説明

笠木、笠木の取付構造及び笠木の施工方法

【課題】壁体に対する複数の取付形態を選択的に実施可能とする汎用性の高い断面形状の笠木を提供して、壁体の笠木部分の意匠展開を安価に実現する。
【解決手段】この笠木1は、芯材11の両側面に表面パネル材12、12を張り付けてなる壁体10の上端部に設けられるものであって、芯材11の上端面に沿って配される基部2と、この基部2の長手方向に沿った両側面上部から側方へ張り出した一対の張出部3、3とを備えている。張出部3、3の下面には、表面パネル材嵌め込み用の下向き溝6、6が形成され、基部2の下面に下地材20を重ね合わせた状態において、下地材20の上面と張出部3、3の下面との間に、壁紙巻き込み用及び化粧材差し込み用の横向き溝7、7が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腰壁や階段壁等の壁体の上端部に設けられる木製の笠木、その取付構造及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、腰壁や階段壁等の壁体の上端部に設けられる木製の笠木としては、例えば特許文献1や特許文献2に開示されたものが知られている。特許文献1に開示された笠木は、その下面に形成した下向き溝に、壁体の表面パネル材の上端部を嵌め込むようになっている。特許文献2に開示された笠木は、その両側面に形成した横向き溝に、壁体の両側面上部に沿って配される化粧材を差し込んで取り付けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−44073号公報
【特許文献2】特開平10−325224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、腰壁や階段壁等の壁体における笠木部分は、目立ち易くて室内装飾に与える影響も大きいことから、様々な意匠展開が図られていることが多い。この意匠展開に際しては、単に断面形状の異なる複数種類の笠木を用意するだけでなく、笠木の壁体への取付形態を異ならせることでも対応しているが、従来においては、笠木の種類が多くなりがちで、笠木製作に伴う費用が嵩むといった不具合があった。
【0005】
すなわち、従来においては、笠木の壁体への取付形態を異ならせるにあたって、それら取付形態毎に断面形状の異なる笠木を用意していた。例えば、特許文献1に開示されているような笠木の取付形態と、特許文献2に開示されているような笠木の取付形態とを選択的に実施して、壁体の笠木部分の意匠展開を図る場合、少なくとも断面形状の異なる2種類の笠木(下面に下向き溝を有する笠木、両側面に横向き溝を有する笠木)を用意する必要があった。
【0006】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、壁体に対する複数の取付形態を選択的に実施可能とする汎用性の高い断面形状を有する笠木を提供して、壁体の笠木部分の意匠展開を安価に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の笠木1は、芯材11の両側面に表面パネル材12、12を張り付けてなる壁体10の上端部に設けられるものであって、前記壁体10の芯材11の上端面に沿って配される基部2と、この基部2の長手方向に沿った両側面上部から側方へ張り出した一対の張出部3、3とを備え、前記壁体10への取り付けに際して、前記表面パネル材12、12の上端部を前記芯材11の上端面よりも上方に突出させた状態において、前記張出部3、3の下面に形成した下向き溝6、6に、前記表面パネル材12、12の上端部を嵌め込み可能とし、前記表面パネル材12、12の上端面と前記芯材11の上端面とを略面一とした状態において、これら上端面に被せた平板状の下地材20の上面と前記張出部3、3の下面との間に形成される横向き溝7、7に、前記表面パネル材12、12に貼り付けた壁紙16、16の上端部を巻き込み可能とするとともに、前記壁体10の両側面上部に沿って配される化粧材30、30の取付部32、32を差し込み可能としたことを特徴とする。
【0008】
この発明の上記笠木1の取付構造は、前記基部2を前記壁体10の前記芯材11の上端面に取り付けるとともに、前記張出部3、3の下向き溝6、6に、前記壁体10の前記表面パネル材12、12の上端部を嵌め込んでなる第1の取付形態と、前記基部2を前記壁体10の前記芯材11の上端面に前記下地材20を介して取り付けるとともに、前記下地材20の上面と前記張出部3、3の下面との間の横向き溝7、7に、前記壁紙16、16の上端部を巻き込んでなる第2の取付形態と、前記基部2を前記壁体10の前記芯材11の上端面に前記下地材20を介して取り付けるとともに、前記下地材20の上面と前記張出部3、3の下面との間の横向き溝7、7に、前記化粧材30、30の取付部32、32を差し込んでなる第3の取付形態とを、選択的に実施可能としたことを特徴とする。
【0009】
この発明の上記笠木1の施工方法は、前記基部2を前記壁体10の前記芯材11の上端面に取り付けるとともに、前記張出部3、3の下向き溝6、6に、前記壁体10の前記表面パネル材12、12の上端部を嵌め込むようにした第1の取付形態と、前記基部2を前記壁体10の前記芯材11の上端面に前記下地材20を介して取り付けるとともに、前記下地材20の上面と前記張出部3、3の下面との間の横向き溝7、7に、前記壁紙16、16の上端部を巻き込むようにした第2の取付形態と、前記基部2を前記壁体10の前記芯材11の上端面に前記下地材20を介して取り付けるとともに、前記下地材20の上面と前記張出部3、3の下面との間の横向き溝7、7に、前記化粧材30、30の取付部32、32を差し込むようにした第3の取付形態とを、選択的に実施可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の笠木においては、その張出部の下面に、表面パネル材嵌め込み用の下向き溝が形成され、下地材の上面と張出部の下面との間に、壁紙巻き込み用及び化粧材差し込み用の横向き溝が形成されるようになっていて、壁体に対する複数の取付形態(第1〜第3の取付形態)を選択的に実施可能とする汎用性の高い断面形状を有している。
【0011】
これにより、笠木の断面形状を共通にして笠木製作に伴う費用を削減しながらも、壁体への取付形態にバリエーションを持たせることができ、壁体の笠木部分の意匠展開を安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態に係る笠木を設けた壁体の破断斜視図である。
【図2】笠木の縦断面図である。
【図3】笠木の第1の取付形態を示す図である。
【図4】笠木の第2の取付形態を示す図である。
【図5】笠木の第3の取付形態を示す図である。
【図6】種類の異なる化粧材を使用した笠木の第3の取付形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る笠木1は、図1に示すように、腰壁や階段壁等の壁体10の上端部に被せるようにして設けられる。
【0014】
壁体10は、芯材11の両側面に表面パネル材12、12を張り付けてなる。芯材11は、上下の横枠材13、14と、これら横枠材13、14間に跨る複数の縦枠材15・・とを枠状に組み付けてなる。また、表面パネル材12、12は、例えば石膏ボード等からなり、その表面全体には壁紙(クロス)16、16が夫々貼り付けられている。
【0015】
笠木1は、図1及び図2に示すように、長手方向に略T字状の同一断面を有する木製の長尺材からなり、壁体10における芯材11の上端面(上側の横枠材13の上面)に沿って配される基部2と、この基部2の長手方向に沿った両外側面上部から側方へ張り出した一対の張出部3、3とを備えている。
【0016】
基部2は、断面略長方形状に形成され、その厚みが例えば約30mmとなっている。各張出部3は、薄肉の根元部位4と、その根元部位4よりも僅かに下方へ突出した厚肉の先端部位5を備え、断面略L字状に形成されている。そして、張出部3、3は、それら上面が基部2の上面と面一とされ、先端部位5、5の下面が基部2の下面よりも例えば約15mm上方に配されている。
【0017】
そして、この笠木1においては、その張出部3、3の下面に、表面パネル材嵌め込み用の下向き溝6、6が夫々形成され、また基部2の下面に後述する平板状の下地材20を重ね合わせた状態において、下地材20の上面と張出部3、3の下面との間に、壁紙巻き込み用及び化粧材差し込み用の横向き溝7、7が形成されるようになっている。
【0018】
下向き溝6は、基部2の外側面と張出部3の先端部位5の内側面とによって溝壁が構成され、張出部3の根元部位4の下面によって溝底が構成されている。また、横向き溝7は、下地材20の上面と張出部3の根元部位4及び先端部位5の下面とによって溝壁が構成され、基部2の外側面によって溝底が構成されている。
【0019】
次に、上記構成の笠木1の取り付け(施工)について説明する。この取り付け(施工)に際しては、笠木1の壁体10への取付形態が少なくとも3通り用意されており、これら3通りの取付形態を選択的に実施可能となっている。
【0020】
第1の取付形態の実施に際しては、図1及び図3に示すように、笠木1の基部2を壁体10の芯材11の上端面に直接取り付ける。壁体10においては、一対の表面パネル材12、12の上端部を芯材11の上端面よりも上方に突出させるようにして、一対の表面パネル材12、12を芯材11の両側面に張り付けてある。
【0021】
そして、突出させた一対の表面パネル材12、12の上端部を、その直上に位置する笠木1の張出部3、3の下面に形成した下向き溝6、6に嵌め込むようにしている。この第1の取付形態においては、壁体1の笠木部分がシンプルですっきりとした意匠となる。
【0022】
第2の取付形態の実施に際しては、図4に示すように、笠木1の基部2を壁体10の芯材11の上端面に平板状の下地材20を介して取り付ける。壁体10においては、一対の表面パネル材12、12の上端面と芯材11の上端面とが略面一となるようにして、一対の表面パネル材12、12を芯材11の両側面に張り付けてある。下地材20は、その厚さが例えば約4mm、その幅が例えば壁体10の幅と略同じ寸法となっていて、壁体10の上端面(互いに略面一とされている一対の表面パネル材12、12の上端面と芯材11の上端面)に被せられている。なお、下地材20は、笠木1の基部2の下面に先付けして、笠木1と同時に取り付けるのが施工上望ましいが、笠木1とは別体として別々に取り付けるようにしても良い。
【0023】
そして、下地材20の上面と笠木1の張出部3、3の下面との間に形成される横向き溝7、7に、表面パネル材12、12の表面に貼り付けた壁紙(クロス)16、16の上端部を巻き込むようにしている。なお、この壁紙16、16の上端部の巻き込みに際して、下地材20の長手方向に沿った両端部のテーパー部分21、21にパテ材22、22を充填して、壁紙(クロス)16、16の切れを防止している。この第2の取付形態においては、壁体1の笠木部分に横向き溝7、7が長手方向に沿って直線状に表れて、第1の取付形態とは異なる立体感のある意匠となる。
【0024】
第3の取付形態の実施に際しては、図5及び図6に示すように、第2の取付形態のときと同様に、笠木1の基部2を壁体10の芯材11の上端面に平板状の下地材20を介して取り付ける。壁体10においては、一対の表面パネル材12、12の上端面と芯材11の上端面とが略面一となるようにして、一対の表面パネル材12、12を芯材11の両側面に張り付けてある。
【0025】
そして、下地材20の上面と笠木1の張出部3、3の下面との間に形成される横向き溝7、7に、表面パネル材12、12の表面に貼り付けた壁紙(クロス)16、16の上端部を巻き込むとともに、化粧材30、30を取り付けている。化粧材30は、壁体10の表面パネル材12の上端部に重ね合わされる本体部31と、この本体部31の上端から側方へ張り出した取付部32とを備え、断面略L字状に形成されている。そして、化粧材30、30は、それら取付部32、32を横向き溝7、7に差し込むことによって、壁体10の両側面上部に沿って配される。この第3の取付形態においては、壁体1の笠木部分に化粧材30、30が長手方向に沿って直線状に表れて、第1の取付形態や第2の取付形態とは異なる装飾性のある意匠となる。
【0026】
なお、図5に示す化粧材30、30においては、その本体部31、31の外側面がフラットになっているのに対し、図6に示す化粧材30、30においては、その本体部31、31の外側面に横溝31a、31aが形成されている。このように、化粧材30、30として、形状や大きさの異なる複数種類のものを用意しておくことで、壁体10の笠木部分の意匠展開を充実させることができる。
【0027】
以上のように、笠木1の断面形状を、少なくとも第1〜第3の取付形態を選択的に実施可能とする汎用性の高い形状としているので、従来のように壁体への取付形態が異なる毎に断面形状の異なる笠木を用意することなく、笠木1の断面形状を共通にして笠木製作に伴う費用を削減しながらも、壁体1への取付形態にバリエーションを持たせることができ、壁体10の笠木部分の意匠展開を安価に実現することができる。
【0028】
また、複数種類の化粧材30、30を用意することで、化粧材30、30の着脱や交換によって、壁体10の笠木部分の意匠展開をさらに幅広く実現することができ、インテリアイメージを変える簡易リフォームも容易となる。
【0029】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1・・笠木、2・・基部、3・・張出部、6・・下向き溝、7・・横向き溝、10・・壁体、11・・芯材、12・・表面パネル材、16・・壁紙、20・・下地材、30・・化粧材、32・・取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材(11)の両側面に表面パネル材(12)(12)を張り付けてなる壁体(10)の上端部に設けられる笠木(1)であって、前記壁体(10)の芯材(11)の上端面に沿って配される基部(2)と、この基部(2)の長手方向に沿った両側面上部から側方へ張り出した一対の張出部(3)(3)とを備え、前記壁体(10)への取り付けに際して、前記表面パネル材(12)(12)の上端部を前記芯材(11)の上端面よりも上方に突出させた状態において、前記張出部(3)(3)の下面に形成した下向き溝(6)(6)に、前記表面パネル材(12)(12)の上端部を嵌め込み可能とし、前記表面パネル材(12)(12)の上端面と前記芯材(11)の上端面とを略面一とした状態において、これら上端面に被せた平板状の下地材(20)の上面と前記張出部(3)(3)の下面との間に形成される横向き溝(7)(7)に、前記表面パネル材(12)(12)に貼り付けた壁紙(16)(16)の上端部を巻き込み可能とするとともに、前記壁体(10)の両側面上部に沿って配される化粧材(30)(30)の取付部(32)(32)を差し込み可能としたことを特徴とする笠木。
【請求項2】
請求項1記載の笠木(1)の取付構造であって、前記基部(2)を前記壁体(10)の前記芯材(11)の上端面に取り付けるとともに、前記張出部(3)(3)の下向き溝(6)(6)に、前記壁体(10)の前記表面パネル材(12)(12)の上端部を嵌め込んでなる第1の取付形態と、前記基部(2)を前記壁体(10)の前記芯材(11)の上端面に前記下地材(20)を介して取り付けるとともに、前記下地材(20)の上面と前記張出部(3)(3)の下面との間の横向き溝(7)(7)に、前記壁紙(16)(16)の上端部を巻き込んでなる第2の取付形態と、前記基部(2)を前記壁体(10)の前記芯材(11)の上端面に前記下地材(20)を介して取り付けるとともに、前記下地材(20)の上面と前記張出部(3)(3)の下面との間の横向き溝(7)(7)に、前記化粧材(30)(30)の取付部(32)(32)を差し込んでなる第3の取付形態とを、選択的に実施可能としたことを特徴とする笠木の取付構造。
【請求項3】
請求項1記載の笠木(1)の施工方法であって、前記基部(2)を前記壁体(10)の前記芯材(11)の上端面に取り付けるとともに、前記張出部(3)(3)の下向き溝(6)(6)に、前記壁体(10)の前記表面パネル材(12)(12)の上端部を嵌め込むようにした第1の取付形態と、前記基部(2)を前記壁体(10)の前記芯材(11)の上端面に前記下地材(20)を介して取り付けるとともに、前記下地材(20)の上面と前記張出部(3)(3)の下面との間の横向き溝(7)(7)に、前記壁紙(16)(16)の上端部を巻き込むようにした第2の取付形態と、前記基部(2)を前記壁体(10)の前記芯材(11)の上端面に前記下地材(20)を介して取り付けるとともに、前記下地材(20)の上面と前記張出部(3)(3)の下面との間の横向き溝(7)(7)に、前記化粧材(30)(30)の取付部(32)(32)を差し込むようにした第3の取付形態とを、選択的に実施可能としたことを特徴とする笠木の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−153413(P2011−153413A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14086(P2010−14086)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】