説明

端部拡径ホース及びその製造方法

【課題】拡径型を押出成形品の各端部に軸方向に押し込んで各端部を拡径させ、両端部に拡径部を有する端部拡径ホースを成形するに際して、押出成形品の軸方向の位置ズレを防止し、各端部の拡径部を均等に成形できるようにする。
【解決手段】ゴム内層16及びゴム外層20とそれらの間の補強層18を有し、端部が中央側の主部32に対して内径,外径ともに拡径形状をなす拡径部30となしてある端部拡径ホース10において、主部32の外面に軸心側に凹陥した形状の凹部36を軸方向において部分的に設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は高耐圧の振動吸収ホース、特に自動車のエンジンルーム内に配管用として配設されるものに適用して好適な端部拡径ホース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴム層を主体として構成されたホースが産業用,自動車用のホースとして各種用途に広く使用されている。
このようなホースを用いる主たる目的は振動を吸収することにある。
例えば自動車のエンジンルーム内に配設される配管用ホースの場合、エンジン振動やエアコンのコンプレッサ振動(冷媒輸送用ホース即ちエアコンホースの場合),車両の走行に伴って発生する各種の振動をホース部分で吸収し、ホースを介して接続されている一方の部材から他方の部材へと振動が伝達されるのを抑制する役割を担っている。
【0003】
ところで産業用,自動車用を問わずオイル系,燃料系,水系,冷媒系ホースの構造は、例えば下記特許文献1に開示されているようにゴム内層とゴム外層との中間に補強糸(補強線材)を編組して成る補強層を有する構造をなしている。
【0004】
図18(イ)は下記特許文献1に開示された冷媒輸送用ホース(エアコンホース)の構造を示したもので、図中200はゴム内層であって内表面が樹脂内面層202で被覆されている。
ゴム内層200の外側には補強糸をスパイラル巻きして成る第1補強層204が、更にその外側に中間ゴム層206を介して補強糸を第1補強層204とは逆向きにスパイラル巻きして成る第2補強層208が積層され、そして最外層のカバー層としてゴム外層210が積層された構造をなしている。
【0005】
この例は補強糸をスパイラル編組して補強層を構成した例であるが、かかる補強層を、補強糸をブレード編組して構成することも行われている。
図18(ロ)はその例を示したもので、図中212は補強糸をブレード編組して成る補強層で、ゴム内層200とゴム外層210との間に形成されている。
尚ゴム内層200の内表面は樹脂内面層202で被覆されている。
【0006】
ところでこのような直管状のホースの場合、良好な振動吸収性を確保するため従来所定の長さを必要としていた。
特に燃料系や水系等の低圧用のホースに比べてオイル系(例えばパワーステアリング用ホース)や冷媒系(冷媒輸送用ホース)等の耐高圧用のホースでは、ホース剛性が高い分、振動吸収や車室内への音,振動の伝播低減のための必要長さが長くなる。
例えば冷媒輸送用ホースの場合、接続しなければならない直線距離が200mmであったとしても、一般的に300〜600mmの長さのホースを用いて振動吸収及び音,振動の伝播低減を図っていた。
【0007】
しかしながらエンジンルーム内には各種の装置や部品が所狭しと組み込まれており、特に近年にあってはエンジンルームがますますコンパクト化されて来ており、そのような中でそこに配設されるホース長が長いと、他との干渉を避けるための配管設計やホース取付時の取回しが大変な作業となり、しかも車種ごとにそれら配管設計や取回しを工夫しなければならず、大きな負担となっていた。
【0008】
このようなことから、ホース長が短尺で良好に振動吸収することのできるホースの開発が求められている。
ホースにおける振動吸収性を確保しながらこれを短尺化する手段として、ホースを蛇腹形状化することが考えられる。
【0009】
しかしながらホースを蛇腹形状化すると可撓性は飛躍的に向上するものの、その内部に流体の高い圧力が作用するとホース全体が軸方向に大きく伸びてしまう。
この場合ホースの両端が固定状態にあると(普通はそうなっている)、ホース全体が大きく曲ってしまい、周辺の部品と干渉を起す問題が発生する。
即ち蛇腹形状化による対策は十分なものとは言えない。
【0010】
ところでエアコンホース等の高耐圧ホースの場合、内部に流体が高い圧力で導かれた状態では、そのような圧力がかかっていない場合に比べてホースと流体とが一体化して、より剛体に近い挙動を示すようになる。
その剛性化の程度はホース及び流体を含めた横断面の断面積が大きくなるほど大となる。
逆に言えばホース及び流体の断面積が小さくなれば剛性化の程度は小さくなり、振動吸収性能はそれだけ増すことになる。
従ってホースを蛇腹形状化しないで、尚且つ短尺で振動吸収性能を高めるためにはホース径を小さくすることが有効な手段である。
【0011】
しかしながら単に軸方向の端部を含むホース全体を細くし、また併せて継手具も細径とすると、継手具におけるインサートパイプの内径が小さいものとなって、流体の輸送時に同部分で圧損(圧力損失)を生じたり、また所要の流量を確保することができなくなってしまう。
【0012】
一方で端部のかしめ部を細くした上で、内径の大きなインサートパイプを有する大径の継手具を用いると、その装着に際してインサートパイプを端部のかしめ部に挿入するときに、挿入抵抗が著しく大きくなってインサートパイプの挿入性が悪化し、継手具を装着することが実際上難しい。
従ってホース径を小さくするにしても端部のかしめ部はそのままとし、他の主部即ち中央側の主部のみを細径化することが望ましい(この場合端部のかしめ部は主部に対して相対的に拡径形状となる)。
【0013】
そこで本発明者等は、端部が拡径形状をなし、中央側の主部が細径を成す端部拡径ホースを案出し、端部の拡径方法と併せて先の特許願(下記特許文献2)において提案している。
図19はその端部拡径ホースの具体例を示している。
図19において214は端部拡径ホースで、ゴム内層216と、その外側の補強層218と、最外層のゴム外層220との積層構造をなしている。
222は各端部に設けられた内径,外径ともに拡径形状を成す拡径部で、224は図中左右一対の拡径部222の間の中央側の主部を表している。
図中拡径部222の外径D,内径Dは主部224の外径d,dに対して何れも大径をなしている。
【0014】
図20は、ホースの端部を拡径させ、拡径部222を成形するための具体的な手法を示している。
図において226は、主部224に外嵌されてこれを保持する円筒形状の拘束具で、228は拡径部222の内径に対応した外径を有する拡径型である。
この図20に示す方法では、ゴム内層216,補強層218,ゴム外層220の積層構造で押出成形し、所定寸法に切断した半加硫状態の押出成形品214Aを、主部224において拘束具226により拘束し保持した状態としておき(I)、その状態で拡径型228を押出成形品214Aの端部の内側に軸方向に強制的に押し込んで、端部を拡径型228に対応した形状に拡径変形させる(II)。
そしてその状態で押出成形品214Aを、拘束具226及び拡径型228とともに加硫缶の中で加熱して押出成形品214Aを加硫処理し、図19に示す端部拡径ホース214を製造する。
【0015】
しかしながら図20に示す方法で押出成形品214Aの端部を拡径変形させたところ、次のような問題を生じることが判明した。
即ち、拡径型228を押出成形品214Aの端部に挿入する際に、必ずしも良好にこれを挿入することができず、また拡径型228を押出成形品214Aの端部に軸方向に強く押し込んだときに、押出成形品214Aのゴム層が拡径型228とともに軸方向に移動してしまって、即ち端部が軸方向に圧縮されてゴム内層216の軸方向の移動に伴い図20(III)に示すような皺230が内面に発生してしまう問題を生じることが判明した。
【0016】
特に破裂圧が5MPa以上で、補強層の編組密度が50%以上もあるような高密度の高耐圧ホースの場合、拡径型228を押し込む際に補強層218の存在により大きな抵抗が発生し、そのような抵抗に抗して拡径型228を軸方向に強く押し込んだときに、その強い押込みに伴って押出成形品214Aの端部が軸方向に圧縮され、そしてその圧縮によりゴム内層216の一部が部分的に径方向内方に突出して上記の皺230を発生させ易い。
【0017】
また上記の拡径型228を用いた押出成形品214Aの端部の拡径は、押出成形品214Aの各端部において一対の拡径型228を互いに逆向きに押し込むことによって行うが、このとき拡径型228の押込みのタイミングは全く同時とはならず、多少の押込みのタイミング差が生じる。
この場合、拘束具226による保持力が弱いと早いタイミングで押込みが行われた側の拡径型228の押込力によって押出成形品214Aが軸方向にずれてしまい、各端部において一対の拡径型228により拡径部222を良好に拡径成形することが難しい問題のあることも判明した。
【0018】
また図20に示す方法の場合、拡径部222の内面については拡径型228にて成形し且つ内径規制することができるものの、拡径部222の外面及び主部224の内面と外面とについては成形型による成形を行っていないために、それらの面を良好に成形できず、且つ内径及び外径規制を行うことができず、またそれら内径,外径規制を行わない状態で拡径型228を端部に対して軸方向に押し込むために、ゴムの一部が径方向に逃げることによって端部が軸方向に圧縮され易く、その圧縮に伴い上記の如き皺が拡径部222の付根の内面や外面等に生じ易い原因ともなっていた。
【0019】
【特許文献1】特開平7−68659号公報
【特許文献2】特開2006−283843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は以上のような事情を背景としてなされたもので、端部拡径ホースを製造するにあたって押出成形品の位置ズレを良好に防止でき、従って各端部に拡径部を成形するに際して、それら各端部の拡径部を良好に成形可能とすることを目的とする。
また本発明の他の目的は、拡径部の付根の内面に皺が発生するのを良好に防止することを目的とする。
本発明の更に他の目的は、端部拡径ホースを製造するに際し、内面,外面を良好に成形でき且つ内径,外径の寸法の精度の高い端部拡径ホースを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
而して請求項1は端部拡径ホースに関するもので、ゴム内層及びゴム外層とそれらの間に介在する、補強線材を編組してなる補強層を有する積層構造をなし且つ各端部が中央側の主部に対して内径,外径ともに拡径形状をなす拡径部となしてあって、該拡径部に挿入される剛性のインサートパイプと該拡径部に外嵌され縮径方向にかしめられるソケット金具とを有する継手具が該拡径部に装着される端部拡径ホースであって、前記主部の外面に軸心側に凹陥した形状の凹部が軸方向において部分的に設けてあることを特徴とする。
【0022】
請求項2のものは、ゴム内層及びゴム外層とそれらの間に介在する、補強線材を編組してなる補強層を有する積層構造をなし且つ各端部が中央側の主部に対して内径,外径ともに拡径形状をなす拡径部となしてあって、該拡径部に挿入される剛性のインサートパイプと該拡径部に外嵌され縮径方向にかしめられるソケット金具とを有する継手具が該拡径部に装着される端部拡径ホースであって、前記拡径部の外面に軸心側に凹陥した形状の凹部が設けてあることを特徴とする。
【0023】
請求項3のものは、請求項1において、前記凹部が前記主部の外面に沿って周方向に全周に亘り連続して延びる形態で設けてあることを特徴とする。
【0024】
請求項4のものは、請求項1において、前記凹部が軸方向の複数個所に設けてあることを特徴とする。
【0025】
請求項5のものは、請求項1において、前記凹部が軸方向に延びる形状で周方向に部分的に且つ周方向の複数個所に設けてあることを特徴とする。
【0026】
請求項6のものは、請求項1において、前記凹部が、前記主部の外面の軸方向断面形状を連続した鋸歯状の凹凸形状とするように該軸方向に所定ピッチで並べて設けてあることを特徴とする。
【0027】
請求項7のものは、請求項2において、前記凹部が前記拡径部の外面に沿って周方向に全周に亘り連続して延びる形態で設けてあることを特徴とする。
【0028】
請求項8のものは、請求項2において、前記凹部が軸方向に部分的に設けてあることを特徴とする。
【0029】
請求項9のものは、請求項2において、前記凹部が軸方向に複数並べて設けてあることを特徴とする。
【0030】
請求項10のものは、請求項9において、前記凹部が、前記拡径部の外面の軸方向断面形状を連続した鋸歯状の凹凸形状とするように該軸方向に所定ピッチで並べて設けてあることを特徴とする。
【0031】
請求項11は請求項1の端部拡径ホースの製造方法に関するもので、この製造方法は、(イ)前記主部の外面を成形する、前記凹部に対応した凸形状部の設けられた主部成形面及び前記拡径部の外面を成形する拡径部成形面を備えた、前記端部拡径ホースの外形形状に対応した形状の成形面と、該成形面の内側に形成される軸方向に貫通の成形凹所とを有する外型と、(ロ)該端部拡径ホースの前記主部の内面を成形するマンドレルとを用い、押出成形により得た、前記ゴム内層,ゴム外層及び補強層を有する未加硫若しくは半加硫状態の直管状の押出成形品の内部に前記マンドレルを挿入するとともに、該押出成形品を該マンドレルとともに前記外型の成形凹所に挿入セットした状態とし、しかる後、前記マンドレルに摺動可能に嵌合する嵌合孔を中心部に有するとともに、前記拡径部の内面に対応した形状をなし、該拡径部の内面を成形する拡径部成形面を外面に有する拡径型を前記押出成形品の端部の内部に前記マンドレルに沿って軸方向に押込挿入して該端部を拡径させ、該端部の内面を該拡径型により、外面を前記外型により成形し、その後該押出成形品を該外型,該マンドレル及び該拡径型とともに加熱して完全加硫することを特徴とする。
【0032】
請求項12は請求項2の端部拡径ホースの製造方法に関するもので、この製造方法は、(イ)前記主部の外面を成形する主部成形面及び前記拡径部の外面を成形する、前記凹部に対応した凸形状部の設けられた拡径部成形面を備えた、前記端部拡径ホースの外形形状に対応した形状の成形面と、該成形面の内側に形成される軸方向に貫通の成形凹所とを有する外型と、(ロ)該端部拡径ホースの該主部の内面を成形するマンドレルとを用い、押出成形により得た、前記ゴム内層,ゴム外層及び補強層を有する未加硫及若しくは半加硫状態の直管状の押出成形品の内部に前記マンドレルを挿入するとともに、該押出成形品を該マンドレルとともに前記外型の成形凹所に挿入セットした状態とし、しかる後、前記マンドレルに摺動可能に嵌合する嵌合孔を中心部に有するとともに、前記拡径部の内面に対応した形状をなし、該拡径部の内面を成形する拡径部成形面を外面に有する拡径型を前記押出成形品の端部の内部に前記マンドレルに沿って軸方向に押込挿入して該端部を拡径させ、該端部の内面を該拡径型により、外面を前記外型により成形し、その後該押出成形品を該外型,該マンドレル及び該拡径型とともに加熱して完全加硫することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0033】
以上のように請求項1のものは、端部拡径ホースにおける主部の外面に軸心側に凹陥した形状の凹部を軸方向に部分的に設けたものである。
このような凹部を主部の外面に設けておくことで、主部の外面を拘束する外型の対応する凸形状部にて押出成形品を軸方向に強く拘束した状態の下で、各端部に拡径型を互いに逆向きに押し込み、拡径部を成形することができ、その際に各端部において拡径型の押込みのタイミングがずれた場合であっても押出成形品が軸方向に位置ズレするのを効果的に防止でき、各端部の拡径部を目的とする形状で良好に成形することが可能となる。
【0034】
一方請求項2は、拡径部の外面に軸心側に凹陥した形状の凹部を設けたものである。
この請求項2によれば、拡径部の凹部に対応した外型の凸形状部によって、拡径型を押出成形品の端部に軸方向に押し込んだときに端部が軸方向に移動して圧縮され、その圧縮に伴って皺を発生するのを効果的に防止することができる。
【0035】
請求項1において、上記凹部は請求項3に従い主部の外面に沿って周方向に全周に亘り連続して延びる形態で設けておくことができ、また請求項4に従って、軸方向の複数個所に設けておくことができる。
更に請求項5に従い、かかる凹部を軸方向に延びる形状で周方向に部分的に且つ周方向の複数個所に設けておくことができる。
但しこの場合、凹部を周方向に均等な間隔で設けておくことが望ましい。
【0036】
上記凹部はまた、請求項6に従い主部の外面の軸方向断面形状を連続した鋸歯状の凹凸形状とするように軸方向に所定ピッチで並べて設けておくことができる。
また請求項1,請求項3〜5の何れかにおいて、凹部の深さは主部におけるゴム外層をtとしたとき、0.1t〜tの深さで設けておくことが望ましい。
凹部の深さが0.1tに満たないものであると凹部を設けたことの効果が十分に得られず、逆に凹部の深さがtよりも深くなると成形時に外面にゴムバリを発生したり、或いはゴム外層の下側の補強層を外型の凸形状部によって損傷してしまう恐れが生ずる。
【0037】
次に請求項2において、上記凹部は請求項7に従い拡径部の外面に沿って周方向に全周に亘り連続して延びる形態で設けておくことができ、また請求項8に従ってかかる凹部を軸方向に部分的に設けておくことができる。
【0038】
更に請求項9に従い、かかる凹部を軸方向に複数並べて設けておくができる。
この場合において、拡径部の外面の軸方向断面形状を連続した鋸歯状の凹凸形状とするように凹部を軸方向に所定ピッチで並べて設けておくことができる(請求項10)。
【0039】
また請求項2,請求項7〜10の何れかにおいて、凹部の深さは拡径部におけるゴム外層の肉厚をtとして0.1t〜tの範囲内の深さとしておくことが望ましい。
凹部の深さが0.1tに満たないものであると凹部を設けたことの効果が十分に得られず、逆に凹部の深さがtよりも深くなると成形時に外面にゴムバリを発生したり、或いはゴム外層の下側の補強層を外型の凸形状部によって損傷してしまう恐れが生ずる。
【0040】
次に請求項11は、請求項1の端部拡径ホースを製造する方法に関するもので、この製造方法は、主部の内面を成形するマンドレルと、外面を成形する、上記凹部に対応した凸形状部を有する外型と、押出成形品の端部の内側に押し込まれてこれを拡径させる拡径型とを用いて端部拡径ホースを成形し且つその成形状態でこれを加硫するもので、この請求項11によれば、拡径型を押出成形品の端部に押し込む際に、押出成形品が外型に対し軸方向に位置ズレするのを良好に防止することができるとともに、マンドレル,拡径型及び外型によって、端部拡径ホースの内面及び外面を良好な面性状に成形することができるとともに内径,外径に良好に径規制することができ、内,外径の寸法制度の高い端部拡径ホースを得ることができる。
【0041】
次に請求項12は、ホース主部の内面を成形するマンドレルと、拡径部の外面の凹部を形成する凸形状部を備えた外型と、拡径型とを用いて端部拡径ホースを成形し且つその成形状態でこれを加硫するもので、この請求項12の製造方法によれば、拡径部の付根内面に皺の発生するのを良好に防止することができ、またマンドレル,拡径型及び外型によって端部拡径ホースの内面,外面を良好な面性状に成形できるとともに内径,外径ともに寸法規制でき、内径,外径の寸法精度の高い端部拡径ホースを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は例えば冷媒輸送用ホース(エアコン用ホース)等として用いられる高耐圧振動吸収ホース(以下単にホースとする)で、12はホース10の各端部にかしめ付け固定された継手金具(継手具)である。
尚、14は継手金具12に、詳しくは後述のインサートパイプ22に回転可能に取り付けられた袋ナットである。
【0043】
ホース10は、図1(B)に示しているようにゴム内層16と、その外側の補強糸(補強線材)をブレード編組して成る補強層18と、最外層のカバー層としてのゴム外層20との積層構造をなしている。
本実施形態において、ホース10は補強層18における編組密度が80%以上であり、また10MPa以上の耐圧性(破裂圧)を有している。
【0044】
ここで補強層18を構成する補強糸としてPET,PEN,アラミド,PA(ポリアミド),ビニロン,レーヨン等を用いることができる。
【0045】
またゴム内層16としてIIR,ハロゲン化−IIR(Cl−IIR,Br−IIR),NBR,CR,EPDM,EPM,FKM,ECO,シリコンゴム,ウレタンゴム,アクリルゴム等の単独材若しくはブレンド材を用いることができる。
但しHFC系冷媒輸送用ホースの場合には特にIIR,ハロゲン化−IIRの単独材又はブレンド材が好ましい。
【0046】
またゴム外層20として、上記ゴム内層16で列挙した各種ゴム材を用いることができるが、それ以外にも熱収縮チューブや熱可塑性エラストマー(TPE)を使用することも可能で、材質としてはアクリル系,スチレン系,オレフィン系,ジオレフィン系,塩化ビニル系,ウレタン系,エステル系,アミド系,フッ素系等を用いることができる。
【0047】
図2に示しているように、上記継手金具12は金属製の剛性のインサートパイプ22と、スリーブ状のソケット金具24とを有しており、インサートパイプ22をホース10における端部の拡径部30内に挿入し、またソケット金具24を拡径部30の外面に嵌装してこれを縮径方向にかしめ付けることで、それらインサートパイプ22とソケット金具24とで拡径部30を内外方向に挟圧する状態にホース10にかしめ付け固定されている。
ここでソケット金具24には内向きの環状の鍔状部26が設けられていて、その鍔状部26の内周端が、インサートパイプ22の外周面の環状の係止溝28に係止する状態にかしめ付け固定されている。
【0048】
図3は継手金具12をかしめ付ける前のホース10の形状を表している。
図に示しているようにホース10は、両端部が拡径形状(内径拡径率40%以上)を成す拡径部30とされ、そして拡径部30と30との間の中央側の部分が主部32を成している。
ここで内径拡径率は、拡径後の内径と拡径前の内径との差の、拡径前内径に対する比率である。
尚34は拡径部30と主部32との間に形成されたテーパ形状の移行部である。
ここで拡径部30は、外径D,内径Dがそれぞれ主部32の外径d,内径dに対し何れも大径をなしている。
即ち従来のこの種ホースにあっては、主部32の外径が端部の外径と同一外径であったのが、この例のホース10では主部32のみが細径形状をなしている。
そして本実施形態においては、図2に示しているように拡径部30に挿入された継手金具12のインサートパイプ22の内径が、主部32における内径と同じ内径dとされている。
【0049】
本実施形態では、図3に示しているように主部32の中央部の外面に軸心側(径方向内方)に凹陥した形状の凹部36が設けられている。
ここで凹部36は、軸方向に所定長さに亘って設けられており、またその形状は、主部32の周方向に全周に亘り連続した円環状をなしている。
ここで凹部36は、図3の部分拡大図に示す深さAが0.1〜0.5mmの深さとされている(径方向の両側の合計の深さは0.2〜1.0mmの深さとなる)。
【0050】
但しこれは一例であって、主部32のゴム外層20の肉厚をtとしたとき、凹部36の深さAは0.1t〜tの範囲内で適宜の深さに定めることができる(従って主部32は、凹部36を形成した部位においてその外径がd−0.2t〜d−2tの範囲内の外径となる)。
凹部36の深さが0.1tよりも少ないと凹部36を設けたことの効果が十分に得られず、また深さがtよりも大きくなると、後に明らかにされるようにホース10を製造するに際し、外面ゴムバリが発生したり或いは補強層18が損傷する恐れが生ずる。
【0051】
この実施形態では、凹部36の軸方向両端にテーパ部38が設けられている。そしてこれらテーパ部38の互いの軸方向内側の付根位置間の距離において、凹部36が軸方向長Bで設けられている。
このBの寸法は、ここでは主部32の全長をL(図3参照)として5(mm)〜0.8L(mm)の範囲内の長さで選ばれている。
但し一般的にはこの凹部36の軸方向長Bは0.8L以下の寸法で適宜に選定することが可能である。
【0052】
凹部36の軸方向長Bが5よりも小さいと凹部36を設けたことの効果が十分に得られず、逆に0.8Lよりも大きいと外面ゴムバリ(後述の外型46の各分割型52の分割面にゴムが入り込むことにより生ずるバリ)が発生し易くなる。
尚、後に述べるようにこの凹部36は、主部32の軸方向に部分的に且つ複数個所に設けておくことも可能である。この場合においても複数の凹部の軸方向の総長を0.8L以下となしておくことが望ましい。
【0053】
尚、テーパ部38の傾斜角度θは、ここでは7〜90°以下の範囲内とされている。
また図3の部分拡大図における角部40についてはエッジ処理をしておくことが望ましい。具体的には凹部36の深さAに対し、各角部40を0.2mm〜A/2mmの曲率半径Rの円弧面とするようにR加工を施しておくことが望ましい。
【0054】
本実施形態では、図3に示しているように拡径部30の外面にも軸方向全長に亘り且つ全面に亘り多数の凹部42が設けられている。
ここで各凹部42は、拡径部30の外面に沿って周方向に全周に亘り連続して円環状に延びる形態で設けてある。
ここで各凹部42は軸方向に互いに独立した円環状をなしていても良いし、或いはまた軸方向に螺旋状をなすような連続した円環状の形態で設けておいても良い。
【0055】
この実施形態では、これら凹部42は軸方向に並列した状態で設けられており、且つ拡径部30の外面の軸方向断面形状を連続した鋸歯状の凹凸形状とするように一定ピッチで小刻みに並べて設けてある。
但し凹部42は、軸方向のピッチが全て一定のピッチとなるように設けておくこともできるし、或いはそのピッチが少しずつ変化するように設けておくことも可能である。
【0056】
この実施形態では、各凹部42が、それらの間に形成される凸部44を断面山形状とするような形状で設けられている。即ち隣接する山形状の凸部44と44との間に、対応した形状の谷形状をなすように凹部42が設けられている。
尚ここでは凹部42が断面二等辺三角形状をなすように設けられているが、かかる凹部42の断面形状は後に述べるように他の様々な形状となすことが可能である。
【0057】
拡径部30における凹部42は、後に述べるように拡径型50を軸方向に押し込んだときに、外型46における凸形状部66によって、押出成形品10Aの端部が軸方向に移動するのを防ぐために設けられているものであり、従ってその移動を効果的に防止するためにかかる凹部42は、周方向に全周に亘り連続した形状で設けておくことが望ましく、また軸方向においては一定ピッチで並列する状態に多数且つ拡径部30の全長に亘り設けておくことが望ましい。
但し後にも述べるように凹部42は、軸方向に部分的に設けておくことも可能である。
【0058】
凹部42の深さは、ここでは拡径部30のゴム外層20の肉厚tの10%の深さとされているが、これは一例であり、かかる凹部42の深さは、一般に、ゴム外層20の肉厚tに対し0.1t〜tの範囲内で適宜の深さに設定しておくことができる。
凹部42の深さが0.1tよりも小さいと凹部42を設けたことの効果が十分に得られず、逆に深さがtよりも大となると、外面ゴムバリが発生し易くなり、また補強層18を損傷し易くなる。
【0059】
また凹部42の軸方向のピッチは、凹部42の深さをWとしたとき、W/3〜2Wの範囲内のピッチとなしておくことが望ましい(凹部42を軸方向に所定ピッチで整列する状態に設ける場合)。
また凹部42の底部の角度、即ちかかる凹部42を形成する後述の凸形状部66の頂部の角度は10〜90°の範囲内で定めることが望ましい。
【0060】
更に本実施形態において、断面三角形状をなす凹部42の底部は、凹部42の深さWの50%以内の曲率半径(R)を有する円弧面としておくこと、即ち谷の底部をそのような曲率でR加工を施しておくこと、即ちこの凹部42を形成する後述の外型46の凸形状部66の頂部を、その突出高さの50%以内の曲率半径(R)の円弧面としておくことが望ましい。
これは、山形状の突出部66が鋭いエッジ形状をなしていると、成形時に拡径部30の外面を傷付け、その傷付いた部分を起点としてホース10が破断する恐れが生ずることによる。
【0061】
図4及び図5は、本実施形態のホース10の製造に際して用いられる成形装置の具体的構成を示したものである。
これらの図において45は成形装置で、この成形装置45は外型46と、マンドレル48及び一対の拡径型50とを含んで構成されている。
この実施形態において、外型46は図中上下方向の分割構造とされている。図において52はその分割型を表している。
【0062】
外型46は、ホース10の外形形状に対応した形状の成形面54と、その内側に形成される軸方向に貫通の成形凹所56とを有している。
成形面54は、ホース10における主部32の外面を成形する主部成形面58と、拡径部30の外面を成形する拡径部成形面60とを備えている。
【0063】
ここで主部成形面58は、ホース10における主部32の外面に対応した形状をなしているとともに、その内径が主部32の外径dに対応した内径とされており、また拡径部成形面60は、ホース10における拡径部30の外面に対応した形状をなしており、その内径が拡径部30の外径Dに対応した内径とされている。
尚成形面54には、ホース10におけるテーパ形状の移行部34に対応した形状のテーパ形状の移行部61が設けられている。
【0064】
主部成形面58には、図6に示しているようにホース10における主部32の凹部36に対応した形状で凸形状部62が、径方向内向きに突出する状態に設けられている。
この凸形状部62は、ホース10における主部32の凹部36を成形する部分で、凹部36に対応した断面形状で設けられている。図6中64は、凹部36の軸方向両側に設けられたテーパ部38(図3参照)に対応した形状で設けられたテーパ部である。
ここで凸形状部62は、凹部36の形状に対応してその内面が軸方向に平滑な内面とされている。また凸形状部62は周方向に連続した円環状に設けられている。
【0065】
一方拡径部成形面60には、図6に示しているように拡径部成形面60の軸方向全長に亘り且つ全周に亘り、ホース10における拡径部30の凹部42に対応した形状で凸形状部66が設けられている。
図6に示しているようにこの凸形状部66は、図3の凹部42の形状に対応して断面山形状に形成されており、且つ周方向に全周に亘り連続した円環状に、且つ軸方向に(並列する状態に)一定ピッチで並列する状態に設けてある。
前述したようにこれら各凸形状部66は、軸方向に独立した円環状をなしていても良いし、或いは軸方向に連続して延びる螺旋形状の凸形状部となしておいても良い。
尚、図7に示しているように一方の分割型52には位置決突起86が設けられ、また他方の分割型52にはこれに対応して、位置決突起86を嵌入させる位置決孔88が設けられている。
【0066】
上記マンドレル48は、断面円形をなし且つ軸方向に平滑な面をなす主部68と、両端部の雄ねじ部70とを有している。
ここで主部68はホース10における細径の主部32の内面を成形する部分で、ホース10における主部32の内面に対応した形状をなしており、且つその外径が主部32の内径dと対応した外径とされている。
尚、主部68の軸方向長はホース10及び外型46の軸方向長よりも長いものとされている。
【0067】
上記拡径型50は、マンドレル48の主部68に微小なクリアランスをもって摺動可能に嵌合する、軸方向に貫通の嵌合孔72を中心部に有しており、また外面には、拡径部30の内面を成形する拡径部成形面74を有している。
この拡径型50にはまた、拡径部成形面74に隣接する位置に、ホース10におけるテーパ形状の移行部34の内面を成形するテーパ部76が外面に設けられているとともに、拡径部成形面74に対しテーパ部76とは反対側の位置にテーパ部78が、更にこれに隣接して大径のフランジ部80が備えられている。
ここでフランジ部80の内側の面(外型46側の面)82は、軸直角方向の平坦な面とされている。
尚、84はマンドレル48の両端部の雄ねじ部70に螺合される締込ナットで、外面が六角形状をなしている。
【0068】
次に、図4〜図7に示す成形装置を用いて、図1〜図3に示すホース10を製造する方法を、図8〜図10に基づいて以下に具体的に説明する。
本実施形態の製造方法では、先ずゴム内層16と補強層18とゴム外層20との積層構造をなす直管状の長尺のホースを押出成形した後、これを所定寸法ごとに切断して図8に示す押出成形品10Aを得、そして先ず未加硫状態の押出成形品10Aを半加硫状態とする。又は押出成形した長尺のホースを先ず半加硫しておいて、その後にこれを所定寸法ごとに切断して押出成形品10Aを得る。
【0069】
そして押出成形品10Aの内部にマンドレル48を挿入するとともに、押出成形品10Aをマンドレル48とともに外型46の成形凹所56に挿入セットする。
そして外型46を締め付けた状態で、詳しくは一対の分割型52を型締状態に締め付けた状態の下で、一対の拡径型50を外型46の互いに反対側の外部においてマンドレル48に対し、中心部の嵌合孔72で嵌め合せ、またそれら拡径型50の更に外側において、一対の締込ナット84をマンドレル48の雄ねじ部70に螺合する(図9(I)及び(II)参照)。
そして締込ナット84を締め込むことによって、ねじ送り作用で一対の拡径型50を、押出成形品10Aの端部の内側に軸方向に押し込んで行く。
尚一対の拡径型50の押込みは、押出成形品10Aの各端部において同時に行う。
【0070】
本実施形態の製造方法では、一対の分割型52を合せて外型46を型締めしたとき、外型46の主部成形面54の中央部に設けた凸形状部62が、押出成形品10Aの主部32の外面を部分的に軸心側に圧縮させる状態に径方向に挟み込み、これを保持する。
ホース10における凹部36は、このときの凸形状部62による圧縮変形によって形成される。
従ってこの状態において押出成形品10Aは、図8の部分拡大図に示しているように外型46に対し軸方向に位置ずれするのが防止される。
【0071】
押出成形品10Aは、軸方向の各端部が拡径型50の押込みにより径方向外方に押し拡げられて拡径し、拡径型50と外型46とによって拡径部30が成形される。
詳しくは、拡径型50の拡径部成形面74によって拡径部30の内面が成形され、また外型46における拡径部成形面60によって拡径部30の外面が成形される。
このとき、外型46の拡径部成形面60に設けられた凸形状部66は、押出成形品10Aの端部即ち拡径部30の外面に食い込み、拡径部30を軸心側に圧縮した状態となる。
ホース10における拡径部30の上記の凹部42は、このときの凸形状部66の食い込みによって成形される。
このときの凸形状部66による押出成形品10の端部外面に対する圧縮及び食込作用によって、拡径型50を軸方向に押し込んだときに端部が拡径型50の押込みとともに軸方向に移動してしまい、同部分が軸方向に圧縮されて、そのことにより前述した皺が拡径部30の付根内面に生じるのが有効に防止される。
【0072】
この実施形態ではまた、拡径型50を押し込んだときに、大径のフランジ部80側のテーパ部78が、押出成形品10Aの軸端内側に、即ち拡径部30の軸端内側に入り込み、また拡径型50を押し込んだ状態で大径のフランジ部80が外型46の軸方向端面に当接する。
図9(III)はこのときの状態を表している。
そして図10に示しているように、この状態で成形装置45を押出成形品10Aとともに加硫容器の内部に挿入して、そこで押出成形品10を所定時間かけて加硫処理する。即ち完全加硫処理する。
【0073】
本実施形態において、拡径型50におけるフランジ部80及びテーパ部78は次のような意味を有している。
即ち、フランジ部80が外型46の軸方向端面に当接することによって、外型46における成形凹所56を両端で蓋し、成形凹所56を閉空間とする。
これにより図10に示す加硫処理の際に、押出成形品10のゴム材の一部が加硫の際の加熱による膨張によって成形凹所56から軸方向にはみ出すのを防止することができる。
またフランジ部80の内側の軸直角方向の面82によって、ホース10における軸方向端面を良好に成形することができる。
【0074】
一方テーパ部78は次のような働きをなす。
即ち、このようなテーパ部78が拡径型50に設けられていないと、加硫にて得られたホース10は、加硫直後においては拡径部30の開口側端の内径が求める内径となっているものの、その後ゴム材の収縮によって開口端が径方向に収縮する現象を生じ、開口端の内径が求める適正内径よりも小径化してしまう。
そこでこの実施形態では、拡径型50にテーパ部78を設けることによって、加硫成形する際に拡径部30の開口端側の内径を予め最終に予定している内径よりも拡径状態としておく。
このようにしておくことで、加硫後において拡径部30の開口端内径が小径化したとき、これを求める内径となすことができる。
従ってこの実施形態において、テーパ部78のテーパ角度及び径寸法は、収縮後において拡径部30の開口端側の内径が求める内径となるような形状,寸法に定めておく。
【0075】
以上の本実施形態のように、端部拡径ホース10における主部32の外面に凹部36を設けておいた場合、押出成形品10Aの主部32の外面全体を外型46により拘束した状態で、各端部に拡径型50を互いに逆向きに押し込み、拡径部30を成形するに際して、凹部36に対応した外型46の凸形状部62による主部32に対する押圧作用によって各端部で拡径型50の押込みのタイミングがずれた場合であっても、押出成形品10Aが外型46に対し軸方向に位置ズレするのを効果的に防止でき、各端部の拡径部30を目的とする形状で良好に成形することができる。
【0076】
また拡径部30の外面に軸心側に凹陥した形状の凹部42を設けているため、拡径部30の凹部42に対応した外型46の凸形状部62によって、拡径型50を押出成形品10Aの端部に軸方向に押し込んだときに、端部が軸方向に移動して圧縮され、その圧縮に伴って皺を発生するのを効果的に防止することができる。
【0077】
またこのように押出成形品10Aの端部が軸方向に移動するのが防止されることによって、軸方向にゴム層が移動して部分的に圧力が増し、その圧力によって余剰の肉がマンドレル48と拡径型50との間の微小なクリアランス(隙間)に入り込んで、これがゴムバリとなってしまうのも併せて防止することが可能となる。
【0078】
また本実施形態の製造方法によれば、マンドレル48,拡径型50及び外型46によって端部拡径ホース10の内面及び外面を良好な面性状に成形することができるとともに内径,外径に良好に径規制することができ、内,外径の寸法制度の高い端部拡径ホース10を得ることができる。
更に拡径部30の付根内面に皺の発生するのを良好に防止することができる。
【0079】
次に図11〜図13は主部32における凹部36の他の形態例を示している。
先ず図11は、凹部36を図3に示したものよりも短い軸方向長で設けた例である。尚図11の部分拡大図に示しているように、凹部36のそれぞれの角部40は、前述したように円弧面としてエッジ処理を施しておく。
この点は図12及び図13の実施形態においても同様である。
またこの凹部36に対応した形状で外型46には凸形状部62を設けておく。
【0080】
図12は軸方向長の短い凹部36を、主部32の軸方向に所定間隔で複数設けた例である。
一方図13の例は、ホース10における主部32に軸方向に長く延びる凹部36を、周方向の複数個所にそれぞれ部分的に設けた例である。
ここで凹部36は、断面形状が略半円形状ないし円弧形状をなしているが、この形状は他の様々な断面形状となしておくことが可能である。
【0081】
またここでは凹部36が周方向に90度づつ隔たった4個所に設けてある。
このため、対応する形状且つ対応する位置において外型46に凸形状部62を設けた場合において、外型46にて押出成形品10Aを軸心側に挟み込んだときに、主部32を全周に亘り均等な力でこれを押圧し、保持することができる。
尚、この図13の例では凹部36を周方向の4個所に設けているが、勿論これを3個所に或いは5個所以上の多数個所に設けておくことも可能である。
この場合においても各凹部36は周方向に等しい間隔で設けておくことが望ましい。
【0082】
一方図14は、主部32における凹部42を、主部32の外面の軸方向断面形状を、図3の拡径部30における凹部42と同様に連続した鋸歯状の凹凸形状とするように、軸方向に一定ピッチで多数並べて設けた例である。
またこれに対応して、外型46には凹部42と対応する形状の凸形状部66を設けておく。
尚この図14において、凹部42の断面形状は二等辺三角形状となしてあるが、これを他の様々な断面形状となすことも可能である。
【0083】
一方図15は、拡径部30における凹部42の他の形態例を示している(図中の(ロ)が凹部42を、(イ)が対応する凸形状部66の形状をそれぞれ表わしている)。
上記実施形態では、凹部42が断面二等辺三角形状で形成されているが、図15(A)に示しているように凹部42を断面直角三角形状で設けておくことも可能である。
尚この凹部42に対応した外型46の凸形状部66は、当然ながら同じように直角三角形状となる。
【0084】
ここで凹部42、具体的には外型46における凸形状部66は、拡径型50を押し込む際に押出成形品10Aの端部が拡径型50の押込みに連れて軸方向に移動するのを防止するためのものであり、この意味において凹部42及び対応した凸形状部66を直角三角形状となす場合において、凸形状部66における軸直角方向の面が、斜面(斜辺)に対し外型46の軸方向端側に位置するような形状で設けておくことが望ましい。
【0085】
次に図15(B)は、凸形状部66の形状を断面略半円形状として、これを軸方向に連続して位置するように複数設け、この凸形状部66によって、凹部42を対応する形状に形成するようになした例である。
また図15(C)の例は、かかる半円形状の凸形状部66を軸方向に離隔して且つ所定ピッチで複数設け、これら凸形状部66によって、凹部42を対応する形状に形成するようになした例である。
【0086】
更に図15(D)の例は、凸形状部66を断面台形状で形成し、且つ凸形状部66を軸方向に僅かに離隔して所定ピッチで複数設け、それらによって凹部42を対応する形状に形成するようになした例である。
更に図15(E)の例は、凸形状部66を同じく断面台形状に形成し、且つこれを軸方向に連続して多数列に設け、それらによって凹部42を対応する形状に形成するようになした例である。
また図15(F)の例は、凸形状部66を断面四角形状に成形して、これを所定間隔毎に軸方向に多数列に設け、それらによって凹部42を対応する形状に形成するようになした例である。
以上示したものはあくまで一例示であって、凹部42及び凸形状部66を他の様々な形状で設けておくことが可能である。
【0087】
更に上記の凹部42は、図16(イ)に示しているように軸方向に小ピッチで多数形成しておくこともできるし、また(ロ)に示しているようにこれよりも大きいピッチで軸方向に多数設けておくことも可能である。
或いは(ハ)に示しているように凹部42を軸端、即ち開口端のみに部分的に設けておくといったことも可能である。
尚この場合において、凹部42を底面が平面となるような形状で設けておくことが望ましい。
図17は、凹部42をこのような形態で設けた場合のホース10の成形時、詳しくは拡径部30の成形時の状態を表している。
【0088】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれらはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態,態様で構成・実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態のホースを継手金具付きで示した斜視図である。
【図2】同実施形態のホースの継手金具との接続部分の拡大図である。
【図3】同実施形態のホースを要部の部分拡大図とともに示す断面図である。
【図4】同実施形態のホースの成形装置の図である。
【図5】図4の成形装置を各部品に分解して示した図である。
【図6】図4の成形装置の外型の図である。
【図7】図6の外型の斜視図ある。
【図8】同実施形態のホースの製造方法の要部工程の説明図である。
【図9】図8に続く工程説明図である。
【図10】図9に続く工程説明図である。
【図11】本発明の他の実施形態のホースの図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態のホースの図である。
【図13】本発明の更に他の実施形態のホースの図である。
【図14】本発明の更に他の実施形態のホースの図である。
【図15】本発明の更に他の実施形態のホースの要部の図である。
【図16】本発明の更に他の実施形態のホースの要部の図である。
【図17】図16(ハ)のホースの製造方法の要部工程の説明図である。
【図18】従来公知のホースの一例を示す図である。
【図19】図18とは異なる従来公知のホースの図である。
【図20】図19のホース製造の要部工程及びその不具合の説明図である。
【符号の説明】
【0090】
10 ホース
10A 押出成形品
12 継手金具
16 ゴム内層
18 補強層
20 ゴム外層
22 インサートパイプ
30 拡径部
32 主部
36,42 凹部
44 凸部
46 外型
48 マンドレル
50 拡径型
54 成形面
56 形成凹所
58 主部成形面
60 拡径部成形面
62,66 凸形状部
72 嵌合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム内層及びゴム外層とそれらの間に介在する、補強線材を編組してなる補強層を有する積層構造をなし且つ各端部が中央側の主部に対して内径,外径ともに拡径形状をなす拡径部となしてあって、該拡径部に挿入される剛性のインサートパイプと該拡径部に外嵌され縮径方向にかしめられるソケット金具とを有する継手具が該拡径部に装着される端部拡径ホースであって
前記主部の外面に軸心側に凹陥した形状の凹部が軸方向において部分的に設けてあることを特徴とする端部拡径ホース。
【請求項2】
ゴム内層及びゴム外層とそれらの間に介在する、補強線材を編組してなる補強層を有する積層構造をなし且つ各端部が中央側の主部に対して内径,外径ともに拡径形状をなす拡径部となしてあって、該拡径部に挿入される剛性のインサートパイプと該拡径部に外嵌され縮径方向にかしめられるソケット金具とを有する継手具が該拡径部に装着される端部拡径ホースであって
前記拡径部の外面に軸心側に凹陥した形状の凹部が設けてあることを特徴とする端部拡径ホース。
【請求項3】
請求項1において、前記凹部が前記主部の外面に沿って周方向に全周に亘り連続して延びる形態で設けてあることを特徴とする端部拡径ホース。
【請求項4】
請求項1において、前記凹部が軸方向の複数個所に設けてあることを特徴とする端部拡径ホース。
【請求項5】
請求項1において、前記凹部が軸方向に延びる形状で周方向に部分的に且つ周方向の複数個所に設けてあることを特徴とする端部拡径ホース。
【請求項6】
請求項1において、前記凹部が、前記主部の外面の軸方向断面形状を連続した鋸歯状の凹凸形状とするように該軸方向に所定ピッチで並べて設けてあることを特徴とする端部拡径ホース。
【請求項7】
請求項2において、前記凹部が前記拡径部の外面に沿って周方向に全周に亘り連続して延びる形態で設けてあることを特徴とする端部拡径ホース。
【請求項8】
請求項2において、前記凹部が軸方向に部分的に設けてあることを特徴とする端部拡径ホース。
【請求項9】
請求項2において、前記凹部が軸方向に複数並べて設けてあることを特徴とする端部拡径ホース。
【請求項10】
請求項9において、前記凹部が、前記拡径部の外面の軸方向断面形状を連続した鋸歯状の凹凸形状とするように該軸方向に所定ピッチで並べて設けてあることを特徴とする端部拡径ホース。
【請求項11】
請求項1の端部拡径ホースの製造方法であって、
(イ)前記主部の外面を成形する、前記凹部に対応した凸形状部の設けられた主部成形面及び前記拡径部の外面を成形する拡径部成形面を備えた、前記端部拡径ホースの外形形状に対応した形状の成形面と、該成形面の内側に形成される軸方向に貫通の成形凹所とを有する外型と、(ロ)該端部拡径ホースの前記主部の内面を成形するマンドレルとを用い、
押出成形により得た、前記ゴム内層,ゴム外層及び補強層を有する未加硫若しくは半加硫状態の直管状の押出成形品の内部に前記マンドレルを挿入するとともに、該押出成形品を該マンドレルとともに前記外型の成形凹所に挿入セットした状態とし、
しかる後、前記マンドレルに摺動可能に嵌合する嵌合孔を中心部に有するとともに、前記拡径部の内面に対応した形状をなし、該拡径部の内面を成形する拡径部成形面を外面に有する拡径型を前記押出成形品の端部の内部に前記マンドレルに沿って軸方向に押込挿入して該端部を拡径させ、該端部の内面を該拡径型により、外面を前記外型により成形し、その後該押出成形品を該外型,該マンドレル及び該拡径型とともに加熱して完全加硫することを特徴とする端部拡径ホースの製造方法。
【請求項12】
請求項2の端部拡径ホースの製造方法であって、
(イ)前記主部の外面を成形する主部成形面及び前記拡径部の外面を成形する、前記凹部に対応した凸形状部の設けられた拡径部成形面を備えた、前記端部拡径ホースの外形形状に対応した形状の成形面と、該成形面の内側に形成される軸方向に貫通の成形凹所とを有する外型と、(ロ)該端部拡径ホースの該主部の内面を成形するマンドレルとを用い、
押出成形により得た、前記ゴム内層,ゴム外層及び補強層を有する未加硫及若しくは半加硫状態の直管状の押出成形品の内部に前記マンドレルを挿入するとともに、該押出成形品を該マンドレルとともに前記外型の成形凹所に挿入セットした状態とし、
しかる後、前記マンドレルに摺動可能に嵌合する嵌合孔を中心部に有するとともに、前記拡径部の内面に対応した形状をなし、該拡径部の内面を成形する拡径部成形面を外面に有する拡径型を前記押出成形品の端部の内部に前記マンドレルに沿って軸方向に押込挿入して該端部を拡径させ、該端部の内面を該拡径型により、外面を前記外型により成形し、その後該押出成形品を該外型,該マンドレル及び該拡径型とともに加熱して完全加硫することを特徴とする端部拡径ホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−224011(P2008−224011A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67635(P2007−67635)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】