説明

端子圧着装置及び端子圧着方法

【課題】線材等を問わず適切な出代を容易且つ確実に確保することができる端子圧着装置を提供する。
【解決手段】電線81を端子金具71から所定の高さだけ上方で支持するガイド部材7と、ガイド部材7に支持された電線の先端を当接させるストッパ8とを設け、電線81の導電部83をストッパ8に当接させた状態で、電線81をガイド部材7により端子金具71の上方で支持させた後、クリンパ2、3を下降させ、電線81の先端を端子金具71に押し付けて圧着するようにした。したがって、クリンパ2、3で端子金具81へ押し付けた際に、電線81が支持位置を固定点として曲がり、電線81の先端が若干後退することを利用し、出代を1mm以内で容易且つ確実に確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を端子金具に圧着するための端子圧着装置及び端子圧着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オープンバレルを備えた端子金具に被覆電線の被覆を除去して露出させた電線を圧着する端子圧着装置としては、たとえば特許文献1や特許文献2に開示されているものがある。この従来の端子圧着装置による圧着について、図5をもとに説明する。
端子金具71は、前後方向(図5における左右方向)に長く形成された金属製帯状体であって、その後部には、インシュレーションバレル72及びワイヤバレル73が開かれた状態で設けられている。そして、電線81の被覆部82をインシュレーションバレル72上に、電線81の先端に露出させた導電部83をワイヤバレル73上にそれぞれセットし、図示しないクリンパで両バレル72、73をかしめることにより、電線81を端子金具71に圧着するようになっている。
【0003】
この圧着時において、圧着部の機械的強度、及び電気的接続性を良好に確保するためには、図5(a)に示す如く、導電部83の先端がワイヤバレル73よりも前方へ若干突出していなければならない。この突出長さΔLを出代と呼ぶ。一方、ワイヤバレル73の前方部分には、図5(b)に示す如く、一般的に、端子金具71をコネクタハウジングに挿入した際にランス74(係止部)が係止する係止部として機能する場合が多い。したがって、出代ΔLが長すぎると、図5(c)に示す如く、出代ΔLがランス74に干渉してしまうという不具合が生じることになる。
【0004】
そこで、従来(特許文献1や特許文献2)では、ワイヤバレル73の前方にストッパ(図示せず)を設置し、ストッパへ導電部83を突き当てることで導電部83の位置決めをするように構成しており、出代ΔLは、作業者が端子金具71に対してストッパの位置を前後方向へ移動させることにより調整していた。尚、一般的な出代ΔLは、1mm程度となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−236254号公報
【特許文献2】特開平11−283719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インシュレーションバレル72やワイヤバレル73をかしめる際、通常の導電部83(たとえば、銅線)であれば、かしめに伴う伸び量は小さく、ストッパにより出代ΔLを適切に管理することは可能である。しかしながら、たとえばアルミ線等、比較的柔らかい金属線により導電部82が構成されていると、通常時よりも強い圧力でかしめる(いわゆる強圧着する)必要があることから、導電部83の変形量が大きくなり、ひいては出代ΔLが端子金具71から飛び出すような事態が起こりやすい。このような場合、出代ΔLを1mmよりも短い長さに押さえるためには、突き当て位置をワイヤバレル73の前端より後方に設定することになるため、ストッパがクリンパに干渉してしまう。つまり、従来のようなストッパでは調整可能な範囲を超えることになる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、線材等を問わず適切な出代を容易且つ確実に確保することができる端子圧着装置及び端子圧着方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、端子金具を載置するアンビルと、前記アンビル上に載置された端子金具のバレルをかしめ、電線を前記端子金具に圧着するクリンパとを備えた端子圧着装置であって、前記電線の所定位置を前記端子金具から所定の高さだけ上方で支持するガイド部材と、前記ガイド部材に支持された電線の先端を当接させるストッパとを備えたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ガイド部材は、前記端子金具の圧着完了時まで、前記電線の前記所定位置を前記所定の高さだけ上方で支持することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記ガイド部材が、上下方向へスライド可能に設けられており、前記電線の前記所定位置を支持する高さ位置を変更可能としたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ガイド部材が、前記端子金具に近接/離隔する方向に移動可能に設けられており、前記電線の先端から前記ガイド部材により支持する支持位置までの距離を変更可能としたことを特徴とする。
一方、上記目的を達成するために、本発明のうち請求項5に記載の発明は、アンビルとクリンパとを備えた端子圧着装置において、前記アンビル上に載置された端子金具のバレルを前記クリンパによってかしめ、電線を前記端子金具に圧着する端子圧着方法であって、前記電線を、前記端子金具から所定の高さだけ上方で支持し、前記電線の先端を前記端子金具の上方に位置させた後、前記クリンパを下降させ、前記電線の先端を前記端子金具に押し付けて圧着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電線の所定位置を端子金具から所定の高さだけ上方で支持し、電線の先端を端子金具の上方に位置させた後、クリンパで端子金具へ押し付けて圧着するため、端子金具への押し付け時に電線が支持位置を固定点として曲がり、電線の先端がストッパに当接した位置よりも若干後退することになる。したがって、その後退を利用することで、出代を1mm以内で容易且つ確実に確保することができ、アルミ線等の比較的柔らかい金属線が電線に用いられているような場合にも好適に対応することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、ガイド部材が、端子金具の圧着完了時まで、電線の所定位置を所定の高さだけ上方で支持するため、電線の先端が圧着中にずれたりしない。したがって、電線の先端を所望の位置で確実に圧着することができる。
さらに、請求項3及び4に記載の発明によれば、電線を支持する高さや先端から支持位置までの距離を変更することにより、たとえば線材等に応じて出代を適切な長さに微調整することができ、1mm以内の適切な出代をより確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】端子圧着装置を示した説明図である。
【図2】ガイド部材を示した説明図である。
【図3】電線を圧着する過程を示した説明図である。
【図4】ガイド部材を移動させる態様を示した説明図であって、(a)は上下方向への移動、(b)は前後方向への移動を示している。
【図5】従来の端子圧着装置における圧着後の端子金具を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態となる端子圧着装置及び端子圧着方法について、図面にもとづき詳細に説明する。尚、本実施形態においては、図1における左右方向を端子圧着装置1の前後方向(右側を前側とする)とする。
【0012】
端子圧着装置1は、従来同様の端子金具71に電線81を圧着するためのものであって、2はインシュレーションバレル用クリンパ、3はワイヤバレル用クリンパであり、端子金具71に対して下降し、両バレル72、73をかしめるようになっている。また、4は端子金具71を載置するためのアンビルであり、5はかしめ時に端子金具71がズレないように押さえるための押さえ装置である。さらに、インシュレーションバレル用クリンパ2の後面には、圧着時に電線81を押さえるための電線押さえ部材6が上下動可能に設置されている。
【0013】
また、クリンパ2、3よりも後方へ所定距離だけ離れた位置には、圧着する電線81をガイドするためのガイド部材7が設けられている。ガイド部材7は、電線81を支持する切り欠き11を上縁に有する板状体であって、中央部には上下方向に長い一対のスリット12、12が設けられている。そして、ガイド部材7は、アンビル4の前方に設置されたカットホルダ13の後面にスリット12、12を介してネジ止めされており、ネジ止め位置をスリット12、12の長さだけ上下方向に調節可能となっている。また、ガイド部材7は、カットホルダ13との間に図示しないスペーサを挟むことによって、前後方向(端子金具71に近接/離隔する方向)へ移動可能となっている。尚、カットホルダ13は、図示しないスライドカッタとともに、端子金具71のキャリア部(端子金具71がつながって連続供給されるときの細いつなぎ部)を剪断して切断するためのものである。
さらに、両クリンパ2、3よりも前方位置で、ガイド部材7の切り欠き11と同じ高さ位置には、電線81の先端を当接させるためのストッパ8が設けられている。
【0014】
ここで、以上のように構成される圧着装置1における電線81の圧着方法について図3及び図4をもとに説明する。
まず、電線81先端の被覆を除去し、導電部83を露出させる。次に、端子金具71をアンビル4上にセットするとともに、圧着した際に出代ΔLが適切になるように、図4に示す如く、ガイド部材7の高さ位置及び前後方向での位置を調節する。そして、切り欠き11に電線81を支持させ、導電部83の先端面をストッパ8に当接させる。その後、クリンパ2、3及び電線押さえ部材6を下降させ、電線押さえ部材6により電線81を端子金具71上に押さえ付け、クリンパ2、3によりインシュレーションバレル72及びワイヤバレル73をかしめて導電部83を圧着する。尚、ガイド部材7は、導電部83の圧着完了時まで、電線81を支持をすることになる。
【0015】
上記圧着においては、ガイド部材7及びストッパ8により電線81を端子金具71から所定の高さ位置に支持している。そのため、電線押さえ部材6により電線81を押さえ付けた際、図3(b)に示す如く、ガイド部材7による支持位置を固定点として電線81が曲がり、端子金具71上における導電部83の先端の前後方向での位置は、ストッパ8の位置よりも後退する(図1又は図3中Δt)ことになる。つまり、出代ΔLは、ストッパ8とワイヤバレル73との前後方向での差から上記後退した長さだけ短くなる。この後退する量は、ガイド部材7の高さ位置及び前後方向での位置に応じて定まるもので、当該後退量について下記表1〜6に示す。表1は、ガイド部材7による電線81の支持位置を端子金具71よりも3.0mm上方とした場合の後退量を示しており、表2は3.5mm上方、表3は4.0mm上方、表4は4.5mm上方、表5は5.0mm上方、表6は、6.0mm上方とした場合の後退量を示している。また、各表におけるセット距離とは、ストッパ8とガイド部材7による支持位置との前後方向での距離を示しており、電線先端位置とは、電線押さえ部材6により電線81を押さえた際の導電部83の先端位置と支持位置との前後方向での距離を示している。つまり、表における差が出代ΔLとなる。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
【表4】

【0020】
【表5】

【0021】
【表6】

【0022】
そして、実際に圧着した際には、導電部83の変形等により出代ΔLは変化し、又バラツキが生じるものの、当該バラツキは表7に示すような状態となり、1mm以内で、且つ、確実に0mmよりは大きい出代ΔLを確保することができる。
【0023】
【表7】

【0024】
以上のような構成を有する端子圧着装置1及び端子圧着方法によれば、端子金具71の上方で電線81を支持するガイド部材7を備えているため、電線81を端子金具71に押し付ける際に、電線81がガイド部材7による支持位置を固定点として下方へ曲がり、導電部83の先端の前後方向での位置がストッパ8に当接した位置よりも端子金具71上では若干後退することになる。したがって、この後退を利用して、表7及び表8に示す如く、1mm以内で出代ΔLを確保することができ、たとえばアルミ線等の圧着時に変形量が大きいような電線を圧着する場合であっても好適に圧着することができる。
また、ガイド部材7は、導電部83の圧着完了時まで、電線81を支持をするため、圧着中等に不用意に導電部83の位置がずれたりしない。したがって、導電部83を所望の位置で確実に圧着することができる。
さらに、端子圧着装置1では、ガイド部材7による電線81の高さ方向での支持位置及び前後方向での支持位置を夫々調整することにより、圧着時の出代ΔLを表1〜6に示す如く調整可能としている。したがって、たとえば線材や線径、端子金具の種類やバレル72、73のサイズ等に応じて、出代ΔLを0mm〜1mm以内の範囲で容易に調整し確保することができる。
【0025】
なお、本発明の端子圧着装置及び端子圧着方法は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、ガイド部材等に係る構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0026】
たとえば本実施形態では、ガイド部材7による電線81の支持位置を上下方向且つ前後方向で調整可能としているが、上下方向又は前後方向のいずれか一方向へのみ調整可能としても出代ΔLの微調整は可能であり、当該構成を採用することで構造の簡素化を図ってもよい。さらに、支持位置の高さ方向を調整するにあたっては、ガイド部材7を上下動させるのではなく、ガイド部材7に深さが異なる複数の切り欠きを設け、支持させる切り欠きを変更することにより、支持位置の高さを変更するようにしてもよい。
また、支持位置の前後方向を調整するにあたっては、ガイド部材7とカットホルダ13との間にスペーサを挟むのではなく、ネジ等によるスライド機構を設けるようにしても良い。
さらに、ガイド部材7は、必ずしも導電部83の圧着完了時まで電線81を支持する必要はなく、クリンパ2、3による圧着開始に伴って電線81を離し、たとえば次の電線81の支持に係る段取りを行うように構成することも可能である。
加えて、ガイド部材7による電線81の支持構造についても、上記切り欠き11に何ら限定されることはなく、上縁に一対の突起を形成し、突起間に電線81を嵌め込む構造とする等、適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0027】
1・・端子圧着装置、2・・インシュレーションバレル用クリンパ、3・・ワイヤバレル用クリンパ、4・・アンビル、5・・押さえ装置、6・・電線押さえ部材、7・・ガイド部材、8・・ストッパ、11・・切り欠き、12・・スリット、71・・端子金具、81・・電線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を載置するアンビルと、
前記アンビル上に載置された端子金具のバレルをかしめ、電線を前記端子金具に圧着するクリンパとを備えた端子圧着装置であって、
前記電線の所定位置を前記端子金具から所定の高さだけ上方で支持するガイド部材と、前記ガイド部材に支持された電線の先端を当接させるストッパとを備えたことを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記端子金具の圧着完了時まで、前記電線の前記所定位置を前記所定の高さだけ上方で支持することを特徴とする請求項1に記載の端子圧着装置。
【請求項3】
前記ガイド部材が、上下方向へスライド可能に設けられており、前記電線の前記所定位置を支持する高さ位置を変更可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の端子圧着装置。
【請求項4】
前記ガイド部材が、前記端子金具に近接/離隔する方向に移動可能に設けられており、前記電線の先端から前記ガイド部材により支持する支持位置までの距離を変更可能としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の端子圧着装置。
【請求項5】
アンビルとクリンパとを備えた端子圧着装置において、前記アンビル上に載置された端子金具のバレルを前記クリンパによってかしめ、電線を前記端子金具に圧着する端子圧着方法であって、
前記電線を、前記端子金具から所定の高さだけ上方で支持し、前記電線の先端を前記端子金具の上方に位置させた後、前記クリンパを下降させ、前記電線の先端を前記端子金具に押し付けて圧着することを特徴とする端子圧着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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