説明

第三物質触媒電極によるオゾン発生方法および発生装置

【課題】オゾンの生成において、オゾン生成に伴う副産物を抑制すると共に、オゾンの生成効率を向上させて、オゾン生成に必要となるエネルギーの低減を課題とする。
【解決手段】電極間に高電圧を印加してオゾンを生成する無声放電もしくは沿面放電によるオゾン生成装置において、電極にオゾン生成を促進する触媒を含むものであって、該触媒が窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスのいずれか1種もしくは複数種類の混合物であるオゾン発生装置を構成する。そして、電極に、気体吸着もしくは蒸着、貼り付け、もしくは合金化により触媒層を構成する。さらには、触媒層上面に導電層を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率的にオゾンを発生させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上水道のオゾン処理は広く行われるようになり、下水処理水においても高度処理の要望がたかまっている。オゾン処理において、オゾンはエネルギー多消費型の原材料物質であり、1kgのオゾンを製造するために13kWhもの電力を要している。
オゾン発生器の原理としては、空気または酸素ガス中での電気放電および紫外線ランプを用いたものが大部分を占める。そして、電気放電を活用した方式において放電の制御方法が各種考案されてきた。電極形状によりオゾン生成率を向上させる技術も知られている。例えば、高電圧電極を接地電極の反りや曲がりに順応させてオゾン発生効率を向上させるものが知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、供給された酸素ガスを解離させ酸素原子を生成する酸素原子発生部と、この酸素原子発生部より送給される酸素原子を含む第1のガスと、反応ガス入口より供給される酸素を含む第2のガスとを酸素原子発生部より高い圧力下で混合して反応させてオゾンを生成するオゾン発生部(スロートおよびディフューザ)と、酸素原子発生部の圧力を大気圧以下の所定の低圧力にすると共に、第1のガスを低圧状態のままオゾン発生部に送給する減圧送給手段とを備えた装置を用いてオゾンを発生させる方法も知られている(特許文献2を参照)。
これは、低圧下において酸素分子を解離させて酸素原子を生成した後に、この酸素原子を含むガスに空気を供給してオゾンを生成するものである。
【0004】
そして、酸素からなる原料ガスに、オゾン濃度の経時的な低下を抑制するべく、オゾン発生装置用放電セルにおいて、電極の表面に10重量%以上の酸化チタンを含有させた誘電体を積層させるものも知られている(特許文献3を参照)。
【特許文献1】特開2003−146622号公報
【特許文献2】特開平9−86904号公報
【特許文献3】特開平11−21110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、オゾン発生の技術において、放電部分のメカニズムとオゾン生成のメカニズムについて十分に考慮されたものではない。特に、空気中にて放電を行う場合には、窒素ガスにも放電が行われ、NOxなどの副産物が生成すると共に、電力をオゾンの生成に効率的に使用できない。酸素ガスを用いる構成においても、窒素の存在を十分に排除していないものであり、オゾン生成における窒素等の第三物質の作用を十分に認識していないものである。
【0006】
また、特許文献2に記載された技術においても、オゾン発生のメカニズムを十分に理解したものではない。特に、特許文献2においては、酸素原子に空気を混合しており、オゾン生成を効率的に行うことが困難になっている。空気は、窒素78.09%、酸素20.95%のほか、アルゴン・二酸化炭素・ネオン・ヘリウム・クリプトン・キセノンなどを微量に含んでいる。このため、反応系が複雑になると共に、制御が困難となるものである。さらに、空気はその組成において地域によっても微妙な差異を生じるものである。
そして、特許文献2においては、低圧条件下において酸素原子を発生させるため、酸素原子の供給量を増大させることが困難である。
【0007】
さらに、特許文献3に記載された技術においては、サファイアガラスに比べ酸化チタンが窒素との結合力が強く、含有した窒素を第三物質として長期にわたり保持し、電極が窒素を有する間はオゾン生成が可能であり、酸化チタン層に含まれる窒素量が重要となる。このため、多くの制限を受けるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図1は酸素ガスへの放電により発生する物質のエネルギー状態を示す図である。
電気放電による酸素気体中の放電生成物としては、図1に示すように、O、O(W)、O(D)、O、O(bΣg)、O、O(aΔg)、Oが揚げられる。この内、オゾンの生成エネルギーに近い生成エネルギーを有するO(D)、O、O(b)、O(a)等の粒子が主にオゾンの生成に関与すると考えられている。
例えば、O(b)の酸素分子よりの生成エネルギーを1.63、O(a)の酸素分子よりの生成エネルギーを0.93、Oの酸素分子よりの生成エネルギーを、3.0とすると、O(b)とOもしくは、O(a)とOによりオゾンが生成されると、そのエネルギーは4.63、3.93となり、オゾンの生成に必要なエネルギー2.6を上回り、円滑なオゾン生成が阻害されてしまう。
ここで、酸素分子と酸素原子のエネルギーとオゾン分子のエネルギー差を調整する第三の物資として窒素分子等の作用を考え、放電室後段の反応室において窒素分子を接触させ、オゾンを生成させることとした。
酸素ガスに放電などによりエネルギーを与え、窒素ガス等の第三の物質を作用させてエネルギーの調節を行い、オゾンを効率的に生成するものである。
【0009】
そして、放電による酸素原子の生成と第三物質としての窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの効果によるオゾン生成を個別に発現させ、効率の良い酸素原子生成、オゾン収率の向上を目指すものである。
【0010】
図2は第三物質を用いた電極の構成を示す図であり、図2(a)は第三物質によるオゾン生成構成を示す図であり、図2(b)は第三物質上に導電層を構成した電極の構成を示す図である。
酸素分子への放電を行う電極31に、触媒となる第三物質33を存在させることにより、電極31の表面において酸素を効率的にオゾンにかえることができるものである。電極表面に第三物質33が存在することにより、酸素が第三物質33に接触してオゾンに効率的に変化することとなる。図2(a)に示すごとく、電極31上には、第三物質33の層が設けられており、酸素ガスの供給下において電極31により放電が行われると、放電により酸素分子にエネルギーが与えられる。そして、酸素分子は酸素原子と結合してオゾンを生成する。過剰なエネルギーは、第三物質33に伝達され、生成されたオゾンを基底状態にし、安定化する。
【0011】
第三物質33は気体吸着や蒸着、貼り付けもしくは合金化により電極31の表面に構成される。第三物質33はオゾン生成の触媒として作用するものであり、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスのうちの1種もしくは2種以上を混合して用いることが出来る。第三物質33の層は、電極31上において、均一もしくは間欠状に構成できるものであり、格子状のパターンで構成することも可能である。
【0012】
このように、酸素分子への放電空間中において第三物質である窒素が存在しないことにより、供給される電力が効率的に、オゾン生成に利用されることとなる。また、第三物質33の層が気体吸着もしくは蒸着、貼り付け、もしくは合金化により構成されることから、電極31の放電特性を維持しながら、オゾン生成性能を向上することができる。さらに、第三物質33の層を十分に薄く構成可能であり、電極31が酸素分子に放電を行う近傍に第三物質33を存在させることができ、オゾン生成過程において第三物質が関与しやすい構成となっている。
【0013】
そして、図2(b)に示すように、第三物質33の層上に導電層34を構成することにより、第三物質33の電極31への保持性能を向上できる。電極31上には、第三物質33の層が構成され、その上に導電層34が設けられている。導電層4は銅などの導電性物質により構成され、この導電層34により電極31上の第三物質33が保護される。電極31より放電が行われると、放電のエネルギーにより第三物質33が蒸発などにより消失される場合がある。しかし、導電層34を設けることにより、第三物質33の電極31よりの消失を抑制して、電極31の耐久性を向上することができる。なお、導電層34は第三物質33上に蒸着により構成され、均一もしくは間欠的に構成することができる。
【0014】
また、銅表面にアルゴンが吸着し、単分子層を作ることは知られており、銅表面に吸着したアルゴンを第三物質としてオゾンを生成することも可能である。窒素においても電極である銅表面に吸着するものである。
金属であるアンチモンやビスマスは、蒸着により銅表面に薄い層を構成することができるものである。また、蒸着したアンチモンやビスマスの上に銅を蒸着することも可能である。
【0015】
すなわち、本発明は、電極間に高電圧を印加してオゾンを生成する無声放電もしくは沿面放電によるオゾン生成装置において、電極にオゾン生成を促進する触媒を含むものであって、該触媒を窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスのいずれか1種もしくは複数種類の混合物とする。
そして、電極に、気体吸着により前記触媒を構成する1種もしくは2種以上の気体を含ませる。
そして、電極に、1種もしくは2種以上触媒を蒸着して、触媒層を構成する。
そして、触媒層上面に導電層を構成する。
また、電極間に高電圧を印加してオゾンを生成する無声放電もしくは沿面放電によるオゾン生成方法において、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスのいずれか1種もしくは複数種類の混合物を含む電極を用いてオゾン生成を行う。
【発明の効果】
【0016】
このように、オゾンの生成を行うことにより、オゾンを効率的に生成可能とすると共に、オゾン濃度を容易に調節することも可能となるものである。
そして、放電によりオゾンを生成する電極のオゾン生成能力を維持しながら、耐久性を向上し、オゾン製造のランニングコストを低減できる。
【実施例1】
【0017】
図3は実験装置の全体構成を示す図であり、図4はオゾン発生器の側面一部断面図であり、図5は反応室の構成を示す図であり、図5(a)は気体添加用反応室であり、図5(b)は金属接触用反応室である。
実験装置は酸素ガスボンベ11、ガス流量制御装置12・13、窒素ガスボンベ4、アルゴンガスボンベ17、切替弁18、オゾナイザ5、水タンク19、反応室6・7、バルブ8・9、オゾン濃度計14、真空ポンプ15、オゾン分解器16により構成される。
酸素ガスボンベ11はガス流量制御装置12を介してオゾナイザ5に接続しており、オゾナイザ5にはバルブ8を介して反応室6・7に接続している。なお、オゾナイザ5には水タンク19が接続され、オゾナイザ5の冷却を行っている。窒素ガスボンベ4とアルゴンガスボンベ17は、切替弁18を介してガス流量制御装置13に接続されており、ガス流量制御装置13は反応室6に接続している。反応室6・7はバルブ9を介してオゾン濃度計14およびオゾン分解器16に接続している。なお、オゾン濃度計14には真空ポンプ15が接続されているものである。
【0018】
オゾナイザの構成について、図4を用いて説明する。オゾナイザ5は、セラミックス誘電体41・41に挟まれたエキスパンドメタルにより構成される電極31において放電を行い、酸素ガス供給口43より供給された酸素より、オゾンを生成して、オゾン化ガス排出口44よりオゾンを排出する。オゾナイザ5には冷却ジャケット42・42が装着されており、オゾナイザ5の温度調節可能となっている。
【0019】
このオゾナイザ5に99%以上の酸素ガス中でオゾンを生成すると、一端オゾンの生成
効率が上昇した後に、オゾン濃度が減少しついにはオゾンを生成しなくなる。本実施例において、この後に第三物質を添加して、オゾンの生成を見た。このため、オゾナイザ5に実験以前に吸着した気体の影響を無視できると共に、第三物質によるオゾン生成への影響を明確にすることが出来る。
【0020】
反応室6は閉じたガラス瓶により構成されているものであり、3つのパイプ21・22・23が配設されるものである。パイプ23は窒素ガスもしくはアルゴンガスを反応室6内に導入するものであり、パイプ22はオゾナイザ5を介した酸素ガスを導入するものであり、パイプ21は反応室6より気体を排出するものである。
反応室7は反応室6と同様に、閉じたガラス瓶により構成されているものであり、2つのパイプ21・22が配設されるものである。パイプ22はオゾナイザ5を介した酸素ガスを導入するものであり、パイプ21は反応室7より気体を排出するものである。反応室7内には、アンチモンもしくはビスマスより選択される触媒金属を収納するものである。反応室7内に導入された気体はこの触媒金属に接触するものである。
【0021】
このような構成において、酸素ガスボンベ11より酸素ガスを、ガス流量制御装置12を介して、オゾナイザ5に供給すると、オゾナイザ5において放電された酸素ガスがバルブ8に向けて排出される。バルブ8においては、オゾナイザ5と反応室6もくは反応室7とを選択的に接続可能に構成しており、このバルブ8により酸素ガスを供給する反応室を選択できるものである。反応室6・7内には触媒が導入されるものであり、バルブ9を介してオゾン濃度計14に導入されて、オゾン濃度の測定を行うものである。
窒素ガスもしくはアルゴンガスを作用させる場合について説明する。窒素ガスもしくはアルゴンガスの選択は、切替弁18により窒素ガスボンベ4かアルゴンガスボンベ17のいずれに接続するかを選択するものである。そして、選択された一方のガスがガス流量制御装置13を介して反応室6内に導入される。オゾナイザ5の下流側に配設されたバルブ8により反応室6に、オゾナイザ5より排出される酸素を供給する。これにより、反応室6において、切替弁18により選択されるガスと放電された酸素ガスとが接触するものである。
アンチモンやビスマスを作用させる場合には、オゾナイザ5の下流側に配設されたバルブ8により反応室7に酸素ガスを供給するものであり、反応室7内には触媒を配置するものである。そして、反応室7より排出されるガスはバルブ9を介してオゾン濃度計に供給される。
【0022】
次に、オゾナイザ5により放電を行った酸素ガスを窒素ガス、アルゴンガス、アンチモン、ビスマスにそれぞれ接触させて、オゾンの濃度変化を測定した。
図6は実験によるオゾンの濃度変化を示す図である。反応室6もしくは反応室7において、オゾナイザ5により放電を行った酸素ガスに触媒を接触させてそのオゾン濃度変化を観察するものである。
図6において、横軸は時間であり、縦軸はオゾン濃度を示すものである。反応室6においては、窒素ガスもしくはアルゴンガスが供給されるものであり、反応室7においてはアンチモン、銅もしくはビスマスの金属が保持されているものである。
【0023】
結果、窒素ガス、アルゴンガス、アンチモン、銅、ビスマスの全てにおいてオゾン濃度の上昇が見られた。銅との接触では、銅表面に付着した窒素の効果により、オゾン濃度が上昇したと考えられる。
特にアンチモンに接触させることにより、オゾン濃度の増加が大きく見られた。
【実施例2】
【0024】
実施例2においては、触媒を蒸着した電極の挙動を調べた。
図7は実施例2における実験装置の構成を示す図であり、図8は金属板近傍における紫外線挙動を示す図であり、図8(a)はアンチモンを蒸着したものにおける紫外線挙動を示す図であり、図8(b)は銅を蒸着したものの紫外線挙動を示す図である。
実施例2の実験において、高真空プラズマ発生装置を用いて、プラズマ状態の酸素ガスを金属板に当てて波長254nmの発光強度を測定した。これにより、オゾンの発生状況を認識する。
【0025】
実験装置は、プラズマ発生装置56、酸素ボンベ51、紫外線ランプ54、検出部58、記録部60、流量計52、圧力計53とにより構成されている。酸素ボンベ51は、流量計52を介してプラズマ発生装置56に接続しており、プラズマ発生装置56内に酸素ガスを供給する。プラズマ発生装置56の下部には排気口が設けられており、装置内に導入されたガスを排出可能としている。プラズマ発生装置56には圧力計53が接続しており、プラズマ発生装置56内の圧力が認識される。プラズマ発生装置56近傍には紫外線ランプ54が配設されており、プラズマ発生装置56内の試料に紫外線を照射可能となっている。また、プラズマ発生装置56の近傍には、検出部58が配設されており、装置内の試料近傍における紫外線発光挙動を認識可能に構成している。検出部58は記録部60に接続しており、検出部58による測定記録を記録可能としている。記録部60とプラズマ発生装置56との間には隔壁59が配設されている。
プラズマ発生装置56内には、試料として金属板55が配設されるものであり、金属板55を介して紫外線入射部と対向する位置には反射板57が配設されており、紫外線を反射する構成となっている。金属板55には上方よりプラズマ化した酸素ガスが供給される。
【0026】
試料の金属板55として、100mm×160mmのステンレス板に銅を約0.5μmの厚みで蒸着を行ったもの(表面は銅で覆われている)と、同一のステンレス板に銅を約0.5μmの厚みで蒸着を行い、さらにアンチモンを100nmの厚みで蒸着を行ったもの(表面はアンチモンで覆われている)とを用いた。
そして、7つの条件について、それぞれ測定を行った。紫外線の挙動は、放電空間、金属板表面部分、金属板裏面部分について測定を行った。
第1の条件は、バックグラウンドであり、プラズマは発生させていない。
第2の条件は、0.005Torrの圧力で、プラズマを発生させた。
第3の条件は、0.015Torrの圧力で、プラズマを発生させた。
第4の条件は、0.025Torrの圧力で、プラズマを発生させた。
第5の条件は、0.035Torrの圧力で、プラズマを発生させた。
第6の条件は、0.045Torrの圧力で、プラズマを発生させた。
第7の条件は、バックグラウンドであり、プラズマは発生させていない。
【0027】
結果、図8に示す紫外線挙動を得た。ひし形の印は放電空間における紫外線挙動を示し、四角印は金属板表面における紫外線挙動を示し、丸印は金属板裏面における紫外線挙動を示す。
そして、図8において、縦軸はオゾンの紫外線吸収帯である254nmの紫外線の発光強度(V)である。横軸に記載した数字は、それぞれ上記の各実験条件に対応する。
表面が銅のみを蒸着した金属板においては、254nmの紫外線の吸収が見られなかった。銅の上にアンチモンを蒸着した金属板においては、254nmの紫外線の吸収が大きく見られた。
これにより、アンチモンを蒸着した金属板近傍において、銅のみを蒸着した金属板と比べて、多くのオゾンが発生したものと考えられる。
すなわち、触媒となる第三物質を電極表面に存在させることにより、効率的にオゾンの生成を行うことが可能であると考えられる。
【実施例3】
【0028】
次に、実施例3となる実験について説明する。
図9は実施例3における実験装置の構成を示す図であり、図10は実施例3におけるオゾン濃度の時間変化を示す図である。
実施例3は針―平板電極による放電により、電極に蒸着された触媒金属の効果を観察するものである。装置構成において、イオン化チャンバ65内には、針電極64と平板電極66とが配設されている。この電極64・66間で放電を行うことにより、イオン化チャンバ65内に導入された酸素よりオゾンを生成する。イオン化チャンバ65には流量計62を介して酸素ボンベ61が接続されており、この酸素ボンベ61より酸素ガスが供給される。針電極64には高圧電源63が接続されており、平板電極66との間で放電可能に構成されている。イオン化チャンバ65の近傍には、温度検出部67が配設されており、温度計68においてイオン化チャンバ65の温度が認識される構成となっている。そして、イオン化チャンバ65にはオゾン濃度計69が接続されておれており、生成されたオゾン濃度が計測される構成となっている。
【0029】
このように構成した、装置において、平板電極66として、4種類のものを用いてオゾン濃度を測定した。電極として用いたものは、99.9%銅、ステンレス板に銅を10分間蒸着した後に1秒間アンチモンの蒸着を行ったもの、ステンレス板に銅を10分間蒸着した後に32秒間アンチモンの蒸着を行ったもの、ステンレス板である。なお、ステンレス板については、異なる3つのステンレス板をそれぞれ測定した。
ステンレス板に銅を10分間蒸着した後に1秒間アンチモンの蒸着を行ったものにおいて、銅の厚みは約0.5μmであり、アンチモンの厚みは約2.2nmであった。ステンレス板に銅を10分間蒸着した後に32秒間アンチモンの蒸着を行ったものにおいて、銅の厚みは約0.5μmであり、アンチモンの厚みは約70nmであった。
印加電流は1μAで一定とした。酸素ガス流量は375mL/minであった。オゾン濃度測定温度は40℃であった。
【0030】
図10において、縦軸は生成されたオゾン濃度であり、横軸は時間である。
ひし形印は99.9%銅の電極、丸印は1秒間アンチモンの蒸着を行った電極、四角印は32秒間アンチモンの蒸着を行った電極、三角はステンレス板の電極を示すものであり、SUS−1、SUS−2、SUS−3はそれぞれ異なるステンレス板の電極を示すものである。
結果、アンチモンを蒸着した電極により、大幅にオゾン濃度が上昇した。特に、32秒間のアンチモン蒸着を行った電極において高いオゾン生成能と、耐久性が見られた。
【実施例4】
【0031】
次に、実施例4について説明する。実施例4において、オゾン生成用の電極として、アンチモンを用いた電極と、チタンを用いた電極との経時変化について比較した。オゾン生成装置としては、前述の実施例1において図4に示したオゾナイザ5を用いた。そして、電極31においては、チタン電極はチタンのエキスパンドメタルにより構成したものを用い、アンチモンを用いた電極は、図11に示すように、チタン層上に500nmの銅層、100nmのアンチモン層、500nmの銅層、100nmのアンチモン層、さらに、その上に100nmの銅層を構成したものを用いた。
チタン電極について、徐々に冷却水の温度を変えて、6回オゾン濃度を測定した。そして、アンチモン層を構成した電極について、冷却水温度30.7℃について、測定した。
結果、30℃付近におけるオゾン濃度は、アンチモン層を構成した電極を用いたものが、チタン電極を用いた場合よりも高濃度を示した。このことより、アンチモン電極を用いることにより、良好なオゾン発生を行うことが出来ると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】酸素ガスへの放電により発生する物質のエネルギー状態を示す図。
【図2】第三物質を用いた電極の構成を示す図。
【図3】実験装置の全体構成を示す図。
【図4】オゾン発生器の側面一部断面図。
【図5】反応室の構成を示す図。
【図6】実験によるオゾンの濃度変化を示す図。
【図7】実施例2における実験装置の構成を示す図。
【図8】金属板近傍における紫外線挙動を示す図。
【図9】実施例3における実験装置の構成を示す図。
【図10】実施例3におけるオゾン濃度の時間変化を示す図。
【図11】実施例4における電極の構成を示す断面図。
【図12】実施例4におけるオゾン濃度の経時変化を示す図。
【符号の説明】
【0033】
4 窒素ガスボンベ
5 オゾナイザ
6・7 反応室
11 酸素ガスボンベ
12・13 ガス流量制御装置
14 オゾン濃度計
15 真空ポンプ
16 オゾン分解器
17 アルゴンガスボンベ
18 切替弁
19 水タンク
31 電極
33 第三物質
34 導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極間に高電圧を印加してオゾンを生成する無声放電もしくは沿面放電によるオゾン生成装置において、
電極にオゾン生成を促進する触媒を含むものであって、
該触媒が窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスのいずれか1種もしくは複数種類の混合物であることを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項2】
電極に、気体吸着により前記触媒を構成する1種もしくは2種以上の気体を含ませることを特徴とする請求項1に記載のオゾン生成装置。
【請求項3】
電極に、1種もしくは2種以上触媒を蒸着、貼り付け、もしくは合金化して、触媒層を構成することを特徴とする請求項1に記載のオゾン生成装置。
【請求項4】
触媒層上面に導電層を構成することを特徴とする請求項3に記載のオゾン生成装置。
【請求項5】
電極間に高電圧を印加してオゾンを生成する無声放電もしくは沿面放電によるオゾン生成方法において、
窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスのいずれか1種もしくは複数種類の混合物を含む電極を用いてオゾン生成を行うことを特徴とするオゾン生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−199540(P2006−199540A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13342(P2005−13342)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】