説明

端子リード

【課題】被接続部材との間の電気抵抗を小さく抑えることができる端子リードを提供する。
【解決手段】端子リード1は、電気化学要素6を収容する外装体9の内側に配置される内端部1aと、外装体9の外側に配置される外端部1bとを有するとともに、基材として板状金属基材2を備えている。端子リード1における外装体9のシール部9xに対応する部分には絶縁用樹脂フィルム4が設けられる。さらに、この端子リード1は、金属基材2用金属素板2Zの厚さ方向両面2p、2pと幅方向両側面2s、2sとに表面塗布層3が設けられた端子リード1用素板1Zにおける少なくとも外端部1b側が切断されて製作されたものである。そして、端子リード1の外端部1b側の切断面1cに金属基材2が露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極端子リードや負極端子リードとして用いられる端子リード、該端子リードの製造方法、及び、該端子リードを備えた電気化学デバイス(例:リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医薬品や食品分野等の包装材として広く用いられている包装用ラミネート材料は、その応用例として、電池要素等の電気化学要素を収容する外装体を形成する外装フィルムとしても利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特公昭59−38708号公報)は、外装フィルムで形成された外装体内に電極(集電体)や電解質を含む電池要素を収容するとともに、外装体の開口縁部をヒートシールによって融着することにより、外装体内に電池要素を封入する構造を開示している。
【0004】
外装体を形成する外装フィルムは、複数層からなり、その最外層がポリエチレンテレフタレート(PET)やナイロン等で構成され、電解液と接する最内層が熱融着性樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレン系のアイオノマー、ポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂)で構成されている。さらに、外装フィルムの中間層は、外部からの水分の浸入や内部からの電解液(電解質)の蒸発を防止するため、アルミニウム箔やSUS箔等の金属箔で構成されている。外装フィルムの最外層は、中間層の金属箔を保護することを目的とし、突き刺し等の外力から守る役割を果たしている。
【0005】
外装体内に収容された電池要素を備えた電池の端子リードは、一般に基材として板状金属基材を備えるとともに、外装体の内側に配置される内端部と、外装体のシール部から外装体の外側へ引き出されて外装体の外側に配置される外端部とを一体に有している。端子リードにおける外装体のシール部に対応する部分は、ヒートシールによって外装フィルムの最内層の熱融着性樹脂で接合されるが、シール時に端子リードが外装フィルムの最内層を突き破って中間層としての金属箔に接触し、電気的短絡を生じる場合がある。
【0006】
そこで、端子リードと中間層の金属箔との間の電気絶縁性を確保するため、端子リードにおける外装体のシール部に対応する部分には絶縁用樹脂フィルムが取り付けられている(例えば特許文献2〜6参照)。
【0007】
しかるに、端子リードと樹脂フィルムとの密着性は、電解液の影響により時間の経過に伴って低下する。この不具合を防止するため、従来の端子リードでは、金属基材の全面にキトサン又はその誘導体を含有するキトサン層が表面塗布層としてコート法等により形成される場合がある(例えば特許文献4、6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭59−38708号公報
【特許文献2】特開平10−302756号公報
【特許文献3】特開2010−165481号公報
【特許文献4】特開2010−170979号公報
【特許文献5】特開2010−245000号公報
【特許文献6】特開2006−202577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような表面塗布層の電気抵抗率は端子リードの金属基材の電気抵抗率に比して大きい。そのため、表面塗布層が端子リードの金属基材の全面に形成されている場合には、この端子リードに電池素子の集電体やバスバー等の被接続部材を電気的に接続すると、端子リードと被接続部材との間に介在した表面塗布層が電気抵抗部となって両者間の電気抵抗が大きくなるという問題が発生する。
【0010】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、被接続部材との間の電気抵抗を小さく抑えることができる端子リード、該リードの製造方法、及び、該端子リードを備えた電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1] 電気化学要素を収容する外装体の内側に配置される内端部と、外装体の外側に配置される外端部とを有するとともに、基材として板状金属基材を備え、且つ、外装体のシール部に対応する部分に絶縁用樹脂フィルムが設けられる端子リードであって、
金属基材用金属素板の厚さ方向両面と幅方向両側面とに表面塗布層が設けられた端子リード用素板における少なくとも外端部側が切断されて製作されたものであり、
外端部側の切断面に金属基材が露出していることを特徴とする端子リード。
【0013】
[2] さらに、端子リード用素板における内端部側が切断されて製作されたものであり、
内端部側の切断面に金属基材が露出している前項1記載の端子リード。
【0014】
[3] 表面塗布層は、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を含有している前項1又は2記載の端子リード。
【0015】
[4] 電気化学要素を収容する外装体の内側に配置される内端部と、外装体の外側に配置される外端部とを有するとともに、基材として板状金属基材を備え、且つ、外装体のシール部に対応する部分に絶縁用樹脂フィルムが設けられる端子リードの製造方法であって、
金属基材用金属素板の厚さ方向両面と幅方向両側面とに表面塗布層が設けられた端子リード用素板における少なくとも外端部側を切断することにより、外端部側の切断面に金属基材を露出させることを特徴とする端子リードの製造方法。
【0016】
[5] さらに、端子リード用素板における内端部側を切断することにより、内端部側の切断面に金属基材を露出させる前項4記載の端子リードの製造方法。
【0017】
[6] 表面塗布層は、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を含有している前項4又は5記載の端子リードの製造方法。
【0018】
[7] 前項1〜3のいずれかに記載の端子リードを備えた電気化学デバイス。
【0019】
[8] 前項2記載の端子リードを備えるとともに、該端子リードの内端部側の切断面における金属基材の露出部に、外装体内に収容された電気化学要素における端子リードとの被接続部材が電気的に接続されていることを特徴とする電気化学デバイス。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以下の効果を奏する。
【0021】
前項[1]の端子リードでは、その外端部側の切断面に金属基材が露出していることから、端子リードの外端部側の切断面における金属基材の露出部に被接続部材(例:バスバー)を電気的に接続することにより、端子リードと被接続部材との間の電気抵抗を小さく抑えることができる。
【0022】
前項[2]の端子リードでは、その内端部側の切断面に金属基材が露出していることから、端子リードの内端部側の切断面における金属基材の露出部に電気化学要素の被接続部材(例:電池要素の集電体)を電気的に接続することにより、端子リードと被接続部材との間の電気抵抗、即ち電気化学デバイスの内部電気抵抗を小さく抑えることができる。
【0023】
前項[3]の端子リードでは、表面塗布層は、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を含有していることにより、端子リードと絶縁用樹脂フィルムとの密着性を確実に高めることができる。
【0024】
前項[4]〜[6]の端子リードの製造方法では、それぞれ前項[1]〜[3]の端子リードを確実に製造することができる。
【0025】
前項[7]の電気化学デバイスは、前項[1]〜[3]の端子リードによる利点と同様の利点を有する。
【0026】
前項[8]の電気化学デバイスは、前項[2]の端子リードによる利点と同様の利点を有する。したがって、電気化学デバイスの内部電気抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る端子リードを備えた電気化学デバイスとしてのリチウムイオン二次電池を示す平面図である。
【図2】図2は、図1中のX−X断面図である。
【図3】図3は、絶縁用樹脂フィルム付き端子リードの斜視図である。
【図4】図4は、絶縁用樹脂フィルム付き端子リードの平面図である。
【図5】図5は、図4中のY1−Y1線断面図である。
【図6】図6は、図4中のY2−Y2線断面図である。
【図7】図7は、端子リードの条材(端子リード用素板)の平面図である。
【図8】図8は、図7中のZ−Z線断面図である。
【図9】図9は、絶縁用樹脂フィルム付き端子リードの電気抵抗の測定方法についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0029】
本発明の一実施形態に係る端子リード1は、図1及び2に示すように、電気化学デバイスとしてのリチウムイオン二次電池10に正極側端子リード1A及び/又は負極側端子リード1Bとして備えられるものである。本実施形態のリチウムイオン二次電池10では、端子リード1は正極側端子リード1Aと負極側端子リード1Bとにそれぞれ用いられている。
【0030】
本実施形態のリチウムイオン二次電池10では、図2に示すように、その外装体9内に電気化学デバイスの電気化学要素としての電池要素6が収容されている。
【0031】
外装体9は、従来の外装体と同じく複数層からなる外装フィルムから形成されたものであり、例えば、電解液(電解質)と接する最内層9aとしての熱融着(熱可塑)性樹脂層と、最外層9cとしての合成樹脂層と、中間層9bとしての金属層とが互いに積層状に配置されたものである。
【0032】
熱融着性樹脂層(最内層9a)は、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレン系のアイオノマー、ポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂等から選択されたもので形成されている。合成樹脂層(最外層9c)は、機械的強度を確保して金属層(中間層9b)を保護することを目的とするものであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルや、ナイロン等のポリアミドで形成されている。金属層(中間層9b)は、外部からの水分の浸入や内部からの電解液(電解質)の蒸発を防止する役割を有するものであり、アルミニウム箔やSUS箔等の金属箔で構成されている。
【0033】
電池要素6は、板状正極集電体7Aと板状負極集電体7Bとがセパレータ8及び/又は電解質(固体電解質、ゲル電解質)を介して積層されて構成されている。正極集電体7Aの表面には正極材料(LiCoO等)が、負極集電体7Bの表面には負極材料(LiC等)がそれぞれ結合している。なお、本実施形態では、電池要素6の正極及び負極集電体7A、7Bが、外装体9の内側にてそれぞれ対応する極側の端子リード1A、1Bの内端部1aと電気的に接続される内側被接続部材に対応している。
【0034】
そして、この電池要素6が外装体9内に収容されるとともに、外装体9の開口縁部がヒートシールによって融着されることにより、外装体9内に電池要素6が液密状態に封入されている。なお、図1において、外装体9のドットハッチングで示された部分は、ヒートシールによって形成された外装体9のシール部9xを示している。
【0035】
図2に示すように、端子リード1は、外装体9の内側に配置された内端部1aと、外装体9のシール部9xから外装体9の外側へ引き出されて外装体9の外側に配置された外端部1bとを一体に有するものである。端子リード1の内端部1aは端子リード1の長さ方向一端部からなり、端子リード1の外端部1bは端子リード1の長さ方向他端部からなる。
【0036】
さらに、図2〜6に示すように、端子リード1は、基材として、良好な導電性を有する板(箔を含む)状金属基材2を備えている。金属基材2の材質は、限定されるものではなく、様々な金属種の中から適宜選択される。具体的には、端子リード1が正極側端子リード1Aである場合には、その金属基材2の材質はアルミニウム(その合金を含む)等であり、特にアルミニウム合金番号A1000系のアルミニウムであることが望ましい。端子リード1が負極側端子リード1Bである場合には、その金属基材2の材質は無酸素銅(JIS(日本工業規格) H3100:C1020)やタフピッチ銅(JIS H3100:C1100)等である。また、金属基材2の厚さ方向両面と幅方向両側面とには、化成処理(例:クロメート処理、非クロメート処理)又は/及び電解処理(例:陽極酸化処理、めっき処理)が予め施されていることが特に望ましい。なお、めっき処理とは、無電解めっき処理を含む。
【0037】
図3において、端子リード1の金属基材2の長さ寸法L、幅寸法W及び厚さ寸法Tは、リチウムイオン二次電池10の大きさ、容量等に応じて様々に設定されるものであり、限定されるものではなく、例えば、Lは20〜70mm、Wは20〜120mm及びTは0.1〜1.0mmにそれぞれ設定される。
【0038】
図3〜6に示すように、端子リード1の金属基材2の厚さ方向両面2p、2pと幅方向両側面2s、2sとには、それぞれ表面塗布層3が全体に亘って形成されている。一方、端子リード1の金属基材2の長さ方向両端面、即ち端子リード1の内端部1a側の端面1e及び端子リード1の外端部1b側の端面1eには、表面塗布層3は形成されていない。そのため、端子リード1の両端面1e、1eには金属基材2が外部に露出している。2eは、端子リード1の各端面1eにおける金属基材2の露出部を示している。
【0039】
表面塗布層3は、端子リード1と後述する絶縁用樹脂フィルム4との密着性を高めることを主目的とする層であり、主成分として有機高分子樹脂(例:エチレン−アクリル樹脂、キトサン類)を含有しており、必要に応じて添加成分として無機成分(例:クロム、ジルコニウム、チタン、シリコン)を更に含有したものである。本実施形態では、表面塗布層3は、有機高分子樹脂としてキトサン類を含有しており、詳述すると、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物をキトサン類として含有している。キトサン誘導体としては、限定されるものではなく、カルボキシメチルキトサン、カチオン化キトサン、ヒドロキシアルキルキトサン、グリセリル化キトサン、これらキトサンの酸との塩などが挙げられる。このように、表面塗布層3がキトサン類を含有していることにより、端子リード1と絶縁用樹脂フィルム4との密着性を確実に高めることができる。表面塗布層3の電気抵抗率は、端子リード1の金属基材2の電気抵抗率よりも大きい。
【0040】
この表面塗布層3は、様々な方法により形成可能であるが、浸漬コート法、ロールコート法(例:グラビアコート法、リバースロールコート法、キスコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法)、スプレーコート法等のコート法により形成されたものであることが特に望ましい。具体的には、表面塗布層3は、所定の塗液を端子リード1の金属基材2の所定の面に塗布して乾燥させることで形成されたものであることが特に望ましい。所定の塗液としては、主成分としての有機高分子樹脂を水や有機溶剤等の溶媒に溶解させた液を用いるのが望ましい。さらに、この塗液には必要に応じて添加成分として無機成分が添加される。乾燥方法としては、熱によって塗液中の溶媒成分を蒸発させる方法を用いるのが一般的である。加熱方法としては、熱風を当てる対流伝熱、金属基材2自体を加熱する伝導伝熱、赤外線ヒータ等で加熱する輻射伝熱などが用いられ、あるいはこれらの組み合わせが用いられる。
【0041】
表面塗布層3の塗布量は限定されるものではなく、様々に設定されるものであるが、特に、表面塗布層3の塗布量は1〜100mg/mに設定されることが望ましい。また、表面塗布層3の厚さは限定されるものではなく、様々に設定されるものであるが、特に、表面塗布層3の厚さは0.001〜0.05μmの範囲内に設定されるのが望ましい。
【0042】
なお、表面塗布層3の厚さは、端子リード1の金属基材2の長さ寸法L、幅寸法W及び厚さ寸法Tに対して非常に小さい。したがって、端子リード1の長さ寸法、幅寸法及び厚さ寸法は、金属基材2の長さ寸法L、幅寸法W及び厚さ寸法Tと等しいと捉えても良い。
【0043】
そして、この端子リード1では、端子リード1における外装体9のシール部9xに対応する部分に、その全周を覆う状態に絶縁用樹脂フィルム4が表面塗布層3を介して固定状態に取り付けられている。本実施形態では、樹脂フィルム4が取り付けられる端子リード1の位置は、端子リード1の長さ方向中間位置である。この取付け状態において、端子リード1と樹脂フィルム4との密着性は、表面塗布層3によって高められている。これにより、外装体9内の電解液の外部への漏出が確実に且つ長期間に亘って防止されている。
【0044】
絶縁用樹脂フィルム4は、従来の絶縁用樹脂フィルムと同じく、端子リード1と外装体9の中間層9bとしての金属層との間の電気絶縁性を確保することを目的とするものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の電気絶縁性樹脂製である。
【0045】
絶縁用樹脂フィルム4の端子リード1への取付け方法としては、樹脂フィルム4を加熱溶融して端子リード1に融着するヒートシールによる方法、接着剤を用いて端子リード1に接着する接着剤による方法等が採用される。ヒートシールによる取付け方法を採用する場合には、絶縁用樹脂フィルム4における少なくとも端子リード1との接触面が、マレイン酸等で酸変性したポリエチレン(即ち酸変性ポリエチレン)やポリプロピレン(即ち酸変性ポリプロピレン)で形成されていることが、端子リード1と樹脂フィルム4との密着性を向上させうる点で特に望ましい。
【0046】
そして、この絶縁用樹脂フィルム4と外装体9(詳述すると外装体9の最内層9a)とが、外装体9の開口縁部を融着するために行われるヒートシールによって、外装体9の開口縁部の融着と同時に融着されている。したがって、図2に示すように、端子リード1は樹脂フィルム4を介して外装体9に接合されている。
【0047】
次に、上記端子リード1の望ましい製造方法について以下に説明する。
【0048】
図7及び8に示すように、端子リード1用長帯状素板として、端子リード1の条材1Zを準備する。この条材1Zは、金属基材2用長帯状金属素板として、金属基材2の条材2Zを備えている。この金属基材2の条材2Zは、金属基材2の断面形状及び寸法と同形同寸の断面形状及び寸法を有するとともに、長さ方向に連続して延びたものである。すなわち、この条材2Zの幅寸法は金属基材2の幅寸法Wと同寸に設定されるとともに、条材2Zの厚さ寸法は金属基材2の厚さ寸法Tと同寸に設定され、一方、条材2Zの長さ寸法は金属基材2の長さ寸法Lよりも格段に長く設定されている。
【0049】
さらに、この端子リード1の条材1Zは、金属基材2の条材2Zの厚さ方向両面2p、2pと幅方向両側面2s、2sとに表面塗布層3が全体に亘って略均一な塗布量で形成されたものである。なお、この表面塗布層3は上述したようにコート法により形成されたものである。
【0050】
また、この端子リード1の条材1Zの長さ方向の一端部側が端子リード1の内端部1a側に対応し、端子リード1の条材1Zの長さ方向の他端部側が端子リード1の外端部1b側に対応している。
【0051】
次いで、端子リード1の条材1Zを剪断加工やレーザ切断加工等によってその長さ方向に短冊状に定尺に切断する。この際の切断長さは、端子リード1の金属基材2の長さ寸法Lと同寸である。図7において二点鎖線は、端子リード1の条材1Zの切断線を示している。本実施形態では、条材1Zはその長さ方向に対して垂直方向に直線状に切断されている。これにより、複数の端子リード1が製作される。このように端子リード1の条材1Zから複数の端子リード1を製作することにより、端子リード1を能率良く製作することができる。
【0052】
こうして得られた端子リード1では、その一端部側の切断面1cが端子リード1の内端部1a側の端面1eとなり、その他端部側の切断面1cが端子リード1の外端部1b側の端面1eとなる。すなわち、端子リード1の長さ方向両端面1e、1eは切断面1c、1cからなるものであり、そして当該両端面1e、1eには表面塗布層3は形成されておらず金属基材2が露出している。
【0053】
次いで、端子リード1は、端子リード1における外装体9のシール部9xに対応する部分に、その全周を覆う状態に絶縁用樹脂フィルム4が固定状態に取り付けられる。この取付け状態では、端子リード1と樹脂フィルム4との間に表面塗布層3が介在されているから、端子リード1と樹脂フィルム4との密着性が高くなっている。そのため、外装体9内に収容される電解液等の被収容流体が外装体9の外側へ漏出するのを確実に防止することができる。
【0054】
以上の手順により、絶縁用樹脂フィルム4付き端子リード1が製作される。
【0055】
なお、本実施形態では、端子リード1の条材1Zを定尺に切断して端子リード1を製作した後で、端子リード1に絶縁用樹脂フィルム4が取り付けられることで、絶縁用樹脂フィルム4付き端子リード1が製作されている。しかるに、本発明では、その他に、端子リード1の条材1Zに予め複数の絶縁用樹脂フィルム4を所定ピッチで取り付けておいた後、この条材1Zを定尺に切断することにより、絶縁用樹脂フィルム4付き端子リード1を製作しても良い。
【0056】
図2に示すように、上記端子リード1を備えたリチウムイオン二次電池10では、電池要素6の各集電体7(7A、7B)は、外装体9の内側にて、それぞれ対応する極側の端子リード1(1A、1B)の内端部1a側の端面1eにおける金属基材2の露出部2eに直接接触した状態にして溶接やロウ付け等の結合手段により電気的に接続されている。この接続状態では、端子リード1と集電体7との間に表面塗布層3が介在していないので、端子リード1と集電体7との間の電気抵抗を小さく抑えることができる。これにより、このリチウムイオン二次電池10の内部電気抵抗を小さくすることができる。
【0057】
さらに、このリチウムイオン二次電池10では、外装体9の外側にて、各端子リード1の外端部1b側の端面1eにおける金属基材2の露出部2eにバスバー15が直接接触した状態にして溶接、ロウ付け、かしめ等の結合手段により電気的に接続される。あるいは、露出部2eにバスバー15が単に直接接触されるようにバスバー15が配置されることによって、露出部2eにバスバー15が電気的に接続される。これらのように露出部2eにバスバー15が電気的に接続された状態では、端子リード1とバスバー15との間に表面塗布層3が介在していないので、端子リード1とバスバー15との間の電気抵抗を小さく抑えることができる。なお、本実施形態では、バスバー15が、外装体9の外側にて端子リード1(詳述すると端子リード1の外端部1b)と電気的に接続される外側被接続部材に対応している。
【0058】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々に変更可能である。
【0059】
例えば、本実施形態では、端子リード1を製作する際に、端子リード1の条材1Zはその長さ方向に対して垂直方向に直線状に切断されている。しかるに、本発明では、端子リード1の条材1Zは、その他の状態や形状に切断されても良く、例えば、その長さ方向に対して斜め方向に切断されても良いし、円弧状、波状、鋸歯状等の様々な形状に切断されても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、電気化学デバイスとしてリチウムイオン二次電池10及びその端子リード1に本発明の技術的思想が適用された場合を示した。しかるに、本発明では、電気化学デバイスとして例えば電気二重層キャパシタ及びその端子リードに本発明の技術的思想が適用されても良いし、その他の電気化学デバイス及びその端子リードに本発明の技術的思想が適用されても良い。
【実施例】
【0061】
次に本発明の具体的な実施例及び比較例を示す。
【0062】
<実施例>
端子リード1の金属基材2用長帯状金属素板として、幅6cm、厚さ0.2mmの無酸素銅板2の条材2Zを準備した。この条材2Zの厚さ方向両面2p、2pと幅方向両側面2s、2sとには、厚さ約2μmのニッケルめっき処理が全体に亘って予め施されている。次いで、この条材2Zの厚さ方向両面2p、2pと幅方向両側面2s、2sとに、グラビアロールを用いたグラビアコート法によって、キトサン類を主成分として含有するキトサン類水溶液(塗液)を塗布して乾燥温度200℃で乾燥させ、これにより、条材2Zの厚さ方向両面2p、2pと幅方向両側面2s、2sとに表面塗布層としてキトサン層3を全体に亘って略均一な塗布量で形成した。キトサン層3の塗布量は5mg/mであった。なお、このキトサン層3は、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を含有したものである。こうして端子リード1の条材1Zを製作した。
【0063】
次いで、この端子リード1の条材1Zをその長さ方向に5cmの長さで短冊状に切断した。これにより、長さ5cm、幅6cm、厚さ0.2mmの端子リード1を製作した。この端子リード1の長さ方向両端面1e、1eは切断面1c、1cからなるものであり、したがって両端面1e、1eにはキトサン層3は形成されておらず金属基材2である無酸素銅板が露出している。次いで、端子リード1の長さ方向中間部に、その全周を覆う状態に絶縁用樹脂フィルム4として幅1cmのマレイン酸変性ポリプロピレンフィルムをヒートシールによって融着して取り付けた。なお、マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(絶縁用樹脂フィルム4)の幅とは、端子リード1の長さ方向に沿う寸法である。これにより、絶縁用樹脂フィルム4付き端子リード1を製作した。これを実施例とした。
【0064】
<比較例>
端子リード1の金属基材2として、長さ5cm、幅6cm、厚さ0.2mmの平面視長方形状の無酸素銅板を準備した。この銅板の厚さ方向両面と幅方向両側面と長さ方向両端面には、厚さ約2μmのニッケルめっき処理が全体に亘って予め施されている。次いで、この銅板の厚さ方向両面と幅方向両側面と長さ方向両端面とに、上記実施例と同様の方法によって表面塗布層3としてキトサン層を全体に亘って略均一な塗布量で形成した。キトサン層の塗布量及び厚さは実施例と同じである。これにより、端子リード1を製作した。次いで、上記実施例と同様の方法によって端子リード1の長さ方向中間部に絶縁用樹脂フィルム4として幅1cmのマレイン化ポリプロピレンフィルムを取り付けた。これにより、絶縁用樹脂フィルム4付き端子リード1を製作した。これを比較例とした。
【0065】
[電気抵抗の測定]
上記実施例及び比較例の絶縁用樹脂フィルム4付き端子リード1における長さ方向両端部間の電気抵抗についてそれぞれ測定した。その測定方法は次のとおりである。すなわち、図9に示すように、電気抵抗測定器としてSanwa社製デジタルマルチメータ(型番:PC520M)20を用い、絶縁用樹脂フィルム4付き端子リード1の長さ方向の一端縁部(上端縁部)をデジタルマルチメータ20に備えられた一方のワニ口クリップ21Aで挟んで電気的に接続した。また、絶縁用樹脂フィルム4付き端子リード1の他端面(下端面)を銅平板22の表面に絶縁用樹脂フィルム4付き端子リード1の自重のみの力を加えて略面接触状態に接触させ、そしてこの銅平板22の端部をデジタルマルチメータ20に備えられた他方のワニ口クリップ21Bで挟んで電気的に接続した。そして、デジタルマルチメータ20によって両ワニ口クリップ21A、21B間の電気抵抗を測定した。その結果は以下のとおりであった。
【0066】
−測定結果−
・実施例:0.13Ω
・比較例:0.93Ω。
【0067】
上記の測定結果から分かるように、実施例の絶縁用樹脂フィルム4付き端子リード1の電気抵抗は、比較例のそれよりも格段に小かった。その理由は、実施例の端子リード1の長さ方向両端面1e、1eには電気抵抗部となるキトサン層(表面塗布層3)が形成されていないからである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、正極端子リードや負極端子リードとして用いられる端子リード、該端子リードの製造方法、及び、該端子リードを備えた電気化学デバイス(例:リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ)に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1:端子リード
1A:正極側端子リード
1B:負極側端子リード
1a:端子リードの内端部
1b:端子リードの外端部
1c:端子リードの切断面
1e:端子リードの長さ方向両端面
1Z:端子リードの条材(端子リード用素板)
2:金属基材
2e:金属基材の露出部
2p、2p:金属基材の厚さ方向両面
2s、2s:金属基材の幅方向両側面
2Z:金属基材の条材(金属基材用金属素板)
3:表面塗布層
4:絶縁用樹脂フィルム
6:電池要素(電気化学要素)
7:集電体(被接続部材)
9:外装体
9x:外装体のシール部
10:リチウムイオン二次電池(電気化学デバイス)
15:バスバー(被接続部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学要素を収容する外装体の内側に配置される内端部と、外装体の外側に配置される外端部とを有するとともに、基材として板状金属基材を備え、且つ、外装体のシール部に対応する部分に絶縁用樹脂フィルムが設けられる端子リードであって、
金属基材用金属素板の厚さ方向両面と幅方向両側面とに表面塗布層が設けられた端子リード用素板における少なくとも外端部側が切断されて製作されたものであり、
外端部側の切断面に金属基材が露出していることを特徴とする端子リード。
【請求項2】
さらに、端子リード用素板における内端部側が切断されて製作されたものであり、
内端部側の切断面に金属基材が露出している請求項1記載の端子リード。
【請求項3】
表面塗布層は、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を含有している請求項1又は2記載の端子リード。
【請求項4】
電気化学要素を収容する外装体の内側に配置される内端部と、外装体の外側に配置される外端部とを有するとともに、基材として板状金属基材を備え、且つ、外装体のシール部に対応する部分に絶縁用樹脂フィルムが設けられる端子リードの製造方法であって、
金属基材用金属素板の厚さ方向両面と幅方向両側面とに表面塗布層が設けられた端子リード用素板における少なくとも外端部側を切断することにより、外端部側の切断面に金属基材を露出させることを特徴とする端子リードの製造方法。
【請求項5】
さらに、端子リード用素板における内端部側を切断することにより、内端部側の切断面に金属基材を露出させる請求項4記載の端子リードの製造方法。
【請求項6】
表面塗布層は、キトサン及びキトサン誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上の化合物を含有している請求項4又は5記載の端子リードの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の端子リードを備えた電気化学デバイス。
【請求項8】
請求項2記載の端子リードを備えるとともに、該端子リードの内端部側の切断面における金属基材の露出部に、外装体内に収容された電気化学要素における端子リードとの被接続部材が電気的に接続されていることを特徴とする電気化学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−80586(P2013−80586A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219119(P2011−219119)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【Fターム(参考)】