説明

符号語同期方法および回路

【課題】同期リセット信号生成回路および可変遅延回路を不要にする。
【解決手段】符号語同期回路100aは、符号語同期条件を、ギアボックス回路101から入力される受信信号と同期パターン(SP)とのn回(nは2以上の整数)連続一致と、これに続く受信信号とバーストデリミタ(BD)との一致とする状態機械回路103aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、10G−EPONにおける上り信号の誤り訂正符号復号のための符号語同期方法および回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次世代アクセス方式として、10G−EPON(10 Gigabit-Ethernet Passive Optical Network)の標準化が完了し、実用化に向けた開発が進められている。
10G−EPONは誤り訂正符号としてブロック符号であるリードソロモン符号を採用しているため、誤り訂正符号復号のために符号語境界を検出して同期する符号語同期を行う。加入者宅装置(Optical Network Unit、以下、ONUとする)から局側装置(Optical Line Terminal、以下、OLTとする)方向の上り信号は連続的でないバースト信号のため、符号語同期はバースト信号毎に行われる。10G−EPONでは、符号語同期のために特定のパターンをバースト信号の先頭に付加してONUが送信することが定められている。
【0003】
図4に10G−EPONの上り信号フォーマットを示す。ONUは、レーザオンタイム(laserOnTime)期間中にレーザをオフからオンにした後に、複数のSP(Sync Pattern:同期パターン)、BD(Burst Delimiter:バーストデリミタ)、データ、2個のEOB(End Of Burst delimiter:エンドオブバーストデリミタ)の順序で光信号を送信する。そして、ONUは、レーザオフタイム(laserOffTime)期間中にレーザをオンからオフにする。ここで、SP,BD,EOBはいずれも規格で定められた66ビット長の固定パターンである。レーザオンタイム期間、レーザオフタイム期間の値は、ONU毎に定まる固定値である。
【0004】
10G−EPONでは、OLTがBDを検出することにより、符号語同期を行う。SPやBDにビット誤りが生じても、符号語同期に失敗する平均時間間隔および誤った位置で符号語同期してしまう平均時間間隔が宇宙年齢を超えるように、SP/BD/EOBのパターンは選択されている。
【0005】
以下、10G−EPONにおける符号語同期の詳細について述べる。図5に符号語同期の状態遷移図を示す。この状態遷移は、後述する状態機械回路によって実行される。図5における変数としては、パワーオンリセット状態を示すreset、受信状態を示すsignal_ok、同期状態を示すcword_lock、BD一致判定結果を示すBD_valid、EOB一致判定結果を示すEOB_valid、3符号語連続誤り訂正不能発生検出結果を示すpersist_dec_failがある。
【0006】
変数resetがtrueのときはパワーオンリセット状態であり、falseのときは通常状態である。変数signal_okがtrueのときは受信信号ありを示し、falseのときは不正な受信信号ありを示している。変数cword_lockがtrueのときは同期状態であり、falseのときは非同期状態である。変数BD_validがtrueのときは受信信号とBDとが一致したことを示し、falseのときは受信信号とBDとが不一致であることを示している。変数EOB_validがtrueのときは受信信号とEOBとが一致したことを示し、falseのときは受信信号とEOBとが不一致であることを示している。変数persist_dec_failがtrueのときは3符号語連続誤り訂正不能が発生したことを示し、falseのときは3符号語連続誤り訂正不能が発生しなかったことを示し、ELSEのときはそれ以外の遷移条件を示している。
【0007】
図5における関数としては、SLIP_One_Bitがある。関数SLIP_One_Bitは、受信信号のビットアライメントを1ビットシフトする関数である。このとき、回路としては新たに1ビットを受信することになる。なお、UCT(UnConditional Transition)は、パワーオンリセット状態から状態HUNTINGに遷移することを示している。
【0008】
図5に示すように、パワーオンリセット状態では、状態機械回路の初期状態は状態LOCK_INITであり(ステップS1)、変数cword_lockを非同期状態を示すfalseにする(ステップS2)。パワーオンリセット状態が解除され、変数signal_okが受信信号ありを示すtrueになると、状態HUNTINGに遷移する(ステップS3)。状態HUNTINGでは、受信信号とBDとの一致判定を66ビット単位で行う。
【0009】
受信信号とBDとが不一致の場合は、関数SLIP_One_Bitを実行し(ステップS4)、受信信号とBDとの一致判定を再度行う(ステップS3)。こうして、受信信号とBDとが一致するまで、ステップS3,S4の処理が繰り返されることになる。受信信号とBDとが一致した場合は、関数SLIP_One_Bitを実行せずに、状態LOCKEDに遷移する(ステップS5)。
【0010】
状態LOCKEDでは、受信信号のビットアライメントが固定される。BD検出により符号語境界が分かるので、変数cword_lockを同期状態を示すtrueにする(ステップS6)。ステップS6では受信信号とEOBとの一致判定を66ビット単位で行う。受信信号とEOBとが一致せず、かつ誤り訂正不能な符号語が3回連続して発生しなかった場合、状態LOCKEDを維持する。受信信号とEOBとが一致するか、あるいは誤り訂正不能な符号語が3回連続すると、状態LOCK_INITに遷移する(ステップS1)。
【0011】
BDやEOBとの一致判定は、受信信号にビット誤りが発生した場合でも符号語同期が達成できるように、比較対象の受信信号がハミング距離11以下の66ビット長パターンである場合は一致と判定する。また、SPの連続パターンとBDとの最小ハミング距離が30であるため、受信信号に含まれるSPの連続パターンに20箇所のビット誤りが発生すると、このSPの連続パターンはBDとして一致判定される。したがって、受信信号に含まれるBDに12個以上の誤りが発生すると符号語同期に失敗し、受信信号に含まれるSPに20箇所以上ビット誤りが発生すると誤った位置で符号語同期する。
【0012】
符号語同期に失敗する確率P_LOST_BURST、および誤った位置で符号語同期してしまう誤同期確率P_FALSE_BURSTは、それぞれ式(2)、式(3)で与えられる。pは伝送路におけるビット誤り率である。なお、(1)に示す記号は近似を表す。
【0013】
【数1】

【0014】
【数2】

【0015】
【数3】

【0016】
ここで、104はSPの最大連続数である。このときの符号語同期に失敗する平均時間間隔MTT_LOST_BURST、および誤同期の平均時間間隔MTT_FALSE_BURSTは、バースト信号の速度を100Kバースト/secとした場合、それぞれ式(4)、式(5)に示すようになる。
【0017】
【数4】

【0018】
【数5】

【0019】
非特許文献1、非特許文献2で規定されるビット誤り率の上限値10-3では、符号語同期に失敗する平均時間間隔MTT_LOST_BURST、および誤同期の平均時間間隔MTT_FALSE_BURSTは、それぞれ式(6)、式(7)に示すようになる。
【0020】
【数6】

【0021】
【数7】

【0022】
式(6)、式(7)に示すMTT_LOST_BURST、MTT_FALSE_BURSTの単位は年である。このように、宇宙年齢2×1010年よりもMTT_LOST_BURST、MTT_FALSE_BURSTは長い。
特許文献1に開示されたPONシステムにおいても、非特許文献1、非特許文献2と同様の同期方法を採用している。
【0023】
符号語同期回路の従来の一般的な実装方法は、図5の状態遷移を実現する状態機械回路と、符号語同期回路をバースト先頭においてリセットする制御信号(同期リセット信号)を出力する同期リセット信号生成回路とを設けることである。非常に高速な処理を必要とするとともに、機能変更などに対応する必要がないため、状態機械回路はソフトウェアでなく、ハードウェアで実現される。
【0024】
状態機械回路だけでなく、同期リセット信号生成回路が必要な理由は、バースト先頭のレーザオンタイム期間中では光レベルが不安定なため、光受信器が出力する受信信号が偶然BDパターンに一致し誤った符号語同期がなされることを防ぐためである。
レーザオンタイム期間におけるパターンが一様に発生すると仮定すると、BDと一致すると判定されるパターンが発生する確率P_FALSE_BDは、11個以下の誤りを許容するので、式(8)のようになる。
【0025】
【数8】

【0026】
このとき、誤同期の平均時間間隔MTT_FALSE_BURSTは、式(9)のようになる。式(9)から明らかなように、MTT_FALSE_BURSTがおよそ600秒となるので、符号語同期が正常に行えない。
【0027】
【数9】

【0028】
図6に上り受信信号と同期リセット信号のタイミングチャートを示す。同期リセット信号は、上り信号の到着時刻とスロット幅(上り信号の先頭のSPから最後尾のEOBまでの幅)とを示す時間スロット情報(Grant情報)に基づいて生成される。同期リセット信号は、時間スロットの間隙で有意(負論理)となり、スロット幅の期間中は有意でない。
【0029】
同期リセット信号が有意のときは、符号語同期を開始しないことで、誤った符号語同期を防止する。実際は、上り信号の到着時刻においては上り信号が不安定なため、到着時刻よりやや遅れたSPの受信中に同期リセット信号が有意でなくなるように同期リセット信号を遅延させ、遅延させた同期リセット信号に基づいて符号語同期を開始する。同期リセット信号の遅延は他の回路ブロックの遅延段数により一意に定まるが、他の回路ブロックの設計変更等に伴って遅延段数が変化することが多いため、遅延を可変とすることが一般的である。
【0030】
図7に従来の符号語同期回路を適用した誤り訂正符号復号装置の実現例を示す。誤り訂正符号復号装置は、符号語同期回路100と、ギアボックス(Gearbox)回路101と、誤り訂正符号復号回路102とから構成される。符号語同期回路100は、上述の状態機械回路103と、同期リセット信号生成回路104と、可変遅延回路105とから構成される。
【0031】
図7の回路ブロックについて各々説明する。ギアボックス(Gearbox)回路101は、16ビット幅の受信信号を66ビット幅の受信信号に変換する。ギアボックス回路101は、SLIP_One_Bit信号が有意のときは66ビット受信信号のビットアライメントを1ビットシフトする。
【0032】
同期リセット信号生成回路104は、時間スロット情報に基づいて同期リセット信号を生成する。可変遅延回路105は、同期リセット信号を遅延段数で設定された遅延時間分だけ遅延させて出力する。
【0033】
状態機械回路103は、図5に示した状態遷移を実現する。reset,signal_ok,cword_lock,persist_dec_fail,SLIP_One_Bitの意味は図5で説明したとおりである。ここで、状態機械回路103のsignal_ok端子には、可変遅延回路105によって遅延された同期リセット信号が入力される。この同期リセット信号が有意のリセット状態を示しているとき、状態機械回路103は、符号語同期を開始しない。
【0034】
誤り訂正符号復号回路102は、cword_lock信号に基づいて符号語境界を検出し、66ビット幅の受信信号に対して誤り訂正復号動作を行い、訂正済み受信信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2009−284477号公報
【非特許文献】
【0036】
【非特許文献1】IEEE Std 802.3av,2009
【非特許文献2】“FEC Synchronization and Framing”,2007,<http://www.ieee802.org/3/av/public/2007_01/3av_0701_effenberger_1.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
前述の如く、従来の符号語同期回路では、同期リセット信号生成回路および可変遅延回路が必要となり、回路規模が増大するという問題点があった。
【0038】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、同期リセット信号生成回路および可変遅延回路を不要とする符号語同期方法および回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明は、IEEE802.3avで規定される局側装置の符号語同期方法において、符号語同期条件を、受信信号と同期パターン(SP)とのn回(nは2以上の整数)連続一致と、これに続く受信信号とバーストデリミタ(BD)との一致とする同期処理ステップを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の符号語同期方法の1構成例において、前記同期処理ステップは、受信信号の誤り訂正復号処理を行う誤り訂正符号復号回路に対して符号語同期状態か否かを通知する信号cword_lockを、非同期状態を示す値に設定する初期化ステップと、この初期化ステップによる処理後に、ギアボックス回路から入力される受信信号とSPとの一致判定を行い、不一致の場合に、前記ギアボックス回路に対して受信信号のビットアライメントの1ビットシフトを指示して、受信信号とSPとの一致判定を再度行う第1のSP一致判定ステップと、この第1のSP一致判定ステップで受信信号とSPとが一致した場合に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とSPとの一致判定を(n−1)回行い、(n−1)回のいずれかで受信信号とSPとが不一致の場合に、前記初期化ステップに戻る第2のSP一致判定ステップと、この第2のSP一致判定ステップで受信信号とSPとが一致した場合に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とBDとの一致判定を行い、不一致の場合に、前記初期化ステップに戻るBD一致判定ステップと、このBD一致判定ステップで受信信号とBDとが一致した場合に、前記信号cword_lockを同期状態を示す値に設定すると共に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とエンドオブバーストデリミタ(EOB)との一致判定を行い、受信信号とEOBとが一致するか、あるいは前記訂正符号復号回路から誤り訂正不能な符号語が3回連続したことを通知された場合に、前記初期化ステップに戻るEOB一致判定ステップとからなることを特徴とするものである。
また、本発明の符号語同期方法の1構成例において、nは2である。
また、本発明の符号語同期方法の1構成例において、nは3以上11以下である。
【0040】
また、本発明の符号語同期回路は、符号語同期条件を、受信信号と同期パターン(SP)とのn回(nは2以上の整数)連続一致と、これに続く受信信号とバーストデリミタ(BD)との一致とする状態機械回路を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の符号語同期回路の1構成例において、前記状態機械回路は、受信信号の誤り訂正復号処理を行う誤り訂正符号復号回路に対して符号語同期状態か否かを通知する信号cword_lockを、非同期状態を示す値に設定して、状態機械回路を初期状態にする初期化回路と、この初期化回路による処理後に、ギアボックス回路から入力される受信信号とSPとの一致判定を行い、不一致の場合に、前記ギアボックス回路に対して受信信号のビットアライメントの1ビットシフトを指示して、受信信号とSPとの一致判定を再度行う第1のSP一致判定回路と、この第1のSP一致判定回路で受信信号とSPとが一致した場合に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とSPとの一致判定を(n−1)回行い、(n−1)回のいずれかで受信信号とSPとが不一致の場合に、前記初期化回路による初期状態に戻す第2のSP一致判定回路と、この第2のSP一致判定回路で受信信号とSPとが一致した場合に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とBDとの一致判定を行い、不一致の場合に、前記初期化回路による初期状態に戻すBD一致判定回路と、このBD一致判定回路で受信信号とBDとが一致した場合に、前記信号cword_lockを同期状態を示す値に設定すると共に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とエンドオブバーストデリミタ(EOB)との一致判定を行い、受信信号とEOBとが一致するか、あるいは前記訂正符号復号回路から誤り訂正不能な符号語が3回連続したことを通知された場合に、前記初期化回路による初期状態に戻すEOB一致判定回路とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、従来の符号語同期において必要であった同期リセット信号が不要となるため、同期リセット信号生成回路および可変遅延回路が不要となり、回路規模を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係る符号語同期の状態遷移図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る誤り訂正符号復号装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る符号語同期回路の構成例を示すブロック図である。
【図4】10G−EPONの上り信号フォーマットを示す図である。
【図5】従来の符号語同期の状態遷移図である。
【図6】10G−EPONの上り受信信号と同期リセット信号のタイミングチャートである。
【図7】従来の符号語同期回路を適用した誤り訂正符号復号装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。本実施の形態では、符号語同期のために、従来の受信信号とBDとの一致判定だけでなく、受信信号とSPとの一致判定を2回行うことを特徴とする。受信信号とSPとの2回連続一致と受信信号とBDとの一致をもって符号語同期達成の条件とする。
【0044】
本実施の形態における符号語同期の状態遷移図を図1に示す。また、本実施の形態に係る誤り訂正符号復号装置の構成例を図2に示し、図1の状態遷移を実現する符号語同期回路(状態機械回路)の構成例を図3に示す。誤り訂正符号復号装置は、符号語同期回路100aと、ギアボックス(Gearbox)回路101と、誤り訂正符号復号回路102とから構成される。
【0045】
ギアボックス回路101は、16ビット幅の受信信号を66ビット幅の受信信号に変換する。また、ギアボックス回路101は、符号語同期回路100aから出力される信号SLIP_One_Bitが有意のときは66ビット受信信号のビットアライメントを1ビットシフトする。
【0046】
誤り訂正符号復号回路102は、信号cword_lockに基づいて符号語境界を検出し、66ビット幅の受信信号に対して誤り訂正復号処理を行い、訂正済み受信信号を出力する。また、誤り訂正符号復号回路102は、誤り訂正不能な符号語が3回連続した場合、信号persist_dec_failをtrueにする。
【0047】
状態機械回路103aは、図1に示す状態遷移を実現する。符号語同期回路100aは、状態機械回路103aから構成される。状態機械回路103aは、信号cword_lockを非同期状態を示す値に設定して、状態機械回路103aを初期状態にする初期化回路110と、初期化回路110による処理後に、ギアボックス回路101から入力される受信信号とSPとの一致判定を行い、不一致の場合に、ギアボックス回路101に対して受信信号のビットアライメントの1ビットシフトを指示して、受信信号とSPとの一致判定を再度行うSP一致判定回路111と、SP一致判定回路111で受信信号とSPとが一致した場合に、受信信号とSPとの一致判定を行い、不一致の場合に、初期化回路110による初期状態に戻すSP一致判定回路112と、SP一致判定回路112で受信信号とSPとが一致した場合に、受信信号とBDとの一致判定を行い、不一致の場合に、初期化回路110による初期状態に戻すBD一致判定回路113と、BD一致判定回路113で受信信号とBDとが一致した場合に、信号cword_lockを同期状態を示す値に設定すると共に、受信信号とEOBとの一致判定を行い、受信信号とEOBとが一致するか、あるいは訂正符号復号回路102から誤り訂正不能な符号語が3回連続したことを通知された場合に、初期化回路110による初期状態に戻すEOB一致判定回路114と、初期化回路110の出力とEOB一致判定回路114の出力の論理和をとる論理和回路115とを有する。非常に高速な処理を必要とするとともに、機能変更などに対応する必要がないため、状態機械回路103aはソフトウェアでなく、ハードウェアで実現される。
【0048】
図1におけるreset,signal_ok,cword_lock,BD_valid,EOB_valid,persist_dec_fail,SLIP_One_Bit,UCTの意味は図5で説明したとおりである。SP_validはSP一致判定結果を示す信号である。信号SP_validがtrueのときはSP一致を示し、falseのときはSP不一致を示している。ここで、SPとの一致判定は受信信号にビット誤りが発生した場合でも符号語同期が達成できるように、比較対象の受信信号がハミング距離11以下の66ビット長パターンである場合は一致と判定する。
【0049】
初期化回路110は、電源投入時にパワーオンリセット信号resetがtrueになると、状態機械回路103a(符号語同期回路100a)を初期状態LOCK_INITにし(ステップS10)、信号cword_lockを非同期状態を示すfalseにする(ステップS11)。なお、パワーオンリセット信号resetがtrueになると、SP一致判定回路111〜113とEOB一致判定回路114も初期化され、EOB一致判定回路114が出力する信号cword_lockもfalseになる。パワーオンリセット信号resetは、電源投入後、通常状態を示すfalseになる。
【0050】
本実施の形態では、状態機械回路103aのsignal_ok端子に入力される信号signal_okが常にtrueに固定されているので、初期化回路110は、信号cword_lockをfalseにした後に、SP一致判定回路111に対して状態SP_HUNTING_1に遷移するよう指示する。
【0051】
状態SP_HUNTING_1において、SP一致判定回路111は、ギアボックス回路101から入力される受信信号とSPとの一致判定を66ビット単位で行う(ステップS12)。SP一致判定回路111は、受信信号とSPとが不一致の場合、ギアボックス回路101に対して関数SLIP_One_Bitの実行を指示する(ステップS13)。この指示に応じて、ギアボックス回路101は、受信信号のビットアライメントを1ビットシフトする。
【0052】
そして、SP一致判定回路111は、ステップS12に戻り、受信信号とSPとの一致判定を再度行う。こうして、受信信号とSPとが一致するまで、ステップS12,S13の処理が繰り返されることになる。SP一致判定回路111は、受信信号とSPとが一致した場合、関数SLIP_One_Bitを実行せずに、SP一致判定回路112に対して状態SP_HUNTING_2に遷移するよう指示する。
【0053】
状態SP_HUNTING_2において、SP一致判定回路112は、ギアボックス回路101から入力される受信信号とSPとの一致判定を66ビット単位で行う(ステップS14)。状態SP_HUNTING_2においては、信号cword_lockはfalseのまま維持される(ステップS15)。また、状態SP_HUNTING_2では、受信信号のビットアライメントが固定される。すなわち、受信信号とSPとが不一致の場合でも、関数SLIP_One_Bitを実行しない。
【0054】
SP一致判定回路112は、受信信号とSPとが不一致の場合、初期化回路110に対して初期状態LOCK_INITに遷移するよう指示する。この指示により、状態機械回路103aの状態はステップS10に戻る。こうして、受信信号とSPとが2回連続して一致するまで、ステップS10〜S15の処理が繰り返されることになる。
【0055】
次に、SP一致判定回路112は、状態SP_HUNTING_2において受信信号とSPとが一致した場合、BD一致判定回路113に対して状態HUNTINGに遷移するよう指示する。状態HUNTINGにおいて、BD一致判定回路113は、ギアボックス回路101から入力される受信信号とBDとの一致判定を66ビット単位で行う(ステップS16)。状態HUNTINGにおいては、信号cword_lockはfalseのまま維持される(ステップS17)。また、状態SP_HUNTING_2の場合と同様に、受信信号のビットアライメントが固定される。
【0056】
BD一致判定回路113は、受信信号とBDとが不一致の場合、初期化回路110に対して初期状態LOCK_INITに遷移するよう指示する。この指示により、状態機械回路103aの状態はステップS10に戻る。こうして、受信信号とSPとが2回連続して一致し、かつ受信信号とBDとが一致するまで、ステップS10〜S17の処理が繰り返されることになる。
【0057】
次に、BD一致判定回路113は、状態HUNTINGにおいて受信信号とBDとが一致した場合、EOB一致判定回路114に対して状態LOCKEDに遷移するよう指示する(ステップS18)。状態LOCKEDにおいて、EOB一致判定回路114は、信号cword_lockを同期状態を示すtrueにし、ギアボックス回路101から入力される受信信号とEOBとの一致判定を66ビット単位で行う(ステップS19)。EOB一致判定回路114は、受信信号とEOBとが一致せず、かつ誤り訂正符号復号回路102から入力される信号persist_dec_failがfalseの場合、状態LOCKEDを維持する。
【0058】
また、EOB一致判定回路114は、受信信号とEOBとが一致するか、あるいは信号persist_dec_failが、誤り訂正不能な符号語が3回連続したことを示すtrueになった場合、初期化回路110に対して初期状態LOCK_INITに遷移するよう指示する。この指示により、状態機械回路103aの状態はステップS10に戻る。
【0059】
本実施の形態では、受信信号とSPとの2回連続一致を符号語同期の条件に加えることで、符号語同期に失敗する平均時間間隔MTT_LOST_BURSTは宇宙年齢よりも大きくなる。以下、その理由を述べる。バースト先頭の不安定領域におけるパターンが一様に発生すると仮定すると、SPと一致すると判定されるパターンが発生する確率P_FALSE_SPおよびBDと一致すると判定されるパターンが発生する確率P_FALSE_BDは、共に式(10)のようになる。
【0060】
【数10】

【0061】
したがって、不安定領域における誤同期確率P_FALSE_BURSTは、式(11)で与えられる。
【0062】
【数11】

【0063】
よって、誤同期の平均時間間隔MTT_FALSE_BURSTは、式(12)のようになる。
【0064】
【数12】

【0065】
同様に伝送路におけるビット誤りにより符号語同期に失敗する確率P_LOST_BURSTは、SP2個とBDのいずれかに12個以上誤りが発生する確率なので、式(13)のようになる。
【0066】
【数13】

【0067】
ビット誤り率の上限値10-3では、符号語同期に失敗する平均時間間隔MTT_LOST_BURSTは次のとおりであり、宇宙年齢よりも大きい。
【0068】
【数14】

【0069】
なお、式(12)、式(14)に示すMTT_FALSE_BURST、MTT_LOST_BURSTの単位はいずれも年である。
以上のように、本実施の形態では、状態機械回路に入力する同期リセット信号が不要となるため、同期リセット信号生成回路および可変遅延回路が不要となり、回路規模を削減することができる。
【0070】
本実施の形態では、受信信号とSPとの2回連続一致と、受信信号とBDとの一致を符号語同期達成の条件としたが、受信信号とSPとの3回以上連続一致と、受信信号とBDとの一致を符号語同期達成の条件としてもよい。
【0071】
SPとの3回以上連続一致とそれに続くBDとの一致を符号語同期達成の条件としても、符号語同期に失敗する平均時間間隔MTT_FALSE_BURSTは宇宙年齢よりも当然大きい。但し、この場合は符号語同期のための状態機械回路が本実施の形態よりも複雑となり回路規模が増大する。つまり、受信信号とSPとのn回(nは2以上の整数)連続一致を判定するには、ステップS14,S15の処理を(n−1)回連続して行う必要があり、SP一致判定回路112をn−1個設ける必要があるため、回路規模が増大する。
【0072】
さらに、SPとの3回以上連続一致とそれに続くBDとの一致を符号語同期達成の条件とすると、誤同期の確率が大きくなり、符号語同期に失敗する平均時間間隔MTT_LOST_BURSTが小さくなる。MTT_LOST_BURSTをIEEE802.3z規格のギガビットイーサネット(登録商標)と同等の値(6×1010(年))にするためには、SPとの連続一致回数を11回以下とする必要がある。したがって、受信信号とSPとの3回以上11回以下の連続一致と、受信信号とBDとの一致を符号語同期達成の条件とすればよい。
【0073】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能なことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、10G−EPONにおける上り信号の誤り訂正符号復号のための符号語同期技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
100a…符号語同期回路、101…ギアボックス回路、102…誤り訂正符号復号回路、103a…状態機械回路、110…初期化回路、111,112…SP一致判定回路、113…BD一致判定回路、114…EOB一致判定回路、115…論理和回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEEE802.3avで規定される局側装置の符号語同期方法において、
符号語同期条件を、受信信号と同期パターン(SP)とのn回(nは2以上の整数)連続一致と、これに続く受信信号とバーストデリミタ(BD)との一致とする同期処理ステップを備えることを特徴とする符号語同期方法。
【請求項2】
請求項1記載の符号語同期方法において、
前記同期処理ステップは、
受信信号の誤り訂正復号処理を行う誤り訂正符号復号回路に対して符号語同期状態か否かを通知する信号cword_lockを、非同期状態を示す値に設定する初期化ステップと、
この初期化ステップによる処理後に、ギアボックス回路から入力される受信信号とSPとの一致判定を行い、不一致の場合に、前記ギアボックス回路に対して受信信号のビットアライメントの1ビットシフトを指示して、受信信号とSPとの一致判定を再度行う第1のSP一致判定ステップと、
この第1のSP一致判定ステップで受信信号とSPとが一致した場合に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とSPとの一致判定を(n−1)回行い、(n−1)回のいずれかで受信信号とSPとが不一致の場合に、前記初期化ステップに戻る第2のSP一致判定ステップと、
この第2のSP一致判定ステップで受信信号とSPとが一致した場合に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とBDとの一致判定を行い、不一致の場合に、前記初期化ステップに戻るBD一致判定ステップと、
このBD一致判定ステップで受信信号とBDとが一致した場合に、前記信号cword_lockを同期状態を示す値に設定すると共に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とエンドオブバーストデリミタ(EOB)との一致判定を行い、受信信号とEOBとが一致するか、あるいは前記訂正符号復号回路から誤り訂正不能な符号語が3回連続したことを通知された場合に、前記初期化ステップに戻るEOB一致判定ステップとからなることを特徴とする符号語同期方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の符号語同期方法において、
nを2とすることを特徴とする符号語同期方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の符号語同期方法において、
nを3以上11以下とすることを特徴とする符号語同期方法。
【請求項5】
IEEE802.3avで規定される局側装置の符号語同期回路において、
符号語同期条件を、受信信号と同期パターン(SP)とのn回(nは2以上の整数)連続一致と、これに続く受信信号とバーストデリミタ(BD)との一致とする状態機械回路を備えることを特徴とする符号語同期回路。
【請求項6】
請求項5記載の符号語同期回路において、
前記状態機械回路は、
受信信号の誤り訂正復号処理を行う誤り訂正符号復号回路に対して符号語同期状態か否かを通知する信号cword_lockを、非同期状態を示す値に設定して、状態機械回路を初期状態にする初期化回路と、
この初期化回路による処理後に、ギアボックス回路から入力される受信信号とSPとの一致判定を行い、不一致の場合に、前記ギアボックス回路に対して受信信号のビットアライメントの1ビットシフトを指示して、受信信号とSPとの一致判定を再度行う第1のSP一致判定回路と、
この第1のSP一致判定回路で受信信号とSPとが一致した場合に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とSPとの一致判定を(n−1)回行い、(n−1)回のいずれかで受信信号とSPとが不一致の場合に、前記初期化回路による初期状態に戻す第2のSP一致判定回路と、
この第2のSP一致判定回路で受信信号とSPとが一致した場合に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とBDとの一致判定を行い、不一致の場合に、前記初期化回路による初期状態に戻すBD一致判定回路と、
このBD一致判定回路で受信信号とBDとが一致した場合に、前記信号cword_lockを同期状態を示す値に設定すると共に、前記ギアボックス回路から入力される受信信号とエンドオブバーストデリミタ(EOB)との一致判定を行い、受信信号とEOBとが一致するか、あるいは前記訂正符号復号回路から誤り訂正不能な符号語が3回連続したことを通知された場合に、前記初期化回路による初期状態に戻すEOB一致判定回路とからなることを特徴とする符号語同期回路。
【請求項7】
請求項5または6記載の符号語同期回路において、
nを2とすることを特徴とする符号語同期回路。
【請求項8】
請求項5または6記載の符号語同期回路において、
nを3以上11以下とすることを特徴とする符号語同期回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213072(P2012−213072A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78080(P2011−78080)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】