説明

立管洗浄装置および立管洗浄方法

【課題】高層マンション等の共用立管の内部洗浄を容易かつ短時間に行える立管洗浄装置および立管洗浄方法を提供する。
【解決手段】先端に洗浄ノズル15を設けた高圧ホース14を共用立管20の上部から管内に挿入し、洗浄ノズル15を最下部まで到達させる。そして、高圧流体の供給源11から接続ホース16を介して高圧水を高圧ホース14に供給し、高圧ホース14をその中心軸回りに回転させるとともに、洗浄ノズル15から高圧水を噴射しながら、ホース進退装置13とホースガイド19により垂直上方に螺旋状に洗浄ノズル15を共用立管20の最上部まで移動させて、立管内壁の付着物、堆積物、錆等を粉砕あるいは剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高層住宅、高層ビル等に配された立管の内壁を洗浄するための立管洗浄装置および立管洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンション等の大規模な集合住宅には、各住戸の流し台や洗面所等に配された個別の排水管を介して排出された生活廃水を一括して合流させ、それを公設の汚水枡や下水本管へと導くための排水管(共用部排水管、あるいは立管ともいう)が、マンションの外壁部に露出した状態あるいは壁内部に埋設された状態で、上層階から下層階に渡って配設されている。このような排水管は、多世帯からの日常的な生活廃水等により管の内側に汚れ(例えば、スライムや錆、水垢等)が付着するため、定期的に排水管の洗浄を行う必要がある。特に近年における生活スタイルの変化に伴ない、油脂分の使用量が増加していることによる排水管への油脂分の付着や、結晶化した尿石による流通不良あるいは排水管づまりが増大し、それが悪臭の原因となる等の弊害が発生している。
【0003】
排水管内の付着物を取り除き、排水管を洗浄する方法として一般的に採用されるものには、例えば特許文献1に記載されているように高圧洗浄機より洗浄用ホースを排水管に挿入し、その先端のノズルから高圧水(ジェット水流)を噴出させて、管内の堆積物、錆等を粉砕、剥離させる高圧洗浄法、ワイヤーの先端部を特殊形状にし、ワイヤー自体を回転させながら管の中に挿入して清掃するワイヤー洗浄法等がある。また、管内の汚れ状況に応じて、ワイヤー洗浄法と高圧洗浄法とを併用する。
【0004】
なお、薬品を用いた洗浄方法もあるが、通常、強力な塩素系薬品を用いるため、浄化槽が設置されているマンションでは水質を悪化させる等、環境破壊を引き起こすおそれあり、特別な場合以外は採用されない。
【0005】
【特許文献1】特開2000−345600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の高圧洗浄法は、排水管(横管)の洗浄に適した方法であり、それを排水管(立管)の洗浄に適用した場合、例えば、立管の下部からホースを挿入して高圧洗浄する方法は、低・中層マンションの立管洗浄に使用できても、作業対象となる立管の垂直高が高い近年の超高層ビルや高層マンションにおける立管洗浄には対応できないという問題がある。また、このことを理由に、高層マンション等における立管の洗浄を長期間、放置あるいは断念する場合もあり、マンション管理上の問題となり得る。
【0007】
一方、立管の上部からホースを挿入して高圧洗浄する方法も考えられるが、通常、立管は下層階が必然的に詰まりやすく、上部からの洗浄法では、洗浄物の落下により却って立管下部の詰まりや汚れの状態を悪化させることになる。また、高圧ノズルから距離がある排水管の奥側部分ほど、水圧の低下により汚れが落ちにくくなる。そこで、各階ごとに掃除口にホースを入れて引き上げながら管内部を洗うのであるが、洗浄装置を各階に持ち込む必要があり作業に手間がかかり過ぎる上、高層部になるほど作業そのものに危険性を伴うため、作業員の足場の確保等に余分な時間と費用を要するという問題がある。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたもので、高層マンション等における共用立管の内部洗浄を容易かつ短時間に行える立管洗浄装置および立管洗浄方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は高圧ホースの先端に複数の噴出孔を穿設した洗浄ノズルを設け、その洗浄ノズルから噴射する高圧流体で立管内を洗浄する立管洗浄装置であって、上記高圧ホースに対して、その中心軸回りの回転を与える回転付与手段と、上記回転する高圧ホースを、上記立管内において垂直方向に進退させる進退手段とを備え、上記回転付与手段と進退手段とによって、上記複数の噴出孔のうち特定の噴出孔を上記立管の内壁に近接させながら上記洗浄ノズルを上記立管内で螺旋状に進行させることで、上記特定の噴出孔からの上記高圧流体の噴射圧によって上記立管の内壁の付着物を粉砕あるいは剥離することを特徴とする。
【0010】
例えば、上記洗浄ノズルを上記立管の内壁に沿って下部側から上部側へ向けて垂直上方に螺旋状に進行させることで、上記立管の内壁を下部から上部の順に洗浄する。また、例えば、上記複数の噴出孔は上記洗浄ノズルの互いに正反対となる位置に穿設された2つ噴出孔からなり、一方の噴出孔の径が他方の噴出孔の径よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る立管洗浄方法は、高圧流体を噴射する径の異なる複数の噴出孔を穿設した洗浄ノズルを先端に取り付けた高圧ホースを、立管内において、その高圧ホースの中心軸回りに回転するとともに、その回転する高圧ホースを前記立管内において垂直方向に進退させることによって、前記複数の噴出孔のうち特定の噴出孔を前記立管の内壁に近接又は接触させ、かつ前記洗浄ノズルを前記立管内で螺旋状に進行させることで、前記特定の噴出孔からの前記高圧流体の噴射圧によって前記立管の内壁の付着物を粉砕あるいは剥離することを特徴とする。
【0012】
前記高圧ホースを前記立管の上端から下端に向けて垂下させ、先端の洗浄ノズルが立管の最下部に達したら、高圧ホースを、立管内において、その高圧ホースの中心軸回りに回転させるとともに、先端の洗浄ノズルから高圧流体を噴射させ、前記高圧ホースを引き上げることにより、前記洗浄ノズルを前記立管内で螺旋状に上昇させる構成としてもよい。
【0013】
前記立管の上端から下端まで垂下した紐状体と、前記高圧ホースの先端の洗浄ノズルとを連結し、高圧ホースをその中心軸回りに回転させるとともに、先端の洗浄ノズルから高圧流体を噴射させ、前記紐状体を引き上げることにより、前記洗浄ノズルを前記立管内で螺旋状に上昇させる方法としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る立管洗浄装置および立管洗浄方法によれば、まず、洗浄ノズルに設けた径の異なる第1噴出孔と第2噴出孔とから同時に高圧流体を噴出させる。大きい径の噴出孔からの噴射の反力が大きいので、洗浄ノズルの小さい径の噴出孔側が、立管の一方の内壁に近接、あるいは摺接する。近接又は摺接した側の内壁は、小さい径の噴出孔からの高圧流体で洗浄される。高圧ホースが回転し、かつ、進行しているので、立管の内壁は小さい径の噴出孔からの高圧流体で螺旋状に洗浄される。洗浄ノズルを、立管内の下層部から上層部に向けて垂直上方に進行させることで、立管の内壁の全面をムラなく洗浄できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態例に係る立管洗浄装置の全体構成を示している。図1に示す立管洗浄装置10は、超高層ビルや高層マンション等の高層建築物1に設けられた雑排水用の共用立管20の内部・内壁洗浄に対応可能な装置であり、高圧流体(例えば、水を使用するが、その他、温水や環境に悪影響を与えない液体、あるいは空気等の気体を使用することも可能である。)の供給源11と、ホース回転ユニット12と、ホース進退装置13と、高圧ホース14と、ホースガイド19と、高圧ホース14の先端に取り付けられた洗浄ノズル15とから構成される。
【0016】
一般に超高層ビルやマンション等の高層建築物1では、各居住者世帯やテナントの台所や便器、手洗器等の排水口から下方向に排水管が伸び、それが床下で横方向に伸びる横枝管に接続されており、各横枝管はさらに、高層建築物1の最上階から地上へ垂直方向に伸びる共用立管20に連なる構造になっている。この共用立管20は、例えば、口径が100〜200mmの硬質塩化ビニル等の樹脂からなり、各階層の横枝管を流れてきた排水を集中、合流させ、それを高層建築物1の敷地内の地下部等に配した横管40へと誘導している。横管40は、屋外公共ます4(あるいは、下水道本管)に接続されている。なお、図1では、各階層の横枝管や、共用立管20と並行して垂直に走る通気管等の図示を省略する。
【0017】
本発明の実施の形態例では、図1に示すように立管洗浄装置10の高圧流体の供給源11を地上に配置し、他のホース回転ユニット12やホース進退装置13等を、例えば、高層マンション等の高層建築物1の屋上に設置する。共用立管20の洗浄作業は、最初に高圧ホース14の先端部分(洗浄ノズル15が接続された側)を、共用立管20の最上部に設けられた開口部18より挿入し、洗浄ノズル15を最下部まで下ろした後、下層階から順次、上層階へ向けて、共用立管20内において高圧ホース14を垂直方向(図中の矢印a方向)へ移動させて行う。このように下層階側から上層階側へ順に洗浄を行うのは、共用立管20は下層階側が詰まりやすく、上部から洗浄したのでは、落下した洗浄物により共用立管20の下部が塞がれてしまい、洗浄効率や作業性が悪いからである。
【0018】
なお、後述するように、本発明の実施の形態例に係る立管洗浄装置10では、高圧ホース14に対して、その中心軸回りに回転を与えることができる構成になっているため、洗浄ノズル15を共用立管20の開口部18より挿入して最下部まで下ろす際にも、高圧ホース14を回転させながら洗浄ノズル15を下部へ送るという方法をとる。また、洗浄ノズル15にはランス3が接続されているため、洗浄ノズル15を降下させる際、このランス3が錘として機能する。その結果、共用立管20の内壁の付着物30の影響を受けずに、洗浄ノズル15を目的とする最下部まで円滑に下ろすことができる。
【0019】
排水経路の水平部分である横管40の内部洗浄は、従来の方法、すなわち屋外公共ます4等から高圧ホース14を押し込み、その高圧ホース14を軸方向へ回転させながら、図中の矢印b方向(共用立管20側)へ洗浄ノズル15を移動させて、その洗浄ノズル15の噴出孔から噴射された高圧流体で横管40内の洗浄を行う。
【0020】
本発明の実施の形態例に係る立管洗浄装置10の高圧流体の供給源11としては、例えば、空気圧モータによる圧縮空気の流体エネルギーを動力源とする高圧ポンプを搭載した高圧洗浄車を使用する。この高圧洗浄車は、例えば100MPa程度の高圧水を毎分120〜180リットル程度(最大200リットル/分)で吐出する能力を有するものである。また、高圧ホース14は、例えば、外径が10mm、内径が5mmのポリエチレン系の樹脂、あるいはウレタンSUS等の材質からなる(ブレードホース)。
【0021】
ここでは、洗浄ノズル15より噴射する高圧流体の水量や、洗浄現場で使用する高圧ホース14の総延長等に応じた、高圧ホース14内での圧力損失を考慮して、高圧流体の供給源11の圧力や接続ホース16の口径、材質等を設定する。特に「超高層マンション」と呼ばれる高層建築物1は、垂直方向の高さが60mを越えるため、接続ホース16は、屋上等へ引き回して使用する際、その自重に抗する剛性を有することが望ましい。
【0022】
ホース回転ユニット12は、高圧流体の供給源11から接続ホース16を介して高圧水を受け、それを高圧ホース14に供給すると同時に、公知の構成(例えばエアモータ等)によって高圧ホース14そのものに対し、その中心軸回りに回転を与える。このホース回転ユニット12は、車輪12aを有しているため、高圧ホース14が共用立管20内を進退するのに連れて、図中の矢印c方向に進退できるようになっている。また、この進退を軽快にするために、レールを敷設することが望ましい。なお、高圧ホース14を共用立管20内から一気に後退させる場合等において、その後退移動を速めるために、必要に応じてウィンチ17を付加してもよい。
【0023】
共用立管20を洗浄する際、上述したホース回転ユニット12による高圧ホース14の回転と相俟って、高圧ホース14を共用立管20内に円滑に進入させ、あるいは後退させるため、立管洗浄装置10には、ホース進退装置13とホースガイド19が配されている。このホース進退装置13は、例えば、図2に示すように2個のゴム製の支持車輪13a,13bと1個の送り車輪13cとが設けられ、これらの間に回転する高圧ホース14が挿通される。各車輪は、ホース進退装置13の図示しないフレームに支持されている。3個の車輪13a,13b,13cはすべて高圧ホース14に適当な圧力で接触しているが、そのうち、下側の2個の支持車輪13aと13bは、その回転軸が高圧ホース14の中心軸14aと平行であり、高圧ホース14を下から支える。その結果、高圧ホース14は、これら2個の車輪間の窪みに入り、安定して保持される。
【0024】
送り車輪13cは、高圧ホース14と斜めに接触するようになっている。この送り車輪13cを支持する軸13dは回動可能で、送り車輪13cは、図3(a)に示すような接触角αが鋭角になる位置から、図3(b)に示すように接触角αが鈍角になる位置との間で適当な接触角に設定できるようになっている。具体的には、送り車輪13cがα<90゜の角度で高圧ホース14に接触すると、高圧ホース14は、図3(a)の左から右に向かって移動する。一方、送り車輪13cが、図3(b)に示すようにα>90゜の角度で高圧ホース14に接触すると、高圧ホース14は、同図の右から左に向かって移動する。
【0025】
このように、高圧ホース14の回転方向を変更することなく、送り車輪13cの高圧ホース14に対する接触角αを変更するだけで、高圧ホース14を共用立管20内に進入させる方向、あるいは後退する方向へ自在に送ることができる。また、接触角αを増減することによって、前進・後退の速度を増減可能となる。
【0026】
高圧ホース14は、管内の水圧に耐えるために所定の剛性を有していることから、ホース自身を鋭角等の急峻な角度で折り曲げることは難しい。そこで、ホース進退装置13の下流側であって、共用立管20の開口部18の近傍には、図1に示すように複数個のローラー19a〜19dからなるホースガイド19が配置されている。このホースガイド19は、高圧ホース14を開口部18へ挿入し、共用立管20内を進行させる際、あるいは洗浄作業のために共用立管20内を徐々に引き上げる際に、高圧ホース14に適当な曲がり角を持たせるための手段(ガイド部材)として機能する。
【0027】
具体的には、ホースガイド19の4個のローラー19a〜19dが、開口部18の手前で高圧ホース14を支持し、その高圧ホース14が開口部18の近傍で適当な曲率を有する円弧を描いて、共用立管20内へ円滑に挿入され、あるいは共用立管20から引き上げることができるようになっている。その際、ローラー19a〜19dは、ホース進退装置13による高圧ホース14の前進・後退を妨げない程度に高圧ホース14を支持するとともに、作業環境に応じた最適な曲率を得るため、個々のローラーがホース送り方向および垂直方向へ所定距離だけ移動可能となっている。
【0028】
図4は、図1に示す立管洗浄装置におけるイ部の拡大図であり、本実施の形態例に係る立管洗浄装置における立管の洗浄方法を模式的に示している。また、図5は、高圧ホースの先端に取り付けられた洗浄ノズルの斜視図である。本実施の形態例に係る立管洗浄装置10で使用する高圧ホース14の先端部に接続された洗浄ノズル15は、高圧水を噴射するために、図5に示すようにその先端近傍(ノズルチップ)に穴径の異なる第1噴出孔15aと第2噴出孔15bを有する。第1噴出孔15aと第2噴出孔15bの双方とも、洗浄ノズル15の中心軸15cに直交する方向に噴出孔するとともに、中心軸15cに対して互いに180度異なる位置関係でノズルチップに穿設されている。
【0029】
このように、第1噴出孔15aと第2噴出孔15bが洗浄ノズル15の中心軸15cに対して直交する方向を向く構成とすることで、共用立管20の内壁に対して効率的に高圧水を噴射でき、洗浄力が最も強くなる。ノズルチップは、洗浄作業環境、例えば、立管の管径や付着した固形物等に応じて洗浄ノズル15に着脱自在な差し替え式になっている。また、ノズルチップを交換することによって、第1噴出孔15aと第2噴出孔15bの径が異なる組合せのものを使用することができるので、種々の開口径の組み合わせを持ったノズルチップを用意して、洗浄する立管の径や高圧水の吐出圧、吐出量等に応じて適当なものを適宜、選択可能となる。
【0030】
なお、第1噴出孔15aと第2噴出孔15bの開口方向は、上記の例に限定されるものではなく、例えば、洗浄ノズル15の中心軸15cに対してやや後方(共用立管20内での洗浄ノズル15の進行方向と逆の方向)に傾斜させる構成としてもよい。
【0031】
さらに、洗浄ノズル15の噴出孔数も1対の第1噴出孔と第2噴出孔による2個に限定されず、例えば、2対、合計4個の噴出孔を形成する等、複数対の噴出孔を設けることも可能である。このように噴出孔数が多くなると、それに伴いノズル全体としての吐出水量が増加するので、管壁の洗浄速度も向上するが、吐出水量の増加は、高圧流体の供給源11の能力で許容される範囲に限定されることになる。
【0032】
次に、図4等を参照しながら、本実施の形態例に係る立管洗浄装置10における共用立管20の洗浄方法について説明する。上述したように、高圧ホース14とともに洗浄ノズル15を共用立管20内の目的とする最下部まで下降させた後、その洗浄ノズル15のノズルチップに正反対の向きに設けられた第1噴出孔15aと第2噴出孔15bから高圧水を噴射して洗浄を開始する。供給源11より高圧ホース14を介して供給された高圧水は、図4に示すように第1噴出孔15aと第2噴出孔15bの双方から同時に噴射されるが、ここでは、第2噴出孔15bの径が第1噴出孔15aの径よりも大きいため、第2噴出孔15bからの噴出水Aの水量が第1噴出孔15aからの噴出水Bの水量よりも多くなる。
【0033】
洗浄ノズル15は、水平方向において、上記の両噴出孔15a、15bから噴出される水が共用立管20の内壁に衝突して得た反力のバランスした位置、すなわち、共用立管20の一方の管壁(図4では第1噴出孔15aのある右側の管壁)に近接又は接触した位置に移動する。また、垂直方向には、ホース進退装置13によって共用立管20内の高圧ホース14に対して付与された引き上げ力と、高圧ホース14内部に滞留する高圧水の重量とホースの自重、さらに洗浄ノズル15とランス3の自重とで決まる位置に洗浄ノズル15が移動する。
【0034】
このとき高圧ホース14には、上述したようにホース回転ユニット12によって、その中心軸回りに回転が与えられているため、洗浄ノズル15も高圧ホース14と一緒に回転する。そして、洗浄ノズル15の回転により噴出孔15a,15bからの高圧水の噴射方向も変化する。その結果、洗浄ノズル15は共用立管20の内壁に近接した状態で円軌道を描き、さらに、この回転に対してホース進退装置13により洗浄ノズル15と高圧ホース14とに引き上げる力(共用立管20内を上昇させる力)が加わるので、結局、洗浄ノズル15は、図4に示すように、共用立管20内を垂直上方に螺旋状に進む。したがって、管壁に近い噴出孔15aから噴射された噴出水Aの噴射圧によって、共用立管20の内壁の付着物30(例えば、スライムや錆等のスケール)の粉砕や剥離が行われる。同時に、高圧ホース14の回転速度と、ホース進退装置13による引き上げ速度とを適当に設定することによって満遍なく洗浄ができ、洗浄ムラが生じるのを回避できる。
【0035】
洗浄ノズル15からの噴出水で粉砕等された付着物30は、噴出水とともに、そのまま共用立管20内を垂直に落下し、図1に示すように、共用立管20の最下部に接続された横管40方向へと流される。そして、最終的に屋外公共ます4に達し、そこに集積されたスケール31は、あらかじめ配車された吸引車5によって回収される。この屋外公共ます4は、スケール31を除去した後の排水を、図1において矢印で示す方向に流すため、図示しない市町村の公共の排水管、排水施設へと繋がっている。
【0036】
本発明の実施の形態例に係る立管洗浄装置10では、洗浄ノズル15が共用立管20内において螺旋状に後退する(垂直方向へ引き上げられる)と、ホース回転ユニット12も高圧ホース14とともに共用立管20から遠ざかる方向へ移動するが、ホース進退装置13は固定されている。したがって、高圧ホース14の共用立管20内からの引上げにより、ホース回転ユニット12が所定距離、後退した時点で洗浄を一旦中止し、引き抜いた分の高圧ホース14を取り外してホースの全長を短くしてからホース回転ユニット12を前進させた後、再び上記と同じ洗浄作業を開始する。そして、洗浄ノズル15が共用立管20の最上端に達したところで洗浄作業を完了する。この方法は、高層建築物1の屋上等、限られたスペースで立管洗浄装置10を用いて行う洗浄作業に有効である。
【0037】
以上説明したように、高圧水を供給可能な高圧ホースの先端に洗浄ノズルを設け、それをマンション等の共用立管の最上部から挿入して最下部へ到達させた後、高圧水を噴射しながら洗浄ノズルを螺旋状に回転させて立管の最上部まで引き上げ、移動させることで、立管の下部側から上部側へと順にその内壁の付着物、堆積物、錆等を簡単かつ迅速に粉砕あるいは剥離することができる。また、共用立管の垂直下部側から洗浄を開始し、付着物で狭まっていた立管の内腔を広げた後に、その上部の汚れ等を落とす手順をとることで、粉砕等されて上階から落下した付着物が再び立管を詰まらせることを回避でき、ムラのない立管洗浄が可能となる。
【0038】
また、高圧ホースを共用立管最上部の開口部から挿入し、立管内を進行あるいは後退させる際に、その開口部において高圧ホースに適当な曲がり角を持たせるためのガイド部材を開口部の近傍に配することで、洗浄中に作業員が高圧ホースを保持等する必要がなく、安全に洗浄作業を行うことができる。
【0039】
なお、共用立管20の内壁洗浄は上記の構成をとる立管洗浄装置10による方法に限定されず、例えば、図6に示すように、先端に洗浄ノズル15を配した高圧ホース14を、高層マンション等の高層建築物1に配された共用立管20の最下部43から挿入し、さらに洗浄ノズル15にワイヤやロープ等の紐50を結束するとともに、その紐50によって、共用立管20の最上部にある開口部18を通して、洗浄ノズル15を垂直上方に移動可能に支持する構成としてもよい。なお、図6において、高圧流体の供給源やホース回転ユニット、ホース進退装置等の図示を省略する。
【0040】
図6に示す構成では、高層建築物1の屋上の開口部18近傍に滑車53を配し、その滑車53を支点として、巻き取り装置55で紐50を矢印方向へ徐々に巻き取ることで、共用立管20内で高圧ホース14を洗浄ノズル15とともに垂直に起立させた状態を維持しながら、高圧ホース14に水圧をかけて洗浄ノズル15から高圧流体を噴出させ、紐50を徐々に引き上げることで共用立管20内において洗浄ノズル15を垂直上方へ移動させることができる。このような構成とすることで、共用立管20内で高圧ホース14が自重に負けて座屈等することもないため、ムラなく立管内部の付着物30等の粉砕あるいは剥離が可能となる。また、ホース回転ユニット12と、ホース進退装置13とを屋上に上げる必要もなくなり、接続ホース16も短くすることができる。
【0041】
なお、この例においても洗浄作業の際に高圧ホース14は、その中心軸回りに回転し、洗浄ノズル15からは高圧水が噴射されると同時に、その洗浄ノズル15が螺旋状に回転して共用立管20の内部を上昇するが、この回転により紐50が捩れるのを防止するため、例えば、洗浄ノズル15と紐50との結合部に互いに自在に回転するような撚り戻しを設けるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態例に係る立管洗浄装置の全体構成を示す図である。
【図2】実施の形態例に係る立管洗浄装置のホース進退装置の要部構成を示す図である。
【図3】実施の形態例に係る立管洗浄装置のホース進退装置におけるホース送り・後退機構を示す図である。
【図4】実施の形態例に係る立管洗浄装置における洗浄ノズルによる洗浄方法を模式的に示す図である。
【図5】実施の形態例に係る立管洗浄装置で使用する洗浄ノズルの斜視図である。
【図6】立管洗浄装置の他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 高層建築物(超高層ビルや高層マンション)
3 ランス
4 屋外公共ます
5 吸引車
10 立管洗浄装置
11 高圧流体の供給源
12 ホース回転ユニット
13 ホース進退装置
14 高圧ホース
15 洗浄ノズル
15a 第1噴出孔
15b 第2噴出孔
18 開口部
19 ホースガイド
19a〜19d ローラー
20 共用立管
30 付着物
31 スケール
40 横管
50 紐
53 滑車
55 巻き取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ホースの先端に径の異なる複数の噴出孔を穿設した洗浄ノズルを設け、その洗浄ノズルから噴射する高圧流体で立管内を洗浄する立管洗浄装置であって、
前記高圧ホースに対して、その中心軸回りの回転を与える回転付与手段と、
前記回転する高圧ホースを、前記立管内において垂直方向に進退させる進退手段とを備え、
前記回転付与手段と進退手段とによって、前記複数の噴出孔のうち特定の噴出孔を前記立管の内壁に近接又は接触させながら前記洗浄ノズルを前記立管内で螺旋状に進行させることで、前記特定の噴出孔からの前記高圧流体の噴射圧によって前記立管の内壁の付着物を粉砕あるいは剥離することを特徴とする立管洗浄装置。
【請求項2】
前記複数の噴出孔は前記洗浄ノズルの互いに正反対となる位置に穿設された2つ噴出孔からなり、一方の噴出孔の径が他方の噴出孔の径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の立管洗浄装置。
【請求項3】
高圧流体を噴射する径の異なる複数の噴出孔を穿設した洗浄ノズルを先端に取り付けた高圧ホースを、立管内において、その高圧ホースの中心軸回りに回転するとともに、その回転する高圧ホースを前記立管内において垂直方向に進退させることによって、前記複数の噴出孔のうち特定の噴出孔を前記立管の内壁に近接又は接触させ、かつ前記洗浄ノズルを前記立管内で螺旋状に進行させることで、前記特定の噴出孔からの前記高圧流体の噴射圧によって前記立管の内壁の付着物を粉砕あるいは剥離することを特徴とする立管洗浄方法。
【請求項4】
前記高圧ホースを前記立管の上端から下端に向けて垂下させ、先端の洗浄ノズルが立管の最下部に達したら、高圧ホースを、立管内において、その高圧ホースの中心軸回りに回転させるとともに、先端の洗浄ノズルから高圧流体を噴射させ、前記高圧ホースを引き上げることにより、前記洗浄ノズルを前記立管内で螺旋状に上昇させることを特徴とする請求項3記載の立管洗浄方法。
【請求項5】
前記立管の上端から下端まで垂下した紐状体と、前記高圧ホースの先端の洗浄ノズルとを連結し、高圧ホースをその中心軸回りに回転させるとともに、先端の洗浄ノズルから高圧流体を噴射させ、前記紐状体を引き上げることにより、前記洗浄ノズルを前記立管内で螺旋状に上昇させることを特徴とする請求項3記載の立管洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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