説明

竪型鋳造機用金型

【課題】竪型鋳造機用金型において、ピン板を元の位置に確実に復帰させることができるようにする。
【解決手段】竪型鋳造機用金型4は、押出しピン69が取り付けられるピン板66と、該ピン板66を収容するエジェクターボックス62とを備え、該エジェクターボックス62の天板63に形成された孔63Aをトッププレート34に吊り下げ固定されたストッパ部材35が貫通可能であり、該ストッパ部材35が該ピン板66の上昇を阻止することにより該押出しピン69が可動型6から鋳造品を押出す竪型鋳造機用金型4において、該ピン板66は該天板63に取り付けられたシリンダ65のピストンロッド65Aに連結され、該ピン板66の上面には該ストッパ部材35の下端と当接可能なピン部材67が取り付けられていることを特徴とする竪型鋳造機用金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締めの方向が上下方向である竪型鋳造機用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、竪型鋳造機としては、下記特許文献1のように、上部固定盤に取り付けられた押出板ストッパを用いて鋳造品を可動型から押し出すようにしたものが公知である。即ち、下記特許文献1の竪型鋳造機では、上部固定盤に取り付けられた押出板ストッパを可動型と共に上昇するピン板(押出板)に当接させてピン板のそれ以上の上昇を拘束することにより、ピン板に取り付けられた押出ピンで鋳造品を可動型から押出すようにしている。ピン板にはリターンピンが設けられており、該リターンピンがピン板を元の位置に復帰させる。
【0003】
しかしながら、竪型鋳造機用金型にスライド中子が設置される場合にはリターンピンの設置に制約が生じるので、リターンピンだけではピン板を元の位置に復帰させることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平3−2366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、竪型鋳造機用金型において、ピン板を確実に元の位置に復帰させることができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る竪型鋳造機用金型4は、押出しピン69が取り付けられるピン板66と、該ピン板66を収容するエジェクターボックス62とを備え、該エジェクターボックス62の天板63に形成された孔63Aをトッププレート34に吊り下げ固定されたストッパ部材35が貫通可能であり、該ストッパ部材35が該ピン板66の上昇を阻止することにより該押出しピン69が可動型6から鋳造品を押出す竪型鋳造機用金型4において、該ピン板66は該天板63に取り付けられたシリンダ65のピストンロッド65Aに連結され、該ピン板66の上面には該ストッパ部材35の下端と当接可能なピン部材67が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の竪型鋳造機用金型によれば、シリンダでピン板を元の位置に確実に復帰させることが可能である。また、ピン板の上面に取り付けられたストッパ部材の長さに応じて押出しピンの押出しストロークを異なるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態における竪型鋳造機を示す概略平面図。
【図2】同実施形態における竪型鋳造機の一部断面を含む概略正面図。
【図3】図2のA−A断面図であって、金型をクランプする前の状態を示す。
【図4】図2のA−A断面図であって、金型をクランプした型閉じの状態を示す。
【図5】図2のA−A断面図であって、型開きして鋳造品を取り出す時の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態にかかる竪型鋳造機用金型について図1〜図5を参酌しつつ説明する。本実施形態に係る竪型鋳造機は、ダイカストに適したものであって、図1及び図2に示す如く、一直線状のレール1に沿って型開閉装置3と型締め装置2が所定の間隔をあけて並設されたものである。図1及び図2において左側から順に金型交換位置100、型開閉位置101、型締め位置102であって、型開閉位置101と型締め位置102にそれぞれ型開閉装置3と型締め装置2が配置され、金型4(竪型鋳造機用金型)はレール1を走行する台車5に載置されて各位置に移動することができる。通常、金型4は、図2に二点鎖線で示すように型開閉位置101と型締め位置102との間を往復動し、型締め位置102において溶湯が射出され、それが凝固した後に型開閉装置3へと移動し、型開閉位置101において製品が取り出されて再び型締め位置102へと移動する。尚、台車5を移動するための駆動装置については図示が省略されている。
【0010】
型締め装置2は、レール1の下側に射出装置20を備え、スリーブ72を介して溶湯を射出する。また、上部には図示しない型締めシリンダによって上下する型締めプレート21を備えている。該型締めプレート21は、金型4の出し入れ時には図2の実線のように上方に退避し、型締め時には同図の二点鎖線のように下降して型締めを行う。
【0011】
型開閉装置3は、金型4をクランプするダイクランプ装置30,31を備えている。具体的には、図1に示すように、ダイクランプ装置30,31はレール1の両側に位置してレール1を横断する方向に出退して金型4をクランプ及びその解除を行う。金型4は上側の可動型6と下側の固定型7から構成されるので、図3乃至図5にも示すように可動型6をクランプするための上部ダイクランプ装置30と固定型7をクランプするための下部ダイクランプ装置31を備えている。下部ダイクランプ装置31は位置不動であるが、上部ダイクランプ30は、開閉ガイド軸32にガイドされながら図示しない型開閉シリンダによって上下動するムービングプレート33の下面に取り付けられて該ムービングプレート33と共に上下動する。従って、上部ダイクランプ装置30によって可動型6がクランプされることで、可動型6はムービングプレート33と共に上下動し、これによって型開き動作と型閉じ動作が行われる。
【0012】
図3は金型4がクランプされていない状態を示しており、ムービングプレート33は上方に待機した状態にある。そして、図4のように、ムービングプレート33が下降して上部ダイクランプ装置30と下部ダイクランプ装置31がそれぞれ可動型6と固定型7をクランプする。その状態から図5のようにムービングプレート33が上昇して型開きとなって製品の取り出しが行われる。
【0013】
ここで、金型4は、上述したように可動型6と固定型7から構成され、固定型7は固定ホルダー70と固定ダイス71(下型本体)とを備えていて、それらをスリーブ72が挿通すると共に該スリーブ72の下側にはロケートリング73が配置されている。可動型6は、可動ダイス61と可動ホルダー60と該可動ホルダー60の上側に取り付けられたエジェクターボックス62とを備えている。固定ダイス71と可動ダイス61との間に、製品を鋳造するための図示せぬキャビティが形成されている。また、エジェクターボックス62は、天板63(かさ板)と側壁とを備えて、天板63は可動ホルダー60の上面との間に空間を形成するように該上面から所定距離上方に位置し、該天板63が上部ダイクランプ装置30にクランプされる。
【0014】
天板63の下面にはピン板シリンダ65(シリンダ)が取り付けられている。該ピン板シリンダ65のピストンロッド65Aの下端にはピン板66が連結され、ピン板66が天板63に吊り下げ支持されている。該ピン板66の上面には中間ピン67(ピン部材)が着脱可能に取り付けられている。詳細には、中間ピン67はその下端に図示せぬネジ部を備えており、このネジ部をピン板66の上面に形成された図示せぬネジ穴に螺合することでピン板66の上面に取り付けられている。該中間ピン67は、トッププレート34に吊り下げ固定された待機ピン35(ストッパ部材)と同軸に位置している。待機ピン35は、ムービングプレート33と天板63の孔63Aを通ってそれらを上下に貫通できるようになっている。ムービングプレート33と共に可動型6が上昇してくると、待機ピン35の下端35Aが中間ピン67の上端に当接し、ピン板66の上昇が待機ピン35によって阻止される。さらに可動型6が上昇するとピン板66に取り付けられた押出しピン69が鋳造品を可動ダイス61から押出し、ピン板66が可動ホルダー60の上面に固定されているピン板ストッパ68に当接する。図5に示すようにピン板66は天板63と離間した状態となるが、ピン板シリンダ65によりピン板66を元の位置(図2乃至図4に示す位置)に復帰させることが可能である。
【0015】
以上のように構成された竪型鋳造機は、レール1上の金型交換位置100において台車5に金型4がセットされ、その後は、型締め位置102と型開閉位置101との間を金型4が台車5と共に往復する。金型4が型締め装置2に送られてくると、型締めプレート21が下降して型締めが行われて射出装置20から溶湯が射出される。そして、型締めプレート21が上昇して型締めが解除されると、台車5は型締め装置2から型開閉装置3に移動する。図3のように金型4が型開閉装置3に送られてくると、上方に待機していたムービングプレート33が所定位置まで下降して、図4のように上部ダイクランプ装置30と下部ダイクランプ装置31が内側に向けて水平方向に突出して可動型6と固定型7をクランプする。そして、ムービングプレート33が上昇して可動型6を固定型7から上方に離反させ、図5のようにトッププレート34から吊下している待機ピン35がムービングプレート33と天板63を下方に貫通して中間ピン67に当接し、ムービングプレート33の上昇に合わせてピン板66に取り付けられた押出しピン69が製品を可動ダイス61から離反させ、型開き動作が終了する。製品の取り出しが終わるとムービングプレート33が下降を開始し、それと同時にピン板シリンダ65が作動してピン板66を元の高さまで上昇させていく。ムービングプレート33が元の高さまで下降して型閉じ動作が終了すると、上部ダイクランプ装置30と下部ダイクランプ装置31が外側に向けて退いてクランプを解除し、金型4は再び型締め装置2へと送られる。
【0016】
以上の動作を繰り返しながら連続的な鋳造を行うのであるが、異なる鋳造品を鋳造する場合には金型4の交換を金型交換位置100において行う。交換後の金型4のピン板66の上面に固定される中間ピン67の長さを交換前の金型4の中間ピン67とは異ならせることにより、トッププレート34の待機ピン35を交換せずに押出しピン69の押出しストロークを変更することが可能である。
【0017】
本実施形態では、竪型鋳造機は並設された型締め装置2と型開閉装置3との間を金型4が往復動するものであったが、型開閉位置と型締め位置が同じ位置とされる一般的な竪型鋳造機にも本発明の竪型鋳造機用金型は適用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 レール
2 型締め装置
3 型開閉装置
4 金型
5 台車
6 可動型
7 固定型
20 射出装置
21 型締めプレート
30 上部ダイクランプ装置
31 下部ダイクランプ装置
32 開閉ガイド軸
33 ムービングプレート
34 トッププレート
35 待機ピン(ストッパ部材)
60 可動ホルダー
61 可動ダイス
62 エジェクターボックス
63 天板
63A 孔
64 側壁
65 ピン板シリンダ(シリンダ)
66 ピン板
67 中間ピン(ピン部材)
68 ピン板ストッパ
69 押出しピン
70 固定ホルダー
71 固定ダイス
72 スリーブ
73 ロケートリング
100 金型交換位置
101 型開閉位置
102 型締め位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出しピンが取り付けられるピン板と、該ピン板を収容するエジェクターボックスとを備え、該エジェクターボックスの天板に形成された孔をトッププレートに吊り下げ固定されたストッパ部材が貫通可能とされ、該ストッパ部材が該ピン板の上昇を阻止することにより該押出しピンが可動型から鋳造品を押出す竪型鋳造機用金型において、該ピン板は該天板に取り付けられたシリンダのピストンロッドに連結され、該ピン板の上面には該ストッパ部材の下端と当接可能なピン部材が取り付けられていることを特徴とする竪型鋳造機用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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