説明

竪型ローラミル

【課題】 低品質な石炭や石油コークスについても高い破砕効率を示し、微粉化率を大きく高めることができると共に、低負荷操業時にも振動の少ない安定した運転が可能な竪型ローラミルを提供する。
【解決手段】 複数個の粉砕ローラ20の各外周面に、ローラ回転方向に対して一方の方向へ傾斜した第1グループaのスリット溝21と他方の方向へ傾斜した第2グループbのスリット溝21とを混在して形成する。駆動テーブル10においては、粉砕ローラ20との間に原料を噛み込んで破砕する環状のテーブル破砕面に、テーブル回転方向と交差する方向の第3のスリット溝を回転方向に所定ピッチで形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電用ボイラーにおけるボイラー燃料として使用される石炭、石油コークス等の微粉砕に適した竪型ローラミルに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の原油価格の高騰に伴い、原油以外の燃料の見直しが始まっている。一つは石炭であり、今一つは石油コークスである。石油コースは原油精製の最終熱分解工程で副生される炭素製品である。燃焼効率は、原油より低いが石炭より高く、何よりも生産コストが低く安定しているために、重油からの切り替えが進んでいる。この石油コークスは重油と混合で使用されるのが通例であり、重油価格高騰のあおり受けて石油コークスの混合比率を大きくする傾向が高まっている。
【0003】
石炭及び石油コークスの欠点は重油よりも燃料効率が低く、CO2 排出量が多いことである。この欠点を解消するためには、石炭も石油コークスも微粉末に粉砕して使用するのがよいとされており、粉末粒径が小さいほど燃焼効率が高まるために、微粉砕技術の向上が大きな技術課題となっている。
【0004】
発電用ボイラーにおける原料粉砕機としては、竪型ローラミルが多用されている。竪型ローラミルは、水平回転する1個の駆動テーブルと、その回転中心線を包囲するように駆動テーブル上に配置された複数個の粉砕ローラとにより構成されており、ミル中央からテーブル中心部上に供給された粉砕原料が遠心力により外方へ搬送されローラとテーブル間に噛み込まれることにより、粉砕原料を次々と粉砕していく。粉砕された原料は搬送気流により上方に気流搬送されて分級機により分級され、必要とする粒度の原料が捕捉されて後段へ搬送され、それより大きい粒度の原料は再度ミル内部へ返送される。
【0005】
竪型ローラミルにおける粉砕ローラは、駆動テーブルの回転に伴って回転する従動輪であり、テーブル回転中心に向かって外周面が漸次縮径する円錐台形状のものや、二輪車のタイヤのように外周面が湾曲したタイヤ型のものが使用されている。タイヤ型のローラは、そのローラが嵌合する環状の湾曲溝を表面に有する溝付きテーブルと組み合わされることが多い。粉砕ローラの個数は2〜4個であり、それらがテーブル回転方向に等間隔で配置される。このような竪型ローラミルは石炭、石油コークスの他、スラグ、石灰石、セメント原料、タルク等の粉砕に広く使用されている。
【0006】
粉砕効率の高い竪型ローラミルとして、特許文献1に記載されたものがある。これは、竪型ローラミルにおける粉砕ローラの外周面に回転方向に直角なスリットを回転方向に所定間隔で形成するものである。このスリットローラを使用した竪型ローラミルは、原料の噛み込み性が高く、微粉化に適している。しかし、回転テーブルと粉砕ローラとの間に形成される粉砕空間からの原料排出性も高く、粉砕空間における原料滞留時間が短く、平滑面テーブルと平滑面ローラとの組合せに比べて層厚が厚くなるが、概してその層厚は小さくなる傾向が強い。その結果、特に水分の多い石炭やHGIの低い硬い粗悪炭の低負荷操業時に竪型ローラミルが大きく振動を発生して操業に支障来す現象が多数発生しており、これの早期解決が望まれている。
【0007】
すなわち、石炭火力発電所においては、電力需要が低下した時期に石炭ミルは低負荷状況で運転される。なぜなら、原子力発電所は常にフル操業されるので、比較的運転を調整し易い石炭ミルが電力調整運転用に使用され、この観点からも低負荷操業を頻繁に強いられる。
【0008】
低負荷操業は、定常運転から段階的に石炭投入量を減少して負荷を少なくするのであるが、定常状態でミルに供給される石炭量の約35〜40%程度に減少され、最小では約20%まで減少されると言われている。これは、微粉炭がバーナーノズルからボイラー燃焼室に吹き込まれる量が、低負荷操業時に上述した減少%にまでに抑制されると言われているので、その前工程である微粉炭粉砕においても同じ減少率で粉砕負荷が低減されると想定される。
【0009】
石炭の投入量が減少し始めると、従動輪である粉砕ローラと石炭間とに充分な摩擦力が得られず、粉砕ローラの回転が不安定になり出す。微粉炭がローラ表面に転着されて更にローラ回転が不安定になり、最終的にミル自体が大きく振動して操業に異常を来すようになる。このため、粉砕空間からの原料排出性が高く、原料層厚が小さくなるミルは不適である。
【0010】
だからといって駆動テーブルと粉砕ローラとの間のクリアランスを小さくし、ローラ面圧を増大させると、ローラやテーブルの磨耗が顕著となり、ミル駆動部の軸電流が上昇してコストアップを招く。
【0011】
更に近年、二酸化炭素排出削減の指導方針を受け、木材チップを石炭と混合粉砕するバイオマス発電が行われているが、木材チップの混合量は高々3〜4%までに限られ、それ以上混合すると、既存の竪型ローラミルでは振動を発生して粉砕できないのが現状である。
【0012】
近年、資源ナショナリズムの影響を受けて高品質石炭は異常に高騰し資源小国のわが国では非常に安価な粗悪石炭、亜瀝青炭の使用を余儀なくされている。これら石炭は非常に硬い種類のものや水分を多量に含有した種類があり、既存の粉砕機では振動を発生して粉砕に支障を来たしている。
【0013】
一方、バイオマス発電のボイラー原料粉砕に適した粉砕機として、特許文献2に記載された竪型ローラミルがある。このミルは、粉砕ローラの外周面に、ローラ回転方向に対して一方の方向へ傾斜した第1グループのスリット溝と他方の方向へ傾斜した第2グループのスリット溝とをローラ回転方向に対して交互に配置したものである。粉砕ローラにおける溝部列が部材運動方向に対して一方の方向へ傾斜した第1グループと、他方の方向へ傾斜した第2グループとの組合せにより構成されると、優れた噛み込み性を維持しつつ、噛み込み原料が部材間に長時間留め置かれ、部材間における原料の滞留時間が長くなる。これにより、粉砕原料が木質バイオマスを含むような場合も、その木材の切り刻みが十分に行われ、効率的な混合粉砕が可能となる。粉砕原料の一部は破砕面部材の表面に形成された溝部の長手方向に移動するので、溝部の傾斜によりこの移動距離も長くなり、この面からも原料滞留時間が長くなる。その結果、原料層厚は大の傾向を示す。
【0014】
これに加え、木質バイオマスのような繊維質から構成された柔らかい物質をローラミル等の破砕機で破砕する場合、粉砕点では圧縮荷重による粉砕力よりも、むしろ剪断力により繊維質を破壊するような力が求められる。耐磨耗性の高い部分と低い部分の配列方向を部材運動方向に対して傾斜させた場合、粉砕点における応力はx軸方向の分力とy軸方向の分力とに分かれ、粉砕原料を縦横に引き裂く力を発生させる。この分力の点からも、木質バイオマスのような繊維質から構成された柔らかい物質を効果的に破壊することが可能となる。
【0015】
このように特許文献2に記載された竪型ローラミルは、粉砕原料が木質バイオマスを含むような場合も、効率的な混合粉砕を可能とし、原料層厚も大の傾向を示すが、前述した石炭や石油コークスス、特に非常に硬い種類のものや水分を多量に含有した安価な粗悪石炭、亜瀝青炭の粉砕に適用した場合は粉砕効率が著しく低下し、期待するような微粉化を実現できないのである。
【0016】
その原因を推測すると、粉砕ローラ破砕面形状の効果により粉砕媒体の破砕面における滞留時間が長くなり、その結果、粉砕媒体の層厚が厚くなって粉砕ローラに対する初期加圧力が層厚方向において不足気味となり、微粉砕化が低下すると思われる。ローラ負荷面厚を層厚に比例して増加してやれば微粉砕化は向上するが、軸電流が増加して経済性が定価するようになり、また粉砕ローラの磨耗も促進されるようになる。したがって、本ローラ破砕面形状のみでの微粉砕化の向上は困難であり、相対向するテーブル破砕面形状を含め、破砕面トータルで改善する必要性が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第1618574号公報
【特許文献2】特開2007−111604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、低品質な石炭や石油コークスについても高い破砕効率を示し、微粉化率を大きく高めることができると共に、低負荷操業時にも振動の少ない安定した運転が可能な竪型ローラミルを提供することにある。
【0019】
なお、本発明での微粉は、前述したように例えば200μm以下である。一方、粉体工学での微粉体の定義は0.3〜3μm程度であるので、本発明での微粉は粉体光学での微粉には続さない(著書:粉体の工学 著者神歩元二参照)。しかし、本発明では従来粉砕されて得られた粒子に較べ小さい粒子に粉砕することを目的とするので、本発明で得られる粉末粒子を便宜上、微細粒子、微細粉、微粒子と称する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明者は、特許文献1に示されたような回転方向に直角な直角スリットは不可欠であると考え、その欠点である原料層厚の薄さを解消する方法について考えた。その結果、以下の結論に到達した。
【0021】
竪型ローラミルにおいては粉砕部材が二つある。一つは粉砕ローラであり、いま一つは駆動テーブルである。投入原料は、テーブルの回転中心線回りに配置された複数の粉砕ローラと対向するテーブル表面と、複数の粉砕ローラの各表面との間で原料粉砕を行うので、複数の粉砕ローラと対向する駆動テーブルの環状表面も、複数個の粉砕ローラの各表面と同様に破砕面として機能する。これら2つの破砕面を機能分担して活用することにより、上記課題は解決される。
【0022】
すなわち、複数個の粉砕ローラの各外周面、又は粉砕ローラとの間に原料を噛み込んで破砕する環状のテーブル破砕面の一方に、回転方向に直角な複数のスリット溝を回転方向に所定ピッチで形成し、他方に、回転方向に対して一方の方向へ傾斜した第1グループのスリット溝と他方の方向へ傾斜した第2グループのスリット溝とを回転方向において混在して形成するのである。そうすると、回転方向に直角な複数のスリット溝により原料の掻き込み性が向上し、粉末の微細化が達成されると共に、回転方向に対して一方の方向へ傾斜した第1グループのスリット溝と他方の方向へ傾斜した第2グループのスリット溝との組み合わせにより、原料はテーブル回転方向に対して移動方向をジグザクに変更し、駆動テーブルと粉砕ローラとの間に長時間滞留する結果、原料層厚の増大も実現される。
【0023】
本発明はかかる知見を基礎として完成されたものであり、その第1の竪型ローラミルは、回転駆動される回転テーブルと、回転テーブルの回転中心線を包囲するように回転テーブル上に配置されて従動回転する複数個の粉砕ローラとを備えた竪型ローラミルにおいて、複数個の粉砕ローラの各外周面には、ローラ回転方向に対して一方の方向へ傾斜した第1グループのスリット溝と他方の方向へ傾斜した第2グループのスリット溝とを混在して形成し、粉砕ローラとの間に原料を噛み込んで破砕する環状のテーブル破砕面には、テーブル回転方向と交差する方向の第3のスリット溝を回転方向に所定ピッチで形成したものである。
【0024】
また、本発明の第2の竪型ローラミルは、水平回転する駆動テーブルと、その回転中心線を包囲するように駆動テーブル上に配置されて従動回転する複数個の粉砕ローラとを備えた竪型ローラミルにおいて、粉砕ローラとの間に原料を噛み込んで破砕する環状のテーブル破砕面には、テーブル回転方向に対して一方の方向へ傾斜した第1グループのスリット溝と他方の方向へ傾斜した第2グループのスリット溝とを回転方向において混在して形成し、粉砕ローラの外周面には、その回転方向に対して交差する第3のスリット溝を回転方向に所定ピッチで形成したものである。
【0025】
本発明の竪型ローラミルにおいては、駆動テーブルの中心部に投入された粉砕原料が、駆動テーブルの回転に伴う遠心力により外周側へ移動し、駆動テーブルの外周部上に等角配置された複数の粉砕ローラとの間に噛み込まれ、細かく粉砕されて外周側へ排出される。このとき複数の粉砕ローラが対向する環状のテーブル破砕面に設けられた第3のスリット溝、又は粉砕ローラの外周面に設けられた第3のスリット溝により噛み込み性が促進され、粉砕原料の微粉化が促進される。しかし、このままだと粉砕原料が粉砕ローラとテーブル破砕面との間の空間から早期に排出され、層厚が確保されない。これに関し、本発明の竪型ローラミルにおいては、粉砕ローラの外周面、又はテーブル破砕面に形成された第1グループの傾斜スリット溝と第2グループの傾斜スリット溝との組合せにより、テーブルとローラの間の粉砕空間を原料が蛇行し、テーブル破砕面上における原料層厚が増大することにより、低負荷操業等における安定操業が可能となる。
【0026】
特に好ましい構成は、第1グループと第2グループとが部材回転方向に交互に配列された構成である。これにより、部材間における材料滞留時間が特に長くなる。また、第1グループと第2グループとの間に、部材回転方向と直交する第3グループのスリット溝を設ける構成も好ましい。この構成により、原料噛み込み性が一層向上する。
【0027】
第1グループ及び第2グループにおるスリット溝の部材回転方向に対する傾斜角度は45度以上が好ましい。45度未満であると、粉砕原料を排斥する方向に過度の力が働き、層厚が小さくなる。傾斜角度の上限については80度以下が好ましい。80度超の場合は直角配置と機能的に変わらず、原料滞留時間の延長、原料層厚の増大が十分に実現されない。特に好ましい傾斜角度は45〜75度である。スリット溝の配列方向で言えば、部材回転方向に対して10〜45度が好ましく、15〜45度が特に好ましい。
【0028】
複数の粉砕ローラが対向する環状のテーブル破砕面、又は粉砕ローラの外周面に設けられる第3のスリット溝は、部材回転方向に対して傾斜した傾斜溝でもよいし、部材回転方向に対して直角な直角溝でもよい。また、部材回転方向に対して両方向に傾斜した2種類の傾斜溝の組合せでもよい。しかし、第1グループのスリット溝及び第2グループのスリット溝との間での機能分担による噛み込み性重視の点から直角溝が好ましく、次に好ましいのは、層厚確保の点から、部材回転に伴って粉砕原料を内側へ掻き込む方向へ傾斜した傾斜溝である。
【0029】
第3のスリット溝は又、駆動テーブルに設けられる場合も粉砕ローラに設けられる場合も、駆動テーブルの回転中心側から外周側へ向けて断面積が漸次増大する形状とすることができる。
【0030】
粉砕ローラの外周面及びテーブル破砕面は、耐磨耗性に優れた硬化金属でコーティングされる。硬化金属としては、高クロム鋳鉄系合金、14〜20%オーステナイト系マンガン鋼、その他耐摩耗性を持つ鋼、鋳鋼、鋳鉄、タングステン粒子を含有する耐磨耗性合金等を挙げることができる。
【0031】
これらの表面にスリット溝を形成するには、特許文献1の“粉砕機に使用される破砕面部材”にて言及するところと全く同じ方法の採用が可能である。スリット溝を形成する部分に他の部分より耐磨耗性の劣る材料を配置し、ローラミルの使用よりスリット溝を形成していく。より具体的には、耐磨耗性表面のスリット溝形成位置に軟鋼等の耐磨耗性の劣る材料からなるリブを取付け、リブ以外の部分に耐磨耗性の優れた材料を溶接肉盛り或いはキャスティングする。その他の方法として、肉盛ワイヤで部材表面全体を溶接肉盛した後に、スリット溝形成部分からアークガウジングにより硬化金属を除去する。様々な方法で耐磨耗性金属からなる部材表面にスリット溝を形成することができる。耐摩耗性に劣った部分は、粉砕操業において他の部分に比べ早期磨耗を自然発生的に生じて、スリット溝を形成する。粉砕操業開始時点から噛み込み効果を得たい場合には当初から、耐磨耗性の低い材料の高さを他の部分のところより3〜5mm、若しくはそれ以上凹ませておけばよい。
【0032】
スリット溝の溝幅をw、隣接するスリット溝の溝間距離をWとすると、両者は0.1W≦w≦Wを満足するのが適切である。Wに比してwが小さすぎる場合は粉砕原料のスリット溝による送り込み効果が小さくなりやすく、反対にWに比してwが大きすぎる場合は送り込み効果が増大する反面、ミルとしての有効粉砕面積が減少し、十分な破砕量を確保するのが難しくなる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の竪型ローラミルは、複数の粉砕ローラが対向する環状のテーブル破砕面に設けられた第3のスリット溝、又は粉砕ローラの外周面に設けられた第3のスリット溝による噛み込み性の促進と、粉砕ローラの外周面、又はテーブル破砕面に形成された第1グループの傾斜スリット溝と第2グループの傾斜スリット溝との組合せによる原料滞留時間の延長とにより、大きな原料層厚を確保しつつ粉砕原料の微粉化率を高めることができ、石炭や石油コークスを使用する火力発電用ボイラーにおける二酸化炭素発生量の削減、安定操業等に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示す竪型ローラミルの主要部の構造を示す縦断面図、図2は同ミルに使用されている粉砕ローラの斜視図、図3は同ミルに使用されている駆動テーブルの平面図である。
【0035】
本実施形態の竪型ローラミルは、石炭火力発電所におけるロッシェミル型石炭粉砕機である。この石炭粉砕機は、図1に示すように、円盤状の駆動テーブル10と、駆動テーブル10上に配置された複数個の粉砕ローラ20とを備えている。駆動テーブル10は、表面を耐磨耗性金属により被覆されており、所定方向に回転する。
【0036】
複数個の粉砕ローラ20は、一端部から他端部へかけて外径が漸減する円錐台形状であり、小径側を駆動テーブル10の中心線の方にむけてその中心線回りに等角配置されている。そして、これらの粉砕ローラ20は、中心線に対して傾斜した外周面が駆動テーブル10に対して適切なクリアランスをもって平行に対向するように駆動テーブル10の中心側へ傾斜して配置されると共に、粉砕原料を介して駆動テーブル10の回転に追従して回転するようになっている。
【0037】
各粉砕ローラ20は、表面を耐磨耗性金属により被覆されている。その表面には、図2に示すように、多数本のスリット溝21が回転方向Zに隙間をあけて形成されている。多数本のスリット溝21は、配列方向Xがローラ回転方向Zに対して一方の方向に所定角度θaで傾斜した第1グループa(ローラ回転方向Zに対する傾斜角度は90−θa)と、配列方向Yがローラ回転方向Zに対して他方の方向に所定角度θbで傾斜した第2グループb(ローラ回転方向Zに対する傾斜角度は90−θb)と、ローラ回転方向Zに直角な第3グループcとの組合せからなり、より詳しくは、第3グループcを挟みながら第1グループaと第2グループbを回転方向へ交互に繰り返した構成になっている。スリット溝21の本数は、各グループごとに数本である。
【0038】
駆動テーブル10は、中心回りに回転駆動される水平な円盤であり、粉砕ローラ20と対向する環状の破砕部を外周部に有している。環状の破砕部には、図3に示すように、回転方向と交差する方向の第2のスリット溝11が、テーブル回転方向に所定間隔で形成されている。第2のスリット溝11は、図3(a)ではテーブル回転方向に直角な直角溝(配列方向はテーブル回転方向と同一)である。図3(b)ではテーブル回転方向に対して傾斜しており、より具体的にはその回転に伴って粉砕原料をテーブル中心側へ掻き込む方向へ傾斜した傾斜溝である。図3(c)ではテーブルの回転に伴って粉砕原料を外側へ排出する方向に傾斜した傾斜溝である。
【0039】
これらに対して、図3(d)では、スリット溝11は配列方向がテーブル回転方向に対して一方の方向に所定角度θaで傾斜した第1グループa(テーブル回転方向に対する傾斜角度は90−θa)と、配列方向がテーブル回転方向に対して他方の方向に所定角度θbで傾斜した第2グループb(テーブル回転方向に対する傾斜角度は90−θb)と、テーブル回転方向に直角な第3グループc(配列方向はテーブル回転方向と同一)との組合せからなり、より詳しくは、第3グループcを挟みながら第1グループaと第2グループbを回転方向へ交互に繰り返した構成になっている。スリット溝21の本数は、第1グループa及び第2グループbでは数本、第3グループcでは1〜2本である。このような組合せスリット溝11を破砕部にもつ駆動テーブル10は、ローラ回転方向と直角なスリット溝21が回転方向に所定間隔で形成された粉砕ローラ20と組み合わされる。
【0040】
本発明の竪型ローラミルの有効性を調査するために、竪型ローラミルの一種であるロッシェミルに類似した実験用の小型粉砕機を作製した。この粉砕機は、図4に示すように、ベース部材である水平な駆動テーブル1の外周部表面に粉砕ローラ2が対向する構造とした。粉砕ローラ2は円錐台形状の竪型ローラであり、大径側を外周側に小径側を中心側に向け、テーブル1との対向面が水平となるように傾斜配置されている。実験機であるためにローラ個数は1とした。
【0041】
この粉砕ローラ2の外周面には複数のスリット溝7が設けられている。複数本のスリット溝7は、配列方向Xがローラ回転方向Zに対して一方の方向に35度の角度で傾斜した第1グループa(ローラ回転方向Zに対する傾斜角度は55度)と、配列方向Yがローラ回転方向Zに対して他方の方向に35度の角度で傾斜した第2グループb(ローラ回転方向Zに対する傾斜角度は55度)と、ローラ回転方向に直角な第3グループc(配列方向はローラ回転方向Zと同一)との組合せからなり、より詳しくは、第3グループcを挟みながら第1グループaと第2グループbを回転方向へ交互に繰り返した構成になっている。スリット溝7の本数は、第1グループa及び第2グルースで5本、第3グループで3本である。また、ローラ回転方向Zに直角なスリット溝をローラ回転方向に14mmの間隔で設けた直角溝付きの粉砕ローラ2も用意した。
【0042】
駆動テーブル1においては、粉砕ローラ2と対向する外周部が環状の破砕部3となり、環状の粉砕部3は、試験機であるため、テーブル本体4に対して脱着可能とした。破砕部3としては、表面が平坦なもの、回転方向に直角なスリット溝6を表面に有するもの〔図3(a)〕、テーブル回転に伴って中心側へ掻き込む方向へ45度の角度で傾斜した傾斜スリット溝6を表面に有するもの〔図3(b)〕、テーブル回転方向に対して一方の方向に45度の角度で傾斜した第1グループaのスリット溝6、他方の方向に45度の角度で傾斜した第2グループbのスリット溝6、テーブル回転方向に直角な第3グループcのスリット溝6を組み合わせたもの〔図3(c)〕の4種類を用意した。最後の3グループのスリット溝6の本数は、第1グループa及び第2グルースで5本、第3グループで1本である。
【0043】
破砕部3とのクリアランスを任意に調節できるように、粉砕ローラ2はその支持機構5に対して回転自在かつ昇降自在に取り付けられている。また、破砕に伴う衝撃を逃がし、且つ粉砕原料に所定の加圧力を付加するために、粉砕ローラ2はスプリングにより、破砕部3へ押し付けられる方向へ付勢されている。駆動テーブル1の回転により、粉砕ローラ2は粉砕原料を介して従動回転する。破砕部3上のローラ付近に原料を保持するために、破砕部3の内周部及び外周部に壁を設けた。試験機の更なる詳細は、以下のとおりである。
【0044】
ローラ寸法: 太径:200mm、小径:170mm、幅:57mm
テーブル径: 外径470mm×内径330mm
周速度: 30RPM(約44M/分)
ローラ加圧: スプリング加圧方式
ローラとテーブルとの間のクリアランス:0mm
試験時間: 30分間
粉砕原料: 石炭
テーブル溝(粉砕部3)に散布する石炭の量:1,000g(一定)
【0045】
試験に使用した石炭: 製鉄原料炭
初期粒度分布 20メッシュ以上 40g
60メッシュ以上 34g
120メッシュ以上 3g
200メッシュ以上 13g
235メッシュ以上 2g
P 9g
水分量 5%
温度、湿度範囲 8〜15℃、 45〜62%
【0046】
スリット溝の寸法:
溝幅 3mm
溝深さ 3〜4mm
【0047】
上記実験用粉砕機において、粉砕ローラの破砕面形状とテーブル破砕部の表面形状との組合せが、粉砕粒度、粉砕終了後の層厚に及ぼす影響を調査した。粉砕ローラとテーブル破砕部との組み合わせは以下のとおりである。結果を表1に示す。
【0048】
(1)平滑面ローラ+平滑面テーブル(比較例1)
(2)組合せ溝付きローラ+平滑面テーブル(比較例2)
(3)組合せ溝付きローラ+直角溝付きテーブル(本発明例1)
(4)組合せ溝付きローラ+傾斜溝付きテーブル(本発明例2)
(5)組合せ溝付きローラ+組合せ溝付きテーブル(比較例3)
(6)直角溝付きローラ+平滑面テーブル(比較例4)
(7)直角溝付きローラ+組合せ溝付きテーブル(本発明例3)
【0049】
【表1】

【0050】
表1から分かるように、(3)組合せ溝付きローラ+直角溝付きテーブル(本発明例1)、(4)組合せ溝付きローラ+傾斜溝付きテーブル(本発明例2)、及び(7)直角溝付きローラ+組合せ溝付きテーブル(本発明例3)において、大きな層厚が確保され、なおかつ粉末微細化も顕著である。特に大きな効果を奏するのは、(3)組合せ溝付きローラ+直角溝付きテーブル(本発明例1)である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態を示す竪型ローラミルの主要部の構造を示す縦断面図である。
【図2】同ミルに使用されている粉砕ローラの斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は同ミルに使用されている駆動テーブルの平面図であり、破砕部表面の形状の相違を示す。
【図4】本発明の有効性を調査するための実験用小型粉砕機の構成図である。
【符号の説明】
【0052】
10 駆動テーブル
11 スリット溝
20 粉砕ローラ
21 スリット溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される回転テーブルと、回転テーブルの回転中心線を包囲するように回転テーブル上に配置されて従動回転する複数個の粉砕ローラとを備えた竪型ローラミルにおいて、
複数個の粉砕ローラの各外周面には、ローラ回転方向に対して一方の方向へ傾斜した第1グループのスリット溝と他方の方向へ傾斜した第2グループのスリット溝とが混在して形成されており、
粉砕ローラとの間に原料を噛み込んで破砕する環状のテーブル破砕面には、テーブル回転方向と交差する方向の第3のスリット溝が回転方向に所定ピッチで形成されていることを特徴とする竪型ローラミル。
【請求項2】
請求項1に記載の竪型ローラミルにおいて、第1グループのスリット溝と第2グループのスリット溝とがローラ回転方向に交互に配列されている竪型ローラミル。
【請求項3】
請求項2に記載の竪型ローラミルにおいて、第1グループのスリット溝と第2グループのスリット溝との間に、ローラ回転方向に直角な第3グループのスリット溝が設けられている竪型ローラミル。
【請求項4】
請求項1に記載の竪型ローラミルにおいて、粉砕ローラにおける第1グループのスリット溝及び第2グループのスリット溝のローラ回転方向に対する傾斜角度が45度以下である竪型ローラミル。
【請求項5】
請求項1に記載の竪型ローラミルにおいて、回転テーブルにおける第3のスリット溝は、回転方向に直角な直角溝である竪型ローラミル。
【請求項6】
水平回転する駆動テーブルと、その回転中心線を包囲するように駆動テーブル上に配置されて従動回転する複数個の粉砕ローラとを備えた竪型ローラミルにおいて、
粉砕ローラとの間に原料を噛み込んで破砕する環状のテーブル破砕面には、テーブル回転方向に対して一方の方向へ傾斜した第1グループのスリット溝と他方の方向へ傾斜した第2グループのスリット溝とが回転方向において混在して形成されており、
粉砕ローラの外周面には、その回転方向に対して交差する方向の第3のスリット溝が回転方向に所定ピッチで形成されていることを特徴とする竪型ローラミル。
【請求項7】
請求項6に記載の竪型ローラミルにおいて、テーブル破砕面における第1グループのスリット溝と第2グループのスリット溝とがテーブル回転方向に交互に配列されている竪型ローラミル。
【請求項8】
請求項6に記載の竪型ローラミルにおいて、第1グループのスリット溝と第2グループのスリット溝との間に、テーブル回転方向に直角な第3グループのスリット溝が設けられている竪型ローラミル。
【請求項9】
請求項6に記載の竪型ローラミルにおいて、回転テーブルにおける第1グループのスリット溝及び第2グループのスリット溝のテーブル回転方向に対する傾斜角度が45度以下である竪型ローラミル。
【請求項10】
請求項6に記載の竪型ローラミルにおいて、粉砕ローラにおける第3のスリット溝は、回転方向に直角な直角溝である竪型ローラミル。
【請求項11】
請求項1又は6に記載の竪型ローラミルにおいて、スリット溝は当該ミルの使用開始前より予め形成されている竪型ローラミル。
【請求項12】
請求項1又は6に記載の竪型ローラミルローラにおいて、スリット溝は、それらの溝に対応する部分に耐磨耗性の低い材料が配置されており、当該ミルの使用に伴って形成されるものである竪型ローラミル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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