説明

第三級アミンの製造方法

【課題】バッチ方式での還元アミノ化反応において、第三級アミンを選択的に高収率で製造する方法を提供すること。
【解決手段】水素化触媒の存在下、式 R−CHO(式中、Rは、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)で示されるアルデヒド、アンモニアおよび水素をバッチ方式にて反応させることによる、式 (R−CH23N(式中、Rは前記定義のとおりである。)で示される第三級アミンの製造方法であって、水素化触媒としてパラジウム触媒を用い、水素圧0.1〜6.5MPaの条件で反応を行うことを特徴とする第三級アミンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第三級アミンの製造方法に関する。より詳細には、水素化触媒の存在下、アルデヒド、水素およびアンモニアを反応させることによる第三級アミンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化触媒の存在下、アルデヒド、水素および活性水素を持つアミンを反応させ、対応する第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンを製造する方法は、「還元アミノ化反応」としてよく知られている(非特許文献1参照)。該非特許文献1には、具体的には、アルデヒドを、アンモニアの存在下に金属触媒によって水素化することにより、第一級アミンが生成することが開示されている。さらに、触媒、温度、反応物質の濃度比、水素圧などの反応条件によって、第二級アミンや第三級アミンも生成すること、およびラネーニッケル、ラネーコバルト、パラジウム、ロジウムなどが水素化触媒として用いられることが開示されている。
しかし、還元アミノ化反応では、通常、第一級アミンが選択的に製造されるため、反応条件などによって第三級アミンの副生量が若干増加することもあるが、第三級アミンの選択率は通常は50%以下であり、大抵は10%以下にしかならない(特許文献1および非特許文献2参照)。特に、非特許文献2には、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金などの白金族金属触媒を用いて還元アミノ化反応を行うことによって、第1級アミン及び第二級アミンが選択的に製造されることを開示している。
そこで、還元アミノ化反応にて第三級アミンを選択的に製造する方法として、原料のアルデヒドを反応系に供給しながら反応を行う方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第2219879号明細書
【特許文献2】特開2009−40750号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】西村重夫、高木弦著「接触水素化反応」(第1版)、株式会社東京化学同人、p.186〜187
【非特許文献2】日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要、No.39、2004年、p.349〜357
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の実施例では、ラネーニッケルを水素化触媒として用い、アルデヒドを反応系に供給しながら、つまり「連続方式」で還元アミノ化反応を行うことによって、高収率で第三級アミンを製造することができている。しかし、該特許文献2の比較例1では、「バッチ方式」で還元アミノ化反応を行ったところ、第三級アミンの収率は7.7%しか得られていない。このように、バッチ方式での還元アミノ化反応において、第三級アミンを選択的に高収率で製造する方法は未だ開発されていない。
しかして本発明の課題は、バッチ方式での還元アミノ化反応において、第三級アミンを選択的に高収率で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記問題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、バッチ方式での還元アミノ化反応であっても、特定の水素化触媒を用い、特定の水素圧にて反応を行うことによって、第三級アミンを選択的に高収率で製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[4]に関する。
[1]水素化触媒の存在下、下記一般式(1)
R−CHO (1)
(式中、Rは、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
で示されるアルデヒド、アンモニアおよび水素をバッチ方式にて反応させることによる、下記一般式(2)
(R−CH23N (2)
(式中、Rは前記定義のとおりである。)
で示される第三級アミンの製造方法であって、
水素化触媒としてパラジウム触媒を用い、水素圧0.1〜6.5MPaの条件で反応を行うことを特徴とする第三級アミンの製造方法。
[2]前記パラジウム触媒がパラジウムカーボンである、上記[1]に記載の第三級アミンの製造方法。
[3]前記アルデヒドが、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、イソバレルアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、シクロヘキサンカルバルデヒド、ベンズアルデヒドまたは3−フェニルプロピオンアルデヒドである、上記[1]または[2]に記載の第三級アミンの製造方法。
[4]下記一般式(3)
(R−CH2)NH2 (3)
(式中、Rは、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される第一級アミンおよび/または下記一般式(4)
(R−CH22NH (4)
(式中、Rは前記定義のとおりである。)
で示される第二級アミンを、前記アルデヒドと混合して反応を行う、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の第三級アミンの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バッチ方式での還元アミノ化反応において、第三級アミンを選択的に高収率で製造することができる。また、該反応において、高沸点化合物の副生を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第三級アミンの製造方法]
本発明は、水素化触媒の存在下、下記一般式(1)
R−CHO (1)
(式中、Rは、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
で示されるアルデヒド、アンモニアおよび水素をバッチ方式にて反応させることによる、下記一般式(2)
(R−CH23N (2)
(式中、Rは前記定義のとおりである。)
で示される第三級アミンの製造方法であって、
水素化触媒としてパラジウム触媒を用い、水素圧0.1〜6.5MPaの条件で反応を行うことによる第三級アミンの製造方法である。
【0009】
(アルデヒド)
前記一般式(1)中、Rは、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。
Rが表す炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基としては、例えばエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、各種ヘキシル基(「各種」は、直鎖状およびあらゆる分岐鎖状のものを含み、以下同様である。)、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ノナデシル基、各種エイコシル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜10の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2〜5の脂肪族炭化水素基がより好ましく、第三級アミンの選択性の観点から、とりわけ分岐鎖状の脂肪族炭化水素基であるのが好ましく、イソプロピル基、イソブチル基がより好ましく、イソブチル基がさらに好ましい。なお、該脂肪族炭化水素基は、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
Rが表す炭素数3〜20の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基などが挙げられる。こられの中でも、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基がより好ましい。
Rが表す炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられる。こられの中でも、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基が好ましい。
本発明で用いられるアルデヒドとしては、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、イソバレルアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、シクロヘキサンカルバルデヒド、ベンズアルデヒド、3−フェニルプロピオンアルデヒドなどが好ましく、第三級アミンの選択性の観点から、イソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒドがより好ましく、イソバレルアルデヒドがさらに好ましい。
アルデヒドの使用量はアンモニア1モルに対して、好ましくは3〜10モル、より好ましくは3〜7モル、さらに好ましくは3〜5モルである。この範囲であれば、第一級アミン及び第二級アミンの生成量を低減し易く、かつ体積効率が良いため生産性に優れる。
【0010】
(パラジウム触媒)
本発明では、還元アミノ化反応に際して、従来、第一級アミンおよび第二級アミンが選択的に製造されるとして知られているパラジウム触媒を用いる。本発明によると、還元アミノ化反応の水素化触媒としてパラジウム触媒を用いるにも関らず、第三級アミンが選択的に高収率で得られる。
本発明で使用するパラジウム触媒としては、パラジウム金属またはパラジウム化合物を担体上に分散させたパラジウム担持触媒や、パラジウムブラックなどのパラジウム金属が挙げられる。
なお、パラジウム担持触媒の担体としては、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、粘土、チタニア、ジルコニア、マグネシア、カルシア、酸化ランタン、酸化ニオブ、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどが挙げられ、これらの中でも、活性炭が好ましい。また、担持させる前記パラジウム化合物としては特に制限はなく、例えばギ酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、炭酸パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム酸ナトリウム、塩化パラジウム酸カリウム、パラジウムアセチルアセトナート、ビス(ベンゾニトリル)パラジウムジクロリド、ビス(t−ブチルイソシアニド)パラジウムジクロリド、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム、ビス(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、テトラキス(トリフェニル)ホスフィンパラジウム、トリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられる。パラジウム化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。パラジウム担持触媒におけるパラジウム金属の担持量は、パラジウム担持触媒全体に対する質量比で、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは1〜7質量%、特に好ましくは3〜7質量%である。
担体へのパラジウム金属またはパラジウム化合物の担持方法に特に制限はなく、従来公知の方法、例えば含浸法、沈殿法、共沈法、イオン交換法、混練法などを、担体の種類に応じて適宣選択することができる。
パラジウム触媒としては、反応速度の観点から、パラジウム担持触媒を用いるのが好ましく、パラジウムカーボンを用いるのがより好ましい。
パラジウム触媒の使用量に特に制限はないが、反応速度および製造コストの観点からは、アルデヒド1質量部に対してパラジウム原子換算で、好ましくは0.00001〜0.2質量部、より好ましくは0.00005〜0.1質量部、さらに好ましくは0.0001〜0.05質量部である。
【0011】
(溶媒)
反応は、溶媒の存在下または非存在下で行うことができるが、溶媒の存在下で行うことが好ましく、前記アルデヒドが常温にて固体の場合には尚更である。溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限は無く、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;水などが挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
溶媒を使用する場合、その使用量は、容積効率の観点から、アルデヒド1質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜1.5質量部、さらに好ましくは0.5〜1.2質量部である。
【0012】
(アンモニア)
アンモニアは、液体アンモニアを用いることもできるし、水や有機溶媒に溶解させたアンモニア溶液として用いることもできが、反応効率の観点から、液体アンモニアを用いるのが好ましい。液体アンモニアは、昭和電工株式会社、三菱ガス化学株式会社、宇部興産株式会社、住友精化株式会社などから工業的に容易に入手可能である。
なお、アンモニア溶液として用いる場合のアンモニア濃度に特に制限はないが、好ましくは5〜40質量%である。
【0013】
(水素)
パラジウム触媒を用いる本発明では、第三級アミンの選択性および収率を高めるため、水素圧を0.1〜6.5MPaに保持しながら反応を行う必要がある。ここで、水素圧とは、水素分圧のことである。水素圧を前記範囲内に保持するため、反応による水素の消費に応じて、反応系に水素を導入しながら反応を行う。水素圧は、第三級アミンの選択性および収率の観点から、好ましくは0.1〜6MPa、より好ましくは0.1〜4MPa、さらに好ましくは0.1〜2MPa、特に好ましくは0.1〜1MPaである。
水素圧が0.1MPa未満の場合、反応速度が低くて工業的に不利であり、6.5MPaを超える場合、反応器が特殊なものとなり、昇圧のために多大なエネルギーが必要であって、経済的でなく工業的に実施し難いのみならず、アルデヒドの還元体および高沸物の副生量が増加し、目的とする第三級アミンの選択率および収率が大幅に低下する。なお、高沸物とは、目的としている第三級アミンよりも沸点が高い化合物のことであり、反応の副生物である。
【0014】
なお、反応温度は、好ましくは30〜200℃、より好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは40〜140℃、特に好ましくは40〜100℃である。反応温度がこの範囲であれば、充分な反応速度および転化率が得られ、かつ副生物を抑制し易く、収率の低下を抑制できる。
反応時間に特に制限はなく、アルデヒドの種類や製造規模などによって適宜調整すればよいが、通常、例えば、好ましくは30分〜24時間程度であり、より好ましくは1時間〜10時間である。
【0015】
(本発明の実施形態)
本発明では、前記アルデヒド、アンモニアおよび水素を、パラジウム触媒の存在下、水素圧0.1〜6.5MPaで反応させることにより、バッチ方式でも第三級アミンを選択的に製造することができる。
ここで、バッチ方式とは、回分式とも言われ、原料などの仕込み、反応、生成物の回収の各工程が順番にひとつずつ行われる方法であり、原料などの仕込み、反応、生成物の回収を全て同時に実施する連続方式とは区別される。つまり、本明細書におけるバッチ方式は、一般的に言われるバッチ方式と同じである。
なお、本発明の製造方法において、バッチ方式の代わりに連続方式を用いたとしても、第三級アミンを高選択率および高収率で製造することができる(実施例中の参考例1参照)。連続方式を採用する場合には、フィードポンプなどにより所定の速度で連続的または断続的にアルデヒドを反応器へ供給することによって実施できる。連続的または断続的に供給する場合、アルデヒドの供給速度は、200〜20,000g/(h・g−パラジウム)、より好ましくは300〜16,000g/(h・g−パラジウム)、もっとも好ましくは400〜10,000g/(h・g−パラジウム)である。「/(h・g−パラジウム)」は、「1時間当たり、かつパラジウム原子1g当たり」を示す。
【0016】
バッチ方式で反応を実施する具体的な方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、パラジウム触媒および必要に応じて溶媒を仕込んだ耐圧反応器に水素を充填した後、そこへアルデヒドおよびアンモニアを一括で供給し、適宜前記温度範囲に加温し、かつ前記所定水素圧になるまで水素を供給することによって反応を実施する方法が挙げられる。
なお、参考までに、連続方式の場合は、パラジウム触媒、アンモニアおよび必要に応じて溶媒を仕込んだ耐圧反応器に水素を充填した後、適宜前記温度範囲に加温し、かつ前記所定水素圧になるまで水素を供給しつつ、アルデヒド(必要に応じて、さらにアンモニア)を連続的または断続的に供給しながら反応させる方法が挙げられる。
このようにして、前記一般式(2)で示される第三級アミンが、下記一般式(3)
(R−CH2)NH2 (3)
で示される第一級アミンや下記一般式(4)
(R−CH22NH (4)
で示される第二級アミン(いずれのRも、前記定義の通りである)よりも選択的に製造される。
なお、製造コストの観点から、本発明の製造方法によって副生する上記第一級アミンや上記第二級アミンを原料のアルデヒドと混合して反応を行なってもよい。これは、第一級アミンや第二級アミンの還元アミノ化反応によって、目的とする第三級アミンが製造され得るためである。
【0017】
以上のようにして得られる反応混合物からの第三級アミンの分離精製は、一般的な分離精製手法に従って実施することができる。例えば、パラジウム触媒を分離した反応混合液からアンモニアおよび溶媒を留去した後、濃縮、抽出、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどを行うことにより、高純度の第三級アミンを得ることができる。
なお、反応混合物からのパラジウム触媒の分離は、通常用いられる方法、例えば、ろ過、沈降分離、遠心分離などの操作により実施することができる。該分離は、反応器内で行って、反応器から反応混合液のみを抜き出してもよいし、パラジウム触媒を含む反応混合物を反応器から抜き出してから、反応器外で実施してもよい。分離・回収したパラジウム触媒は、適宜活性化処理を施してから本発明に再使用することができる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
なお、各例におけるガスクロマトグラフィー分析条件は以下のとおりである。各例において、高沸物の生成量は以下の計算法によって求めた。また、各例において、各生成物の収率は、初期添加したアンモニアの量を基準にして求めた。
【0019】
(ガスクロマトグラフィー(GC)分析条件)
装置:「GC−14A」(株式会社島津製作所製)
カラム:「G−205」(直径1.2mm×長さ20m、液相膜厚1.0μm、財団法人化学物質評価研究機構製)
カラム温度:50℃(5分)→5℃/分で昇温→140℃(0分)→10℃/分で昇温→250℃(0分)
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
内部標準物質:ジエチレングリコールジメチルエーテル
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
【0020】
(高沸物の生成量の計算法)
高沸物の生成量は、GC分析により第三級アミンのエナミン体よりもリテンションタイムが長いピークのピーク面積の総和より、内部標準法を用いて算出した。このとき、補正係数は第三級アミンの値を用いた。
高沸物の生成量(質量%)=(高沸物の質量)/{(初期添加したアルデヒドの質量)+(初期添加したアンモニアの質量)+(初期添加した溶媒の質量)}×100
【0021】
[実施例1]
ステンレス製の内容積300mLの耐圧反応器に、パラジウムカーボン[5質量%パラジウムカーボン(56.6質量%含水品、STDタイプ)、エヌ・イーケムキャット株式会社製]2.75gおよびエタノール(和光純薬工業株式会社製)52mLを仕込んだ後、1MPaの水素圧で反応器内を3回置換した。
反応器内を常圧に戻した後、液体アンモニア(昭和電工株式会社製)6mL(0.24mol)およびイソバレルアルデヒド80mL(0.73mol)の順に加え、50℃に昇温し、水素圧3.5MPaまで加圧した。同温度、同水素圧下で2時間撹拌して反応させた後、反応器を室温にまで冷却した。
反応混合物からパラジウムカーボンをろ過により分離し、得られた反応混合液をGC分析した。その結果、アルデヒド(イソバレルアルデヒド)の転化率は100%、第三級アミン(トリイソアミルアミン)の収率は84%、第二級アミン(ジイソアミルアミン)の収率は6%、アルデヒドの還元体(イソアミルアルコール)の収率は0.4%、高沸物の生成量は3.8質量%であった。結果を表1に示す。
なお、パラジウム1gあたりのアルデヒドの消費量は459.6(g/g−パラジウム)であった。
【0022】
[実施例2]
実施例1において、加熱後の水素圧を0.5MPaとし、反応時間を8時間とした以外は同様の操作を行った。
得られた反応混合液のGC分析結果を表1に示す。なお、パラジウム1gあたりのアルデヒドの消費量は459.6(g/g−パラジウム)であった。
【0023】
[実施例3]
実施例1において、加熱後の水素圧を0.15MPaとし、反応時間を8時間とした以外は同様の操作を行った。
得られた反応混合液のGC分析結果を表1に示す。なお、パラジウム1gあたりのアルデヒドの消費量は459.6(g/g−パラジウム)であった。
【0024】
[実施例4]
実施例1において、加熱後の水素圧を6.0MPaとした以外は同様の操作を行った。
得られた反応混合液のGC分析結果を表1に示す。なお、パラジウム1gあたりのアルデヒドの消費量は459.6(g/g−パラジウム)であった。
【0025】
[参考例1]連続方式
ステンレス製の内容積300mLの耐圧反応器に、パラジウムカーボン[5質量%パラジウムカーボン(56.6質量%含水品、STDタイプ)、エヌ・イーケムキャット株式会社製]0.4gおよびイソプロパノール(和光純薬工業株式会社製)100mLを加えた後、1MPaの水素圧で反応器内を3回置換した。
反応器内を常圧に戻した後、液体アンモニア(昭和電工株式会社製)9mL(0.32mol)を加えた。80℃に昇温、水素圧0.5MPaまで加圧した。プランジャーポンプによりイソバレルアルデヒド104mL(0.95mol)を4mL/分で反応器に供給しながら反応を行った。イソバレルアルデヒドの供給を終えた後、さらに同温度、同水素圧下で2時間撹拌して反応させた後、反応器を室温にまで冷却した。
反応混合物からパラジウムカーボンをろ過により分離し、得られた反応混合液をGC分析した結果を表1に示す。なお、パラジウム1gあたりのアルデヒドの消費量は4108(g/g−パラジウム)であった。
【0026】
[比較例1]
実施例1において、加熱後の水素圧を8.0MPaとし、反応時間を3時間とした以外は同様の操作を行った。得られた反応混合液のGC分析結果を表2に示す。
【0027】
[比較例2]
実施例1において、パラジウムカーボンの代わりにラネーニッケル「BK113AW」(エボニック社製)2.75gを用い、反応時間を2.5時間とした以外は同様の操作を行った。得られた反応混合液のGC分析結果を表2に示す。
【0028】
[参考比較例1]
参考例1において、加熱後の水素圧を8.0MPaとし、反応時間を2.5時間とした以外は同様の操作を行った。得られた反応混合液のGC分析結果を表2に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
表1より、本発明の製造方法によれば、バッチ方式での還元アミノ化反応において、高沸物の副生を抑制しながら、第三級アミンを選択的に高収率で製造できることがわかる。
一方、表2の比較例1より、水素圧が本発明の規定範囲外であると、第三級アミンの選択率が大幅に低下し、アルデヒドの還元体や高沸物の生成量が増大することがわかる。また、比較例2より、水素圧が本発明の規定範囲内であっても、パラジウム触媒の代わりにニッケル触媒を用いると、第三級アミンの選択率が極めて低下し、第二級アミンやアルデヒドの還元体や高沸物の生成量が非常に高まることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によって得られる第三級アミンは、洗浄剤、帯電防止剤、殺菌剤、医農薬中間体、金属精錬剤、金属回収剤、廃酸処理剤などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化触媒の存在下、下記一般式(1)
R−CHO (1)
(式中、Rは、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
で示されるアルデヒド、アンモニアおよび水素をバッチ方式にて反応させることによる、下記一般式(2)
(R−CH23N (2)
(式中、Rは前記定義のとおりである。)
で示される第三級アミンの製造方法であって、
水素化触媒としてパラジウム触媒を用い、水素圧0.1〜6.5MPaの条件で反応を行うことを特徴とする第三級アミンの製造方法。
【請求項2】
前記パラジウム触媒がパラジウムカーボンである、請求項1に記載の第三級アミンの製造方法。
【請求項3】
前記アルデヒドが、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、イソバレルアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、シクロヘキサンカルバルデヒド、ベンズアルデヒドまたは3−フェニルプロピオンアルデヒドである、請求項1または2に記載の第三級アミンの製造方法。
【請求項4】
下記一般式(3)
(R−CH2)NH2 (3)
(式中、Rは、炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。)
で示される第一級アミンおよび/または下記一般式(4)
(R−CH22NH (4)
(式中、Rは前記定義のとおりである。)
で示される第二級アミンを、前記アルデヒドと混合して反応を行う、請求項1〜3のいずれかに記載の第三級アミンの製造方法。

【公開番号】特開2012−36135(P2012−36135A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179051(P2010−179051)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】