説明

端末普及数調査システム及び方法

【課題】IPアドレスとその地理的位置情報とを用いて端末の地域別普及数を正確且つ簡易に調査する端末普及数調査システム及び方法を提供する。
【解決手段】アドレス管理サーバ3は随時更新され、ネットワーク事業者における最新のIPアドレスと地理的位置情報との対応アドレスマップを保持する(手順10〜11)。端末管理サーバ2は各端末5と通信してそのIPアドレスを取得して端末5を識別し、アドレスマップを参照して端末5の地理的位置情報を取得する(手順20-25)。集計サーバ4は各端末5につき取得された地理的位置情報を地域別に集計することによって、端末の地域別普及数を得る(手順30-32)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末のIPアドレスとIPアドレスの地理的位置情報とを用いて端末の地域別普及数を調査する端末普及数調査システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある端末のIPアドレスより、当該端末の存在する地理的位置情報を取得する技術として例えば、非特許文献1や2に紹介される技術がある。
【0003】
非特許文献1には、日本国内を対象とし、ネットワーク事業者に払い出されたIPアドレス空間と、ネットワーク事業者毎のIPアドレス割り当てルールを用いて、独自にIPアドレスと地域の対応付けを持つデータベースを構築し、IPアドレスに対する地理的位置情報(緯度・経度や、都市名などの情報)を提供するシステムが紹介されている。非特許文献2には、日本国内に限らず世界を対象としてIPアドレスに対する地理的位置情報を提供するシステムが紹介されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.arearesearch.co.jp/product/index.html [SURFPOINT(登録商標)(サイバーエリアリサーチ株式会社)]
【非特許文献2】http://www.maxmind.com/app/ip-location [GeoIP(MaxMind社)]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、店舗で購入する等した各種の端末の普及数を地域別に調査しようとする場合、当該端末がIP端末であれば、上記非特許文献1や2の従来技術を利用することも考えられる。しかしながら、上記従来技術は単にIPアドレスから地理的位置情報を取得する技術であって、そもそも端末普及数の地域別調査の技術ではないので、仮に普及数調査に利用しようとした場合、次のような課題が生ずる。
【0006】
すなわち、上記従来技術では、ネットワーク事業者の割り当てルールに基づき、データベースを構築しているため、割り当てルールが非公開のネットワーク事業者の場合、推定に頼らざるを得ない。推定方法としては、例えば、アドレス空間上の各IPアドレスに対して、tracerouteを行い、経路上のルータのドメイン名などから都市を推定している。しかしこれは推定であって必ずしも正確であるとは限らず、しかも大量のIPアドレスやドメイン名に対して逐一推定を行うことには困難が伴う。また、ネットワーク事業者の割り当てルールが利用できたとしても、当該ルールは常時更新される可能性があり、上記データベースによる手法では最新の情報は得られないという課題もある。
【0007】
さらに上記従来技術は、普及数調査技術ではないので、IPアドレスから端末の情報を得ることや地域別データを得ること自体がそもそも考慮されていない。
【0008】
その他の従来技術として、端末のメーカーへのユーザ登録情報や、販売店での購入情報(宅配先含む)などを用いて、端末普及数の調査を行う従来型の調査方法(マニュアル調査と呼ぶこととする)も考えられる。しかし、マニュアル調査を端末普及数の地域別調査に利用しようとしても、やはり次のような課題が生ずる。
【0009】
すなわち、マニュアル調査の場合、ユーザ登録を行わないユーザがいる、全てのユーザが宅配を希望するわけではない、購入店の地域と使用場所の地域が異なる、などの理由で、完全なデータを集めることが難しいという課題がある。特に、ユーザ登録や宅配などの証跡を残さない小型かつ小額の端末の場合には、どこの地域に居住している人が購入したのかが不明確になる場合が多い。
【0010】
本発明の目的は、このような各種の従来技術の課題を解決し、IPアドレスとその地理的位置情報とを用いて端末の地域別普及数を正確且つ簡易に調査する端末普及数調査システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の従来技術の課題を解決するため、本発明は、端末の地域別普及数を調査する端末普及数調査システムであって、端末と通信して該端末を識別すると共にそのIPアドレスを取得する端末管理サーバと、IPアドレスと地理的位置情報との対応付けを保持するアドレス管理サーバと、端末の地域別普及数を集計する集計サーバとを備え、前記端末管理サーバは前記識別した端末のIPアドレスを前記アドレス管理サーバに通知し、該アドレス管理サーバより当該端末の地理的位置情報を取得して前記集計サーバに通知し、該集計サーバは該通知された端末毎の地理的位置情報を地域別に集計することにより、端末の地域別普及数を集計することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、端末の地域別普及数を調査する端末普及数調査方法であって、端末と通信して該端末を識別すると共にそのIPアドレスを取得するステップと、IPアドレスと地理的位置情報との対応付けを保持するステップと、前記識別した端末に対して前記取得したIPアドレスに対する地理的位置情報を、当該IPアドレスに対する前記保持した対応付けより取得して、前記識別した端末に対する地理的位置情報を得るステップと、前記得た端末毎の地理的位置情報を地域別に集計することにより、端末の地域別普及数を集計するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、端末の地域別普及数を正確且つ簡易に調査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】端末普及数調査システムの構成図である。
【図2】端末普及数調査の手順を示す図である。
【図3】端末普及数調査システムの機能ブロック図である。
【図4】ネットワーク事業者における各地域へのIPアドレス割り当てルールである、アドレスマップの例を示す図である。
【図5】テーブル形式表示部による集計結果の表示例を示す図である。
【図6】地図形式表示部による集計結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1に、本発明の実施形態に係る端末普及数調査システムの構成を示す。端末普及数調査システム1は、その主要な構成として(後述の図3にもまた示されるように)端末管理サーバ2、アドレス管理サーバ3及び集計サーバ4を備える。これらの概要は次の通りである。
【0016】
集計サーバ4は、端末管理サーバ2が収集した端末5のIPアドレスと地理的位置情報と等の結果に基づき、地域毎の端末数を集計し表示する。端末管理サーバ2は、端末5と通信し、端末5のIPアドレスを調査する。アドレス管理サーバ3は、事業者Aのネットワーク20や事業者Bのネットワーク30といったようなネットワーク事業者毎に存在し、各事業者のネットワーク内(アクセスネットワーク10内)の各端末5への地域別IPアドレス割り当てルールをリアルタイムに更新して当該ルールの最新版を保持するとともに、端末管理サーバ2の問い合わせに応じて当該ルールを参照した結果を、端末管理サーバ2に通知する。
【0017】
図1の構成においてネットワーク事業者は、例として事業者A及びBの2つが示されているが、1つあるいは任意の複数の組織のいずれでもよい。端末5は、IPアドレスを持つ通信機器であり、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコンなどの情報家電、家庭用ゲーム機、パソコンなど各種の宅内端末が含まれ、後述のようにこれらが通信するに際して経由する宅内のHGW(ホームゲートウェイ)も含まれる。当該宅内端末の用途は家庭的、業務的を問わない。
【0018】
端末5は、住居やオフィスビル等の建物6内の固定インターネット接続回線を通して、アクセスネットワーク10を経てインターネット100に接続することができ、端末管理サーバ2と通信することができる。また、端末5は、建物6内に導入された無線LANを用いてインターネットに接続できる携帯型端末であってもよい。
【0019】
端末管理サーバ2は、端末5の調査を行うことを目的とした専用のサーバとして設けてもよい。また調査専用サーバではなく、端末5に対して、ユーザ登録、ソフトウェアのバージョンアップ、故障検知などの付加価値を提供するサーバにおいて端末調査を合わせて実施することで、端末管理サーバ2として機能するようにしてもよい。
【0020】
なお、本発明においては、普及数調査という性質のため、全てのネットワーク事業者の情報を集める必要はなく、サンプルとして十分な割合となるネットワーク事業者(場合によっては一事業者でも十分)において各々アドレス管理サーバ3を設けて、正確かつリアルタイムなIPアドレス割り当てルールを集めれば十分である。
【0021】
図2に本発明の端末普及数調査手順を示す。また、図3に端末普及数調査システム1の詳細な機能ブロック図を示す。図3に示すように、端末普及数調査システムは端末管理サーバ2、アドレス管理サーバ3及び集計サーバ4を備える。端末管理サーバ2は、端末固有情報取得部21、ネットワーク事業者調査部22、通知取得制限部23及び付加情報取得部24を含み、これらは端末管理サーバ2における追加的機能を担う。また、集計サーバ4はテーブル形式表示部41、地図形式表示部42及び粒度変換部43を含み、これらは集計サーバ4における追加的機能を担う。図2及び図3を参照し、本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0022】
図2において、各手順ステップ群S1〜S3での主な役割を果たす主体は次のとおりである。すなわち、手順(10)及び(11)を含む手順ステップ群S1はアドレス管理サーバ3が主体となり、手順(20)〜(25)を含む手順ステップ群S2は端末管理サーバ2が主体となり、手順(30)〜(32)を含む手順ステップ群S3は集計サーバ4が主体となる。以下、各手順ステップ群を順次説明する。
【0023】
[手順ステップ群S1]
ネットワーク事業者内で各地域へのIPアドレス割り当てルール(アドレスマップ)の変更があった場合、手順(10)にて、当該事業者のネットワーク運用者(図1や図3では不図示)は、アドレス管理サーバ3に対して、当該変更を反映させて地域別IPアドレス割り当てルールの更新を行う。これに基づき、手順(11)においてアドレス管理サーバ3は、自身の保持するアドレスマップを更新して最新の状態とする。
【0024】
このように更新されるアドレスマップの例を図4に示す。アドレスマップは、プレフィクスと呼ばれるアドレス空間と地理的位置情報とを対応付けた組のリストで構成される。欄C1に示されるプレフィクスは、IPアドレスの範囲を示す情報であり、例えば、12.0.0.0/24であれば、12.0.0.0〜12.0.0.255までの範囲を表す。欄C1の例では、IPv4アドレスの場合を記載しているが、IPv6アドレスであっても、IPv4アドレスとIPv6アドレスとを併用していてもよい。
【0025】
当該アドレス空間に対応する地理的位置情報とは、地球上の座標(緯度・経度)や都市名などの情報である。都市名による地理的位置情報が欄C2に示され、座標(緯度Latitude・経度Longitude)による地理的位置情報が欄C3に示されているが、各アドレス空間につきこれらのうち少なくとも一方があればよい。また、地理的位置情報はこのような座標や都市名以外の情報によって与えられてもよい。
【0026】
地理的位置情報は、当該アドレス空間内のIPアドレスを付与される端末5が実際に存在する場所を所定の粒度で特定する情報である。粒度とは、例えば数100メートル〜数キロメートル平方程度などといったような、地理的位置情報を確定し得る距離範囲のきめ細かさである。当該粒度はネットワーク事業者における地域毎のIPアドレス割り当ての詳細に依存する。欄C3には一点の座標として地理的位置情報が示されているが、これは対応する欄C2の都市における代表点を示しており、地理的位置情報には一般に、欄C2やC3では具体的には不図示の距離範囲や領域形状の情報も含まれている。
【0027】
なお本発明においては、位置情報とは、ネットワーク上の経路情報等に基づくネットワーク空間上の位置等とは別概念であり、実空間上の位置であることを明確にするため、「地理的」位置情報という用語を用いる。
【0028】
ここで、手順(10)の前提となる、ネットワーク事業者におけるアドレスマップ運用形態には、次の(a)(b)などがある。(a)本アドレスマップ相当のデータベースを直接管理し、ネットワーク構成の変更などに伴い、運用者が直接アドレスマップの修正を行う。
【0029】
(b)ネットワーク上の機器の設定情報(ルータにおけるインタフェースへのIPアドレス割り当て等)の一部として、地理的位置情報を記述しておく。ネットワーク上の機器の設定情報を管理するサーバ(図1や図3その他では不図示)が、定期的あるいは設定更新時に、ネットワーク機器の設定情報を取得する。この場合、運用者が、ネットワーク機器の設定を変更すると、自動的にアドレスマップに相当する情報を持つ、ネットワーク機器の設定情報の管理サーバの情報が更新される。
【0030】
[手順ステップ群S2]
手順(20)にて、端末5は端末管理サーバ2に対してネットワーク経由で何らかの通信を行う。当該通信は例えば、ソフトウェア更新の問い合わせなどの通信である。これに対して手順(21)の通信にて、端末管理サーバ2は端末5への応答を行い、例えばソフトウェア更新の有無の情報や、更新がある場合であればさらに更新ソフト自体等を送信する。
【0031】
当該手順(20)及び(21)におけるパケット解析等によって、端末管理サーバ2は端末5のIPアドレスを知ることで当該端末5を識別し、さらに以下説明する手順(22)〜(25)により、当該端末5をより詳細に識別すると共にその地理的位置情報を取得する。
【0032】
手順(22)では、端末管理サーバ2はそのネットワーク事業者調査部22が当該端末5の所属するネットワーク事業者を調査する。具体的には、ネットワーク事業者調査部22は、当該端末5のIPアドレスをもとに周知のwhois等の手法を用いてIPアドレスからドメインの逆引きを行うことで、そのIPアドレスの所属する、すなわち当該端末5の所属するネットワーク事業者を調査する。
【0033】
手順(23)では、端末管理サーバ2は当該端末5がユニークであるか、すなわちある特定の端末であってそれまでに当該手順ステップ群S2で通信したその他の端末5と区別されるものであるか、を判断する。当該判断は本発明において地域別の端末普及「数」を適切に調査するための前提となるものである。具体的には、以下(A)(B)などの手法により判断する。
【0034】
(A)端末5のIPアドレス(IPv4アドレスの場合)又はIPアドレス空間(IPv6アドレスの場合)が異なる端末をユニークな端末とする。
【0035】
(B)端末5が端末管理サーバ2と通信する前記手順(20)(21)において、端末5の固有ID(シリアルナンバー等)を合わせて通知させ、端末固有情報取得部21が当該固有IDを取得する。取得したシリアルナンバー等の固有IDが異なれば、異なる端末と判断する。
【0036】
手法(A)では前記手順(20)(21)で知った、いわば仮識別子としてのIPアドレスがそのまま当該端末5の固有識別子として利用される。手法(A)は、端末5がハードウェア的な固有IDを持たない場合又は持っているが当該固有IDを取得できない場合にも適用可能であるという利点がある。一方、手法(B)は(A)よりも正確であるので、利用できる場合は手法(B)を優先する。
【0037】
IPアドレスの割り当ては、IPv4アドレスの場合、通常1つのアドレスとして、IPv6アドレスの場合、通常/48あるいは/64などのアドレス空間として、宅内のHGW(ホームゲートウェイ)に割り当てられるのが一般的である。端末5のユーザが固定IPサービスのユーザの場合には、IPv4アドレスあるいはIPv6アドレスのアドレス空間を用いて手法(A)により端末5がユニークであることを特定できる。
【0038】
当該ユニークと特定される端末5は、前記宅内のHGWであってもよいし、当該HGW配下に有線/無線LANで接続され当該HGWを経由して通信する、図1にて説明した各種情報家電その他の宅内端末であってもよい。例えば、端末管理サーバ2が宅内端末の冷蔵庫と通信する際は、経由するHGWのIPアドレスを取得し、当該HGWのIPアドレスを冷蔵庫のIPアドレスとみなして、ユニークであることを特定する。
【0039】
一方、現状では、多くのコンシューマ向けのサービスは、固定IPではないため、IPアドレスの変動があることを想定する必要はあるが、一般には一定期間(例えば数日)IPアドレスが変わらない場合が多い。このような状況を踏まえ、調査期間が短い場合(例えば1日など)には、固定IPでなくとも本発明に係る端末普及数調査において手法(A)が有効になる場合も存在する。
【0040】
手法(B)は、手法(A)の上記のような問題点を補うため、端末固有情報取得部21の取得する端末の固有IDにより、端末がユニークであるかを判断する。端末5自身がシリアルナンバー等を持つ場合は、それを固有IDとして使用する。端末5と端末管理サーバ2との間で、ユーザ認証等の手続きを行う場合には、ユーザが入力した端末IDやユーザIDなども端末固有情報取得部21で取得して手がかりとし、端末5がユニークであるかを判断する。
【0041】
特に手法(B)では、無線LANを利用するような端末5であって自宅以外にも出かけ先でもネットワーク接続して利用可能な移動可能端末である場合に、別の場所で再び手順(20)の通信が行われても、ユニークではないと判断されるようになる。よって同一端末であるのにもかかわらず、異なる地域において異なる端末として複数回カウントされるような事態を避けることができる。このことは、後述する取得通知制限部23による効果の一種でもある。
【0042】
手順(24)では、端末管理サーバ2が前記手順(23)により当該ユニークであると判断された端末5に対して、その地理的位置情報をアドレス管理サーバ3に問い合わせる。当該問い合わせに際して、端末管理サーバ2はアドレス管理サーバ3に端末5のIPアドレスを通知する。当該問い合わせ対象のアドレス管理サーバ3は前記手順(22)によって調査された、当該端末5の所属するネットワーク事業者におけるアドレス管理サーバ3である。このようにして本発明は、端末5によって利用するネットワーク事業者が異なるために、ネットワーク事業者が複数となる場合であっても実施可能である。
【0043】
なお、前記手順(22)においてネットワーク事業者が調査できなかった場合や、調査されたネットワークの事業者が本発明に係るアドレス管理サーバ3を所有していない又は所有しているが利用を禁止している場合は、本手順(24)及び次の手順(25)は実施できないため、省略される。
【0044】
手順(25)では、アドレス管理サーバ3が、前記手順ステップ群S1にて更新され最新状態となっている現在のアドレスマップを参照して、当該通知されたIPアドレスに対応する地理的位置情報を端末管理サーバ2へ応答通知する。端末管理サーバ2は当該応答された地理的位置情報を当該端末5と対応づけて保持する。
【0045】
なお、以上手順(20)〜(25)のステップ群S2は、複数存在する端末5の各々につき、手順(20)の通信が行われた場合に実施される。こうして各端末5の地理的位置情報が端末管理サーバ2に所定期間に渡って蓄積された後、次の手順ステップ群S3が実施される。なお当該蓄積するための所定期間については、長期的な運用として後述する。
【0046】
[手順ステップ群S3]
手順(30)にて集計サーバ4は、端末管理サーバ2へ端末情報すなわち蓄積された各端末5の地理的位置情報の通知を要求し、手順(31)では当該通知に応答して端末管理サーバ2が端末情報を返信する。手順(32)では集計サーバ4が、返信された端末情報における各端末の地理的位置情報を、地域別に集計することによって、本発明における最終的な結果としての端末の地域別普及数の集計を行う。
【0047】
手順(32)ではまた、当該集計結果を整形してテーブル形式表示部41が、地域と端末数とを項目とするテーブル形式によって表示し、当該集計結果を整形して地図形式表示部42が、地図上に位置させた地域と該地域に併記される端末数との地図形式によって表示してもよい。
【0048】
図5に、テーブル形式表示部41による表示の例を示す。当該例は地理的位置情報が図4の欄C2に示す都市名の例によって与えられた場合の例であり、欄C4には地理的位置情報における各地域として「さいたま」、「ふじみ野」、「所沢」等が示され、それぞれ集計により得られた端末普及数が「545」、「17」、「354」等と示されている。また、図6に、当該図5の例と同じ集計結果を地図形式表示部42によって表示した例を示す。ここでは地図M1として日本の関東地方が示され、当該地図M1上における「さいたま」の位置P1にその地域における端末普及数「545」が、「ふじみ野」の位置P2にその地域における端末普及数「17」が、「所沢」の位置P3にその地域における端末普及数「354」が、各地域の名称と共に併記されている。
【0049】
なお、手順(32)にて集計サーバ4が集計を行うに際しては、地理的位置情報において各地域の指定される粒度が端末管理サーバ2における粒度と必ずしも揃っている必要はない。特に、端末管理サーバ2における粒度が、端末普及数調査の観点から過度に細かい場合には、集計サーバ4において適宜粗い粒度に変換して集計してもよい。なお、逆に端末管理サーバ2の粒度より細かい粒度に変換することはできない。
【0050】
例えば端末管理サーバ2において「埼玉県」に対して図4のように「さいたま」市、「ふじみ野」市、「所沢」市、等のように市単位の粒度である場合に、集計サーバ4においては複数の市を含んだより粗い地域単位の粒度を用いてもよい。例えば、「さいたま」市その他の市は「埼玉県中央地域」へ含まれ、「ふじみ野」市、「所沢」市その他の市は「埼玉県西部地域」へ含まれるような、より粗い粒度を用いてもよい。当該「中央地域」や「西部地域」において集計される普及数は、それぞれが含む「市」の普及数の総和となる。また、端末管理サーバ2が複数のネットワーク事業者から異なる粒度の地理的位置情報を取得している場合にも、集計サーバ4では同様にして、所定の粒度に変換して集計結果を得ることとなる。
【0051】
当該粒度変換には上記例のような地名の階層性を利用して所定の粒度へ変換してもよい。また、地理的位置情報が座標で与えられている場合には、集計サーバ4で集計するために用いる所定の粒度に従う各地域の代表点を決めておき、端末管理サーバ2から取得した地理的位置情報を、当該集計するための代表点のうち最も近い地域に割り当てることで粒度変換を行ってもよい。
【0052】
以上のような粒度変換は粒度変換部43が行う。すなわち粒度変換部43は、端末毎の地理的位置情報を地域別に集計するに際して、端末管理サーバ2における地理的位置情報の第一の粒度から、該第一の粒度よりも粗い又は該第一の粒度と等しい所定の第二の粒度に予め変換する。粒度とは前述のとおり地理的位置情報における各地域を定める細かさである。
【0053】
端末管理サーバ2にて複数のネットワーク事業者による異なる粒度の地理的位置情報が存在する場合、粒度変換部43は前記第一の粒度として当該異なる粒度のうちの最も粗い粒度を用いて、当該最も粗い粒度よりも粗い又は当該粒度と等しい第二の粒度へと変換を実施すればよい。なお、当該第一の粒度は地域毎に最も粗い粒度を用いる。例えばネットワーク事業者A及びBの地理的位置情報を利用する場合で、地域Xについては事業者Aの粒度の方が粗く、地域Yについては事業者Bの粒度の方が粗ければ、第一の粒度として、地域Xでは事業者Aの粒度を、地域Yでは事業者Bの粒度を採用する。ここで、地域X及びYは変換されるべき第二の粒度により定まる地域である。
【0054】
次に、長期的な運用すなわち図2における手順ステップ群S2をどのような所定期間に渡り実施した後、手順ステップ群S3にてその集計を行うか、について説明する。ここで前提として、前述では説明を省略したが、前記手順(23)における端末5がユニークであるか調査し、ユニークであると判断された端末5について前記手順(24)でその地理的位置情報の要求を行うに際して、取得通知制限部23が、既に当該手順(23)及び(24)を経て(25)において地理的位置情報を取得済みの端末を記憶している。
【0055】
取得通知制限部23は地理的位置情報を取得済みの端末5を、当該取得時のIPアドレスや端末5の固有IDなどにより記憶することで、既に記憶済みの端末5からの再度通信を受けて再度手順(20)〜(22)が実行された場合に、手順(23)においてユニークではないと判断する。取得通知制限部23は当該ユニークではないと判断された端末5については、端末管理サーバ2による手順(24)及び続く(25)を禁止する。当該禁止は、各端末5について地理的位置情報を取得した時点から始まる第一の所定期間に渡って行う。第一の所定期間の経過後は当該端末の記憶を消去することで禁止を解除し、当該端末5から通信があれば再度ユニークと判定して地理的位置情報を取得できるようにする。
【0056】
当該禁止により、アドレス管理サーバ3が同じ情報について何度も問い合わせを受けるという無駄を防ぐことができる。ネットワーク事業者におけるアドレス管理サーバ3は、端末管理サーバ2に対して地理的位置情報の要求頻度に制限をかける場合(例えば1日に100要求を上限とするなど)がある。このような場合でも当該禁止により、本当に必要な地理的位置情報の問い合わせのみを実施することができる。
【0057】
長期的運用では、第二の所定期間(例えば1ヶ月毎)毎に端末普及数調査を行う。このために、当該第二の所定期間毎に、取得通知制限部23では記憶されている全端末につきその記憶を消去することで、記憶された端末の全てについて一括で前記禁止を解除する。集計サーバ4は当該解除の都度新規に集計を開始し、また当該解除の直前の時点で前記手順ステップ群S3を実行することで、当該第二の所定期間における端末普及数調査を行うことができる。なお、各端末5における禁止を継続する第一の所定期間は、第二の所定期間よりも長く設定することで、長期的運用における当該第二の所定期間内の重複問い合わせを防ぐことができる。
【0058】
端末管理サーバ2と端末5との間でソフトウェア更新などのサービス提供による定期的な通信がある場合には、第二の所定期間を当該定期的な通信における期間に一致させて、又は当該定期的な通信の所定回数分の期間に一致させて設定することが好ましい。
【0059】
長期的運用の別実施形態として、端末5が情報家電のように固定された場所で利用されるものではなく、例えば携帯ゲーム機のようにユーザと共に移動し且つ各移動先で利用される可能性の高い移動可能端末である場合には、手法(B)にて前述した同一端末の別場所での別端末としてのカウントを避けるのに代えて、積極的に移動先を調査するようにしてもよい。
【0060】
当該移動先の調査を行うには、前記第二の所定期間は設定するが第一の所定期間は設定しないようにしてもよい。また、第一の所定期間を第二の所定期間より短く設定してもよい。このようにして、端末5が例えば携帯ゲーム機のような移動可能端末であれば、端末固有IDを取得し、同一端末の異なった場所での利用を把握することで、端末普及数調査における付加的な情報として当該端末の移動範囲を調査し、集計サーバ4にて端末普及数に対する付加情報として表示させることもできる。
【0061】
例えばある固有IDで識別された端末5に対して、地理的位置情報より順次場所a,b,c,d,e,f,…が得られることで、移動範囲を調査できる。なお、地域別端末普及数の調査に際しては、最初に固有IDを確認した場所aのみを利用することで、当該端末の重複カウントを避けることができる。
【0062】
なお、例えば携帯ゲーム機である等の、端末5の種類については、前記手順(23)における端末固有情報取得部23によって、シリアルナンバー等の固有IDと同様に把握することができる。当該固有ID自体に端末種別の情報が含まれる場合もある。また、前記手順(20)及び(21)は端末5がサービスを利用するための通信であることが通常であるので、固有ID等を取得できなくとも、当該サービス種別や内容の解析によっても、端末管理サーバ2は端末5の種類を把握することができる。
【0063】
付加情報取得部24は、図2の手順とは独立に、本発明により調査される地域別普及数に対する付加情報を取得し、集計サーバ4へ通知する。付加情報として例えば、アドレス管理サーバ3から地理的位置情報に対応する各地域における通信可能端末の総数を、払い出したIPアドレスの数などとして取得する。集計サーバ4では各地域において集計した普及数に加えて通信可能端末の総数を用いることで、目安的な値として地域別普及率などの表示を行うこともできる。この際、総数については普及数と同様に粒度変換を行う。当該普及率を求めることで、本発明において一部のネットワーク事業者のみのアドレス管理サーバ3しか利用できない場合にも、サンプル調査としての普及数調査を意義あらしめることができる。
【0064】
例えば、図5の例で「さいたま」におけるある種類の端末5の普及数が「545」である場合に、さらに不図示の「さいたま」における通信可能端末の総数「1000」を利用することで、アドレス管理サーバ3の利用を許可し調査に関係したネットワーク事業者と関係しないネットワーク事業者との間で偏りがないことを前提に、当該地域における端末普及率が約54.5%であることを表示できる。また、図6の地図において同様の表示を行ってもよい。
【0065】
本システムのビジネスモデルとしては、以下の形態が考えられる。端末管理サーバ2及び集計サーバ4は、端末5のメーカーが運用するサーバである。アドレス管理サーバ3はネットワーク事業者が運用する。端末5は、固定インターネット回線として、該ネットワーク事業者が提供する回線を使用する。端末5のユーザは、端末管理サーバ2を通して、メーカーより保守サポートなどのサービスを受ける。ネットワーク事業者は、端末5のメーカーに対して、地理的位置情報サービスを提供する。メーカーは、端末普及数マップを利用することで、端末5の販売戦略を立てる。
【0066】
ここで特に当該メーカーが複数の種類の端末5を扱っていれば、端末固有情報取得部21等により、種類毎の端末普及数マップを作成することができ、それらを比較することも可能である。例えば冷蔵庫の普及マップとエアコンの普及マップとを作成したり、また冷蔵庫の機種Aの普及マップと冷蔵庫の機種Bの普及マップとを作成して、比較検討することができる。
【0067】
また、ネットワーク事業者と端末メーカーが同一の場合も存在する。例えば、HGW(ホームゲートウェイ)などの宅内ネットワーク機器などはネットワーク事業者が提供する場合もあり、本発明では、このような機器の普及数の調査も可能である。
【0068】
アドレス管理サーバ3と端末管理サーバ2との間の通信は、ネットワーク事業者が定義したAPI(Application Program Interface)に従って行われる。SOAP, REST等のWeb APIを用いて通信し、データ定義についてはWSDL(Web Services Description Language)を用いる方法などが考えられる。
【0069】
本発明は、従来技術に比べて正確な地理的位置情報を用いて、端末5の所在地を調査するため、端末5の地域別普及数を正確に調査することが可能である。また、ネットワーク事業者の都合によって、ネットワークの構成変更が発生する場合においても、アドレス管理サーバ3によって正確な地理的位置情報を得続けることが可能であり、長期間を対象とした普及数調査にも有用である。
【0070】
本発明ではまた特に、端末5が通常利用するメーカーの保守サポートその他のサービスを端末管理サーバ2が担うことで、端末5側の要求より開始される当該サービス提供における通信を解析するだけで、最終的には地域別普及数が得られる。ここで、当該通信は端末5が端末管理サーバ2よりサービスを受けるために、端末5の側で開始する通信である。すなわち、端末管理サーバ2は能動的に端末5を探索する等の手間なく、受動的に端末5からのリクエストを待って通常のサービスを提供しているだけで、端末普及数調査システム1において自動的且つ簡易に地域別普及数が得られる。
【0071】
近年、ネットワーク事業者のIPv6対応、情報家電のIP化の促進により、IP技術を利用したマーケティングが促進するものと思われ、本発明は家庭内、あるいは、小規模なオフィス内で使用されるあらゆるIPベースの情報機器に応用可能である。例えば、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコンなどの情報家電、家庭用ゲーム機、パソコンなどに適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1…端末普及数調査システム、2…端末管理サーバ、3…アドレス管理サーバ、4…集計サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末の地域別普及数を調査する端末普及数調査システムであって、
端末と通信して該端末を識別すると共にそのIPアドレスを取得する端末管理サーバと、
IPアドレスと地理的位置情報との対応付けを保持するアドレス管理サーバと、
端末の地域別普及数を集計する集計サーバとを備え、
前記端末管理サーバは前記識別した端末のIPアドレスを前記アドレス管理サーバに通知し、該アドレス管理サーバより当該端末の地理的位置情報を取得して前記集計サーバに通知し、
該集計サーバは該通知された端末毎の地理的位置情報を地域別に集計することにより、端末の地域別普及数を集計することを特徴とする端末普及数調査システム。
【請求項2】
前記端末管理サーバは端末固有情報取得部を含み、端末と前記通信するに際して前記端末固有情報取得部が当該端末の固有IDを取得し、該取得した固有IDに基づいて当該端末を識別することを特徴とする請求項1に記載の端末普及数調査システム。
【請求項3】
前記端末管理サーバは、前記識別された端末の所属するネットワーク事業者を当該端末に対して前記取得されたIPアドレスに基づいて調査するネットワーク事業者調査部を含み、前記取得されたIPアドレスを当該端末の所属するネットワーク事業者に対応する前記アドレス管理サーバに前記通知することを特徴とする請求項1または2に記載の端末普及数調査システム。
【請求項4】
前記端末管理サーバは通知取得制限部を含み、該通知取得制限部は既に前記識別してその地理的位置情報を前記集計サーバより取得済みの端末を記憶し、当該取得後の第一の所定期間内は、当該記憶された端末に対する再度の前記アドレス管理サーバへのIPアドレス通知及び前記アドレス管理サーバからの地理的位置情報取得を禁止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の端末普及数調査システム。
【請求項5】
前記通知取得制限部が第二の所定期間毎に、前記記憶された端末の全てに対して一括で前記禁止することを解除すると共に、前記集計サーバは当該解除の都度、端末の地域別普及数の集計を新規開始することを特徴とする請求項4に記載の端末普及数調査システム。
【請求項6】
前記端末管理サーバは端末を前記識別するに際して、同一のIPv4アドレス又は同一のIPv6アドレス空間が付与されている端末を同一の端末として識別することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の端末普及数調査システム。
【請求項7】
前記同一の端末として識別される端末がホームゲートウェイ又は該ホームゲートウェイの配下にLAN接続される宅内端末であることを特徴とする請求項6に記載の端末普及数調査システム。
【請求項8】
前記集計サーバが、
集計した端末の地域別普及数を、地域と端末数とを項目とするテーブル形式によって表示するテーブル形式表示部と、
集計した端末の地域別普及数を、地図上に位置させた地域と該地域に併記される端末数との地図形式によって表示する地図形式表示部とのうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の端末普及数調査システム。
【請求項9】
端末の地域別普及数を調査する端末普及数調査システムであって、
端末と通信して該端末を識別する共にそのIPアドレスを取得する端末管理サーバと、
と、
端末の地域別普及数を集計する集計サーバとを備え、
前記端末管理サーバは前記識別した端末のIPアドレスを、IPアドレスと地理的位置情報との対応付けを保持するアドレス管理サーバに通知し、該アドレス管理サーバより当該端末の地理的位置情報を取得して前記集計サーバに通知し、
該集計サーバは該通知された端末毎の地理的位置情報を地域別に集計することにより、端末の地域別普及数を集計することを特徴とする端末普及数調査システム。
【請求項10】
端末の地域別普及数を調査する端末普及数調査方法であって、
端末と通信して該端末を識別すると共にそのIPアドレスを取得するステップと、
IPアドレスと地理的位置情報との対応付けを保持するステップと、
前記識別した端末に対して前記取得したIPアドレスに対する地理的位置情報を、当該IPアドレスに対する前記保持した対応付けより取得して、前記識別した端末に対する地理的位置情報を得るステップと、
前記得た端末毎の地理的位置情報を地域別に集計することにより、端末の地域別普及数を集計するステップとを備えることを特徴とする端末普及数調査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−34060(P2013−34060A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168322(P2011−168322)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】