説明

立坑の構築方法

【課題】コストアップを招くことなく、しかも効率的に、有効立坑径および有効深さがより大きな立坑の構築を可能とした工法を提供する。
【解決手段】刃口リング10の上に波形鋼板製のスキンプレート5とかご状フレームを4を単位要素として組み立てた筒状の土留め壁組立体1a,1b,1cを継ぎ足しながら、坑底部分の掘削と圧入装置による圧入とを繰り返して、所定深さの土留め壁組立体1による立坑Hを構築する。土留め壁組立体1a〜1cはリングビームと縦方向のクロスビームとを主要素とする。圧入装置7による荷重を格段のクロスビーム3を介して先端の刃口リング10に伝達する。立坑Hの構築後にかご状フレーム4を分解しながら撤去し、土留め壁1としてスキンプレート5のみを残す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木,建築分野において、筒状の土留め壁をもって地中に立坑を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば特許文献1に記載のようにいわゆるセグメント構造の地中構造物の築造方法が提案されている。
【0003】
この特許文献1に記載の技術では、最初にリング状の刃口部を形成するとともに、その刃口部に複数の圧入支柱を立設した上でそれらの圧入支柱の周囲にコンクリートセグメントまたはスチールセグメント等のセグメントを複数段にわたり積み重ねながら圧入支柱と連結して筒状の壁体部を形成し、次いで油圧ジャッキにて圧入支柱に圧入力を付与して上記セグメント群からなる壁体部を地中に圧入するようにしている。この特許文献1に記載の技術によれば、圧入力は圧入支柱を介して刃口部に伝達されるので、圧入に対する強度の面で必ずしも十分でない壁体部には圧入力がほとんど作用しないとされている。
【0004】
また、上記のようなコンクリートセグメントまたはスチールセグメント等の厚肉,高強度のセグメントに代えて、波形鋼板をもって予め所定曲率の円弧状に形成したライナープレートを土留め壁体として用いることを前提とした工法が特許文献2,3にて提案されている。
【特許文献1】特開2004−156205号公報(図4)
【特許文献2】実開平6−49592号公報(図1および図6)
【特許文献3】特開平10−169360号公報(図12〜図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、圧入支柱としてH形鋼等を使用することを前提としていることから、圧入沈設された筒状の壁体部の内周面にそれぞれの圧入支柱が張り出すことになり、壁体部の内部の有効断面積ひいては有効利用できる立坑の坑径が制約されることとなり、なおも改善の余地を残している。
【0006】
その一方、特許文献2に記載の技術では、波形鋼板をもって形成したライナープレートの剛性が十分でなく、しかも圧入時の推進抵抗が大きい点を考慮して、複数のライナープレートを連結することにより組み立てた筒状体の外周を別の薄い鋼板にて被覆することを前提としていることから、ライナープレートとは別に被覆用の鋼板が必須となり、大幅なコストアップが余儀なくされる。
【0007】
さらに、特許文献3に記載の技術では、複数のライナープレートを連結することにより組み立てた筒状体に直接圧入荷重を付与して地中に圧入するようにしていることから、ライナープレート自体が波形鋼板にて形成されているために圧入時の推進抵抗が大きいばかりでなく、その剛性が十分でないために圧入時にライナープレートが座屈変形を起こしやすく、したがって構築できる立坑の深さに自ずと限界がある。
【0008】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、筒状の土留め壁組立体を単位要素(セグメント)としてこれを複数段にわたり継ぎ足して組み立てた土留め壁の内部を掘削しながらその土留め壁を地中に圧入沈設して立坑を構築することを前提として、コストアップを招くことなく、しかも効率的に、有効立坑径および有効深さがより大きな立坑の構築を可能とした工法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、筒状の土留め壁組立体を単位要素としてこれを複数段にわたり継ぎ足して組み立てた土留め壁の内部を掘削しながらその土留め壁を地中に圧入沈設して立坑を構築する方法であって、上記土留め壁組立体は複数の桁部材を格子状に組み合わせてなるかご状フレームとその外周面を覆うスキンプレートを備えていて、最下段の土留め壁組立体では上記スキンプレートをかご状フレームに接合するとともに、それ以外の土留め壁組立体では上記スキンプレートをかご状フレームに接合することなく上下の土留め壁組立体相互間においてスキンプレート同士を接合した状態で、上記かご状フレームを荷重入力部として土留め壁を所定深度まで地中に圧入沈設し、上記土留め壁の圧入沈設後にスキンプレートのみを土留め壁として残して上記かご状フレームを撤去することを特徴とする。
【0010】
具体的には、請求項2に記載のように、上記単位要素分の土留め壁組立体を組み立てながら下段側の土留め壁組立体に積み重ねるように連結して継ぎ足し、このような単位要素分の土留め壁組立体の組み立てと連結のほか、上記掘削および単位要素分の圧入沈設動作を繰り返し行うものとする。
【0011】
より具体的には、請求項3に記載のように、上記土留め壁組立体の組み立ておよび連結には、円周方向で予め複数に分割されているフレームを分解可能に結合してかご状フレームを組み立てる工程と、このかご状フレームの外周面側にスキンプレートを配置しながら、上下の土留め壁組立体相互間においてスキンプレート同士を接合する工程とを含んでいるものとする。
【0012】
ここで、上記スキンプレートは、請求項4に記載のように、かご状フレームの外形の曲率に合わせて予め曲げ加工を施した単一もしくは複数のプレートセグメントをもって形成されているものとする。
【0013】
上記プレートセグメントとしては、単純な平板状のもののほか、垂直断面もしくは水平断面が波形状の波形鋼板等を用いるものとする。
【0014】
例えば上記スキンプレートが、円周方向で予め複数に分割されているプレートセグメントを分解可能に連結したものである場合には、請求項5に記載のように、上記土留め壁組立体の組み立ておよび連結には、上記かご状フレームの外周面側にプレートセグメントを配置しながら、かご状フレームの円周方向および上下の土留め壁組立体相互間においてプレートセグメント同士を接合する工程を含むのとする。
【0015】
この場合において、上記スキンプレートまたはプレートセグメントは、請求項7に記載のように垂直断面が波形状をなす波形鋼板であることが望ましい。
【0016】
土留め壁の圧入沈設時の反力は、例えば周知のグラウンドアンカーを立坑の近くに地中深く打ち込んでこれに負担させるものとする。また、かご状フレームとしては、圧入荷重を直接伝達するものであるためにスキンプレートよりも強度に優れたものを用いるものとし、例えばH形鋼やL型鋼、I型鋼のほか中実丸棒状のものあるいはパイプ状のもの等のなかから最適なものを適宜選択して使用する。
【0017】
この場合において、上記最下段の土留め壁組立体は、地中への圧入沈設をスムーズに行うために請求項6に記載のようにその下端部に刃口部を備えているものとし、この場合にはその刃口部が先行筒体として機能することになる。
【0018】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、例えば最上段の土留め壁組立体を形成しているかご状フレームを荷重入力部としてそのかご状フレームに圧入荷重を加えると、その圧入荷重は各段の土留め壁組立体を形成しているかご状フレームを伝達部材として、最下段の土留め壁組立体を形成しているかご状フレームに伝達されて土留め壁全体が圧入沈設されることになる。そして、各段の土留め壁組立体を形成しているスキンプレート群は最下段の土留め壁組立体のかご状フレームに接合されているだけであるから、スキンプレート群全体はその最下段の土留め壁組立体に引っ張られるようにして地中に圧入沈設されることになるので、各土留め壁組立体を形成している外周面のスキンプレートが直接圧入荷重を受けることがなく、したがってそのスキンプレートの座屈変形等が未然に防止され、より深度の大きな立坑の構築が可能となる。
【0019】
所定深度の立坑が構築された状態において、スキンプレート群が土留め壁として自立しつつ周囲の土水圧に対抗できるだけの強度を有していれば、各段の土留め壁組立体を形成しているかご状フレームはその機能を失うことから、所定深度の立坑の構築後にスキンプレート群のみを残してかご状フレームを分解して撤去する。
【0020】
こうすることによりかご状フレームは繰り返し使用することが可能であり、施工コストの大幅な低減が可能となる。しかも、かご状フレームの撤去によって立坑内には張り出すものがなくなって、その有効断面積の拡大化ひいては立坑の有効坑径の拡大化が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、複数段の土留め壁組立体を単位要素として組み立てられた土留め壁を地中に圧入沈設した後に、それまで各土留め壁組立体の一部を形成したかご状フレームを撤去することで、最終的にはスキンプレートのみによって土留め壁が形成されることになるので、従来のように立坑の内部に張り出すものがなく、立坑内部の有効断面積ひいては有効利用できる立坑の坑径および内部空間がを大幅に拡大化できるほか、撤去したかご状フレームは再利用することが可能であり、施工コストの低減を併せて達成できる効果がある。
【0022】
また、スキンプレート群はかご状フレームに引っ張られるようにして地中に圧入されるので、圧入沈設途中で座屈してしまうことがなく、より深度の大きな立坑を構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1,2は本発明に係る立坑の構築に用いられる円筒状の土留め壁の概略構造を示しており、特に図1の(A)はその平面図を、同図(B)は地中に圧入沈設されていない状態での土留め壁1の正面図をそれぞれ示している。また、図2の(A)は図1の(A)の要部拡大図を、同図(B)は同図(A)のD−D線矢視図、すなわち土留め壁1をその内側から見た図をそれぞれ示している。
【0024】
図1に示す土留め壁1は、図2に示すように複数段のわたり配置された円環状のリングビーム2と、それらのリングビーム2と交差するように配置された複数本の縦方向のクロスビーム3,3‥とを組み合わせたものを円筒状のかご状フレーム4として、かご状フレーム4を積み重ねながらそれらの外周面側を覆うように後述するプレートセグメント群5a,5a‥からなるスキンプレート5を配置することで、内周面側がリブ構造となった土留め壁1が構成される。
【0025】
ここで、上記プレートセグメント5aとしては鉛直断面が波形状をなす波形鋼板(土木,建築の分野ではライナープレートとも称される)が使用される。また、上記のリングビーム2は横方向の桁部材として機能し、同様にクロスビーム3は縦方向もしくは上下方向の桁部材として機能することになる。
【0026】
リングビーム2は、円周方向にて4等分された長さのいわゆる四分円の円弧状をなす4本のビームセグメント2a,2a同士を後述する継手板12,16,18を用いてボルト・ナットにて締結することにより構成される。また、複数のクロスビーム3,3‥はその上下のリングビーム2,2に対してクロスビーム結合部として機能することになるリングビーム2側の当て板7に対して同様にボルト・ナットにて締結結合される。
【0027】
本実施の形態では、例えば四分円の円弧状の曲率をもつ単一のビームセグメント2aと、そのビームセグメント2aから垂下されるようにして連結される3本のクロスビーム3,3‥を1セットして、かご状フレーム4の単位要素として予め仮組みしておく。ここでは、かご状フレーム4の単位要素となるこのセットをフレーム6と称する。そして、4個のフレーム6,6‥を円周方向に連結しながら円筒状のかご状フレーム4を組み立て、以降はこのような組み立てをもってフレーム6,6‥の集合体からなるかご状フレーム4を順次継ぎ足しながら必要段数まで積み上げることで、そのかご状フレーム4の集合体をもって土留め壁1の骨格分を組み立てる。なお、上記ビームセグメント2aおよびクロスビーム3としては例えばH形鋼が使用される。
【0028】
図1の(B)には、所定高さの筒状の土留め壁組立体1a〜1cを土留め壁1そのものの単位要素(セグメント)として、これらの土留め壁組立体1a〜1cを3段にわたり上下方向で結合した状態を示してある。
【0029】
各土留め壁組立体1a〜1cは、先に述べた一段分のかご状フレーム4毎にその外周面側にプレートセグメント5aを単位要素とするスキンプレート5を設けて組み立てたものであって、上記のような一段分毎のかご状フレーム4の組み立てに続いてプレートセグメント5a,5a同士の接合をもってそのかご状フレーム4の外周面にスキンプレート5を配置し、かご状フレーム4とともにそれらのスキンプレート5を上下方向でも継ぎ足し、このような土留め壁組立体1a〜1cを順次積み上げながらすように三段に重ねて結合することで土留め壁1が形成される。つまり、土留め壁組立体1aの上に土留め壁組立体1bが、さらに土留め壁組立体1bの上に土留め壁組立体1cがそれぞれに結合されて初めて筒状の土留め壁1が形成される。
【0030】
ここで、各土留め壁組立体1a〜1c毎のスキンプレート5はプレートセグメント5aを円周方向の周方向接合部8,8‥にて接合することで形成される一方で、各土留め壁組立体1a〜1c相互間では、各土留め壁組立体1a〜1c毎にスキンプレート5を形成しているプレートセグメント5a,5aが上下方向接合部9,9‥にて上下方向で接合される。なお、同図から明らかなように、各土留め壁組立体1a〜1cの周方向接合部8,8‥が縦方向で一列に並ぶことがないように相互に周方向で位置をずらせて、それらの周方向接合部8,8‥をいわゆる千鳥状の配置としてある。また、波形鋼板からなるプレートセグメント5aは、リングビー2ムの曲率と合致するように予め曲げ加工にて所定の曲率を持たせてある。
【0031】
上記土留め壁1の施工時には、最下段の土留め壁組立体1aの先端に刃口部としての刃口リング10が連結される。この刃口リング10は、後述する圧入装置60にて土留め壁1を単位要素高さ分(一段分の土留め壁組立体1a〜1cのそれぞれの高さ分)だけ圧入沈設する際のその動作を円滑化する機能を有する。つまり、最下段の土留め壁組立体1aが既に地中に圧入沈設されていると仮定した場合、次の段の土留め壁組立体1bを土留め壁組立体1aの上で組み立てながらこれに継ぎ足すようにして連結し、その内部の坑底部分を所定量だけ掘削した上で一段分の土留め壁組立体1bの高さ分だけ圧入装置にて圧入沈設し、このような動作を何回か繰り返すことで所定段数の土留め壁組立体1a〜1cを単位要素とする土留め壁1全体を圧入沈設し、これをもって立坑が地中に構築されることになる。
【0032】
なお、図1では便宜上三段の土留め壁組立体1a〜1cをもって土留め壁1を形成しているが、積層すべき土留め壁組立体1a,1b,c‥の段数は立坑の仕様等に応じ任意に設定できることは言うまでもない。
【0033】
図3は図2におけるビームセグメント2aとそのビームセグメント2aを構成要素とするリングビーム2の詳細を示しており、同図(A)に示すように、ビームセグメント2aの外周側のフランジ部11における長手方向の端部には、継手板12側の穴に挿通させてビームセグメント2a,2a同士をフランジ部11にて結合するためのボルト13がウェブ14を挟んで上下に設けられている。このボルト13は、フランジ部11の外周面側にその頭部が突出しないように両者が面一状態となるように溶接にて固定されている。このような特殊なボルト形態としているのは、ビームセグメント2aの外周面に配置されることになるプレートセグメント5aもしくはそのプレートセグメント5a群をもって形成されることになるスキンプレート5との干渉を回避するためである(図6および図8の(B)参照)。
【0034】
またビームセグメント2aの内周側のフランジ部15における長手方向の端部には、継手板16側の穴に挿通させてビームセグメント2a,2a同士をフランジ部15にて結合するためのボルト穴17が設けられている。同様に、内外周のフランジ部11,15同士の間に介在することになるウェブ14には、継手板18側の穴に挿通させてビームセグメント2a,2a同士をウェブ14にて結合するためのボルト穴19が設けられている。
【0035】
そして、同図(B)に示すように、ビームセグメント2a,2aの外周側のフランジ部11,11同士が継手板12とボルト・ナット13,20をもって、ウェブ14,14同士が継手板18とボルト・ナット21をもって、内周側のフランジ部15,15同士が継手板16とボルト・ナット22をもってそれぞれに結合されていて、これによってリングビーム2が形成されている。なお、各ビームセグメント2a,2a‥のウェブ14にはその凹状空間に水が溜まるのを防止するために水抜き穴23を形成するのが望ましい。また、各々のボルト・ナット締結部位には水膨潤ゴム等のシール材を併用することが望ましい。
【0036】
図4は図2の(B)におけるリングビーム2とクロスビーム3の結合部位の垂直拡大断面図を示しており、リングビーム2を形成しているビームセグメント2aのフランジ部11,15の端面に当て板7が溶接接合されているとともに、その当て板7にはボルト穴が形成されている。同様に、クロスビーム3の端面には当て板24が溶接接合されているとともに、ボルト穴が形成されている。そして、当て板7,24を重ね合わせた上で、ボルト・ナット25を用いてリングビーム2とクロスビーム3とを結合してある。
【0037】
なお、クロスビーム3の位置は、後述するようにスキンプレート5を形成することになるプレートセグメン5a,5a同士の接合に用いたボルト等と干渉しないような位置に設定することが望ましい(図2の(B)参照)。
【0038】
上記スキンプレート5およびそのスキンプレート5の単位要素として機能することになるプレートセグメント5aは先に述べたように所定曲率の波形鋼板をもって形成されているもので、その詳細を図5〜7に示す。
【0039】
図5は図1の(B)のA−A線に沿った拡大断面図であり、同断面では一段目および三段目の土留め壁組立体1a,1cが周方向接合部8に該当している。同図に示すように、スキンプレート5を形成している各々のプレートセグメント5a,5a‥は垂直断面が波形状をなすように配置されていて、図1の(B)の周方向接合部8で所定幅の重ね代をもってボルト28,32にて周方向に接合されて、各土留め壁組立体1a〜1c毎のスキンプレート5を形成している。同時に、それぞれのプレートセグメント5a,5a‥は上下方向接合部9で所定幅寸法の重ね代をもってボルトにて上下方向でも接合されている。
【0040】
ここで、先端に刃口リング10を備えた最下段の土留め壁組立体1aにおいては、スキンプレート5を形成している各プレートセグメント5a,5a‥の下端を刃口リング10側のフランジ部26にボルト・ナット27にて結合してあるとともに、各プレートセグメント5a,5a同士を先に述べた周方向接合部8でボルト・ナット728にて接合してある。さらに、最下段の土留め壁組立体1aのスキンプレート5を形成している各プレートセグメント5a,5a‥の上端を、先に述べた上下方向結合部9で片締めボルト29にて、その上段側の土留め壁組立体1bにおいてスキンプレート5を形成している各プレートセグメント5a,5a‥と結合してある。
【0041】
そして、スキンプレート5の内側に同じく波形鋼板製のライニングプレート30を配置した上で刃口リング10側のフランジ部31に片締めボルト32にて結合してある。同時に、最下段の土留め壁組立体1aの強度を高めるために、スキンプレート5ライニングプレート30との間には、所定の鋼板をもって断面三角形状に形成された刃口リング10の内部空間とともにコンクリートを充填してコンクリート層33を形成してある。
【0042】
なお、最下段の土留め壁組立体1aにおいてスキンプレート5を形成している各プレートセグメント5a,5a‥同士をボルト・ナット75を用いて結合しているのは、初期沈設となる土留め壁組立体1a故に、作業台なしでその土留め壁組立体1aの内部に入っての組み立て作業が可能になるためである。また、片締めボルト29,32の採用は、それぞれに一方向からの操作のみでボルト締結を可能にするためである。
【0043】
また、図5の断面では二段目の土留め壁組立体1bはプレートセグメント5a,5a‥同士の周方向接合部8に該当していないため、リングビーム2と交差する部分に共回り防止ボルト34が採用されているとともに、上段側の土留め壁組立体1cとの上下方向接合部9に片締めボルト29が採用されている。さらに、プレートセグメント5a,5a同士のボルト接合部には、先にも述べたように水膨潤ゴム等のシール材を併用することが望ましい。
【0044】
他方、図5の断面では三段目の土留め壁組立体1cは最下段の土留め壁組立体1aと同様にプレートセグメント5a,5a‥同士の周方向接合部8に該当しており、リングビーム2と交差する部分に共回り防止ボルト34が採用されているほか、周方向接合部8においてプレートセグメント5a,5a‥同士が複数の片締めボルト32にて結合されているととに、必要に応じて土留め壁組立体1cの上にさらに土留め壁組立体を結合するための上下方向接合部9が設定されている。
【0045】
図8の(A)は、図5のM1部の拡大図として土留め壁組立体1b,1cにおけるスキンプレート5,5同士(プレートセグメント5a,5a‥同士)の接合部の詳細を示しており、上下方向接合部9において上下のスキンプレート5,5同士ひいてはプレートセグメント5a,5a‥同士が片締めボルト29にて結合されている。
【0046】
本実施の形態では、圧入沈設に伴う土留め壁1の外表面の表面摩擦によるプレートセグメント5a,5a‥の上下方向での伸び変形、すなわち波形形状を展開させてしまうような変形を防止するために、上下のプレートセグメント5a,5a‥同士の上下方向接合部9をリングビーム2の直下に位置するように設定してある。こうすることにより、プレートセグメント5a,5a‥同士が上下方向に伸び変形しようとしても、リングビーム2(ビームセグメント2a)のフランジ部11に型締めボルト29または32が当接することにより、それ以上の伸び変形が阻止される。
【0047】
さらに、本実施の形態では、図8の(A)に示すように、上下方向接合部9においてプレートセグメント5a,5a‥とクロスビーム2とが交差する場合であって、プレートセグメント5a,5a‥の山部35と谷部36がリングビーム2のフランジ部11の近傍にあり且つ谷部36がフランジ部11に接触する可能性がある場合、谷部36においてボルトを省略し、山部35においては予め共回り防止機能付きボルト34をプレートセグメント5aの内側から差し込んでおき、そのプレートセグメント5aと周方向で隣り合うプレートセグメント5aを重ねた上でナットで締め付けて結合するようにしてある。
【0048】
上記の共回り防止機能付きボルト34は、図9に示すように、ボルト本体40のおねじ部41に長方形の共回り防止板42を挿入するとともに、そのおねじ部41にロックナット43を螺合させて、頭部44とロックナット43とをもって共回り防止板42を共締め固定したもので、これら以外にプレートセグメント5aの山部35の形状に合わせた凸形状のワッシャ45と凹形状のワッシャ46およびナット47とが併用される。そして、図8の(A)から明らかなように、凹凸形状をもって対をなす座金ワッシャ45,46同士の間にプレートセグメント5aの山部35を挟んだ上でナット47を締め込むことにより、共回り防止板42は山部35とリングビーム2のフランジ部11との間の空間に位置して、ナット47の締め込みに伴うボルト本体40の共回りを防止することになる。このように上下方向結合部9の一部に共回り防止機能付きボルト34を採用することにより、プレートセグメント5a,5a‥同士の結合強度の低下をもたらすことなく、その結合に関与する共回り防止機能付きボルト34とリングビーム2との干渉を回避することができる。
【0049】
ここで、上記のような片締めボルトに代えて、プレートセグメント5aに予めウエルドナットを溶接固定しておくようにしても良い。
【0050】
図6は図1の(B)のB−B線に沿う拡大断面図であって、同断面では図5と比較すると明らかなように、リングビーム2を形成しているビームセグメント2a,2a‥同士の結合部に対応しているために、先に図3に示した継手板12,16,18が示されている。
【0051】
また、同断面では最下段の土留め壁組立体1aはスキンプレート5を形成しているプレートセグメント5a,5a‥同士の周方向結合部18に該当していないため、刃口リング10とスキンプレート5(プレートセグメント5a)を結合するためのボルト・ナット27のほか、上段側の土留め壁組立体1bのスキンプレート5(プレートセグメント5a)と上下方向結合部9にて結合するための片締めボルト29が示されている。
【0052】
一方、同断面では二段目の土留め壁組立体1bはそのスキンプレート5を形成しているプレートセグメント5a,5a‥同士の周方向結合部8に該当していて、周方向結合部8にてスキンプレート5のプレートセグメント5a,5a‥同士を結合するための複数の片締めボルト32のほか、上下方向結合部9にて上段側の土留め壁組立体1cとスキンプレート5,5同士(プレートセグメント5a,5a‥同士)を結合するための片締めボルト29が示されている。
【0053】
さらに、同断面では最上段の土留め壁組立体1cはスキンプレート5を形成しているプレートセグメント5a,5a‥同士の周方向結合部8に該当していないため、必要に応じてその上段側にさらなる土留め壁組立体を継ぎ足すための上下方向接合部9が示されている。
【0054】
図8の(B)は図6のM2部の拡大図として上記上下方向結合部9付近の詳細を示しており、上下のスキンプレート5,5同士(プレートセグメント5a,5a‥同士)が片締めボルト29にて接合されている。
【0055】
そして、先の場合と同様に、圧入沈設に伴う土留め壁1の外表面の表面摩擦によるプレートセグメント5a,5a‥の上下方向での伸び変形、すなわち波形形状を展開させてしまうような変形を防止するために、上下のプレートセグメント5a,5a‥同士の上下方向接合部9をリングビーム2の直下に位置するように設定してある。また、同図の断面ではプレートセグメント5a,5a‥の山部35および谷部36は周方向接合部8に相当していないため、谷部36はリングビーム2のフランジ部11に接触もしくはそれに近い状態のままとなっている。
【0056】
図7は図1の(B)のC−C線に沿う拡大断面図であって、同図では図5,6と比較すると明らかなように、リングビーム2とクロスビーム3とが図4の状態をもって結合された部分の断面を示している。なお、リングビーム2とクロスビーム3とが当て板7,24とボルト・ナット25をもって結合されていることは図4に基づいて説明したとおりである。つまり、同図では土留め壁組立体1a〜1cのいずれのものもそれぞれのスキンプレート5を形成しているプレートセグメント5a,5a‥同士の周方向接合部8に該当していない。
【0057】
図7では、先に述べたように、最下段の土留め壁組立体1aは周方向接合部18に該当していない故に、スキンプレート5(プレートセグメント5a,5a‥)は刃口リング10側のフランジ部26に接触しているだけである。また、土留め壁組立体1a,1bにおけるスキンプレート5,5(プレートセグメント5a,5a‥)同士は上下方向接合部9で重ね合わされている。つまり、同部分は周方向接合部8ではないので図5,6に示したような片締めボルト29,32は図示されていない。
【0058】
さらに、最下段の土留め壁組立体1aの一部を形成しているクロスビーム53はコンクリート層33の中に埋設されている。このクロスビーム53はコンクリート層33を打設する際の流れを良くするために、上段側のクロスビーム3よりも断面形状が小さいH形鋼をもって形成されている。
【0059】
図7の2段目の土留め壁組立体1bも周方向接合部8に該当しておらず、土留め壁組立体1b,1cにおけるスキンプレート5,5(プレートセグメント5a,5a‥)同士は上下方向接合部9で重ね合わされている。つまり、同部分は周方向接合部8ではないので図5,6に示したような片締めボルト29,32は図示されていない。
【0060】
このように三段にわたり土留め壁組立体1a〜1cを継ぎ足しながら組み立てた土留め壁1は、図5〜7から明らかなように、各土留め壁組立体1a〜1cのかご状フレーム4が上下方向で結合されて全体として一つの大きなかご状フレーム集合体が形成され、同時に各土留め壁組立体1a〜1cのスキンプレート5,5‥が上下方向で結合されて全体として一つの大きなスキンプレート集合体が形成されることになるのであるが、三段分のスキンプレート5,5‥が一つになった大きなスキンプレート集合体はその最下段において刃口部10を介してクロスビーム53に結合されているだけであり、それ以外の部分ではリングビーム2やクロスビーム3に接触してはいても全く結合されていないことになる。
【0061】
次に、上記のような土留め壁1の構造を前提として、その土留め壁1の組み立てと並行して、その土留め壁1の内部の掘削と地中への圧入沈設を行って、当該土留め壁1を主体とする立坑を構築する場合の手順について説明する。
【0062】
図10に示すように、立坑を構築すべき位置の地面G側には圧入装置60が設置される。この圧入装置60は、予め地中深く打ち込まれたグラウンドアンカー61を反力受けとする複数の油圧ジャッキ62と、その油圧ジャッキ62によって昇降駆動されるリング状もしくは井桁状の昇降ベース63とで構成されていて、昇降ベース63と圧入沈設すべき土留め壁1との間には保護リング64が介装される。同時に、立坑として所定深度まで掘り下げるために例えばバケット系掘削機のクラムシェル65を併用する。
【0063】
そして、図11に示すように、先に述べた土留め壁組立体1a〜1cのうちのいすれかの一段分の土留め壁組立体を組み立てたならば、バケット系掘削機のクラムシェル65にて最下段の土留め壁組立体の内部の坑底部66を掘削しつつ、土留め壁組立体1a,1b,1c…の積層体をもって構成される土留め壁1を一段分の土留め壁組立体の高さ分だけ地中に圧入し、先に述べた土留め壁組立体1a,1b,1c…の継ぎ足しと上記の掘削および圧入をn回繰り返すことで、所定深度の土留め壁1をもって立坑が構築される。
【0064】
より詳しくは、最初に、図11に示すように立坑を構築すべき位置に図5〜7に示したような刃口リング10を設置し、その上に一段目の土留め壁組立体1aを組み立てて、先行筒体として機能することになる刃口リング10と一体化する。この一段目の土留め壁組立体1aの組み立ては、刃口リング10を母体として図2に示したフレーム6,6‥を基本要素とするかご状フレーム4を組み立てた上で、その外周面側にプレートセグメント5a,5a‥の接合をもってスキンプレート5を組み立てる。同時に内周側には図5〜7に示すライニングプレート30を配置する(ただし、図11では図示省略してある)。そして、スキンプレート5とライニングプレート30の間にコンクリート層33を打設し、刃口リング10と一体となった土留め壁組立体1aを組み立てる。
【0065】
なお、刃口リング10を含むか含まないかにかかわらず、一段目の土留め壁組立体1aはコンクリート層打設に伴う養生期間が必要となるため、同土留め壁組立体1aについては必要に応じて工場生産の形態としても良い。
【0066】
こうして、一段目の土留め壁組立体1aが組み立てられたならば、図10に示すように正規位置に圧入装置60をセットし、土留め壁組立体1aの上面、すなわちリングビーム2に圧入装置60の昇降ベース63を保護リング64を介在させた状態で当接させる。そして、土留め壁組立体1aの内部の坑底部66をバケット系掘削機のクラムシェル65にて掘削しながら、圧入装置60の油圧ジャッキ62を作動させて、リングビーム2ひいてはそのリングビーム2を含むかご状フレーム4を荷重入力部として圧入荷重を付与してその土留め壁組立体1aを地中に圧入する。このときの圧入深さは、おおよそ土留め壁組立体1aの高さ相当分とする。
【0067】
なお、立坑を構築すべき地盤が軟弱地盤であって、且つクラムシェル65による掘削に伴い土留め壁組立体1aの外部と内部とで大きな水位差が生じるときには、その水位差を極力少なくするように土留め壁組立体1aの内部に水を補給しながら掘削を行うものとする。
【0068】
最下段となる一段目の土留め壁組立体1aが刃口リング10とともに所定量だけ地中に圧入されたならば、圧入装置60を一旦撤去し、それに続いて一段目の土留め壁組立体1aの上に二段目の土留め壁組立体1bを継ぎ足すようにして組み立てながら結合する。この二段目の土留め壁組立体1bの組み立ておよび結合は、図2に示したフレーム6,6‥を基本要素とするかご状フレーム4を組み立てた上で、その外周面側にプレートセグメント5a,5a‥の接合をもってスキンプレート5を組み立てる。このスキンプレート5の組み立てには、先に図5〜7に基づいて説明したように上下の土留め壁組立体1a,1b相互間でのスキンプレート5,5同士(プレートセグメント5a,5a同士)の接合を含むものとし、したがって二段の土留め壁組立体1a,1b相互間にまたがって配置されることになるスキンプレート5は図5〜7に示すようになおも刃口リング10を含む最下段(一段目)の土留め壁組立体1aに連結されているだけである。
【0069】
こうして、二段目の土留め壁組立体1bの組み立て作業を終えたならば、図10のように再び圧入装置60を正規位置にセットした上で、同様にクラムシェル65による掘削と、圧入装置60による地中への圧入とを繰り返す。
【0070】
以下同様にして、圧入装置60の一時撤去、二段目の土留め壁組立体1bの上への三段目の土留め壁組立体1cの組み立ておよび結合、圧入装置60の再セット、圧入沈設動作を繰り返して、図11に示すように三段の土留め壁組立体1a〜1cからなる土留め壁1を地中に構築する。
【0071】
以上のような各段の土留め壁組立体1a〜1cの圧入沈設過程において、圧入装置60よる圧入力は、各段の土留め壁組立体1a〜1cを形成しているところの剛性の高いかご状フレーム4を介して刃口リング10に伝達され、剛性に低い波形鋼板製のプレートセグメント5a,5a‥を単位要素とするスキンプレート5には圧入荷重が直接加わることがないので、圧入途中でスキンプレート5が座屈もしくは変形するようなことがなく、剛性の低いスキンプレート5を使用しながらも土留め壁1を必要深度まで圧入することができる。
【0072】
すなわち、図5〜7のほか図11に示したように、スキンプレート5は刃口リング10を含む最下段の土留め壁組立体1aに連結されているだけであり、三段の土留め壁組立体1a〜1cにまたがるように配置されているスキンプレート5は最下段の土留め壁組立体1aを構成しているかご状フレーム4に引っ張られるようにして圧入される。しかも、上記の引張力によってスキンプレート5が上下方向に伸びようとしても、図5〜7に示すように各段のかご状フレーム4を形成しているリングビーム2の直下に上下の土留め壁組立体1a〜1c相互間でスキンプレート5,5同士を接合している片締めボルト29,32が位置しているので、そのリングビーム2と片締めボルト29,32との当接によってもまたスキンプレート5,5‥が下方に引き込まれることになるので、スキンプレート5,5‥が上下方向に伸びを生ずることはない。
【0073】
上記のようにして土留め壁1が構築されたならば、圧入装置60を撤去する。この状態で、図12に示すように、コンクリートを水中打設して立坑の坑底に坑版コンクリート67を構築する。坑版コンクリート67が完全に固化してしたならば、土留め壁1内の水拭きを行った上で、同図に示すように最下段の土留め壁組立体1a以外の各土留め壁組立体1b,1cのかご状フレーム4を分解しながら撤去する。その結果として、同図に示すように最下段の土留め壁組立体1a以外の上段側にはスキンプレート5,5のみが残されることになり、これによってスキンプレート5,5を主要素とする土留め壁1によって立坑が構築される。なお、スキンプレート5,5を主要素とする土留め壁1は一旦施工してしまえばそれのみで自立可能であるとともに、周囲の土水圧に対して十分に対抗することができるようになる。
【0074】
この場合、図12に示すように、上段側のかご状フレーム4,4が撤去されたことによって立坑の実有効空間を可及的に大きく確保でるようになる。また、分解して撤去したかご状フレーム4,4は繰り返し使用することが可能となる。
【0075】
図13,14は、上記構造を前提として、継ぎ足すべき土留め壁組立体1a,1b,1c‥の段数を増やしてより深度の大きな立坑を構築する場合の例を示し、同図左半部は施工時の状態を、同図右半部は最下段以外の各土留め壁組立体1b,1c‥のかご状フレーム4を撤去した状態を示している。この場合にも、図11,12に示したものと全く同様の効果が得られる。
【0076】
ここで、図15〜図18には先に述べたかご状フレーム4,4‥を多段に積み重ねてなるかご状フレーム集合体のほかそれの変形例での斜視図とその展開図をそれぞれに示す。
【0077】
図15は、図2に示したフレーム6,6‥を構成要素とするかご状フレーム4の場合であり、同図から明らかなようにクロスビーム3,3‥が縦方向で一列に揃うことになる。
【0078】
これに対して図16では、クロスビーム3,3‥が縦方向で一列に揃うことがないように、クロスビーム3,3‥の位置を周方向で半ピッチづつずらして、いわゆる千鳥状の配置としてある。また、図17では、同様にクロスビーム3,3‥が縦方向で一列に揃うことがないように、下から二段目および上から二段目についてのみクロスビーム3,3‥の位置をわずかにずらしてある。
【0079】
さらに、図18ではごく一部のクロスビーム3A,3Aについてのみその位置をずらして、領域Fの面積のみを他に比べて拡大化してものである。
【0080】
このようなかご状フレーム集合体の構造としても、先の第1の実施の形態と同様の効果が得られる。特に、図18の場合には、例えば後処理として立坑に対して横孔を交差させるような場合であって、且つ領域Fに相当する部分のスキンプレート5を部分的に切除する必要がある場合に好都合となる。
【0081】
図19〜22は本発明の第2の実施の形態を示す図で、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0082】
この実施の形態では、図19〜21に示すように、各段の土留め壁組立体1a〜1cにおけるかご状フレーム4をリングビーム2とともに構成することになるクロスビーム73の位置をリングビーム2の内側に移動させ、リングビーム2の内側のフランジ部15にてクロスビーム73と連結する一方、上下の土留め壁組立体1a〜1c相互間ではそのクロスビーム73,73同士をボルト・ナット75にて連結するようにしたものである。なお、クロスビーム73はリングビーム2と同じH形鋼にて形成される。また、図20は図19のM3部の拡大図を、図21はクロスビーム73がない同等部位の拡大図をそれぞれ示している。
【0083】
そして、この第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、一段分の土留め壁組立体1a〜1cを積み上げる毎にその土留め壁組立体1a〜1cの高さに相当する分だけ地中に圧入沈設することになるが、その際には最上段のリングビーム2およびクロスビーム73を荷重入力部として圧入力を加えるものとする。
【0084】
この後、土留め壁組立体1a〜cをもって土留め壁1が所定深度まで圧入沈設されたならば、図22に示すように最下段の土留め壁組立体1a以外の各土留め壁組立体1b,1cのかご状フレーム4を分解して撤去する。
【0085】
図23,24は、図19〜22の構造を前提として、継ぎ足すべき土留め壁組立体1a,1b,1c‥の段数を増やしてより深度の大きな立坑を構築する場合の例を示し、同図左半部は施工時の状態を、同図右半部は最下段以外の各土留め壁組立体1b,1c‥のかご状フレーム4を撤去した状態を示している。この第2の実施の形態および変形例の場合にも、第1の実施の形態とものと全く同様の効果が得られる。
【0086】
ここで、先に述べたスキンプレート5を形成することになるプレートセグメント5aとして使用した波形鋼板の板圧を一定とした場合の土留め壁1の外径(m)、周囲の壁面の面積(m2/m)、波形鋼板の質量(kg)、壁面積当たりの質量(kg/m2)のほか、上記壁面積当たりの質量を外径で除したものを「径とのパラメータ(kg/m2/m)」として表1に示した。
【0087】
【表1】

【0088】
同図から明らかなように、径とのパラメータ(kg/m2/m)は50以下、望ましくは45以下となるように各々の条件を設定するものとする。
【0089】
なお、上記の各実施の形態では円筒状の土留め壁1について例示しているが、平面視にて例えば楕円形もしくは小判形をなす土留め壁についても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係る立坑の構築方法に使用される土留め壁の概略構造を示す図で、(A)はその平面図、(B)はその正面図。
【図2】図1に示す土留め壁の詳細を示す図で、(A)は図1の(A)の要部拡大図、(B)は同図(A)のD−D線矢視図。
【図3】(A),(B)共に図1の要部の斜視図。
【図4】図2の(B)の要部拡大断面図。
【図5】図1の(B)のA−A線に沿う拡大断面図。
【図6】図1の(B)のB−B線に沿う拡大断面図。
【図7】図1の(B)のC−C線に沿う拡大断面図。
【図8】図5〜7の要部の詳細を示す図で、(A)は図5のM1部の拡大図、(B)は図6のM2部の拡大図。
【図9】図8の(A)に示す片締めボルトの詳細を示す分解図。
【図10】図1に示した土留め壁の圧入沈設に使用される圧入装置の説明図。
【図11】図1に示した土留め壁の使用を前提とした立坑の構築過程の説明図。
【図12】図1に示した土留め壁を使用して構築した立坑断面説明図。
【図13】図11の構造の変形例として土留め壁組立体の段数を増やした場合の説明図。
【図14】図13の平面図。
【図15】(A)は図1の土留め壁に使用されているかご状フレーム集合体の斜視図、(B)はその展開説明図。
【図16】図15に示したかご状フレームの変形例を示す図で、(A)はその斜視図、(B)はその展開説明図。
【図17】図15に示したかご状フレームの別の変形例を示す図で、(A)はその斜視図、(B)はその展開説明図。
【図18】図15に示したかご状フレームのさらに別の変形例を示す図で、(A)はその斜視図、(B)はその展開説明図。
【図19】本発明の第2の実施の形態を示す図で、土留め壁の要部断面説明図。
【図20】図19のM3部の拡大図。
【図21】クロスビームが立設されていない部分であって且つ図20と同等部位の拡大図。
【図22】図19に示した土留め壁の立坑慣性後の要部断面説明図。
【図23】図19の構造の変形例として土留め壁組立体の段数を増やした場合の説明図。
【図24】図23の平面図。
【符号の説明】
【0091】
1…土留め壁
1a,1b,1c…土留め壁組立体
2…リングビーム(横方向の桁部材)
3…クロスビーム(縦方向の桁部材)
4…かご状フレーム
5…スキンプレート
5a…プレートセグメント
6…フレーム
8…周方向接合部
9…上下方法接合部
10…刃口リング(刃口部)
53…クロスビーム(縦方向の桁部材)
60…圧入装置
73…クロスビーム(縦方向の桁部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の土留め壁組立体を単位要素としてこれを複数段にわたり継ぎ足して組み立てた土留め壁の内部を掘削しながらその土留め壁を地中に圧入沈設して立坑を構築する方法であって、
上記土留め壁組立体は複数の桁部材を格子状に組み合わせてなるかご状フレームとその外周面を覆うスキンプレートを備えていて、
最下段の土留め壁組立体では上記スキンプレートをかご状フレームに接合するとともに、それ以外の土留め壁組立体では上記スキンプレートをかご状フレームに接合することなく上下の土留め壁組立体相互間においてスキンプレート同士を接合した状態で、上記かご状フレームを荷重入力部として土留め壁を所定深度まで地中に圧入沈設し、
上記土留め壁の圧入沈設後にスキンプレートのみを土留め壁として残して上記かご状フレームを撤去することを特徴とする立坑の構築方法。
【請求項2】
上記単位要素分の土留め壁組立体を組み立てながら下段側の土留め壁組立体に積み重ねるように連結して継ぎ足し、
このような単位要素分の土留め壁組立体の組み立てと連結のほか、上記掘削および単位要素分の圧入沈設動作を繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の立坑の構築方法。
【請求項3】
上記土留め壁組立体の組み立ておよび連結には、
円周方向で予め複数に分割されているフレームを分解可能に結合してかご状フレームを組み立てる工程と、
このかご状フレームの外周面側にスキンプレートを配置しながら、上下の土留め壁組立体相互間においてスキンプレート同士を接合する工程と、
を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の立坑の構築方法。
【請求項4】
上記スキンプレートは、かご状フレームの外形の曲率に合わせて予め曲げ加工を施した単一もしくは複数のプレートセグメントをもって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の立坑の構築方法。
【請求項5】
上記スキンプレートは、円周方向で予め複数に分割されているプレートセグメントを分解可能に連結したものであって、
上記土留め壁組立体の組み立ておよび連結には、
上記かご状フレームの外周面側にプレートセグメントを配置しながら、かご状フレームの円周方向および上下の土留め壁組立体相互間においてプレートセグメント同士を接合する工程を含んでいることを特徴とする請求項3に記載の立坑の構築方法。
【請求項6】
上記最下段の土留め壁組立体のかご状フレームはその下端部に刃口部を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の立坑の構築方法。
【請求項7】
上記スキンプレートまたはプレートセグメントは垂直断面が波形状をなす波形鋼板であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の立坑の構築方法。
【請求項8】
上記スキンプレートまたはプレートセグメントの板圧を一定とした場合に、そのスキンプレートまたはプレートセグメントをもって形成される土留め壁の周囲の壁面の単位面積当たりの質量を土留め壁の外径で除した値が50以下となるように設定することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の立坑の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−125055(P2006−125055A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314937(P2004−314937)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)