両眼のそれぞれの視線に直交する2次元平面に対して2次元入力画像を投影して両眼のそれぞれに対応する照射画像を生成する照射面投影手順と、
前記両眼のそれぞれを基準として対応する前記照射画像を表示面に対して投影して前記両眼のそれぞれに射影される表示画像を生成する表示面投影手順と
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−191664(P2012−191664A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142337(P2012−142337)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【分割の表示】特願2008−149123(P2008−149123)の分割
【原出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】